特許第5667733号(P5667733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667733炭素ナノチューブ蓄熱羽毛及びそれを用いた防寒衣類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667733
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】炭素ナノチューブ蓄熱羽毛及びそれを用いた防寒衣類
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/74 20060101AFI20150122BHJP
   D06M 19/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   D06M11/74
   D06M19/00
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-545835(P2014-545835)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-504117(P2015-504117A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】KR2012011227
(87)【国際公開番号】WO2013095029
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年6月10日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0140764
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514006969
【氏名又は名称】イオイズ・コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】514006970
【氏名又は名称】トップ・ナノシス・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514147734
【氏名又は名称】パン−パシフィック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】オウ,サングン
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082901(JP,A)
【文献】 特開2006−328549(JP,A)
【文献】 特開2007−303042(JP,A)
【文献】 特開2009−034497(JP,A)
【文献】 特開2005−256221(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028379(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/026937(WO,A1)
【文献】 特表2014−525994(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2005−0053144(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2001−0097022(KR,A)
【文献】 国際公開第2010/126199(WO,A1)
【文献】 特開2010−158654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00 − 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 − 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウン衣類又は夜具類に用いられる羽毛を、炭素ナノチューブを含有したコーティング液でコーティングして製造されることを特徴とする、炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項2】
前記コーティング液は、炭素ナノチューブ(CNT)0.1〜15質量%、分散剤0.01〜5質量%、樹脂バインダ9.89〜70質量%及び溶媒10〜90質量%からなるCNTコーティング液であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項3】
前記炭素ナノチューブは、樹脂バインダとの接着性と分散性の向上のために、表面を液状酸処理、気状酸処理、オゾン水処理、又はプラズマ処理により改質することを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項4】
更に、前記コーティング液100質量部に対して、ウレタン又はアクリル樹脂バインダ1〜50質量部を混合することを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項5】
前記コーティング液は、帯電防止剤、抗菌剤、防臭剤又は撥水剤から選択された一つ以上の添加剤を混合することを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項6】
前記コーティング液は、スプレー方法でコーティングされることを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項7】
前記炭素ナノチューブは、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)であることを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項8】
前記羽毛はダウン又はガチョウ毛であることを特徴とする、請求項1に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛を用いて製造された衣類又は夜具製品。
【請求項10】
前記CNTコーティング液は、前記溶媒を更に付加して1.1〜20倍に希釈させたコーティング液('希釈コーティング液')であることを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項11】
前記炭素ナノチューブは、樹脂バインダとの接着性と分散性の向上のために、表面を液状酸処理、気状酸処理、オゾン水処理、又はプラズマ処理により改質することを特徴とする、請求項10に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【請求項12】
前記コーティング液100質量部に対して、ウレタン又はアクリル樹脂バインダ1〜50質量部を更に混合することを特徴とする、請求項10又は11に記載の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱保温羽毛(down feather)に関する。より具体的には、本発明は、ダウン(down)と命名されるアヒルの羽毛の表面に炭素ナノチューブ組成液をコーティングすることにより、蓄熱及び保温効果のある蓄熱保温羽毛及びそれを用いた防寒衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維織物や衣類が熱を吸収してその内部に熱を貯蔵することができるならば、保温効果による多様な長所が得られる。特に、衣類用繊維織物や内部素材が蓄熱及び保温効果を有する場合、暖房による各種費用を節減することができるだけでなく、より快適な生活をすることができる。このような目的で蓄熱や保温機能を有する繊維や織物又は衣類を開発しようとする努力が続けられている。
【0003】
韓国公開特許第2001−0097022号は、相変移組成液を織物や衣類に含浸させて蓄熱及び防熱効果を有する製品を開示している。また、韓国公開特許第2002−0059047号は、多層構造を有する蓄熱保温性塗布織物を開示しているが、これは基材上に接着剤層を形成し、その上に保温発泡層を形成し、更にその上に表面吸熱層を形成し、その結果物を熱処理して蓄熱保温性塗布織物を製造する方法を開示している。
【0004】
最近、日本の三菱レイヨン社が、芯部に木炭粒子を含む芯鞘構造のアクリル単繊維で太陽光を吸収して発熱性能を発揮するコアブリッド−B(商品名(登録商標))を開発して市販しており、日本のデサント社と帝人ファイバー社とが、共同で太陽光を吸収して発熱性能を発揮するように炭素系無機物質を含むヒートナビ(HEAT NAVI:商品名(登録商標))という特殊扁平断面繊維を開発してアウトドア衣類を中心に適用している。しかし、このような既存の技術は、繊維の放射時に吸光粒子を繊維糸に混入する複合放射工程が必要なので製造費用が高く、吸光粒子の表面積を広くすることなく同一の発熱効果を得るためには多量の吸光粒子を入れなければならないという短所がある。即ち、前記従来の技術は、製造費用の上昇に相応する蓄熱保温効果が得られない。
【0005】
本発明者は、表面積が広く、光吸収率が優れた炭素ナノチューブが繊維や織物の蓄熱保温効果に大きく寄与できるという点に着眼して、炭素ナノチューブ(CNT)0.1〜15質量%、分散剤0.01〜5質量%、樹脂バインダ9.89〜70質量%及び溶媒10〜90質量%からなるコーティング液を繊維織物の片面又は両面にコーティングした蓄熱織物を開発し、韓国特許出願第2011−117280号で特許出願した(2011年11月11日出願)。
【0006】
炭素ナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)は、炭素原子が六角形の蜂の巣状に結合された板状の黒鉛シートが、直径が数ナノメートルから数百ナノメートル程度のチューブ状に巻かれているナノ素材である。炭素ナノチューブは、結合形態による特異な電子構造と、ナノメートル水準の直径による特有の電気的、機械的及び物理化学的特性を表す。例えば、炭素ナノチューブは、アルミニウムの1/2程度の密度にもかかわらず、鋼鉄の100倍以上の強度を有する。また、サイズが小さいため、一般の炭素繊維より単位質量当たり大きい表面積を有し、エネルギ吸収活性面積が大きく、混合材料内での非常に大きい相互作用で安定した混合材料を生産することができる。このような炭素ナノチューブの優れた物性により、構造補強材、エネルギ貯蔵、燃料電池、センサーなどの多様な分野で産業的応用が活発に進行されている。特に、炭素ナノチューブは、光吸収の側面で非常に優れた材料として知られている。2008年に発表された論文によると(Zu-Po Yang et al., "Experimental Observation of an Extremely Dark Material Made by a Low-Density nanotube Array", NANO LETTERS, 2008 Vol. 8, No. 2, pp 446-451)、垂直成長させた炭素ナノチューブアレイ(array)の場合、総反射率が0.045%であり、今まで発表された最低の反射率を有する材料の3倍以下の反射率を表し、今まで知られた材料中で最も低い反射率の黒体(black body)として記録されている。
【0007】
前記のような炭素ナノチューブの特性を考慮して、本発明者は、表面積が広く光吸収率が優れた炭素ナノチューブが含まれたコーティング液を製造し、該コーティング液を羽毛の表面にコーティングすることにより、結果的に優れた光吸収熱変換効果を有する蓄熱羽毛を製造し、それを用いてジャケットを含む各種防寒衣類は勿論のこと、布団、枕などの夜具を製造する技術を開発するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、蓄熱保温効果が優れた蓄熱羽毛を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、炭素ナノチューブを含有させることにより、蓄熱保温効果が優れた蓄熱羽毛を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、炭素ナノチューブの中でも、特に多重壁炭素ナノチューブを含有させることにより、蓄熱保温効果が優れた蓄熱羽毛を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、炭素ナノチューブの中でも、特に多重壁炭素ナノチューブを含有させることにより、製造費用が低く蓄熱保温効果が優れた蓄熱羽毛を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、多重壁炭素ナノチューブを含有させることにより、蓄熱保温効果が優れた蓄熱羽毛を用いて製造された各種防寒衣類を含む布団、枕などの夜具を提供することにある。
【0013】
本発明の前記及び他の目的は、下記で詳細に説明される本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る炭素ナノチューブ蓄熱羽毛は、防寒用ダウン衣類に用いられる羽毛に炭素ナノチューブを含有したコーティング液でコーティングする方法によって製造されることをその特徴とする。
【0015】
前記コーティング液は炭素ナノチューブ(CNT)0.1〜15質量%、分散剤0.01〜5質量%、樹脂バインダ9.89〜70質量%及び溶媒10〜90質量%からなるCNTコーティング液に、前記溶媒を更に付加して1〜20倍に希釈させたコーティング液(以下'希釈コーティング液')を意味する。前記CNTコーティング液100質量部に対して、0.01〜5質量部の添加剤が更に付加されることができる。
【0016】
前記添加剤は、羽毛の静電気防止及び消臭のための帯電防止剤、抗菌剤又は防臭剤を含むことができる。
【0017】
また、前記コーティング液100質量部に対して、1〜50質量部のウレタン又はアクリル樹脂バインダを更に混合して最終的に羽毛の表面に塗布されることもできる。
【0018】
炭素ナノチューブは、樹脂バインダとの接着性と分散性の向上のために表面改質工程を経るのが好ましい。
【0019】
前記炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブ(SWNT)でも良いが、二重壁炭素ナノチューブ(DWNT)、薄い多重壁炭素ナノチューブ(thin MWNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)などのような多重壁炭素ナノチューブが好ましく用いられることができる。
【0020】
前記希釈コーティング液をダウンの表面にコーティングする方法は、スプレー方法が最も好ましい。羽毛の表面にスプレーされる希釈コーティング液は、ダウン1kg当たり0.01kg乃至1kgが好ましい。
【0021】
以下、添付された図面を参考として、本発明の具体的な内容を下記で詳細に説明する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の炭素ナノチューブ蓄熱羽毛は、羽毛に炭素ナノチューブを含有させることにより、蓄熱保温効果が優れた蓄熱ダウンを提供し、炭素ナノチューブの中で特に多重壁炭素ナノチューブを含有させることにより、製造費用が低いながらも蓄熱保温効果が優れる蓄熱羽毛を製造し、それから各種防寒衣類を製造することができるという発明の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1〜2及び比較例1による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の洗濯前の蓄熱性を表すためのグラフである。
図2】本発明の実施例1〜2及び比較例1による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の洗濯後の蓄熱性を表すためのグラフである。
図3】本発明の比較例2〜5による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の洗濯前の蓄熱性を表すためのグラフである。
図4】本発明の比較例2〜5による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の洗濯後の蓄熱性を表すためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、蓄熱保温ダウンに係り、ダウンの表面に炭素ナノチューブ組成液をコーティングすることにより、蓄熱及び保温効果を有する蓄熱保温羽毛及びそれを用いた防寒衣類に関する。
【0025】
本発明に係る炭素ナノチューブ蓄熱羽毛は、防寒用ダウン衣類に用いられる羽毛に炭素ナノチューブを含有したコーティング液でコーティングして製造する。
【0026】
前記コーティング液は、炭素ナノチューブ(CNT)0.1〜15質量%、分散剤0.01〜5質量%、樹脂バインダ9.89〜70質量%及び溶媒10〜90質量%からなるCNTコーティング液に、前記溶媒を更に付加して1〜20倍に希釈させたコーティング液(以下'希釈コーティング液')を意味する。
【0027】
炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブ(SWNT)でも良いが、二重壁炭素ナノチューブ(DWNT)、薄い多重壁炭素ナノチューブ(thin MWNT)、多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)などのような多重壁炭素ナノチューブが好ましく用いられることができる。
【0028】
本発明の炭素ナノチューブコーティング液を製造するために単一壁炭素ナノチューブ(SWNT)を用いることができるが、単一壁炭素ナノチューブは価格が高い。本発明では、単一壁炭素ナノチューブのこのような問題を解決するために多重壁炭素ナノチューブで試験した結果、優れた蓄熱保温効果を有することを見出した。そして、多重壁炭素ナノチューブは、単一壁炭素ナノチューブとは異なり、価格が低いため、低い費用で蓄熱織物を製造することができる。本発明では、二重壁炭素ナノチューブ(DWNT)と薄い多重壁炭素ナノチューブ(thin MWNT)の何れも優れた蓄熱効果を表し、価格も低いので、何れも使用可能である。炭素ナノチューブはコーティング液中で0.1〜15質量%の範囲で組成されるが、0.1質量%以下になると充分な蓄熱保温効果が期待しにくく、15質量%以上になると不必要な量の炭素ナノチューブが用いられて原価上昇の要因になる。
【0029】
炭素ナノチューブは、樹脂バインダとの接着性と分散性の向上のために表面改質工程を経るのが好ましい。炭素ナノチューブの表面改質方法は、従来の通常的な方法として、液状又は気状酸処理、オゾン水処理、プラズマ処理などがある。これらの通常的な炭素ナノチューブの表面改質方法は、本発明が属する技術の分野で通常の知識を有する者により容易に実施されることができる。
【0030】
前記炭素ナノチューブコーティング液は、光吸収面積の向上のために炭素ナノチューブを均一で微細に分散させるべきだが、このような目的で分散剤、即ち界面活性剤を添加させる。本発明で用いられる分散剤は市販される通常的な界面活性剤を用いることができ、代表的な例としては、SDS、SDBS、SDSA、DTAD、CTAB、NaDDBS、Cholic Acid、Tween(登録商標)85、Brij(登録商標)78、Brij700、Triton(登録商標)X、PVP、EC(Ethyl Cellulose)、Nafion(登録商標)、HPC(Hydroxy Propyl Cellulose)、CMC(Carboxy Methyl Cellulose)、HEC(Hydroxy Ethyl Cellulose)、Pluronic(PEO-PPO Copolymer(登録商標))などがある。これらは単独で又は2種以上の混合物の形態で用いることができる。
【0031】
分散剤は、コーティング液中で0.01〜5質量%の範囲で用いられるが、0.01質量%以下になると充分な分散性を示さなく、5質量%以上になると不必要な量の分散剤が用いられて好ましくない。
【0032】
繊維との接合及び洗濯堅牢度などを保障するため、前記コーティング液には樹脂バインダが用いられる。樹脂バインダは、熱硬化性バインダとUV硬化性バインダを含み、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン−アクリル共重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びメラミン系樹脂よりなる群から選択された単独又はこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられることができる。樹脂バインダは、コーティング液中で9.89〜70質量%で用いられ、樹脂バインダの種類及び使用量は他の成分との関係を考慮して前記範囲内で当業者により容易に実施されることができる。
【0033】
前記炭素ナノチューブ、分散剤及び樹脂バインダは溶媒内に混合されてコーティング液を組成する。用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶剤よりなる群から選択された単独又はこれらの混合物がある。しかし、必ずこれら溶媒に限られるのではない。溶媒は炭素ナノチューブ、分散剤及び樹脂バインダを除いた残りの部分であって、10〜90質量%で用いられる。
【0034】
勿論、前記コーティング液には炭素ナノチューブ、分散剤及び樹脂バインダの他に、溶液の安定性や必要とする特定の機能を付与するために各種の添加剤が付加されることができる。付加される添加剤として、スリップ剤、流動性改善剤、増粘剤、帯電防止剤、抗菌剤、防臭剤、撥水剤、空気/水蒸気/汗透過剤、摩擦係数改善剤、紫外線安定剤などがあり、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。勿論、前記添加剤に必ず限られるのではなく、必要な用度に応じて他の添加剤が適宜に用いられることができる。コーティング液100質量部に対して、0.01〜5質量部の添加剤が更に付加されることができる。
【0035】
前記希釈コーティング液はそのまま羽毛の表面に塗布されることもでき、ウレタン又はアクリル樹脂バインダを更に混合して最終的に羽毛の表面に塗布されることもできる。ウレタン樹脂バインダを混合することにより、洗濯過程においてCNT粒子が脱落されなく羽毛に固定される効果を有する。前記コーティング液100質量部に対して、1〜50質量部のウレタン又はアクリル樹脂バインダを更に混合するのが好ましい。
【0036】
前記希釈コーティング液を羽毛の表面にコーティングする方法は、スプレー方法が最も好ましい。本発明において、羽毛にスプレーされる希釈コーティング液は炭素ナノチューブ(CNT)が0.1〜15質量%含有されるCNTコーティング液を溶媒で1〜20倍に希釈させた希釈コーティング液であって、羽毛1kg当たり0.01kg乃至1kgを用いる。前記希釈コーティング液を羽毛1kg当たり0.01kg以下に用いると良好な蓄熱効果を期待しにくく、1kg以上であると不要なコーティング液の使用により原価上昇の要因となる。
【0037】
前記のように、CNTコーティング液がスプレーされてCNTコーティングされた羽毛は、常温又は加熱されたチャンバ内で塗布されたコーティング液を乾燥させる。前記コーティング方法やコーティング後の乾燥工程、即ちチャンバの温度、チャンバ内での乾燥時間などは羽毛の種類や仕様に応じて変更されることができ、このような変更は本発明が属する技術の分野で通常の知識を有する者により容易に実施されることができる。
【0038】
前記で製造された蓄熱保温羽毛は、ダウンジャケットの衣類を含んで布団や枕などのような夜具類の用途として用いられて各種製品を製造する。本発明の蓄熱保温羽毛を用いた衣類や夜具類の製造は本発明が属する技術の分野で通常の知識を有する者により容易に実施されることができる。
【0039】
本発明で用いられる縫製用羽毛は、既に市販されて用いられている普通90/10乃至80/20のスペックを用いるが、これは80乃至90%の羽毛と10乃至20%のその他の成分を意味する。その他の成分は、スモールフェザー(small feather)、損傷されたフェザー(damaged feather)、ダウンファイバー(down fiber)、フェザーファイバー(feather fiber)などから構成される。羽毛はダウンが主に用いられるが、ガチョウ毛やその他の使用可能な毛をみんな含む。
【0040】
本発明は下記の実施例により更に具体化され、下記の実施例は本発明の例示目的のためであって、本発明の保護範囲を制限するとか限定する意味で解釈されてはいけない。
【実施例】
【0041】
CNTコーティング液の製造:
本発明に係るCNTコーティング液を製造することにおいて、硝酸と硫酸(3:1)との混合溶液を用いてMWNTの表面を酸化させ、分散性能が向上されたMWNTを製造する。前記酸処理されたMWNT5質量%、分散剤(商品名:TritonX100)5質量%、消泡剤(商品名:Surfynol(登録商標)104H)0.2質量%及び蒸留水39.8質量%を混合し、140W(70%)の出力で1時間超音波を印加してCNTを分散した。前記分散液に、アクリル系バインダ50質量%を混合し、攪拌機で30分間攪拌してコーティング液を製造した。
【0042】
(実施例1)
蓄熱羽毛の製造:
前記で製造されたCNTコーティング液を100質量%の蒸留水で希釈して希釈コーティング液を製造する。120℃のチャンバで空気中に流動中の90/10規格の羽毛10kgに前記希釈コーティング液2kgを10秒間噴射する。コーティング液の噴射後、2分間羽毛を更に流動させた後、チャンバの湿気を除去し、チャンバ温度を120℃に維持しながら3分間更に乾燥する。
【0043】
蓄熱性能の測定:
前記で製造された羽毛6gを15cm×15cmのポリエステル織物袋に入れて蓄熱性能テスト試料を作製する。室温で赤外線ランプを用いて30cm距離で照射しながら、熱画像カメラを用いて試料表面の温度変化を観察した。赤外線ランプを点灯して時間経過による温度を測定し、ランプを消灯して時間経過による温度を測定して表1に表し、洗濯後の温度変化は表2に表した。表1に対する数値を図1のグラフに表し、表2に対する数値を図2のグラフに表した。図1は、希釈コーティング液をコーティングしない未処理羽毛と本発明の実施例1〜2による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の、洗濯前の蓄熱性を表すためのグラフであり、図2は、希釈コーティング液をコーティングしない未処理羽毛と本発明の実施例1〜2による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の、洗濯後の蓄熱性を表すためのグラフである。
【0044】
測定の結果、本発明の実施例は最大3℃以上の温度上昇効果があり、洗濯後にも蓄熱性能の変化がなかった。
【0045】
(実施例2)
羽毛10kgに前記希釈コーティング液1kgを噴射することを除いては実施例1と同様な方法で実施した。蓄熱性能の測定結果、本発明の実施例は最大2℃以上の温度上昇効果があり、洗濯後にも蓄熱性能の変化がなかった。また、実施例1と比較すると、コーティング量の減少に比例して蓄熱性能が減少されることが分かった。
【0046】
(比較例1)
CNTコーティング液を噴射しないことを除いては実施例1と同様な方法で実施した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(比較例2〜5)
CNTコーティング液の製造:
本発明に係るCNTコーティング液を製造することにおいて、硝酸と硫酸(3:1)との混合溶液を用いてMWNTの表面を酸化させ、分散性能が向上されたMWNTを製造する。前記酸処理されたMWNT5質量%、分散剤(商品名:TritonX100)5質量%、消泡剤(商品名:Surfynol104H)0.2質量%及び蒸留水89.8質量%を混合し、140W(70%)の出力で1時間超音波を印加してCNTを分散した。本比較例では、分散液にアクリル系バインダを添加しなかった。
【0050】
(比較例2)
CNTコーティング液を噴射しないことを除いては実施例1と同様な方法で実施した。
【0051】
(比較例3)
蓄熱羽毛の製造:
前記で製造されたCNTコーティング液を100質量%の蒸留水で希釈して希釈コーティング液を製造する。120℃のチャンバで空気中に流動中の90/10規格の羽毛10kgに前記希釈コーティング液2kgを10秒間噴射する。コーティング液の噴射後、2分間羽毛を更に流動させた後、チャンバの湿気を除去して、チャンバ温度を120℃に維持しながら3分間更に乾燥する。
【0052】
蓄熱性能の測定:
蓄熱性能の測定は実施例と同様な方法で実施した。
【0053】
赤外線ランプを点灯して時間経過による温度を測定し、ランプを消灯して時間経過による温度を測定して表3に表し、洗濯後の温度変化は表4に表した。表3に対する数値を図3のグラフに表し、表4に対する数値を図4のグラフに表した。図3は本発明の比較例2〜5による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の洗濯前の蓄熱性を表すためのグラフであり、図4は本発明の比較例2〜5による炭素ナノチューブ蓄熱羽毛の洗濯後の蓄熱性を表すグラフである。
【0054】
(比較例4)
前記で製造されたCNTコーティング液を200質量%の蒸留水で希釈して希釈コーティング液を製造して、羽毛10kgに前記希釈コーティング液2kgを噴射することを除いては、比較例3と同様な方法で実施した。赤外線ランプを点灯して時間経過による温度を測定し、ランプを消灯して時間経過による温度を測定して表3に表し、洗濯後の温度変化は表4に表した。
【0055】
(比較例5)
前記で製造されたCNTコーティング液を200質量%の蒸留水で希釈して希釈コーティング液を製造して、羽毛10kgに前記希釈コーティング液0.8kgを噴射することを除いては、比較例3と同様な方法で実施した。赤外線ランプを点灯して時間経過による温度を測定し、ランプを消灯して時間経過による温度を測定して表3に表し、洗濯後の温度変化は表4に表した。
【0056】
比較例3〜5によると、コーティング量によって1〜4℃以上の温度上昇効果があったが、CNTコーティング液に樹脂バインダを添加しないことにより、洗濯後の蓄熱性能の減少が観察された。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
前記表1〜4のデータ及び図1〜4のグラフから、本発明の蓄熱保温羽毛が優れた蓄熱性を有し、樹脂バインダの添加時に優れた洗濯堅牢度を有することが分かる。比較例において、洗濯後の蓄熱効果が洗濯前より減少されることは、樹脂バインダの未添加により羽毛からCNT粒子が脱落するためである。即ち、洗濯耐久性の向上と蓄熱性能の保持のためには樹脂バインダが必要であることが分かる。
【0060】
本発明の保護範囲は下記に添付される特許請求の範囲により具体化され、本発明の単純な変形や変更はすべて本発明の保護範囲に属すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4