特許第5667701号(P5667701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667701
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】フィラー高充填ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20150122BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20150122BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150122BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08L23/08
   C08K3/04
   C08K3/26
   C08K3/22
   C08J3/20CES
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-540200(P2013-540200)
(86)(22)【出願日】2010年11月24日
(65)【公表番号】特表2013-543914(P2013-543914A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】CN2010001885
(87)【国際公開番号】WO2012068703
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】513130227
【氏名又は名称】エクソンモービル アジア パシフィック リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】トン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ペン シャオボー
(72)【発明者】
【氏名】リー リャン
(72)【発明者】
【氏名】イン チー
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−511643(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139874(WO,A1)
【文献】 特表2010−523792(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08J 3/00−3/28
C08K 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)45重量%未満の第1のポリマーと、
B)55重量%を超える量の1種または複数のフィラーと
を含むポリマー組成物であって、
前記ポリマー組成物はC)架橋パックを含んでもよく、
前記第1のポリマーが、
(i)プロピレン系コポリマーの全重量に対して、(a)少なくとも60重量%のプロピレン由来単位、および(b)5重量%〜35重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位を含むプロピレン系コポリマーであって、前記プロピレン系コポリマーは(c)0〜5重量%のジエン由来単位を含んでもよく、DSCによって求めて、75J/g以下の融解熱、DSCによって求めて、100℃以下の融点、およびDSCによって求めて、アイソタクチックポリプロピレン2%〜65%の結晶化度、ならびに230℃、2.16kg荷重で測定して、0.5〜1,000g/10分のメルトフローレートを有する上記ポリプロピレン系コポリマーと、
(ii)DSCによって求めて、2%〜25%の全結晶化度、および177℃で測定して、500〜35,000cPのブルックフィールド粘度を有するエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーと
のうちの少なくとも1種を含み、
前記の1種または複数のフィラーが、
i)前記ポリマー組成物の全重量に対して、50重量%超〜65重量%以下の量のカーボンブラック、または
ii)前記ポリマー組成物の全重量に対して、90重量%以下の量のフェライト磁石粉末、または
iii)前記ポリマー組成物の全重量に対して、81重量%超〜85重量%以下の量の炭酸カルシウム、または
iv)前記ポリマー組成物の全重量に対して、40重量%超〜80重量%以下の量の、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、天然繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカもしくはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタネート、クレー、ナノクレー、有機変性クレーもしくはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイト、顔料、またはこれらの任意の組合せ
を含み、
前記架橋パックが、前記第1のポリマーの100重量部に対して、0.1〜5重量部の量の架橋剤および0.05〜10重量部の量の架橋助剤を含み、前記架橋剤が有機過酸化物を含み、前記架橋助剤が、ジ−およびトリ−アリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、液体および金属多官能アクリレートおよびメタクリレート、亜鉛系ジメタクリレートおよびジアクリレート、ならびに官能化ポリブタジエン樹脂のうちの少なくとも1種を含む、
ポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマーがプロピレン系コポリマーである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記プロピレン系コポリマーが、前記プロピレン系コポリマーの重量に対して、(a)少なくとも82.5重量%〜92.5重量%のプロピレン由来単位、および(b)7.5重量%〜17.5重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位を含み、(c)0〜3重量%のジエン由来単位を含んでもよく、前記プロピレン系コポリマーが、13C NMRによって求めて、65%〜95%のトリアドタクティシティーおよび230℃、2.16kg荷重で測定して、25g/10分以下のメルトフローレートを有する、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記第1のポリマーが、エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーである、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記の1種または複数のフィラーが、
i)ポリマー組成物の全重量に対して、50重量%超〜60重量%以下の量のカーボンブラック、または
ii)ポリマー組成物の全重量に対して、40重量%超〜90重量%以下の量のフェライト磁石粉末、または
iii)ポリマー組成物の全重量に対して、82重量%超〜84重量%以下の量の炭酸カルシウム、または
iv)ポリマー組成物の全重量に対して、60重量%超〜78重量%以下の量の、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、二酸化チタン
を含む、請求項1から4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
第1のポリマーを1種または複数のフィラーと、60〜130℃、40〜100rpmで10〜20分間混合するステップであって、前記フィラーとともに架橋パックを混合してもよいステップと、150〜200℃で3〜40分間成形するステップとを含む、請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物の製造方法。
【請求項7】
混合ステップが、マルチ−パス混合ステップである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ブレンド組成物の2重量%超〜40重量%以下の量の、請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物と、
ブレンド組成物の全重量に対して、60重量%以上〜98重量%未満の量で存在する第2のポリマーと
を含み、
前記第2のポリマーが、DSCによって求めて、110℃以上の融点を有するポリプロピレンを含む、熱可塑性ブレンド組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物を、前記ブレンド組成物の全重量に対して30重量%超〜40重量%以下の量で含み、前記第2のポリマーを、前記ブレンド組成物の全重量に対して60重量%以上〜70重量%未満の量で含む、請求項8に記載の熱可塑性ブレンド組成物。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物、または請求項8または9に記載の熱可塑性ブレンド組成物を含む、屋根用材料。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物、または請求項8または9に記載の熱可塑性ブレンド組成物を含む、ワイヤおよびケーブルの絶縁材もしくはジャケット。
【請求項12】
請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物、または請求項8または9に記載の熱可塑性ブレンド組成物を含む、磁性ストリップ。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物、または請求項8または9に記載の熱可塑性ブレンド組成物を含む、カーペット裏張り材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物、特に、(a)プロピレン系コポリマー、および/または、エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマー、ならびに(b)1種または複数のフィラーを含む、フィラー高混入熱可塑性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高充填ポリマー組成物は、商業的用途に、例えば、難燃(FR)およびハロゲンフリー難燃(HFFR)用途、音環境管理(sound management)用途、床材用途、ワイヤおよびケーブル用途、屋根用メンブレン用途、壁面被覆用途、磁性シート/ストリップ用途、カーペット裏張り材、容器および自動車用途に広範に用いられている。同様に、このような高充填ポリマー組成物は、フィラーが高充填されたマスターバッチとしても使用できる。
高メルトフローレートポリオレフィン、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンのホモ−およびコポリマーは、この分野において使用されているが、混入されるフィラーは低レベルに限られ、加工性は劣り、機械的特性は劣る。多量のフィラーが混入された、このような非常に高いメルトフローレートのポリオレフィンの均一性は、一般に低い。
Trazollah Ouhadiの米国特許第7,737,206号は、プロピレンコポリマー、フィラー、ホモポリプロピレンおよび合成または天然ゴムから本質的になる組成物を開示した。Selim Yalvac他の米国特許第7,335,696号は、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、およびポリマー組成物の40重量パーセントを超える量で充填されたフィラーを含む組成物を開示した。
したがって、最終物品の製造に、また/または、顔料/フィラーマスターバッチとして適切である新規ポリマー組成物が求められている。これらの用途では、非常に高レベルのフィラー、通常、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、より一層好ましくは少なくとも40重量%、実現可能ならば少なくとも55重量%〜95重量%までのフィラーを用いると同時に、充填ポリマー組成物を製造物品に実際に製造するのに必要である性能特性(例えば、柔軟性、引張強さ、衝撃強度、伸長性(extensibility)、伸び、耐熱性、低温柔軟性、熱成形性および加工中の熱安定性、ならびに、組成物に混入されるフィラーの優れた分散性能)のバランスを依然として保つことが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
望まれているのは、混入されるフィラーの分散が良好で、大量のフィラーを混入できると同時に、関連する用途での物理的および機械的特性のバランスの向上を示すポリマー組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の実施形態において、本開示は、
A)第1のポリマーと、
B)1種または複数のフィラーと、
任意選択で、C)架橋パックと
を含むポリマー組成物であって、
第1のポリマーが、
i)プロピレン系コポリマーの全重量に対して、(a)少なくとも約60重量%のプロピレン由来単位、(b)約5重量%〜約35重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位、および任意選択で(c)約0〜5重量%のジエン由来単位、を含んでいてもよいプロピレン系コポリマーであって、DSCによって求めて、約75J/g以下の融解熱、DSCによって求めて、約100℃以下の融点、およびDSCによって求めて、アイソタクチックポリプロピレン約2%〜約65%の結晶化度、ならびに230℃、2.16kg荷重で測定して、0.5〜1,000g/10分のメルトフローレートを有する上記ポリプロピレン系コポリマーと、
(ii)DSCによって求めて、2〜25%の全結晶化度、および177℃で測定して、500〜35,000cPのブルックフィールド粘度を有するエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーと
のうちの少なくとも1種を含み、
1種または複数のフィラーが、
i)ポリマー組成物の全重量に対して、50重量%超〜65重量%以下の量のカーボンブラック、または
ii)ポリマー組成物の全重量に対して、90重量%以下の量のフェライト磁石粉末、または
iii)ポリマー組成物の全重量に対して、81重量%超〜85重量%以下の量の炭酸カルシウム、または
iv)ポリマー組成物の全重量に対して、40重量%超〜80重量%以下の量の、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、天然繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維、マーブルダスト(marble dust)、セメントダスト、クレー、長石、シリカもしくはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーもしくはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイト、顔料、またはこれらの任意の組合せ
を含み、
架橋パックが、第1のポリマーの100重量部に対して、0.1〜5重量部の量の架橋剤および0.1〜10重量部の量の架橋助剤(coagent)を含み、架橋剤が有機過酸化物を含み、架橋助剤が、ジ−およびトリ−アリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、液体および金属多官能アクリレートおよびメタクリレート、亜鉛系ジメタクリレートおよびジアクリレート、ならびに官能化ポリブタジエン樹脂のうちの少なくとも1種を含む、
ポリマー組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
別の実施形態において、本開示は、
A)第1のポリマーと、
B)1種または複数のフィラーと、
C)架橋パックと
を含むポリマー組成物であって、
第1のポリマーが、
i)プロピレン系コポリマーの全重量に対して、(a)少なくとも約60重量%のプロピレン由来単位、(b)約5重量%〜約35重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位、および任意選択で(c)約0〜5重量%のジエン由来単位を含むプロピレン系コポリマーであって、DSCによって求めて、約75J/g以下の融解熱、DSCによって求めて、約100℃以下の融点、およびDSCによって求めて、約2%〜約65%のアイソタクチックポリプロピレン結晶化度、ならびに230℃、2.16kg荷重で測定して、0.5〜1,000g/10分のメルトフローレートを有する上記ポリプロピレン系コポリマーと、
(ii)DSCによって求めて、2〜25%の全結晶化度、および177℃で測定して、500〜35,000cPのブルックフィールド粘度を有するエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーと
のうちの少なくとも1種を含み、
1種または複数のフィラーが、カーボンブラック、フェライト磁石粉末、炭酸カルシウム、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、天然繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーまたはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイト、および顔料のうちの少なくとも1種を含み、
架橋パックが、第1のポリマーの100重量部に対して、0.1〜5重量部の量の架橋剤および0.1〜10重量部の量の架橋助剤を含み、架橋剤が有機過酸化物を含み、架橋助剤が、ジ−およびトリ−アリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、液体および金属多官能アクリレートおよびメタクリレート、亜鉛系ジメタクリレートおよびジアクリレート、ならびに官能化ポリブタジエン樹脂からの少なくとも1種を含む、
ポリマー組成物に関する。
【0006】
別の実施形態において、本開示は、第1のポリマーを1種または複数のフィラーおよび任意選択で架橋剤パックと、60〜130℃、40〜100rpmで10〜20分間混合するステップと、150〜200℃で3〜40分間成形するステップとを含む、本開示のポリマー組成物の製造方法に関する。
さらに別の実施形態において、本開示は、(i)ブレンド組成物の2重量%超〜40重量%以下の量の本開示のポリマー組成物と、(ii)ブレンド組成物の全重量に対して、60重量%以上〜98重量%未満の量で存在する第2のポリマーとを含み、第2のポリマーが、110℃以上の融点を有するポリプロピレンを含む、熱可塑性ブレンド組成物に関する。
別の実施形態において、本開示のポリマー組成物および/または熱可塑性ブレンド組成物は、屋根用材料、ワイヤおよびケーブルの絶縁材もしくはジャケット、磁性ストリップ、カーペット裏張り材、容器、フィルム、シート、フィラメント、または消音材料としての用途を有する。
【0007】
本発明の様々な具体的実施形態、変型(version)について、好ましい実施形態、および本明細書において採用されている定義を含めて、これから説明する。以下の詳細な説明は、好ましい具体的実施形態を記載するが、当業者は、これらの実施形態が単なる例示であり、本発明は別の仕方で実施できることを理解するであろう。
一部の実施形態において、本開示は、第1のポリマー、1種または複数のフィラー、および任意選択で架橋パックを含むポリマー組成物に関する。本開示のポリマー組成物は、機械的および物理的特性の向上したバランス、特に、混入されるフィラーの良好な分散性能を可能にする。
【0008】
ポリマー組成物における第1のポリマーの量は、ポリマー組成物の最終用途および目的とする最終特性により異なる。如何なる理論にも限定しようとは思わないが、本開示における第1のポリマーは、バインダーとしての役割を果たし、また、ポリマー組成物の物理的特性、例えば、柔軟性、引張強さ、分散性能などを向上させると考えられる。一部の実施形態において、本開示のポリマー組成物における第1のポリマーの量は、ポリマー組成物の全重量に対して、約5重量%を超え、10重量%を超え、15重量%を超え、20重量%を超え、または35重量%を超える。別の実施形態において、本開示のポリマー組成物における第1のポリマーの量は、ポリマー組成物の全重量に対して、約60重量%未満、50重量%未満、45重量%未満、約40重量%未満、または20重量%未満である。
【0009】
ポリマー組成物におけるフィラーの量は、ポリマー組成物のフィラーの種類および目的とする最終用途により変わる。一部の実施形態において、ポリマー組成物に混入されるフィラーの量は、ポリマー組成物の全重量に対して、約95重量%未満、90重量%未満、85重量%未満、80重量%未満、または65重量%未満である。別の実施形態において、フィラーの最低量は、ポリマー組成物の全重量に対して、約40重量%を超え、好ましくは約50重量%を超え、より好ましくは約55重量%を超え、より一層好ましくは60重量%を超え、最も好ましくは約80重量%を超える。
【0010】
プロピレン系コポリマー
一実施形態において、第1のポリマーは、非晶領域によって遮られる結晶領域を有するランダムコポリマーであるプロピレン系コポリマーである。如何なる理論にも限定しようとは思わないが、非晶領域は、非結晶性ポリプロピレンセグメント領域および/またはコモノマー単位を含む領域に由来し得ると考えられる。プロピレン系エラストマーの結晶化度および融点は、プロピレンの挿入におけるエラー(立体および領域欠陥)の導入および/またはコモノマーの存在によって、高度にアイソタクチックなポリプロピレンに比べて、低下している。プロピレン系コポリマーは、プロピレン由来単位、およびエチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンからの少なくとも1種に由来する単位を含み、また、ジエン由来単位を含んでいてもよい。このコポリマーは、プロピレン系コポリマーの重量に対して、少なくとも約60重量%のプロピレン由来単位を含む。一部の実施形態において、プロピレン系コポリマーは、本明細書に記載されている、隣接するアイソタクチックプロピレン単位に起因する限定された結晶化度、および融点を有する、プロピレン系エラストマーである。別の実施形態において、プロピレン系コポリマーは、通常、タクティシティーおよびコモノマー組成における如何なる実質的な分子間均一性ももっておらず、また、通常、分子内組成分布における如何なる実質的な均一性ももっていない。
【0011】
プロピレン系コポリマーは、プロピレン系コポリマーの全重量に対して、約50重量%を超え、好ましくは約60重量%を超え、より好ましくは約65重量%を超え、より一層好ましくは約75重量%を超え、約99重量%までのプロピレン由来単位を含む。ある好ましい実施形態において、プロピレン系コポリマーは、約75重量%〜約95重量%、より好ましくは約75重量%〜約92.5重量%、より一層好ましくは約82.5重量%〜約92.5重量%、最も好ましくは約82.5重量%〜約90重量%の、プロピレン系コポリマーの重量に対する量で、プロピレン由来単位を含む。対応して、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンからの少なくとも1種に由来する単位、またはコモノマーは、プロピレン系コポリマーの全重量に対して、約1重量%〜約35重量%、または、好ましくは約5重量%〜約35重量%、より好ましくは約5重量%〜約25重量%、より一層好ましくは約7.5重量%〜約25重量%、より一層好ましくは約7.5重量%〜約20重量%、より一層好ましくは約8重量%〜約17.5重量%、最も好ましくは約10重量%〜17.5重量%の量で存在し得る。
【0012】
コモノマー含有量は、プロピレン系コポリマーが、約75J/g以下の融解熱、約100℃以下の融点、および約2%〜約65%のアイソタクチックポリプロピレン結晶化度、および230℃、2.16kg荷重で測定して、好ましくは、800g/10分未満のメルトフローレート(「MFR」)を有するように調節され得る。
プロピレン系コポリマーは、2種以上のコモノマーを含み得る。プロピレン系コポリマーの好ましい実施形態は、2種以上のコモノマーを有し、プロピレン−エチレン−オクテン、プロピレン−エチレン−ヘキセン、およびプロピレン−エチレン−ブテンのコポリマーを含む。
【0013】
エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィの少なくとも1種に由来する2種以上のコモノマーが存在する一部の実施形態において、各コモノマーの量は、プロピレン系コポリマーの約5重量%未満であり得るが、プロピレン系コポリマーの重量に対する、コモノマーを合わせた量は、約5重量%以上である。
【0014】
好ましい実施形態において、コモノマーは、プロピレン系コポリマーの重量に対して、好ましくは、約5重量%〜約25重量%、約5重量%〜約20重量%、約5重量%〜約16重量%、約6重量%〜約18重量%の量の、または、一部の実施形態では、約8重量%〜約20重量%の量の、エチレン、1−ヘキセン、または1−オクテンである。
【0015】
一実施形態において、プロピレン系コポリマーは、エチレン由来単位を含む。プロピレン系コポリマーは、プロピレン系コポリマーの重量に対して、約5重量%〜約35重量%、好ましくは約5重量%〜約25重量%、約7.5重量%〜約20重量%、または約10重量%〜約17.5重量%のエチレン由来単位を含み得る。一部の実施形態において、プロピレン系コポリマーは、プロピレンおよびエチレンに由来する単位から本質的になる。すなわち、プロピレン系コポリマーは、重合の間に用いられるエチレンおよび/またはプロピレンの供給流に不純物として通常存在する量では、またはプロピレン系コポリマーの融解熱、融点、結晶化度もしくはメルトフローレートに実質的に影響を及ぼすと思われる量では、他の如何なるコモノマーも含まず、あるいは重合プロセスに意図的に加えられる他の如何なるコモノマーも含まない。
一部の実施形態において、ジエンコモノマー単位が、プロピレン系コポリマーに含められる。ジエンの例には、これらに限らないが、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジビニルベンゼン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、またはこれらの組合せが含まれる。ジエンコモノマーの量は、プロピレン系コポリマーの重量に対して、0重量%以上、または0.5重量%以上、または1重量%以上、または1.5重量%以上で、5重量%以下、または4重量%以下、または3重量%以下、または2重量%以下である。
【0016】
プロピレン系コポリマーは、示差走査熱量測定(「DSC」)によって求めて、約75J/g以下、約70J/g以下、約50J/g以下、または約35J/g以下の融解熱(「Hf」)を有する。プロピレン系コポリマーは、約0.5J/g、約1J/g、または約5J/gの下限Hfを有し得る。例えば、Hfの値は、1.0、1.5、3.0、4.0、6.0、または7.0J/gから、30、35、40、50、60、70、または75J/gまでのどこかであり得る。
プロピレン系コポリマーは、本明細書に記載のDSCの手順に従って求めて、約2%〜約65%、好ましくは約0.5%〜約40%、好ましくは約1%〜約30%、より好ましくは約5%〜約35%のアイソタクチックポリプロピレン結晶化度パーセントを有し得る。最高の秩序のプロピレン(すなわち、100%の結晶化度)に対する熱エネルギーは、189J/gと見積もられる。一部の実施形態において、コポリマーは、約0.25%〜約25%、または約0.5%〜約22%の範囲のアイソタクチックポリプロピレン結晶化度を有する。
【0017】
一部の実施形態において、プロピレン系コポリマーのプロピレン由来単位は、約50%〜約99%、より好ましくは約65%〜約97%、より好ましくは約75%〜約97%のアイソタクチックトリアド分率を有する。別の実施形態において、第1のポリマーは、13C NMRによって測定して、約75%以上、約80%以上、約82%以上、約85%以上、または約90%以上のトリアドタクティシティーを有する。
ポリマーのトリアドタクティシティーは、頭−尾結合からなる鎖の、mおよびr配列の2つの組合せとして表した、一連の3個の隣接プロピレン単位の相対的タクティシティーである。それは、第1のポリマー中の、全プロピレントリアドに対する、特定のタクティシティーの単位の数の比として、通常表わされる。プロピレンコポリマーのトリアドタクティシティー(mm分率)は、プロピレンコポリマーの13C NMRスペクトルから求めることができる。トリアドタクティシティーの計算は、米国特許第5,504,172号に記載されており、この特許の全内容は、参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0018】
プロピレン系コポリマーは、DSCによって求めて、単一ピーク融解転移を有し得る。一実施形態において、コポリマーは、約110℃以上の広い融解転移末端を有する、約90℃以下の主ピーク転移を有する。ピーク「融点」(「Tm」)は、試料の融解範囲内の最大熱吸収の温度として定義される。しかし、コポリマーは、主ピークに隣接して、また/または融解転移末端に、第2の融解ピークを示し得る。本開示の目的にとって、このような第2の融解ピークは、単一の融点として一緒にして考えられており、これらのピークの最大のものが、プロピレン系コポリマーのTmと見なされる。プロピレン系コポリマーは、約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、または約70℃以下のTmを有し得る。一実施形態において、プロピレン系コポリマーは、約25℃〜約100℃、約25℃〜約85℃、約25℃〜約75℃、または約25℃〜約65℃のTmを有する。一部の実施形態では、プロピレン系コポリマーは、約30℃〜約80℃、好ましくは約30℃〜70℃のTmを有する。
【0019】
示差走査熱量測定(「DSC」)データは、Perkin−Elmer DSC 7を用いて得られた。約5mg〜約10mgの試験されるポリマーシートが、約200℃〜230℃でプレスされ、次いで、打ち抜き型と共に除去され、室温で48時間、アニーリングされた。次いで、試料は、アルミニウム試料パン内に密封された。DSCデータは、試料を、最初に、−50℃まで冷却し、次いで、それを、10℃/分の速度で、徐々に200℃まで加熱することによって、記録された。試料は、200℃に5分間、保たれ、その後、2回目の冷却−加熱のサイクルが行われた。1回目および2回目の両方のサイクルの熱事象が記録された。融解曲線の下の面積が測定され、融解熱および結晶化度を求めるために用いられた。結晶化度パーセント(X%)は、式、X%=[曲線の下の面積(ジュール/グラム)/B(ジュール/グラム)]×100を用いて計算されたが、ここで、Bは、主モノマー成分のホモポリマーに対する融解熱である。Bに対するこれらの値は、Polymer Handbook, Fourth Edition, published by John Wiley and Sons, New York,1999から見出した。189J/g(B)の値が、100%結晶ポリプロピレンに対する融解熱として用いられた。溶融温度は、2回目の加熱サイクル(または、2回の融解)の間に測定され、報告された。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、プロピレン系エラストマーは、ASTM D−1646に従って求めて、100未満の、別の実施形態では75未満、別の実施形態では60未満、別の実施形態では30未満のムーニー粘度[ML(1+4)@125℃]を有し得る。
プロピレン系コポリマーは、ASTM D−1505により測定して、室温で、約0.850g/cm3〜約0.920g/cm3、約0.860g/cm3〜約0.900g/cm3、好ましくは約0.860g/cm3〜約0.890g/cm3の密度を有し得る。
【0021】
第1のポリマーは、好ましくは、0.5g/10分を超え、約1,000g/10分以下、または約800g/10分以下、より好ましくは約500g/10分以下、より好ましくは200g/10分以下、より好ましくは約100g/10分以下、より好ましくは約50g/10分以下のメルトフローレート(「MFR」)を有する。特に好ましい実施形態は、約25g/10分以下、例えば、約1〜約25g/10分、より好ましくは約1〜約20g/10分のMFRを有するプロピレン系コポリマーを含む。MFRは、ASTM D−1238、条件L(2.16kg、230℃)に従って求められる。
プロピレン系コポリマーは、約5,000〜約5,000,000g/モル、好ましくは約10,000〜約1,000,000g/モル、より好ましくは約50,000〜約400,000g/モルの重量平均分子量(「Mw」)、約2,500〜約2,500,00g/モル、好ましくは約10,000〜約250,000g/モル、より好ましくは約25,000〜約200,000g/モルの数平均分子量(「Mn」)、および/または、約10,000〜約7,000,000g/モル、好ましくは約80,000〜約700,000g/モル、より好ましくは約100,000〜約500,000g/モルのz−平均分子量(「Mz」)を有し得る。プロピレン系コポリマーは、約1.5〜約20、または約1.5〜約15、好ましくは約1.5〜約5、より好ましくは約1.8〜約5、最も好ましくは約1.8〜約4の分子量分布(「MWD」)を有し得る。
プロピレン系コポリマーは、ASTM D412により測定して、約2000%未満、約1000%未満、または約800%未満の破断点伸びを有し得る。
【0022】
本開示は、プロピレン系コポリマーを調製するための特定の如何なる重合方法によっても限定されない。
【0023】
一般的なプロセス条件は、米国特許第5,001,205号、国際公開公報WO 96/33227およびWO 97/22639、米国特許第4,543,399号、米国特許第4,588,790号、米国特許第5,028,670号、米国特許第5,317,036号、米国特許第5,352,749号、米国特許第5,405,922号、米国特許第5,436,304号、米国特許第5,453,471号、米国特許第5,462,999号、米国特許第5,616,661号、米国特許第5,627,242号、米国特許第5,665,818号、米国特許第5,668,228号、および米国特許第5,677,375号、ならびに、欧州特許公開公報EP−A−0 794 200、EP−A−0 802 202およびEP−B−634 421に見出すことができ、これらの全内容は参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0024】
エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマー
一実施形態において、第1のポリマーは、エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーである。
3−C10アルファ−オレフィンは、好ましくは、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンからの少なくとも1種である。より好ましくは、C3−C10アルファ−オレフィンは、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、および1−オクテンからの少なくとも1種である。最も好ましくは、C3−C10アルファ−オレフィンは、プロピレンである。
【0025】
一部の実施形態において、エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーにおけるエチレン由来単位の量は、エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーが、低い粘度および低い結晶化度を有する限り、特定の如何なる範囲にも限定されない。
本開示のエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンの密度は、ASTM D−792に従って測定して、好ましくは、約0.865g/cm3〜約0.885g/cm3の範囲にある。エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーの融点は、好ましくは65℃未満、より好ましくは60℃未満である。
本開示において開示されている結晶化度のデータは、示差走査熱量測定(「DCS」)によって求められた。試料は、180℃まで加熱され、その温度に3分間保たれ、次いで、10℃/分で、−90℃まで冷却され、次に、10℃/分で、150℃まで加熱された。溶融温度および結晶化度のデータは、2回目の加熱曲線を用い、求められた。本開示によるエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンは、2%〜25%、好ましくは3.5%〜25%、より好ましくは3.5%〜20%、最も好ましくは5%〜20%の範囲の低い結晶化度を有する。
【0026】
ブルックフィールド粘度は、次の手順に従って求められた。Brookfield Laboratories DVII+粘度計が、使い捨てアルミニウム試料チャンバと共に用いられた。用いられたスピンドルは、SC−31ホットメルトスピンドルであった。試料が、チャンバに流し込まれ、次いで、ブルックフィールドサーモセル(Thermosel)に挿入され、ベントニードル−ノーズプライヤー(bent needle−nose plier)により固定された。試料チャンバは、スピンドルが挿入される時にチャンバが位置を変え、回転しないように、底にノッチを有する。試料は、求められる温度に加熱され、溶融した試料が試料チャンバの最上部の下、約1インチになるまで、さらなる試料が追加された。粘度計装置が、下げられ、スピンドルが試料チャンバに沈められた。粘度計のブラケットがサーモセルと整列するまで、下げ続けた。粘度計が起動され、30〜60パーセントの範囲のトルク表示度数になる剪断速度に設定される。表示度数が、約15分間、または表示度数が安定するまで、毎分読み取られ、次いで、最終の表示度数が記録された。エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンは、177℃で、1,000〜35,000、好ましくは2,000〜30,000、より好ましくは3,000〜20,000cPの範囲の低い粘度を有する。
【0027】
エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマー、その調製方法および用いられる触媒は、米国特許第5,064,802号、米国特許第5,132,380号、米国特許第5,703,187号、米国特許第6,034,021号、EP 0 468 651、EP 0 514 828、WO 93/19104、WO 95/00526、米国特許第5,044,438号、米国特許第5,057,475号、米国特許第5,096,867号、および米国特許第5,324,800号に開示されている。
【0028】
一部の実施形態において、第1のポリマーは、プロピレン系コポリマーとエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーとの両方を含み得る。
第1のポリマーの好ましい例は、VISTAMAXX(商標)(ExxonMobil Chemical Company、ヒューストン、テキサス州、米国)、VERSIFY(商標)(The Dow Chemical Company、Midland、ミシガン州、米国)、TAFMER(商標)XM(三井化学(株)、東京、日本)、またはL−MODU(商標)(出光興産(株)、東京、日本)の商用名で市販されている。本開示における使用に適する市販のプロピレン系コポリマーまたはエチレン//C3−C10アルファ−オレフィンの特定のグレードは、当技術分野において一般に知られている方法を用いて容易に決定できる。
【0029】
フィラー
本開示のフィラーは、固体無機フィラーおよび/または固体有機フィラーのいずれであってもよい。用語「フィラー」は、顔料、および、例えば、難燃剤のような添加剤の両方を包含する。本明細書で用いられる場合、用語「固体」は、材料が約40℃までの温度で固体であることを意味する。
代表的な有機フィラーには、セルロース、デンプン、有機顔料(例えば、カラーコンセントレート)、有機UV安定剤、有機熱安定剤、有機難燃剤(例えば、ハロゲン化、例えば臭素を含有する難燃剤)、穀粉、木粉、天然繊維、およびポリエステル系、ポリアミド系材料のようなポリマー繊維、八モリブデン酸アンモニウム、ならびに膨張性化合物のような材料が含まれる。
無機フィラーは、本開示において用いられるのに好ましいフィラーである。無機フィラーの好ましい例は、タルク、グラファイト、炭酸カルシウム、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリコーン、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーまたはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、無機顔料、およびチョークである。これらのフィラーの中で、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ/ガラス、ガラス繊維、アルミナ、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および二酸化チタン、ならびにこれらの混合物が、好ましい。最も好ましい無機フィラーは、タルク、水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維またはこれらの混合物である。耐炎性の用途では、好ましい難燃性フィラーには、水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム(アルミナ三水和物とも呼ばれる)、およびこれらの材料の2種以上の混合物、無定形赤リン、ポリリン酸塩、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、アミンホスフェート、アミノアルキルホスフェート、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化アンチモン、およびホウ酸亜鉛が含まれる。
【0030】
本開示の一部の実施形態において、ポリマー組成物に存在するフィラーの量は、使用されるフィラーの種類および最終用途に応じて、ポリマー組成物の全量に対して、少なくとも約40重量%、少なくとも約42重量%、少なくとも50重量%、少なくとも約52重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約82重量%、または少なくとも約89重量%である。特に、本開示による炭酸カルシウムの最低量は、ポリマー組成物の全量に対して、約40重量%、60重量%、70重量%、75重量%、78重量%、80重量%、81重量%、または82重量%である。本開示によるカーボンブラックの最低量は、ポリマー組成物の全量に対して、約30重量%、40重量%、45重量%、48重量%、50重量%、または51重量%である。本開示による二酸化チタンの最低量は、ポリマー組成物の全量に対して、約40重量%、50重量%、55重量%、58重量%、60重量%、または61重量%である。本開示によるフェライト磁石粉末の最低量は、ポリマー組成物の全量に対して、約40重量%、50重量%、60重量%、65重量%、68重量%、または70重量%である。本開示による三水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムの最低量は、ポリマー組成物の全量に対して、約40重量%、50重量%、55重量%、58重量%、60重量%、または61重量%である。
【0031】
引張強さ、柔軟性、伸び、分散性能などを含めて、バランスの取れた機械的および物理的特性を保ちながら、ポリマー組成物に混入されるフィラーの最大量は、望まれる最終用途により変わり、ポリマー組成物に混入されるフィラーの種類に依存する。特に、本開示による炭酸カルシウムの最大量は、ポリマー組成物の全量に対して、95重量%、92.5重量%、90重量%、88重量%、86重量%、85重量%、または84重量%である。本開示によるカーボンブラックの最大量は、ポリマー組成物の全量に対して、約65重量%、62.5重量%、61重量%、または60重量%である。本開示による二酸化チタンの最大量は、ポリマー組成物の全量に対して、約90重量%、88重量%、85重量%、83重量%、82重量%、81重量%、80重量%、または78重量%である。本開示によるフェライト磁石粉末の最大量は、ポリマー組成物の全量に対して、約95重量%、94重量%、93重量%、92重量%、91重量%、90重量%、または89重量%である。本開示による三水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムの最大量は、ポリマー組成物の全量に対して、約90重量%、88重量%、85重量%、83重量%、82重量%、81重量%、80重量%、または78重量%である。
【0032】
ある用途では、2種以上のフィラーの使用が好ましい。有用なフィラーブレンドの例には、カーボンブラック、フェライト磁石粉末、炭酸カルシウム、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーまたはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、およびチョークの任意の組合せ(例えば、音の障壁のための硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、導電性床材のためのカーボンブラックおよび炭酸カルシウムおよび/またはタルク、磁性ストリップ/シートのための磁石粉末および炭酸カルシウムおよび/またはタルク)が含まれる。ポリマー組成物に存在するフィラーブレンドの量は、使用されるフィラーの種類および最終用途に応じて、ポリマー組成物の全量に対して、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約41重量%、少なくとも約42重量%、少なくとも50重量%、少なくとも約52重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約82重量%、および少なくとも約89重量%である。ポリマー組成物に存在するフィラーブレンドの量は、使用されるフィラーの種類および最終用途に応じて、ポリマー組成物の全量に対して、約95重量%未満、約90重量%未満、約85重量%未満、約80重量%未満、約75重量%未満、または約60重量%未満である。
【0033】
特に、カーボンブラックが、炭酸カルシウム、フェライト磁石粉末、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、ガラス繊維、天然繊維、ポリマー繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーまたはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイトおよび顔料からの1種または複数と混合される場合、ポリマー組成物の全重量に対する2種以上のフィラーの最低全含有量は、51重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、または90重量%であり、ポリマー組成物の全重量に対するフィラーの最大全含有量は、99重量%、95重量%、90重量%、86重量%、81重量%、76重量%、71重量%、66重量%、61重量%、56重量%、または51重量%であるが、但し、最低の全量は、最大の全量以下とする。フェライト磁石粉末が、炭酸カルシウム、カーボンブラック、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、ガラス繊維、天然繊維、ポリマー繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーまたはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイトおよび顔料からの1種または複数と混合される場合、ポリマー組成物の全重量に対する2種以上のフィラーの最低全含有量は、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%であり、ポリマー組成物の全重量に対するフィラーの最大全含有量は、99重量%、95重量%、90重量%、81重量%、71重量%、61重量%、51重量%、41重量%、31重量%、または21重量%であるが、但し、最低の全量は最大の全量以下とする。炭酸カルシウムが、フェライト磁石粉末、カーボンブラック、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、ガラス繊維、天然繊維、ポリマー繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーまたはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイトおよび顔料からの1種または複数と混合される場合、ポリマー組成物の全重量に対する2種以上のフィラーの最低全含有量は、81重量%、82重量%、83重量%、85重量%、88重量%、90重量%、93重量%、または95重量%であり、ポリマー組成物の全重量に対するフィラーの最大全含有量は、99重量%、95重量%、90重量%、89重量%、86重量%、84重量%、83重量%、または82重量%であるが、但し、最低の全量は、最大の全量以下であるとする。
【0034】
架橋パック
一部の実施形態において、本開示のポリマー組成物は、架橋剤および架橋助剤を含む架橋パックを、さらに含んでいてもよい。如何なる理論にも限定しようとは思わないが、架橋剤の添加は、プラスチックとゴム相の間に架橋を生成でき、これが、本開示の新規架橋ポリマー組成物の物理的特性を向上させると考えられる。適切な架橋剤は、アルキルおよびアラルキルペルオキシドの両方を含めて、有機過酸化物である。例には、これらに限定されないが、ジクミルペルオキシド(「DCP」)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、2,2’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブチルバレレート、t−ブチル−ペルベンゾエート、t−ブチルペルテレフタレート、t−ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウリルペルオキシド、およびtert−ブチルペルアセテートが含まれる。また、ジアリールペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルオキシケタール、およびこれらの混合物も使用され得る。有機過酸化物の量は、第1のポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上、または0.5重量部以上、または0.8重量部以上であり、5重量部以下、または4重量部以下、または3重量部以下である。
【0035】
架橋助剤の添加は、架橋の有効性を向上させ得る。適切な架橋助剤には、ジ−およびトリ−アリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、液体および金属多官能アクリレートおよびメタクリレート、亜鉛系ジメタクリレートおよびジアクリレート、ならびに官能化ポリブタジエン樹脂が含まれる。有機過酸化物の量は、第1のポリマーの100重量部に対して、0.1重量部以上、0.5重量部以上、または1重量部以上であり、10重量部以下、8重量部以下、または5重量部以下である。
【0036】
第2のポリマー
別の実施形態において、本開示は、(i)ブレンド組成物の2重量%超〜40重量%以下の量の本開示のポリマー組成物と、(ii)ブレンド組成物の全重量に対して、60重量%以上〜98重量%未満の量で存在する第2のポリマーとを含み、第2のポリマーが、DSCで求めて、110℃以上の融点(「Tm」)を有するポリプロピレンを含む、熱可塑性ブレンド組成物に関する。
第2のポリマーは、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマーの少なくとも1種であり得る。さらなるポリマーがプロピレンコポリマーを含む実施形態において、プロピレンコポリマーは、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、またはランダムコポリマーであり得る。
熱可塑性ブレンド組成物に一緒にされる第2のポリマーの量は、熱可塑性ブレンド組成物の重量に対して、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下または85重量%以下であり、58重量%以上、60重量%以上、65重量%以上または70重量%以上である。
【0037】
第2のポリマーは、110℃以上、115℃以上、または130℃以上の融点(「Tm」)、および、DSCによって求めて、少なくとも60J/g、または少なくとも70J/g、または少なくとも80J/gの融解熱を有するポリプロピレンを含む。
第2のポリマーに存在するプロピレン由来単位の量は、第2のポリマーの全重量に対して、少なくとも約90重量%、少なくとも約92重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または約100重量%であり得る。
【0038】
一部の実施形態において、第2のポリマーは、プロピレンと、エチレンおよびC4−C12アルファ−オレフィンの少なくとも1種から選択される少なくとも1種のコモノマーとのランダムコポリマーを含む。特定の態様において、コモノマーの量は、第2のポリマーの全重量に対して、約9重量%、約8重量%または約6重量%の上限、および約2重量%の下限を有する。
【0039】
一実施形態において、第2のポリマーは、エチレン、アルファ−オレフィン、およびジエンのコポリマーを含む。コポリマー中のエチレン由来単位の量は、50mol%以上であり得る。一実施形態において、コポリマーは、エチレン−ヘキセンコポリマーである。別の実施形態において、コポリマーは、EPDMとして知られる、エチレン、プロピレンおよびジエンのコポリマーである。この実施形態の特定の態様において、コポリマーにおけるプロピレン由来単位の量は、40mol%以上である。
【0040】
他の添加剤
当業者には明白であるように、本開示のポリマー組成物は、前記の第1のポリマーおよびフィラー以外に、他の添加剤を含み得る。様々な添加剤が、特定の特性を向上させるために存在してもよいし、個々の成分の加工の結果として存在してもよい。混入され得る添加剤には、これらに限らないが、プロセスオイル、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、加硫または硬化剤、加硫または硬化促進剤、硬化遅延剤、加工助剤、粘着付与樹脂、流動性向上剤、シランカップリング剤などが含まれる。粘着防止剤、着色剤、滑剤、離型剤、成核剤、補強剤、および他のフィラー(粒状、繊維状、または粉末状のものを含めて)も使用し得る。成核剤は、物品の剛性を向上させ得る。本明細書に記載の列挙は、本開示で用いられ得る他の添加剤の全ての種類について網羅しようとするものではない。当業者には、他の添加剤を、ポリマー組成物の特性を向上させるために使用し得ることがわかるであろう。当業者によって理解されるように、本開示のポリマー組成物は、ブレンドの特性を所望に応じて調節するために、変更し得る。
【0041】
本明細書に記載のポリマー組成物は、第1のポリマーの100部当たり、0〜500重量部、2〜200重量部、5〜150重量部、または10〜100重量部の範囲のプロセスオイルを含み得る。適度の量のプロセスオイルの添加は、ブレンドの粘度および柔軟性を低下させ、同時に、0℃近くおよび0℃未満の温度でのブレンドの特性を向上させ得る。これらの予想される利点は、ブレンドのガラス転移温度(「Tg」)の低下によって生じると考えられる。ブレンドへのプロセスオイルの添加は、また、加工性を向上させ、弾性および引張強さのより良好なバランスをもたらし得る。プロセスオイルは一般に、ゴム用途におけるエキステンダー油として知られている。プロセスオイルには、(a)痕跡量のヘテロ原子、例えば酸素、または(b)少なくとも1種のヘテロ原子、例えば、ジオクチルフタレート(plithalate)、エーテル、およびポリエーテルのいずれかを有する炭化水素が含まれる。プロセスオイルは、200℃で実質的に不揮発性である沸点を有する。これらのプロセスオイルは、ニートな固体、液体、または、さらさらした粉末を形成するために不活性担体(例えば、クレー、シリカ)上に物理的に吸収されたこれらの材料の混合物のいずれかとして、一般に入手可能である。通常、プロセスオイルは、線状、非環状であるが分岐状、環状、および芳香族の炭素構造から成り得る多数の化合物の混合物を含む。プロセスオイルの別の種類は、10,000未満の分子量(「Mn」)を有する、特定の有機エステルおよびアルキルエーテルエステルである。プロセスオイルの組合せもまた、本開示の実施において使用され得る。プロセスオイルは、溶融状態におけるポリマーブレンド組成物と相溶または混和しているべきであり、室温で、プロピレン系エラストマーに、実質的に混和性であり得る。プロセスオイルは、プロセスオイルの全てまたは一部を、ポリマーの回収の前に添加すること、および、プロセスオイルの全てまたは一部を、プロピレン系エラストマーの相互ブレンド(interblending)のための配合の一部として、ポリマーに添加することを含めて、当技術分野において知られている通常の手段のいずれかによって、ブレンド組成物に添加され得る。配合ステップは、バッチミキサー(例えば、ミル)、または密閉式(internal)ミキサー(例えば、バンバリーミキサー)において実施され得る。配合の作業は、また、連続プロセスで、例えば、2軸押出機において実施されてもよい。アイソタクチックポリプロピレンとエチレンプロピレンジエンゴムのブレンドのガラス転移温度を下げるためにプロセスオイルを添加することが、米国特許第5,290,886号、および米国特許第5,397,832号に記載されており、これによって、これらの開示は、参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書に記載のポリマー組成物への加工助剤(例えば、鉱物フィラーに結び付けられた脂肪酸エステルまたは脂肪酸カルシウム石鹸の混合物)の添加は、ポリマー組成物の混合、およびモールドへのポリマー組成物の射出を助け得る。加工助剤の他の例は、低分子量ポリエチレンコポリマーワックスおよびパラフィンワックスである。用いられる加工助剤の量は、ポリマー組成物の全重量に対して、0.5〜5重量部の範囲内にあり得る。
【0043】
本明細書に記載のポリマー組成物への酸化防止剤の添加は、長期老化を改善し得る。酸化防止剤の例には、これらに限らないが、キノリン(quinolein)、例えば、トリメチルヒドロキシキノリン(trimethylhydroxyquinolein)(TMQ);イミダゾール、例えば、亜鉛メルカプトトルイルイミダゾール(ZMTI);および、通常の酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール、ラクトン、およびホスファイトが含まれる。用いられる酸化防止剤の量は、ポリマー組成物の全重量に対して、0.001〜5重量部の範囲内にあり得る。
【0044】
製造方法
本開示によるポリマー組成物は、任意の都合の良い方法によって、例えば、第1のポリマー、フィラー(複数可)、ならびに任意選択で架橋パックおよび他の添加剤をドライブレンドし、次に、最終物品を製造するために使用される押出機で直接、または別の押出機(例えば、バンバリーミキサー)で予め溶融混合することによるかのいずれかで、熱可塑性成分の溶融温度を超える温度で溶融混合することによって配合し得る。ポリマー組成物のドライブレンド物は、また、予備溶融混合物なしに、直接、射出成形できる。剪断および混合を生じることができる機械の例には、混練機か、または混合エレメント(1つもしくは複数の混合用先端部もしくはフライトを有する)かを有する押出機、1つまたは複数のスクリューを有する押出機、同方向または逆方向回転型の押出機、バンバリーミキサー、ファレル(Farrell)連続ミキサー、およびバス(Buss)混練機が含まれる。必要とされる混合のタイプおよび強さ、温度、および滞留時間は、混練または混合エレメント、スクリューデザイン、およびスクリュー速度(<3000rpm)の選択と組み合わせた、上の機械の1つの選択によって実現できる。通常、溶融混合の温度は、60℃〜130℃であり、滞留時間は10〜20分である。
【0045】
ブレンドは、添加剤を含んでいてもよく、添加剤は、ポリマー組成物に、他の成分と同時に、または押出機もしくはバス混練機を用いる場合には下流において後で、または時間的に後でのみ、導入し得る。添加剤は、ブレンドに、純粋な形態でまたはマスターバッチで添加できる。プロセスオイルまたは可塑剤は、1回の添加で、または複数回の添加で、添加され得る。好ましくは、可塑剤は、ポリマー成分および任意選択の1種または複数の第2のポリマーが十分に溶融状態に混合された後で、添加される。代わりに、第1のポリマー、および架橋パック(存在する場合)が、フィラーの混入の前に、ブレンドされてもよい。ブレンドは、物理的ブレンド、または、当業者に知られている反応器内プロセスによって製造される反応器内ブレンドのいずれであってもよい。ポリマー組成物は、物品を製造するために、当技術分野において知られている適切な如何なる手段によっても加工できる。例えば、ポリマー組成物は、フィルムまたはシートに、または知られている方法(例えば、カレンダー加工、キャスティング、または共押出)によって、多層構造の1つまたは複数の層に、加工できる。射出成形、圧縮成形、押出またはブロー成形によるパーツもまた、本開示のポリマー組成物から製造できる。通常、成形温度は、溶融混合のそれより高く、好ましくは、60〜130℃であり、滞留時間は、好ましくは、3〜42分である。代わりに、ポリマー組成物は、物品、例えば、ワイヤおよびケーブル、磁性ストリップ、パイプおよび管、ガスケット、成形物品、カーペット裏張り材、容器および床材を製造するために、異形押出法によって加工されてもよい。押出物は、また、粉砕されても、短く切断されても、粒状化されても、ペレット化されてもよい。
【0046】
本開示のポリマー組成物は、また、マスターバッチの調製においても有用である。例えば、ポリマーへの顔料またはカラーコンセントレートの添加は、多くの場合、マスターバッチの使用を通じてである。本例では、第1のポリマーは、マスターバッチを生成するために、フィラー/顔料またはコンセントレートにより高度に充填される。次いで、マスターバッチは、着色されようとする第2のポリマーに添加される。本開示の組成物は、通常の組成物より多くの顔料または着色剤を含むことができる。
【0047】
用途
本開示は、前記ポリマー組成物または熱可塑性ブレンド組成物を用いて生成される、屋根用材料、ワイヤおよびケーブルの絶縁材またはジャケット、磁性ストリップ、カーペット裏張り材、容器、フィルム、シート、フィラメントまたは消音材料を包含する。それらの製造方法は、当技術分野において一般に知られており、例えば、米国特許第4,241,123号に見出すことができる。非限定的具体例は、下で例示される。
【0048】
本開示のさらなる実施形態
他のいくつかの実施形態もまた、以下の通り、本開示に含まれる。
第1の態様において、本開示は、
A)第1のポリマーと、
B)1種または複数のフィラーと、
C)架橋パックと
を含むポリマー組成物であって、
第1のポリマーが、
i)プロピレン系コポリマーの全重量に対して、(a)少なくとも約60重量%のプロピレン由来単位、(b)約5重量%〜約35重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位、および任意選択で(c)約0〜5重量%のジエン由来単位を含むプロピレン系コポリマーであって、DSCによって求めて、約75J/g以下の融解熱、DSCによって求めて、約100℃以下の融点、およびDSCによって求めて、約2%〜約65%のアイソタクチックポリプロピレン結晶化度、ならびに230℃、5kg荷重で測定して、0.5〜1,000g/10分のメルトフローレートを有する上記ポリプロピレン系コポリマーと、
(ii)DSCによって求めて、2%〜25%の全結晶化度、および177℃で測定して、500〜35,000cPのブルックフィールド粘度を有するエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーと
のうちの少なくとも1種を含み、
1種または複数のフィラーが、カーボンブラック、フェライト磁石粉末、炭酸カルシウム、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、天然繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカまたはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタン酸塩、クレー、ナノクレー、有機変性クレーもしくはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイト、または顔料のうちの少なくとも1種を含み、
架橋パックが、プロピレン系コポリマーの100重量部に対して、0.1〜5重量部の量の架橋剤および0.1〜10重量部の量の架橋助剤を含み、架橋剤が有機過酸化物を含み、架橋助剤が、ジ−およびトリ−アリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、液体および金属多官能アクリレートおよびメタクリレート、亜鉛系ジメタクリレートおよびジアクリレート、ならびに官能化ポリブタジエン樹脂のうちの少なくとも1種を含む、
ポリマー組成物を提供する。
【0049】
第2の態様において、第1の態様によるポリマー組成物は、プロピレン系コポリマーが、プロピレン系コポリマーの重量に対して、(a)少なくとも約75重量%〜95重量%のプロピレン由来単位、(b)約5重量%〜25重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンからの少なくとも1種に由来する単位、および任意選択で(c)約0〜4重量%のジエン由来単位を含み、ポリプロピレン系コポリマーが、13C NMRによって求めて、約50%〜約99%のトリアドタクティシティー、および230℃、2.16kg荷重で測定して、約800g/10分以下のメルトフローレートを有することを特徴とする。
【0050】
第3の態様において、第1または第2の態様によるポリマー組成物は、プロピレン系コポリマーが、プロピレン系コポリマーの重量に対して、(a)少なくとも約82.5重量%〜92.5重量%のプロピレン由来単位、(b)約7.5重量%〜17.5重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位、および任意選択で(c)約0〜3重量%のジエン由来単位を含み、プロピレン系コポリマーが、13C NMRによって求めて、約65%〜約95%のトリアドタクティシティー、および230℃、2.16kg荷重で測定して、約25g/10分以下のメルトフローレートを有することを特徴とする。
【0051】
第4の態様において、第1から第3の態様のいずれかによるポリマー組成物は、1種または複数のフィラーが、
i)ポリマー組成物の全重量に対して、50重量%超〜60重量%以下の量のカーボンブラック、または
ii)ポリマー組成物の全重量に対して、40重量%超〜90重量%以下の量のフェライト磁石粉末、または
iii)ポリマー組成物の全重量に対して、60重量%超〜84重量%以下の量の炭酸カルシウム、または
iv)ポリマー組成物の全重量に対して、60重量%超〜85重量%以下の量の、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、二酸化チタン
を含むことを特徴とする。
【0052】
第5の態様において、第1から第4の態様のいずれかによるポリマー組成物は、有機過酸化物が、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、2,2’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブチルバレレート、t−ブチル−ペルベンゾエート、t−ブチルペルテレフタレート、t−ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、ラウリルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、ジアリールペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、およびペルオキシケタールのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0053】
第6の態様において、第1から第5の態様のいずれかによるポリマー組成物は、架橋剤が、プロピレン系コポリマーの100重量部に対して、0.5〜4重量部の量で存在し、また、架橋助剤が、第1のポリマーの100重量部に対して、0.5〜8重量部の量で存在することを特徴とする。
第7の態様において、第1から第6の態様のいずれかによるポリマー組成物は、架橋剤が、プロピレン系コポリマーの100重量部に対して、0.8〜3重量部の量で存在し、また、架橋助剤が、第1のポリマーの100重量部に対して、1〜5重量部の量で存在することを特徴とする。
第8の態様において、本開示は、第1のポリマー、1種または複数のフィラーを、架橋パックと、60〜130℃、40〜100rpmで10〜20分間混合するステップと、150〜200℃で3〜40分間成形するステップとを含む、第1から第7の態様のいずれかによるポリマー組成物の製造方法を提供する。
第9の態様において、第8の態様による方法は、混合ステップが、マルチ−パス(multi−pass)混合ステップであることを特徴とする。
実施例を参照することによって、本開示を以下により詳細に説明する。実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0054】
材料および方法
Vistamaxx(商標)6102(ExxonMobil Chemical Companyから市販されているプロピレン系コポリマー)を、第1のポリマー(第1のポリマーA)として実施例で用いた。
Vistamaxx(商標)6202(ExxonMobil Chemical Companyから市販されているプロピレン系コポリマー)を、別の第1のポリマー(第1のポリマーB)として実施例で用いた。
Exact(商標)5061(ExxonMobil Chemical Companyから市販されているエチレン系コポリマー)を、「第1のポリマー」(第1のポリマーC)として比較例2で用いた。
【0055】
ホモポリプロピレンは、hPP4712E1としてExxonMobil Chemical Companyから市販されていた。
ポリエチレンは、LLDPE 6201RQとしてExxonMobil Chemical Companyから市販されていた。
ポリプロピレンは、PPF180としてSunoco Inc.から市販されていた。
CaCO3は、4.0μmの平均粒径を有するHubercarb M4としてHuber Companyから市販されていた。
TiO2は、0.29μmの平均粒径を有するTi−Pure(登録商標)R−101としてDupont Companyから市販されていた。
【0056】
カーボンブラックは、19nmの平均粒径を有するVULCAN(登録商標)9A32としてCabot Corporationから市販されていた。
Mg(OH)2は、0.7μmの平均粒径を有するZerogen 50SPとしてJ. M. Huber Corporationから市販されていた。
バリウムフェライトは、400メッシュの平均粒径を有するEXPDとしてSigma Aldrich Companyから市販されていた。
【0057】
アルミナ三水和物(「ATH」)は、1.6μm〜1.9μmの平均数を有するMartinal 107 LEOとしてAlbemarle Corporationから市販されていた。
CPE7130(磁性粉末高充填性を有する塩素化ポリエチレン)は、Weifang Yaxing Chemical Co., Ltd.から市販されていた。
KH550(NH2CH2CH2CH2Si(OC253の化学構造を有するシランカップリング剤)は、Nanjin Lipai Chemical Co., Ltd.から市販されていた。
本開示において架橋パックとして用いた、トリ−アリルシアヌレート(「TAC」)およびジクミルペルオキシド(「DCP」)は、Aldrich companyから市販されていた。
フィラーとして用いた酸化亜鉛、プロセスオイルとして用いた流動パラフィンワックス(liquid paraffinic wax)は、どちらも、Sinopharm Chemical Reagent Co. Ltd.から市販されていた。
【0058】
実施例において用いた試験方法のいくつかを、次に示す。
【表1】
【0059】
最大フィラー充填試験
次に手順に従って、個々のフィラーに対する最大フィラー充填量を求めた。
A)第1のポリマーAを、0.08リットルのブラベンダーミキサーにおいて、75%の充填率、180℃のチャンバ温度で溶融した。次いで、約50重量%のフィラーを添加し、測定トルクが安定するまで、100rpmで混合した。生成物を、コンパウンド−1と呼んだ。コンパウンド−1を、180℃で圧縮成形してプラックを製造した。
B)A)と同じプロセスに従い、コンパウンド−1のプラックを、0.08リットルのブラベンダーミキサーにおいて、75%の充填率、180℃のチャンバ温度で溶融した。次いで、約5重量%の同じフィラーを添加し、測定トルクが安定するまで、100rpmで混合した。生成物を、コンパウンド−2と呼んだ。コンパウンド−2を、180℃で圧縮成形してプラックを製造した。
C)B)と同じプロセスにより、益々多くのフィラーを充填するように、コンパウンドを製造し、終には、いくらかのフィラー粉末がコンパウンドに付着することを認めた。この場合に、フィラーが過充填されたと結論し、その前のフィラー充填レベルを、最大フィラー充填レベルと見なした。最大フィラー充填試験の結果は、表1に示す。
【0060】
【表2】
比較例1および実施例1〜3
比較例1および実施例1〜3を、Haake Inc.(米国)により市販されているHaake−Rheocord 90(以後、「ハーケミキサー」)により、表2に示す成分を配合することによって調製した。ハーケミキサーによる配合は、110℃、80rpmで、10〜15分間行った。次いで、コンパウンドを、190℃で4分間、熱成形して、シート試料(ほぼ1mmおよび2mm)を作製した。
シート試料を、試料が、ひび割れるかどうかを観察しながら、20℃で、半径1/2インチの棒に巻き付けた(曲げ試験)。硬度、引張強さおよび伸びを測定した。試験結果は表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
表3に示されるように、本開示によるポリマー組成物は、塩素化ポリエチレン(これが、業界により主に使用されている)よりも、柔軟性、伸びおよび硬度(これらは、磁性ストリップ用途では極めて重要である)の間のバランスのよく取れた物理的特性を実現した。
【0063】
比較例2および実施例4〜7
比較例2および実施例4〜7を、ハーケミキサーにより、表4による成分を配合することによって調製した。過酸化物を含まない系では、ハーケミキサーによる配合は、110℃、80rpmで、10〜15分間実施した。次いで、コンパウンドを、190℃で4分間、熱成形して、シート試料(ほぼ1mmおよび2mm)を作製した。過酸化物系では、ハーケミキサーによる配合は、80℃、50rpmで、10〜15分間実施した。次いで、コンパウンドを、160℃で30分間、熱成形して、シート試料(ほぼ1mmおよび2mm)を作製した。試験結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
表5に示されるように、本開示によるポリマー組成物は、塩素化ポリエチレン(これが、業界により主に使用されている)よりも、柔軟性、伸びおよび硬度、難燃性および抵抗率(これらは、ワイヤおよびケーブル用途では極めて重要である)の間のバランスのよく取れた物理的特性を実現した。
【0066】
比較例3〜6および実施例8〜9
CaCO3−ポリエチレン、CaCO3−ポリプロピレン、または、CaCO3−第1のポリマーBのマスターバッチを、それぞれ、表6に示すマスターバッチ組成物の配合に従って調製した。調製したCaCO3−ポリエチレン、CaCO3−ポリプロピレン、またはCaCO3−第1のポリマーBのマスターバッチの2重量パーセントを、53mmの3葉(3−lobe)2軸押出装置(15−バレルおよび46.7のL/Dを有する)を用い、ホモポリプロピレン(hPP4712E1)にブレンドし、180〜200℃の間の温度で押し出して、キャストフィルムを形成した。
【0067】
ブレンドでの典型的な加工条件は次の通りであった。
・処理速度:37.5kg/時〜40kg/時、
・押出機RPM:350rpm、
・ダイ:4孔(直径125インチ)、6枚刃カッター、
・最大バレル温度設定値:170℃、
・ダイ温度設定値:220℃〜265℃、
・ダイ溶融温度:通常、200℃〜210℃、
・原材料供給流:100%のポリマー(複数可)を供給口から、50%〜65%のCaCO3を供給口から、35%〜50%のCaCO3をバレル#8でサイドフィード、および
・ダイでの最大圧力:10.3MPa〜13.8MPa。
【0068】
押出での典型的加工条件は、次の通りであった。
・冷却ロール温度:35℃、
・冷却ロール速度:2.7メートル/分、
・引張力(tension force):2.7nm、
・巻取力:5.5nm、
・ゾーン1:190℃、
・ゾーン2:200℃、
・ゾーン3〜5:210℃、
・溶融温度:平均で215℃、
・スクリュー速度:30rpm、
・バレル圧力:平均で7.8〜8.9MPa、および
・フィルム厚さ:50ミクロン。
製造したフィルムの特性を試験し、試験結果を表7に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
さらに、フィルム外観格付け(film appearance rating、FAR)を、光学制御システム(optical control system、「OCS」)機器で試験した。フィラーの分散を、平均粒径および標準偏差によって測定した。表8は、比較例3〜6および実施例8〜9において分散させたフィラーの平均粒径および標準偏差の統計的結果を示す。
【0071】
【表9】
【0072】
表8に示されるように、本開示によるブレンド組成物に混入されたフィラーの平均粒径および標準偏差は、ポリエチレンまたはポリプロピレン系マスターバッチより小さく、したがって、ポリエチレンまたはポリプロピレン系マスターバッチに匹敵する、またはより良好な分散を有していた。
【0073】
本明細書に記載された全ての文献は、如何なる優先権書類および/または試験手順も含めて、参照によって本明細書に組み込まれる。上述の一般的説明および具体的実施形態から明らかであるように、本発明の形態が例示され、説明されたが、様々な変更形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、可能である。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. A)第1のポリマーと、
B)1種または複数のフィラーと
を含むポリマー組成物であって、
前記ポリマー組成物はC)架橋パックを含んでもよく、
前記第1のポリマーが、
i)プロピレン系コポリマーの全重量に対して、(a)少なくとも約60重量%のプロピレン由来単位、および(b)約5重量%〜約35重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位を含むプロピレン系コポリマーであって、前記プロピレン系コポリマーは(c)約0〜5重量%のジエン由来単位を含んでもよく、DSCによって求めて、約75J/g以下の融解熱、DSCによって求めて、約100℃以下の融点、およびDSCによって求めて、アイソタクチックポリプロピレン約2%〜約65%の結晶化度、ならびに230℃、2.16kg荷重で測定して、0.5〜1,000g/10分のメルトフローレートを有する上記ポリプロピレン系コポリマーと、
(ii)DSCによって求めて、2%〜25%の全結晶化度、および177℃で測定して、500〜35,000cPのブルックフィールド粘度を有するエチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーと
のうちの少なくとも1種を含み、
前記の1種または複数のフィラーが、
i)前記ポリマー組成物の全重量に対して、50重量%超〜65重量%以下の量のカーボンブラック、または
ii)前記ポリマー組成物の全重量に対して、90重量%以下の量のフェライト磁石粉末、または
iii)前記ポリマー組成物の全重量に対して、81重量%超〜85重量%以下の量の炭酸カルシウム、または
iv)前記ポリマー組成物の全重量に対して、40重量%超〜80重量%以下の量の、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、タルク、二酸化チタン、天然繊維、ポリマー繊維、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、クレー、長石、シリカもしくはガラス、フュームドシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、チタネート、クレー、ナノクレー、有機変性クレーもしくはナノクレー、ガラスマイクロスフィア、マイカ、ウォラストナイト、チョーク、グラファイト、顔料、またはこれらの任意の組合せ
を含み、
前記架橋パックが、前記第1のポリマーの100重量部に対して、0.1〜5重量部の量の架橋剤および0.05〜10重量部の量の架橋助剤を含み、前記架橋剤が有機過酸化物を含み、前記架橋助剤が、ジ−およびトリ−アリルシアヌレートおよびイソシアヌレート、液体および金属多官能アクリレートおよびメタクリレート、亜鉛系ジメタクリレートおよびジアクリレート、ならびに官能化ポリブタジエン樹脂のうちの少なくとも1種を含む、
ポリマー組成物。
2. 前記第1のポリマーがプロピレン系コポリマーである、上記1に記載のポリマー組成物。
3. 前記プロピレン系コポリマーが、前記プロピレン系コポリマーの重量に対して、(a)少なくとも約75重量%〜95重量%のプロピレン由来単位、および(b)約5重量%〜25重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位を含み、(c)約0〜4重量%のジエン由来単位を含んでもよく、前記ポリプロピレン系コポリマーが、13C NMRによって求めて、約50%〜約99%のトリアドタクティシティーおよび230℃、2.16kg荷重で測定して、約800g/10分以下のメルトフローレートを有する、上記2に記載のポリマー組成物。
4. 前記プロピレン系コポリマーが、前記プロピレン系コポリマーの重量に対して、(a)少なくとも約82.5重量%〜92.5重量%のプロピレン由来単位、および(b)約7.5重量%〜17.5重量%の、エチレンまたはC4−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種に由来する単位を含み、(c)約0〜3重量%のジエン由来単位を含んでもよく、前記プロピレン系コポリマーが、13C NMRによって求めて、約65%〜約95%のトリアドタクティシティーおよび230℃、2.16kg荷重で測定して、約25g/10分以下のメルトフローレートを有する、上記1から3のいずれかに記載のポリマー組成物。
5. 前記第1のポリマーが、エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーである、上記1に記載のポリマー組成物。
6. 前記エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーが、エチレンとC3−C10アルファ−オレフィンの少なくとも1種とのコポリマーであり、DSCによって求めて、5〜20%の全結晶化度および177℃で測定して、3,000〜20,000cPのブルックフィールド粘度を有する、上記1または5に記載のポリマー組成物。
7. 前記エチレン/C3−C10アルファ−オレフィンコポリマーが、エチレンと、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンのうちの少なくとも1種とのコポリマーである、上記1、5または6に記載のポリマー組成物。
8. 前記第1のポリマーが、プロピレンとエチレンとのコポリマーである、上記1から7のいずれかに記載のポリマー組成物。
9. 前記の1種または複数のフィラーが、
i)ポリマー組成物の全重量に対して、50重量%超〜60重量%以下の量のカーボンブラック、または
ii)ポリマー組成物の全重量に対して、40重量%超〜90重量%以下の量のフェライト磁石粉末、または
iii)ポリマー組成物の全重量に対して、82重量%超〜84重量%以下の量の炭酸カルシウム、または
iv)ポリマー組成物の全重量に対して、60重量%超〜78重量%以下の量の、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、二酸化チタン
を含む、上記1から8のいずれかに記載のポリマー組成物。
10. 第1のポリマーを1種または複数のフィラーと、60〜130℃、40〜100rpmで10〜20分間混合するステップであって、前記フィラーとともに架橋パックを混合してもよいステップと、150〜200℃で3〜40分間成形するステップとを含む、上記1から9のいずれかに記載のポリマー組成物の製造方法。
11. 混合ステップが、マルチ−パス混合ステップである、上記10に記載の方法。
12. ブレンド組成物の2重量%超〜40重量%以下の量の、上記1から9のいずれかに記載のポリマー組成物と、
ブレンド組成物の全重量に対して、60重量%以上〜98重量%未満の量で存在する第2のポリマーと
を含み、
前記第2のポリマーが、DSCによって求めて、110℃以上の融点を有するポリプロピレンを含む、熱可塑性ブレンド組成物。
13. 前記第2のポリマーがポリプロピレンホモポリマーである、上記12に記載の熱可塑性ブレンド組成物。
14. 前記ポリマー組成物を、前記ブレンド組成物の全重量に対して30重量%超〜40重量%以下の量で含み、前記第2のポリマーを、前記ブレンド組成物の全重量に対して60重量%以上〜70重量%未満の量で含む、上記12または13に記載の熱可塑性ブレンド組成物。
15. 上記1から9のいずれかに記載のポリマー組成物、または上記12から14のいずれかに記載の熱可塑性ブレンド組成物を含む、屋根用材料、ワイヤおよびケーブルの絶縁材もしくはジャケット、磁性ストリップ、カーペット裏張り材、容器、フィルム、シート、フィラメントまたは消音材料。