特許第5667712号(P5667712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667712光情報記録再生装置用対物光学系、及び光情報記録再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667712
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】光情報記録再生装置用対物光学系、及び光情報記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/135 20120101AFI20150122BHJP
【FI】
   G11B7/135 A
【請求項の数】22
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2014-76886(P2014-76886)
(22)【出願日】2014年4月3日
(62)【分割の表示】特願2010-254596(P2010-254596)の分割
【原出願日】2010年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-139861(P2014-139861A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2009-265072(P2009-265072)
(32)【優先日】2009年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】是枝 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 修一
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5520197(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/12 − 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録密度の異なる第一、第二、第三の光ディスクの各々に対して、所定の光源から射出された第一、第二、第三の波長を持つ略平行光束を使うことにより、各光ディスクに対する情報の記録又は再生を行う光情報記録再生装置に搭載される光情報記録再生装置用対物光学系において、
前記第一の波長をλ1(単位:nm)と定義し、前記第二の波長をλ2(単位:nm)と定義し、前記第三の波長をλ3(単位:nm)と定義した場合に、
λ1<λ2<λ3
であり、
前記第一の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第一の光ディスクの保護層をt1(単位:mm)と定義し、前記第二の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第二の光ディスクの保護層をt2(単位:mm)と定義し、前記第三の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第三の光ディスクの保護層をt3(単位:mm)と定義した場合に、
t1<t2<t3
t3−t1≧1.0
であり、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA1と定義し、前記第二の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA2と定義し、前記第三の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA3と定義した場合に、
NA1>NA2>NA3
であり、
前記対物光学系中の少なくとも一面に、次の数式
φik(h)=(Pik2×h2+Pik4×h4+Pik6×h6+Pik8×h8+Pik10×h10+Pik12×h12)mikλ
(但し、h(単位:mm)は、光軸からの高さを、Pik2、Pik4、Pik6・・・はそれぞれ、第kの領域の第iの光路差関数(k、iは何れも自然数)における二次、四次、六次の光路差関数係数を、mikは、入射光束の回折次数が最大となる第kの領域の第iの光路差関数における回折次数を、λ(単位:nm)は、前記入射光束の使用波長を、それぞれ示す。)
の形に光路差関数を展開した場合に規定される回折構造を持つ回折面を有し、
前記回折面は、
前記第一、第二、第三の波長の光束をそれぞれ前記第一、第二、第三の光ディスクの記録面上に収束させる第一の領域を有し、該第一の領域は、第一の光路差関数で規定される回折構造と、第二の光路差関数で規定される回折構造を少なくとも有し、該第一の光路差関数で規定される回折構造において、該第一、第二、第三の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数が共に1次であり、該第一の波長の光束に対する前記対物光学系の焦点距離をf1(単位:mm)と定義し、該第一の領域の第一の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD11(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
−0.15<f1/fD11<−0.03
但し、fD11=−1/(2×P112×m11×λ)
を満たし、かつ、前記第二の光路差関数で規定される回折構造において、前記第一、第二、第三の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数がそれぞれ、2次、1次、1次であり、
前記第一の領域の外側に、前記第一、第二の波長の光束をそれぞれ前記第一、第二の光ディスクの記録面上に収束させると共に、前記第三の波長の光束の収束には寄与しない第二の領域を有し、該第二の領域は、少なくとも一種類の前記光路差関数で規定される回折構造を有し、該第一、第二の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数が共に1次であり、
前記第二の領域の外側に、前記第一の波長の光束を前記第一の光ディスクの記録面上に収束させると共に、前記第二、第三の波長の光束の収束には寄与しない第三の領域を有し、該第三の領域は、少なくとも一種類の前記光路差関数で規定される回折構造を有する、
光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項2】
前記回折面は、前記第二の領域の最大有効半径をh2(単位:mm)と定義し、前記第三の領域の最大有効半径をh3(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
−0.05<(φ13(h3)−φ13(h2))/(m13×f1)<−0.005
を満たす、
請求項1に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項3】
前記回折面は、前記第一の領域の第二の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD21(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
0≦f1/fD21<0.15
但し、fD21=−1/(2×P212×m21×λ)
を満たす、
請求項1又は請求項2に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項4】
前記回折面は、次の条件
−0.10<f1/fD11<−0.05
を満たす、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項5】
前記回折面は、次の条件
0≦f1/fD21<0.01
を満たす、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項6】
前記回折面は、前記第三の領域の第一の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD13(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
−0.150<f1/fD13<−0.015
但し、fD13=−1/(2×P132×m13×λ)
を満たす、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項7】
前記回折面は、次の条件
−0.03<(φ13(h3)−φ13(h2))/(m13×f1)<−0.01
を満たす、
請求項2を引用する請求項3から請求項6の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項8】
前記回折面は、前記第二の領域において、第一の光路差関数で規定される回折構造と、第二の光路差関数で規定される回折構造を少なくとも有し、前記第一の領域の最大有効半径をh1(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
−0.05<(φ22(h2)−φ22(h1))/f1<0.03
を満たす、
請求項2を引用する請求項3から請求項の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項9】
前記回折面は、前記第二の領域において、第一の光路差関数で規定される回折構造と、第二の光路差関数で規定される回折構造を少なくとも有し、前記第一の領域の最大有効半径をh1(単位:mm)と定義し、該第二の領域の第二の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD22(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
−0.03<(φ22(h2)−φ22(h1))/f1<0
0≦f1/fD22<0.08
但し、fD22=−1/(2×P222×m22×λ)
を満たす、
請求項2を引用する請求項3から請求項の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項10】
前記対物光学系は、対物レンズと、前記回折面を少なくとも一面に持つ光学素子を有する、
請求項1から請求項の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項11】
前記対物光学系は、前記回折面を少なくとも一面に持つ対物レンズを有する、
請求項1から請求項の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項12】
記録密度の異なる第一、第二、第三の光ディスクの各々に対して、所定の光源から射出された第一、第二、第三の波長を持つ略平行光束を使うことにより、各光ディスクに対する情報の記録又は再生を行う光情報記録再生装置に搭載される光情報記録再生装置用対物光学系において、
前記第一の波長をλ1(単位:nm)と定義し、前記第二の波長をλ2(単位:nm)と定義し、前記第三の波長をλ3(単位:nm)と定義した場合に、
λ1<λ2<λ3
であり、
前記第一の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第一の光ディスクの保護層をt1(単位:mm)と定義し、前記第二の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第二の光ディスクの保護層をt2(単位:mm)と定義し、前記第三の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第三の光ディスクの保護層をt3(単位:mm)と定義した場合に、
t1<t2<t3
t3−t1≧1.0
であり、
前記第一の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA1と定義し、前記第二の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA2と定義し、前記第三の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA3と定義した場合に、
NA1>NA2>NA3
であり、
前記対物光学系中の少なくとも一面に、同心状に複数に分割された屈折面で構成された位相シフト構造を有する位相シフト面を有し、
前記位相シフト面は、
前記第一、第二、第三の波長の光束をそれぞれ前記第一、第二、第三の光ディスクの記録面上に収束させる第一の領域を有し、該第一の領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して異なる光路長差を付与する第一の段差を持つ位相シフト構造と、第二の段差を持つ位相シフト構造を少なくとも有し、該第一の段差は、第kの領域の第iの段差で付与される光路長差をΔOPDik(単位:nm)と定義し、第kの領域の第iの段差の段差数をNikと定義し、該第一の波長の光束に対する前記対物光学系の焦点距離をf1(単位:mm)と定義した場合に、次の条件
INT|(ΔOPD11/λ1)+0.5|=1
0.60×102<N11×f1<2.50×102
を満たし、かつ、前記第二の段差は、次の条件
INT|(ΔOPD21/λ1)+0.5|=2
を満たし、
前記第一の領域の外側に、前記第一、第二の波長の光束をそれぞれ前記第一、第二の光ディスクの記録面上に収束させると共に、前記第三の波長の光束の収束には寄与しない第二の領域を有し、該第二の領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して少なくとも一種類の光路長差を付与する段差を持つ位相シフト構造を有し、次の条件
INT|(ΔOPD12/λ1)+0.5|=1
を満たし、
前記第二の領域の外側に、前記第一の波長の光束を前記第一の光ディスクの記録面上に収束させると共に、前記第二、第三の波長の光束の収束には寄与しない第三の領域を有し、該第三の領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して少なくとも一種類の光路長差を付与する段差を持つ位相シフト構造を有する、
光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項13】
前記位相シフト面は、次の条件
0.80×102<N13×f1<3.50×102
を満たす、
請求項12に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項14】
前記位相シフト面は、次の条件
0.04×102≦N21×f1<1.50×102
を満たす、
請求項12又は請求項13に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項15】
前記位相シフト面は、次の条件
1.20×102<N11×f1<2.20×102
を満たす、
請求項12から請求項14の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項16】
前記位相シフト面は、次の条件
0.04×102≦N21×f1<1.00×102
を満たす、
請求項12から請求項15の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項17】
前記位相シフト面は、次の条件
1.50×102<N13×f1<3.00×102
を満たす、
請求項12から請求項16の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項18】
前記位相シフト面は、前記第二の領域において、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して異なる光路長差を付与する第一の段差を持つ位相シフト構造と、第二の段差を持つ位相シフト構造を少なくとも有し、次の条件
0.25×102<N22×INT|(ΔOPD22/λ1)+0.5|×f1<1.00×102
を満たす、
請求項12から請求項17の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項19】
前記対物光学系は、対物レンズと、前記位相シフト面を少なくとも一面に持つ光学素子を有する、
請求項12から請求項18の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項20】
前記対物光学系は、前記位相シフト面を少なくとも一面に持つ対物レンズを有する、
請求項12から請求項19の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項21】
前記対物光学系は、対物レンズを有し、
前記対物レンズのd線のアッベ数をνdと定義した場合に、次の条件
35≦νd≦80
を満たす、
請求項1から請求項20の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系。
【請求項22】
記録密度の異なる第一、第二、第三の各光ディスクに対する情報の記録又は再生を行う光情報記録再生装置において、
第一、第二、第三の波長の光束を射出する光源と、
前記光源からの各波長の射出光束を略平行光束に変換するカップリングレンズと、
請求項1から請求項21の何れか一項に記載の光情報記録再生装置用対物光学系と、
を有し、
前記第一の波長(単位:nm)の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第一の光ディスクの保護層をt1(単位:mm)と定義し、前記第二の波長(単位:nm)の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第二の光ディスクの保護層をt2(単位:mm)と定義し、前記第三の波長(単位:nm)の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる前記第三の光ディスクの保護層をt3(単位:mm)と定義した場合に、
0.05<t1<0.12
t2≒0.6
t3≒1.2
であり、
前記対物光学系は、
前記第一の波長の光束に対する焦点距離、結像倍率をそれぞれf1(単位:mm)、M1と定義し、前記第二の波長の光束に対する焦点距離、結像倍率をそれぞれf2(単位:mm)、M2と定義し、前記第三の波長の光束に対する焦点距離、結像倍率をそれぞれf3(単位:mm)、M3と定義した場合に、次の条件
-0.02<f1×M1<0.02
-0.02<f2×M2<0.02
-0.02<f3×M3<0.02
を満たし、かつ、対物レンズを有し、
前記対物レンズの前記第一、第三の波長に対する屈折率をそれぞれn1、n3と定義した場合に、次の条件
0.4<(λ1/(n3-1))/(λ3/(n1-1))<0.6
を満たす、
光情報記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、規格の異なる複数種類の光ディスクに対する情報の記録又は再生を行うのに適した構成の光情報記録再生装置用対物光学系、及び該対物光学系を搭載した光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc)等の記録密度や保護層厚等の規格の異なる複数種類の光ディスクが存在するため、光情報記録再生装置に搭載された対物光学系には、各光ディスクに対する互換性が要求される。ここで、互換性は、使用する光ディスクを切り替えたときに部品交換等をすることなく情報の記録又は再生が保証されることである。
【0003】
対物光学系が規格の異なる複数種類の光ディスクに対して互換性を持つためには、ディスク保護層の厚さの差により生じる相対的な球面収差を補正すると同時に、情報の記録又は再生に使用する対物光学系の開口数(NA)を変化させて記録密度の違いに対応したビームスポットを得る必要がある。光情報記録再生装置は、光ディスクの記録密度毎に、異なる波長のレーザー光を使用するように構成されている。光情報記録再生装置は、例えばCDの記録又は再生を行う場合、約790nmの波長の光(いわゆる近赤外レーザー光)を、DVDの記録又は再生を行う場合、約660nmの波長の光(いわゆる赤色レーザー光)を、BDの記録又は再生を行う場合、約405nmの波長の光(いわゆる青色レーザー光)を、それぞれ使用する。特許文献1又は2には、三種類の規格の光ディスクに対して互換性を持つ光情報記録再生装置の具体的構成例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−164498号公報
【特許文献2】国際公開第2008/007552号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光情報記録再生装置は、近赤外レーザー光使用時における回折効率を改善するため、青色レーザー光使用時において回折効率が最大となる次数が偶数次である回折構造が設けられた対物光学系を有する。しかし、近赤外レーザー光使用時における球面収差の補正のため、近赤外レーザー光を対物光学系に発散光として入射させる必要がある。そのため、対物光学系がトラッキング動作によって光軸と直交する方向に微小量移動(いわゆるトラッキングシフト)した時に、コマ収差等の軸外収差の発生が避けられない。
【0006】
特許文献2に記載の光情報記録再生装置は、対物光学素子に、青色、赤色レーザー光を平行光で入射させ、近赤外レーザー光を平行光又は発散光で入射させるように構成されている。特許文献2では、対物光学素子の中央領域で生じた二種類の回折次数光の集光位置を適切に設定することにより、フレア光による信号の劣化を低減するよう試みている。しかし、二種類の回折次数光の集光位置が近いため、フレア光対策として不十分であるという問題が指摘される。また、青色レーザー光専用の領域である対物光学素子の最周辺領域が屈折面であるため、例えば、レーザー光の波長変化や温度が変化した際に生じる球面収差のコントロールができない。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、BD、DVD、CD等の規格の異なる複数種類の光ディスクに対する情報の記録又は再生を行うのに好適に構成された光情報記録再生装置用対物光学系、及び該対物光学系を搭載した光情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る光情報記録再生装置用対物光学系は、記録密度の異なる第一、第二、第三の光ディスクの各々に対して、所定の光源から射出された第一、第二、第三の波長を持つ略平行光束を使うことにより、各光ディスクに対する情報の記録又は再生を行う光情報記録再生装置に搭載される光学系である。なお、第一の波長をλ1(単位:nm)と定義し、第二の波長をλ2(単位:nm)と定義し、第三の波長をλ3(単位:nm)と定義した場合に、
λ1<λ2<λ3
が満たされる。第一の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる第一の光ディスクの保護層をt1(単位:mm)と定義し、第二の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる第二の光ディスクの保護層をt2(単位:mm)と定義し、第三の波長の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる第三の光ディスクの保護層をt3(単位:mm)と定義した場合に、
t1<t2<t3
t3−t1≧1.0
が満たされる。第一の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA1と定義し、第二の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA2と定義し、第三の光ディスクに対する情報の記録又は再生に必要な開口数をNA3と定義した場合に、
NA1>NA2>NA3
が満たされる。
【0009】
本発明に係る光情報記録再生装置用対物光学系は、少なくとも一面に、次の数式
φik(h)=(Pik2×h2+Pik4×h4+Pik6×h6+Pik8×h8+Pik10×h10+Pik12×h12)mikλ
(但し、h(単位:mm)は、光軸からの高さを、Pik2、Pik4、Pik6・・・はそれぞれ、第kの領域の第iの光路差関数(k、iは何れも自然数)における二次、四次、六次の光路差関数係数を、mikは、入射光束の回折次数が最大となる第kの領域の第iの光路差関数における回折次数を、λ(単位:nm)は、入射光束の使用波長を、それぞれ示す。)の形に光路差関数を展開した場合に規定される回折構造を持つ回折面を有する。
【0010】
回折面は、第一、第二、第三の波長の光束をそれぞれ第一、第二、第三の光ディスクの記録面上に収束させる第一の領域を有する。第一の領域は、第一の光路差関数で規定される回折構造と、第二の光路差関数で規定される回折構造を少なくとも有する。第一の領域は、第一の光路差関数で規定される回折構造において、第一、第二、第三の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数が共に1次であり、第一の波長の光束に対する対物光学系の焦点距離をf1(単位:mm)と定義し、該第一の領域の第一の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD11(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(1)
−0.15<f1/fD11<−0.03・・・(1)
但し、fD11=−1/(2×P112×m11×λ)
を満たし、かつ、第二の光路差関数で規定される回折構造において、第一、第二、第三の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数がそれぞれ、2次、1次、1次であるように設計されている。
【0011】
条件(1)を満たすことにより、第三の光ディスク使用時の作動距離を確保しつつ第一の光ディスク使用時の色収差を良好に補正することができる。条件(1)の上限を上回る場合、第三の光ディスク使用時の作動距離を確保できる代償として、特に第一の光ディスク使用時の色収差が過大となる。条件(1)の下限を下回る場合には、第一の光ディスク使用時に発生する色収差量が抑えられるが、その代償として、第三の光ディスク使用時の作動距離を確保するのが難しくなると共に、第一の領域を透過後に生じる第三の波長の光束の不要回折次数光が、第三の光ディスクの記録面近傍に集光し、スポット性能の劣化が懸念される。
【0012】
更に、回折面は、第一の領域の外側に、第一、第二の波長の光束をそれぞれ第一、第二の光ディスクの記録面上に収束させると共に、第三の波長の光束の収束には寄与しない第二の領域を有する。第二の領域は、少なくとも一種類の光路差関数で規定される回折構造を有する。この回折構造は、第一、第二の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数が共に1次であるように設計されている。
【0013】
更に、回折面は、第二の領域の外側に、第一の波長の光束を第一の光ディスクの記録面上に収束させると共に、第二、第三の波長の光束の収束には寄与しない第三の領域を有する。第三の領域は、少なくとも一種類の光路差関数で規定される回折構造を有する。
【0014】
この回折構造は、第二の領域の最大有効半径をh2(単位:mm)と定義し、第三の領域の最大有効半径をh3(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(2)
−0.05<(φ13(h3)−φ13(h2))/(m13×f1)<−0.005・・・(2)
を満たす構成であってもよい。
【0015】
条件(2)を満たすことにより、第一の光ディスク使用時の環境変化時に生じる球面収差を良好に補正しつつ、第三の領域を透過した第二、第三の波長の光束の不要回折次数光が第一の領域を透過した第二、第三の波長の光束の結像位置近傍に収束するのを避けられるため、スポット性能の劣化を抑えることができる。条件(2)の下限を下回る場合、波長変化時の球面収差が過剰補正になると共に、段差数の増加によって製造が難しくなるという問題が生じる。条件(2)の上限を上回る場合は、第三の領域を透過した第二、第三の波長の光束の不要回折次数光が、それぞれ第二、第三の光ディスクの波長の光束の結像位置の近傍に収束し、スポット性能が大きく劣化する。
【0016】
回折面は、全ての光ディスク使用時の色収差を良好に補正するため、第一の領域の第二の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD21(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(3)
0≦f1/fD21<0.15・・・(3)
但し、fD21=−1/(2×P212×m21×λ)
を満たす構成としてもよい。
【0017】
条件(3)の上限を上回る場合、全ての光ディスク使用時の色収差が共に補正不足となる。条件(3)の下限を下回る場合には、全ての光ディスク使用時の色収差が共に過剰補正となる。
【0018】
回折面は、第三の光ディスク使用時の作動距離を十分に確保しつつ、特に第一の光ディスク使用時の色収差をより一層良好に補正するため、次の条件(4)
−0.10<f1/fD11<−0.05・・・(4)
を満たす構成としてもよい。
【0019】
回折面は、全ての光ディスク使用時の色収差をより一層良好に補正するため、次の条件(5)
0≦f1/fD21<0.01・・・(5)
を満たす構成としてもよい。
【0020】
回折面は、第三の領域を透過した第二、第三の波長の光束が第二、第三の光ディスクの記録面上近傍で集光しないようにするため、第三の領域の第一の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD13(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(6)
−0.150<f1/fD13<−0.015・・・(6)
但し、fD13=−1/(2×P132×m13×λ)
を満たす構成としてもよい。
【0021】
条件(6)を満たさない場合、第三の領域を透過した第二、第三の波長の回折効率が高い不要回折次数光がそれぞれ、第一の領域を透過した第二、第三の波長の光束の結像位置近傍に集光して、第二、第三の光ディスクの記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。
【0022】
回折面は、第三の領域において、温度変化等に伴う球面収差の変動をより一層適切にコントロールすると共に第二、第三の波長の光束の不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けるため、次の条件(7)
−0.03<(φ13(h3)−φ13(h2))/(m13×f1)<−0.01・・・(7)
を満たす構成としてもよい。
【0023】
回折面は、回折次数が小さいほど波長変化時の回折効率の変化が小さいことから、好ましくは、第三の領域において、第一の波長の光束で回折効率が最大となる回折次数が1次であるように設計される。
【0024】
回折面は、第二の領域において、温度変化等に伴う第一、第二の光ディスク使用時の球面収差の変動をより一層適切にコントロールするため、第一の光路差関数で規定される回折構造と、第二の光路差関数で規定される回折構造を少なくとも有する構成としてもよい。かかる回折面は、第一の領域の最大有効半径をh1(単位:mm)と定義し、該第二の領域の第二の光路差関数で規定される回折構造が有する焦点距離をfD22(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(8)又は条件(9)及び(10)
−0.05<(φ22(h2)−φ22(h1))/f1<0.03・・・(8)
−0.03<(φ22(h2)−φ22(h1))/f1<0・・・(9)
0≦f1/fD22<0.08・・・(10)
但し、fD22=−1/(2×P222×m22×λ)
を満たす構成としてもよい。
【0025】
条件(8)の上限を上回る場合、第二の領域を透過した第三の波長の強い不要回折次数光が、第一の領域を透過した第三の波長の光束の結像位置近傍に集光して、第三の光ディスクの記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。条件(8)の下限を下回る場合、特に第二の光ディスク使用時における温度変化に対する球面収差が過剰補正となり、望ましくない。条件(8)が満たされる場合は、このような不要回折次数光によるスポット性能の劣化が避けられると共に、第二の光ディスク使用時の温度変化に対する球面収差が良好に補正される。
【0026】
条件(9)の上限を上回る場合、特に第二の光ディスク使用時における温度変化に対する球面収差が補正不足となり望ましくない。条件(9)の下限を下回ると、第二の領域を透過した第三の波長の強い不要回折次数光が、第一の領域を透過した第三の波長の光束の結像位置近傍に集光して、第三の光ディスクの記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。
【0027】
条件(10)を満たさない場合、第二の領域を透過した第三の波長の強い不要回折次数光が、第一の領域を透過した第三の波長の光束の結像位置近傍に集光して、第三の光ディスクの記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。条件(9)、(10)が同時に満たされる場合、第二の領域を透過した第三の波長の強い回折次数光が、第一の領域を透過した第三の波長の光束の結像位置から離れた位置に集光するため、スポット性能の劣化が避けられる。
【0028】
別の側面によれば、上記の課題を解決する本発明の一形態に係る光情報記録再生装置用対物光学系は、少なくとも一面に、同心状に複数に分割された屈折面で構成された位相シフト構造を有する位相シフト面を有する。
【0029】
位相シフト面は、第一、第二、第三の波長の光束をそれぞれ第一、第二、第三の光ディスクの記録面上に収束させる第一の領域を有する。第一の領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して異なる光路長差を付与する第一の段差を持つ位相シフト構造と、第二の段差を持つ位相シフト構造を少なくとも有する。位相シフト面は、第kの領域の第iの段差で付与される光路長差をΔOPDik(単位:nm)と定義し、第kの領域の第iの段差の段差数をNikと定義し、該第一の波長の光束に対する対物光学系の焦点距離をf1(単位:mm)と定義した場合に、第一の領域の第一の段差が、次の条件(11)、(12)
INT|(ΔOPD11/λ1)+0.5|=1・・・(11)
0.60×102<N11×f1<2.50×102・・・(12)
を満たし、かつ、第二の段差が、次の条件(13)
INT|(ΔOPD21/λ1)+0.5|=2・・・(13)
を満たすように構成される。
【0030】
条件(11)及び(13)を満たす第一の領域において、第一の段差が条件(12)を満たすことにより、全ての使用波長において高い回折効率が得られると共に、第三の光ディスク使用時における作動距離の確保と第一の光ディスク使用時の色収差の良好な補正が達成される。条件(12)の上限を上回る場合、第三の光ディスク使用時の作動距離を確保できる代償として、特に第一の光ディスク使用時の色収差が大きくなる。条件(12)の下限を下回る場合は、特に第一の光ディスク使用時に発生する色収差量が抑えられるが、第三の光ディスク使用時の作動距離を確保するのが難しくなると共に、第一の領域を透過した第三の波長の光束の不要回折次数光が第三の光ディスクの記録面上近傍に集光し、スポットの性能が大きく劣化する。
【0031】
位相シフト面は、第一の領域の外側に、第一、第二の波長の光束をそれぞれ第一、第二の光ディスクの記録面上に収束させると共に、第三の波長の光束を収束に寄与させず、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して少なくとも一種類の光路長差を付与する段差を持つ位相シフト構造を有し、次の条件(14)
INT|(ΔOPD12/λ1)+0.5|=1・・・(14)
を満たすように構成される。
【0032】
位相シフト面は、第二の領域の外側に、第一の波長の光束を第一の光ディスクの記録面上に収束させると共に、第二、第三の波長の光束の収束には寄与しない第三の領域を有する。第三の領域は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して少なくとも一種類の光路長差を付与する段差を持つ位相シフト構造を有する。
【0033】
位相シフト面は、次の条件(16)
0.80×102<N13×f1<3.50×102・・・(16)
を満たす構成としてもよい。
【0034】
条件(16)の上限を上回る場合、第一の光ディスク使用時において環境変化による球面収差が過剰補正となり、好ましくない。条件(16)の下限を下回る場合には、第一の光ディスク使用時において環境変化による球面収差が補正不足となると同時に、第三の領域を透過した第二、第三の波長の光束がそれぞれ、第一の領域を透過した第二、第三の波長の光束の結像位置近傍に集光して、第二、第三の光ディスクの記録面上に形成されるスポット形状に悪影響を及ぼすため望ましくない。
【0035】
位相シフト面は、全ての光ディスク使用時の色収差を良好に補正するため、第一の領域の第二の段差が次の条件(17)
0.04×102≦N21×f1<1.50×102・・・(17)
を満たす構成としてもよい。
【0036】
条件(17)の上限を上回る場合、全ての光ディスク使用時の色収差が共に過剰補正となる。条件(17)の下限を下回る場合には、第一、第三の光ディスク使用時の色収差が共に補正不足となる。
【0037】
位相シフト面は、第三の光ディスク使用時の作動距離を十分に確保しつつ第一の光ディスク使用時の色収差をより一層良好に補正するため、第一の領域の第一の段差が次の条件(18)
1.20×102<N11×f1<2.20×102・・・(18)
を満たす構成としてもよい。
【0038】
位相シフト面は、全ての光ディスク使用時の色収差をより一層良好に補正するため、第一の領域の第二の段差が次の条件(19)
0.04×102≦N21×f1<1.00×102・・・(19)
を満たす構成としてもよい。
【0039】
位相シフト面は、第三の領域において、温度変化等に伴う球面収差の変動をより一層適切にコントロールすると共に、第二、第三の波長の光束の不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けるため、次の条件(20)
1.50×102<N13×f1<3.00×102・・・(20)
を満たす構成としてもよい。
【0040】
位相シフト面は、第三の領域において、波長変化時の回折効率の変化を小さく抑えるため、次の条件(21)
INT|(ΔOPD13/λ1)+0.5|=1・・・(21)
を満たす構成としてもよい。
【0041】
位相シフト面は、第二の領域において、第三の波長の光束の不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けるため、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して異なる光路長差を付与する第一の段差を持つ位相シフト構造と、第二の段差を持つ位相シフト構造を少なくとも有し、次の条件(22)
0.25×102<N22×INT|(ΔOPD22/λ1)+0.5|×f1<1.00×102・・・(22)
を満たす構成としてもよい。
【0042】
条件(22)を満たさない場合、第二の領域を透過した第三の波長の強い不要回折次数光が、第一の領域を透過した第三の波長の光束の結像位置近傍に集光して、第三の光ディスクの記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。
【0043】
ここで、本発明に係る光情報記録再生装置用対物光学系は、回折面又は位相シフト面を少なくとも一面に持つ対物レンズ単体の構成に限らず、回折面又は位相シフト面を少なくとも一面に持つ光学素子を更に有する構成としてもよい。
【0044】
本発明に係る光情報記録再生装置用対物光学系を構成する対物レンズは、第一の光ディスク使用時の色収差の補正をより好適に実現するため、d線のアッベ数をνdと定義した場合に、次の条件(23)
35≦νd≦80・・・(23)
を満たす構成としてもよい。
【0045】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る光情報記録再生装置は、第一、第二、第三の波長の光束を射出する光源と、該光源からの各波長の射出光束を略平行光束に変換するカップリングレンズと、上記の何れかに記載の光情報記録再生装置用対物光学系を有する。なお、第一の波長(単位:nm)の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる第一の光ディスクの保護層をt1(単位:mm)と定義し、第二の波長(単位:nm)の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる第二の光ディスクの保護層をt2(単位:mm)と定義し、第三の波長(単位:nm)の光束を用いて情報の記録又は再生が行われる第三の光ディスクの保護層をt3(単位:mm)と定義した場合に、
0.05<t1<0.12
t2≒0.6
t3≒1.2
が満たされる。また、対物光学系は、第一の波長の光束に対する焦点距離、結像倍率をそれぞれf1(単位:mm)、M1と定義し、第二の波長の光束に対する焦点距離、結像倍率をそれぞれf2(単位:mm)、M2と定義し、第三の波長の光束に対する焦点距離、結像倍率をそれぞれf3(単位:mm)、M3と定義した場合に、次の条件(24)〜(26)
-0.02<f1×M1<0.02・・・(24)
-0.02<f2×M2<0.02・・・(25)
-0.02<f3×M3<0.02・・・(26)
を満たす。そして、対物光学系は、対物レンズを有しており、全ての使用波長においてより一層高い回折効率が得られるように、該対物レンズの第一、第三の波長に対する屈折率をそれぞれn1、n3と定義した場合に、次の条件(27)
0.4<(λ1/(n3-1))/(λ3/(n1-1))<0.6・・・(27)
を満たすように構成される。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、何れの規格の光ディスク使用時にも球面収差を良好に補正すると同時に不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けることができ、かつ、作動距離を十分に確保することも可能な、光情報記録再生装置用対物光学系、及び該対物光学系を搭載した光情報記録再生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態の光情報記録再生装置の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施形態の対物レンズの構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の実施形態において、各規格の光ディスクを使用する際の対物レンズの側断面を示す図である。
図4】本発明の実施例1において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図5】本発明の実施例1において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図6】本発明の比較例において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図7】本発明の比較例において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図8】本発明の実施例2において、各規格の光ディスクを使用する際の対物レンズの側断面を示す図である。
図9】本発明の実施例2において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図10】本発明の実施例2において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図11】本発明の実施例3において、各規格の光ディスクを使用する際の対物レンズの側断面を示す図である。
図12】本発明の実施例3において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図13】本発明の実施例3において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図14】本発明の実施例4の光情報記録再生装置の構成を概略的に示す図である。
図15】本発明の実施例4の光情報記録再生装置内における、各波長のレーザー光束の光路を展開して示す図である。
図16】本発明の実施例4において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図17】本発明の実施例4において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図18】本発明の実施例5の光情報記録再生装置の構成を概略的に示す図である。
図19】本発明の実施例5の光情報記録再生装置内における、各波長のレーザー光束の光路を展開して示す図である。
図20】本発明の実施例5において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
図21】本発明の実施例5において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態の光情報記録再生装置について説明する。本実施形態の光情報記録再生装置は、保護層厚や記録密度等の仕様が異なる三種類の光ディスクに対して互換性を有している。なお、本明細書において、光情報記録再生装置と記した場合には、「情報の記録専用装置」、「情報の再生専用装置」、「情報の記録及び再生兼用装置」の全てを含む。
【0049】
以下においては、説明の便宜上、上記三種類の光ディスクのうち、例えばBD等の高記録密度の光ディスクを光ディスクD1と記し、BDよりも記録密度の低いDVD等の光ディスクを光ディスクD2と記し、DVDよりも記録密度の低いCD等の光ディスクを光ディスクD3と記す。
【0050】
光ディスクD1〜D3の保護層厚をそれぞれt1(単位:mm)、t2(単位:mm)、t3(単位:mm)と定義すると、次の関係が成立する。
t1<t2<t3
t3−t1≧1.0
0.05<t1<0.12
t2≒0.6
t3≒1.2
【0051】
光ディスクD1〜D3の各々に対して情報の記録又は再生を行う場合、記録密度の違いに対応したビームスポットが得られるように、必要とされる開口数(NA)の値を変化させる必要がある。ここで、光ディスクD1〜D3の各々に対する情報の記録時又は再生時に必要とされる最適な設計開口数を、それぞれNA1、NA2、NA3と定義すると、次の関係が成立する。
NA1>NA2>NA3
すなわち、記録密度が最も高い光ディスクD1使用時には、光ディスクD2又はD3使用時よりも小径なスポットの形成が要求されるため、必要なNAが最も高い。これに対して、記録密度が最も低い光ディスクD3使用時には、光ディスクD1又はD2使用時よりも大径なスポットの形成が要求されるため、必要なNAが最も低い。
【0052】
さらに、記録密度の異なる光ディスクD1〜D3を使用する場合、各記録密度に対応したビームスポットが得られるように、光情報記録再生装置内において、それぞれ異なる波長のレーザー光が使用される。具体的には、光ディスクD1使用時には、最も小径のビームスポットを光ディスクD1の記録面上に形成するため、波長λ1(単位:nm)のレーザー光を光源から射出する。光ディスクD2使用時には、光ディスクD1使用時よりも径の大きいビームスポットを光ディスクD2の記録面上に形成するため、波長λ1より長い波長λ2(単位:nm)のレーザー光を光源から射出する。光ディスクD3使用時には、光ディスクD2使用時よりも径の大きいビームスポットを光ディスクD3の記録面上に形成するため、波長λ2より長い波長λ3(単位:nm)のレーザー光を光源から射出する。すなわち、各使用波長には、次の関係が成立する。
λ1<λ2<λ3
【0053】
図1は、本実施形態の光情報記録再生装置100の構成を概略的に示す図である。光情報記録再生装置100は、波長λ1のレーザー光束を射出する光源1A、波長λ2のレーザー光束を射出する光源1B、波長λ3のレーザー光束を射出する光源1C、回折格子2A〜2C、カップリングレンズ3A〜3C、ビームスプリッタ41、42、ハーフミラー5A〜5C、受光部6A〜6C、対物レンズ10を有している。なお、図1中、一点鎖線は、光情報記録再生装置100の基準軸AXである。また、実線、破線、点線で示される光束はそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3のレーザー光束を示す。対物レンズ10の光軸は、通常、基準軸AXと一致する。但し、対物レンズ10は、図示省略された周知のトラッキング機構による光ディスクに対する半径方向の移動によって、光軸が基準軸AXから外れる状態も起こり得る。
【0054】
光情報記録再生装置100では、前述の通り、各光ディスク使用時に必要とされる対物レンズのNAが各々異なる。そのため、光情報記録再生装置100は、波長λ1〜λ3のレーザー光束それぞれの光束径を規定する開口制限素子(不図示)を有した構成としてもよい。
【0055】
光ディスクD1〜D3使用時にはそれぞれ、波長λ1〜λ3のレーザー光束が光源1A〜1Cから射出される。波長λ1〜λ3のレーザー光束はそれぞれ、回折格子2A〜2Cを透過後、ハーフミラー5A〜5Cによって光路が折り曲げられて、カップリングレンズ3A〜3Cに入射する。カップリングレンズ3A〜3Cはそれぞれ、入射した波長λ1〜λ3のレーザー光束を平行光束に変換する。波長λ1又はλ2の平行光束は、ビームスプリッタ41、42を介して対物レンズ10に入射する。波長λ3の平行光束は、ビームスプリッタ42を介して対物レンズ10に入射する。対物レンズ10は、入射した波長λ1〜λ3の平行光束をそれぞれ、光ディスクD1〜D3の記録面近傍に収束させる。収束した各レーザー光束は、光ディスクD1〜D3の記録面上にスポットを形成する。光ディスクD1〜D3の記録面で反射したレーザー光束はそれぞれ、入射時と同一の光路を戻り、ハーフミラー5A〜5Cを透過して受光部6A〜6Cにより検出される。受光部6A〜6Cは、検出信号を図示省略された周知の信号処理回路に出力する。信号処理回路は、受光部6A〜6Cの各出力を基に、フォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号、光ディスクに記録された情報の再生信号等を検出する。
【0056】
上記の通り、各カップリングレンズ3A〜3Cから射出されるレーザー光束は、何れも平行光束である。具体的には、カップリングレンズ3A〜3Cと対物レンズ10とがなす光学系の波長λ1〜λ3に対する結像倍率をそれぞれ、M1、M2、M3と定義し、対物レンズ10の波長λ1〜λ3に対する焦点距離をf1(単位:mm)、f2(単位:mm)、f3(単位:mm)と定義した場合に、
次の条件(24)〜(26)
-0.02<f1×M1<0.02・・・(24)
-0.02<f2×M2<0.02・・・(25)
-0.02<f3×M3<0.02・・・(26)
が満たされる。つまり、各カップリングレンズ3A〜3Cは、コリメートレンズとして機能する。このように、対物レンズ10に平行光束を入射させる構成を採用することにより、対物レンズ10がトラッキングシフトした場合であっても、コマ収差等の軸外収差が発生しない。
【0057】
ところで、各光ディスクD1〜D3使用時にそれぞれ異なる波長のレーザー光束を用いる場合、対物レンズ10の屈折率又は保護層厚の相違に起因して、相対的な球面収差が発生する。各光ディスクD1〜D3に対する互換性を光情報記録再生装置100に持たせるためには、これらの球面収差も良好に補正すると同時に、フレア光(主に不要回折次数光)によるスポットへの悪影響を抑える必要がある。また、保護層の厚い光ディスクD3使用時に作動距離を確保することも必要である。本実施形態においては、これらの必要性に応えるべく、対物レンズ10を次のように構成している。
【0058】
図2(a)は、対物レンズ10の正面図を、図2(b)は、対物レンズ10の側断面図を、それぞれ示す。図3(a)〜(c)はそれぞれ、光ディスクD1〜D3使用時の対物レンズ10の側断面図を示す。対物レンズ10は、前述の通り、規格の異なる複数種類の光ディスクD1〜D3に対して互換性を有する光情報記録再生装置100の光ヘッドに適用され、光源である半導体レーザーから射出されたレーザー光束を各光ディスクの記録面に収束させる機能を有している。
【0059】
対物レンズ10は、ビームスプリッタ42に対向する第一面10aと、光ディスクに対向する第二面10bとを有する両凸の樹脂製単レンズである。第一面10a、第二面10bは共に非球面である。非球面の形状は、光軸からの高さがh(単位:mm)となる非球面上の座標点の該非球面の光軸上での接平面からの距離(サグ量)をSAGと定義し、非球面の光軸上での曲率を1/r(但し、r(単位:mm)は曲率半径)と定義し、円錐係数をκと定義し、4次以上の偶数次の非球面係数をA、A、・・・と定義した場合に、次の式で表される。対物レンズ10の各レンズ面を非球面にすることにより、球面収差やコマ収差等の諸収差を適切にコントロールすることが可能になる。
【数1】
【0060】
図2(a)に示されるように、対物レンズ10の第一面10aは、光軸を中心とする円形の第一の領域R1と、第一の領域R1の外側に配置された円環状の第二の領域R2と、第二の領域R2の外側に配置された円環状の第三の領域R3を有する。領域R1〜R3を含む全域に、輪帯構造が設けられている。輪帯構造は、図2(a)又は図2(b)の拡大図に示されるように、同心状に分割された複数の屈折面と各屈折面の境界において光軸に沿って延びる複数の微小な段差からなる。この輪帯構造は、第二面10bにだけ設けられてもよく、又は第一面10aと第二面10bの両面に分離して設けられてもよい。但し、本実施形態のように輪帯構造をより有効径の大きい第一面10aに設けた場合、例えば輪帯構造の最小輪帯幅をより広く設計することができ、輪帯の段差部分による光量損失を抑えることができるメリットがある。また、対物レンズ10がレンズクリーナーを用いて擦られた場合に輪帯構造が摩耗しない、などのメリットがある。
【0061】
輪帯構造の段差は、各屈折面の境界の内側を透過する光束と外側を透過する光束との間で所定の光路長差が生じるように設計される。この構造を一般に回折構造と称することができる。所定の光路長差が特定の波長αのn倍(nは整数)となるように設計された輪帯構造は、ブレーズ波長αのn次回折構造と称することができる。ここで、回折構造に特定の波長βの光束を透過させた際に最も回折効率が高くなる回折光の回折次数は、波長βの光束に対して与えられる光路長差を波長βで割ったときの値に最も近い整数mとして求まる。
【0062】
他にも、各屈折面の境界の内側を透過する光束と外側を透過する光束との間に光路長差が生じるということは、互いの位相が、輪帯構造の段差の作用によってずれると捉えることもできる。したがって輪帯構造は、入射光束の位相をシフトする構造、つまり、位相シフト構造と称することもできる。
【0063】
輪帯構造は、第kの領域の第iの光路差関数φik(h)によって表すことができる。なお、k、iは、何れも自然数である。光路差関数φik(h)は、対物レンズ10の回折レンズとしての機能を光軸からの高さh(単位:mm)における光路長付加量の形で表現した関数であり、輪帯構造における各段差の設置位置を規定する。光路差関数φik(h)は、二次、四次、六次、・・・の光路差関数係数をそれぞれPik2、Pik4、Pik6、・・・と定義し、使用される(入射する)レーザー光の設計波長をλ(単位:nm)と定義し、入射光束の回折次数が最大となる第kの領域の第iの光路差関数における回折次数をmikと定義した場合に、次の式により表される。
φik(h)=(Pik2×h2+Pik4×h4+Pik6×h6+Pik8×h8+Pik10×h10+Pik12×h12)mikλ
【0064】
輪帯構造は、一種類の光路差関数で規定されるだけでなく、複数種類の光路差関数を組み合わせて規定される形状とすることもできる。本実施形態の輪帯構造は、領域R1、R2において、二種類の光路差関数(第一の光路差関数と第二の光路差関数)を重ね合わせることにより、入射光束に対して互いの異なる光路長差を付与する二種類の段差を有している。これにより、入射光束には、二種類の光学的作用が付与される。ここで、第一の光路差関数で規定される段差を「第一の段差」、第二の光路差関数で規定される段差を「第二の段差」と記す。なお、輪帯構造は、三種類以上の光路差関数を重ね合わせて構成することも可能で、その場合はさらに複雑な光学的作用が与えられる。
【0065】
領域R1の輪帯構造は、波長λ1〜λ3のレーザー光束の何れの収束にも寄与する、すなわち、波長λ1のレーザー光束を光ディスクD1の記録面上に、波長λ2のレーザー光束を光ディスクD2の記録面上に、波長λ3のレーザー光束を光ディスクD3の記録面上に、それぞれ収束させるように構成されている。領域R1の輪帯構造は、対物レンズ10に入射する何れの使用波長も略平行光束であるから、各光ディスクの保護層厚の違いで生じる球面収差を補正するため、異なる回折次数の組み合わせを有する二種類の光路差関数で規定される段差を持つ回折構造となっている。なお、以降の説明では、各段差において波長λ1、λ2、λ3のレーザー光束で回折効率が最大となる回折次数をそれぞれ、便宜上、「BD使用回折次数」、「DVD使用回折次数」、「CD使用回折次数」と記す。
【0066】
BD使用回折次数を偶数次(例えば2次)に設定した場合、CD使用回折次数が奇数(例えば1次)となり、波長λ1のレーザー光束が該輪帯構造で付与されるパワーと、波長λ1の約2倍の波長λ3のレーザー光束が該輪帯構造で付与されるパワーとがほぼ同じとなる。そのため、光ディスクD1とD3とで生じる相対的な球面収差の補正が困難である。これは、該輪帯構造で付与されるパワーが、波長と回折次数に比例するためである。従って、領域R1において第一又は第二の段差の少なくとも一方は、BD使用回折次数を奇数次に設定する必要がある。もう一方の段差に関しては、波長λ1から波長λ3の各レーザー光束で高い回折効率が得られることから、BD使用回折次数を偶数次に設定することが好ましい。すなわち、領域R1の輪帯構造は、第一と第二の段差を組み合わせることにより、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数の全てにおいて高い回折効率が得られるように設計されている。なお、回折次数が小さいほど波長変化時の回折効率の変化が小さい。そのため、本実施形態では、第一の段差において、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数が共に1次であるように設計され、第二の段差において、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数がそれぞれ、2次、1次、1次であるように設計されている。
【0067】
領域R1の輪帯構造は、光ディスクD3使用時の作動距離を確保しつつ光ディスクD1使用時の色収差を良好に補正するため、領域R1の第一の段差を持つ回折構造が有する焦点距離をfD11(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(1)
−0.15<f1/fD11<−0.03・・・(1)
但し、fD11=−1/(2×P112×m11×λ)
を満たすように構成されている。なお、保護層厚の厚い光ディスクD3使用時の作動距離を確保することにより、保護層厚が光ディスクD3よりも薄い光ディスクD1又はD2使用時の作動距離も自ずと確保される。また、色収差の変化が最も大きい光ディスクD1使用時に色収差を良好に補正することにより、光ディスクD2又はD3使用時の色収差も自ずと良好に補正される。
【0068】
条件(1)の上限を上回る場合、光ディスクD3使用時の作動距離を確保できる代償として、光ディスクD1使用時の色収差が過大となる。条件(1)の下限を下回る場合には、光ディスクD1使用時に発生する色収差量が抑えられるが、その代償として、光ディスクD3使用時の作動距離を確保するのが難しくなると共に、領域R1を透過後に生じる波長λ3のレーザー光束の不要回折次数光が、光ディスクD3の記録面近傍に集光し、スポット性能の劣化が懸念される。
【0069】
領域R2の輪帯構造は、二種類の光路差関数で規定される段差を持つ回折構造を有し、波長λ1、λ2のレーザー光束の収束にのみ寄与する、すなわち、波長λ1のレーザー光束を光ディスクD1の記録面上に、波長λ2のレーザー光束を光ディスクD2の記録面上に、それぞれ収束させると共に、波長λ3のレーザー光束を光ディスクD1〜D3の何れの記録面上にも収束させないように構成されている。但し、領域R2の輪帯構造は、少なくとも一種類の光路差関数で規定される段差を持つ回折構造であれば足り、二種類は必須ではない。
【0070】
領域R2においては、BD使用回折次数を偶数次に設定した場合、CD使用回折次数の回折効率が高くなり、領域R2を透過した波長λ3のレーザー光束が光ディスクD3の記録面上近傍に集光した場合に、所望のスポットが形成されない問題が生じる。そこで、領域R2の輪帯構造は、第一の段差において、CD使用回折次数の回折効率を低減させつつBD使用回折次数及びDVD使用回折次数の回折効率を高くするため、BD使用回折次数を奇数次に設定することが好ましい。このように、BD使用回折次数が奇数次である場合、波長λ3のレーザー光束については、回折効率が40%程度の二種類の回折次数光が生じ、これらの不要回折次数光がそれぞれ光ディスクD3の記録面から離れた位置に集光し、光ディスクD3の記録面上のスポット形状を劣化させるという不具合が避けられる。本実施形態では、回折次数が小さいほど波長変化時の回折効率の変化が小さいことから、BD使用回折次数、DVD使用回折次数が共に1次であるように設計されている。
【0071】
領域R3の輪帯構造は、一種類の光路差関数で規定される段差を持つ回折構造を有し、波長λ1のレーザー光束の収束にのみ寄与する、すなわち、波長λ1のレーザー光束を光ディスクD1の記録面上に収束させると共に、波長λ2、λ3のレーザー光束を光ディスクD1〜D3の何れの記録面上にも収束させないように構成されている。
【0072】
領域R3の輪帯構造は、温度変化等に伴う球面収差の変動を適切にコントロールすると共に、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の不要回折次数光が領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置近傍に収束してスポット性能が劣化するのを避けるため、BD使用回折次数が奇数次であると同時に、領域R2の最大有効半径をh2(単位:mm)と定義し、領域R3の最大有効半径をh3(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(2)
−0.05<(φ13(h3)−φ13(h2))/(m13×f1)<−0.005・・・(2)
を満たすように構成されている。なお、領域R3において、BD使用回折次数は、回折次数が小さいほど波長変化時の回折効率の変化が小さいことから、1次であることが望ましい。
【0073】
条件(2)の上限を上回る場合には、波長変化時の球面収差が補正不足となりオーバーの球面収差が残存する。また、条件(2)の下限を下回る場合には、波長変化時の球面収差が過剰補正となり、アンダーの球面収差が発生する。そのため、条件(2)を満たさない場合は、光ディスクに対する情報の記録又は再生を良好に行うことができない。
【0074】
また別の観点から、条件(2)に関して説明する。領域R3を透過した波長λ2、λ3の強い回折次数光は共に、条件(2)の値が小さいほど光ディスクD3の記録面上での球面収差が大きくなる。そのため、これらの回折次数光が不要なフレア光として現れてスポット性能を劣化させるという不具合が避けられる。よって、条件(2)の値が小さいほど好適と思われる。しかし、条件(2)の値が小さいほど領域R3に設けるべき段差数が増大する。すなわち、条件(2)の下限を下回る場合は、段差数の増加によって製造が難しくなり、量産に適さないという問題が生じる。一方、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は共に、条件(2)の値が大きいほど光ディスクD3の記録面上での球面収差が小さくなる。すなわち、領域R3を透過した波長λ2、λ3の強い不要回折次数光がそれぞれ、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光して、光ディスクD2、D3の記録面上のスポット性能を劣化させる。条件(2)の上限を上回る場合は、不要回折次数光によるスポット性能の劣化が非常に大きく、光ディスクD2、D3に対する情報の記録又は再生を良好に行うことができない。
【0075】
領域R1の輪帯構造は、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差を良好に補正するため、領域R1の第二の段差を持つ回折構造が有する焦点距離をfD21(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(3)
0≦f1/fD21<0.15・・・(3)
但し、fD21=−1/(2×P212×m21×λ)
を満たすように構成されてもよい。
【0076】
条件(3)の上限を上回る場合、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差が共に補正不足となり、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録又は再生を良好に行うことができない。条件(3)の下限を下回る場合には、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差が共に過剰補正となり、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録又は再生を良好に行うことができない。
【0077】
領域R1の輪帯構造は、光ディスクD3使用時の作動距離を十分に確保しつつ光ディスクD1使用時の色収差をより一層良好に補正するため、次の条件(4)
−0.10<f1/fD11<−0.05・・・(4)
を満たすように構成されてもよい。
【0078】
領域R1の輪帯構造は、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差をより一層良好に補正するため、次の条件(5)
0≦f1/fD21<0.01・・・(5)
を満たすように構成されてもよい。
【0079】
領域R3の輪帯構造は、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束(不要回折次数光)を、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置近傍で集光させないため、領域R3の第一の段差を持つ回折構造が有する焦点距離をfD13(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(6)
−0.150<f1/fD13<−0.015・・・(6)
但し、fD13=−1/(2×P132×m13×λ)
を満たすように構成されてもよい。
【0080】
波長λ1で1次回折光が生じる輪帯構造を想定すると、条件(6)の上限を上回る場合、領域R3を透過した波長λ2、λ3の0次回折光がそれぞれ、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光して、光ディスクD2、D3の記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。条件(6)の下限を下回る場合には、領域R3を透過した波長λ2、λ3の1次回折光がそれぞれ、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光して、光ディスクD2、D3の記録面上のスポット性能を劣化させるため望ましくない。
【0081】
領域R3の輪帯構造は、温度変化等に伴う球面収差の変動をより一層適切にコントロールすると共にCD使用回折次数及びDVD使用回折次数の不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けるため、次の条件(7)
−0.03<(φ13(h3)−φ13(h2))/(m13×f1)<−0.01・・・(7)
を満たすように構成されてもよい。
【0082】
領域R2の輪帯構造は、温度変化等に伴う光ディスクD1又はD2使用時の球面収差の変動をより一層適切にコントロールするため、前述した第一の段差(BD使用回折次数、DVD使用回折次数が共に1次である段差)と異なる光路差関数で規定される第二の段差を更に有し、第二の段差において、BD使用回折次数が奇数次(例えば7次)であるように設計されるのが望ましい。
【0083】
第二の段差を持つ領域R2の輪帯構造は、領域R1の最大有効半径をh1(単位:mm)と定義した場合に、領域R2の段差数を規定する次の条件(8)
−0.05<(φ22(h2)−φ22(h1))/f1<0.03・・・(8)
を満たす構成としてもよい。
【0084】
第二の段差で、波長λ1で7次回折光が生じる輪帯構造を想定すると、条件(8)の上限を上回る場合は、領域R2を透過した波長λ3の4次回折光が光ディスクD3の記録面上近傍に集光し、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。条件(8)の下限を下回る場合には、領域R2を透過した波長λ3の不要回折次数光(3次回折光や4次回折光)の球面収差が大きくなるものの、光ディスクD2使用時における温度変化に対する球面収差が過剰補正となり、望ましくない。これに対して、条件(8)が満たされると、領域R2を透過した波長λ3の強い不要回折次数光が領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光しないため、スポット性能の劣化が避けられる。条件(8)が満たされる場合は、更に、光ディスクD2使用時における温度変化に対する球面収差が良好に補正される。
【0085】
第二の段差を持つ領域R2の輪帯構造は、条件(8)の代替として、領域R2の第二の段差を持つ回折構造が有する焦点距離をfD22(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(9)、(10)
−0.03<(φ22(h2)−φ22(h1))/f1<0・・・(9)
0≦f1/fD22<0.08・・・(10)
但し、fD22=−1/(2×P222×m22×λ)
を同時に満たす構成であってもよい。
【0086】
第二の段差で、波長λ1で7次回折光が生じる輪帯構造を想定すると、条件(9)の上限を上回る場合は、領域R2を透過した波長λ3の3次回折光が光ディスクD3の記録面上近傍に集光し、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。また、光ディスクD2使用時における温度変化に対する球面収差が補正不足となり望ましくない。条件(9)の下限を下回る場合には、領域R2を透過した波長λ3の4次回折光が光ディスクD3の記録面上近傍に集光し、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。
【0087】
第二の段差で、波長λ1で7次回折光が生じる輪帯構造を想定すると、条件(10)の上限を上回る場合は、領域R2を透過した波長λ3の3次回折光が光ディスクD3の記録面上近傍に集光し、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。条件(10)の下限を下回る場合には、領域R2を透過した波長λ3の4次回折光が光ディスクD3の記録面上近傍で集光して、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。
【0088】
これに対して、条件(9)、(10)が同時に満たされると、領域R2を透過した波長λ3の強い不要回折次数光(3次回折光、4次回折光)が、光ディスクD3の記録面近傍で集光せず、スポット性能の劣化が避けられる。
【0089】
ここで、領域R1〜R3の輪帯構造は、位相シフト構造と捉えることができる。以下においては、輪帯構造を位相シフト構造と捉えることにより、対物レンズ10を上記とは別の表現で説明する。
【0090】
領域R1の輪帯構造は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して異なる光路長差を付与する第一と第二の段差を持つ位相シフト構造と定義される。第一の段差は、第kの領域の第iの段差で付与される光路長差をΔOPDik(単位:nm)と定義し、第kの領域の第iの段差の段差数をNikと定義した場合に、次の条件(11)、(12)
INT|(ΔOPD11/λ1)+0.5|=1・・・(11)
0.60×102<N11×f1<2.50×102・・・(12)
を満たすように構成されている。第二の段差は、次の条件(13)
INT|(ΔOPD21/λ1)+0.5|=2・・・(13)
を満たすように構成されている。
【0091】
領域R1の位相シフト構造において、条件(11)及び(13)を満たす場合に更に、条件(12)を満たすことで、光ディスクD3使用時における作動距離の確保と光ディスクD1使用時の色収差の良好な補正が達成される。
【0092】
条件(12)の上限を上回る場合、光ディスクD3使用時の作動距離を確保できる代償として、光ディスクD1使用時の色収差が大きくなる。条件(12)の下限を下回る場合は、光ディスクD1使用時に発生する色収差量が抑えられるが、光ディスクD3使用時の作動距離を確保するのが難しくなると共に、領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の不要回折次数光が光ディスクD3の記録面上近傍に集光し、スポットの性能が大きく劣化する。
【0093】
領域R2の輪帯構造は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対して異なる光路長差を付与する第一と第二の段差を持つ位相シフト構造と定義される。領域R2において、第一の段差は、CD使用時の効率を低減させつつBD及びDVD使用時の効率を高くするため、次の条件(14)
INT|(ΔOPD12/λ1)+0.5|=1・・・(14)
を満たすように構成されている。
【0094】
領域R3の輪帯構造は、互いに隣り合う屈折面の境界において入射光束に対し一種類の光路長差を付与する段差を持つ位相シフト構造と定義される。領域R3の段差は、温度変化等に伴う球面収差の変動を適切にコントロールすると共にCD及びDVD使用時の効率を低減させてフレア光によるスポット性能の劣化を避けるため、次の条件(15)、(16)
INT|(ΔOPD13/λ1)+0.5|=2L+1・・・(15)
0.80×102<N13×f1<3.50×102・・・(16)
(但し、Lは整数)
を共に満たすように構成されている。
【0095】
条件(16)の上限を上回る場合、光ディスクD1使用時において環境変化による球面収差が過剰補正となり、好ましくない。条件(16)の下限を下回る場合には、光ディスクD1使用時において環境変化による球面収差が補正不足となると同時に、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束がそれぞれ、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光して、光ディスクD2、D3の記録面上に形成されるスポット形状に悪影響を及ぼすため望ましくない。
【0096】
領域R1の位相シフト構造は、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差を良好に補正するため、第二の段差が次の条件(17)
0.04×102≦N21×f1<1.50×102・・・(17)
を満たすように構成されてもよい。
【0097】
条件(17)の上限を上回る場合、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差が共に過剰補正となり、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録又は再生を良好に行うことができない。条件(17)の下限を下回る場合には、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差が共に補正不足となり、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録又は再生を良好に行うことができない。
【0098】
領域R1の位相シフト構造は、光ディスクD3使用時の作動距離を十分に確保しつつ光ディスクD1使用時の色収差をより一層良好に補正するため、第一の段差が次の条件(18)
1.20×102<N11×f1<2.20×102・・・(18)
を満たすように構成されてもよい。
【0099】
領域R1の位相シフト構造は、各光ディスクD1〜D3使用時の色収差をより一層良好に補正するため、第二の段差が次の条件(19)
0.04×102≦N21×f1<1.00×102・・・(19)
を満たすように構成されてもよい。
【0100】
領域R3の位相シフト構造は、温度変化等に伴う球面収差の変動をより一層適切にコントロールすると共にCD及びDVD使用時に生じるフレア光によるスポット性能の劣化を避けるため、領域R3の段差数を規定する次の条件(20)
1.50×102<N13×f1<3.00×102・・・(20)
を満たすように構成されてもよい。
【0101】
領域R3の位相シフト構造は、波長変化時の効率の変化を小さく抑えるため、領域R3の段差数を規定する次の条件(21)
INT|(ΔOPD13/λ1)+0.5|=1・・・(21)
を満たすように構成されてもよい。
【0102】
領域R2において、第二の段差は、CD使用時の効率を低減させてフレア光によるスポット性能の劣化を避けるため、次の条件(22)
0.25×102<N22×INT|(ΔOPD22/λ1)+0.5|×f1<1.00×102・・・(22)
を満たすように構成されてもよい。
INT|(ΔOPD22)+0.5|=7を満たす位相シフト構造を想定すると、条件(22)の上限を上回る場合、領域R2を透過した波長λ3の3次回折光が領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光し、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。条件(22)の下限を下回る場合には、領域R2を透過した波長λ3の4次回折光が領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置近傍に集光する。この4次回折光は、光ディスクD3の記録面上で不要なフレア光として現れて、光ディスクD3の記録面上のスポット性能を劣化させる。
【0103】
以上説明された対物レンズ10は、光ディスクD3使用時における作動距離の確保と光ディスクD1使用時の色収差の補正とをより好適に実現するため、対物レンズ10のd線のアッベ数をνdと定義した場合に、次の条件(23)
35≦νd≦80・・・(23)
を満たすように構成されてもよい。
【0104】
対物レンズ10は、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数の全てにおいてより一層高い回折効率を得るべく、波長λ1、λ3に対する屈折率をそれぞれn1、n3と定義した場合に、次の条件(27)
0.4<(λ1/(n3-1))/(λ3/(n1-1))<0.6・・・(27)
を満たすように構成されてもよい。
【0105】
次に、これまで説明した対物レンズ10を搭載する光情報記録再生装置100の具体的実施例を、5例説明する。このうち、実施例1〜3の光情報記録再生装置100は、図1に示される概略構成を有する。なお、実施例1〜3の各数値データから再現される各光学素子の形状の違いは、本件願書に添付可能な図面の縮尺では現れない微差に過ぎない。よって、実施例1〜3の光情報記録再生装置100の全体構成は、図1を参照し、本件願書への添付を省略する。
【実施例1】
【0106】
実施例1の光情報記録再生装置100に搭載される対物レンズ10は、図2又は図3に示される概略構成を有し、その仕様、具体的には、使用波長、焦点距離、NA、倍率Mは、表1に示される。なお、実施例1の各表又は各図面についての説明は、比較例又は以降の各実施例で提示される各表又は各図面においても適用される。
【0107】
【表1】
【0108】
表1中、倍率Mの値が示すように、光情報記録再生装置100では、レーザー光束は、何れの光ディスク使用時であっても平行光束として対物レンズ10に入射する。これにより、トラッキングした際における軸外収差が発生しない。光情報記録再生装置100における対物レンズ10以降の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表2〜表4に順に示される。
【0109】
【表2】
【表3】
【表4】
【0110】
表2〜表4において、面番号1(第1領域)、1(第2領域)、1(第3領域)はそれぞれ、対物レンズ10の第一面10aの領域R1、R2、R3を示す。面番号2は、対物レンズ10の第二面10bを、面番号3は、対象となる光ディスクの保護層表面を、面番号4は、対象となる光ディスクの記録面を、それぞれ示す。Rは、光学部材の各面の曲率半径(単位:mm)を、Dは、光学部材厚又は光学部材間隔(単位:mm)を、nは、括弧書き内の波長に対する光学部材の屈折率を、それぞれ示す。なお、非球面素子におけるRは、光軸上での曲率半径を示す。
【0111】
対物レンズ10の第一面10a(面番号1(第1領域)、1(第2領域)、1(第3領域))、第二面10b(面番号2)は、非球面である。各非球面形状は、光ディスクD1〜D3の記録又は再生に最適に設計されている。各非球面形状を規定する円錐係数κ、非球面係数A、A、・・・は、表5に示される。各表における表記Eは、10を基数、Eの右の数字を指数とする累乗を表している。
【0112】
【表5】
【0113】
実施例1の対物レンズ10の第一面10aは、領域R1〜R3の各領域の範囲が光軸からの高さ(つまり有効半径)hによって以下のように表される。
領域R1:0.000≦h≦1.120
領域R2:1.120<h≦1.400
領域R3:1.400<h≦1.870
【0114】
領域R1は、何れの使用波長のレーザー光束に対しても収束に寄与する共用領域である。領域R2は、波長λ1、λ2のレーザー光束の収束に寄与しつつ波長λ3のレーザー光束の収束には寄与しない、換言すれば波長λ3のレーザー光束使用時における開口制限機能を持つ領域である。領域R3は、最も大きな開口数NAが要求される光ディスクD1使用時に当該開口数を確保するための領域である。すなわち、領域R3は、波長λ1のレーザー光束の収束に寄与しつつ波長λ2、λ3のレーザー光束の収束には寄与しない、換言すれば波長λ2、λ3のレーザー光束使用時における開口制限機能を持つ領域である。
【0115】
領域R1〜R3は、上記のような互いに異なる作用を有するために各領域独自の輪帯構造(別の表現によれば、位相シフト構造)を持つ。特に、領域R1とR2は、二種類の異なる光路差関数によって表される輪帯構造を持つ。第一面10aの各領域における輪帯構造を規定するための光路差関数における光路差関数係数Pi2は表6に、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数は表7に、それぞれ示される。表6及び表7中、「1(第1領域)丸1」、「1(第1領域)丸2」、「1(第2領域)丸1」、「1(第2領域)丸2」、「1(第3領域)」はそれぞれ、領域R1の第一の段差、領域R1の第二の段差、領域R2の第一の段差、領域R2の第二の段差、領域R3の段差に対応する。
【0116】
【表6】
【表7】
【0117】
領域R1〜R3に形成される輪帯構造の具体的構成は、表8〜10に順に示される。表8〜10中、輪帯構造を構成する各輪帯の番号は、光軸側から順に振られており、各輪帯の範囲は、光軸からの高さhmin〜hmaxで表されている。また、各輪帯間における光路長差ΔOPD11/λ1、ΔOPD21/λ1、ΔOPD12/λ1、ΔOPD22/λ1、ΔOPD32/λ1、ΔOPD13/λ1、ΔOPD23/λ1も示されている。なお、表10は、行数が多いため、便宜上、表10A、10Bの2表に分けて示している。表10Aの番号100の続きは、表10Bの番号101である。
【0118】
【表8】
【表9】
【表10A】
【表10B】
【0119】
表54は、実施例1〜5の光情報記録再生装置100に対して条件(1)〜(27)を適用したときに算出される値の一覧表である。表54に示されるように、実施例1の光情報記録再生装置100は、条件(1)〜(17)、(19)〜(21)、(23)〜(27)を満たす。そのため、実施例1の光情報記録再生装置100は、何れの光ディスク使用時にも球面収差を良好に補正すると同時に不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けることができ、更に、光ディスクD3使用時における作動距離を十分に確保することができる。
【0120】
図4(a)〜(c)は、実施例1において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図4(a)は、光ディスクD1のNA1(=0.85)に対する光ディスクD1の記録面上での球面収差を、図4(b)は、光ディスクD2のNA2(=0.60)に対する光ディスクD2の記録面上での球面収差を、図4(c)は、光ディスクD3のNA3(=0.47)に対する光ディスクD3の記録面上での球面収差を、それぞれ表す。なお、各球面収差図において、実線が設計波長での球面収差を、点線が設計波長から+5nm変化した波長での球面収差を、それぞれ表す。
【0121】
図4(a)〜(c)に示されるように、実施例1の光情報記録再生装置100は、設計基準時だけでなく波長変化があった場合も、光ディスクD1〜D3の全てにおいて球面収差が良好に補正される。
【0122】
図5(a)〜(c)は、実施例1において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図5(a)は、NA1に対する光ディスクD1の記録面上での球面収差を、図5(b)は、NA1に対する光ディスクD2の記録面上での球面収差を、図5(c)は、NA1に対する光ディスクD3の記録面上での球面収差を、それぞれ表す。
【0123】
図5(b)、(c)に示されるように、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。また、図5(c)に示されるように、領域R2を透過した波長λ3のレーザー光束は、3種類以上の複数の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。そのため、これらの不要回折次数光がフレア光として現れ難くなり、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられる。
【0124】
図6(a)〜(c)は、比較例において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図7(a)〜(c)は、比較例において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。比較例は、対物レンズ10が条件(2)又は条件(16)を満たさない点を除いては、実施例1と略同一に構成された光情報記録再生装置100を想定している。
【0125】
図6(a)〜(c)及び図7(a)〜(c)によれば、比較例の構成では、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置の近傍に集光する。そのため、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられない。これに対して、実施例1の対物レンズ10を搭載した光情報記録再生装置100は、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束が、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。そのため、これらの不要回折次数光がフレア光として現れ難くなり、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられる。このように、実施例1の対物レンズ10は、各光ディスクD1〜D3に対する情報の記録時又は再生時において優れた光学特性を有する。
【実施例2】
【0126】
図8(a)〜(c)は、各光ディスク使用時における実施例2の対物レンズ10の側断面図を示す。実施例2の光情報記録再生装置100に搭載される対物レンズ10の仕様、具体的には、使用波長、焦点距離、NA、倍率Mは、表11に示される。
【0127】
【表11】
【0128】
表11中、倍率Mの値が示すように、光情報記録再生装置100では、レーザー光束は、何れの光ディスク使用時であっても平行光束として対物レンズ10に入射する。これにより、トラッキングした際における軸外収差が発生しない。光情報記録再生装置100における対物レンズ10以降の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表12〜表14に順に示される。
【0129】
【表12】
【表13】
【表14】
【0130】
対物レンズ10の第一面10a、第二面10bは、非球面である。各非球面形状を規定する円錐係数、非球面係数は、表15に示される。
【0131】
【表15】
【0132】
実施例2の対物レンズ10の第一面10aは、領域R1〜R3の各領域の範囲が光軸からの高さ(つまり有効半径)hによって以下のように表される。
領域R1:0.000≦h≦1.135
領域R2:1.135<h≦1.415
領域R3:1.415<h≦1.870
各領域が持つ機能は、実施例1における各領域と同質である。
【0133】
対物レンズの第一面10aは、輪帯構造を持つ。第一面10aの各領域における輪帯構造を規定するための光路差関数における光路差関数係数は表16に、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数は表17に、それぞれ示される。
【0134】
【表16】
【表17】
【0135】
領域R1〜R3に形成される輪帯構造の具体的構成は、表18〜20に順に示される。なお、表20は、行数が多いため、便宜上、表20A、20Bの2表に分けて示している。表20Aの番号145の続きは、表20Bの番号146である。
【0136】
【表18】
【表19】
【表20A】
【表20B】
【0137】
表54に示されるように、実施例2の光情報記録再生装置100は、条件(1)〜(4)、(6)〜(17)、(19)〜(21)、(23)〜(27)を満たす。そのため、実施例2の光情報記録再生装置100は、何れの光ディスク使用時にも球面収差を良好に補正すると同時に不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けることができ、更に、光ディスクD3使用時における作動距離を十分に確保することができる。
【0138】
図9(a)〜(c)は、実施例2において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図9(a)〜(c)に示されるように、実施例2の光情報記録再生装置100は、設計基準時だけでなく波長変化があった場合も、光ディスクD1〜D3の全てにおいて球面収差が良好に補正される。
【0139】
図10(a)〜(c)は、実施例2において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図10(b)、(c)に示されるように、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。また、図10(c)に示されるように、領域R2を透過した波長λ3のレーザー光束は、3種類以上の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。そのため、これらの不要回折次数光がフレア光として現れ難くなり、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられる。
【実施例3】
【0140】
図11(a)〜(c)は、各光ディスク使用時における実施例3の対物レンズ10の側断面図を示す。実施例3の光情報記録再生装置100に搭載される対物レンズ10の仕様、具体的には、使用波長、焦点距離、NA、倍率Mは、表21に示される。
【0141】
【表21】
【0142】
表21中、倍率Mの値が示すように、光情報記録再生装置100では、レーザー光束は、何れの光ディスク使用時であっても平行光束として対物レンズ10に入射する。これにより、トラッキングした際における軸外収差が発生しない。光情報記録再生装置100の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表22〜表24に順に示される。
【0143】
【表22】
【表23】
【表24】
【0144】
カップリングレンズの第二面(面番号4)、対物レンズ10の第一面10a、第二面10bは、非球面である。各非球面形状を規定する円錐係数、非球面係数は、表25〜表27に示される。なお、対物レンズ10は、表25〜表27の各表で共通である。表26、27の第一面10a、第二面10bの各係数は、表25で参照される。
【0145】
【表25】
【表26】
【表27】
【0146】
実施例3の対物レンズ10の第一面10aは、領域R1〜R3の各領域の範囲が光軸からの高さ(つまり有効半径)hによって以下のように表される。
領域R1:0.000≦h≦1.330
領域R2:1.330<h≦1.670
領域R3:1.670<h≦2.210
各領域が持つ機能は、実施例1における各領域と同質である。
【0147】
対物レンズの第一面10aは、輪帯構造を持つ。第一面10aの各領域における輪帯構造を規定するための光路差関数における光路差関数係数は表28に、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数は表29に、それぞれ示される。
【0148】
【表28】
【表29】
【0149】
領域R1〜R3に形成される輪帯構造の具体的構成は、表30〜32に順に示される。なお、表30は、行数が多いため、便宜上、表30A、30Bの2表に、同じく表32は、表32A、32Bの2表に分けて示している。表30Aの番号50の続きは、表30Bの番号51である。表32Aの番号183の続きは、表32Bの番号184である。
【0150】
【表30A】
【表30B】
【表31】
【表32A】
【表32B】
【0151】
表54に示されるように、実施例3の光情報記録再生装置100は、条件(1)〜(4)、(6)〜(19)、(21)〜(27)を満たす。そのため、実施例3の光情報記録再生装置100は、何れの光ディスク使用時にも球面収差を良好に補正すると同時に不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けることができ、更に、光ディスクD3使用時における作動距離を十分に確保することができる。
【0152】
図12(a)〜(c)は、実施例3において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図12(a)〜(c)に示されるように、実施例3の光情報記録再生装置100は、設計基準時だけでなく波長変化があった場合も、光ディスクD1〜D3の全てにおいて球面収差が良好に補正される。
【0153】
図13(a)〜(c)は、実施例3において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図13(b)、(c)に示されるように、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。また、図13(c)に示されるように、領域R2を透過した波長λ3のレーザー光束は、3種類以上の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。そのため、これらの不要回折次数光がフレア光として現れ難くなり、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられる。
【実施例4】
【0154】
図14は、実施例4の光情報記録再生装置200の構成を概略的に示す図である。光情報記録再生装置200は、少なくとも波長λ1のレーザー光束を射出する光源1D、波長λ2、λ3のレーザー光束を射出する光源1E、回折格子2D、2E、カップリングレンズ3D、3E、ビームスプリッタ43、対物レンズ10を有している。なお、図14中、一点鎖線は、光情報記録再生装置200の基準軸AXである。また、実線、破線、点線で示される光束はそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3のレーザー光束を示す。
【0155】
図15(a)〜(c)は、実施例4の光情報記録再生装置200内における、各波長のレーザー光束の光路を展開して示す図である。波長λ1のレーザー光束は、図15(a)に示されるように、光源1Dから射出された後、回折格子2D、カップリングレンズ3D、ビームスプリッタ43、対物レンズ10を介して、光ディスクD1の記録面近傍に集光する。波長λ2、λ3のレーザー光束はそれぞれ、図15(b)、(c)に示されるように、光源1Eから射出された後、回折格子2E、カップリングレンズ3E、ビームスプリッタ43、対物レンズ10を介して、光ディスクD2、D3の記録面近傍に集光する。各波長のレーザー光束は、各光ディスクの記録面上でのスポット形成後、入射時と同一の光路を戻り、図示省略されたハーフミラーを介して受光部により検出される。このように、実施例4の光情報記録再生装置200は、波長λ2、λ3のレーザー光束の光路を共通化することにより、小型に設計されている。
【0156】
光情報記録再生装置200では、前述の通り、各光ディスク使用時に必要とされる対物レンズのNAが各々異なる。そのため、光情報記録再生装置200は、波長λ1〜λ3のレーザー光束それぞれの光束径を規定する開口制限素子(不図示)を有した構成としてもよい。
【0157】
実施例4の光情報記録再生装置200に搭載される対物レンズ10の仕様、具体的には、使用波長、焦点距離、NA、倍率Mは、表33に示される。
【0158】
【表33】
【0159】
表33中、倍率Mの値が示すように、光情報記録再生装置200では、レーザー光束は、何れの光ディスク使用時であっても平行光束、あるいは弱い発散光束として対物レンズ10に入射する。これにより、トラッキングした際における軸外収差の発生を小さく抑えられる。光情報記録再生装置200の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表34〜表36に順に示される。
【0160】
【表34】
【表35】
【表36】
【0161】
カップリングレンズの第二面(面番号4)、対物レンズ10の第一面10a、第二面10bは、非球面である。各非球面形状を規定する円錐係数、非球面係数は、表37、表38に示される。対物レンズ10は、表37、表38の各表で共通である。表38の第一面10a、第二面10bの各係数は、表37で参照される。
【0162】
【表37】
【表38】
【0163】
実施例4の対物レンズ10の第一面10aは、領域R1〜R3の各領域の範囲が光軸からの高さ(つまり有効半径)hによって以下のように表される。
領域R1:0.000≦h≦1.130
領域R2:1.130<h≦1.405
領域R3:1.405<h≦1.870
各領域が持つ機能は、実施例1における各領域と同質である。
【0164】
対物レンズの第一面10aは、輪帯構造を持つ。第一面10aの各領域における輪帯構造を規定するための光路差関数における光路差関数係数は表39に、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数は表40に、それぞれ示される。
【0165】
【表39】
【表40】
【0166】
領域R1〜R3に形成される輪帯構造の具体的構成は、表41〜43に順に示される。なお、表43は、行数が多いため、便宜上、表43A、43Bの2表に分けて示している。表43Aの番号134の続きは、表43Bの番号135である。
【0167】
【表41】
【表42】
【表43A】
【表43B】
【0168】
表54に示されるように、実施例4の光情報記録再生装置200は、条件(1)〜(17)、(19)〜(27)を満たす。そのため、実施例4の光情報記録再生装置200は、何れの光ディスク使用時にも球面収差を良好に補正すると同時に不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けることができ、更に、光ディスクD3使用時における作動距離を十分に確保することができる。
【0169】
図16(a)〜(c)は、実施例4において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図16(a)〜(c)に示されるように、実施例4の光情報記録再生装置200は、設計基準時だけでなく波長変化があった場合も、光ディスクD1〜D3の全てにおいて球面収差が良好に補正される。
【0170】
図17(a)〜(c)は、実施例4において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図17(b)、(c)に示されるように、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。また、図17(c)に示されるように、領域R2を透過した波長λ3のレーザー光束は、3種類以上の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。そのため、これらの不要回折次数光がフレア光として現れ難くなり、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられる。
【実施例5】
【0171】
図18は、実施例5の光情報記録再生装置300の構成を概略的に示す図である。光情報記録再生装置300は、少なくとも、波長λ1〜λ3のレーザー光束を射出する光源1F、回折格子2F、カップリングレンズ3F、対物レンズ10を有している。なお、図18中、一点鎖線は、光情報記録再生装置100の基準軸AXである。また、実線、破線、点線で示される光束はそれぞれ、波長λ1、λ2、λ3のレーザー光束を示す。
【0172】
図19(a)〜(c)は、実施例5の光情報記録再生装置300内における、各波長のレーザー光束の光路を展開して示す図である。波長λ1〜λ3のレーザー光束はそれぞれ、図19(a)〜(c)に示されるように、光源1Fから射出された後、回折格子2F、カップリングレンズ3F、対物レンズ10を介して、光ディスクD1〜D3の記録面近傍に集光する。各波長のレーザー光束は、各光ディスクの記録面上でのスポット形成後、入射時と同一の光路を戻り、図示省略されたハーフミラーを介して受光部により検出される。このように、実施例5の光情報記録再生装置300は、全ての波長のレーザー光束の光路を共通化することにより、小型に設計されている。
【0173】
光情報記録再生装置300では、前述の通り、各光ディスク使用時に必要とされる対物レンズのNAが各々異なる。そのため、光情報記録再生装置300は、波長λ1〜λ3のレーザー光束それぞれの光束径を規定する開口制限素子(不図示)を有した構成としてもよい。
【0174】
実施例5の光情報記録再生装置300に搭載される対物レンズ10の仕様、具体的には、使用波長、焦点距離、NA、倍率Mは、表44に示される。
【0175】
【表44】
【0176】
表44中、倍率Mの値が示すように、光情報記録再生装置300では、レーザー光束は、何れの光ディスク使用時であっても平行光束、あるいは弱い発散光束として対物レンズ10に入射する。これにより、トラッキングした際における軸外収差の発生を小さく抑えられる。光情報記録再生装置300の各光ディスクD1〜D3使用時における具体的数値構成は、表45〜表47に順に示される。
【0177】
【表45】
【表46】
【表47】
【0178】
カップリングレンズの第二面(面番号4)、対物レンズ10の第一面10a、第二面10bは、非球面である。各非球面形状を規定する円錐係数、非球面係数は、表48に示される。
【0179】
【表48】
【0180】
実施例5の対物レンズ10の第一面10aは、領域R1〜R3の各領域の範囲が光軸からの高さ(つまり有効半径)hによって以下のように表される。
領域R1:0.000≦h≦1.200
領域R2:1.200<h≦1.495
領域R3:1.495<h≦1.870
各領域が持つ機能は、実施例1における各領域と同質である。
【0181】
対物レンズの第一面10aは、輪帯構造を持つ。第一面10aの各領域における輪帯構造を規定するための光路差関数における光路差関数係数は表49に、BD使用回折次数、DVD使用回折次数、CD使用回折次数は表50に、それぞれ示される。
【0182】
【表49】
【表50】
【0183】
領域R1〜R3に形成される輪帯構造の具体的構成は、表51〜53に順に示される。なお、表51は、行数が多いため、便宜上、表51A、51Bの2表に、同じく表53は、表53A、53Bの2表に分けて示している。表51Aの番号60の続きは、表51Bの番号61である。表53Aの番号220の続きは、表53Bの番号221である。
【0184】
【表51A】
【表51B】
【表52】
【表53A】
【表53B】
【0185】
表54に示されるように、実施例5の光情報記録再生装置300は、条件(1)〜(4)、(6)〜(27)を満たす。そのため、実施例5の光情報記録再生装置300は、何れの光ディスク使用時にも球面収差を良好に補正すると同時に不要回折次数光によるスポット性能の劣化を避けることができ、更に、光ディスクD3使用時における作動距離を十分に確保することができる。
【0186】
図20(a)〜(c)は、実施例5において、各光ディスクのNAに対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図20(a)〜(c)に示されるように、実施例5の光情報記録再生装置300は、設計基準時だけでなく波長変化があった場合も、光ディスクD1〜D3の全てにおいて球面収差が良好に補正される。
【0187】
図21(a)〜(c)は、実施例5において、光ディスクD1のNA1に対する各光ディスクの記録面上での球面収差を表す図である。図21(b)、(c)に示されるように、領域R3を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束は、主に、比較的高い回折効率を持つ0次と1次の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ2、λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。また、図21(c)に示されるように、領域R2を透過した波長λ3のレーザー光束は、3種類以上の回折光に分離して、領域R1を透過した波長λ3のレーザー光束の結像位置から離れた場所に集光する。そのため、これらの不要回折次数光がフレア光として現れ難くなり、各光ディスクの記録面上におけるスポット性能の劣化が避けられる。
【0188】
【表54】
【0189】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば光情報記録再生装置100の対物光学系は、対物レンズ10とビームスプリッタ42との間に所定の光学素子を備えた構成としてもよい。この場合、本実施形態の輪帯構造は、光学素子の少なくとも一面に設けられてもよく、又は対物レンズ10と光学素子の各面に分離して設けられてもよい。
【符号の説明】
【0190】
1A、2A、3A 光源
10 対物レンズ
D1〜D3 光ディスク
100 光情報記録再生装置
図1
図2
図3
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図5
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