(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転手段により回転される略水平に軸受した円筒状を有するケーシングの内部に、被処理物を該ケーシングの上流側投入口から投入し、該ケーシングの内部に投入された被処理物を移送方向に移送しながら蒸気供給源から供給される蒸気の熱により加熱して乾燥処理し、該ケーシングの下流側排出口から乾燥処理済みの被処理物を排出する蒸気加熱式ロータリー乾燥機であって、
前記ケーシングの内部において、該ケーシングと同心円で一体的に設けられ、下流側端部が閉塞された中空の加熱パイプと、
前記加熱パイプの上流側端部において、該加熱パイプの内部に向けて前記蒸気を導入する前記蒸気供給源が接続された蒸気路と、
前記ケーシングの外周に配置された前記蒸気を導入するジャケットと、
前記加熱パイプと前記ジャケットとを接続するとともに、該加熱パイプからジャケットに向けて蒸気を供給する供給路と、
前記ジャケットの下流側外周において、前記蒸気が凝縮してなる凝縮水を排出する排水口と、
該排水口から排出される凝縮水を貯溜する貯溜部と、
前記ケーシングの下流側中心に設けられた前記凝縮水を排出するドレン路と、
前記貯溜部と前記ドレン路との間に、該貯溜部からドレン路に向けて凝縮水を排出する排水路とを備えた
蒸気加熱式ロータリー乾燥機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、被処理物の乾燥処理に使用した蒸気が凝縮した凝縮水を効率よく排出するとともに、被処理物を効率よく乾燥処理することができる蒸気加熱式ロータリー乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、回転手段により回転される略水平に軸受した円筒状を有するケーシングの内部に、被処理物を該ケーシングの上流側投入口から投入し、該ケーシングの内部に投入された被処理物を移送方向に移送しながら蒸気供給源から供給される蒸気の熱により加熱して乾燥処理し、該ケーシングの下流側排出口から乾燥処理済みの被処理物を排出する蒸気加熱式ロータリー乾燥機であって、前記ケーシングの内部において、該ケーシングと同心円で一体的に設けられ、下流側端部が閉塞された中空の加熱パイプと、前記加熱パイプの上流側端部において、該加熱パイプの内部に向けて前記蒸気を導入する前記蒸気供給源が接続された蒸気路と、前記ケーシングの外周に配置された前記蒸気を導入するジャケットと、前記加熱パイプと前記ジャケットとを接続するとともに、該加熱パイプからジャケットに向けて蒸気を供給する供給路と、前記ジャケットの下流側外周において、前記蒸気が冷えて凝縮してなる凝縮水を排出する排水口と、該排
水口から排出される凝縮水を貯溜する貯溜部と、前記ケーシングの下流側中心に設けられた前記凝縮水を排出するドレン路と、前記貯溜部と前記ドレン路との間に、該貯溜部からドレン路に向けて凝縮水を排出する排水路とを備えた蒸気加熱式ロータリー乾燥機であることを特徴とする。
【0007】
この発明により、被処理物の乾燥処理に使用した蒸気が凝縮した凝縮水を効率よく排出するとともに、被処理物を効率よく乾燥処理することができる。
詳しくは、蒸気供給源から供給される蒸気を蒸気路から加熱パイプに導入し、その加熱パイプに導入された蒸気を供給路からジャケットに導入することにより、ケーシングの内周と加熱パイプの外周とを高温の蒸気によって加熱することができる。
【0008】
また、被処理物をケーシングの内部に上流側投入口から投入し、そのケーシングに投入された被処理物を移送方向に移送しながらケーシングの内周と加熱パイプの外周とに接触させる。つまり、熱交換により被処理物に含まれる水分を蒸発気化して乾燥処理しながら、その乾燥処理済みの被処理物をケーシングの排出口から外部に排出することができる。
【0009】
また、乾燥処理に使用された蒸気は、ジャケットの内部で冷えて凝縮して凝縮水となり該ジャケットの下部内周に貯溜される。そのジャケットの下部内周に貯溜された凝縮水は、ケーシングの下方に回転移動した貯溜部に貯溜される。さらに、貯溜部に貯溜された凝縮水は、ケーシングの上方に貯溜部が回転移動される途中、排水路を通って、下流側のドレン路から外部へ排出することができる。
【0010】
これにより、被処理物の乾燥処理に使用した蒸気が冷えて凝縮した凝縮水を加熱パイプやジャケットの内部に留まらせることなく効率よく排出することができる。したがって、加熱パイプ及びジャケットの全長を蒸気の熱により均一に加熱して、被処理物を効率よく乾燥処理することができる。
【0011】
被処理物は、例えば珈琲粕、茶粕、無機脱水汚泥等で構成することができる。また、回転手段は、例えば駆動装置等で構成することができる。
さらにまた、貯溜部とドレン路との間とは、例えば貯溜部とドレン路とを直接接続した排水路、あるいは、貯溜部から排出される凝縮水を貯溜する加熱パイプの内部空間を介して、貯溜部とドレン路とを間接的に接続した排水路等で構成することができる。
【0012】
この発明の態様として、前記ジャケットを、前記ケーシングの上流側外周に配置する上流側ジャケットと、下流側外周に配置する下流側ジャケットとで構成し、前記上流側ジャケットと下流側ジャケットとを、該上流側ジャケットから下流側ジャケットに向けて蒸気を供給するバイパス路で接続することができる。
【0013】
上記構成によれば、上流側ジャケットに導入された蒸気は、バイパス路を介して下流側ジャケットに導入することができる。
これにより、上流側ジャケット及び下流側ジャケットに導入された蒸気の熱でケーシングの全体を均一に加熱することができる。したがって、被処理物を移送方向に移送しながら均一に加熱して、効率よく乾燥することができる。
【0014】
また、この発明の態様として、前記ケーシングの上流側内周及び/又は下流側内周に、該ケーシングの上流側から下流側に向けて被処理物を移送方向に向けて移送するリング状のスクリュー羽根を螺旋方向に設けることができる。
【0015】
上記構成によれば、加熱パイプとスクリュー羽根との間に移送空間が形成されるので、ケーシングの回転にともなうスクリュー羽根の回転によって、ケーシングの内部に投入された被処理物を上流側から下流側に向けてスムースに移送することができる。
これにより、被処理物を1箇所に停滞させることなく、移送方向に向けて連続して移送することができる。また、必要以上に乾燥し過ぎることを防止することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記ケーシングの内周に、該ケーシング内の下部に堆積する被処理物を掻揚げる掻揚げ羽根を複数設けることができる。
上記構成によれば、ケーシングの回転にともなう掻揚げ羽根の周方向の移動によって、ケーシングの下部内周に堆積する被処理物を上方へ掻揚げるので、掻揚げ途中において、掻揚げ羽根により掻揚げられた被処理物の山が自然に崩れて、加熱パイプの上部外周やケーシングの下部内周に落下することになる。
【0017】
つまり、掻揚げ羽根により被処理物を何回も掻揚げて均一に撹拌するとともに、ケーシング及び加熱パイプに繰り返し接触させることができる。
これにより、被処理物の乾燥を促進して、より効率的に乾燥処理することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記加熱パイプの外周に、該加熱パイプの外周上に被処理物を保留する保留板を複数設けることができる。
上記構成によれば、加熱パイプの外周上に落下する被処理物を保留板により保留して、該加熱パイプの外周上に被処理物をできるだけ長く留まらせるので、加熱パイプと被処理物との接触時間が長くなる。
【0019】
これにより、加熱パイプに導入された蒸気の熱を有効利用して、被処理物をより積極的に乾燥処理することができる。さらに、ケーシングの外側に配置したジャケットによる熱と、ケーシングの内側に配置した加熱パイプによる熱とによって、径方向の内側と外側とで挟み込んで加熱できる。したがって、乾燥処理に要する処理時間を短くすることができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記ケーシングの内部に、該ケーシングの下部内周に堆積する被処理物を破砕する被処理物破砕手段を設けることができる。
上記構成によれば、被処理物の移送途中において、例えば粒状や塊状になった被処理物を被処理物破砕手段により破砕することができる。
【0021】
これにより、被処理物のサイズを小さくして、表面積を大きくするので、被処理物に含まれる水分が加熱パイプ及びジャケットの熱によって効率よく蒸発気化され、被処理物を確実に乾燥処理することができる。
被処理物破砕手段は、例えばローラ等の円柱体で構成することができる。
【0022】
また、この発明の態様として、前記ケーシングの上流側に、該ケーシングの上流側から下流側に向けて乾燥した熱風を送風する熱風供給手段を設けることができる。
上記構成によれば、加熱パイプ及びジャケットの熱により被処理物に含まれる水分を蒸発気化するとともに、その蒸発気化した水分を、熱風供給手段から送風される乾燥した熱風によって吸収することができる。
【0023】
このように、ケーシングの内部の雰囲気を乾燥状態に保つことができるため、被処理物から水分を効率よく除去でき、乾燥処理に要する処理時間を大幅に短縮することができる。
熱風供給手段は、例えばヒーター、燃焼装置の熱で加熱した熱風を送風するブロワー等の熱風発生装置で構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、被処理物の乾燥処理に使用した蒸気が凝縮した凝縮水を効率よく排出するとともに、被処理物を効率よく乾燥処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1は本実施形態の蒸気加熱式ロータリー乾燥機1の縦断側面図、
図2は被処理物Eの初期乾燥状態を示す
図1のA−A線矢視断面図、
図3はローラ17による破砕状態を示す
図1のB−B線矢視断面図、
図4は被処理物Eの乾燥状態を示す
図1のC−C線矢視断面図、
図5は凝縮水Wの貯溜状態を示す
図1のD−D線矢視断面図、
図6は凝縮水Wの排出状態を示す
図1のD−D線矢視断面図である。
【0027】
本実施形態の蒸気加熱式ロータリー乾燥機1は、被処理物E(スラッジ)が投入される略水平に軸受された円筒状のケーシング2と、該ケーシング2の内部中心に設けられた加熱パイプ3と、ケーシング2の外周に配置されたジャケット4とで構成した横型のロータリー乾燥機である。
また、ケーシング2及び加熱パイプ3は、蒸気Sが冷えて凝縮した凝縮水Wを上流側(
図1中の右側)から下流側(
図1中の左側)に向けて流下する角度に傾斜している。
【0028】
ケーシング2は、上流側開口部から下流側開口部に向けて同一の内径及び外径に形成した円筒状を有している。また、上流側開口部の軸中心よりも上位側には、被処理物供給源E1から供給される被処理物Eをケーシング2の内部に投入するための投入口5を設けている。
【0029】
上流側開口部の軸中心よりも下位側には、熱風供給源H1から供給される熱風Hをケーシング2の内部に送風するための送風口6を設けている。また、下流側開口部の軸中心よりも下位側には、乾燥処理済みの被処理物Eをケーシング2の外部に排出するための排出口7を設けている。
【0030】
上述の被処理物供給源E1は、例えば被処理物Eが投入されるホッパと、該ホッパに投入された被処理物Eを定量供給する定量供給機とで構成している。また、熱風供給源H1は、例えばヒーター、燃焼装置等の空気を加熱する加熱装置と、該加熱装置で加熱した熱風Hを送風するブロワー等の送風装置とで構成している。
【0031】
加熱パイプ3は、上流側端部から下流側端部に向けて同一の内径及び外径に形成した円筒状を有している。また、加熱パイプ3は、ケーシング2の内部中心に挿入され、該ケーシング2と同心円で一体的に設けている。
【0032】
また、加熱パイプ3の上流側端部及び下流側端部は、ケーシング2及び加熱パイプ3の軸中心を中心として放射状に配置した複数本のパイプ支持体8で支持している。
【0033】
つまり、パイプ支持体8の一端を加熱パイプ3の外周に固定し、パイプ支持体8の他端をケーシング2の内周に固定して、加熱パイプ3を、ケーシング2と同心円に固定している(
図4参照)。
【0034】
加熱パイプ3の上流側端部には、両端が開放された中空のシャフト9の一端を軸方向に連結している。また、加熱パイプ3の下流側端部には、一端が閉塞されたシャフト10の閉塞側端部を軸方向に連結している。これにより、加熱パイプ3の下流側端部を蒸気Sが漏れないように閉塞している。
なお、加熱パイプ3の下流側端部は、閉塞部材で閉塞してもよい。
【0035】
シャフト9,10は、ケーシング2の上流側及び下流側に配置した軸受11により回転可能に軸受している。また、ケーシング2は、該ケーシング2の下部に配置した図示しない複数の支持ローラにより支持している。
これにより、ケーシング2及び加熱パイプ3を略水平に軸受するとともに、該ケーシング2の軸中心を中心として
図2中の矢印で示す回転方向Fへ回転可能に設けている。また、回転方向Fに対し逆方向へ回転可能に設けている。
【0036】
シャフト9の軸中心には、加熱パイプ3の内部と連通して蒸気路9aを形成している。その蒸気路9aの入口側には、回転軸継手12を介して高温の蒸気Sを供給する蒸気供給源S1を接続している。この蒸気供給源S1は、図示しないボイラで発生させた高温の蒸気Sをシャフト9の蒸気路9aから加熱パイプ3の内部に向けて吐出させ、加熱パイプ3の全長に供給する。
【0037】
また、シャフト10の軸中心には、後述する貯溜部4dに貯溜された凝縮水Wを排出するためのドレン路10aを形成している。そのドレン路10aの出口側には、回転軸継手12を介して図示しない水回収装置を接続している。
【0038】
ジャケット4は、ケーシング2の上流側外周に配置した上流側ジャケット4aと、下流側外周に配置した下流側ジャケット4bとで構成している。
また、ジャケット4a,4bは、上流側ジャケット4aから下流側ジャケット4bに向けて蒸気Sを供給するバイパス路13で接続している。
つまり、上流側ジャケット4aに導入された蒸気Sは、バイパス路13を介して下流側ジャケット4bに導入されるので、ジャケット4a,4bの導入された蒸気Sの熱でケーシング2の全体を均一に加熱することができる。
【0039】
また、上流側ジャケット4aの上流側には、供給路3aの一端を接続している。この供給路3aの他端は、加熱パイプ3の上流側周面に接続している。これにより、加熱パイプ3に導入された蒸気Sは、供給路3aを介して上流側ジャケット4aに導入される。
【0040】
図5、
図6に示すように、下流側ジャケット4bの下流側内周には、該下流側ジャケット4bの下部内周に貯溜された凝縮水Wを排水するための排水口4cを設けている。また、下流側ジャケット4bの下流側外周には、排水口4cから排水される凝縮水Wを貯溜するための貯溜部4dを設けている。
【0041】
下流側ジャケット4bの貯溜部4dとシャフト10のドレン路10aとは、該貯溜部4dからドレン路10aに向けて凝縮水Wを排出する排水路4eで接続されている。
また、排水口4cは、回転方向Fの前方側(
図5に示す右側)に設けられ、排水路4eは、回転方向Fの後方側(
図5に示す左側)に設けられている。
【0042】
なお、下流側ジャケット4bの内周を、該下流側ジャケット4bの下部内周に貯溜された凝縮水Wが排水口4cに向けて流下する角度に傾斜してもよい。また、上流側ジャケット4aと下流側ジャケット4bを一体化して、1つのジャケットで構成してもよい。
【0043】
また、ケーシング2の上流側内周及び下流側内周には、該ケーシング2の上流側(
図1中の右側)から下流側(
図1中の左側)に向けて被処理物Eを移送方向Gに移送するためのリング状のスクリュー羽根14を設けている。
スクリュー羽根14は、ケーシング2の上流側内周と下流側内周に沿って螺旋方向に設けるとともに、ケーシング2の下部内周に堆積する被処理物Eを移送方向Gに向けて移送する高さに設けている。
【0044】
つまり、加熱パイプ3とスクリュー羽根14との間に、被処理物Eを移送するための移送空間が形成されるので、ケーシング2の回転方向Fの回転にともなうスクリュー羽根14の螺旋方向の回転によって、被処理物Eを、ケーシング2の内部に滞留させることなく移送方向Gに向けてスムースに移送することができる。
これにより、被処理物Eを1箇所に停滞させることなく、移送方向Gに向けて連続して移送することができる。また、必要以上に乾燥し過ぎるのを防止することができる。
【0045】
また、上流側及び下流側のスクリュー羽根14よりも内側でケーシング2の上流側内周及び下流側内周には、該ケーシング2の下部内周に堆積する被処理物Eを掻揚げるための掻揚げ羽根15を設けている。
【0046】
掻揚げ羽根15は、ケーシング2の内周に沿って軸方向と平行して設けるとともに、該ケーシング2の周方向に等間隔を隔てて複数配列している。また、掻揚げ羽根15は、ケーシング2の下部内周に堆積する被処理物Eを掻揚げる高さに設けている。
【0047】
つまり、ケーシング2の回転方向Fの回転にともなって、掻揚げ羽根15は周方向に回転移動し、ケーシング2の下部内周に堆積する被処理物Eを上方へ掻揚げる。その掻揚げ羽根15により掻揚げられた被処理物Eを自重落下させ、加熱パイプ3の上部外周やケーシング2の下部内周に何回も接触させる。
【0048】
また、掻揚げ羽根15の軸方向と対応する加熱パイプ3の外周には、該加熱パイプ3の外周上に被処理物Eを留まらせる保留板16を設けている。
保留板16は、加熱パイプ3の上流側外周及び下流側外周に沿って軸方向と平行して設けるとともに、該加熱パイプ3の周方向に等間隔を隔てて複数配列している。
つまり、保留板16は、掻揚げ羽根15から落下した被処理物Eを加熱パイプ3の外周上に保留して、該加熱パイプ3の外周上に被処理物Eをできるだけ長く留まらせる(
図2、
図4参照)。
なお、被処理物Eを保留する必要がなければ、保留板16を設けなくてもよい。
【0049】
また、
図3に示すように、ケーシング2の内部中央の下部内周上には、円柱状のローラ17をケーシング2の軸方向と平行して配置している。
ローラ17は、ケーシング2の下部内周と対向して該ケーシング2の内部中央に配置され、該ケーシング2の軸方向と平行して自由回転可能に設けている。また、上流側及び下流側に配置された掻揚げ羽根15の間に保持している。
【0050】
つまり、ケーシング2の周方向の回転力により、ローラ17はケーシング2の下部内周と対向する位置に留まった状態で自由回転する。また、ローラ17は、例えば粒状や塊状になった粒状や塊状の被処理物Eをケーシング2の内周面に押し付けながら回転するので、被処理物Eをケーシング2の内周面とローラ17の外周面とで押し潰すようにして破砕することができる。
なお、被処理物Eを破砕する必要がなければ、ローラ17を設けなくてもよい。
【0051】
前記ケーシング2の上流側には、ケーシング2の全体を回転するための駆動装置18を配置している。
駆動装置18は、ケーシング2の上流側下部に配置された駆動モータ19と、該駆動モータ19の出力軸に固定されたスプロケット20と、シャフト9の突出側端部に固定されたスプロケット21と、スプロケット20,21の間に張架されたチェーン22とで構成している。
つまり、プロケット20,21及びチェーン22を介して、駆動モータ19の駆動力により、ケーシング2の軸中心を中心として
図2中の矢印で示す回転方向Fへケーシング2の全体を回転する。
【0052】
上述した蒸気加熱式ロータリー乾燥機1により被処理物Eを乾燥処理する方法を説明する。
先ず、
図1、
図2に示すように、蒸気供給源S1から供給される蒸気Sをシャフト9の蒸気路9aから加熱パイプ3に導入するとともに、その加熱パイプ3に導入された蒸気Sを供給路3aから流出させて、ジャケット4の上流側ジャケット4aに導入する。さらに、バイパス路13を介して下流側ジャケット4bにも供給する。
これにより、加熱パイプ3の外周は、加熱パイプ3に導入された高温の蒸気Sによって加熱される。また、ケーシング2の内周は、ジャケット4a,4bに導入された高温の蒸気Sによって加熱される。
【0053】
また、熱風供給源H1から供給される熱風Hを、ケーシング2の内部に送風口6から送風するとともに、該ケーシング2の上流側から下流側に向けて送風しながら下流側開口部から外部に向けて排出する。
【0054】
次に、被処理物供給源E1から供給される被処理物Eをケーシング2の内部に投入口5から投入し、そのケーシング2に投入された被処理物Eを、上流側のスクリュー羽根14により移送方向Gに向けて移送するとともに、蒸気Sにより加熱された加熱パイプ3の外周とケーシング2の内周とに接触させる。
この時、被処理物Eに含まれる水分と、加熱パイプ3とジャケット4に導入された蒸気Sとの間で熱交換を行い、被処理物Eに含まれる水分を加熱パイプ3及びジャケット4の熱により蒸発気化して、被処理物Eを乾燥処理する。
【0055】
また、上述の蒸発気化した水分を、ケーシング2の上流側から下流側に向けて熱風供給源H1から送風される乾燥した熱風Hによって吸収する。
つまり、ケーシング2の内部を乾燥した熱風Hによって乾燥状態に保つことができるため、被処理物Eから水分を効率よく除去でき、乾燥処理に要する処理時間を大幅に短縮することができる。
【0056】
ケーシング2の上流側内周から下流側内周に向けて移送する途中、掻揚げ羽根15の周方向の移動によって、ケーシング2の下部内周に堆積する被処理物Eを上方へ掻揚げる。その上方へ移動の途中において、掻揚げ羽根15により掻揚げられた被処理物Eの山は自然に崩れて、加熱パイプ3の外周やケーシング2の内周に落下する。
つまり、掻揚げ羽根15により掻揚げられた被処理物Eは、その掻揚げられた被処理物Eの位置が高くなるにつれ、掻揚げ羽根15からX部、Y部の順に落下する(
図2〜
図4参照)。
【0057】
要するに、掻揚げ羽根15により被処理物Eを何回も掻揚げて均一に撹拌するとともに、ケーシング2と加熱パイプ3に繰り返し接触させるので、被処理物Eの乾燥を促進して、より効率的に乾燥処理することができる。
【0058】
また、保留板16は、掻揚げ羽根15から落下した被処理物Eを加熱パイプ3の外周上に保留して、該加熱パイプ3の外周上に被処理物Eをできるだけ長く留まらせる(
図2、
図4参照)。
これにより、加熱パイプ3と被処理物Eとの接触時間が長くなるので、加熱パイプ3に導入された蒸気Sの熱を有効利用して、被処理物Eをより積極的に乾燥処理させることができ、乾燥処理に要する処理時間を短くすることができる。
【0059】
さらにまた、移送途中において、例えば粒状や塊状になった粒状や塊状の被処理物Eを、ケーシング2の内周面とローラ17の外周面とで押し潰すようにして破砕する(
図3参照)。
【0060】
これにより、被処理物Eのサイズを小さくして、表面積を大きくするので、被処理物Eに含まれる水分が加熱パイプ3及びジャケット4の熱によって効率よく蒸発気化され、被処理物Eを確実に乾燥処理することができる。
【0061】
ケーシング2の下流側内周に移送された乾燥処理済みの被処理物Eは、下流側のスクリュー羽根14により排出口7から外部に排出されるので、被処理物Eを連続して乾燥処理することができる。
【0062】
一方、乾燥処理に使用された蒸気Sは、下流側ジャケット4bの内部で冷えて凝縮して凝縮水Wとなり該下流側ジャケット4bの下部内周に貯溜される。また、ケーシング2の回転方向Fの回転により排水口4c及び貯溜部4dが下方へ回転移動した際、下流側ジャケット4bの下部内周に貯溜された凝縮水Wが排水口4cから貯溜部4dへ排出される(
図5参照)。
【0063】
さらに、貯溜部4dに貯溜された凝縮水Wは、ケーシング2の回転方向Fの回転により貯溜部4dが上方へ回転移動される途中、排水路4eを通って、シャフト10のドレン路10aへ排出される(
図6参照)。また、ドレン路10aに流入した凝縮水Wは、蒸気供給源S1から供給される蒸気Sの圧力によってドレン路10aの出口側から外部へ排出される。
【0064】
上述した蒸気加熱式ロータリー乾燥機1により被処理物Eを乾燥処理すれば、被処理物Eの乾燥処理に使用した蒸気Sが冷えて凝縮した凝縮水Wを加熱パイプ3やジャケット4の内部に留まらせることなく効率よく排出するとともに、被処理物Eを蒸気Sの熱により効率よく乾燥処理することができる。
【0065】
また、加熱パイプ3及びジャケット4に導入された蒸気Sの熱で乾燥処理するので、被処理物Eを熱風のみで乾燥処理する乾燥機よりもランニングコストが安く、低コストで乾燥処理することができる。さらに、蒸気Sを大気中に放出することなく該蒸気Sの熱を有効利用するので、ロータリー式の乾燥機として省エネを図ることができる。
【0066】
くわしくは、例えば縦型ロータリー乾燥機は、ケーシングの内部に投入された被処理物は自重落下し、該ケーシングの下部領域に堆積する。また、ジャケットの下部領域には温度の低い蒸気が溜まりやすく、上部領域には温度の高い蒸気が溜まりやすいので、ケーシングの上部領域と下部領域とに温度差が生じる。
【0067】
このため、ケーシングの下部領域に落下した被処理物が、ジャケットの下部領域に溜まった温度の低い蒸気で加熱されるので、蒸気による加熱効率が悪く、被処理物の乾燥処理に時間が掛かる。
【0068】
しかし、蒸気加熱式ロータリー乾燥機1は、高温の蒸気Sを、略水平に軸受された加熱パイプ3及びジャケット4に沿って軸方向に供給するので、ケーシング2の内部領域に温度差が生じにくく、ケーシング2の内部全体の温度を略均一な温度分布となるように保つことができる。
【0069】
また、ケーシング2に投入された被処理物Eを、加熱パイプ3及びジャケット4に導入された蒸気Sの熱により内側と外側から挟み込むようにして加熱するので、上述した縦型ロータリー乾燥機よりも、被処理物Eを効率よく乾燥処理することができる。
【0070】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の回転手段は、駆動装置18に対応し、
以下同様に、
熱風供給手段は、熱風供給源H1に対応し、
被処理物破砕手段は、ローラ17に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0071】
例えばケーシング2を略水平に軸受してもよい。或いは、ケーシング2を被処理物Eが移送方向Gに向けて流下する角度に傾斜してもよい。
また、加熱パイプ3の軸中心に対し、シャフト9及び/又はシャフト10を軸方向に貫通して設けてもよい。
【0072】
さらには、上述の蒸気加熱式ロータリー乾燥機1、駆動モータ19の駆動力によりケーシング2を回転させたが、ジャケット4の外周面に対してローラ等の回転力を付与する回転駆動で回転させてもよい。
【0073】
加えて、貯溜部4dの回転方向Fの後方側内壁を、貯溜部4dに貯溜された凝縮水Wが排水路4eに向けて排出される角度に傾斜してもよい。
【0074】
また、排水路4eの回転方向Fの前方側口縁部を貯溜部4dの底部に近づける等して、貯溜部4dに貯溜された凝縮水Wが排水口4cからジャケット4の内部へ逆流するのを防止する逆流防止手段を備えてもよい。
【0075】
また、
図7に示すように、貯溜部4dとドレン路10aとを直接接続せずとも、後述するサイホン式の排水構造を用いて、加熱パイプ3の内部に貯溜された凝縮水Wを排水してもよい。
【0076】
なお、
図7は、凝縮水Wの他の排水構造を示す拡大縦断側面図である。
この構成について詳述すると、サイホン式の排水構造は、サイホンパイプ30と、サイホンエルボ31と、吸込みパイプ32とで構成している。
【0077】
また、排水路4eにより貯溜部4dとドレン路10aとを接続せず、加熱パイプ3の内部と貯溜部4dの内部とを排水路4eで接続して、貯溜部4dに貯溜された凝縮水Wが加熱パイプ3の内部へ排出されるように設けている。
【0078】
サイホンパイプ30は、中空に形成したシャフト10の軸中心に対し軸方向に挿入している。また、サイホンパイプ30の一端(
図7中の右側端部)は、加熱パイプ3の内部中心に対し該加熱パイプ3の軸方向と平行して突出している。そのサイホンパイプ30の突出側端部には、サイホンエルボ31を介して吸込みパイプ32を連結している。
【0079】
吸込みパイプ32は、加熱パイプ3の下部内周と対向する方向及び角度に回動固定している。なお、本実施形態おいては、吸込みパイプ32の下向き角度を60度に設定している。
また、吸込みパイプ32の吸込み口は、加熱パイプ3の下部内周に対し該下部内周に貯溜された凝縮水Wのサイホン式吸込みが許容される間隔を隔てて近接している。
【0080】
サイホンパイプ30の他端(
図7中の左側端部)は、シャフト10の下流側端部に固定した回転軸継手33により回転固定状態に支持している。その回転軸継手33は、吸込みパイプ32の吸込み側開口部を、加熱パイプ3の下部内周と対向する位置に保持している。
また、回転軸継手33により支持されたサイホンパイプ30の他端には、フレキシブルな排水パイプ34を接続している。
【0081】
この構成により、ケーシング2の回転により貯溜部4dに貯溜された凝縮水Wを、排水路4eから加熱パイプ3の内部へ一旦排出する。
加熱パイプ3の下部内周に貯溜された凝縮水Wは、該加熱パイプ3の内部に供給される蒸気Sの圧力とサイホン現象によって吸込みパイプ32からサイホンパイプ30の内部へ流入される。そのサイホンパイプ30に流入した凝縮水Wは、蒸気Sの圧力によって排水パイプ34から外部へ排出される。
【0082】
これにより、被処理物Eの乾燥処理に使用した蒸気Sが冷えて凝縮した凝縮水Wを加熱パイプ3やジャケット4の内部に留まらせることなく効率よく排出するとともに、被処理物Eを蒸気Sの熱により効率よく乾燥処理することができる。