(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667760
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】キャリアテープの成形方法
(51)【国際特許分類】
B65B 15/04 20060101AFI20150122BHJP
B65D 73/02 20060101ALI20150122BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
B65B15/04 P
B65D73/02 K
B65D85/38 N
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-296589(P2009-296589)
(22)【出願日】2009年12月28日
(65)【公開番号】特開2011-136715(P2011-136715A)
(43)【公開日】2011年7月14日
【審査請求日】2012年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 豊
(72)【発明者】
【氏名】武井 淳
(72)【発明者】
【氏名】廣川 裕志
(72)【発明者】
【氏名】笹川 武信
【審査官】
戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−321502(JP,A)
【文献】
特開2002−308211(JP,A)
【文献】
特開平10−272684(JP,A)
【文献】
特開平07−088949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 15/04
B65D 73/02
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状樹脂テープに、部品収納用ポケットと位置決め用ポストを形成する成形工程に次いで、該位置決め用ポストと密着して嵌合する2以上の凹部を有するポスト用搬送子を用いて位置決めをした状態で部品収納用ポケットと位置決め用ポストが形成された帯状樹脂テープを搬送し、次工程において位置決め用ポストの位置にスプロケットホールを穿設することを特徴とするキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
前記成形工程において、部品収納用ポケットが帯状樹脂テープの上面に対して凹状に形成されるのに対して、位置決め用ポストが凸状に形成されている請求項1に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
成形工程の前記次工程において、スプロケットホールを穿設すると同時に部品収納用ポケット底面の中央部にセンターホールを穿設することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
前記成形工程が真空ロータリー成形である請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャリアテープの製造方法。
【請求項5】
前記真空ロータリー成形に於いて、部品収納用ポケットが雄型成形により形成され、位置決め用ポストが雌型成形により形成される請求項4に記載のキャリアテープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空成形によるエンボスキャリアテープ、特に微少エンボスのキャリアテープの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品等を実装機に搬送する手段として、テープ状基材に部品収納用ポケットが形成されたキャリアテープが広く用いられている。キャリアテープの基材としては、その表面を帯電防止処理または、導電性を付与した熱可塑性樹脂基材が用いられるようになってきている。ICチップ等の電子部品は、従来は、例えば
図4に示すようなキャリアテープに収納されて搬送される。
【0003】
この場合キャリアテープにおいては、
図4からも明らかなように、当該キャリアテープの長手方向に沿って電子部品を収納するための部品収納用ポケット2が一定間隔で形成されている。またキャリアテープには、当該キャリアテープの長手方向に沿って所定ピッチでスプロケットホール(送り穴)3が穿設されている。これによりこのキャリアテープの成形においては、成形機にスプロケットホール3と同じピッチで送りピン22が設けられてなるスプロケット21を用いて、そのスプロケットホール3を基準として、長手方向に所定ピッチで順次走行駆動させる。
【0004】
かかるキャリアテープは、例えば熱可塑性樹脂テープを加熱成形加工することによりその長手方向に沿って一定間隔で部品収納用ポケット2を順次成形した後、次の別工程でこれら成形された部品収納用ポケット2を基準としてスプロケットホール3を一定間隔で順次穿設するようにして製造されているため両者のずれが生じ易く、部品収納用ポケット2とスプロケットホール3間の相対的位置精度を高めることが困難であり、各部品収納用ポケット2に電子部品を収納し、又は各部品収納用ポケット2から電子部品を取り出す操作を精度良く行えず、電子部品を吸着保持するピックアップから電子部品が落下する等の不都合を生じる問題があった。部品収納用ポケット2の成形とスプロケットホール3の穿設を、同じ工程で同時に行えば、両者の相対的位置精度は向上するが、プレス成形機で用いられるこのような方法では、近年の電子部品の微小化に伴う、部品収納用ポケットに求められる精密な内部形状を形成するのは困難であった。
【0005】
これらの不具合を解消する目的で、
図5に示したように、部品収納用ポケット2と、
図4に於けるスプロケットホール3に相当する係合部6を同時に成形して設けることが提案されている(特許文献1および2参照)。これらのキャリアテープでは、部品収納用ポケット2と係合部6を同時に成形することから、これらの相対的位置関係は、従来のスプロケットホール3によるものより大幅に改善され、係合部6は対応した送りピン22によって電子部品の収納および取り出しの操作を、ある程度は高精度に行うことができるが、係合部6と成形機の送りピン22の十分な嵌合精度が要求されるばかりでなく、現状のテーピング機、チップマウンター機の送り機構には対応しておらず、汎用的に使用することができない。
【0006】
さらに、近年部品サイズが著しく小さくなり、1005サイズ(長辺寸法;1.0mm、短辺寸法;0.5mm)以下の微細部品、例えば0402サイズ(長辺寸法;0.4mm、短辺寸法;0.2mm)、0603サイズ(長辺寸法;0.6mm、短辺寸法;0.3mm)などが出現しつつある。このような極微細な電子部品の収納および取り出しをトラブルなく行うには、前記のようなキャリアテープでも不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4093436号公報
【特許文献2】特開2002−347710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、微小部品収納用ポケットとテープ送りのための係合部との位置関係が厳密に規制され、前記のような極微細な電子部品の収納および取り出しにおいても、部品の落下等のトラブルを大幅に抑制することのできるキャリアテープの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のようにして成形したキャリアテープを用いることによって、電子部品の収納および取り出しでのトラブル発生が著しく抑制されることを見出し、本発明に至った。
即ち本発明は、帯状樹脂テープに、部品収納用ポケットと位置決め用ポストを形成する成形工程
に次いで、該位置決め用ポスト
と密着して嵌合する2以上の凹部を有するポスト用搬送子を用いて位置決めをした状態で
部品収納用ポケットと位置決め用ポストが形成された帯状
樹脂テープを搬送し、次工程において位置決め用ポストの位置にスプロケットホールを穿設することを特徴とするキャリアテープの製造方法である。前記成形工程において、部品収納用ポケットがキャリアテープの上面に対して凹状に形成されるのに対して、位置決め用ポストが凸状に形成されていることが好ましい。
一方で、部品収納用ポケット底面の中央部にセンターホールを有するキャリアテープの場合には、次工程のスプロケットホールを穿設する工程にて同時にセンターホールの穿設を行うことが好ましい。
また本発明の製造方法は、真空ロータリー成形法において極めて有効であり、更に部品収納用ポケットが雄型成形により形成され、位置決め用ポストが雌型成形により形成される成形方法が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によって、微小部品収納用ポケットとテープ送りのための係合部との位置関係が厳密に規制されており、極微細な電子部品の収納および取り出しにおいても、部品の落下等のトラブルを大幅に抑制することのできるキャリアテープを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のキャリアテープの成形過程の一例を示す斜視図である。
【
図2】ロータリー式雄型真空成形機の構成を示す概念図である。
【
図4】従来のキャリアテープの構成を示す斜視図、側面図、断面図である。
【
図5】係合部を用いた従来技術のキャリアテープの構成を示す斜視図、側面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のキャリアテープの製造方法について説明する。
本発明の成形方法は、少なくとも成形工程と穿設工程を有する成形方法であって、成形工程において、
帯状樹脂テープに部品収納用ポケットと位置決め用ポストを同時に成形し、
該位置決め用ポストと密着して嵌合する2以上の凹部を有するポスト用搬送子を用いて位置決めをした状態で部品収納用ポケットと位置決め用ポストが形成された帯状樹脂テープを搬送した後、次の穿設工程において、位置決め用ポストの位置にスプロケットホールを形成することを特徴とするものである。用いる成形機としては、ロータリー真空成形機、プレス成形機、圧空成形機などが挙げられる。微小部品収納用キャリアテープの製造には、間欠式成形方式ではなく、連続式成形方式であり、テープ基材上での成形工程間のピッチズレが発生し難い点からロータリー真空成形が好ましく、更にその中でも部品収納用ポケットの精密な内部形状を形成することが可能であることから、雄型金型を用いた雄型ロータリー真空成形が好ましい。
【0013】
本発明の成形工程を、本発明の成形方式の一例である雄型ロータリー真空成形について示した
図2および
図1を例にとって説明する。
スリットした
帯状樹脂テープ1(
図2)を、予備加熱用装置23によって予熱し、その後加熱装置24にて成形温度に加熱し、成形金型装置26によって部品収納用ポケット部2(
図1)と位置決め用ポスト5を形成し、冷却器27によって冷却し、位置決め用ポスト5
と密着して嵌合する2以上の凹部を有するポスト用搬送子221を用いて位置決めをした状態で部品収納用ポケット2と位置決め用ポスト5が形成された帯状樹脂テープ1を搬送した後、位置決め用ポスト5
と部品収納用ポケット2との相対位置を厳密に規制した状態で穿設し、巻取機28で巻き取ることでキャリアテープが成形される。具体的には、まず、
帯状樹脂テープ
1を予備加熱する。予備加熱における加熱手段としては、マスキングプレートを使用したインフラヒータ(赤外線ヒータ)、熱風ブロー等の間接加熱方式、ヒートバーを
帯状樹脂テープ
1に接触させる直接加熱方式などが挙げられる。このような加熱手段によれば、所定とする場所のみを加熱することができる。
次いで、
帯状樹脂テープ
1を成形金型に一定量移送する。
帯状樹脂テープ
1の移送方法としては、例えば、エアフィーダ、グリッパーフィーダ、ロールフィーダなどを用いる方法が挙げられるが、テープが巻き取られているリールを金型の回転速度に同期させるように繰り出す機構があれば、上記方法を用いなくても良い。
次いで、
帯状樹脂テープ
1における金型の雄型部に接する部分(以下、金型接触部という。)を、加熱装置を用いて、成形金型の反対側から再度、成形直前まで加熱する。その加熱装置としては、上記予備加熱と同じ加熱手段を用いることができる。
【0014】
次いで、
帯状樹脂テープ1を成形金型装置26に移動させる。
図3に示した成形金型で、真空孔263を介して真空引きして、
帯状樹脂テープ1の一部を型入れ子(雄型)262および位置決め用ポスト成形孔261に密着させ、それぞれ部品収納用ポケット2と位置決め用ポスト5
が形成された帯状樹脂テープ1が成形される。即ち本発明の
図3に示した一例においては、成形用金型装置26は、部品収納用ポケット2を賦形するための雄型形状の型入れ子262と、位置決め用ポスト5を賦形するための位置決め用ポスト成形孔261を有している。加熱された
帯状樹脂テープ
1は金型上で、同時に凹状の部品収納用ポケット2と、凸状の位置決め用ポスト5
が賦形
されることにより、金型精度に即した部品収納用ポケット2と位置決め用ポスト5の相対的位置精度の高い
、部品収納用ポケット2と位置決め用ポスト5が形成された帯状樹脂テープ1が得られる。部品収納用ポケット2は、部品が収納されるポケット内側が金型寸法精度で規制される雄型成形を用いる方が好ましく、これにより、精密な内部形状を形成することが可能となる。位置決め用ポスト5は、ポスト用搬送子221にはめ込む外側寸法精度が要求されるため、ポスト外側が金型寸法精度で規制される雌型成形を用いることが好ましい。
このようにして成形した
部品収納用ポケット2と位置決め用ポスト5が形成された帯状樹脂テープ1を、
位置決め用ポスト5と密着して嵌合する2以上の凹部を有するポスト用搬送子221を用いて位置決めをした状態で搬送し、次の穿設工程で
位置決め用ポスト5の位置にスプロケットホール3を形成し冷却することを連続して繰り返すことにより、部品収納用ポケット2と
スプロケットホール3が、長さ方向に沿って多数形成されたエンボスキャリアテープを得ることができる。
【0015】
前記の方法で成形したキャリアテープは、成形工程の途中で、従来型キャリアテープのスプロケットホール位置に、凸状の位置決め用ポスト5が形成されているのが特徴の一つである。この位置決め用ポスト5は、直径が0.50〜1.55mmの円柱状もしくは側面が底面に対して垂直方向に対して10度未満の円錐台形状であることが好ましく、このロータリー真空成形では、長手方向に一列に、高精度の一定間隔で複数形成することができる。
また同時に成形される部品収納用ポケットのサイズは、特に限定されるものではないが、通常キャリアテープ長手方向の長さが0.1〜3.5mm、キャリアテープ短手方向の長さが0.1〜4.0mmで、深さが0.1〜2.0mmのキャリアテープに適応する。このキャリアテープは、位置決め用ポスト5を基準とし、
図1に示したような、位置決め用ポスト5と密着して嵌合する2以上の凹部を有するポスト用搬送子221を用いて穿設工程に搬送し、その後ポスト用搬送子221を取り除き、穿設位置と部品収納用ポケット2の位置を厳密に規制された状態でポスト用搬送子221の位置で穿設が行われる。
このようにして、
図4に示した従来型のキャリアテープと比較して、スプロケットホール3と部品収納用ポケット2との相対的位置精度が極めて高いキャリアテープを得ることができる。また、部品収納用ポケット2の底部センターにセンターホール4を設ける場合は、前記の穿設工程において、スプロケットホール3と同時に穿設することによって、同様に高い位置精度を有するセンターホール4を形成することができる。
【実施例】
【0016】
本発明を、実施例を用いてより具体的に例示するが、本発明はこの実施例に記載された内容によって限定されるものではない。
(実施例1)
0603サイズのセラミックコンデンサ用のエンボスキャリアテープを以下のようにして製造した。
まず、プラスチック基材であるカーボン練り込みタイプの導電性PC系シート(厚み;0.15mm)を、予備加熱装置で100℃に予備加熱した。次いで、予備加熱したPC系シートを、
図3に示した構造の位置決め用ポスト成形孔を有した成形金型に移送し、PC系シートの金型接触部を、該金型の反対側から加熱装置(熱風ブロー)により再度加熱した(熱風温度;600℃)。その後、金型の真空孔を介して真空引きしながら、金型の雄型部とPC型シートとを密着させ、5m/minで部品収納用ポケットと位置決め用ポストを形成した。その後、
図1に示した形状のポスト用搬送子で位置精度良くポストを固定した状態で穿設工程を行うことで、部品収納用ポケットと、スプロケットホールと、センターホールの位置精度に優れたキャリアテープを得た。得られたエンボスキャリアテープは、各部品収納用ポケット間の間隔は4mmで、部品収納用ポケットの大きさが、長辺寸法;0.76mm、短辺寸法;0.38mm、深さ0.40mmで、スプロケットホールの直径は1.55mmである。
(比較例1)
位置決め用ポスト成形孔の無い成形金型を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリアテープを得た。
【0017】
(実装不良率の評価方法)
実施例および比較例で得られたエンボスキャリアテープを以下のようにして評価した。
実装機(高速モジュラータイプ、装着精度±0.05mm/チップ)を用い、装着タクト0.10秒/チップで、エンボスキャリアテープの部品収納用ポケットに収納したセラミックコンデンサ0603を1万個実装した。その際の実装エラー率を下記の式によって求めた。実装されなかったセラミックコンデンサは、部品収納部に所定の配置で収納されていなかったものである。したがって、実装不良率は、エンボスキャリアテープの部品収納部に、所定の配置で収納されていなかったセラミックコンデンサ数と対応している。評価結果を表1に示す。
実装不良率=[(実装されなかったセラミックコンデンサ数)/(全セラミックコンデンサ数)]×1000000(ppm)
【0018】
【表1】
【符号の説明】
【0019】
1.
帯状樹脂テープ
2. 部品収納用ポケット
3. スプロケットホール
4. センターホール
5. 位置決め用ポスト
6. 係合部
21. スプロケット
22. 送りピン
221.ポスト用搬送子
23. 予備加熱用装置
24. 加熱装置
25. ドラム
26. 成形金型装置(雄型)
261.位置決め用ポスト成形孔
262.型入れ子(雄型)
263.真空孔
27. 冷却器
28. 巻取機