特許第5667745号(P5667745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667745
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】大環状化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20150122BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C07D487/04 157
   C07D487/04CSP
   A61K31/407
   A61P31/14
【請求項の数】13
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2008-500812(P2008-500812)
(86)(22)【出願日】2006年3月6日
(65)【公表番号】特表2008-533014(P2008-533014A)
(43)【公表日】2008年8月21日
(86)【国際出願番号】US2006007954
(87)【国際公開番号】WO2006096652
(87)【国際公開日】20060914
【審査請求日】2009年3月6日
【審判番号】不服2013-10277(P2013-10277/J1)
【審判請求日】2013年6月4日
(31)【優先権主張番号】60/659,696
(32)【優先日】2005年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ブサッカ カール アラン
(72)【発明者】
【氏名】ガロー ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ハダッド ニザー
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン アサッド
(72)【発明者】
【氏名】カパディア スレッシュ アール
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジァンシュー
(72)【発明者】
【氏名】セナナヤケ クリス ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ シュードン
(72)【発明者】
【氏名】イー ネイサン ケイ
【合議体】
【審判長】 中田 とし子
【審判官】 井上 雅博
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/053349(WO,A2)
【文献】 国際公開第2004/094452(WO,A2)
【文献】 特表2007−531749(JP,A)
【文献】 JERRY MARCH,AROMATIC NUCLEOPHILIC SUBSTITUTION,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,JOHN WILEY AND SONS,1992年,p.640,642−645
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/00-491/22
REGISTRY/STN
CAPLUS/STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物:
(式中、Wは、CH又はNであり、
0は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ、又はN(R232であり、
ここで、各々のR23は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
1、L2は、各々独立して、H、ハロゲン、C1-4アルキル、−O−C1-4アルキル、又は−S−C1-4アルキルであり(硫黄は、酸化状態にある);又は
0及びL1又は
0及びL2は、共有結合して、それらが、結合する2個のC−原子と一緒に、4−、5−又は6−員の炭素環を形成していてもよく、ここで、1個又は互いに直接結合しない2個(5−又は6−員環のケースにおいて)の−CH2−基は、各々独立して、−O−又はNRaにより置換されていてもよく、ここで、Raは、H又はC1-4アルキルであり、及びここで、前記環は、場合により、C1-4アルキルでモノ−又は二−置換されていてもよく;
2は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシ−C1-6アルキル、C6又はC10アリール又はHetであり、ここで、Hetは、窒素、酸素及び硫黄より選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含む5−、6−、又は7−員の飽和又は不飽和複素環であり;
前記シクロアルキル、アリール又はHetは、R6で置換され、
ここで、R6は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R72、NH−C(O)−R7;又はNH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
又はR6は、NH−C(O)−OR8であり、ここで、R8は、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
3は、ヒドロキシ、NH2、又は式−NH−R9の基であり、ここで、R9は、C6又はC10アリール、ヘテロアリール、−C(O)−R10、−C(O)−NHR10又は−C(O)−OR10であり、
ここで、R10は、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
Dは、5〜10個の原子の不飽和アルキレン鎖であり;
4は、H、又は前記鎖Dのいずれかの炭素原子での1〜3個の置換基であり、該置換基は、独立して、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、オキソ、チオ及びC1-6チオアルキルより選ばれ;
及び
Aは、式−C(O)−NH−R11のアミドであり、ここで、R11は、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又はC10アリール、C7-16アラルキル及びSO211Aより選ばれ、ここで、R11Aは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキル又はC1-6アルキル−C3-7シクロアルキルであり;
又はAは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである)
を製造する方法であって、
以下の式(3)の化合物を以下の式QUINの化合物と反応させて、以下の式(I)の化合物を得ること:
(式中、R3、R4、D、A、L0、L1、L2、W及びR2は、上の式(I)で定義されたものであり、及びRは、C1-6アルキル、C6又はC10アリール又はヘテロアリールである)
及びAが、式(I)において保護されたカルボン酸基である場合、場合により、式(I)の化合物を脱−保護状態に付して、式(I)の化合物(式中、Aは、カルボン酸基である)を得ること;
及びAが、得られた式(I)の化合物においてカルボン酸基である場合、場合により、この化合物を、適切なカップリング剤の存在下で、式R11ASO2NH2のスルホンアミドとカップリングして、式(I)の化合物(式中、Aは、−C(O)−NH−SO211Aである)を得ること
を含む方法。
【請求項2】
塩基の存在下で、適切な溶剤又は溶剤混合物において行う請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基が、t−BuOK、t−BuONa、t−BuOCs、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド又はKDMOであり、及び溶剤が、DMSO、DMF,NMP又はTHFである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Dリンカーが、以下の構造(ii)により表されるようなA基に対して配置synにあり:
Wが、Nであり;
0が、H、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCH(CH32、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NHCH(CH32、−N(CH32、−N(CH3)C25、−N(CH3)C37及び−N(CH3)CH(CH32より選ばれ、
1及びL2が、各々独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−OCH3、−OC25、−OC37及び−OCH(CH32より選ばれ、
2が、H、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、フェニル又は以下の式より選ばれるHetであり:
(式中、R6は、H、C1-6アルキル、NH−R7、NH−C(O)−R7、NH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;又はR6は、NH−C(O)−OR8(式中、R8は、C1-6アルキルである)である);
3が、NH−C(O)−R10、NH−C(O)−OR10又はNH−C(O)−NR10であり、ここで、各々のケースにおいて、R10は、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルであり;及び
Dが、6〜8個の原子の不飽和アルキレン鎖であり;
4が、H又はC1-6アルキルであり;
及びAが、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Dリンカーが、以下の構造(ii)により表されるようなA基に対して配置synにあり:
(ii)
Wは、Nであり;
0は、H、−OH、−OCH3及び−N(CH32、からなる群から選ばれ、
1及びL2の1つは、−CH3、フッ素、塩素又は臭素であり、L1及びL2の残りのものは水素であるか、又はL1及びL2の両方が水素であり、
2は、
であり、ここで、R6は、NH−R7又はNH−C(O)−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり、
3は、NH−C(O)−R10であり、ここで、R10は、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルであり、
4は、H又はC1-6アルキルであり;
Dは、1つの不飽和結合を有する7個の原子の不飽和アルキレン鎖であり、及びAは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物が、下記の式(I’)の式で表される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(I')
(式中、L0は、−OCH3であり;
1は、−CH3、−F、−Cl又はBrであり及びL2は、Hであり、又はL1及びL2の双方は、Hであり;
6は、NH−R7又はNH−C(O)−R7であり、ここで、R7は、独立して、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
10は、ブチル、シクロブチル又はシクロペンチルであり;
Aは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである。)
【請求項7】
以下の式QUINの化合物:
(式中:
Wは、Nであり;
0は、H、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCH(CH32、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NHCH(CH32、−N(CH32、−N(CH3)C25、−N(CH3)C37及び−N(CH3)CH(CH32より選ばれ、
1及びL2は、各々独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−OCH3、−OC25、−OC37及び−OCH(CH32より選ばれ、
2は、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、又は以下よりものより選ばれるHetであり:
(式中、R6は、H、C1-6アルキル、NH−R7、NH−C(O)−R7、NH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;又はR6は、NH−C(O)−OR8(式中、R8はC1-6アルキルである)である)
及びRは、C6又はC10アリール基である)。
【請求項8】
下記の式の化合物から選ばれる請求項7記載の化合物。
(式中、Phは、フェニルであり及びL0、L1、L2及びR2は、下で定義されるようなものである)

【請求項9】
下記の式の化合物から選ばれる請求項7記載の化合物。
(式中、Phは、フェニルであり及びR2は、以下のように定義されるようなものである)



【請求項10】
請求項7に記載の式QUINの化合物を製造する方法であって、
化合物IIをハロゲン化剤を反応させて、式IIIの化合物(式中、Xはハロゲン原子である)を得ること、及び次いで、式IIIの化合物をスルフィネート塩RSO2M(式中、Mはアルカリ金属である)と反応させて、化合物QUINを得ることを含み、及びここで、L0、L1、L2、W、R2が、請求項7において定義されるものである方法。
【請求項11】
ハロゲン化剤が、POX3及びPX5(式中、X=F、Cl、Br又はI)より選ばれ、及びスルフィネート塩RSO2Mが、hSO2Naである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項7に記載の式QUINの化合物を製造する方法であって、
化合物IIをアレーンスルホニルクロリド化合物RASO2Cl(式中、RAは、中性又は電子の豊富なアレーン基である)と、適切な塩基の存在下で、適切な溶剤において反応させること、及び次いで、得られた化合物を、酸の存在下で、スルフィネート塩RSO2M(式中、Mはアルカリ金属である)と反応させて、化合物QUINを得ることを含み、及び、L0、L1、L2、W、R2及びRが、請求項7において定義されるものである方法。
【請求項13】
第一工程において、アレーンスルホニルクロリド化合物RASO2Clが、ベンゼンスルホニルクロリド又はトシルクロリドであり、塩基が、N−メチルピロリジン又はジイソプロピルエチルアミンであり、及び溶剤が、アセトニトリル、THF、トルエン及びDMFより選ばれ;及び第二工程において、酸が、酢酸、トリフルオロ酢酸又は塩酸であり及びスルフィネート塩RSO2Mが、hSO2Na、hSO2K又はhSO2Csである請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この出願は、2005年3月8日に出願された米国仮出願第60/659,696号の利益を主張するものである。
発明の背景
1.技術分野
本発明は、C型肝炎ウィルス(HCV)感染の治療用の薬剤として有用である大環状化合物の改良された製造方法に関する。
2.背景情報
以下の式(I)の大環状化合物及びそれらの製造方法は、以下より知られる:Tsantrizons et al.,U.S.Patent No.6,608,027B1;Llinas Brunet et al,U.S.Application Publication No.2003/0224977 A1; Llinas Brunet et al,U.S.Application No.2005/0075279 A1; Llinas Brunet et al,U.S. Application Publication No.2005/0080005 A1;Brandenburg et al.,U.S. Application Publication No.2005/0049187 A1;及びSamstag et al,U.S. Application Publication No.2004/0248779 A1:
【0002】
【化1】
【0003】
(式中、Wは、CH又はNであり、
0は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ、又はN(R232であり、
ここで、各々のR23は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
1、L2は、各々独立して、H、ハロゲン、C1-4アルキル、−O−C1-4アルキル、又は−S−C1-4アルキルであり(硫黄は、酸化状態にある);又は
0及びL1又は
0及びL2は、共有結合して、それらが結合される2個のC−原子と一緒に、4−、5−又は6−員の炭素環を形成し得、ここで、互いに直接結合しない1又は2個(5−又は6−員環のケースにおいて)の−CH2−基は、各々独立して、−O−又はNRaにより置換され得、ここで、Raは、H又はC1-4アルキルであり、及びここで、該環は、場合により、C1-4アルキルでモノ−又は二−置換されていてもよく;
2は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシ−C1-6アルキル、C6又はC10アリール又はHetであり、ここで、Hetは、窒素、酸素及び硫黄より選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含む5−、6−、又は7−員の飽和又は不飽和複素環であり;
【0004】
前記シクロアルキル、アリール又はHetは、R6で置換され、
ここで、R6は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R72、NH−C(O)−R7;又はNH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
又はR6は、NH−C(O)−OR8であり、ここで、R8は、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
3は、ヒドロキシ、NH2、又は式−NH−R9の基であり、ここで、R9は、C6又はC10アリール、ヘテロアリール、−C(O)−R10、−C(O)−NHR10又は−C(O)−OR10であり、
ここで、R10は、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
Dは、5〜10個の原子の不飽和アルキレン鎖であり;
4は、H、又は前記鎖Dのいずれかの炭素原子での1〜3個の置換基であり、該置換基は、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、オキソ、チオ及びC1-6チオアルキルより選ばれ;
及び
Aは、式−C(O)−NH−R11のアミドであり、ここで、R11は、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又はC10アリール、C7-16アラルキル及びSO211Aより選ばれ、ここで、R11Aは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキル又はC1-6アルキル−C3-7シクロアルキルであり;
又はAは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである)。
【0005】
式(I)の化合物は、C型肝炎ウィルス(HCV)感染の治療用の活性剤であるとして上記の特許文献において開示される。これらの化合物の製造のために開示された方法は、多くの合成工程を含む。本発明により扱われる問題は、最少の工程を用いて及び十分な全収率で、これらの化合物の効率的製造を可能にする実用的及び経済的な方法を提供することである。
発明の概要
合成が、以下の主要な合成置換工程を用いて行われる場合、上記の式(I)の化合物が、より効率的に製造され得ることを見い出し、その中において、式(3)の大環状化合物は、式QUINのスルホニル−置換化合物と反応され:
【0006】
【化2】
【0007】
及びAが、保護されたカルボン酸基である場合、場合により、式(I)の化合物を、脱−保護状態に付して、式(I)の化合物(式中、Aはカルボン酸基である)を得;
及びAが、得られた式(I)の化合物においてカルボン酸基である場合、場合により、この化合物を、式R11ASO2NH2のスルホンアミドと、適切なカップリング剤、例えば、カルボジイミド試薬、TBTU又はHATUの存在下でカップリングさせて、式(I)の化合物(式中、Aは−C(O)−NH−SO211Aである)を得る。
この方法において、また、更に、アプローチをより直接的にならしめ、及び立体制御の問題を最小限にするプロリン基のヒドロキシ基で配置のインバージョンはなく、及びキノリン構成要素が、方法の終了時の頃に分子において組み込まれ、従って、高価な中間体の損失を最小限にする。
本発明は、従って、本件明細書に記載されるような合成順序;この方法の特定の個々の工程;及びこの方法において使用される特定の個々の中間体を用いて、式(I)の化合物を製造する合成方法に関する。
【0008】
発明の詳細な記載
使用される用語及びコンベンション(Convention)の定義
本件明細書において特に定義されない用語は、開示及び文脈の観点から当該技術分野における当業者によりそれらに与えられるであろう意味を与えられるべきである。本件明細書において使用されるように、しかしながら、それとは反対の記載のない限り、以下の用語は、示される意味を有し及び以下のコンベンションは、順守される。
下に定義される基(group、radical又はmoiety)において、炭素原子の数は、基の前に特定されることが多く、例えば、C1-6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。一般には、2又はそれより多くの下位群(subgroup)を含む基について、最後の名前がつけられた基は、基の結合ポイントであり、例えば、“チオアルキル”は、式HS−Alk−の一価の基を意味する。下で他に記載のない限り、用語コントロール及び従来の安定した原子価の従来の定義は、すべての式及び基において推測され及び達成される。
本件明細書で使用されるような用語“C1-6アルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、1〜6個の炭素原子を含有する非環式、直鎖又は分枝鎖アルキル置換基を意味し及び、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、1−メチルエチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、及び1,1−ジメチルエチルを含む。
本件明細書で使用されるような用語“C3-6シクロアルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、3〜6個の炭素原子を含有するシクロアルキル置換基を意味し及びシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルを含む。
【0009】
本件明細書で使用されるような用語“不飽和アルキレン鎖”は、モノ−又はポリ−不飽和直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素の各々の端からの1つの水素原子の除去により誘導される二価アルケニル置換基を意味し及び、例えば、以下のものを含む:
−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−及び−CH2−CH2−CH2−CH2−CH=CH−CH2−。
本件明細書で使用されるような用語“C1-6アルコキシ”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、置換基C1-6アルキル−O−を意味し、その中において、アルキルは、6個までの炭素原子を含有する上に定義されるようなものである。アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ及び1,1−ジメチルエトキシを含む。後者の置換基は、一般には、t−ブトキシとして知られる。
本件明細書で使用されるような用語“C3-6シクロアルコキシ”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、3〜6個の炭素原子を含有する置換基C3-6シクロアルキル−O−を意味する。
本件明細書で使用されるような用語“C2-7アルコキシ−C1-6アルキル”は、置換基C2-7アルキル−O−C1-6アルキルを意味し、その中において、アルキルは、6個までの炭素原子を含有する上で定義されるようなものである。
本件明細書で使用されるような用語“ハロアルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、臭素、塩素、フッ素又はヨウ素より選ばれるハロゲンで置換される1又はそれより多くの水素を有する非環式、直鎖又は分枝鎖アルキル置換基を意味する。
【0010】
本件明細書で使用されるような用語“チオアルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、置換基としてチオール(HS)基を含有する非環式、直鎖又は分枝鎖アルキル置換基を意味する。チオアルキル基の例は、チオプロピルであり、例えば、HS−CH2CH2CH2−は、チオプロピル基の1つの例である。
本件明細書で使用されるような用語“C6又はC10アリール”は、単独で又は別の置換基との組み合わせで、6個の炭素原子を含有する芳香族単環系又は10個の炭素原子を含有する芳香族二環系のいずれかを意味する。例えば、アリールは、フェニル又はナフチル環系を含む。
本件明細書で使用されるような用語“C7-16アラルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせで、アルキル基を経て結合される上に定義されるようなアリールを意味し、その中において、アルキルは、1〜6個の炭素原子を含有する上に定義されるようなものである。アラルキルは、例えば、ベンジル、及びブチルフェニルを含む。
本件明細書で使用されるような用語“Het”は、単独で又は別の置換基との組み合わせで、窒素、酸素及び硫黄より選ばれる1〜4個の環ヘテロ原子及び炭素原子を含有する5−、6−、又は7−員の飽和又は不飽和(芳香族を含む)複素環からの水素の除去により誘導される一価置換基を意味する。適切な複素環の例としては、以下のものが挙げられる:テトラヒドロフラン、チオフェン、ジアゼピン、イソオキサゾール、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリミジン又は
【0011】
【化3】
用語“Het”は、また、上で定義したような複素環が他の1つ以上の環(それが複素環又は炭素環であれが)と融合したものを含み、その各々は、飽和であっても不飽和であってもよい。1つのそのような例として、チアゾロ[4,5−b]−ピリジンが挙げられる。用語“Het” の下、一般にカバーされているが、本件明細書で正確に使用されるような用語“ヘテロアリール” は、不飽和複素環を定義し、それに対し、二重結合が、芳香族系を形成する。ヘテロ芳香族系の例としては、以下のものが挙げられる:キノリン、インドール、ピリジン、
【0012】
【化4】
【0013】
用語“オキソ”は、置換基として結合する二重−結合された基(=O)を意味する。
用語“チオ”は、置換基として結合する二重−結合された基(=S)を意味する。
一般には、化学構造又は化合物の、全ての互変異性型及び異性体及び混合物は、個々の幾何学的な異性体又は光学異性体又は異性体のラセミ又は非−ラセミ混合物であろうとなかろうと、特定の立体化学又は異性が、特には、化合物名又は構造において示されない限り意図される。
本件明細書で使用されるような用語“医薬的に許容可能なエステル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせで、式Iの化合物のエステルを意味し、その中において、分子のカルボキシル官能基、しかし、好ましくは、カルボキシ末端のいずれかが、アルコキシカルボニル官能基により置換され:
【0014】
【化5】
その中において、エステルのR基は、アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチル);アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル);アルコキシアシル(例えば、アセトキシメチル);アラルキル(例えば、ベンジル);アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル);アリール(例えば、フェニル)(場合によりハロゲン、C1-4アルキル又はC1-4アルコキシで置換されていてもよい)より選ばれる。他の適切なプロドラッグエステルは、本件明細書に参考文献として組み込まれるDesign of Prodrugs,Bundgaard,H.Ed.Elsevier(1985)において記載される。そのような医薬的に許容可能なエステルは、通常、哺乳類において注入され及び式Iの化合物の酸形態に変換される場合、インビボで加水分解される。
上記のエステルに関しては、他に記載のない限り、存在するアルキル基は、有利には、1〜16個の炭素原子、特には、1〜6個の炭素原子を含有する。そのようなエステルにおいて存在するアリール基は、有利には、フェニル基を含む。
特には、エステルは、C1-16アルキルエステル、不飽和ベンジルエステル又はベンジルエステル(少なくとも1つのハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、窒素又はトリフルオロメチルで置換されたもの)であってもよい。
本件明細書で使用されるような用語“医薬的に許容可能な塩”は、医薬的に許容可能な塩基から誘導されたものを含む。適切な塩基の例としては、コリン、エタノールアミン及びエチレンジアミンが挙げられる。Na+、K+、及びCa++塩は、また、本発明の範囲内であるとされる(また、本件明細書で参考文献として組み込まれるPharmaceutical Salts, Birge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., (1977), 66, 1-19を参照されたい)。
【0015】
以下の化学物質は、これらの略語により言及され得る:
略語 化学名
ACN アセトニトリル
Boc t−ブトキシルカルボニル
DABCO 1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン
DCC 1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCHA ジシクロヘキシルアミン
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン又はヒューニグ(Hunigs)−塩基
DMAP ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DMTMM 4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−塩化メチルモルホリニウム
EDC 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイニドヒドロコリド(ethylcarbodiinide hydrocholide)
【0016】
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N’,N’−ヘキサフルオロリン酸テトラメチルウロニウム
HBTU O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N’,N’−ヘキサフルオロリン酸テトラメチルウロニウム
HOAT 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
IPA イソプロピルアルコール
KDMO カリウム3,7−ジメチル−3−オクタンオキシド
MCH メチルシクロヘキサン
MIBK 4−メチル−2−ペンタノン
NMP 1−メチル−2−ピロリジノン
SEH ナトリウム2−エチルヘキサノエート
TBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラフルオロホウ酸テトラメチルウロニウム
THF テトラヒドロフラン
THP トリスヒドロキシメチルホスフィン
TKC テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド
【0017】
発明の実施態様
下の合成スキームにおいて、他に記載のない限り、化学式における全ての置換基は、式(I)と同一の意味を有するべきである。下に記載される合成スキームにおいて使用される反応体は、本件明細書で記載されるように得られ、又は本件明細書で記載されない場合、商業的に入手可能であるそれら自体又は当該技術分野において知られる方法により商業的に入手可能な材料から製造され得るかのいずれかである。ある出発物質は、例えば、国際特許明細書 WO 00/59929、WO 00/09543及びWO 00/09558、米国特許第6,323,180 B1号及び米国特許第6,608,027 B1号において記載される方法により得ることができる。
最適な反応条件及び反応時間は、使用される特定の反応体に依存して変化し得る。他に記載のない限り、溶剤、温度、圧力、及び他の反応条件は、当該技術分野における当業者により容易に選択されて、特定の反応のための最適な結果を得ることができる。典型的には、反応の進展は、所望なら、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によりモニターすることができ、及び中間体及び製品は、シリカゲルでのクロマトグラフィにより及び/又は再結晶化により精製することができる。
1.一般的な複数工程の合成方法
ある実施態様において、本発明は、式(I)の化合物を製造するための一般的な複数工程の合成方法に関する。特には、この実施態様は、以下の式(I)の化合物を製造する方法に関する:
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、Wは、CH又はNであり、
0は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、ヒドロキシ、又はN(R232であり、
ここで、各々のR23は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
1、L2は、各々独立して、H、ハロゲン、C1-4アルキル、−O−C1-4アルキル、又は−S−C1-4アルキルであり(硫黄は、酸化状態にある);又は
0及びL1又は
0及びL2は、共有結合して、それらが、結合される2個のC−原子と一緒に、4−、5−又は6−員の炭素環を形成し得、ここで、互いに直接結合されない1又は2個(5−又は6−員環のケースにおいて)の−CH2−基は、各々独立して、−O−又はNRaにより置換され得、ここで、Raは、H又はC1-4アルキルであり、及びここで、該環は、場合により、C1-4アルキルでモノ−又は二−置換されていてもよく;
2は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、C2-7アルコキシ−C1-6アルキル、C6又はC10アリール又はHetであり、ここで、Hetは、窒素、酸素及び硫黄より選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含有する5−、6−、又は7−員の飽和又は不飽和複素環であり;
前記シクロアルキル、アリール又はHetは、R6で置換され、
【0020】
ここで、R6は、H、ハロ、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルコキシ、NO2、N(R72、NH−C(O)−R7;又はNH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
又はR6は、NH−C(O)−OR8であり、ここで、R8は、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
3は、ヒドロキシ、NH2、又は式−NH−R9の基であり、ここで、R9は、C6又はC10アリール、ヘテロアリール、−C(O)−R10、−C(O)−NHR10又は−C(O)−OR10であり、
ここで、R10は、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
Dは、5〜10個の原子の不飽和アルキレン鎖であり;
4は、H、又は前記鎖Dのいずれかの炭素原子での1〜3個の置換基であり、該置換基は、独立して、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、オキソ、チオ及びC1-6チオアルキルより選ばれ;
及び
Aは、式−C(O)−NH−R11のアミドであり、ここで、R11は、C1-8アルキル、C3-6シクロアルキル、C6又はC10アリール;C7-16アラルキル及びSO211Aより選ばれ、ここで、R11Aは、C1-8アルキル、C3-7シクロアルキル又はC1-6アルキル−C3-7シクロアルキルであり;
又はAは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである);
【0021】
該方法は、以下の工程を含む:
(i)R=PG及びPGが、保護基である場合、式(1)のジエン化合物を適切な触媒の存在下で環化して、式(2)の化合物を得及び次いで式(2)の化合物を、脱−保護状態に付して、式(3)の化合物を得;又はR=Hである場合、式(1)のジエン化合物を適切な触媒の存在下で環化して、式(3)の化合物を得ること:
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、A、D、R3及びR4は、上の式(I)で定義したものであり、Rは、水素又はPGであり、ここで、PGは、保護基であり、nは、0〜2の整数であり、及びD1=D−(n+2)である);
(ii)Aが、式(3)における保護されたカルボン酸基である場合、場合により、式(3)の化合物を、脱−保護状態に付して、式(3)の化合物を得ること、ここで、Aは、カルボン酸基であり;及び
(iii)式(3)の化合物を式QUINの化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ること、ここで、R3、R4、D、A、L0、L1、L2、W及びR2は、上の式(I)で定義したものであり、及びRは、C1-6アルキル、C6又はC10アリール又はヘテロアリールであり、:
【0024】
【化8】
【0025】
及びAが、式(I)において保護されたカルボン酸基である場合、場合により、式(I)の化合物を、脱−保護状態に付して、式(I)の化合物(式中、Aは、カルボン酸基である)を得ること;
及びAが、得られた式(I)の化合物におけるカルボン酸基である場合、場合により、この化合物を、適切なカップリング剤、例えば、カルボジイミド試薬、TBTU又はHATUの存在下で、式R11ASO2NH2のスルホンアミドでカップリングさせて、式(I)の化合物(式中、Aは、−C(O)−NH−SO211Aである)を得ること。
【0026】
II.合成方法の個々の工程
本発明の追加の実施態様は、上記の複数工程の一般的合成方法の個々の工程及びこれらの工程において使用される個々の中間体に関する。本発明のこれらの個々の工程及び中間体は、下で詳細に記載される。下で記載される工程における全置換基は、上の一般的複数工程の方法において定義されるものである。
工程(i)
この工程は、式(1)のジエン化合物を、R=保護基である場合、適切な触媒の存在下で環化して、式(2)の化合物を得ること及び次いで式(2)の化合物を、脱−保護状態に付して、式(3)の化合物を得ること;又はR=Hである場合、式(1)のジエン化合物を、適切な触媒の存在下で環化して、式(3)の化合物を直接得ることに関する:
【0027】
【化9】
【0028】
この環化工程のための適切な閉環触媒は、ルテニウムベースの触媒、及び一般に使用されるモリブデン−ベースの(シュロック(Schrock)及び改良されたシュロック触媒)及びタングステン−ベースの触媒を含む。例えば、オレフィンメタセシス反応において使用されるよく知られるルテニウム−ベースの触媒のいずれか、例えば、グラブ(Grubb)触媒(第一及び第二世代)、ホベイダ(Hoveyda)触媒(第一及び第二世代)及びノラン(Nolan)触媒は、選択される特定の触媒に依存して、必要に応じて、閉環を処理するのを可能にする反応条件の適切な調節で使用され得る。
環化工程のための適切なルテニウム触媒としては、例えば、以下のものが挙げられる:式A、B、C、D又はEの化合物:
【0029】
【化10】
【0030】
(式中
1及びX2は、各々独立して、アニオン性リガンドを表し、
1は、ルテニウム原子に結合され及び場合により、フェニル基に結合されていてもよい中性電子供与体リガンドを表し、及び
2は、ルテニウム原子に結合される中性電子供与体リガンドを表し;
及びR5は、ベンゼン環上の1又はそれより多くの置換基より選ばれ、各々の置換基は、独立して、水素、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、HS−C1-6アルキル、HO−C1-6アルキル、ペルフルオロC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、窒素、イミノ、オキソ、チオ又はアリールより選ばれ;及び
ここで、X2及びL2は、場合により一緒に、キレート二座配位子を形成していてもよい)。
より具体的な実施態様において、ルテニウム触媒は、式(A−1)又は(A−2)の化合物である:
【0031】
【化11】
【0032】
(式中:
1は、式PR3の三置換ホスフィン基であり、ここで、Rは、C1-6アルキル及びC3-8シクロアルキルより選ばれ、
2は、式PR3の三置換ホスフィン基であり、ここで、Rは、C1-6アルキル及びC3-8シクロアルキルより選ばれ、
又はL2は、式A又はBの基であり:
【0033】
【化12】
【0034】
式中、R7及びR8は、各々独立して、水素原子又はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-12アリール又はC6-12アリール−C1-6アルキル基を表し;及び
9及びR10は、各々独立して、水素原子又はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C6-12アリール又はC6-12アリール−C1-6アルキル基を表し、各々、場合により、水素、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、HS−C1-6アルキル、HO−C1-6アルキル、ペルフルオロC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、窒素、イミノ、オキソ、チオ又はアリールより選ばれる1、2又は3個の基により置換されていてもよく;
1及びX2は、各々独立して、ハロゲン原子を表し;
5は、水素又は窒素を表し;及び
6は、C1−6アルキル基を表す)。
他のより具体的な実施態様においては、ルテニウム触媒は、以下のものより選ばれる:
【0035】
【化13】
【0036】
(式中、Phは、フェニルであり及びMesは、2,4,6−トリメチルフェニルである)。
メタセシス環化反応工程に有用であるルテニウム−ベースの触媒、例えば、上に記載のものは、知られる合成技術により得ることができる全ての知られる触媒である。例えば、適切なルテニウム−ベースの触媒の例については、以下の文献を参照されたい:
Organometallics 2002, 21, 671; 1999, 18, 5416; 及び1998, 17, 2758;
j. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 6543; 1999, 121, 791; 1999, 121, 2674;2002, 124, 4954; 1998, 120, 2484; 1997, 119, 3887; 1996, 118, 100; 及び1996, 118,9606
J. Org. Chem. 1998, 63, 9904; 及び1999, 64, 7202;
Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1998, 37, 2685; 1995, 34, 2038; 2000, 39, 3012及び2002, 41, 4038;
米国特許第5,811,515;6,306,987 B1;及び6,608,027 B1号。
本発明の別の具体的な実施態様において、閉環反応は、溶剤において、約20〜約120℃の範囲における温度で行われる。閉環メタセシス反応に適切である溶剤が、使用され得る。適切な溶剤の例として、アルカン、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン又はn−ヘプタン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン、塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン又はジクロロエタン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルアルコール、ジオキサン、酢酸エチル及びt−ブチルアセテートが挙げられる。
【0037】
本発明の別の具体的な実施態様において、閉環反応が行われ、その中において、ジエン化合物(1)の触媒に対するモル比は、1000:1〜100:1、好ましくは、500:1〜110:1、特には、250:1〜150:1の範囲である。
本発明の別の具体的な実施態様において、閉環反応は、質量で1:400〜1:25、好ましくは、質量で1:200〜1:50、特には、質量で1:150〜1:75の範囲のジエン化合物(1)の溶剤に対する比で行われる。
本発明の別の具体的な実施態様において、閉環反応は、2〜6部、好ましくは、3〜5部の範囲における触媒の滴下により行われる。
当該技術分野における当業者は、選択される特定の閉環触媒に適切である適切な条件を選択及び調節することにより環化工程を容易に最適化することができる。例えば、選択される触媒に依存して、環化工程を、高温度で、例えば、90℃より高く行うのが好ましいが、より低温度が、また、反応混合物への活性剤、例えば、ハロゲン化銅(CuX、ここでXは、ハロゲンである)の添加で可能になり得る。
【0038】
この工程の特定の実施例において、式(1)の化合物は、脱気有機溶剤(例えば、トルエン又はジクロロメタン)において、約0.02Mより下の濃度に溶解され、次いで、ルテニウム−ベースの触媒、例えば、ホベイダ触媒で、約40℃〜約110℃の温度で、反応の終了まで処理される。ルテニウム金属のいくつか又はすべては、適切な重金属スカベンジャー、例えば、THP又は重金属を取り除くことが知られる他の薬剤での処理により反応混合物から除去され得る。反応混合物は、次いで、水で洗浄され及び有機層を分離し及び洗浄する。得られた有機溶液は、例えば、その後のろ過を伴う活性炭の添加により脱色され得る。
ある実施態様において、式(1)におけるプロリン環酸素原子は、従来の技術を用いて環化工程より前の時に保護基(ここでR=PGである)で保護される。適切な酸素保護基が使用され得、例えば、アセテート、ベンゾエート、パラ−ニトロベンゾエート、ナフトエート(naphthoate)、ハロゲノアセテート、メトキシアセテート、酢酸フェニル、酢酸フェノキシ、ピバロエート(pivaloate)、クロトネート、炭酸メチル、炭酸メトキシメチル、炭酸エチル、炭酸ハロゲノ、パラ−ニトロ炭酸フェニル、トリイソプロピルシリル、トリエチルシリル、ジメチルイソプロピル、ジエチルイソプロピル、ジメチルテキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、トリス(トリメチルシリル)シリル、t−ブトキシメトキシフェニルシリル、t−ブトキシジフェニルシリルなどが挙げられる。環化工程に続いて、化合物(2)における保護基PGは、当該技術分野における当業者により容易に理解されるであろうように、特定の保護基に適切である従来の脱−保護条件を用いて除去されて、化合物(3)を得る。
別の実施態様において、メタセシス環化工程より前に式(1)のジエン化合物の溶液を精製して、環化反応を抑制し得る反応混合物からの不純物を除去するのが所望であり得る。当該技術分野における当業者によく知られる従来の精製手順が、用いられ得る。ある好ましい実施態様において、ジエン化合物の溶液は、環化工程におけるその使用の前にアルミナ、例えば、活性アルミナでの処理により精製される。
【0039】
工程(ii)
Aが、式(3)における保護されたカルボン酸基、例えば、カルボン酸基エステル基である場合、式(3)の化合物は、場合により、脱−保護(加水分解)条件に付されて、次の工程より前に対応する遊離カルボン酸化合物を得ることができる。加水分解は、当該技術分野において知られる従来の加水分解条件を用いて行われ得る。特定の実施態様において、例えば、式(3)のエステル化された化合物は、有機溶剤、例えば、THFにおいて溶解され及び適切な加水分解剤、例えば、水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)又は水酸化ナトリウム(NaOH)が添加され、次いで水が添加される。得られる溶液は、約35〜約50℃の温度で攪拌される。反応の終了時、溶液が冷却され、及び有機層が収集される。適切な溶剤、例えば、エタノールが有機層に添加され及びpHが、約pH5〜約pH6に調整される。混合物は、次いで、式(3)の化合物が沈殿し始めるとすぐ、約40〜約50℃の温度に温められ、その時点で、水が添加され及び溶液が攪拌される。沈殿の終了時、溶液は周囲温度に冷却され及び式(3)の化合物は、ろ過により収集され、洗浄及び乾燥される。
工程(iii)
この工程は、式(I)の化合物を製造する方法に関し、以下の工程を含む:
式(3)の化合物を式QUINの化合物と反応させて、式(I)の化合物を得ること:
【0040】
【化14】
【0041】
及びAが、保護されたカルボン酸基である場合、場合により、式(I)の化合物を脱−保護条件に付して、式(I)の化合物(式中、Aは、カルボン酸基である)を得ること;
及びAが、得られた式(I)の化合物においてカルボン酸基である場合、場合により、この化合物を、適切なカップリング剤、例えば、カルボジイミド試薬、TBTU又はHATUの存在下で、式R11ASO2NH2のスルホンアミドでカップリングさせて、式(I)の化合物(式中、Aが、−C(O)−NH−SO211Aである)を得ること。
QUINにおけるスルホニル基上のR基としては、例えば、C1-6アルキル、C6又はC10アリール又はヘテロアリールが挙げられる。好ましいR基は、フェニルである。
式(3)及びQUINの化合物の間のカップリング反応は、典型的には、塩基の存在下で適切な溶剤又は溶剤混合物において行われる。この反応についての適切な塩基の例としては、t−BuOK、t−BuONa、t−BuOCs、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、及びKDMOが挙げられ、t−BuOK及びKDMOが、好ましい塩基である。この反応についての適切な溶剤の例としては、極性非プロトン性溶剤、例えば、DMSO、DMF、NMP又は他の一般的な極性非プロトン性溶剤及びTHF及び他の中程度の極性エーテル、又はこれらの溶剤の適切な混合物が挙げられる。好ましい溶剤は、DMSOである。
好ましい温度は、0〜50℃(溶剤の凝固点に依存)、及び最も好ましくは、10〜25℃であろう。
【0042】
この工程の更に別の好ましい実施態様において、反応条件の以下のセットが用いられ得る:フラスコが、大員環(3)及びキノリンQUINで満たされ、窒素でパージされ(3回)、次いで、DMSOが、シリンジを介して添加される。混合物は、再び、窒素でパージされ(3回)、及び温度を、20℃に調節する。スラリーに対して、次いで、50%KDMO/ヘプタンを、シリンジを介して、1時間にわたり添加する。得られた混合物は、窒素下で〜20℃で2時間攪拌される。混合物は、次いで、氷HOAcの滴下により急冷され、及び混合物が攪拌される。反応混合物は、次いで、ゆっくり、水に添加されて、沈殿生成物がもたらされる。スラリーは、次いで、攪拌され、ろ過され、及びケーキは、水、次いで、ヘキサンで洗浄され、及び固体が乾燥する。
Aが、式(I)において保護されたカルボン酸基、例えば、カルボン酸エステル基である場合、式(I)の化合物は、場合により、脱−保護(加水分解)条件に付されて、対応する遊離カルボン酸化合物を得ることができる。加水分解は、当該技術分野において知られる従来の加水分解条件を用いて行われ得る。適切な条件は、工程(ii)について先に記載したものと同一である。また、Aが、得られる式(I)の化合物においてカルボン酸基である場合、この化合物は、式R11ASO2NH2のスルホンアミドで、適切なカップリング剤、例えば、カルボジイミド試薬、TBTU又はHATUの存在下でカップリングされて、式(I)の化合物(式中、Aは、−C(O)−NH−SO211Aである)を得ることができる。
III.ペプチドジエン出発材料の製造
上のスキームにおいて用いられるペプチドジエン出発物質(1)は、既知の材料から、下のスキームI〜IIIにおいて概説されるような手順を用いて合成され得る。
【0043】
【化15】
【0044】
スキームIにおけるP2−P1−PG(式中、PGは、アミノ−保護基である)を得るためのペプチドカップリングは、従来のペプチドカップリング試薬及びプロトコール(当該技術分野において知られるもの)のいずれかを用いて行われ得、及びアミノ−保護基PGは、当該技術分野においてよく知られる適切なアミノ−保護基であり得る。例えば、WO 00/09543、WO 00/09558及び米国特許第6,608,027 B1号において開示される中間体及びカップリング技術を参照されたい。式P2−PG及びP1の化合物の間のペプチドカップリングは、例えば、当該技術分野において知られる種々の条件の下、従来のペプチドカップリング試薬、例えば、DCC、EDC、TBTU、HBTU、HATU、DMTMM、塩化シアヌル(CC)、塩化トシル(TsCl)、塩化メシル(MsCl)、クロロギ酸イソブチル(IBC)、HOBT、又はHOATを用いて、非プロトン溶剤、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、THF、DMF、NMP、DMSOにおいて達成され得る。式P2−P1−PGの化合物において窒素保護基を開裂する次の工程は、また、よく知られる技術により、例えば、00/09543、WO 00/09558及び米国特許第6,608,027 B1号において記載されるように達成され得る。特定の実施態様において、この方法は、種々のプロトン性又は極性非プロトン性溶剤、例えば、アルコール、エーテル、ACN又はDCMにおいて、有機又は無機酸、例えば、HCl、H2SO4、TFA、AcOH、MeSO3Hを用いる式P2−P1−PGの化合物の酸加水分解含む。
出発材料として使用される式P2−PGの化合物は、商業的に入手可能な、例えば、Boc−4(R)−ヒドロキシプロリンであるか、又は従来の技術を用いて既知の材料から製造され得るかのいずれかである。1つの例において、式P2−PG(式中、Rは、水素であり、及びPGは、アミノ−保護基である)の化合物は、4−ヒドロキシプロリンのアミノ−保護により製造され得る:
【0045】
【化16】
第一の工程において、適切なアミノ−保護基は、従来の手順を用いて4−ヒドロキシプロリン化合物の環窒素原子上に導入される。例えば、化合物は、適切な溶剤において溶解され及び適切なアミノ−保護基を導入する試薬と反応され得る。例えば、及びその範囲に制限されることを意図せず、Boc(t−ブチルオキシカルボニル)が、所望な保護基である場合、化合物は、塩基、例えば、NaOH、KOH、LiOH、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、又はN−メチル−ピロリジンが添加される溶剤混合物、例えば、アセトン/水、MIBK/水又はTHF/水において無水Boc2O(又はBoc−ON)と反応され、反応は、20〜60℃の温度で行われる。
式P1の化合物は、WO 00/09543、WO 00/09558及び米国特許第6,608,027 B1号より知れられ、及びそれらに記載されるような技術により製造され得る。
【0046】
【化17】
【0047】
スキームIIにおいてP3−P2−Meを得るためのペプチドカップリングは、従来のペプチドカップリング試薬及びプロトコール(当該技術分野において知られるもの)のいずれかを用いて行われ得る。適切な試薬及び条件の例は、スキームIのペプチドカップリング工程に関して上で概説される。
スキームIIにおいてP3−P2を得るためのその後の加水分解は、場合により、H2Oと混和性の共−溶剤、例えば、THF、ジオキサン、アルコール、又はDME又はこれらの共−溶剤の組み合わせを含有していてもよい水性塩基溶液で行われるであろう。好ましい溶剤混合物は、共−溶剤としての水性塩基含有THFであろう。いずれかの水溶性塩基、例えば、LiOH、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3などを使用することができる。好ましい塩基は、LiOHであろう。塩基の量は、1〜100当量で変動し得、1〜10当量が、好ましい。塩基の濃度は、0.25〜12Mの範囲であり得、1〜4Mが、好ましい。反応温度は、−40〜100℃で変動し得、−20〜50℃が、好ましい。
P2−MeでのP3のペプチドカップリングについてのワン−ポット配列(one-pot sequence)は、CC又は塩化アルキル−又はアリール−スルホニル(例えば、TsCl、MsCl)を用いて、カップリング条件下で行われて、P3−P2Meを形成し得、次いで、水性塩基溶液の添加による生成物の加水分解がなされて、次いで、結晶化され得るスキームIIの化合物P3−P2が提供される。このワン−ポット配列において、P3化合物は、また、立体障害第二級アミン、例えば、そのDCHA塩を有するその塩の形態において使用され得る。
出発物質として使用される式P3の置換酸化合物は、米国特許第6,608,027 B1号より知られ及びそこに記載されるような技術を用いて商業的に入手可能な材料から得られ得る。
【0048】
【化18】
【0049】
スキームIIIにおいて化合物(1)を得るためのペプチドカップリングは、従来のペプチドカップリング試薬及びプロトコール(当該技術分野において知られるもの)のいずれかを用いて行われ得る。適切な試薬及び条件の例は、スキームIのペプチドカップリング工程に関して上で概説される。IBCは、スキームIIIについての好ましいペプチドカップリング試薬である。
IV.スルホン化キノリン出発材料の製造
スルホン化キノリン出発材料QUINは、下のスキームIVにおいて概説される手順に従って既知の材料から製造することができる:
スキームIV
【0050】
【化19】
【0051】
これらのヒドロキシ−置換キノリンIIはスルホンキノリンQUINに変換され得るが、これは、初めに、それらのハロ−キノリン化合物III(ここで、Xは、ハロゲンである)への変換を、以下のよく知られるハロゲン化手順により、種々のハロゲン化試薬、例えば、一般に使用されるPOX3及びPX5(ここで、X=F、Cl、Br又はI)を用いて(その中において、これらの試薬は、いくらかのケースにおいて溶剤として又は極性非プロトン性溶剤、例えば、DMF又はアセトニトリルとの組み合わせにおいて使用することができる)行い;及び次いで、スルフィネート塩RSO2M(その中において、Mは、アルカリ金属である)、例えば、PhSO2Naとの反応によりハロゲン化化合物IIIを、ターゲットスルホンキノリンQUINに変換することによる。
あるいはまた、IIは、適切な溶剤において適切な塩基の存在下で、アレーン塩化スルホニル化合物RASO2Cl(その中において、RAは、中性又は電子が豊富なアレーン基である)、例えば、塩化ベンゼンスルホニル又は塩化トシルとの反応により、初めに、中間体スルホネートを生成することによるワン−ポット手順においてスルホンキノリンに変換され得る。この工程のための適切な塩基としては、第3級アミン塩基、例えば、N−メチルピロリジン及びジイソプロピルエチルアミンが挙げられ、及び適切な溶剤としては、非プロトン性溶剤、例えば、アセトニトリル、THF、トルエン及びDMF、好ましくは、アセトニトリルが挙げられる。得られる種は、次いで、現場で、酸性条件下で(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸など、好ましくは、酢酸の存在下で)、スルフィネート塩RSO2M(その中において、Mは、アルカリ金属である)、例えば、PhSO2Na、PhSO2K又はPhSO2Csと、適切な反応温度で、例えば、0〜100℃、好ましくは、25〜50℃の範囲において反応される。スルホンキノリン生成物は、当該技術分野における当業者によく知られる従来の技術を用いて、反応混合物から単離され得る。ある実施態様において、スルホンキノリンは、溶液を室温に冷却し及び水を添加することにより結晶化され得る。結晶化された生成物は、次いで、従来の方法を用いて、ろ過され、リンスされ及び洗浄され得る。
式(II)のヒドロキシル−置換キノリン化合物は、例えば、WO 00/59929、WO 00/09543及びWO 00/09558、米国特許第6,323,180 B1号、米国特許第6,608,027 B1号及び米国特許出願公報第2005/0020503 A1号に記載される技術を用いて商業的に入手可能な材料から合成され得る。
式(II)のあるヒドロキシル−置換キノリン化合物の製造及び式(III)の化合物へのそれらのハロゲン化のための代替手順は、下のスキームV(その中において、化合物7は、化合物(II)の例であり及び化合物8は、化合物(III)の例である)に記載される:
【0052】
【化20】
【0053】
(その中において、各々のAlkは、独立して、C1-6アルキル基であり、Xは、ハロゲン原子であり、Zは、t−ブチル又はt−ブチル−オキシであり、及びR6及びHetは、式Iで定義されるものである。
第一工程において、式1の化合物は、塩基及び臭素化剤で処理して、化合物2を得る。この工程のための一般要件は、所望なジアニンを形成するのに十分な長さの塩基の使用である。これは、カチオン−溶媒溶剤(solvating solvent)、例えば、DMSOなどにおける、アルキルリチウム、金属アミド、例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムテトラメチルピペリジド、金属ヘキサメチルジシルアジド、例えば、KHMDS、オルガノジンケート(organozincate)、金属アルコキシドであってもよい。好ましい塩基は、n−ブチルリチウム及びLDAであろう。ジアニオン形成を妨げない有機溶剤、例えば、THF、アルキル−THF、ジオキサン、アルカン、シクロアルカン、ジアルキルエーテル、例えば、MTBE、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテルなどを使用することができる。好ましい溶剤は、THF、アルキル−THF及びアルカンであろう。ジアニオン形成のための温度は、−100〜25℃であり得、好ましい範囲は、−30〜25℃である。臭素化試薬は、不安定な臭素原子、例えば、Br2を含有する化合物、NBS、ブロモヒダントイン(bromohydantoin)、N−ブロモフタルイミド、ブロモハロアルカン、例えば、1,2−ジブロモテトラクロロエタン及びペルフルオロアルキルブロミドなどであってもよい。好ましい臭素化試薬は、ブロモハロアルカンであろう。ジアニオンが、適切な溶剤において生成されるとすぐに、臭素化試薬は、ニート又は溶液において添加され得、又はあるいはまた、ジアニオンは、臭素化試薬にニート又は溶液においてのいずれかで添加され得る。好ましいモードは、ジアニオンをゆっくりと、溶液における臭素化試薬に添加することであろう。臭素化のための温度は、−100〜25℃であり得、好ましい範囲は、−30〜25℃である。
【0054】
次の工程において、化合物2は、水性酸混合物での処理により加水分解されて、3が得られる。水性酸混合物、例えば、[トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、例えば、トリクロロ酢酸、スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、強酸樹脂、例えば、DOWEX 50]などと水を使用することができる。好ましい酸は、2〜12M濃度、好ましくは、少なくとも6Mにおける塩酸及び硫酸であろう。水と混和される共溶剤、例えば、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール、又はエーテル、例えば、DME、ジグライムなどが、また、使用されてもよい。加水分解は、0〜200℃で行われ得、好ましい温度は、0〜100℃である。
次の工程において、化合物3は、アルキル化ニトリル(Alk−CN)及びルイス酸で処理して、化合物4を得る。3の4への転化のために、ルイス酸をそれだけで又は組み合わせで、例えば、AlCl3、BCl3、GaCl3、FeCl3、及びそれらの混合物などが使用され得る。好ましい方法は、BCl3をAlCl3と共に使用することであろう。容易に、アシル化されないであろう溶剤、例えば、ハロカーボン、ハロベンゼン、アルキルベンゼン、例えば、トルエン、及びアルキルニトリル、例えば、アセトニトリルを使用することができ、好ましい溶剤は、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン及びトルエンである。反応温度は、0〜150℃、好ましくは、25〜75℃であり得る。
次の工程において、化合物4は、化合物5でアシル化して、化合物6を得る。4の6への転化のために、アシル化は、初めに、カルボン酸5を活性形態、例えば、酸塩化物に転換すること又は標準ペプチドカップリングプロトコールを用いることのいずれかにより達成され得る。好ましい方法は、塩化オキサリル又は塩化チオニルを用いて化合物5の酸塩化物を作り出すことであろう。この活性化された種は、次いで、有機溶剤において又は水において、添加塩基を伴うか又は伴わず、アニリン4と結合されるであろう。好ましい溶剤は、NMP及びTHFであり及び好ましい塩基(使用される場合)は、トリエチルアミンである。反応温度は、−30〜150℃、好ましくは、−20〜50℃であり得る。
【0055】
次の工程において、化合物6は、塩基の存在下で環化して、化合物7を得る。化合物6は、単離及び精製され得、又はあるいはまた、有機溶剤、例えば、NMPにおけるクルード(crude)6は、環化条件に簡素に付されて、直接キノリン7を供給し得る(ワン−ポット方法において2つの工程を行う)。スキームIにおける6の7への転化のために、エノラートを形成するのが可能である塩基、例えば、t−BuOK、KDMO、LDAなどが、使用され得、t−BuOK及びKDMOが、好ましい。エノラートと反応しない有機溶剤、例えば、THF、ジオキサン、DMSO、NMP、DMEなどが、使用され得、NMP、DME及びDMSOが、好ましい。環化は、25〜150℃の温度で行われ得、50〜100℃が好ましい。
最終工程において、ヒドロキソキノリン化合物7を、ハロゲン化剤で処理して、化合物8を得る。スキームIにおける7の8への転化のために、多くのハロゲン化試薬、例えば、塩化メタンスルホニル、SOCl2、POCl3、PCl3、PCl5、POBr3、HFなどが、使用され得、POCl3及びSOCl2が、好ましい。ハロゲン化は、ハロゲン化試薬においてニートで、又はハロゲン化試薬と反応しない有機溶剤、例えば、DME、ジグライム、THF、ハロカーボンなど(DME及びTHFが、好ましい)において行われ得る。反応温度は、20〜150℃であり得、25〜100℃が、好ましい。
V.式(I)の化合物の好ましい実施態様
本発明の方法により製造され得る式(I)の化合物の好ましい実施態様は、下に記載される実施態様を含む。
好ましい実施態様は、上で記載されるような式(I)の化合物を含み、その中において、右側のシクロプロピル基は、2つの異なるジアステレオ異性体より選ばれ、ここで、シクロプロピルの1−炭素中心は、典型的な構造(i)及び(ii)により表されるようなR配置を有する:
【0056】
【化21】
式(I)の化合物のある具体的な実施態様において、Dリンカーは、上の構造(ii)により表されるようにA基に対する配置synにあり;
Wは、Nであり;
0は、H、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCH(CH32、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NHCH(CH32、−N(CH32、−N(CH3)C25、−N(CH3)C37及び−N(CH3)CH(CH32より選ばれる。
1及びL2は、各々独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−OCH3、−OC25、−OC37及び−OCH(CH32より選ばれ、
2は、H、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ、フェニル又は以下の式より選ばれるHetであり:
【0057】
【化22】
【0058】
ここで、R6は、H、C1-6アルキル、NH−R7、NH−C(O)−R7、NH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
又はR6は、NH−C(O)−OR8であり、ここで、R8はC1-6アルキルであり;
3は、NH−C(O)−R10、NH−C(O)−OR10又はNH−C(O)−NR10であり、ここで、各々のケースにおいて、R10は、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルであり;及び
Dは、6〜8個の原子の不飽和アルキレン鎖であり;
4は、H又はC1-6アルキルであり;
及びAは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである。
式(I)の化合物の別の具体的な実施態様において、Dリンカーは、上の構造(ii)により表されるようにA基に対する配置synにあり;
Wは、Nであり;
0は、H、−OH、−OCH3及び−N(CH32より選ばれ;
1及びL2の一方は、−CH3、−F、−Cl又は−Brであり及びL1及びL2の他方は、Hであり、又はL1及びL2の双方は、Hであり;
2は、
【0059】
【化23】
(式中、R6は、NH−R7又はNH−C(O)−R7であり、ここで、R7は、独立して、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルである)であり;
3は、NH−C(O)−OR10であり、ここで、R10は、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルであり;
4は、H又はC1-6アルキルであり
Dは、1つの二重結合を有する、7個の原子の不飽和アルキレン鎖であり;及び
Aは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである。
別の具体的な実施態様において、式(I)の化合物は、下の式(I’)を有し:
【0060】
【化24】
0は、−OCH3であり;
1は、−CH3、−F、−Cl又はBrであり及びL2は、Hであり、又はL1及びL2の双方は、Hであり;
6は、NH−R7又はNH−C(O)−R7であり、ここで、R7は、独立して、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
10は、ブチル、シクロブチル又はシクロペンチルであり;
Aは、カルボン酸又はそれらの医薬的に許容可能な塩又はエステルである。
以下の表に、式(I)の化合物の典型的な化合物を挙げる。下の式の化合物:
【0061】
【化25】
(式中、L0、L1、L2及びR2は、下に定義されるようなものである):
【化26】
【0062】
【化27】
【0063】
以下の表に、式(I)の化合物の典型的な追加の化合物を挙げる。下の式の化合物:
【化28】
(式中、位置14からシクロプロピル基への結合は、COOHに対するsynであり、前記13、14の二重結合は、シスであり、R13、R4及びR2は、以下のように定義される):
【0064】
【化29】
【0065】
【化30】
【0066】
【化31】
【0067】
式(I)の化合物の典型である追加の特定の化合物は、米国特許第6,608,027 B1号において見出すことができる。
VI.式QUINの化合物の好ましい実施態様
本発明の方法において使用され得る式QUINの化合物の好ましい実施態様は、下に記載される実施態様、即ち、上に記載される式(I)の化合物の好ましい実施態様に対応するものを含む。
式QUINの化合物のある実施態様において:
WはNであり;
0は、H、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCH(CH32、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NHCH(CH32、−N(CH32、−N(CH3)C25、−N(CH3)C37及び−N(CH3)CH(CH32より選ばれる。
1及びL2は、各々独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−OCH3、−OC25、−OC37及び−OCH(CH32より選ばれ、
2は、C1-6チオアルキル、C1-6アルコキシ又は以下の式より選択されるHetである:
【0068】
【化32】
【0069】
ここで、R6は、H、C1-6アルキル、NH−R7、NH−C(O)−R7、NH−C(O)−NH−R7であり、ここで、各々のR7は、独立して、H、C1-6アルキル又はC3-6シクロアルキルであり;
又はR6は、R8がC1-6アルキルであるNH−C(O)−OR8であり;
及びRは、C6又はC10アリール基である。
式QUINの化合物の別の具体的な実施態様において:
Wは、Nであり;
0は、H、−OH、−OCH3及び−N(CH32より選ばれ;
1及びL2の一方は、−CH3、−F、−Cl又は−Brであり及びL1及びL2の他方は、Hであり、又はL1及びL2の双方は、Hであり;
2は、
【0070】
【化33】
であり、
ここで、R6は、NH−R7又はNH−C(O)−R7であり、ここで、R7は、独立して、C1-6アルキル、又はC3-6シクロアルキルであり;
及びRは、C6又はC10アリール基である。
別の具体的な実施態様において、式QUINの化合物は、下の式を有する:
【0071】
【化34】
0は、−OCH3であり;
1は、−CH3、−F、−Cl又はBrであり及びL2は、Hであり、又はL1及びL2の双方は、Hであり;
6は、NH−R7又はNH−C(O)−R7であり、ここで、R7は、独立して、C1-6又はC3-6シクロアルキル;
及びRは、C6又はC10アリール基である。
以下の表に、式QUINの化合物の典型的な化合物を挙げる。下の式の化合物:
【0072】
【化35】
(式中、Phは、フェニルであり及びL0、L1、L2及びR2は、下で定義されるようなものである):
【0073】
【化36】
【0074】
【化37】
【0075】
以下の表に、式QUINの化合物の典型的な追加化合物を挙げる。下の式の化合物:
【化38】
(式中、Phは、フェニルであり及びR2は、以下のように定義されるようなものである):
【0076】
【化39】
【0077】
【化40】
【0078】
【化41】