特許第5667724号(P5667724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667724デカンタ型遠心分離機及びデカンタ型遠心分離機の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5667724
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】デカンタ型遠心分離機及びデカンタ型遠心分離機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B04B 1/20 20060101AFI20150122BHJP
   B04B 15/06 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   B04B1/20
   B04B15/06
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-167887(P2014-167887)
(22)【出願日】2014年8月20日
【審査請求日】2014年8月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591162022
【氏名又は名称】巴工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勝也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 衛
(72)【発明者】
【氏名】井出 正広
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04496340(US,A)
【文献】 特表2002−502300(JP,A)
【文献】 特開2000−350946(JP,A)
【文献】 特開2002−018320(JP,A)
【文献】 特開平03−147794(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第01411644(GB,A)
【文献】 特開昭47−040556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/20、15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転筒と前記回転筒の内部に配置されたスクリューコンベアを有し、前記スクリューコンベアの内部に形成された処理物供給室から前記回転筒の内部にフィードされた固形物及び当該固形物が溶解した飽和溶液からなる処理物を遠心力で固液分離し、前記スクリューコンベアを回転動作させることによって、前記回転筒の軸方向における一端側に形成された固体排出口から固相成分を排出するとともに、他端側に形成された溶媒排出口から液相成分を排出するデカンタ型遠心分離機であって、
処理物の遠心分離中に、前記溶媒排出口に向かって前記回転筒の内部を移動する飽和溶液の排出経路であって、かつ、前記軸方向において前記処理物供給室よりも前記溶媒排出口側に形成された前記排出経路に対して飽和溶液の濃度を低下させる希釈溶媒を供給する希釈溶媒供給部を備えたことを特徴とするデカンタ型遠心分離機。
【請求項2】
前記希釈溶媒供給部は、前記溶媒排出口に対して希釈溶媒を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のデカンタ型遠心分離機。
【請求項3】
前記希釈溶媒供給部の溶媒吹き付け口は、前記溶媒排出口よりも前記回転筒の回転軸に近接した位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のデカンタ型遠心分離機。
【請求項4】
前記希釈溶媒供給部は、前記スクリューコンベアに沿って延びる管路を有しており、この管路は前記スクリューコンベアの内部に形成された希釈溶媒供給室に連通していることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のデカンタ型遠心分離機。
【請求項5】
回転筒と前記回転筒の内部に配置されたスクリューコンベアを有し、前記スクリューコンベアの内部に形成された処理物供給室から前記回転筒の内部にフィードされた固形物及び当該固形物が溶解した飽和溶液からなる処理物を遠心力で固液分離して、前記スクリューコンベアを回転動作させることによって、前記回転筒の軸方向における一端側に形成された固体排出口から固相成分を排出するとともに、他端側に形成された溶媒排出口から液相成分を排出するデカンタ型遠心分離機の運転方法であって、
処理物の遠心分離中に、前記溶媒排出口に向かって前記回転筒の内部を移動する飽和溶液の排出経路であって、かつ、前記軸方向において前記処理物供給室よりも前記溶媒排出口側に形成された前記排出経路に対して飽和溶液の濃度を低下させる希釈溶媒を供給することを特徴とするデカンタ型遠心分離機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物及び当該固形物が溶解した飽和溶液からなる処理物を遠心力で固液分離するデカンタ型遠心分離機等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品分野などでは、食品残渣等の固形物を溶解した飽和溶液を冷却することにより、飽和溶液及び固形物からなる固液混合状態の処理物を生成し、この処理物をデカンタ型の遠心分離機によって固液分離する処理が行われている。
【0003】
デカンタ型の遠心分離機は、回転軸方向における一端側に溶媒排出口が形成され、他端側に固体排出口が形成された回転筒と、この回転筒の内部に配置されるスクリューコンベアとを備え、回転動作する回転筒の遠心力によって処理物を固液分離するとともに、スクリューコンベアによって、固体排出口から固形物を回収し、溶媒排出口から分離液を排出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭47−40556号公報
【特許文献2】特開2013−662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、遠心分離された飽和溶液から固形物が析出して、この析出した固形物によって溶媒排出口が閉塞する不具合を発見した。この閉塞状態を解消する方法として、デカンタの運転を一時的に停止し、溶媒排出口に付着した固形物を洗浄により除去する方法が考えられる。しかしながら、この方法を実施するためには、高速回転している大型のデカンタを減速して一旦停止させてから、洗浄を行う必要がある。また、洗浄後に、デカンタを所定の速度(例えば、4000rpm)に加速させてからでないと、処理物をフィードすることができない。つまり、デカンタの減速、洗浄、加速期間中は、デカンタによる遠心分離処理を停止しなければならないため、効率的な処理が妨げられる。
【0006】
また、別の観点として、遠心分離された飽和溶液を加熱して不飽和溶液とする方法が考えられる。飽和溶液を加熱することで溶解度が大きくなるため、固形物の析出を抑制できる。しかしながら、この方法は、高速回転する熱容量の大きい大型のデカンタを加熱しなければならないため、実現性が低い。
【0007】
ここで、飽和溶液の濃度を低下させる希釈溶媒を処理物とともにデカンタに添加することにより、固形物の析出を抑制する方法も考えられるが、固液分離された固形物が希釈溶媒によって溶解され、固形物の回収率が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本願発明は、遠心分離機の運転を継続しながら、固形物の回収率を低下させることなく、飽和溶液から析出した固形物によって、溶媒排出口が閉塞するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠心分離機は、(1)回転筒と前記回転筒の内部に配置されたスクリューコンベアを有し、前記スクリューコンベアの内部に形成された処理物供給室から前記回転筒の内部にフィードされた固形物及び当該固形物が溶解した飽和溶液からなる処理物を遠心力で固液分離し、前記スクリューコンベアを回転動作させることによって、前記回転筒の軸方向における一端側に形成された固体排出口から固相成分を排出するとともに、他端側に形成された溶媒排出口から液相成分を排出するデカンタ型遠心分離機であって、処理物の遠心分離中に、前記溶媒排出口に向かって前記回転筒の内部を移動する飽和溶液の排出経路であって、かつ、前記軸方向において前記処理物供給室よりも前記溶媒排出口側に形成された前記排出経路に対して飽和溶液の濃度を低下させる希釈溶媒を供給する希釈溶媒供給部を備えたことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記希釈溶媒供給部は、前記溶媒排出口に対して希釈溶媒を吹き付けることができる。(2)の構成によれば、固形物が析出する溶媒排出口に対して直接希釈溶媒が吹き付けられるため、溶媒排出口が閉塞することをより効果的に防止できる。
【0011】
(3)上記(2)の構成において、前記希釈溶媒供給部の溶媒吹き付け口は、前記溶媒排出口よりも前記回転筒の回転軸に近接した位置に設けることができる。(3)の構成によれば、回転筒の遠心力に抗しながら溶媒を吹き付ける必要がないため、希釈溶媒の噴射圧力をより小さくすることができる。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)の構成において、前記希釈溶媒供給部は、前記スクリューコンベアに沿って延びる管路を有しており、この管路は前記スクリューコンベアの内部に形成された希釈溶媒供給室に連通させることができる。
【0013】
本願発明の遠心分離機の運転方法は、(5)回転筒と前記回転筒の内部に配置されたスクリューコンベアを有し、前記スクリューコンベアの内部に形成された処理物供給室から前記回転筒の内部にフィードされた固形物及び当該固形物が溶解した飽和溶液からなる処理物を遠心力で固液分離して、前記スクリューコンベアを回転動作させることによって、前記回転筒の軸方向における一端側に形成された固体排出口から固相成分を排出するとともに、他端側に形成された溶媒排出口から液相成分を排出するデカンタ型遠心分離機の運転方法であって、処理物の遠心分離中に、前記溶媒排出口に向かって前記回転筒の内部を移動する飽和溶液の排出経路であって、かつ、前記軸方向において前記処理物供給室よりも前記溶媒排出口側に形成された前記排出経路に対して飽和溶液の濃度を低下させる希釈溶媒を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記溶媒排出口に向かう飽和溶液の排出経路に対して希釈溶媒を供給することで、飽和溶液から析出した固形物によって溶媒排出口が閉塞することを防止できる。また、遠心分離機の運転中に希釈溶媒の供給処理が行われるため、遠心分離機の処理効率が損なわれることもない。さらに、希釈溶媒を飽和溶液の排出経路にのみ供給しているため、遠心分離された固形物が希釈溶媒に溶解して、固形物の回収率が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に従うデカンタの全体構成を示す図である。
図2】デカンタの一部における拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態である遠心分離機について、横型のデカンタを一例に挙げて説明する。但し、以下に説明する各実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。図1はデカンタの正面図であるとともに、その一部における断面図である。図2は、当該断面図に図示された要素の拡大図である。
【0017】
これらの図を参照して、デカンタ1は、回転筒10と、この回転筒10の内部に配置されるスクリューコンベア20とを含む。回転筒10は、二点鎖線で示す回転軸L周りに回転する。回転筒10の回転軸L方向における一端部はベアリング11に対して回転可能に支持されており、他端部はベアリング12に対して回転可能に支持されている。回転筒10の回転軸方向における一端側には、複数の溶媒排出口13が形成されている。これらの溶媒排出口13は、回転筒10の回転軸L周りに配列されており、隣接する溶媒排出口13の間隔は略等間隔に設定されている。溶媒排出口13の開口形状は、例えば円形であってもよい
【0018】
回転筒10の回転軸L方向における他端部には、複数の固体排出口14が形成されている。これらの固体排出口14は、回転筒10の回転軸L周りに配列されており、隣接する固体排出口14の間隔は略等間隔に設定されている。固体排出口14の開口形状は、例えば円形であってもよい。
【0019】
回転筒10の回転軸L方向における他端側の内壁面には、固体排出口14に向かって回転軸L方向に傾斜するビーチ部15が形成されている。ただし、本発明は、ビーチ部15を有しない内径が一定の回転筒10にも適用することができる。
【0020】
スクリューコンベア20は、回転筒10内で遠心力が付与された固形物を搬送する機能を有しており、回転筒10に対して相対的な差速を持って回転する。すなわち、スクリューコンベア20は、ギアボックス30から動力が伝達されることにより、回転筒10よりも遅い回転速度で回転する。ギアボックス30には、例えば遊星ギアを用いることができる。
【0021】
スクリューコンベア20の胴部21の外周面にはスクリュー羽根22が螺旋状に形成されている。胴部21の内部には空洞部(バッファ部)が形成されており、この空洞部は処理物を供給する処理物供給室21aと、遠心分離された飽和溶液に対して希釈溶媒を供給するための溶媒供給室21bとを備えている。処理物供給室21aの外周面には、複数の処理物通路210aが形成されている。
【0022】
供給管40は、回転筒10を駆動するためのプーリー31を貫通して回転筒10の回転軸L方向に延びており、主供給管41及び主供給管41の外周に形成された副供給管42からなる二重管構造に構成されている。主供給管41の一端は回転筒10の外側で処理物導入口41aを形成しており、主供給管41の他端は処理物供給室21aの内側で処理物供給口41bを形成している。
【0023】
処理物導入口41aから導入された処理物は、主供給管41を介して処理物供給室21aの内部に導入される。処理物には、固形物を含む飽和溶液が用いられる。この固形物は、例えば、飽和溶液を冷却することにより析出したり、或いは飽和溶液に溶けきらずに残留したものである。すなわち、本実施形態のデカンタ1で処理される処理物は、飽和溶液を冷却することにより固形物が析出した固液混合状態の溶液となっている。飽和溶液には、例えばグルタミン酸ソーダが溶解した飽和溶液、食品残渣が溶解した飽和溶液、ケミカル分野で用いられる飽和溶液を用いることができる。ケミカル分野で用いられる飽和溶液には、例えば、硫安、食塩などの塩類、アミノ酸を含む溶液が含まれる。
【0024】
副供給管42の一端は回転筒10の外側において希釈溶媒導入口42aを形成しており、副供給管42の他端は閉塞している。副供給管42が設けられることで、主供給管41の外周に沿って環状の希釈溶媒通路が形成される。副供給管42のうち回転軸Lに沿って延びる領域には複数の希釈溶媒供給口42bが形成されており、これらの希釈溶媒供給口42bは溶媒供給室21bに連通している。
【0025】
溶媒供給室21bの円周には複数の開口部210bが設けられ、これらの開口部210bに対して希釈溶媒通路管23の一端が接続されている。したがって、希釈溶媒通路管23は、スクリューコンベア20とともに回転する。なお、希釈溶媒通路管23は開口部210bの数だけ設けられている。
【0026】
希釈溶媒通路管23は、スクリューコンベア20の回転軸方向に沿って延びており、その終端部には溶媒吹き付け口23aが形成されている。溶媒吹き付け口23aは、少なくとも処理物供給室21aよりも溶媒排出口13に近接した位置に設けられている。すなわち、遠心分離によって固液分離された飽和溶液の溶液排出経路に対して希釈溶媒を吹き付けることが可能な適宜の位置に溶媒吹き付け口23aは形成されている。溶液排出経路とは、回転筒10の内部、かつ、スクリューコンベア20の外部であって、回転筒10の回転軸L方向において、処理物供給室21aよりも溶媒排出口13に近接した領域(ただし、溶媒排出口13が位置する領域も含む)のことである。溶媒供給室21b、希釈溶媒通路管23及び副供給管42が協働することによって、希釈溶媒供給部が構成される。
【0027】
上述の溶液排出経路に対して希釈溶媒を供給することで、飽和溶液が希釈化されるため、固形物の析出が抑制される。これにより、析出した固形物によって溶媒排出口13が閉塞されることを防止できる。また、析出した固形物によって、溶媒排出口13が閉塞した場合には、希釈溶媒によって希釈された不飽和溶液が接触することで析出した固形物を溶解することができる。これにより、溶媒排出口13の閉塞状態を解消できる。このように、本実施形態によれば、固形物の析出を起こりにくくするか、或いは析出した固形物を溶解することで、溶媒排出口13が閉塞状態となることを防止できる。
【0028】
また、回転筒10の回転軸L方向において隣接する溶媒排出経路及び固体排出経路のうち溶媒排出経路にのみ希釈溶媒を供給しているため、一旦遠心分離された固形物を、希釈溶媒と接触させることなく回収できる。すなわち、遠心分離された固形物が希釈溶媒に溶解して、固形物として回収不能となることを防止できる。
【0029】
より具体的には、本実施形態の場合、溶媒排出口13に向かって溶媒を吹き付ける位置に溶媒吹き付け口23aが形成されている。これにより、固形物が析出し易い溶媒吹き付け口23aに向かって希釈溶媒を直接吹き付けることができる。その結果、より確実に溶媒排出口13における閉塞を防止できる。
【0030】
溶媒吹き付け口23aは、溶媒排出口13よりも回転筒10の回転軸Lに近接した領域、つまり、回転筒10のより径方向中心側に配置するのが好ましい。溶媒吹き付け口23aを溶媒排出口13よりも回転筒10の径方向外側に配置すると、スクリューコンベア20とともに回転する希釈溶媒通路管23の遠心力に抗しながら、希釈溶媒を溶媒排出口13に対して吹き付けなければならない。そのため、希釈溶媒の噴射圧力が小さい場合には、希釈溶媒を溶媒排出口13に到達させることができない。
【0031】
溶媒吹き付け口23aを溶媒排出口13よりも回転筒10の回転軸Lに近接した位置に配置することにより、遠心力に抗しながら希釈溶媒を吹き付ける必要がなくなるため、より小さな噴射圧力に基づき希釈溶媒を溶媒吹き付け口23aに吹き付けることができる。希釈溶媒には、飽和溶液を希釈して不飽和溶液とすることができる適宜の溶媒を用いることができる。例えば、希釈溶媒として、水、アセトンを用いることができる。
【0032】
次に、デカンタ1の動作について説明する。まず、回転筒10及びスクリューコンベア20を所定速度で回転させる。回転筒10及びスクリューコンベア20の回転速度が所定速度に達すると、処理物導入口41aを介して主供給管41の内部に処理物をフィードする。フィードされた処理物は、主供給管41の処理物供給口41bから処理物供給室21aに供給され、処理物供給室21aの処理物通路210aから回転筒10の内部に供給される。
【0033】
回転筒10の内部に供給された処理物は、回転筒10によって遠心力が付与され、回転筒10のプール部全周に亘って貯留された状態となり、さらに比重差によって固形物が回転筒10の内周面側に沈降した状態となる。そして、回転筒10の内周面側に沈降した固形物は、回転動作するスクリューコンベア20のスクリュー羽根22によってビーチ部15に向かって移送され、ビーチ部15に到達することで飽和溶液から分離される。飽和溶液から分離した固形物は、ビーチ部15を登り固体排出口14から回転筒10の外部に排出される。
【0034】
一方、飽和溶液は、処理物を連続供給することによって、溶媒排出口13からオーバーフローする。ここで、処理物の処理をさらに継続すると、飽和溶液から析出した固形物が溶媒排出口13に付着する。そこで、本実施形態では、処理物のフィード開始後、適切なタイミングで希釈溶媒を溶媒排出口13に対して吹き付ける処理を行う。すなわち、処理物のフィード開始後、所定時間経過後に副供給管42、溶媒供給室21b及び希釈溶媒通路管23を介して、希釈溶媒を溶媒排出口13に向かって吹きつける処理を行う。吹き付けられた希釈溶媒によって固形物が溶解するため、溶媒排出口13が閉塞するのを防止できる。
【0035】
本実施形態では、処理物のフィード開始後所定時間経過後に希釈溶媒を吹き付ける構成としたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、処理物のフィード開始とともに、希釈溶媒を吹き付ける方法であってもよい。また、吹き付け方法は、連続的であってもよいし、或いは間欠的であってもよい。
【0036】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 デカンタ
10 回転筒
11、12 ベアリング
13 溶媒排出口
14 固体排出口
15 ビーチ部
20 スクリューコンベア
21 胴部
21a 処理物供給室
21b 溶媒供給室
22 スクリュー羽根
23 希釈溶媒通路管
23a 溶媒吹き付け口
30 ギアボックス
31 プーリー
40 供給管
41 主供給管
41a 処理物導入口
41b 処理物供給口
42 副供給管
42a 希釈溶媒導入口
42b 希釈溶媒供給口

【要約】
【課題】遠心分離機の運転を継続しながら、飽和溶液から析出した固形物によって、溶媒排出口が閉塞するのを防止することを目的とする。
【解決手段】回転筒の内部にフィードされた固形物及び当該固形物が溶解した飽和溶液からなる処理物を遠心力で固液分離して、前記回転筒の内部に配置されたスクリューコンベアを回転動作させることによって、該回転筒の軸方向における一端側に形成された固体排出口から固相成分を排出するとともに、他端側に形成された溶媒排出口から液相成分を排出するデカンタ型遠心分離機であって、処理物の遠心分離中に、前記溶媒排出口に向かう飽和溶液の排出経路に対して飽和溶液の濃度を低下させる希釈溶媒を供給する希釈溶媒供給部を備えたデカンタ型遠心分離機。
【選択図】図1
図1
図2