(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667728
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】少なくとも1つのロックエレメントを備えた自動車パーキングロック装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20150122BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-516202(P2014-516202)
(86)(22)【出願日】2011年12月10日
(65)【公表番号】特表2014-517237(P2014-517237A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2011006252
(87)【国際公開番号】WO2012175102
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年2月18日
(31)【優先権主張番号】102011105068.3
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ポラック
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0125619(US,A1)
【文献】
実開昭61−7461(JP,U)
【文献】
特開2007−303680(JP,A)
【文献】
特開2008−128444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングロックピストン(11)を噛合いによってロックするために設けられる少なくとも1つのロックエレメント(10)と、前記パーキングロックピストン(11)のロック解除のために設けられる少なくとも1つの電磁アクチュエータ(13)を有するロック解除ユニット(12)とを備え、
前記ロック解除ユニット(12)が別のアクチュエータ(14)を有し、前記別のアクチュエータ(14)は、電磁アクチュエータ(13)と並行的に作用するものであり、かつ少なくとも前記電磁アクチュエータ(13)の作動不能時に前記パーキングロックピストン(11)をロック解除するために設けられる、自動車パーキングロック装置において、
前記別のアクチュエータ(14)が油圧または空気圧アクチュエータ(14)であり、
前記パーキングロックピストン(11)を非パーキングポジションにシフトするために設けられた単動作動シリンダ(15)と、前記パーキングロックピストン(11)をパーキングポジションにシフトするために設けられたスプリング(16)と、
および、作動流体圧力供給器(17)と、第1バルブポジションでは前記油圧または空気圧アクチュエータ(14)を前記作動流体圧力供給器(17)に流体力学的に接続し、また第2バルブポジションでは前記作動シリンダ(15)を前記作動流体圧力供給器(17)に流体力学的に接続するスイッチングバルブ(18)とを特徴とする、自動車パーキングロック装置。
【請求項2】
前記ロックエレメント(10)が、前記パーキングロックピストン(11)を油圧または空気圧による非過圧力形式でロックするために設けられた噛合い形状を有することを特徴とする、請求項1記載の自動車パーキングロック装置。
【請求項3】
前記ロックエレメント(10)が、前記パーキングロックピストン(11)をパーキングポジションと非パーキングポジションでロックするために設けられていることを特徴とする、少なくとも請求項1または2記載の自動車パーキングロック装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車パーキングロック装置のパーキングロックピストン(11)をロック解除するための方法において、
前記パーキングロックピストン(11)は、電磁アクチュエータ(13)によって、または、油圧若しくは空気圧アクチュエータ(14)によってロック解除され得る方法であって、
非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン(11)は前記油圧若しくは空気圧アクチュエータ(14)によってロック解除され、パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン(11)は前記電磁アクチュエータ(13)によってロック解除されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に基づく自動車パーキングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により自動車パーキングロック装置が既知である。自動車パーキングロック装置は、ロックエレメントとロック解除ユニットを備えている。ロックエレメントは、パーキングロックピストンを、噛合いによりロックするために備えられている。ロック解除ユニットは、パーキングロックピストンの解除のために備えられている電磁アクチュエータを有している。電磁アクチュエータはパーキングロックピストンの解除のために備えられている。
特許文献2によりパーキングロック装置が既知である。このパーキングロック装置では、油圧または空気圧アクチュエータによってパーキングロック装置がロックされる。
特許文献3により油圧または空気圧により作動可能なパーキングロックピストンとロック装置を備えた自動車パーキングロック装置が既知である。このパーキングロックピストンは、スプリングによってパーキングポジションへ送られ得る。
特許文献4によりこの種の自動車パーキングロック装置が既知であり、それは少なくとも1つのロックエレメントと1つのロック解除ユニットとを備え、このロックエレメントはパーキングロックピストンを噛合いによってロックするために備えられており、またロック解除ユニットはパーキングロックピストンのロック解除のために備えられている少なくとも1つの電磁アクチュエータを有する。このロック解除ユニットは、電磁アクチュエータと並行的な作用をする第2のアクチュエータを備えている。第2のアクチュエータは、少なくとも電磁アクチュエータの故障時にパーキングロックピストンを解除するために備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 10 2005 060 583 A1
【特許文献2】DE 10 2006 049 639 A1
【特許文献3】EP 1 855 033 A2
【特許文献4】US 2007/125619 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、簡易な自動車パーキングロック装置の提供という課題が、本発明の基礎をなしている。この課題は、本発明にしたがい、請求項1の特徴によって果たされる。その他の発明実施形態は従属請求項で明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自動車パーキングロック装置に向けられており、これはパーキングロックピストンを噛合いでロックするために設けられる少なくとも1つのロックエレメントと、パーキングロックピストンのために設けられる少なくとも1つの電磁アクチュエータを有するロック解除ユニットとを備える。
ロック解除ユニットが電磁アクチュエータと並行的作用をする油圧および/または空気圧アクチュエータを有することが提案される。このアクチュエータは少なくとも電磁アクチュエータの停止時に、パーキングロックピストンを解除するために備えられている。そのことによって、パーキングロックピストンの冗長性のある解除が可能となる。このことにより、パーキングロックピストンを電磁アクチュエータの停止および/または故障時にも、とりわけ有利に解除できる。このことによって自動車パーキングロック装置の設計を簡素化できる。このことにより、自動車パーキングロック装置が、とりわけ容易にもっと大きな操作エリアにおいて設計可能である。このことによって、頑丈で、簡易な自動車パーキングロック装置が提供可能である。“パーキングロックピストン”とは、特に、軸方向に動くピストンを意味するものとして理解され、このピストンは、パーキングロックの作動、または解除のために、パーキングロックのつめと力学的に連結されている。“パーキングロックピストンのロック”とは、特に、パーキングロックピストンの軸方向の固定、したがってパーキングロックの作動状態または解除状態の保持を意味するものとして理解される。“パーキングロックピストンのロック解除”とは、特に、パーキングロックピストンの軸方向固定の解消を意味するものと理解される。この関連で、“並行的”とは、電磁アクチュエータから生成され得る磁力と油圧および/または空気圧アクチュエータから生成され得る油圧および/または空気圧の力とが、同じ作用、つまりパーキングロックピストンのロック解除を行うことを意味するものと理解される。その際、それぞれ電磁アクチュエータまたは油圧および/または空気圧アクチュエータにより解除が行われ得る。“備えられている”とは、特に、特別にプログラムされている、設計されている、備えつけられている、および/または配置されていることを意味するものと理解される。
【0006】
さらに、ロックエレメントが、噛合い形状を有することが提案される。噛合い形状は、パーキングロックピストンを油圧および/または空気圧による非過圧力形式で、ロックするために備えられる。ロックエレメントによって、パーキングロックピストンの確かなロックが実現可能で、このことにより、パーキングロックピストンの意図しない解除が回避され得る。“油圧および/または空気圧による非過圧力形式”とは、パーキングロックピストンのシフトのために備えられている、パーキングロックピストンに作用する油圧および/または空気圧の力によってパーキングロックピストンの解除はできないことを意味するものと特に理解される。
【0007】
さらに、自動車パーキングロック装置が単動作動シリンダとスプリングを有することが提案される。作動シリンダはパーキングロックピストンを非パーキングポジションにシフトするために備えられており、スプリングはパーキングロックピストンをパーキングポジションにシフトするために備えられている。作動シリンダとスプリングによって、自動車パーキングロック装置を簡素化できる。“単動作動シリンダ”とは、特に、パーキングロックピストンの、油圧および/または空気圧によるシフトのために備えられている単一の圧力チャンバの設計のためだけに備えられている作動シリンダを意味するものと理解される。“パーキングロックピストンのシフト”とは、特に、パーキングロックピストンの、パーキングポジションまたは非パーキングポジションとして割り当てられる軸上のポジションへの軸移動を意味するものと理解される。“パーキングポジション”とは、特に、パーキングロックがかけられているポジションを意味するものと理解される。“非パーキングポジション”とは、特に、パーキングロックが解除されている、および/またはドライブポジションとして設計されているポジションを意味するものと理解される。“圧力チャンバ”とは、少なくとも1つの静止壁と少なくとも1つの可動壁とを有し、油圧および/または空気圧によって作用を与えられるチャンバを意味するものと理解される。
【0008】
特に、もし自動車パーキングロック装置が、作業流体圧力供給器とスイッチングバルブを有していれば有益である。スイッチングバルブは、それぞれ第1バルブポジションでは油圧および/または空気圧アクチュエータを、第2バルブポジションでは作動シリンダを、作業流体圧力供給器に流体力学的に連結する。これによって、パーキングポジションと非パーキングポジションとがとりわけ都合よく切り替えられる。“作業流体圧力供給器”とは、特に、たとえばポンプ、スイッチングバルブ、管、シールド等の油圧および/または空気圧によるエレメントから成るユニットを意味するものと理解される。このユニットは、スイッチングバルブによる作業流体供給のため不可欠である。
【0009】
さらに、もしロックエレメントが、パーキングポジションと非パーキングポジションでパーキングロックピストンをロックするために備えられていれば、有益である。これによって、とりわけすぐれた自動車パーキングロック装置が供給可能である。自動車パーキングロック装置では、パーキングロックピストンを確実にパーキングポジションと非パーキングポジションにおいてロックできる。
【0010】
さらに、自動車パーキングロック装置、とりわけ本発明による自動車パーキングロック装置のロック解除のための方法が提案される。この方法では、パーキングロックピストンが電磁アクチュエータによって、および/または、油圧および/または空気圧アクチュエータによって解除される。これによって、非常時のロック解除がとりわけ容易に実行可能である。
【0011】
さらに、この方法のために、非パーキングポジションでロックされるパーキングロックピストンが、油圧および/または空気圧アクチュエータによって、ロック解除される、またパーキングポジションでロックされるパーキングロックピストンが、電磁アクチュエータによってロック解除されることが提案される。これによって、パーキングポジションと非パーキングポジションにおける有益な解除が実現され得る。
【0012】
他の利点については、以下の図面の説明で明らかにされる。図面では、本発明の実施例が示されている。図面、説明、請求項では、数多くの特徴が組合わされている。当業者は、これらの特徴を有効なやり方で個別に考察し、それらを更なる有意義な組み合わせに組み合わせるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明による自動車パーキングロック装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
自動車パーキングロック装置は、ここでは詳細に叙述されないパーキングロック付の自動トランスミッション装置の一部である。トランスミッション装置は、自動車のトランスミッション装置として設計されている。自動車パーキングロック装置は、パーキングロックのつめによって、ここでは詳細に叙述されないトランスミッション装置の歯車またはシャフトをブロックするために備えられている。
自動車パーキングロック装置は、作業流体の供給と同時に、作業流体圧力供給のために、作業流体圧力供給器17を有する。作業流体圧力供給器17は、使用圧力と制御圧力を調節するために備えられている。作業流体圧力供給器17は、使用圧力によって制限される一定制御圧力を調節する。ここで、“使用圧力によって制限される制御圧力”とは、特に、最大値までの使用圧力に対応する制御圧力を意味するものとして理解される。原則として、作動流体圧力供給器17は、使用圧力に対応する一定制御圧力をも調節できる。
【0015】
作業流体圧力供給器17は、ここでは詳細に叙述されない2つのポンプを有している。そのうちの1つのポンプは、主要ポンプとして設計されている。これは、自動車パーキング装置を有する自動車のエンジンと連結されている。他のポンプは、補助ポンプとして設計されている。これは主要ポンプの補助のため、またはエンジンが作動停止時の作業流体供給のために備えられている。補助ポンプは、電動ポンプとして設計されている。2つのポンプはそれぞれオイルポンプとして設計されている。パーキングロックのシフトのため、自動車パーキングロック装置は油圧作動ユニット19を有している。作動ユニット19はパーキングポジションと非パーキングポジションを有する。パーキングポジションではパーキングロックが作動されており、非パーキングポジションではパーキングロックが解除されている。パーキングポジションではパーキングロックが作動されており、非パーキングポジションではパーキングロックが作動しないように調節されている。
【0016】
作動ユニット19は、単動的に設計されている。作動ユニット19はパーキングロックのシフトのため、単動作動シリンダ15、単一方向に作用するパーキングロックピストン11、および作動エレメント20を有する。作動シリンダ15は、パーキングロックピストン11をパーキングロックポジションへシフト、したがって移動するために備えられている。パーキングロックピストン11は、軸方向に移動可能な形で、作動シリンダ15に配置されている。パーキングロックピストン11は、作動エレメント20と固定して連結されている。パーキングロックピストンと作動エレメントは、一体的に設計されている。パーキングロックピストン11は、作動エレメント20によって、パーキングロックのつめと移動可能に連結されている。作動エレメント20は、パーキングロックピストン11によって、主要伸長方向21に沿い、2つの正反対のシフト方向22,23への軸移動が可能である。作動エレメント20はパーキングロックのつめを操作する。シフト方向22は、非パーキングポジションに割り当てられる。つまり、パーキングロックピストン11と共に作動エレメント20のシフト方向22への軸移動がパーキングロックの解除をもたらす。シフト方向23は、パーキングポジションに割り当てられる。つまりパーキングロックピストン11と共に作動エレメント20の、シフト方向23への軸運動によってパーキングロックが作動される。作動エレメント20は操作ポールとして設計されている。
【0017】
非パーキングポジションの油圧調節のため、作動ユニット19は圧力チャンバ24を有する。圧力チャンバ24は、非パーキングポジションへのシフト、したがってパーキングロックの解除のために備えられている。作動エレメント20は、圧力チャンバ24の与圧によってシフト方向への軸移動が可能である。圧力チャンバ24は作動シリンダ15と作動シリンダ15に配置されたパーキングロックピストン11によって形成されている。作動シリンダ15は単一の圧力チャンバ24の形成のため、パーキングロックピストン11を可動可能に収納する。圧力チャンバ24は、作動シリンダ15と、作動エレメント20から離れたパーキングロックピストン11の接触面25とによって形成されている。接触面25は圧力チャンバ24の可動壁として設計されている。パーキングロックピストン11の接触面25は圧力チャンバ24内を支配する作動流体圧力を、パーキングロックピストン11にかかる作動力、したがって作動エレメント20への作動力に転換する。
【0018】
パーキングピストン11をパーキングポジションへ機械的かつ自動的にシフトするために、作動ユニット19はスプリング16を有する。このスプリングはパーキングポジションを自動的に設定するため備えられている。スプリング16はパーキングポジションの常圧設定、同時に油圧によるバックアップがないパーキングポジション設定のために備えられている。スプリング16は、作用に適するように、作動シリンダ15とパーキングロックピストン11の間に配置されている。スプリング16は、作動シリンダ15の外に配置されている。スプリング16の弾性は、圧力チャンバ24内の作業流体圧力によって生成され得る力に抗して作用する。スプリング16の弾性は、シフト方向23に作用する。スプリング16は、圧力チャンバ24の常圧時に、パーキングポジション設定のために備えられている。原則としてスプリング16はパーキングポジション設定のため、油圧によってもバックアップが得られ得る。
【0019】
自動車パーキングロック装置は、作動ユニット19をロックするため、したがってパーキングロックピストン11をロックするため、機械的なロックユニット26を有する。このロックユニットは、作動ユニット19の、したがってパーキングロックピストン11のロックの戻り止めのために備えられる。ロックユニット26は、パーキングポジションでパーキングロックピストン11をロックするため、したがって作動されたパーキングロックをロックするため、また、非パーキングポジションでパーキングロックピストン11をロックするため、したがって解除されたパーキングロックをロックするために備えられている。ロックユニット26は、油圧による非過圧力形式で設計されている。ロックユニット26は、圧力チャンバ24内でパーキングロックピストン11に作用する力によって、解除できない。
【0020】
ロックユニット26は、作動エレメント20に組み入れられる2つの噛合い形状27、28を有する。作動エレメント20は噛合い形状27、28を形成する。噛合い形状27はパーキングポジションに、噛合い形状28は非パーキングポジションに割り当てられている。噛合い形状27、28は、それぞれ斜面がないように設計されている。つまり噛合い形状27、28は、摩擦係合によるロックのために、したがって油圧による過圧力可能形式のロックのために備えられる摩擦面を有しない。
【0021】
パーキングポジションと非パーキングポジションでのパーキングロックピストンの噛合いによるロックのため、ロックユニット26は、ロックエレメント10を有している。ロックエレメント10は、パーキングロックピストン11を必要があればパーキングポジションまたは非パーキングポジションでロックする。パーキングポジションでロックエレメント10は噛合い形状27に係合する。非パーキングポジションでロックエレメント10は噛合い形状28に係合する。噛合い形状27、28のいずれかにおいて、ロックエレメント10が係合することによって、パーキングロックピストン11が、噛合いおよび油圧による非過圧力形式でロックされる。ロックエレメント10は、噛合い形状27、28に対応するように設計された噛合い形状を有する。ロックエレメント10の噛合い形状は、パーキングロックピストン11を油圧による非過圧力形式でロックする。ロックエレメント10の噛合い形状は斜面がないように設計されている。ロックエレメント10の噛合い形状は摩擦面を有さない。これによって、非過圧力形式のロックが生じる。ロックエレメント10が係合する際、垂直の壁を伴うロックエレメント10の噛合い形状は、対応する噛合い形状27、28の垂直の壁に密着している。ロックユニット26は、さらにスプリング29を有する。スプリング29は作動エレメント20に対しロックエレメント10を押し出す。スプリング29は、ロックエレメント10の噛合い形状を噛合い形状27,28のそれぞれに押し付ける。パーキングポジションまたは非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11に作用するロック力が、ロックエレメント10とスプリング16の弾性とによって生じる。
【0022】
パーキングロックピストン11のロック解除のために、自動車パーキングロック装置は、ロック解除ユニット12を有している。冗長的なロック解除のために、ロック解除ユニット12は、電磁アクチュエータ13と、油圧アクチュエータ14とを有している。電磁アクチュエータ13と油圧アクチュエータ14は、それぞれ、パーキングロックピストン11のロック解除のために設けられている。パーキングロックピストン11は、電磁アクチュエータ13または油圧アクチュエータ14によって、ロック解除され得る。パーキングロックピストン11は、パーキングポジションにシフトするためには油圧アクチュエータ14によってロック解除され、非パーキングポジションにシフトするためには電磁アクチュエータ13によってロック解除される。非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11は、油圧アクチュエータ14によってロック解除され、パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11は、電磁アクチュエータ13によってロック解除される。
【0023】
電磁アクチュエータ13は、パーキングロックピストン11のロック解除のために、ロックエレメント10に作用する磁力を供給する。電磁アクチュエータ13は、非パーキングポジションにシフトするために、パーキングロックピストン11をロック解除する。電磁アクチュエータ13は、パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11をロック解除する。電磁アクチュエータ13は、ロック解除のために磁力を供給し、この磁力が、スプリング29の弾性に抗して作用する。電磁アクチュエータ13は、ロック解除のために、ロックエレメント10とパーキングロックピストン11との間の噛合いを解除する。電磁アクチュエータ13は、ロックエレメント10を、噛合い形状27から押し出す、または引き抜く。電磁アクチュエータ13を用いたロック解除のために、自動車パーキングロック装置の、ここでは詳細に叙述されない制御・調整ユニットが、電磁アクチュエータ13に通電し、それにより噛合いが解除される。電磁アクチュエータ13はソレノイドとして設計されている。
【0024】
油圧アクチュエータ14は、電磁アクチュエータ13と並行的に作用する。油圧アクチュエータ14は、パーキングロックピストン11のロック解除のために、ロックエレメント10に作用する油圧を供給する。油圧アクチュエータ14は、パーキングポジションにシフトするために、パーキングロックピストン11をロック解除する。油圧アクチュエータ14は、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11をロック解除する。油圧アクチュエータ14は、ロック解除のために油圧を供給し、この油圧が、スプリング29の弾性に抗して作用する。油圧アクチュエータ14は、ロック解除のために、ロックエレメント10とパーキングロックピストン11との間の噛合いを解除する。油圧アクチュエータ14は、ロックエレメント10を、噛合い形状28から押し出す、または引き抜く。油圧の供給と、それによる油圧式ロック解除のために、油圧アクチュエータ14は圧力チャンバを有する。パーキングロックピストン11は、油圧アクチュエータ14の圧力チャンバへの与圧によって、ロック解除可能である。油圧アクチュエータ14の圧力チャンバの接触面が、圧力チャンバ内で支配的な作動流体圧力を、ロックエレメント10にかかるロック解除力へと転換し、その際、そのロック解除力は、スプリング29の弾性に抗して作用する。
【0025】
原則として、アクチュエータ14は、空気圧アクチュエータとして設計されていてもよい。電磁アクチュエータ13は、原則として、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のために設けられていてもよく、それにより油圧アクチュエータ14と同時かつ並行的に、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のために、ロックエレメント10に作用してもよい。これにより、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除は、電磁アクチュエータ13の作動不能時でも、実施可能である。油圧アクチュエータ14は、それゆえ特に、電磁アクチュエータ13の作動不能時のパーキングロックピストン11のロック解除のために、したがって非常時ロック解除のために、設けられている。油圧による過圧力がかけられないロックユニット26は、パーキングポジションと非パーキングポジションでのロックが、電磁アクチュエータ13か油圧アクチュエータ14かを用いてのみ解除され得るように、設計されている。
【0026】
圧力チャンバ24と、油圧アクチュエータ14の圧力チャンバとに、使用圧力を供給するために、自動車パーキングロック装置は、自動切換えのスイッチングバルブ18を有する。スイッチングバルブ18は、第1バルブポジションと第2バルブポジションを有する。第1バルブポジションでは、スイッチングバルブ18は、油圧アクチュエータ14を流体力学的に作動流体圧力供給器17につなぎ、作動シリンダ15を流体力学的に作動流体圧力供給器17から分離する(
図1参照)。第1バルブポジションでは、スイッチングバルブ18は、油圧アクチュエータ14の圧力チャンバに使用圧力を供給する。第2バルブポジションでは、スイッチングバルブ18は、作動シリンダ15を流体力学的に作動流体圧力供給器17につなぎ、流体力学的に油圧アクチュエータ14を作動流体圧力供給器17から分離する。第2バルブポジションでは、スイッチングバルブ18は、作動シリンダ15の圧力チャンバ24に使用圧力を供給する。第1バルブポジションはパーキングポジションに、そして第2バルブポジションは非パーキングポジションに割り当てられている。スイッチングバルブ18は、パーキングポジションにシフトするためには油圧アクチュエータ14の圧力チャンバに、また、非パーキングポジションにシフトするためには作動シリンダ15の圧力チャンバ24に、使用圧力を供給する。スイッチングバルブ18は、作動流体圧力管30によって、流体力学的に油圧アクチュエータ14と連結されている。さらにスイッチングバルブ18は、作動流体圧力管31によって、流体力学的に作動シリンダ15と連結されている。
【0027】
スイッチングバルブ18は、スライドスイッチ32と、作用においてスライドスイッチ32に連結しているスプリング33とを有する。スプリング33は、スライドスイッチ32を自動的に第1バルブポジションにスライドさせ、それによって自動的にスイッチングバルブ18の第1バルブポジションにシフトするために、設けられている。第1バルブポジションでは、スイッチングバルブ18は、作動シリンダ15の圧力チャンバ24を、常圧の作動流体貯槽34と連結する。スイッチングバルブ18は、第1バルブポジションでは、作動流体圧力管31を流体力学的に常圧の作動流体貯槽34と連結する。
【0028】
スプリング33に抗して作用する力を供給するために、スイッチングバルブ18は、第1制御ボリューム35を有する。第1制御ボリューム35は、スプリング33の弾性に抗して作用する。第1制御ボリューム35内の力は、スライドスイッチ32を、スプリング33の弾性に抗してスライドさせるために、したがって第1バルブポジションからスライドスイッチをスライドさせるために、備えられている。第1制御ボリューム35内の力は、スライドスイッチ32を第2のバルブポジションへとスライドさせるために、備えられている。第1制御ボリューム35内の力は、スプリング33の弾性に抗して作用する作動流体圧力として設計されている。第1制御ボリューム35内の力は、使用圧力によって制限される一定制御圧力として設計されている。したがって、第1バルブポジションはスイッチングバルブ18の基本ポジションとして、そして第2バルブポジションはスイッチングバルブ18のシフトポジションとして、設計されている。
【0029】
スプリング33と共に作用する力を供給するために、スイッチングバルブ18は、第2制御ボリューム36を有する。第2制御ボリューム36は、第1制御ボリューム35に抗して作用する。この2つの制御ボリューム35と36は、相互に対向するように配置されている。第2制御ボリューム36は、スプリング33の弾性を補足するように作用する。第2制御ボリューム36は、スプリング33の弾性と同じ方向に向かって作用する。第2制御ボリューム36内の力は、スライドスイッチ32を、第1制御ボリューム35に抗してスライドさせるために、したがって第2バルブポジションからスライドスイッチをスライドさせるために、備えられている。第2制御ボリューム36内の力は、スライドスイッチ32を第1バルブポジションへとスライドさせるために、備えられている。第2制御ボリューム36内の力は、スプリング33の弾性と共に作用し、第1制御ボリューム35内の力に抗するように作用する、作動流体圧力として設計されている。第2制御ボリューム36内の力は、使用圧力によって抑えられている一定制御圧力として設計されている。スプリング33は、第2制御ボリューム36内に配置されている。
【0030】
スイッチングバルブ18の第1制御ボリューム35に一定制御圧力を供給するために、自動車パーキングロック装置は、パイロット圧管37を有する。パイロット圧管37は、作動流体圧力供給器17を、流体力学的に第1制御ボリューム35と連結する。作動流体圧力供給器17は、パイロット圧管37内で、そしてそれによりスイッチンングバルブ18の第1制御ボリューム35内で、使用圧力によって抑えられている一定制御圧力を調節するために、設けられている。
【0031】
スイッチングバルブ18の第2制御ボリューム36に一定制御圧力を供給するために、自動車パーキングロック装置は、パイロット圧管38を有する。パイロット圧管38は、作動流体圧力供給器17を、流体力学的に第2制御ボリューム36と連結する。作動流体圧力供給器17は、パイロット圧管38内で、したがってスイッチンングバルブ18の第2制御ボリューム36内で、使用圧力によって制限される一定制御圧力を調節するために、設けられている。
【0032】
油圧アクチュエータ14と作動シリンダ15に使用圧力を供給するために、自動車パーキングロック装置は、使用圧力管39を有する。作動流体圧力供給器17は、使用圧力管39内の使用圧力を調節するために、設けられている。作動流体圧力供給器17は、非パーキングポジションへのシフトのための使用圧力管39内の使用圧力を、また他の作動状況においては非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のための使用圧力管39内の使用圧力を、調節するために設けられている。その際、スイッチングバルブ18は、第1バルブポジションにおいては使用圧力管39を流体力学的に油圧アクチュエータ14の圧力チャンバに連結し、第2バルブポジションにおいては使用圧力管39を流体力学的に圧力チャンバ24と連結する。
【0033】
スイッチングバルブ18を第2バルブポジションにシフトするため、したがって圧力チャンバ24と使用圧力管39とを流体力学的に連結するために、自動車パーキングロック装置は、外部から調節可能な制御弁40を有する。制御弁40は、第2制御ボリューム36内の制御圧力を調節するために、設けられている。第2制御ボリューム36内の制御圧力を調節するために、制御弁40は、パイロット圧管38と作動流体圧力供給器17とを、流体力学的に連結し、また分離する。第1バルブポジションにシフトするために、制御弁40は、作動流体圧力供給器17を、パイロット圧管38に、したがって第2制御ボリューム36に、連結する。第2バルブポジションにシフトするために、制御弁40は、作動流体圧力供給器17を、パイロット圧管38から、したがって第2制御ボリューム36から、分離する。制御弁40は、流体力学的にスイッチングバルブ18の制御ボリューム36と連結されているパイロット圧管38を、ある作動状況においてはパイロット圧管37から流体力学的に分離し、ある別の作動状況においてはパイロット圧管37と流体力学的に連結するために、設けられている。制御・調整ユニットからの外部信号にしたがって、制御弁40が、2つのパイロット圧管37と38を流体力学的に相互連結すると、それによってスプリング33が自動的にスイッチングバルブ18を第1バルブポジションにシフトさせ、また制御弁40が、2つのパイロット圧管37と38を流体力学的に相互に分離すると、それによってスイッチングバルブ18の第1制御ボリューム35内の一定制御圧力がスプリング33に過圧力をかけ、スイッチングバルブ18を第2バルブポジションにシフトさせる。制御弁40は、パーキングポジションと非パーキングポジションとの間を、操作系と機械系の間の機械的連結なしに切り替えるために設けられており、パーキングポジションへのシフトのためには、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11が、直接的に油圧式でロック解除される。
【0034】
パーキングロックが係合され、それにより作動ユニット19がパーキングポジションにシフトされる作動状況においては、制御・調整ユニットが、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のために、制御弁40を作動させ、これにより制御弁40は、パイロット圧管37と38を流体力学的に相互連結する。これにより、スプリング33が内側に配置されている第2制御ボリューム36内と、スイッチングバルブ18の制御ボリューム35内では、同一の一定制御圧力が支配的となり、これによりスプリング33は、スライドスイッチ32をただちに第1バルブポジションへと自動的にスライドさせる。これにより、圧力チャンバ24は常圧の作動流体貯槽34と、また油圧アクチュエータ14の圧力チャンバは使用圧力管39と、流体力学的に連結され、それにより油圧アクチュエータ14の圧力チャンバは、使用圧力を与えられる。これにより、油圧によるロック解除力が、ロックエレメント10に作用して、スプリング29の弾力に抗して作用し、それによりロックエレメント10が噛合い形状28から外されて、パーキングロックピストン11がロック解除される。その結果、スプリング16が、ロック解除されたパーキングロックピストン11を自動的にパーキングポジションへとスライドさせる、ないしは押し込む。例えば自動車のエンジン停止によって、あるいは作動流体圧力供給器17の故障によって、あるいは第2バルブポジションへのシフトのための制御弁40の作動解除によって、作動流体圧力供給器17の作動が止められた場合には、ロックユニット26のスプリング29が、ロックエレメント10を自動的に噛合い形状27の中へスライドさせ、ないしは押し込んで、これによりパーキングロックピストン11がパーキングポジションでロックされる。パーキングロックが係合されたことになる。
【0035】
パーキングロックが外され、それにより作動ユニット19が非パーキングポジションにシフトされる作動状況においては、制御・調整ユニットが、パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のために、電磁アクチュエータ13を作動させる。これにより、磁力によるロック解除力が、ロックエレメント10に作用して、スプリング29の弾力に抗して作用し、それによりロックエレメント10が噛合い形状27から外されて、パーキングロックピストン11がロック解除される。電磁アクチュエータ13が作動させられているときには、制御・調整ユニットが制御弁40を作動解除し、それにより制御弁40は、パイロット圧管37と38を流体力学的に相互に分離する。これにより、制御ボリューム35内では、制御ボリューム36内よりも高い一定制御圧力が支配的となり、それにより制御ボリューム35内の力が、スライドスイッチ32を第2バルブポジションへとスライドさせる。これにより、圧力チャンバ24は常圧の作動流体貯槽34から、また油圧アクチュエータ14の圧力チャンバは使用圧力管39から、流体力学的に分離されると同時に、圧力チャンバ24は使用圧力管39と連結され、それにより圧力チャンバ24は、使用圧力を与えられる。これにより、スプリング16の弾性に抗する力が作用し、それによりパーキングロックピストン11が非パーキングポジションへとスライドさせられる。続いて、制御・調整ユニットが、非パーキングポジションでロックするために、電磁アクチュエータ13を作動解除し、これによりスプリング29が、ロックエレメント10を自動的に噛合い形状28の中へスライドさせて、パーキングロックピストン11を非パーキングポジションでロックする。パーキングロックが外されたことになる。
【0036】
本実施例では、電磁アクチュエータ13は、ただパーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のためだけに、制御・調整ユニットによって通電され、それによって作動させられる。しかし電磁アクチュエータ13は、パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のためと、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11のロック解除のために、制御・調整ユニットによって通電され、それによって作動させられてもよい。それにより、油圧アクチュエータ14は、非常時ロック解除のためだけに設けられていることになる。その際、油圧アクチュエータ14と電磁アクチュエータ13は、パーキングポジションへのシフトのためのロック解除力を同時に供給する。すなわち、油圧アクチュエータ14と電磁アクチュエータ13は、冗長的なロック解除力を提供することになる。パーキングポジションへのシフトのために、油圧アクチュエータ14によって供給された油圧力と、電磁アクチュエータ13によって供給された磁力とが、同時にロックエレメント10に作用する。電磁アクチュエータ13が故障により作動しなくなった場合、非パーキングポジションでロックされたパーキングロックピストン11は、油圧アクチュエータ14のみによってロック解除され、それにより、電磁アクチュエータ13の作動不能時でも、パーキングポジションが設定され得ることになる。