(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667763
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】金属被覆鉄ストリップ
(51)【国際特許分類】
C23C 2/12 20060101AFI20150122BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20150122BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20150122BHJP
C22C 21/10 20060101ALI20150122BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
C23C2/12
C23C2/06
C23C2/40
C22C21/10
C22C18/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-525859(P2009-525859)
(86)(22)【出願日】2007年8月30日
(65)【公表番号】特表2010-501732(P2010-501732A)
(43)【公表日】2010年1月21日
(86)【国際出願番号】AU2007001265
(87)【国際公開番号】WO2008025086
(87)【国際公開日】20080306
【審査請求日】2010年8月5日
(31)【優先権主張番号】2006904727
(32)【優先日】2006年8月30日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】505132312
【氏名又は名称】ブルースコープ・スティール・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLUESCOPE STEEL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】チーヤン・リュー
(72)【発明者】
【氏名】ジョー・ウィリアムス
(72)【発明者】
【氏名】ロス・マクドウォール・スミス
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−328214(JP,A)
【文献】
特開2002−129300(JP,A)
【文献】
特開2003−013192(JP,A)
【文献】
特開2005−133151(JP,A)
【文献】
特開2001−089838(JP,A)
【文献】
特開2003−268519(JP,A)
【文献】
特開2002−180225(JP,A)
【文献】
特開2007−002288(JP,A)
【文献】
特開2003−183796(JP,A)
【文献】
特開2006−193791(JP,A)
【文献】
特開2006−022409(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/083480(WO,A1)
【文献】
特許第5020228(JP,B2)
【文献】
特開平11−092903(JP,A)
【文献】
特開平10−226863(JP,A)
【文献】
特開2004−197120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップの少なくとも片面上にアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の被覆を有する鉄ストリップであって、該アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金が45〜60重量%のアルミニウム、37〜46重量%の亜鉛、0.2〜0.5重量%のケイ素、及び1重量%を上回り、2.5重量%未満のマグネシウムを含み、
該被覆が、豪州標準AS1733に記載の平均遮断間隔法を用いて測定された0.5mm未満のスパングルを有する鉄ストリップ。
【請求項2】
前記マグネシウムの濃度が1.5及び2.5重量%の間である請求項1に記載の鉄ストリップ。
【請求項3】
前記ケイ素の濃度が0.28〜0.5重量%であり、前記マグネシウムの濃度が2.0重量%である請求項1又は2に記載の鉄ストリップ。
【請求項4】
前記アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金が、溶融浴中における汚染による不可避的な不純物のような痕跡量にて存在するものとは異なる、意図的な合金の要素としてバナジウム及び/又はクロムを含有しない請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄ストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストリップを被覆金属の溶融浴中で被覆することによりストリップの上に形成される耐腐食性金属被覆を有する鉄ストリップに関する。
【0002】
本発明は、排他的ではなく具体的に、冷間形成により(例えば、ロール形成(roll forming)により)屋根葺き材のような末端使用製品に形成可能な金属被覆鉄ストリップに関する。
【0003】
本発明は、排他的ではなくより具体的に、小さいスパングル(spangles)を有する耐腐食性金属被覆、すなわち0.5mm未満のオーダーの平均スパングル寸法を有する被覆を有する上記段落に記載したタイプの金属被覆鉄ストリップに関する。
【0004】
本発明は、排他的ではなくより具体的に、小さいスパングルを有し、そして比較的低い濃度のケイ素を有し及びマグネシウムも含有するアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金を含む、耐腐食性金属被覆を有する上述したタイプの金属被覆鉄ストリップに関する。
【背景技術】
【0005】
鉄ストリップを被覆するのに用いられる従来のアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は、一般に、重量%における以下の範囲のアルミニウム、亜鉛及びケイ素の元素を含有する:
【0006】
アルミニウム: 45.0〜60.0;
亜鉛: 37.0〜46.0;及び
ケイ素: 1.2〜2.3。
【0007】
従来のアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は、例示的に、しばしば不純物として鉄、バナジウム及びクロムのような他の元素を含有しうる。
【0008】
従来は、鉄ストリップ上のアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の被覆は熱浸漬金属被覆法を用いて形成されている。
【0009】
従来の熱浸漬金属被覆法では、鉄ストリップは一つ以上の熱処理炉を通過し、その後被覆ポットに含まれる溶融アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の浴に入り通過する。ストリップが浴を通過するにつれて、鉄ストリップの上にアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の被覆が形成される。
【0010】
広く用いられる従来の方法では、ストリップは下を向いて浴に入り、浴中で一つ以上の沈みロールをめぐって後、浴から上を向いて取り出される。
【0011】
被覆ポットの底壁に開口を提供し、開口を通してストリップを垂直上方に動かして浴の内部へ導入し、その後浴から取り出すことも提案されている。この方法は開口を通してポットから溶融アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金が下方向に流れるのを防止する電磁的な密栓手段を使用することに依存している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、ある種の最終用途への適用のために、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金及び鉄ストリップ上のこれら合金から形成された被覆の組成及び微細構造を最適化し、鉄ストリップ上に係る被覆を形成するための被覆実施方法を最適化するために研究開発を行ってきた。
【0013】
本発明は、金属被覆における低レベルのケイ素を達成するという具体的な目的、及び小さいスパングルを有する被覆を形成するという第二の目的と共に、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金におけるケイ素の影響、及び鉄ストリップの上に係る金属被覆を形成するための被覆実施方法に照準をあてた研究開発業務の過程でなされた。
【0014】
ここでいう「小さいスパングル」という用語は、豪州標準AS1733に記載のような平均遮断間隔(average intercept distance)を用いて測定された、0.5mm未満、好ましくは0.2mm未満のスパングルを有する平均的な(mean)金属被覆ストリップを意味することが理解される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
出願人は、業務の過程において、ケイ素の濃度を上述した従来の1.2重量%を下回って低減することで、耐腐食性及び小さいスパングルを形成することが改良される観点から利点を有し、鉄ストリップとアルミニウム−亜鉛−シリコン合金被覆との間にアルミニウム、亜鉛及び鉄の金属間合金層が成長する観点から欠点を有することを見出した。
【0016】
比較的高いアルミニウム含有量を有するアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金被覆(GALVALUME
(登録商標)被覆鉄の製造におけるような)は、シリコンの添加量に依存して、被覆全体がアルミニウム、亜鉛及び鉄の合金になる金属被覆過程における強い発熱反応が防止されることが知られている。
【0017】
また、ケイ素を添加しない場合、発熱反応は熱鉄基材に関して、それが明るい赤色になるほど非常に甚だしくなり、被覆が実際に燃焼を示す場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例で製造した各試料の鉄基材、その基材上の金属間合金層、及びその金属間合金層上の被覆が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の基本は、発明者が、
(a)アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金組成物にマグネシウムを添加すること;及び/又は
(b)鉄ストリップが被覆浴に接触する滞留時間を最低限にすること;
によって望ましくない金属間合金層の成長を抑制しうると、見出したことにある。
【0020】
ポイント(a)に関して、本発明による被覆鉄ストリップはストリップの少なくとも一つの表面の上にアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の被覆を有し、該アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は1.2重量%未満のケイ素を含有し、そしてマグネシウムも含有することにより特徴付けられる。
【0021】
好ましくは、シリコンの濃度は0.2〜0.5重量%であり、マグネシウムの濃度は0.5〜8重量%である。
【0022】
好ましくは、シリコンの濃度は少なくとも0.2重量%及び1.2重量%未満であり、マグネシウムの濃度は0.5〜1重量%である。
【0023】
好ましくは、シリコンの濃度は少なくとも0.2重量%である。
【0024】
金属間合金層の成長を抑制することに加えて、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金にマグネシウムを追加することで、被覆の耐腐食性が改良される。
【0025】
好ましくは、被覆は、ここで説明されるような小さいスパングルを有する。すなわち、豪州標準AS1733に記載されているような平均遮断間隔を用いて測定された、0.5mm未満、好ましくは0.2mm未満のスパングルである。
【0026】
スパングルの寸法が小さいことによって被覆の延性が改良され、マグネシウムのために被覆の延性が被る悪影響が補償される。
【0027】
好ましくは、マグネシウムの濃度は8重量%未満である。
【0028】
好ましくは、マグネシウムの濃度は3重量%未満である。
【0029】
好ましくは、マグネシウムの濃度は少なくとも0.5重量%である。
【0030】
好ましくは、マグネシウムの濃度は1重量%及び3重量%の間である。
【0031】
より好ましくは、マグネシウムの濃度は1.5重量%及び2.5重量%の間である。
【0032】
好ましくは、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は、ベツレヘム・スチール・コーポレーション名義の国際出願PCT/US00/23164(WO01/27343)に記載されており、二ホウ化チタンとしてホウ素を0.5重量%まで含有するような二ホウ化チタン変性合金である。この国際出願には、二ホウ化チタンがアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金のスパングル寸法を最少にすることが開示されている。この国際出願の明細書の開示はここに参照として組み込まれる。
【0033】
アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は他の元素を含有してよい。
【0034】
好ましくは、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金はストロンチウム及び/又はカルシウムを含有する。
【0035】
アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金にストロンチウム及び/又はカルシウムを添加することで、出願人が「粗被覆」及び「ピンホール−無被覆」欠陥と記載するような多くの表面欠陥が実質的に減少し、マグネシウムが引き起こすであろうこのような多くの表面欠陥が補償される。
【0036】
ストロンチウム及びカルシウムは別々に又は組み合わせて添加されうる。
【0037】
好ましくは、(i)ストロンチウム又は(ii)カルシウム又は(iii)ストロンチウム及びカルシウムを併せた濃度は少なくとも2ppmである。
【0038】
好ましくは、(i)ストロンチウム又は(ii)カルシウム又は(iii)ストロンチウム及びカルシウムを併せた濃度は0.2重量%未満である。
【0039】
好ましくは、(i)ストロンチウム又は(ii)カルシウム又は(iii)ストロンチウム及びカルシウムを併せた濃度は100ppm未満である。
【0040】
より好ましくは、(i)ストロンチウム又は(ii)カルシウム又は(iii)ストロンチウム及びカルシウムを併せた濃度は50ppm以下である。
【0041】
好ましくは、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は、例えば溶融浴中における汚染による不可避的な不純物のような痕跡量にて存在するものとは異なる、意図的な合金の要素としてバナジウム及び/又はクロムを含有しない。
【0042】
上記ポイント(b)に関して、出願人は、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の浴を含み、その底壁に開口を有する被覆ポットを通過させて鉄ストリップを上方向に動かすことが、該ポット中のアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の浴に対して鉄ストリップが接触する滞留時間を最短にするために効果的なオプションであることを見出した。
【0043】
従って、本発明による鉄ストリップの上にアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の被覆を形成する方法は、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の浴を含み、その底壁に開口を有する被覆ポットを通過させて鉄ストリップを上方向に動かす工程、及び該ストリップの上に合金の被覆を形成する工程を包含し、該ポット中のアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金に対して鉄ストリップが接触する滞留時間を最短にすることにより特徴付けられる。
【0044】
好ましくは、滞留時間は0.75秒未満である。
【0045】
より好ましくは、滞留時間は0.5秒未満である。
【0046】
好ましくは、滞留時間は少なくとも0.2秒である。
【0047】
好ましくは、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金は上述の低ケイ素含有合金であり、要すればマグネシウム含有合金である。
【0048】
本発明による鉄ストリップ上にアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金被覆を形成する方法は、引き続いて鉄ストリップを熱処理炉及び溶融アルミニウム−亜鉛−シリコン合金の浴に通過させ、そして:
(a)熱処理炉中で鉄ストリップを熱処理する工程;及び
(b)溶融浴中でそのストリップを熱浸漬被覆し、鉄ストリップの上に小さいスパングルを有する合金の被覆を形成する工程;
をも包含しうる。
【0049】
好ましくは、熱処理炉は浴の内部に延びる伸長した排炉シュート又はノーズを有する。
【0050】
本発明によれば、上述の金属被覆鉄ストリップから形成される冷間形成製品も提供される。
【0051】
上述のように、本発明は出願人によって遂行された研究開発業務に基づいている。
【0052】
その業務には、鉄ストリップ試料上の合金の被覆についての、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金の微細構造、より詳しくはスパングルの寸法及び金属間合金層の成長、に対するケイ素及びマグネシウムの影響を評価するために設計された一連の実験が含まれる。
【実施例】
【0053】
重量%において、
(a) Si0.5、Mg0.0;
(b) Si0.5、Mg2.0;
(c) Si0.28、Mg0.0;及び
(d) Si0.28、Mg2.0;
を含有するアルミニウム−亜鉛−ケイ素合金を用いて実験を行った。
【0054】
上述の合金を鉄の試料上に被覆し、その試料を評価した。
【0055】
実験の結果を表1に総括し、顕微鏡写真を
図1に示した。
【0056】
試料は、アルミニウム−亜鉛−ケイ素合金被覆及びその被覆と鉄基材との間の金属間合金層を有することが確認された。
【0057】
[表1]
【0058】
顕微鏡写真には、各試料の鉄基材、その基材上の金属間合金層、及びその金属間合金層上の被覆(顕微鏡では「Al/Zn層」と表示)が示されている。
【0059】
表1及び顕微鏡写真から次のことが立証される。
(a)Siの濃度が減少するにつれて金属間合金層の厚さが増大する−0.0重量%のMgを含有する2種類の異なるSi濃度の試料を比較のこと;
(b)2.0重量%のMgを含有する試料は0.0重量%のMgを含有する試料よりも金属間合金層の成長が実質的に少ない;
(c)2.0重量%のMgを含有する試料における金属間合金層の厚さについてSi濃度が与える相違は非常に小さい;
(d)0.28重量%の低いSi濃度を有する試料ではより小さいスパングルが形成された。
【0060】
本発明の思想及び範囲から逸脱することなく上述の好ましい実施形態に対し多くの変形をすることが許容される。