(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人および/または物の搬送・輸送・移送・移動などに供する送り装置については、ベルトコンベヤ送り装置・ネジ式送り装置・シリンダ式送り装置・タイミングベルト式送り装置・リフト式送り装置・産業ロボットなど数多くのものがすでに存在する。一方で特許文献1・2には、これまでのものに代わるタイプの送り装置が開示されている。
【0003】
特許文献1・2に開示された送り装置は、移動体に接続された線状体を巻取機により巻き取ったり巻き戻したりすることで移動体を往復動させるものである。この送り装置について特許文献1・2には、位置決め精度・長距離搬送・遠隔搬送・制御性・高精度送り・高速送り・低価格・簡潔構成・省スペース・軽量化・発塵対策・事故発生に対する安全対策などを満足させると記載されている。この送り装置は、また、運転状態の静穏安定化に基づく高精度化と耐久性の向上と構成のコンパクト化や、線状体の適正な巻き取り巻き戻しに基づく高精度化、耐久性の向上などについても望ましいといわれる。このような技術については、産業用ロボットやその他の技術分野で貢献度を高めることが期待される。
【0004】
上述した送り装置について、位置決め精度・制御性・高精度送りなどをより確実にするというときは、線状体の伸びに厳密に対処しなければならない。線状体の伸びには周知の「初期伸び」や「弾性伸び」がある。以下。線状体におけるこの種の伸びに触れてから、これに関連する課題について指摘する。
【0005】
初期伸びは通常、線状体(例:新品のワイヤロープ)を使用するときの初期段階で発生するものである。その原因は、新品線状体における螺旋状の素線やストランドが十分密着した状態にないことといわれている。かかる新品線状体に荷重が作用して素線相互やストランド相互が密着状態(引き締まり状態)になると、その引き締まりに見合うところの初期伸びが発生する。初期伸びは荷重を取り除いても元に戻ることがないため「永久伸び」ともいわれる。初期伸びはこのようなものであるから、線状体としては、素線数の多いワイヤロープや繊維心のワイヤロープほど初期伸びが大きくなる傾向にある。線状体の初期伸びはこのように、線状体の構造により変化するともいえる。よって線状体の初期伸びは「構造上の伸び」ともいわれる。初期伸びは一般に、線状体破断荷重の約10〜15%の低負荷領域で生じる。ただしこれについては、撚り線後の最終工程などで、線状体に引張処理加工を施すことにより数10%程度減じることができる。とはいえ、実用前の新品線状体について初期伸びを事前に100%除去することは、処理技術・処理期間・処理コストなどの点で実施困難なことが多い。
【0006】
初期伸びが除去された後の線状体に引張荷重が作用したとき、その荷重に比例した伸びが線状体に生じる。これは「フックの法則」が成立するところの周知の弾性伸びである。この弾性伸びは、引張荷重がなくなることでほぼ消失する「一過性の伸び」である。
【0007】
上記線状体の初期伸び(永久伸び)や弾性伸びについては、送り装置の使用目的いかんで無視してよいことがある。さらに初期伸びなどは、送り装置の使用条件などで許容範囲が緩和されたりもする。これに対し、移動体を製造ラインや組立ラインの所定位置に正確に停止させることが要求される精密送り装置の場合は、初期伸びや弾性伸びの影響をできるかぎり排除することが重要であり、これが十分でないものは、送り精度がかなり低いものになってしまう。その対策の一つとして、初期伸びが一定値に達するごとに線状体を切り詰めることが行われている。しかしこれは、装置に組み込まれた線状体に対し、測定・切断・再接続など多くの手数を繰り返さなければならないので、実用的にみて得策というレベルにない。このような事情に鑑み、特許文献3〜6などに記載された従来技術の場合は、以下のような手段を講じて線状体の初期伸びに対処している。
【0008】
特許文献3の技術は、モータ駆動されるワイヤで移送機構を吊り下げるというタイプのものである。この文献技術の場合は、ワイヤに伸びが生じたときの補正措置として、そのワイヤ伸び量に対応した分だけ移送機構を上昇させるというものである。より具体的にいうと、モータ回転数検出用エンコーダ(ロータリーエンコーダ)による現実のパルス数から、ワイヤ伸び補正のためのモータ回転数に応じたパルス数を差し引き、この差引き後のパルス値と、目的位置に対応して予設定されているパルス値との差に対応したパルス数だけ、モータを回転させるというものである。
【0009】
特許文献3の技術は上記のとおり、ワイヤの伸び量に応じて移送機構を上昇させるものであるから、ワイヤの伸びによる弊害を除去することができる。これがこの文献技術の望ましい所以である。
【0010】
とはいえ特許文献3の技術は、ワイヤ伸び対策のためにモータ回転数検出用の高価なエンコーダや高価な制御回路が不可欠になる。しかもワイヤに加わる引張荷重・その引張荷重にともなうワイヤの伸び・そのワイヤ伸び量に対応した誤差補正モータ回転数など、これらの相関関係を考慮に入れたプログラムも作成しなければならないから、課題を解決する上での技術難度や開発負担が大きい。もちろんエンコーダにも、精度に影響を与えかねないチャタリングなどの不具合が起こり得る。それに初期伸びが「永久伸び」というもので、弾性伸びが「一過性の伸び」というものであるから、この両方を勘案したところの高精密の制御となると、課題解決手段の難度はさらに高まることとなる。
【0011】
特許文献4の技術は、ロープ両端が昇降路内頂部近傍に固定され、ロープ中間部が乗籠のプーリや釣り合い重錘のプーリに巻き掛けられ、かつ、ロープ巻上げ側が巻上げ機に巻き掛けられるところのエレベータロープについて、そのエレベータロープの伸びを調整する装置に関するものである。このロープ伸び調整装置は、釣り合い重錘やプーリに巻き掛けられた後、昇降路内頂部近傍に固定されるロープ端部の固定位置に転向プーリが設けられること、そのロープ端部が転向プーリに巻き掛けられた後、昇降路下方に向けて垂下させた状態で垂直方向に調整可能に固定するロープ端固定部が設けられること、乗籠の走行を制御する制御盤の垂直方向投影面上に位置するように当該ロープ端固定部が配設されることを特徴とするものである。
【0012】
特許文献4の技術は、ロープ端固定部が昇降路下方に向けて位置調整可能であるため、昇降路頂部までの寸法の限られた機械室レスエレベータにおいてもその調整代を十分に確保することができる。さらにロープ端固定部が、通常配設物のない制御盤垂直方向の投影面上に配設されているから、他の昇降路内機器に干渉することなくその固定エリアを確保することができ、ロープ端固定部の配設が容易になる。ゆえに特許文献4の技術は、この点で望ましいといえる。
【0013】
しかしながら特許文献4の技術は、ロープの端部に連結された調整ロッドがロープ固定部の一部を摺動自在に貫通しているものであるため、ロープに横振れや縦振れなどが生じたときには、それに影響されて調整ロッドが軸方向に動いてしまう。このように調整ロッドが動くタイプのものはロープの振れを十分に抑制することができない。その一方、永久伸びの発生にともなってロープの張力が低減することから、ロープの振れが起こりやすいものになる。
【0014】
特許文献5の技術は、リフトケージ・ケージ吊下用のワイヤロープ・その他で構成されたエレベータパーキングにおいて、車両をリフトケージに載せたことにともなってワイヤロープが伸びたとき、伸び状態のワイヤロープで吊り下げられているリフトケージを目的位置まで昇降させるための距離を計算で求めて減速点を決め、その後、減速点まで昇降させたリフトケージを減速点から減速させて停止位置で停止させるというものである。
【0015】
特許文献5の技術は、リフトケージ停止目標位置の減速点を正確に求めることができ、それによって減速完了点をリフトケージ目標停止位置とすることができる。もちろんこの文献技術の場合、その方法の実施に際してワイヤロープの伸びに影響されることがない。したがって特許文献5の技術は、入出庫時の昇降時間を短縮させることができ、それが利用者の出庫待ち時間の短縮や利便性の向上につながることとなる。
【0016】
しかしながら特許文献5の技術は、問題の原因(ワイヤロープの伸び)を解消しないでこれを受け入れ、そこから生じる結果に対して対処するという方法であるから、誤差原因の一つであるワイヤロープの永久伸びが除去されないまま残存することとなる。これは誤差原因を縮小したり除去したりすることで制御性が高まるにもかかわらず、それを放置して特別な手段を講じているのであるから、合理性を欠くものといわざるをえない。さらに日々の稼働で漸増する永久伸びを放置したままの当該文献技術では、一過性の伸び(弾性伸び)に対処するときにも制御性が低下する。
【0017】
特許文献6の技術は油圧式エレベータ用ロープ伸び補正装置に関する。さらにいうと、当該文献技術のものは、昇降路底部に立設された油圧式ジャッキと、油圧ジャッキのプランジャ上端部に回転可能に取り付けられた滑車と、その滑車に巻き掛けられてプランジャの上下移動に応じて籠を昇降路内で昇降移動させるためのロープと、ロープの一端部を昇降路底部に対して連結されたロープ伸び補正機と、籠や昇降路の壁面に設けられてロープの伸び量を計測するためのロープ伸び量計測器と、ロープ伸び量計測器によって計測されるロープ伸び量に応じて作動させるためのロープ伸び補正機と、ロープ伸び補正機に対するロープ端部連結位置を補正するためのエレベータ制御盤とを備えたものである。
【0018】
特許文献6の技術はつぎような効果が得られるという。すなわちそれは、ロープ伸び量計測器によりロープ伸び量を計測すること、そのロープ伸び量に応じてロープ伸び補正機を作動させること、ロープ伸び補正機に対するロープ端部連結位置を補正することなど、これらに基づいて油圧ジャッキの突き上げ余裕代を許容範囲となるように自動調整することができるから、エレベータ管理会社の保守員の手作業による調整が不要となり、メンテナンス性が向上するというものである。
【0019】
しかしながら特許文献6の技術は、ロープ伸び量を計測するための計測器が不可欠であり、それを装置の所定箇所に精密に組み込まなければならないから、それが設備上のコストアップ要因になる。これに加え、油圧式エレベータの油圧ジャッキが圧力変動に起因にした不時不測の動きをしたとき、ロープ伸び補正機は、この際のロープ変動がロープ伸びによるものか、または、油圧ジャッキ圧力変動によるものかを認識することができず、ゆえにこれをも想定に入れたロープ伸び量の補正をすることができない。したがって特許文献6の技術では、ロープ伸びのみを的確にとらえてこれに対処するの困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は上述のような技術課題に鑑みなされたものである。すなわち本発明は、線状体を主体にして移動体を走行させる方式の送り方法や送り装置において、誤差修正のための制御性・誤差修正状態の安定性・誤差修正状態の信頼性・システムの安全性・操作易度・随時応答処理性・省スペース・構成の簡潔性・保守点検の簡易性・低価格・低運転費・自動化の確立・送り手段に対する高い送り精度の確保などを満足させることのできる送り誤差修正方法や送り誤差修正装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る「送り装置における送り誤差修正装置」は所期の目的を達成するために下記
<01>〜<04>の課題解決手段を特徴とする。
<01> 走行路体に沿って往復動自在な移動体を備えていること、および、
往動力伝達用の線状体と復動力伝達用の線状体とが移動体に接続されているとともに
、該各線状体がそれぞれの線状体操作機に巻き取り巻き戻し自在に繋がれていること、および、
移動体の往復動方向に線状体を案内するための案内部材が、移動体と一方および/または他方の線状体操作機との間に配置されて線状体の一部がその案内部材により保持されていること、および、
各線状体操作機による移動体往動用の動力と移動体復動用の動力とが往動力伝達用の線状体や復動力伝達用の線状体を通じて移動体に付与されること
を満たす送り装置にあって、
この送り装置の線状体の伸びに起因した移動体の送り誤差を修正するための装置において、
一つ以上の
案内部材が引張対象要素として選択され
ており、その引張対象要素
である案内部材が、フレームとこれに回転自在に取り付けられた回転体とを有するローラ型のものであること、および、
案内部材のフレームが線状体の引張方向に移動自在なるように走行路体に装備されていて、線状体の一部が案内部材の回転体に掛けられて保持されていること、および、
案内部材のフレームを線状体の引張方向に移動させるための引張機械が、その構成要素として、互いにねじ込み自在なボルト型の連結部材とナット型の引取部材、ピストンロッドを有する線状体引張用の圧力機械、外周部に突出した操作レバーを有する回転部材、さらに、一方向伝動型の動力伝達部を備えていること、および、
引張機械の各構成要素について、ボルト型連結部材が線状体の引張方向に沿うように案内部材のフレームに取り付けられ、かつ、ピストンロッドと操作レバーとが軸で折り曲げ回転自在に連結されているとともに、回転部材がナット型引取部材の外周部に回転自在に嵌め込まれて、一方向伝動型の動力伝達部が回転部材とナット型引取部材との内外周面間に介在されていること、および、
引張機械については、回転部材側にあるナット型引取部材と案内部材のフレーム側にあるボルト型連結部材とが相互に対応するように走行路体に装備され、かつ、ナット型引取部材がボルト型連結部材の外周部にねじ込まれて引張機械側と案内部材側とが相互に連結されていること、および、
引張対象要素である案内部材のフレームが引張機械を介して線状体の引張方向へ引っ張り可能なものであること、および、
引張機械において、ねじ込み状態にあるボルト型連結部材とナット型引取部材、ならびに、一方向伝動型の動力伝達部が、案内部材のフレームを線状体引張方向の反対方向には戻らないように保持するための保持手段となっていること
を特徴とする送り装置における送り誤差修正装置。
<02> 走行路体に沿って往復動自在な移動体を備えていること、および、
往動力伝達用の線状体と復動力伝達用の線状体とが移動体に接続されているとともに
、該各線状体がそれぞれの線状体操作機に巻き取り巻き戻し自在に繋がれていること、および、
移動体の往復動方向に線状体を案内するための案内部材が、移動体と一方および/または他方の線状体操作機との間に配置されて線状体の一部がその案内部材により保持されていること、および、
各線状体操作機による移動体往動用の動力と移動体復動用の動力とが往動力伝達用の線状体や復動力伝達用の線状体を通じて移動体に付与されること
を満たす送り装置にあって、
この送り装置の線状体の伸びに起因した移動体の送り誤差を修正するための装置において、
一つ以上の
案内部材が引張対象要素として選択され
ており、その引張対象要素
である案内部材が、フレームとこれに回転自在に取り付けられた回転体とを有するローラ型のものであること、および、
案内部材のフレームが線状体の引張方向に移動自在なるように走行路体に装備されていて、線状体の一部が案内部材の回転体に掛けられて保持されていること、および、
案内部材のフレームを線状体の引張方向に移動させるための引張機械が、その構成要素として、互いにねじ込み自在なボルト型の連結部材とナット型の引取部材、一方向伝動型の動力伝達部、外周部に突出した操作レバーを有する回転部材、スプリングに抗しながら操作レバーを吸引して回転部材を回転させるための電磁ソレノイド、さらに、操作レバーをバネ弾性力により圧して回転部材を復帰回転させるためのスプリングを備えていること、および、
引張機械における一部の構成要素について、ボルト型の連結部材が線状体の引張方向に沿うように案内部材のフレームに取り付けられ、かつ、回転部材がナット型引取部材の外周部に回転自在に嵌め込まれているとともに、一方向伝動型の動力伝達部が回転部材とナット型引取部材との内外周面間に介在されていること、および、
引張機械の回転部材内にあるナット型引取部材が案内部材のフレームにあるボルト型連結部材の外周部にねじ込まれて引張機械側と案内部材側とが相互に連結されており、かつ、回転部材の外周部から突出している操作レバーを吸引することができるように引張機械の電磁ソレノイドが走行路体に装備されているとともに、電磁ソレノイドによる操作レバー吸引で回転した回転部材をその復帰方向へ回転させるためのスプリングが回転部材の操作レバーに装着されており、このスプリングによる復帰回転方向の力が回転部材に付与されていること、および、
引張対象要素である案内部材のフレームが引張機械を介して線状体の引張方向へ引っ張り可能なものであること、および、
引張機械におけるボルト型連結部材とナット型引取部材ならびに一方向伝動型の動力伝達部が、案内部材のフレームを線状体引張方向の反対方向には戻らないように保持するための保持手段となっていること
を特徴とする送り装置における送り誤差修正装置。
<03>
送り装置について、移動体に接続されている往動力伝達用の線状体と復動力伝達用の線状体とが共通の線状体操作機に巻き取り巻き戻し自在に繋がれており、かつ、共通の線状体操作機による移動体往動用の動力と移動体復動用の動力とが往動力伝達用の線状体や復動力伝達用の線状体を通じて移動体に付与されるものである上記<01>または<02>に記載された送り装置における送り誤差修正装置。
<03> 走行路体に沿って往復動自在な移動体を備えていること、および、
往動力伝達用の線状体と復動力伝達用の線状体とが移動体に接続されているとともに
、該各線状体が共通の線状体操作機に巻き取り巻き戻し自在に繋がれていること、および、
移動体の往復動方向に線状体を案内するための案内部材が移動体と線状体操作機との間に配置されて線状体の一部がその案内部材により保持されていること、および、
共通の線状体操作機による移動体往動用の動力と移動体復動用の動力とが往動力伝達用の線状体や復動力伝達用の線状体を通じて移動体に付与されることを満たす送り装置にあって、
この送り装置の線状体の伸びに起因した移動体の送り誤差を修正するための装置において、
一つ以上の
案内部材が引張対象要素として選択され
ており、その引張対象要素
である案内部材が、フレームとこれに回転自在に取り付けられた回転体とを有するローラ型のものであること、および、
案内部材のフレームが線状体の引張方向に移動自在なるように走行路体に装備されていて、線状体の一部が案内部材の回転体に掛けられて保持されていること、および、
案内部材のフレームを線状体の引張方向に移動させるための引張機械が、その構成要素として、互いにねじ込み自在なボルト型の連結部材とナット型の引取部材、ピストンロッドを有する線状体引張用の圧力機械、外周部に突出した操作レバーを有する回転部材、さらに、一方向伝動型の動力伝達部を備えていること、および、
引張機械の各構成要素について、ボルト型連結部材が線状体の引張方向に沿うように案内部材のフレームに取り付けられ、かつ、ピストンロッドと操作レバーとが軸で折り曲げ回転自在に連結されているとともに、回転部材がナット型引取部材の外周部に回転自在に嵌め込まれて、一方向伝動型の動力伝達部が回転部材とナット型引取部材との内外周面間に介在されていること、および、
引張機械については、回転部材側にあるナット型引取部材と案内部材のフレーム側にあるボルト型連結部材とが相互に対応するように走行路体に装備され、かつ、ナット型引取部材がボルト型連結部材の外周部にねじ込まれて引張機械側と案内部材側とが相互に連結されていること、および、
引張対象要素である案内部材のフレームが引張機械を介して線状体の引張方向へ引っ張り可能なものであること、および、
引張機械において、ねじ込み状態にあるボルト型連結部材とナット型引取部材、ならびに、一方向伝動型の動力伝達部が、案内部材のフレームを線状体引張方向の反対方向には戻らないように保持するための保持手段となっていること
を特徴とする送り装置における送り誤差修正装置。
<04> 走行路体に沿って往復動自在な移動体を備えていること、および、
往動力伝達用の線状体と復動力伝達用の線状体とが移動体に接続されているとともに
、該各線状体が共通の線状体操作機に巻き取り巻き戻し自在に繋がれていること、および、
移動体の往復動方向に線状体を案内するための案内部材が移動体と線状体操作機との間に配置されて線状体の一部がその案内部材により保持されていること、および、
共通の線状体操作機による移動体往動用の動力と移動体復動用の動力とが往動力伝達用の線状体や復動力伝達用の線状体を通じて移動体に付与されることを満たす送り装置にあって、
この送り装置の線状体の伸びに起因した移動体の送り誤差を修正するための装置において、
一つ以上の
案内部材が引張対象要素として選択され
ており、その引張対象要素
である案内部材が、フレームとこれに回転自在に取り付けられた回転体とを有するローラ型のものであること、および、
案内部材のフレームが線状体の引張方向に移動自在なるように走行路体に装備されていて、線状体の一部が案内部材の回転体に掛けられて保持されていること、および、
案内部材のフレームを線状体の引張方向に移動させるための引張機械が、その構成要素として、互いにねじ込み自在なボルト型の連結部材とナット型の引取部材、一方向伝動型の動力伝達部、外周部に突出した操作レバーを有する回転部材、スプリングに抗しながら操作レバーを吸引して回転部材を回転させるための電磁ソレノイド、さらに、操作レバーをバネ弾性力により圧して回転部材を復帰回転させるためのスプリングを備えていること、および、
引張機械における一部の構成要素について、ボルト型の連結部材が線状体の引張方向に沿うように案内部材のフレームに取り付けられ、かつ、回転部材がナット型引取部材の外周部に回転自在に嵌め込まれているとともに、一方向伝動型の動力伝達部が回転部材とナット型引取部材との内外周面間に介在されていること、および、
引張機械の回転部材内にあるナット型引取部材が案内部材のフレームにあるボルト型連結部材の外周部にねじ込まれて引張機械側と案内部材側とが相互に連結されており、かつ、回転部材の外周部から突出している操作レバーを吸引することができるように引張機械の電磁ソレノイドが走行路体に装備されているとともに、電磁ソレノイドによる操作レバー吸引で回転した回転部材をその復帰方向へ回転させるためのスプリングが回転部材の操作レバーに装着されており、このスプリングによる復帰回転方向の力が回転部材に付与されていること、および、
引張対象要素である案内部材のフレームが引張機械を介して線状体の引張方向へ引っ張り可能なものであること、および、
引張機械におけるボルト型連結部材とナット型引取部材ならびに一方向伝動型の動力伝達部が、案内部材のフレームを線状体引張方向の反対方向には戻らないように保持するための保持手段となっていること
を特徴とする送り装置における送り誤差修正装置。
<05> 引張機械と保持手段とを有する送り装置が複数組み合わされている上記
<01>〜<04>のいずれかに記載された送り装置における送り誤差修正装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る
「送り装置における送り誤差修正装置」は、
案内部材を引張対象要素とし
て、それを以下のようにする。すなわち、この範囲内で選択される引張対象要素を引張機械で線状体の引張方向に移動させるとともに、当該引張対象要素をその移動後の位置に保持して線状体に引張荷重を加えるようにする。線状体に対しては、送り装置の停止時(停止中)、送り装置の運転時(運転中)、または、その両方などにおいて引張荷重を加えるものである。線状体に加える引張荷重の大きさは、送り装置を介して人および/または物を送るときの送り条件に応じて適宜設定するものである。線状体に引張荷重を加える回数はとくに限定されるものでないが、最少回数はもちろん一回である。さらにいうと、線状体に引張荷重を加える回数は、一回のみのほか、適当な時間差をもたせて二回とか三回以上とかの複数回にするなど、自由に選択することができる。新規に設備された送り装置についていうと、当該新規送り装置の稼働にともない、線状体には初期伸び(永久伸び)や弾性伸びが同時発生する。それゆえ線状体には、[初期伸び量<弾性伸び量]を満足させるような大きさの引張荷重を加わえるようにするのである。この際の線状体の初期伸びや弾性伸びについては、また、静荷重によるものだけでなく、送り装置運転中の動荷重によるものについても考慮に入れたりする。したがって線状体に加わえる引張荷重は、通常、静荷重と動荷重とを考慮に入れたものになる。送り装置の停止時(停止中)や運転時(運転中)にこのような引張荷重を受ける線状体は、その引張応力で緊張状態を呈しながら初期伸び量の分や弾性伸び量の分に応じた伸びを呈することとなる。これは「上記の引張対象要素を元の位置に復帰させない」という条件や、「弾性伸び量が初期伸び量を上回るようにする」という条件で、線状体に引張荷重を加えているのであるから、線状体には初期伸びによる弛みが発生しない。ゆえに初期伸び(永久伸び)による影響がなく、線状体は永久伸びが取り除かれたのと等価なものになる。もちろん線状体は、[弾性伸び量−初期伸び量=弾性伸びの残存量]により定まる高弾性状態によって、適切に緊張保持されるのであるから、送り装置の運転時(運転中)などにおいて、線状体の縦振れや横振れが起こりがたいということである。
【0024】
本発明に係る
「送り装置における送り誤差修正装置」は
、上述したようなものであるから、下記<11>〜<19>のような効果が得られる。
<11> 線状体は送り装置の精度の維持する上で枢要な部品(部材)である。この線状体との関連で送り装置の精度を維持するというとき、線状体に生じる初期伸びや弾性伸びに対処しなければならない。これを達成するための手段として、既述の引張対象要素を引張機械で線状体の引張方向に移動させたり、当該引張対象要素をその移動後の位置に保持したりする。これで線状体には引張荷重が作用し、初期伸びを上回るところの弾性伸びが発生する。このような引張荷重が作用するところの線状体についていうと、初期伸びに起因した弛みが生じないのはもちろんのこと、弾性伸びがすでに発生していて高度の緊張状態にあるから、送り装置運転時の縦振れや横振れも起こりがたいものとなる。ゆえに線状体の初期伸びや弾性伸びに同時対処することができ、それによって送り装置の精度の維持することができる。かかる対策は、また、線状体に引張荷重を加えておきさえすればよいというものであり、それで線状体の各種伸びに起因した送り誤差がほぼ自動的に修正されるのであるから、誤差修正のための制御性がよい。
<12> 線状体に引張荷重を付与するための引張対象要素は、線状体への不可逆的な荷重付与移動後、保持手段によってその移動後の位置に保持される。これは誤差修正のために作動した引張対象要素が元に戻ることなく所定位置に保たれるのであるから、誤差修正状態の安定性が高く、かつ、誤差修正状態の信頼性も高いものになる。
<13> 引張対象要素はこれを引張機械で所定方向へ移動させるだけであり、その移動後の引張対象要素を保持手段がしっかりと確保するから、誤作動やその他危険な事態が起こりがたい。ゆえにシステム上の安全性が高い。
<14> 誤差修正のために線状体の初期伸びや弾性伸びに対処するときの当該対策は、既述のとおり、引張機械を介して引張対象要素を所定方向へ移動させるだけでよいのであり、あとは保持手段が引張対象要素を安全に保持してくれる。これは主たる操作として、引張対象要素を単純移動させるだけでよいのであるから、操作易度が格段に高い。
<15> 線状体の弾性伸びは計算などで予測できるが、送り装置を運転するごとに顕著にあらわれる線状体の初期伸びについては、発生前・発生中・発生後(発生直後)など任意の時点で随時応答処理できることが望ましい。それは応答処理に時期や時限がないことにより、線状体伸びの状況変化などに対しても適時適切に対処できるからである。これを送り装置との関係でいうと、装置運転前(装置停止中)・装置運転中・装置運転後(装置停止中)など、任意の時点で線状体の伸びに適切に対処できるということである。これについて上記のように、引張機械で移動させたり保持手段で保持したりするだけでよい引張対象要素は、装置運転前(装置停止中)・装置運転中・装置運転後(装置停止中)など任意の時点で安全に操作できるから、送り装置の誤差を修正する上で都合のよい随時応答処理性がある。
<16> 送り装置の誤差修正のための主要な構成要素としては、引張機械や保持手段などを新たに追加すれば足りる。また、これらは送り装置の端部などに組み込めばよいだけである。このように主要な構成要素が少なくて装置端部などに簡単に組み込めるものは構造上の嵩張りがない省スペース型で構成も簡潔である。送り装置の誤差を修正する上で、高価な測定手段を要したりはしない。よって誤差修正技術として低価格も満足させることができる。これに加えて保守点検も、引張機械や保持手段を点検したり整備したりするだけでよく、それに引張機械や保持手段は故障しがたいものであるから、保守点検も簡易で安価に実施できる。
<17> 送り装置の誤差修正のために線状体に引張荷重を加えること、すなわち、引張機械を介して引張対象要素を所定方向へ移動させるということは、手動で行ってもよいし動力源を用いて行ってもよいものである。これを手動で行うときは運転費がほとんどゼロである。また、動力源を用いる場合でも、引張対象要素の移動量がmm単位やcm単位なのであるから、多くのエネルギ要しない。それに移動後の引張対象要素を保持手段が保持するので、引張機械を定常的にONの状態にしておくこともない。これは送り装置の誤差修正のために要する運転費がほんの僅かでよいということである。ゆえに低運転費を満足させることができる。
<18> 上述のように引張機械を介して引張対象要素を所定方向へ移動させ、その移動状態を保持手段で保持するというときは、これの自動化が要請されたりする。そのような場合は送り装置の仕事内容に応じて引張機械の操作開始時間や操作回数を適当に設定し、そのプログラムにしたがって引張機械の操作を電気的にコントロールすればよい。ゆえに自動化も簡潔な構成で確立する。
<19> 送り装置の誤差修正のための手段は上述のとおり、線状体に引張荷重を加えるべく引張機械で引張対象要素を所定方向へ移動させるというものである。このような引っ張り系を主体にした誤差修正手段は、送り装置内に介入させることのない送り装置端部などに組み込むことができるものであるから、送り手段に対する送り装置の送り機能を干渉したりすることがない。したがって高精度の送り装置についても、そのまま高精度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明
に係る「送り装置における送り誤差修正装置
」の各実施形態を添付図面に基づき以下説明する。
【0027】
図1・
図2には送り誤差修正手段を具備した送り装置111の一例が示されている。これについては、はじめに送り装置111を説明し、そのあとで送り誤差修正手段の構成を説明する。
図1・
図2においては、説明の便宜上、一部を透視して示した箇所がある。
【0028】
図1・
図2に例示された送り装置111は、走行路体121・線状体操作機131・移動体151のほか、二本の線状体161A・161Bや案内部材171を主たる構成要素として具備するものである。
図1・
図2に例示された送り装置111には、また、送り誤差修正手段として引張機械181と保持手段211とが設けられている。これらの構成要素からなるものを送り機械ユニットとした場合、
図1・
図2に例示された送り装置111は一基のみの送り機械ユニットからなるものということができる。
【0029】
送り装置111において、走行路体121は金属・合成樹脂・複合材など機械的特性の優れた材料からなり、ごく一部の部品がゴム製からなることもある。代表的な一例でいうと、走行路体121の骨格や主要部はそのほとんどが金属製である。
図1・
図2で明らかなように、左右方向に長くい走行路体121は一本または複数本のレール122をその上面両側に有している。周知のとおり、レール122が一本の場合は周知のモノレールとなり、レール122が複数本の場合は平行レールとなる。走行路体121は最下段に位置する支持台ともいうべきものである。このような支持台タイプの走行路体121は周知の例でいうと、枠材・板材・脚材などを組み立てることにより構成される。
【0030】
送り装置111における線状体操作機131は
図2・
図3で明らかなように、走行路体121の一端部においてそこに装備されている。具体的にいうと、線状体操作機131は枠材・脚材・吊材・台材その他周知の据付部材(図示せず)を介して所定位置や所定高さを満足するように固定配置されている。線状体操作機131については、周方向に正逆回転自在かつ軸方向に往復動自在な巻胴(円筒形)を備えた動力式線状体巻取機であれば、種々のタイプのものを採用することができる。一例として
図3の線状体操作機131は、取付用基盤132・正逆回転自在な巻取機134・原動機141・カップリング143などを主要部品にして構成されているものである。このうちで、上記据付部材に取り付けられた取付用基盤132は、所定の間隔をおいてその基盤面から立ち上がる一対の軸受用メンバ133a・133bと取付用メンバ133cとを有していて、取付用メンバ133cが軸受用メンバ133aとの相対間隔を保持しているものである。正逆回転自在な巻取機134は、同軸状に組み合わされた五部品(スプライン軸135・スプライン筒136・管状ないし円筒状の雄ネジ軸137・同じく管状ないし円筒状の雌ネジ軸138・円筒形の巻胴139)を備えている。この五部品は同軸状で周方向に重なり合った多重構造をしているものである。より詳しくいうと、軸心部にはスプライン軸135があり、中間部には雄ネジ軸137と雌ネジ軸138とがあり、最外周部には巻胴139がある。この五部品については、また、それぞれがつぎのような相対構成になっているものである。その一つは、スプライン軸135の外周面に形成されて軸方向に沿うスプライン凹凸部135aと、スプライン筒136の内周面に設けられて軸方向に沿うスプライン凹凸部136aとが、双方の凹凸部の嵌め合いによりスプライン嵌合されていることである。他の一つは、雄ネジ軸137の外周面に形成された雄ネジ137bと、雌ネジ軸138の内周面に形成された雌ネジ138bとが、その雄ネジ・雌ネジの嵌め合いによりネジ嵌合されていることである。さらに他の一つについていうと、巻胴139と雌ネジ軸138とは互いに干渉することなく内外に嵌り合うものである。このほかについては、スプライン筒136や雄ネジ軸137が上記径方向の位置を保持してビス140で巻胴139に取り付けられている。したがってスプライン筒136・雄ネジ軸137・巻胴139の三部品はこれらが一体となって動くものである。巻取機134における上記五部品はつぎのようにも支持されている。スプライン軸135については、周知の軸受(ベアリング)を有する一対の軸受スタンド(軸受ブラケットとも称する)133a・133bでそのスプライン軸両端部が回転自在に支持されており、かつ、当該スプライン軸135の一端部が一方の軸受用メンバ133aを貫通している。そして、スプライン軸135の外周にある三部品(スプライン筒136・雄ネジ軸137・巻胴139など)が、当該スプライン軸135に依拠して支持されているものである。雌ネジ軸138の場合は、これが回転することのないように軸受用メンバ133bに固定されて巻胴139側に突出している。かかる支持態様において巻胴139と雌ネジ軸138は、これらの内外周面間に雌ネジ軸138を導入導出するようにしながら軸方向に往復動するものである。その際に巻胴139は正逆回転もするのである。一方、モータとも称される原動機141は、公知ないし周知のサーボモータまたはパルスモータからなり、モータ回転子と一体回転する出力軸142を有しているものである。原動機141は取付用メンバ133cの外側面に取り付けられているとともに、その出力軸142が取付用メンバ133cをスプライン軸135側へと貫通している。こうした態様とすることにより、巻取機134と原動機141は、巻取機134のスプライン軸135と原動機141の出力軸142とが同一軸線上で互いに対向かつ近接するのである。カップリング143はこのような関係にあるスプライン軸135と出力軸142とを相互に連結している。上記の軸受用メンバ133a・133bについては軸受ブラケットといわれることがある。
【0031】
図1・
図2に送り装置111においては、線状体操作機131が走行路体121の一端部(左端部)に装備される一方で、案内部材171が走行路体121の他端部(右端部)に装備される。案内部材171は線状体161A・161Bを所定の方向へ円滑に案内走行させるためのもので、ローラ型をしている。かかる案内部材171は一般に、プーリ・ローラ・シーブ・キャプスタンのいずれか、または、これらに類するものである。案内部材171は、回転体172が軸173を介してフレーム174に回転自在に取り付けられたものである。案内部材171は雌雄一対のスライド部材175A・175Bを介して走行路体121の他端部(右端部)に装備されるものである。一例として図示したものは、一方のスライド部材175Aが長いレール型であり、他方のスライド部材175Bはその一方に対応した溝型である。
図1・
図2を参照して明らかなように、送り装置111の走行路体121上には、その一端部に線状体操作機131が既述のようにして装備されるほか、その他端部に当該案内部材171が装備されるものである。そのため走行路体121の他端部には、案内部材171用の支持台部121Xが設けられているのである。さらにいうと、支持台部121Xはその外側端部から立ち上がる支持壁121Yを有するとともにその下部側にストッパ壁121Zが付設されているものである。この支持台部121Xは、一例として図示のごとく走行路体121と一体に形成され、他の一例として別途作製されたものが走行路体121の他端部に組み付けられるものである。案内部材171を支持台部121X上に装備するための雌雄一対のスライド部材175A・175Bにつき、
図4〜
図6なども参照していうと、一方のスライド部材175Aは支持台部121X上に敷設され、他方のスライド部材175Bは案内部材171のフレーム174の下面に付設される。これによって、両スライド部材175A・175Bが所定部にそれぞれ取り付けられるものである。そして両スライド部材175A・175Bが相対スライド自在に係合されることによって、案内部材171が支持台部121X上に安定装備される。かくて走行路体121の端部に装備された案内部材171は後述するように、線状体操作機131から遠ざかる方向(
図1・
図2の右方向)にスライド移動させられることとなる。
【0032】
移動自在な案内部材171を所定方向に引っ張るための引張機械181も、
図1〜
図6の実施形態において支持台部121Xに組み付けられるものである。とくに
図4〜
図6を参照して明らかなように、引張機械181を構成するための要素は、ボルト型の連結部材182・軸受183・ナット型の引取部材184・一方向伝動型の動力伝達部185・円筒型の回転部材186・スプリングによる動力発生機187・ワイヤ型の操作部材190などである。これらについては強度のある金属・高強度の合成樹脂(FRPを含む)・高強度の複合材など、適当な材料からなるが、とくにいえば、金属製であることが多い。そのうちで外周部に雄ネジを有するボルト型の連結部材182は、フレーム174(案内部材171の一部)の外側面に取り付けられてそこから突出し、かつ、支持台部121Xの支持壁121Yを貫通している。この連結部材182の貫通端部外周には軸受183が嵌め込まれていてそれが支持壁121Yの外面にあてがわれている。ちなみにこの図示例での軸受183は周知のスラスト軸受である。内周部に雌ネジを有するナット型の引取部材184は、ボルト型連結部材182の外周部にねじ込まれてこれに組み付けられており、その内側面がスラスト軸受183に接している。円筒型の回転部材186はナット型引取部材184の外周部に回転自在に嵌め込まれている。さらに、円筒型回転部材186とナット型引取部材184との内外周面間には、一方向伝動型の動力伝達部185が介在されている。一例として一方向伝動型の動力伝達部185は周知のフリーホイール構造からなる。かかる構造の一方向伝動型の動力伝達部185は、ハブに該当するナット型引取部材184とドリブンスプロケットに該当する円筒型回転部材186との間に、ラチェット機構もしくはワンウェイクラッチからなる一方向伝動機構が介在されて構成されたものである。したがって一方向伝動型の動力伝達部185は、引取部材184の外周部や回転部材186の内周部をも利用して構成されているといえる。一方向伝動型動力伝達部185の機能は自明のとおり、円筒型回転部材186の正回転時にはその回転がナット型引取部材184に伝わり、円筒型回転部材186の逆回転時には、当該両部材184・186間に相対的な空転現象が生じて円筒型回転部材186の回転がナット型引取部材184側に伝わらないというものである。図示例の動力発生機187は定荷重型かつ定トルク型の渦巻バネからなる。渦巻バネ型の動力発生機187は一例として帯状の金属製(例:スチール製)である。この場合の渦巻バネ型動力発生機187は二つの渦巻部188A・188Bと両渦巻部188A・188B間の非渦巻部188Cとを有している。渦巻バネ型動力発生機187について、さらにいうと、両渦巻部188A・188Bの渦巻方向が互いに逆であるとともに、一方の渦巻部188Aが表面巻き、かつ、他方の渦巻部188Bが裏面巻き(反転巻き)というものである。このような形状構造の渦巻バネ型動力発生機187については、その外観上の形態的特徴からS型とかN型とかということができる。渦巻バネ型動力発生機187の両渦巻部188A・188Bは、円筒型回転部材186や巻付用心軸189に装着される。このうちの巻付用心軸189については、支持壁121Y外かつ円筒型回転部材186下においてボルト型連結部材182と平行するように配置されているとともに、支持壁121Yに回転自在に取り付けられてそこから突出しているものである。そして渦巻バネ型動力発生機187は、一方の渦巻部188Aがその端部を円筒型回転部材186の外周面に固定されてそこに渦巻保持されており、他方の渦巻部188Bもその端部を巻付用心軸214の外周面に固定されてそこに渦巻保持されている。この場合における両渦巻部188A・188Bは、円筒型回転部材186に対し、これを一方向へ回転させるところの力を付与する。それは正回転した後の円筒型回転部材186が逆回転(復帰回転)する方向の力であり、かつ、円筒型回転部材186の回転がナット型引取部材184側に伝わらないときの前記空転方向の力でもある。ワイヤ型操作部材190については、その巻き付け端部が円筒型回転部材186の外周面に固定され、その中間部が円筒型回転部材186の外周面に巻き戻し可能に巻き付けられ、さらに、膨らんだ抜止部191を有するその巻き戻し端部が支持台部121Xのストッパ壁121Zを貫通してそのストッパ壁121Z下に引き出されている。
【0033】
図1〜
図6の実施形態で保持手段211は、一次から三次までのものが引張機械181に一体に組み込まれていることになる。それは保持手段211と引張機械181とが所要の部品を兼用しているからである。具体的にいうと、一次保持手段211Aはボルト型連結部材182とナット型引取部材184とからなる。この一次保持手段211Aには案内部材171を定位置に保持するというネジ依存の保持機能がある。二次保持手段211Bは一方向伝動型の動力伝達部185からなる。この二次保持手段211Bは、案内部材171の引張移動方向にのみ円筒型回転部材186の回転をナット型引取部材184に伝達するものの、案内部材171を元の位置に戻す方向には回転不伝達であるため、案内部材171を定位置に保持するという機能がある。三次保持手段211Cは動力発生機187からなる。この三次保持手段211Cは円筒型回転部材186の不時の回転をバネの力で抑止しており、それがナット型引取部材184を不本意な回転をも抑制するから、案内部材171の定位置保持に貢献できる。
【0034】
図1〜
図6の実施形態では引張機械181と保持手段211とがこのような不可分の関係にある。これは引張機械181と保持手段211とについて、一部の部品を兼用しながら両者を嵩張りなくコンパクトかつ安価に組み立てたからである。この両者の組み合わせたものについては、保持手段211付きの引張機械181・引張機械181付きの保持手段211・保持手段211兼用の引張機械181・引張機械181兼用の保持手段211などのようにもいうこともできる。
【0035】
図1〜
図6の実施形態で述べた渦巻バネ型動力発生機187について、このような渦巻バネ型動力発生機187としては、二つの渦巻部188A・188Bがいずれも表巻きからなるC型のものも採用することができる。渦巻バネ型動力発生機187は、さらに、一つの渦巻部からなるものを採用することができる。一つの渦巻部からなる渦巻バネ型動力発生機187の場合は、渦巻部の巻き始め端部を円筒型回転部材186の外周部に固定してそこで渦巻部分を保持し、かつ、渦巻部の巻き戻し端部をワイヤ型操作部材190の代用にする。したがって一つの渦巻部からなる渦巻バネ型動力発生機187においては、渦巻部の巻き戻し端部がストッパ壁121Zを貫通することとなり、その貫通端部には、ストッパ壁121Zから抜けないような端末加工が施される(例:ストッパ壁121Zの貫通孔径を上回る貫通抜け止め用の膨らみとか抜け止め用の突片とかが形成される)。
【0036】
図1〜
図6に例示された本発明の実施形態においては、人および/または物を送り装置111で搬送(輸送・移送・移動)するものである。さらにいうと、それはレール122を案内にして走行路体121上を走行自在(往復動自在)な移動体151で人および/または物を搬送するというものであり、その場合に、線状体操作機131を稼働させる。より具体的には、正逆回転自在な巻胴139をもつ巻取機134を原動機141の動力で正回転させたり逆回転させたりすること、その正回転や逆回転によって両線状体161A・161Bのうちの一方を巻胴139に巻き取りながらその他方を巻胴139から巻き戻すこと、この両線状体161A・161Bの同期かつ同調した巻き取り・巻き戻しにより、当該両線状体161A・161Bと牽連関係にある移動体151を所要距離だけ移動させることなど、これらに関する操作・処理・作業を行うものである。また、所要距離を移動した後の移動体151については、原動機141を適時停止させることにより所定位置での停止状態にする。このような送りに関する事項は、特許文献1・2に開示されている内容と実質的に同じといってよいものである。
【0037】
上記のようにして人および/または物を送るというとき、しかも高精度の送りを条件にしてこれを実施するというときには、線状体の伸びに起因した影響をできるだけ排除することが重要ということをすでに述べた。本発明の
図1〜
図6に係る実施形態では、これについて以下のようにする。
【0038】
図1〜
図6の実施形態において両線状体161A・161Bの伸びの影響を排除するときは、送り装置111の停止時(停止中)および/または運転時(運転中)に、引張機械181を必要な回数(一回または複数回)だけ操作する。具体的にいうと、それは支持台部121Xのストッパ壁121Z下にあるワイヤ型操作部材190を下向きに引き込むというものである。こうすることでワイヤ型操作部材190が円筒型回転部材186から巻き戻されるとともにその円筒型回転部材186もワイヤ型操作部材190の引き込み方向へと回転するようになる。さらに、円筒型回転部材186が回転するときの渦巻バネ型動力発生機187については、巻付用心軸189側の渦巻部188Bが巻き戻されながら円筒型回転部材186側の渦巻部188Aに巻き取られていく。このときに渦巻部188Bは、この巻き戻しに対して抗う。しかしながらワイヤ型操作部材190の引き込み力が渦巻部188Bの抵抗力を上回るので、円筒型回転部材186は上記の方向へそのまま回転する。
【0039】
ワイヤ型操作部材190の上記引き込みによって円筒型回転部材186がその引き込み方向に回転するときは、ナット型引取部材184が円筒型回転部材186とともにその回転方向へと一体回転する。その理由は回転がこの方向であるとき、円筒型回転部材186とナット型引取部材184とが一方向伝動型の動力伝達部185を介して互いに噛み合うようになり、この両者184・186間で伝動可能なクラッチ噛み合い状態が成立するからである。このように雌ネジたるナット型引取部材184が定位置で回転すると、雄ネジたるボルト型連結部材182が
図4・
図5の右方向に引っ張られる。これにともなって支持台部121X上では、このボルト型連結部材182に連結された案内部材171が雌雄一対のスライド部材175A・175Bをガイドにしながら同方向へ同時移動する。したがって、かかる案内部材171に巻き掛けられている両線状体161A・161Bには、この案内部材171の移動によって当該引張荷重が作用することとなる。
【0040】
上記において、ワイヤ型操作部材190の引き込み操作で円筒型回転部材186を回転させた後、そのワイヤ型操作部材190の引き込み力を解除すると、渦巻バネ型動力発生機187は、その渦巻バネの復元力に依存してつぎのよになる。すなわち渦巻バネの復元力が作用することにより、円筒型回転部材186側では渦巻部188Aの渦巻量を元の巻量まで減少させるような回転が生じると同時に巻付用心軸189側では渦巻部188Bの渦巻量を元の巻量まで増加させるような回転が生じる。かくて、渦巻バネ型の動力発生機187は元の状態に復帰する。この場合に円筒型回転部材186は自明の逆方向(上記引き込み操作時の反対方向)に回転するが、この円筒型回転部材186の逆回転はナット型引取部材184には伝わらない。その理由は、回転が上記引き込み操作時の反対方向であるとき、円筒型回転部材186とナット型引取部材184との間において一方向伝動型の動力伝達部185による噛み合い状態(伝動可能なクラッチ噛み合い状態)が成立しないからである。円筒型回転部材186とナット型引取部材184との間でこのような空転現象が生じてナット型引取部材184が回転しないときは、当然のことながらボルト型連結部材182が動作せず、案内部材171も支持台部121X上で動いたりはしない。
【0041】
上記の実施形態では案内部材171が引張対象要素である。案内部材171を引張機械181で両線状体161A・161Bの引張方向に移動させるときの操作について、上記実施形態の場合はワイヤ型操作部材190を引き込むだけでよいことが理解できる。もちろん両線状体161A・161Bは、送り装置111の停止時および/または運転時に実施される一回以上の当該操作によって引張荷重を受けることとなる。かかる引張荷重を受けた両線状体161A・161Bには初期伸びや弾性伸びが発生する。ちなみに線状体の初期伸び量をXEとし、線状体の弾性伸び量をZEとした場合、総伸び量TEは次式のとおり[(TE)=(XE)+(ZE)]となる。上記の実施形態ではこの場合に、一例として両線状体161A・161Bには、[(XE)×5=(ZE)×1]を満足させるように引張荷重(静荷重)を加える。これは、弾性伸び量(ZE)が初期伸び量(XE)の約5倍となるように引張荷重(静荷重)を加えるということである。
【0042】
図1〜
図6の実施形態において、送り装置111を用いて既述の送り作業をこのような条件下で実施するとき、初期伸びが発生しても両線状体161A・161B(とくに移動体151を牽引している線状体)に弛みが生じないのはもちろん、所定の緊張状態を維持する。その結果、移動体151の走行中に両線状体161A・161Bに線状体の縦振れや横振れなどの不具合が発生しがたい。さらに、所定距離を走行した移動体151についても、高度の制御性が確保できたことによって、許容誤差の範囲内で目標位置に停止させることができる。
【0043】
図1〜
図6の実施形態においては送り装置111の案内部材171が引張対象要素として選定され、その引張対象要素が保持手段211付き引張機械181を介して所定方向に引っ張られるのである。その引っ張りのために回転する円筒型回転部材186は、
図1〜
図6の実施形態においてワイヤ型操作部材190を介して手動操作されるのである。かかる円筒型回転部材186について、これを動力で回転させるというときは、つぎのような手段が採用される。その一つは、引張機械181の円筒型回転部材186をシリンダとクランク回転系とで回転させるものである。これの場合は周知のように、シリンダにおけるピストンの往復運動がクランクシャフトで回転運動に変換されるものであるから、円筒型回転部材186とピストンとがクランクシャフトで連結されるものである。他の一つは、引張機械181の円筒型回転部材186を原動機とベルト伝導系とで回転させるものである。この場合は、円筒型回転部材186が従動プーリの役割をなすとともに原動機の出力軸には原動プーリが設けられ、これら両プーリにわたってベルトが掛け回されるものである。さらに他の一つは、引張機械181の円筒型回転部材186を原動機と歯車伝導系とで回転させるものである。
図7・
図8を参照してこの具体例を説明する。
【0044】
図7・
図8において、支持台部121Xには棚状の支持部材121X1が増設されている。この支持部材121X1上に据え付けられる原動機193は、その出力194に原動用の歯車195が取り付けられているものである。この場合の原動機193は、一例として、定トルクモータ・パルスモータ・サーボモータなどのうちから適当なものが選択される。一方、円筒型回転部材186の外周部には、リング状の歯車部材を嵌め付け固定するなどして従動用の歯車196が設けられている。原動機193は、原動用の歯車195が従動用の歯車196と互いに噛み合う態様において第2の支持部材121X1上に据え付けられている。
【0045】
図7・
図8のものにおいて原動機193の出力194を必要なだけ通電回転させると、かかる回転が原動用歯車195・従動用歯車196を介して円筒型回転部材186に伝わる。したがってこの場合も前例と同様、円筒型回転部材186の回転にともない保持手段211付きの引張機械181が作動して引張対象要素(案内部材171)が所定方向に引っ張られる。それによって、両線状体161A・161Bは初期伸びや弾性伸びを発生させながら緊張状態になる。
【0046】
図1〜
図6の実施形態では、送り装置111の案内部材171が引張対象要素として選定されているが、これは一例にすぎないものである。この張対象要素については、案内部材171に代えて線状体操作機131が選定されてもよいし、また、案内部材171と線状体操作機131との双方が選定されてもよいものである。線状体操作機131が引張対象要素として選定される実施形態の場合は、たとえば
図1において走行路体121の右端側に支持台部121Xと同様の支持台部(図示せず)が設けられ、
図3〜
図6で述べたと実質的に同様の手段で、線状体操作機131がその支持台部上にスライド移動自在に搭載される。この線状体操作機131には、さらに、前述したものと実質的の同様の保持手段211付き引張機械181が案内部材171への当該設備内容に準じて組み付けられる。このスライド移動自在な線状体操作機131の場合も、前述したように手動操作または電動操作することで、両線状体161A・161Bに引張荷重を加えることができる。
【0047】
上記の内容を参照して明らかなとおり、引張機械181を主体にして引っ張られる引張対象要素は案内部材171および/または線状体操作機131である。さらに、両線状体161A・161Bについては、その一方が移動体151の往動力伝達用となり、その他方が移動体151の復動力伝達用となるものである。具体的一例でいえば、一方の線状体161Aが往動力伝達用、他方の線状体161Bが復動力伝達用というものである。かかる両線状体161A・161Bについて既述の実施形態では、これらを単一(共通)の線状体操作機131で巻き取ったり巻き戻したりするものである。これについて往動力伝達用の線状体161Aと復動力伝達用の線状体161Bとをそれぞれ専用(単独)の線状体操作機で巻き取ったり巻き戻したりするときは、既述の線状体操作機131やこれの関連部品を二組用意し、その一組を線状体161A用としたり、他の一組方を線状体161B用としたりする。もちろんこの場合、往動力伝達用線状体161Aの両端部は一方の線状体操作機131と移動体151とにわたって繋がれ、復動力伝達用の線状体161Bの両端部は他方の線状体操作機131と移動体151とにわたって繋がれるものである。このような実施形態において案内部材171・両線状体操作機131のうちの一つ以上を引張対象要素とする場合、既述の内容に準じてその線状体操作機131が移動自在に設けられるとともにその線状体操作機131にも既述の内容に準じて保持手段211付き引張機械181が連結される。
図9・
図10などはこうした場合の例を略示したものである。以下
図9・
図10の実施形態について簡単に説明する。
【0048】
図9の実施形態では、案内部材171が走行路体121の他端部側に配置されており、かつ、互いに隣接する二つの線状体操作機131が走行路体121の一端部側に配置されている。
図9の実施形態において、案内部材171および/または任意一つの線状体操作機131および/または二つの線状体操作機131が引張対象要素として選定された場合は、前例に準じ、走行路体121の一端部および/または両端部に当該引張対象要素が移動自在に装備されるほか、走行路体121の端部側に設けられた支持台部121X上の保持手段211付き引張機械181が当該引張対象要素に連結される。
図10の実施形態では、二つの線状体操作機131の一方が走行路体121の一端部側に配置されているとともにその他方が走行路体121の他端部側に配置されている。
【0049】
図10の実施形態において、いずれか一方の線状体操作機131および/または二つの線状体操作機131が引張対象要素として選定された場合も、前例に準じ、走行路体121の一端部および/または両端部に当該引張対象要素が移動自在に装備されるほか、走行路体121の端部側に設けられた支持台部121X上の保持手段211付き引張機械181が当該引張対象要素に連結される。これら実施形態の場合も引張機械181による引張対象要素の引張操作で線状体161A・161Bに引張荷重を加え、それによって目的の誤差修正を行う点は、前例の場合と実質的に同じである。
【0050】
上述の送り機械111を送り機械ユニットとみなしたとすると、これまでの実施形態のものは一基の送り機械ユニットからなるものである。これを複数の送り機械ユニットの組み合わせからなるものにするときは、
図11〜
図13のような態様になる。以下
図11〜
図13の実施形態について簡単に説明する。
【0051】
図11に例示されたものの場合、二基の送り機械ユニットTY1・TY2が組み合わされて送り装置が構成されている。すなわちこの例のものは、相対的に下位にある送り機械ユニットTY1(送り機械111)の上に、相対的に上位の送り機械ユニットTY2(送り機械111)が搭載されている。
図11のものについてさらにいうと、上位側送り機械ユニットTY2の走行路体121が下位側送り機械ユニットTY1の移動体151上に搭載されて両送り機械ユニットTY1・TY2が組み合わされている。
図11に例示されたものは、各段の送り機械ユニットTY1・TY2が水平で、かつ、それぞれの送り方向が互いに同じである。したがって
図11に例示されたものは、送り方向同一式水平段積み型ということができる。この種の態様において送り機械ユニットの段積み数を三段以上にするときは、それぞれ下位側にある送り機械ユニットの移動体151上に、各上位側の送り機械ユニットが搭載される。この例での各送り機械ユニットTY1・TY2は、それぞれが前記送り機械111のいずれかからなるので、図示省略された線状体操作機131・引張機械181・保持手段211・その他の不可欠構成要素を具備しているものである。
【0052】
図12に例示されたものも、下位側送り機械ユニットTY1の上に上位側送り機械ユニットTY2が搭載されているものである。ただし、この例では、下位側送り機械ユニットTY1と上位側送り機械ユニットTY2とが直交するなど互いに交差しているから、両機械ユニットTY1・TY2の水平な送り方向が互いに異なる。したがって
図12に例示されたものは、送り方向交差式水平段積み型ということができる。
図12のようなタイプも送り機械ユニットの段積み数を三段以上にすることができる。
図12に例示された実施形態に関するその他の事項は、
図1〜
図11を参照して述べた事項に準ずるか、または、それらと実質的に同じである。
【0053】
図13に例示されたものは、垂直タイプの送り機械ユニットTY1と水平タイプの送り機械ユニットTY2とが互いに組み合わされているものである。すなわち、かかる例の場合は、垂直な送り機械ユニットTY1にあって上下動自在な移動体151の上に、水平な送り機械ユニットTY2が搭載されている。この例のものは、送り機械ユニットTY1の移動体151が垂直方向に移動したり送り機械ユニットTY2の移動体151が水平方向に移動したりするものである。したがって
図13に例示されたものは、垂直送り水平送り混合式段積み型ということができる。
図13に例示された実施形態に関するその他の事項は、
図1〜
図12を参照して述べた事項に準ずるか、または、それらと実質的に同じである。
【0054】
複数の送り機械ユニットを組み合わせて送り装置111を構成するという実施形態の場合、そのうちの少なくとも一つの送り機械ユニットは、送り誤差修正のための引張対象要素があってこれに対応する引張機械181や保持手段211などを具備するものである。しかしながらこの場合の送り機械ユニットの組み合わせで、特段の精度が要求されない送り機械ユニットについては、送り誤差修正のための手段を具備しないものであっても構わない。その送り誤差修正のための手段を具備しない送り機械ユニットは自明のとおり、前記引張対象要素が固定されたものであって引張機械181や保持手段211などを具備しないものである。
【0055】
上述した各実施形態で適用することのできる保持手段211付きの引張機械181について、
図14〜
図30を参照して説明する。これら図示例の場合は既述の案内部材171が引張対象要素として選定されている。しかし線状体操作機131が引張対象要素として選定される場合でも、これら図示例の保持手段211付き引張機械181は適用できるものである。
【0056】
図14〜
図16に例示されたものは、引張機械181の円筒型回転部材186がエアシリンダや油圧シリンダのような油空圧系圧力機械で回転操作されるものである。具体的一例でいうと、引張用の圧力機械301がピストンロッド302を有する周知のエアシリンダからなり、円筒型回転部材186がこれと一体の操作レバー303を有するものからなる。それで、圧力機械301が軸304を介して支持台部121Xの支持部材121X1に回転自在に結合されているとともに、圧力機械301のピストンロッド302と円筒型回転部材186の操作レバー303とが軸304を介して回転自在に連結されている。
【0057】
図14〜
図16に例示された実施形態の場合は圧力機械301のピストンロッド302を往復動させることで引張機械181を作動させるものである。この図示の実施形態において、圧力機械301のピストンロッド302が往動して円筒型回転部材186の操作レバー303を押し上げるときは、円筒型回転部材186がその押し上げ方向に回転するようになる。このときはナット型引取部材184と円筒型回転部材186との間で動力伝達部185のクラッチ噛み合い状態が成立してナット型引取部材184が定位置で回転するから、前例と同様、両線状体161A・161Bには、案内部材171の移動による当該引張荷重が作用することとなる。また、圧力機械301のピストンロッド302が復動して円筒型回転部材186の操作レバー303を引き下げるときは、円筒型回転部材186がその引き下げ方向に復帰するようになる。このときはナット型引取部材184と円筒型回転部材186との間で動力伝達部185のクラッチ噛み合い状態が成立しないため、円筒型回転部材186が復帰するのみである。この説明で明らかなとおり、
図14〜
図16に例示された実施形態の場合は圧力機械301のピストンロッド302を必要な回数だけ往復動させることによって、両線状体161A・161Bを緊張状態にすることができ、かつ、それに基づいて送り誤差の修正ができるのである。
【0058】
図17・
図18に例示された実施形態の場合は、
図14〜
図16に例示されたものと同タイプの引張機械181において、その動力源が前記圧力機械301から電磁ソレノイド311を主体にしたものに変更されている。かかる実施形態では以下のようになる。電磁ソレノイド311は支持台部121Xの支持部材121X1に組み付けられている。操作レバー303の先端部側には磁性を有する吸引部312が設けられている。この場合の電磁ソレノイド311と操作レバー303の吸引部312とは、電磁ソレノイド311によって吸引部312が吸引可能(吸着可能)なように互いに向き合っている。このほか、支持台部121Xには、支持部材121X1にバネ座121X2が設けられており、かつ、操作レバー303の先端部と衝突自在なストッパ部材121X3も設けられている。この場合の操作レバー303について、吸引部312のある面を左側面とし、その反対面を右側面とした場合、バネ座121X2は操作レバー303の左側面先端側と向き合うものであり、ストッパ部材121X3は操作レバー303の右側面先端側と衝突自在に対応するものである。操作レバー303の先端左側面とバネ座121X2との間には、操作レバー303を復帰させるためのスプリング313が装着されている。
【0059】
図17・
図18に例示された実施形態の場合は、電磁ソレノイド311を間欠通電することで操作レバー303の吸引部312を吸引したりその吸引を解除したりするものであり、これによって円筒型回転部材186を回転させるものである。この際の操作レバー吸引はスプリング313に抗して行われ、吸引解除したときには操作レバー303がスプリング313の復元力で旧位に復帰する。さらにいうと、電磁ソレノイド311による操作レバー303の吸引で円筒型回転部材186が回転するときは既述のクラッチ噛み合い状態が成立し、その操作レバー303の吸引解除で円筒型回転部材186が復帰回転するときは既述のクラッチ噛み合い状態が成立しないものである。したがって
図17・
図18にに例示された実施形態の場合も、前例(
図14〜
図16のもの)と実質的に同様の作用効果(結果)が得られることとなる。
【0060】
図19に例示された実施形態の場合は、
図14〜
図16に例示されたものと同タイプの引張機械181において、既述のボルト型連結部材182が金属テープ・金属ワイヤ・合成樹脂(FRP)紐などの可撓性を有する線状型に変更されるものであり、かつ、既述の円筒型回転部材186がプーリ型のものに変更されるものである。なお、この場合の連結部材182については、引取部材184をも兼ねるものであるといえる。かかる実施形態の場合は、また、案内部材171のフレーム174に一端部を連結された線状型引取部材184の他端部が、ビスなどの止具305を介してプーリ型回転部材186の外周部に固定されている。プーリ型回転部材186の軸心部に心軸186Xが設けられる。このプーリ型回転部材186については、支持台部121Xに設けられた二つの軸受部121X4で心軸186Xが支持されることとなり、それによって回転自在になるものである。さらにこの実施形態の場合、操作レバー303がプーリ型回転部材186の心軸186Xに取り付けられるとともに、前記一方向伝動型の動力伝達部185が操作レバー303の軸孔部と心軸186Xとの間に介在される。圧力機械301のピストンロッド302については、前例(
図14〜
図16)と同様に操作レバー303と先端部と連結される。
図19の実施形態におけるその他の事項は、
図14〜
図16の実施形態と実質的に同じかそれに準ずるものである。
【0061】
図19に例示された実施形態の場合も前例(
図14〜
図16)と同様、圧力機械301のピストンロッド302を往復動させることで引張機械181を作動させるものであり、その際の一方向伝動型の動力伝達部185は、ピストンロッド302の往動時に既述のクラッチ噛み合い状態が成立し、ピストンロッド302の復動時には既述のクラッチ噛み合い状態が成立しないものである。
図19に例示された実施形態も、これによって前例と実質的に同様の作用効果(結果)が得られることとなる。
【0062】
図20に例示された実施形態の場合は、
図19に例示されたものと同タイプの引張機械181において、線状型引取部材184が操作レバー303をも兼ねるものである。したがってこの実施形態では、操作レバー303が省略される一方で、線状型引取部材184の他端部が圧力機械301のピストンロッド302に連結されているものである。この実施形態も、連結部材182は引取部材184をも兼ねるものである。
図20の実施形態におけるその他の事項は、
図19の実施形態と実質的に同じかそれに準ずるものである。
【0063】
図20に例示された実施形態の場合も前例(
図19)と同様、圧力機械301のピストンロッド302を往復動させることにより引張機械181を作動させるものである。それによって、
図20に例示された実施形態も前例と実質的に同様の作用効果(結果)が得られることとなる。
【0064】
図21・
図22に例示された実施形態の場合は、
図19に例示されたものと同タイプの引張機械181において、その動力源が前記圧力機械301から電磁ソレノイド311を主体にしたものに変更されているものである。以下、これについて説明する。電磁ソレノイド311は支持台部121Xの支持部材121X1に組み付けられている。操作レバー303の先端部側には磁性を有する吸引部312が設けられている。この場合の電磁ソレノイド311と操作レバー303の吸引部312とは、電磁ソレノイド311によって吸引部312が吸引可能(吸着可能)なように互いに向き合っている。このほか、支持台部121Xには、支持部材121X1にバネ座121X2が設けられており、かつ、操作レバー303の先端部と衝突自在なストッパ部材121X3も設けられている。この場合の操作レバー303について、吸引部312のある面を前面とし、その反対面を後面とした場合、バネ座121X2は操作レバー303の前面先端側と向き合うものであり、ストッパ部材121X3は操作レバー303の後面先端側と衝突自在に対応するものである。操作レバー303の先端前面とバネ座121X2との間には、操作レバー303を復帰させるためのスプリング313が装着されている。
【0065】
図21・
図22に例示された実施形態の場合は、電磁ソレノイド311を間欠通電することで操作レバー303の吸引部312を吸引したりその吸引を解除したりするものであり、これによってプーリ型回転部材186を回転させるものである。この際の操作レバー吸引はスプリング313に抗して行われ、吸引解除したときには操作レバー303がスプリング313の復元力で旧位に復帰する。したがってこの実施形態でも、前例(
図19)と実質的に同様の作用効果(結果)が得られることとなる。
【0066】
図23〜
図25に例示された実施形態は、前例(
図21・
図22)のものにおいて、一方向伝動型の動力伝達部185が前例とは異なる部位に設けられたものである。すなわちこの実施形態では、プーリ型回転部材186がその一側部にボス部186Bを有するものであり、そのボス部186Bの外周に操作レバー303が取り付けられている。そしてそのボス部186Bにおける外周部と操作レバー303における軸孔部との間に一方向伝動型の動力伝達部185が介在されている。
図23〜
図25の実施形態におけるその他の事項は、
図21・
図22の実施形態と実質的に同じかそれに準ずるものである。
【0067】
図23〜
図25に例示された実施形態の場合も前例(
図21・
図22)と同様、電磁ソレノイド311を間欠通電することで操作レバー303の吸引部312を吸引したりその吸引を解除したりするものであり、これによってプーリ型回転部材186を回転させるものである。したがってこの実施形態の場合も、
図21・
図22に例示された実施形態と実質的に同様の作用効果(結果)が得られることとなる。
【0068】
上述した各実施形態のうちで、動力源として圧力機械301や電磁ソレノイド311を採用しているものの場合、その動力源が電磁プランジャに変更されることがある。このような場合は、電磁プランジャの端部が操作レバー303などの部材に連結されることとなる。かかる電磁プランジャを採用したものでは、吸引動作・復帰動作・無電力保持などの三役がこれでまかなえることとなる。また、正方向・逆方向のパルス電圧の印加により、吸引・復帰の動作を行い、各位置で無電力保持することとなる。それに復帰スプリングも不要なため、構成の簡素化がはかれる。
【0069】
図26・
図27に例示された実施形態は、
図20のものにおいて、圧力機械301が金属製のウエイト(重錘)321に変更されたものである。すなわちこの実施形態の場合、金属製のウエイト321が線状型引取部材184の他端部(下端部)に取り付けられたものであり、このウエイト321によって、重力エネルギが線状型引取部材184に作用するというものである。ウエイト321の一部にはガイドリング322が設けられており、これに対応する垂直なガイドロッド323が支持台部121Xの下面に設けられてそこから下向きに突出している。ガイドリング322やガイドロッド323は、ウエイト321を上下方向に案内するためのものであり、これらは互いに嵌まり合って相対摺動自在な関係を保持している。
図26・
図27の実施形態におけるその他の事項は、
図20の実施形態と実質的に同じかそれに準ずるものである。
【0070】
図26・
図27に例示された実施形態の場合は、ウエイト321を介して線状型引取部材184に作用する重力エネルギが引張対象要素(案内部材171)側にまで及ぶ結果、それによって両線状体161A・161Bが引き締められることとなる。それにこの例の場合は、所定の引張系統に対して重力エネルギが常時作用するため、両線状体161A・161Bが定常的に引き締められるようになる。
【0071】
図28・
図29に例示された引張機械181の実施形態も、基本的には
図7・
図8の実施形態と同様のもので、原動機193の動力を利用して引張荷重を引張対象要素(案内部材171)に付与するというタイプのものである。ただしこの実施形態の場合は、連結部材182がナット型で、引取部材184がボルト型というように、この両部材の関係が前例(
図7・
図8)の逆になっている。この実施形態はこのようなものであるから、ナット型連結部材182が案内部材171側に設けられているとともにボルト型引取部材184が原動機193の出力軸194に直結されているのである。より具体的にいうと、原動機193については支持台部121X上に設けられたブラケット型のスタンド121X5を介して所定位置に保持されており、ボルト型引取部材184については支持台部121X上に設けられた板状のスタンド121X6とそこに取る付けられるベアリング121X7とを介して回転自在に支持されている。この場合に原動機193の出力軸194とボルト型引取部材184の一端部とは、一直線状かつ同軸状で隣接対向するものであり、その隣接部間にわたるカップリング121X8を介して当該両者184・194が連結されている。一方、これに対する案内部材171のフレーム174には、ボルト型引取部材184側に向けて突出するアーム状の連結部174Aが設けられており、この連結部174Aの先端側の内部にナット型連結部材182が取り付けられている。そして案内部材171側のナット型連結部材182と原動機193側のボルト型引取部材184とが雌ネジ・雄ネジによる嵌め合いをなしているのである。かかるナット型連結部材182とボルト型引取部材184については、通常のボルト・ナットでも構わないが、とくにいえば、当該両者間にボールリテーナを介してボールが介在するタイプのボールネジが望ましい。もちろんこのようなボールネジは、前述したナット型・ボルト型の各部材184についても適用できるものである。案内部材171についてはさらに、原動機193用のものである物理応動型のセンサスイッチ174Bがその連結部174Aに備え付けられる。これは案内部材171における既述の引張荷重を電気信号に変換してそれを原動機193のオンオフ制御に利用するというものである。この物理応動型のセンサスイッチ174Bは圧力スイッチの範疇に属するもので、これには各圧力スイッチのほかロードセルなども含まれるものである。かかるセンサスイッチ174Bの具体的一例として、引張型または圧縮型のひずみゲージ式ロードセルをあげることができる。これは構造がシンプルで取り付け保守が容易であり、しかも、応答性が高いなどの特徴があって長期にわたり高い性能を維持するものである。
【0072】
図28・
図29に例示された実施形態において、原動機193からの動力伝達を受けてボルト型引取部材184が正回転したときは、これと対をなすナット型連結部材182にネジ送りがかかるので、案内部材171側が所定方向(原動機193側)へ移動することとなり、これにともなって両線状体161A・161Bが緊張状態になる。さらに詳しくいうと、この際の緊張荷重を受ける両線状体161A・161Bは、その引張応力で緊張状態を呈しながら初期伸び量の分や弾性伸び量の分に応じた伸びを呈することとなる。一方において、この際の緊張荷重はセンサスイッチ174Bにも作用するものである。これに基づくセンサスイッチ174Bの機能はつぎのようなものである。すなわち当該センサスイッチ174Bは、この際の緊張荷重が所定値(設定値)以上のときに原動機193をオフ状態にするための電気信号(オフの制御信号)を原動機193側の電気回路に送り、かつ、この際の緊張荷重が所定値を下回るときに原動機193をオン状態にするための電気信号(オンの制御信号)を原動機193側の電気回路に送るものである。したがって両線状体161A・161Bは、ほぼ定常的に所定値以上の緊張荷重を受けて上記のような伸びを呈することとなる。
【0073】
図28・
図29に例示された実施形態での保持手段211は引張機械181に含まれているものである。その保持手段211を構成している主たる部品や部材は、ナット型連結部材182とボルト型引取部材184とによるネジ嵌合構造や、ボルト型引取部材184に連結された原動機193などである。これらが保持手段211として機能する理由の一つは、軸方向の引張荷重が作用するボルト型引取部材184は強制回転させないかぎり回転しないことであり、当該理由の他の一つは、停止時の原動機193がボルト型引取部材184に負荷を与えてこれを回転しがたいものにするからである。
【0074】
図30・
図31に例示された実施形態は、既述のものにおいて、線状体操作機131の原動機141が引張機械181の動力源としても兼用されるという例である。以下これついて説明する。
図30・
図31のものでは、前出の
図3で明かなスプライン軸135の一端部が延長されてそれが前記取付用基盤132の軸受メンバ133bから突出している。この図示例におけるスプライン軸135の一端部(先端部)には、噛み合い型クラッチ・摩擦型クラッチ・電磁クラッチなど周知クラッチのうちから選択された任意のクラッチ、たとえば電磁クラッチ411が装備されている。このようなクラッチが設けられるスプライン軸135の一端部は周知のとおり、クラッチ411の原動側や従動側と対応するものである。そのためにスプライン軸135の一端部は、原動部分とその先端側の従動部分とに分かれており、当該両部間でクラッチ脱着(クラッチの切り離しと結合)がなされるものである。スプライン軸135の一端部においては、前記と同様の一方向伝動型動力伝達部(例:ワンウェイクラッチ)を具備したプーリ412が、その一端部の従動側(最先端部側)に取り付けられている。上記のクラッチ(電磁クラッチ)411についていうと、これはスイッチオフのとき(平時)がクラッチ切り離し状態で、スイッチオンのとき(作動時)がクラッチ結合状態になるという常開型のものである。
図30・
図31の実施形態では、また、軸受部133b1が取付用基盤132の軸受メンバ133bに設けられているものである。かかる軸受部133b1によって回転軸413が回転自在に支持されている。かかる回転軸413はスプライン軸135と平行な関係にある。回転軸413の一端部(上端部)外周にはプーリ414が取り付けられており、回転軸413の他端部(下端部)外周には巻胴415が取り付けられている。プーリ414は周知のものであり、巻胴415は前記巻胴139を小型化したようなものからなる。さらに走行路体121の支持台部121Xには、周知のプーリ416・417を備えた支持部材418が取り付けられている。
【0075】
図30・
図31を参照して説明したスプライン軸135側の上記プーリ412と回転軸413側の上記プーリ414とは伝動手段として互いに対をなすものである。この両プーリ412・414にわたっては、周知のエンドレスベルトからなる伝動ベルト419が掛け回されている。そしてさらに、両線状体161A・161Bと同様のものからなる引張用線状体420が案内部材171と巻胴415とにわたって設けられる。かかる引張用線状体420は、その一端部が案内部材171のフレーム174に接続され、その中間部が各プーリ416・417に掛けられ、かつ、その他端部が巻胴415に接続されているものである。
【0076】
上述した
図30・
図31の実施形態では、引張用線状体420と巻胴415、および、引張用線状体420を巻胴415に巻き取る際に関与する各部品(各部材)などが引張機械181を構成していることになる。
【0077】
図30・
図31の実施形態のものでは、共通の原動機141で線状体操作機131や引張機械181を運転する。これについて引張機械181の場合は、線状体操作機131が実質的な稼働状態にないとき、すなわち、移動体151による「人および/または物」の運搬等を行わないにときに稼働させるのが一般である。もちろん線状体操作機131で移動体151を稼働させているいるときに引張機械181を同時稼働させてもよい。その場合の同時稼働はごく短時間の範囲内で行われた後、引張機械181のみが非稼働状態におかれる。単独稼働であれ、同時稼働であれ、引張機械181を稼働させるときは以下のようになる。すなわち、原動機141を介してスプライン軸135を正回転させ、かつ、クラッチ411を結合状態(噛み合い状態)にしたとき、その回転がプーリ412→プーリ414→伝動ベルト419→回転軸413などの伝動系を経て巻胴415まで伝わる。これで回転する巻胴415は、その外周面で引張用線状体420を巻き取るという巻き取り作業を開始する。引張用線状体420が巻胴415により巻き取られてその巻き取り方向に引っ張っれると、当該引張用線状体420に繋がれた引張対象要素(案内部材171)が所定方向に引っ張られる。それによって、両線状体161A・161Bは初期伸びや弾性伸びを発生させながら緊張状態になる。
【0078】
上記において巻胴415が回転する回数はわずかである。それは巻胴415の外径にもよるが、ほとんどのケースにおいて、引張機械181の運転一回で引張用線状体420を数cm程度巻き取ればよいからである。それゆえ巻胴415の回転量も一回転以内ということが多い。所定量の回転をした巻胴415を停止させるときは、原動機141を停止させてもよいし、クラッチ411を切り離し状態にしてもよい。もちろんこの二つの操作が行われることもある。上記において原動機141が逆回転するというとき、そのような回転は巻胴415には伝わらないものである。それはプーリ412がワンウェイクラッチを具備していて正回転時の一方向のみを伝達するからである。つまり原動機141の逆回転がワンウェイクラッチによって不伝達になる。
【0079】
これまでに述べた各実施形態のうちで、原動機・圧力機械などを用するタイプのもの、すなわち手動以外ものについては、これらを自動的に作動させることができる。そのような場合は、原動機・圧力機械などの手段に組み込まれている電機系統を制御する。それは制御対象となる電気系統をタイマー回路その他を用いてオンオフ制御するというものである。