特許第5667721号(P5667721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5667721
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】塗料濾過器
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/00 20060101AFI20150122BHJP
   B44D 3/10 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   B01D23/02 A
   B44D3/10
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-136558(P2014-136558)
(22)【出願日】2014年7月2日
【審査請求日】2014年7月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592164018
【氏名又は名称】日東化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151390
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 淨宗
(72)【発明者】
【氏名】広田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】広田 征之
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅樹
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−313377(JP,A)
【文献】 特開昭63−319010(JP,A)
【文献】 実開平04−121502(JP,U)
【文献】 実開昭52−147981(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第00661917(GB,A)
【文献】 米国特許第02883057(US,A)
【文献】 米国特許第02747739(US,A)
【文献】 米国特許第02251909(US,A)
【文献】 実開昭53−085677(JP,U)
【文献】 実公昭30−005588(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00−29/96
B01D 35/00−35/04
B01D 35/08−35/30
B44D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過体と、案内体と、密着部材と、固定具とからなる塗料濾過器であって、該濾過体は、塗料から塵芥を濾し取るための部材であって、金属製の平面状の網体と、金属製の平板状の枠体とからなり、該枠体の上面は、その内周側の全周に該網体の下面の外周側の全周が戴置されて取り付けられているのに対して、その外周側が全周にわたって開放されていて該密着部材と直に接するようになっており、該案内体は、該濾過体を通して塗料収納容器へと塗料を案内するための部材であって、両端の開放された筒体の一端に外側に拡がる鍔部を設けた部材であり、該密着部材は、該枠体と該鍔部との間から塗料が漏出しないようにするための部材であって、柔軟性のあるシート状の環状部材であるとともに、該枠体の上面を覆う大きさを有する部材であり、該網体の上面において該枠体の上面に戴置されている範囲と該枠体において開放されている上面とを覆うことによって該枠体と該密着部材との間に空隙を生じないようにして塗料が漏出しないようにし、該固定具は、該密着部材を該枠体と該鍔部との間の全周にわたって挟み込んで、該濾過体と該案内体とを結合するための部材であることを特徴とする塗料濾過器。
【請求項2】
請求項1に記載した塗料濾過器であって、前記固定具は嵌入固定具であり、前記枠体及び前記鍔部のそれぞれには該嵌入固定具を嵌入するための嵌入孔が連通するように穿設されていることを特徴とする塗料濾過器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンキ、ラッカー、ワニス等の各種の塗料に含有されているゴミ、チリ、該塗料のダマ等の各種の塵芥を濾し取るための塗料濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料には塵芥が含有されていることがあるところ、該塗料を用いて塗装を行ってしまうと該塗装面に凹凸、ひび割れ、色ムラ等の荒れを生じるという問題がある。そのため、塗装作業を行うに際して、一斗缶等の塗料収納容器の開口部に各種の濾過材を設置して、塗料を該塗料収納容器に注ぎ込むことによって、該塗料から塵芥を濾し取る作業を行っている。ここで、各種の濾過材としては、吉野紙等の濾紙、ナイロンやポリプロピレン等によって形成された合成繊維製の網部材、黄銅やステンレス鋼等によって形成された金属製の網部材等が用いられてきた。
【0003】
濾過材は、塗料に含有されている塵芥を濾し取ることによって、濾過作業中に該塵芥によって目詰まりを起こしてしまうことがある。そのような目詰まりを生じている濾過材を用いて塗料の濾過を行うと、該塗料の組成が変化してしまい、その結果該塗料の色合い等に不具合が生じてしまうこともある。そのような場合には樹脂製のヘラを用いて該濾過材を擦る等して該目詰まりを解消する作業を行う必要がある。また、濾過作業に用いた濾過材を再使用するためには、洗浄用シンナー等の洗浄液に浸したりする等の濾過材の洗浄を行ってその網目から塵芥を除去することが必要となる。
【0004】
ところが、濾紙又は合成繊維製の網部材を濾過材として用いる場合には、該濾過材は軟弱な素材によって形成されているため、樹脂製のヘラで擦る等の目詰まりを解消する作業を行うと容易に損傷してしまうという問題がある。また、このような濾過材は、洗浄力の強い洗浄液を用いて洗浄すると変形する等の問題があるため、洗浄力の弱い洗浄液を用いて洗浄せざるを得ず、その結果十分に洗浄をすることができないという問題もある。そのため、濾紙又は合成繊維製の網部材を濾過材として用いる場合には、その目詰まりを解消する作業を行うことが困難であるとともに、該濾過材を十分に洗浄して再使用することが困難である。
【0005】
これに対して、金属製の網部材を濾過材として用いると、該濾過材は強固な素材によって形成されているため、樹脂製のヘラで擦る等の目詰まりを解消する作業を行っても容易に損傷してしまうことがなく、また洗浄力の強い洗浄液を用いて洗浄しても変形する等の問題も少ない。そのため、金属製の網部材を濾過材として用いる塗料濾過器は、その目詰まりを解消する作業を行うことができるため、濾過を行う塗料の組成が変化することを防止することができ、また該濾過材を十分に洗浄して再使用することができ好適である。そこで、従来、金属製の網部材を濾過材として用いる塗料濾過器が提案されてきたところである(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、塗料濾過器を組立て及び分解可能な構造にすると、該濾過材を交換可能なものにすることができる。このような構造にすれば、濾過材は塗料濾過器において最も損傷し易い部材であるから、塗料濾過機の全体を交換することなく、損傷した該濾過材のみを交換して該塗料濾過器を使用することができる。あわせて、このような塗料濾過器によれば、種々の金属を用いた濾過材及び網目の大きさを有する濾過材等が提供されているところ、塗料の性質等に応じて適宜濾過材を交換することもできる。更に、塗料濾過器を組立て及び分解可能な構造にすると、該塗料濾過器の全体を十分かつ簡便に洗浄することができる。そこで、従来、組立て及び分解可能な構造を有する塗料濾過器が提案されてきたところである(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−52907号公報
【特許文献2】実開昭52−147981号公報
【特許文献3】実開昭61−175217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術に係る塗料濾過器にあっては、その全体が網部材で形成されている濾過材からなる塗料濾過器(例えば、特許文献1参照。)であるか、あるいは平面状の網体で形成されている濾過材を塗料収納容器の開口部に設置する塗料濾過器(例えば、特許文献2及び3参照。)であった。そうすると、使用者は濾過する塗料を少量ずつ該塗料濾過器に注ぎ込まなければ、該塗料が該塗料濾過器から溢れ出してしまうため、該塗料の濾過に多大な時間を要するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の解決しようとする第一の課題は、その濾過材として金属製の網体を用いる塗料濾過器であって、その組立て及び分解が可能な塗料濾過器につき、塗料の濾過に要する時間を短縮することができる塗料濾過器を提供することにある。
【0010】
また、その組立て及び分解が可能な上記の従来技術に係る塗料濾過器は、該塗料濾過器を構成する部材の間隙から塗料が漏れ出してしまうことがあるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の解決しようとする第二の課題は、その濾過材として金属製の網体を用いる塗料濾過器であって、その組立て及び分解が可能な塗料濾過器につき、該塗料濾過器を構成する部材の間隙から塗料の漏出を防止する構造を施した塗料濾過器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の各課題を解決するために提案されたものであり、以下の構成を有するものである。以下では、本発明の構成を理解するのを補助するため、本願に添付した図面に表示した番号及び符号をあわせて記載する。
【0013】
請求項1に係る塗料濾過器(1)は、濾過体(2)と、案内体(3)と、密着部材(4)と、固定具(5)とからなる。濾過体(2)は、塗料から塵芥を濾し取るための部材であって、金属製の平面状の網体(2a)と、金属製の平板状の枠体(2b)とからなる。枠体(2b)の上面は、その内周側の全周に網体(2a)の下面の外周側の全周が戴置されて取り付けられているのに対して、その外周側が全周にわたって開放されており、その外周側が密着部材(4)と直に接するようになっている。案内体(3)は、濾過体(2)を通して塗料収納容器(A)へと塗料を案内するための部材であって、両端の開放された筒体(3a)の一端に外側に拡がる鍔部(3b)を設けた部材である。密着部材(4)は、枠体(2b)と鍔部(3b)との間から塗料が漏出しないようにするための部材であって、柔軟性のあるシート状の環状部材であるとともに、枠体(2b)の上面を覆う大きさを有する部材であり、網体(2a)の上面において枠体(2b)の上面に戴置されている範囲と枠体(2b)において開放されている上面とを覆うことによって枠体(2b)と密着部材(4)との間に空隙を生じないようにして塗料が漏出しないようにする。固定具(5)は、密着部材(4)を枠体(2b)と鍔部(3b)との間の全周にわたって挟み込んで、濾過体(2)と案内体(3)とを結合するための部材である。
【0015】
請求項2に係る塗料濾過器(1)は、請求項1に記載した塗料濾過器であって、固定具(5)はネジ、ボルト、ビス等の嵌入固定具(51)であり、枠体(2b)及び鍔部(3b)のそれぞれには嵌入固定具(51)を嵌入するための嵌入孔(2c,3c)が連通するように穿設されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る塗料濾過器は、上記の通りの構成であるから、以下のような効果を奏することができる。
【0017】
まず、請求項1に記載した塗料濾過器(1)は、案内体(3)が両端の開放された筒体(3a)の一端に外側に拡がる鍔部(3b)を設けた部材である。そのため、上記の従来技術に係る塗料濾過器のように、使用者が濾過する塗料を少量ずつ塗料濾過器(1)に注ぎ込まなくても、該塗料が塗料濾過器(1)から溢れ出してしまうことはない。また、案内体(3)の下部に濾過体(2)が取り付けられていることによって、筒体(3a)内に該塗料が短時間留まることから、該塗料自身の重みによって塗料収納容器(A)へと落下する速度が増し、その結果濾過体(2)による塗料の濾過に要する時間を短縮することができる。
【0018】
従って、請求項1に記載した塗料濾過器(1)は、その濾過材として金属製の網体を用いる塗料濾過器であって、その組立て及び分解が可能な塗料濾過器につき、塗料の濾過に要する時間を短縮することができる塗料濾過器を提供するという本発明が解決しようとする第一の課題を解決することができるのである。
【0019】
尚、請求項1に記載した塗料濾過器(1)は、塗料から塵芥を濾し取るための部材が金属製の平面状の網体(2a)であるから、樹脂製のヘラで擦る等の目詰まりを解消する作業を行うことができるとともに、洗浄力の強い洗浄液を用いて濾過体(2)を十分に洗浄して再使用することができる。
【0020】
あわせて、塗料濾過器(1)は、濾過体(2)と案内体(3)とが個別に形成されており、固定具(5)を取り付けることによって密着部材(4)を枠体(2b)と鍔部(3b)との間に挟み込んで濾過体(2)と案内体(3)とを結合して塗料濾過器(1)を組み立てることができるとともに、固定具(5)を取り外すことによって塗料濾過器(1)を分解することができるから、濾過体(2)を交換して塗料濾過器(1)を使用することができるとともに、塗料濾過器(1)の全体を十分かつ簡便に洗浄することができる。
【0021】
また、請求項1に記載した塗料濾過器(1)は、密着部材(4)が柔軟性のあるシート状の環状部材であって、枠体(2b)の上面を覆う大きさを有しており、網体(2a)の上面において枠体(2b)の上面に戴置されている範囲と枠体(2b)において開放されている上面とを覆うことによって、固定具(5)が密着部材(4)を枠体(2b)と鍔部(3b)との間に挟み込んで、濾過体(2)と案内体(3)とを結合することによって、枠体(2b)と鍔部(3b)との間から塗料が漏出しないようにすることができる。
【0022】
ここで、網体(2a)を枠体(2b)に取り付けるに際しては、枠体(2b)の上面に網体(2a)を戴置して取り付けるのが最も簡便であるが、枠体(2b)の上面の全面にわたって網体(2a)を戴置して取り付けると、枠体(2b)と密着部材(4)との間に網体(2a)が介在して空隙が生じてしまい、該空隙から塗料が漏れ出してしまうおそれがある。これに対して、請求項1に記載した塗料濾過器(1)は、枠体(2b)の上面が、その内周側の全周に網体(2a)の下面の外周側の全周が戴置されて取り付けられているのに対して、その外周側が全周にわたって開放されているため、その外周側は密着部材(4)と直に接することによって枠体(2b)と密着部材(4)との間に空隙が生じないため、塗料が漏出しないようにすることができる。
【0023】
そうすると、請求項1に記載した塗料濾過器(1)は、その濾過材として金属製の網部材を用いる塗料濾過器であって、その組立て及び分解が可能な塗料濾過器につき、該塗料濾過器を構成する部材の間隙から塗料の漏出を防止する構造を施した塗料濾過器を提供するという本発明が解決しようとする第二の課題を解決することができるのである。
【0025】
ここで、密着部材(4)には、種々の材料を用いることができるが、弾力性の強い材料によって形成された部材を用いると、枠体(2b)と鍔部(3b)との間をより強固に閉塞することができる。このような場合には、濾過体(2)と案内体(3)とをより強固に結合することができる固定具(5)としてネジ、ボルト、ビス等の嵌入固定具(51)を用いるのが好適である。従って、請求項2に記載した塗料濾過器(1)は、本発明が解決しようとする第二の課題を解決するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器を分解した状態を示した斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器を使用する状態を示した斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器を使用する状態を示した正面一部縦断面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る塗料濾過器を分解した状態を示した斜視図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る塗料濾過器を使用する状態を示した斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る塗料濾過器を使用する状態を示した正面一部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器の構造及びその使用態様について添付図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器(1)は、図1から3までに図示するように、濾過体(2)と、案内体(3)と、密着部材(4)と、固定具(5)とからなる。
【0029】
濾過体(2)は、塗料から塵芥を濾し取るための部材であって、図1に図示するように、網体(2a)と枠体(2b)とからなる。濾過体(2)は、図では、平面視円形であるが、塗料収納容器(A)の開口部の形状及び大きさに合わせる等して、種々の形状及び大きさにすることができ、その形状及び大きさは特に限定されない。
【0030】
網体(2a)は、金属製の平面状の網部材であって、例えばステンレス鋼製の平織のメッシュ部材を用いることができる。金属製の平面状の網部材は比較的安価で供給されていることから、塗料濾過器(1)を経済的に製作するのに適当である。網体(2a)は、塗料の成分や粘度等に応じて種々の大きさの網目を有する金属製の平面状の網体を用いることができるが、50メッシュから1000メッシュ程度の網目を有する金属製の平面状の網体を用いると塗料から塵芥を濾し取るのには好適である。
【0031】
枠体(2b)は、金属製の平板状の部材である。枠体(2b)は、容易に破損することがなく、また重量の軽い部材が好適であるが、例えばその厚さが1ミリメートルから4ミリメートルのステンレス鋼製の薄板等を用いることができる。枠体(2b)に網体(2a)が取り付けられていることによって、とりわけ網体(2a)を洗浄して再使用する際に網体(2a)が変形したり破損したりすることを防止できる。
【0032】
枠体(2b)の上面は、その内周側の全周に網体(2a)の下面の外周側の全周が戴置されて取り付けられているのに対して、その外周側が全周にわたって開放されており、その外周側が密着部材(4)と直に接するようになっている。枠体(2b)の上面に網体(2a)の下面を取り付ける手段としては、図示するように枠体(2b)に穿設した孔部に挿通したステップルのような門型の金属線部材によって網体(2a)を押さえて取り付ける手段等が採用することができる。網体(2a)は塗料濾過器(1)において最も損傷し易い部材であるところ、このような手段によれば、網体(2a)を枠体(2b)に対して着脱自在なものとすることができるため、網体(2a)が破損した場合には網体(2a)のみを交換して枠体(2b)を再使用することができ好適である。もっとも、枠体(2b)の上面に網体(2a)の下面を取り付ける手段としては、溶接やネジ止め等の手段であってもよく、特にその手段は限定されない。
【0033】
案内体(3)は、濾過体(2)を通して塗料収納容器(A)へと塗料を案内するための部材であって、図1から3までに図示するように、両端の開放された筒体(3a)の一端に外側に拡がる鍔部(3b)を設けた部材である。鍔部(3b)の形状及び大きさは、固定具(5)が取り付けられることから、枠体(2b)の形状及び大きさと略等しいものとするのが好適である。案内体(3)は、容易に破損することがなく、また重量の軽い部材が好適であるが、例えばステンレス鋼製の薄板等を用いて形成することができる。案内体(3)は、図では、筒体(3a)が円筒状であって、鍔部(3b)も平面視円形リング状であるが、塗料収納容器(A)の開口部の形状及び大きさと濾過体(2)の形状及び大きさに合わせる等して、種々の形状及び大きさにすることができ、その形状及び大きさは特に限定されない。
【0034】
密着部材(4)は、図1から3までに図示するように、枠体(2b)と鍔部(3b)との間から塗料が漏出しないようにするための部材である。密着部材(4)は、柔軟性のあるシート状の環状部材であって、また塗料及び洗浄液によって損傷することが少ない部材を用いることが好適であり、例えばその厚さが1ミリメートル程度の環状の発泡ポリエチレンシートを用いることができる。密着部材(4)は、枠体(2b)の上面を覆う大きさを有しており、網体(2a)の上面において枠体(2b)の上面に戴置されている範囲と枠体(2b)において開放されている上面とを覆うことによって枠体(2b)と密着部材(4)との間に空隙を生じないようにして塗料が漏出しないようにする。密着部材(4)は、枠体(2b)と鍔部(3b)との間に挟み込むことから、枠体(2b)及び鍔部(3b)のそれぞれの形状及び大きさと略等しいものとするのが好適である。
【0035】
固定具(5)は、図1から3までに図示するように、密着部材(4)を枠体(2b)と鍔部(3b)との間に挟み込んで、濾過体(2)と案内体(3)とを結合するための部材である。固定具(5)は、図示するように側面視コの字形のクリップ部材を用いることができるが、公知のダブルクリップやC形クランプ等を用いることもできる。図では、固定具(5)は、塗料濾過器(1)の左右に二個取り付けられているが、その個数は特に限定されない。
【0036】
塗料濾過器(1)を用いて塗料の濾過を行う際、使用者は、図1から3までに図示するように、枠体(2b)の上面に密着部材(4)を戴置し、更に密着部材(4)の上面に案内体(3)を戴置して、固定具(5)に枠体(2b)と鍔部(3b)と密着部材(4)とを挟み込ませて案内体(3)と密着部材(4)とを結合し、塗料濾過器(1)を組み立てることができる。
【0037】
使用者が案内体(3)内に塗料を注ぎ入れると、該塗料は網体(2a)を通して塗料収納容器(A)へと案内され、網体(2a)によって該塗料に含まれている塵芥が濾し取られる。このとき、密着部材(4)が枠体(2b)と鍔部(3b)との間に挟み込まれているため、その間から塗料が漏出することを防止できる。そして、網体(2a)が濾過作業中に塗料に含有されている塵芥によって目詰まりを起こしてしまっても、網体(2a)は金属製の部材であるから、使用者は樹脂製のヘラで擦る等の目詰まりを解消する作業を行うことができる。
【0038】
塗料の濾過が終了したならば、使用者は、固定具(5)を枠体(2b)と鍔部(3b)とから取り外すことによって、塗料濾過器(1)を濾過体(2)と案内体(3)と密着部材(4)とに分解することができる。使用者は、塗料濾過器(1)の全体を十分かつ簡便に洗浄することができるとともに、網体(2a)は金属製の部材であるから、洗浄力の強い洗浄液を用いて網体(2a)を十分に洗浄し再使用することができる。また、濾過体(2)に損傷が認められる場合には、使用者は濾過体(2)のみを交換して、塗料濾過器(1)を使用することができる。
【0039】
以上が、本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器についての説明である。次に、本発明の第二実施形態に係る塗料濾過器の構造及びその使用態様について添付図面に基づいて説明する。尚、本発明の第二実施形態に係る塗料濾過器の構造及びその使用態様は、下記の事項以外、前記の本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器の構造及びその使用態様と同一である。
【0040】
嵌入固定具(51)は、図ではボルトであるが、ネジ、ビス等であってもよく、ボルト等の場合には適宜ナット(52)等を用いてもよい。嵌入固定具(51)は、図では4つであるが、その個数は特に限定されない。
【0041】
枠体(2b)及び鍔部(3b)のそれぞれには、図4から6に図示するように、嵌入固定具(51)を嵌入するための嵌入孔(2c,3c)が連通するように穿設されている。嵌入孔(2c,3c)は、図では4箇所穿設されているが、その個数は特に限定されない。
【0042】
固定具(5)として嵌入固定具(51)を用いる場合には、前記の本発明の第一実施形態に係る塗料濾過器における密着部材(4)よりも比較的弾力性の強い部材も採用することができ、例えばその厚さが1ミリメートル程度の環状のポリウレタンゴムシートを用いることができる。この場合、密着部材(4)には、枠体(2b)及び鍔部(3b)のそれぞれに穿設されている嵌入孔(2c,3c)と連通するように、密着部材(4)にも嵌入固定具(51)を嵌入するための嵌入孔(4a)を穿設するのが好適である。
【0043】
使用者は、図4から6までに図示するように、嵌入孔(2c)と嵌入孔(4a)とが連通するようにして枠体(2b)の上面に密着部材(4)を戴置し、更に嵌入孔(4a)と嵌入孔(3c)とが連通するようにして密着部材(4)の上面に案内体(3)を戴置して、嵌入固定具(51)をそれぞれの嵌入孔(2c,3c,4a)に嵌入させて、濾過体(2)と案内体(3)と密着部材(4)とを結合し、塗料濾過器(1)を組み立てることができる。
【0044】
本発明の第二実施形態に係る塗料濾過器(1)によれば、密着部材(4)としてポリウレタンゴムシートを用いることによって、枠体(2b)と鍔部(3b)との間をより強固に閉塞して塗料が漏出しないようにすることができるとともに、嵌入固定具(51)を用いることによって、濾過体(2)と案内体(3)とをより強固に結合することができ、好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 塗料濾過器
2 濾過体
2a 網体
2b 枠体
2c 嵌入孔
3 案内体
3a 筒体
3b 鍔部
3c 嵌入孔
4 密着部材
4a 嵌入孔
5 固定具
51 嵌入固定具
52 ナット
A 塗料収納容器
【要約】
【課題】 塗料に含有されている塵芥を濾し取るための塗料濾過器に関し、その濾過材として金属製の網体を用いる塗料濾過器であって、その組立て及び分解が可能な塗料濾過器につき、塗料の濾過に要する時間を短縮することができるとともに、該塗料濾過器を構成する部材の間隙から塗料が漏出することを防止できる塗料濾過器を提供する。
【解決手段】 塗料濾過器1は、濾過体2と、案内体3と、密着部材4と、固定具5とからなる。濾過体2は、金属製の平面状の網体2aと、金属製の平板状の枠体2bとからなる。案内体3は、筒体3aの一端に外側に拡がる鍔部3bを設けた部材である。密着部材4は、柔軟性のあるシート状の環状部材であって、枠体2bの上面を覆う大きさを有する。固定具5は、密着部材4を枠体2bと鍔部3bとの間に挟み込んで、濾過体2と案内体3とを結合するための部材である。
【選択図】 図1
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図2
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図5
図6