【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1によるフィルターの一例を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施例1によるフィルターの一例を示す正面図である。
図3は、本発明の実施例1によるフィルターの一例を示す平面図である。
図4は、本発明の実施例1によるフィルターが有する裁断片の平面図である。
図5は、
図4のA−A断面図である。
図6は、本発明の実施例1によるフィルターを製造するための円形治具を示す説明図である。本発明によるフィルターの一例が
図1〜
図3に示されている。このフィルター1は、特許文献1に開示されるようなシート素材や一般に市販されているろ紙(ろ材)などを所定長さ(たとえば約1.8メートルから約2.5メートル)にカットした後、例えば、特殊専用の裁断機でストレートカットして帯状ないし麺状に裁断した裁断片(帯状のろ過シート材)2を所定量使用し、
図6に示す円形治具4でプレスして周縁部3のみを接合一体化して、所定サイズに成形したものである。なお、ろ紙の裁断は、ろ紙を帯状に裁断できればよく、例えば、シュレッダー機を用いてもよい。
【0023】
本実施例においては、フィルター1の材料として、天然パルプ(100%が好ましい)を用いた耐熱かつ耐油性を有するろ紙を用いている。天然パルプを100%とすると、使用後のフィルター1の処理が容易になるので好ましい。なお、フィルター1の素材は天然パルプ100%のものに限定されるものではなく、ろ過性能を考慮して、吸着剤を含ませてもよい。吸着剤としては、例えば、活性炭、活性白土、又は活性炭と活性白土とを混合したものなどを用いることができる。
【0024】
一例として、帯状ないし麺状に裁断した裁断片2をフィルター1の1個当たりに対して15グラム使用し、これを円形治具4に入れて周縁部1cmのみをプレスして外径D1が約12cm、内径D2が約10cmのフィルター1とすることができる。なお、フィルター1の寸法はこれに限定されるものではない。このフィルター1は周縁部3のみが接合一体化されているにすぎず、その内部においては多数の帯状ないし麺状の裁断片2同士が絡み合った状態で多数のろ過通路をランダムに形成している。
【0025】
円形治具4は、ピストン4Pとシリンダ4Sとを有する。ピストン4Pは円筒形状の構造体であり、凹部4PIを有する。シリンダ4Sは、底付きの容器であり、内部にピストン4Pが進入する。フィルター1を製造する場合、シリンダ4Sの内部に複数の裁断片2を充填する。そして、ピストン4Pは、シリンダ4Sの開口部から内部へ進入し(
図6の矢印Pで示す方向)、シリンダ4S内に充填された裁断片2をプレスする。ピストン4Pの周縁端部4Tとシリンダ4Sの底部4SBとの間の裁断片2は、ピストン4Pによって圧縮され、一体化して、フィルター1の周縁部3となる。
図1、
図2に示すように、周縁部3は、複数の裁断片2を押し固めて環状に一体化して形成され、フィルター1の外側に向かって張り出したフランジ状の部分である。
【0026】
図2に示すように、フィルター1は、複数の裁断片2が絡み合った第1凸部2TAと、同じく複数の裁断片2が絡み合った第2凸部2TBとを有する。第1凸部2TA及び第2凸部2TBとは、それぞれ周縁部3の両面から突出する。第2凸部2TBは、周縁部3から、第1凸部2TAとは反対側に突出する。上述した円形治具4のピストン4Pが凹部4PIを有しており、複数の裁断片2がピストン4Pによってプレスされる際に、周縁部3となる部分を除いた大部分の裁断片2は、凹部4PI内に入る。凹部4PI内に入った裁断片2はフィルター1の第1凸部2TAとなり、シリンダ4Sの底部側の裁断片2は第2凸部2TBとなる。前記プレスの際に、シリンダ4S側の裁断片2は、シリンダ4Sの底部に押さえ付けられるようになる。このため、周縁部3から第1凸部2TAの頂部までの距離h1は、周縁部3から第2凸部2TBの頂部までの距離h2よりも大きくなる。
【0027】
このように、フィルター1は、
図2に示すように、曲率の異なる半円を二つ組み合わせ、両者の合わせ部からフランジ形状の周縁部3が張り出した形状となっている。また、
図3に示すように、フィルター1の平面視の形状は円形である。しかし、フィルター1の形状はこれに限定されるものではなく、フィルター1が搭載されるろ過装置の仕様などに応じてフィルター1の形状を変更することができる。例えば、フィルター1は、平面視の形状が四角形または六角形などの多角形であってもよい。
【0028】
第1凸部2TA及び第2凸部2TBは、前記プレスによっては裁断片2がほとんど圧縮されないで形成される。このため、第1凸部2TA及び第2凸部2TBの裁断片2の密度は、周縁部3よりも低い。裁断片2の密度とは、単位体積当たりにおける裁断片の質量である。このような構造により、フィルター1は、第1凸部2TA及び第2凸部2TBが、多数の帯状の裁断片2同士が絡み合った状態で、多数の裁断片2同士の隙間が形成され、この多数の隙間が多数のろ過通路となる。
【0029】
図4に示すように、裁断片2は、長方形形状である。裁断片2の長手方向が裁断片2の長さL、長手方向と直交する方向が裁断片2の幅W、裁断片2の表面と直交する方向が裁断片の厚みtである。幅Wを変更してフィルター1のろ過性能及び耐目詰まり性能を評価した結果を表1に示す。裁断片2の長さLは2.5メートル、厚みtは0.13mm、1個のフィルター1に用いる裁断片2の質量を15グラムとし、幅Wのみを変更した。このような裁断片2を用いて、外径D1が約12cm、内径D2が約10cm、周縁部3の幅が約1cmのフィルター1を円形治具4により作製した。×はろ過性能または耐目詰まり性能が許容できない、○はろ過性能または耐目詰まり性能が優れている、◎はろ過性能または耐目詰まり性能が非常に優れていることを示している。ろ過性能は、後述するろ過装置に幅Wを変更したフィルター1を装着し、揚げ物に使用した食用油をろ過対象として用いてこれをろ過し、ろ過後の食用油の濁りを評価した結果から評価した。耐目詰まり性能は、ろ過開始から食用油をフィルター1に送り込むときの圧力が所定圧力に到達する時間に基づき、当該時間が短いほど耐目詰まり性能は低いと評価した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示す結果から、裁断片2の幅Wを2mm以上5mm以下とすることで、ろ過性能及び耐目詰まり性能に優れたフィルター1を得ることができる。裁断片2の幅Wが3mmである場合、フィルター1のろ過性能及び耐目詰まり性能は最も優れている。本実施例において、裁断片2の厚みtは、ろ過性能やろ過時におけるフィルター1のつぶれ抑制などの観点から、0.1mm以上0.3mm以下としている。裁断片2の長さLは、裁断片2の厚みtと幅Wとが決定された後、フィルター1に用いる裁断片2の量が所定の値となるように決定される。なお、裁断片2の長さL、幅W、厚みtはこれに限定されるものではなく、フィルター1に要求される紙質、温度、湿度など、様々な条件によって、適宜変更してもよい。次に、実施例1に係るろ過装置を説明する。
【0032】
図7は、実施例1のフィルターを用いた実施例1に係るろ過装置の要部断面図である。
図8は、実施例1に係るろ過装置の外観図であり、(a)は正面図、(b)は前面図、(c)はフレームを除いた状態の上面図、(d)はパネル部の上面図である。なお、(b)および(c)においてパネル部の詳細は図示省略されている。
【0033】
このフィルター1を用いたろ過装置10が
図7、
図8および後述する
図12に示されている。このろ過装置10は、総菜店やレストランなどで各種の揚げ物を揚げ調理する際に使用される食用油(ろ過対象)をフィルター1でろ過し、該食用油に含まれる微細な不純物や水分などを除去するものであり、小型・軽量・低価格であって且つろ過効率に優れることから、特に小規模店舗が導入した場合の経済的メリットが大きく、ひいては省エネや環境問題解決にも資することが期待できるものである。
【0034】
このろ過装置10は、フィルター1を収容するフィルターケース11を有する(
図7)。フィルターケース11は、略同一の内径を有して略円筒形状に形成された本体12および上部材13と、本体12の開放底部を実質的に閉止する底部材14とを備えている。本体12と上部材13および本体12と底部材14は溶接固定されて一体化され、全体が鍋状に形成されている。フィルターケース11の上部には、ろ過処理すべき油を導入する導入口15が側方に向けて開口している。また、底部材14の中央には、ろ過処理後の油を排出する排出口16が下方に向けて開口している。
【0035】
上部材13は断面が略コ字形に形成され、下部側方突出縁17および上部側方突出縁18を有する。下部側方突出縁17は、このろ過装置10をフィルターケースボックス36に収容したときに該フィルターケースボックス36の上面36aに係止するための係止部となる。所定の上部側方突出縁18の内面側は上方突出縁19とされ、その外方にはOリング20を嵌め込むための環状溝(符号なし)が形成されている。上部材13の開口は蓋部材23(本発明の「閉止手段」を構成する)によって閉止可能である。
【0036】
底部材14の内側にはFB21およびパンチングメタル22がそれぞれ段部(符号なし)に嵌め込まれた状態で配置されており、底部材14の上面14aおよびパンチングメタル22の上にフィルター1が設けられる。フィルター1は、プレス接合一体化された周縁部3が底部材の上面14a(後述のフィルター押さえ24、特にその押さえリング30と共に本発明の「フィルター支持手段」を構成する)に支持され且つ後述のフィルター押さえ24で上方から押さえ付けられた状態で係止され、周縁部3の内側において帯状ないし麺状の裁断片素材2が絡み合っている部分の略全般がパンチングメタル22上に載置された状態で配置される。なお、未使用状態のフィルター1は、該内側部分がフィルターの上下両面に膨らんだ状態となっているが、ろ過装置10に組み込まれたときには上記のように周縁部3が底部材の上面14aに密接して支持され、中央部はパンチングメタル22上に載置されるので、下方への膨出は無くなり、
図7に示すように実質的に上方にのみ膨らんだ状態となる。
【0037】
フィルター押さえ24は、シャフト25と、シャフト25の上端に固着されたツマミ26と、シャフト25の下端にカラー27とUワッシャ28との間に回転可能に取り付けられた回転バー29と、回転バー29の下方に固着された押さえリング30とを有する。シャフト25は、蓋部材23の中央に開口形成されたシャフト挿通穴23aに整列するようにその上方に配置された外側・内側シャフトカラー31,32、シャフト受け33およびシャフト挿通穴23aを順次に通過し、カラー27装着部の上方所定領域に設けられた雄ネジ部34が蓋部材23のシャフト挿通穴23aの下方に溶接されたナット部35に螺合している。回転バー29は押さえリング30の直径に亘る長さに延長して押さえリング30の上端の対向2箇所に溶接固定されている。押さえリング30はフィルターケース本体12の内壁に近接する外径寸法を有し、前述したように、底部材の上面14aに支持されているフィルター周縁部3を上方から押さえ付けてフィルター1を保持する役割を果たす。
【0038】
なお、フィルター1の外径(周縁部3の外径)を、フィルターケース11の本体12の内径よりも大きくした上で、フィルター押さえ24の押さえリング30によってフィルター1を押さえ付けることが好ましい。このようにすれば、ろ過対象の食用油がフィルター1の周縁部3とフィルターケース11の底部材14との間から排出口16へ向かって流れることを抑制できるので、ろ過対象を確実にろ過することができる。
【0039】
図8は
図7のフィルターケース11を組み込んだろ過装置10の全体外観図であり、前述のフィルターケース11を収容するフィルターケースボックス36と、所定量(たとえば5リットル)の油を収容可能な油収容槽37とがフレーム38上に固定された構成を有している。フレーム38の底部には支持脚39,39が固定され、ろ過装置10を安定した状態で床面に設置することを可能にしている。また、フレーム38の油収容槽37の後部側に設けられた後部ハンドル40と、フィルターケースボックス36のパネル部53に設けられた前部ハンドル41とにより、ろ過装置10を持ち運び可能にしている。なお、符号55はヒューズを示す。
【0040】
このろ過装置10は、油収容槽37に収容された油を導入口15からフィルターケース11に導入し、該フィルターケース11内のフィルター1によってろ過した後に排出口16から排出して油収容槽37に回収する一連のろ過処理を繰り返し行うように構成されており、フィルターケースボックス36にはフィルターケース11と共に、油を循環するための循環路を形成する各種ホースおよび油収容槽37内の油を吸入して導入口15へと送り込むための循環ポンプが収容されている。フィルター1でろ過された油は、その下方に配置されているパンチングメタル22およびメタル受けのFB21を通過して、清浄化された油として排出口16から排出される。
【0041】
図9は、実施例1に係るろ過装置の作用説明図である。
図9を併せて参照して、フィルターケース11の排出口16から排出されたろ過後の油は、該排出口16に接続された吐出ホース42(フィルターケースボックス36内に収容されているので
図8には示されていない)および吐出口43を介して油収容槽37に回収される。油収容槽37内の油は、その底部の排出口16に接続された吸入ホース45を介して循環ポンプ46に吸入され、導入ホース47(フィルターケースボックス36内に収容されているので
図8には示されていない)を介して導入口15からフィルターケース11に導入されてフィルター1によるろ過処理を受ける。循環ポンプ46は電源コード48を介して供給される電力を受けて、タイマースイッチ49により設定された時間継続的に駆動される。循環ポンプ46の能力は、一例として、AC100V・200Wの下で3リットル/分である。吸入ホース45からは排出ホース50が分岐しているが、ろ過処理時はコック51が常時閉じられているので、ろ過後の油が排出ホース50に流れることはない。導入ホース47に設けられる圧力計52は、導入ホース47に油が流れるときの圧力を測定する。タイマースイッチ49の操作部および圧力計52の表示部は、フィルターケースボックス36の上面前方のパネル部53に設けられている。
【0042】
このろ過装置10の用法および作用について説明する。蓋部材23が取り付けられていないフィルターケース11にフィルター1をセットし、これをフィルターケースボックス36に取り付ける。フィルターケースボックス36の上面36aにはフィルターケース本体12の外径に略等しい内径を有する収容穴(図示せず)が形成されており、この穴に上方からフィルターケース本体12を嵌め込み、フィルターケース上部材13の下部側方突出縁17を該穴の周りのフィルターケースボックスの上面36aに係止することによって、フィルターケース11がフィルターケースボックス36に取り付けられる。
【0043】
このようにしてフィルターケース11をフィルターケースボックス36に取り付けた後、蓋部材23を取り付けてフィルターケース11を密閉状態に閉止すると共に、フィルター押さえ24の押さえリング30でフィルター11の周縁部3を底部材14の上面14aに押し付けてフィルター1を不動に保持する。より詳しく説明すると、フィルターケース上部材13の環状溝にOリング20を嵌め込んで装着した後に、蓋部材23の周縁下方段部23bにフィルターケース11の上部材13の上方突出縁19を収容するようにして、蓋部材23を上部材13に取り付ける。このとき、導入口15を塞がないように必要に応じて回転バー29を回転させて位置修正する。なお、必ずしも前記位置修正をする必要はない。この状態からツマミ26を回すと、シャフト25の雄ネジ部34と蓋部材23と一体であるナット部35との螺合を介して、蓋部材23が上部材13に密着してフィルターケース11内を密閉状態に閉止すると共に、底部材14にセットされたフィルター1の周縁部3を押さえリング30の先端で押さえ付けてフィルター1を不動に保持する。
【0044】
さらに、
図8では、このようにしてフィルターケースボックス36に取り付けたフィルターケース11の上部材13の外周部(下部側方突出縁17と上部側方突出縁18の間)にクランプ54を取り付けて締め付けることにより、フィルターケース11内に完全な密封状態を作り、且つ、これを長時間維持できるようにしている。
【0045】
以上でろ過装置10の事前準備が完了するので、このろ過装置10でろ過処理すべき油(フライヤーなどで長時間揚げ調理に使用された後の油)を油収容槽37に入れて、電源コード48を介してろ過装置10に給電する。なお、油を油収容槽37に入れる際に、濾し網などを用いて油かすなどの大きな不純物をあらかじめ取り除いておくと良い。次いで、タイマースイッチ49でろ過装置10の運転時間を適宜に設定すると、運転ランプ56が点灯してろ過装置10が運転中であることを知らせると共に、循環ポンプ46が始動して、ろ過処理が開始される。ろ過処理については既述した通りであり、油収容槽37内の油を、吸入ホース45を介して循環ポンプ46で吸入し、これを、導入ホース47を介して導入口15からフィルターケース11に導入し、ここでフィルター1によってろ過された後の油を排出口16から吐出ホース42を介して油収容槽37に回収するというサイクルのろ過処理を、タイマースイッチ49で設定された時間継続して行うものである。フィルター1の目詰まりなどによって圧力計52が異常値を示したときは、タイマースイッチ49を0に戻してろ過装置10を停止させる。
【0046】
このようにして所定時間の継続的なろ過処理によって油に含まれる微細不純物や水分を除去した後、コック51を開くと、油収容槽37内の油が吸入ホース46から分岐する排出ホース50へと流れていく。また、フィルターケース11の排出口16に接続された吐出ホース42から分岐するエアー排出口57が装置前面で開口しており、ろ過処理中は閉じられているエアー抜きコック58をろ過処理終了後に開くことにより、エアー排出口57からエアーが抜け、吐出ホース42内に残存する油を排出ホース50から排出させることができる。
【0047】
図10は、使用後における実施例1のフィルターを示す正面図である。
図11は、使用後における実施例1のフィルターを示す背面図である。
図10および
図11中の符号2Bは、第1凸部2TAと周縁部3との境界を示している。フィルター1は、使用中に、
図2に示した第2凸部2TBが押しつぶされ、その表面は、周縁部3の第2凸部2TB側における表面と略同一面となる。そして、使用後のフィルター1を観察すると、周縁部3の内側に、板状の周辺部3の内側部分3Iが形成される。この押しつぶされた板状の内側部分3Iは、第1凸部2TAよりも裁断片2の密度が高くなる。
【0048】
フィルター1は、ろ過装置10に装着してろ過対象(本実施例では食用油)のろ過を開始してからある程度の時間が経過すると、板状の内側部分3Iが形成される。ろ過装置10の導入口15からフィルターケース11内に導入された食用油は、まず、フィルター1の第1凸部2TAを構成する複数の裁断片2の隙間を通過する過程で、主として揚げ滓などのある程度寸法の大きい不純物が裁断片2に除去される。そして、第1凸部2TAを通過した油は、第1凸部2TAよりも裁断片2の密度が高い内側部分3Iを通過する過程で、第1凸部2TAでは除去し切れなかった微細不純物が吸着されて除去される。なお、食用油が第1凸部2TAを通過する際にも、一部の微細不純物は、裁断片2に吸着される。
【0049】
このように、フィルター1は、裁断片2が絡み合った第1凸部2TAと、第1凸部2TAよりも裁断片2の密度が高い内側部分3Iとを用い、この順に2段階で食用油をろ過する。その結果、フィルター1は、効率よく食用油をろ過できる。フィルター1は、揚げ物に使用した食用油中から酸化の原因となる微細不純物を効率よく取り除くことができるので、食用油の寿命を延ばすことができる。また、フィルター1は、食用油から前記微細不純物を効率よく取り除き、うまみ成分を食用油に残すことができるので、食用油の酸化を抑制しつつ、うまみ成分を有する食用油により、揚げ物の味を向上させるという利点も有する。
【0050】
また、フィルター1は、裁断片2の密度を異ならせた二つの部分を用いてろ過するため、特許文献1に記載された、シート素材を円筒形に巻いたフィルターと比較して、少ない材料で同等以上のろ過性能を発揮できる。その結果、フィルター1は、少ない材料で、シート素材を円筒形に巻いたフィルターと同等以上のろ過性能を有するフィルターを製造できるので、材料コストを低減できるとともに、環境負荷も低減できる。さらに、フィルター1は、シート素材を円筒形に巻いたフィルターよりも少ない材料で製造できる結果、小型化も可能になる。このため、フィルター1を用いるろ過装置10は、シート素材を円筒形に巻いたフィルターを用いるろ過装置と比較して小型化することができる。
【0051】
さらに、フィルター1は、裁断片2が絡み合った第1凸部2TAを有し、内側部分3Iは、第2凸部2TBが圧縮されて形成される。このような構造により、フィルター1は、シート素材を円筒形に巻いたフィルターと比較して、圧力損失が低い。このため、食用油をフィルター1へ送るポンプの動力を小さくできるので、ポンプの動力源を小型で小出力のものとすることができる。その結果、フィルター1は、ろ過装置10の小型化及び消費エネルギーの低減を実現できる。
【0052】
本実施例において、フィルター1を、食用油のろ過に用いた例を説明したが、フィルター1が使用できる対象はこれに限定されるものではない。フィルター1は、例えば、機械油のろ過、おでんや煮物などのだし汁のろ過など、さまざまな用途のろ過に用いることができる(以下の実施例でも同様)。
【実施例2】
【0053】
図12は、実施例2に係る過装置の外観図であり、(a)は正面図、(b)は前面図、(c)はフレームを除いた状態の上面図、(d)はパネル部の上面図である。
図13は、実施例2に係るろ過装置の作用説明図である。以上に詳述した実施例1は、フライヤーなどで揚げ調理に用いて劣化した油をろ過装置10で所定時間ろ過して微細不純物や水分などを除去した後にフライヤーに戻して再使用するバッチ式ろ過処理を行うものであるが、本発明は、フライヤー内の油をポンプ吸引して本発明のろ過装置に導入し、これを装置内でろ過処理した後にフライヤーに戻す循環式ろ過処理を行う実施形態として構築することも可能である。この実施形態の場合のろ過装置10の構成も実施例1のろ過装置10と略同様であって良いが、フライヤー内の油を直接ろ過装置10に導入してろ過処理を行うので、油収容槽37は不要である。したがって、この実施形態によるろ過装置10はより小型化・軽量化することができる。
【0054】
このろ過装置10の用法および作用について
図12および
図13を参照して説明する。実施例1について既述したと同様にしてろ過装置10の事前準備を行うと共に、フィルターケース11の排出口16に接続された吐出ホース42をフライヤー59に入れ、フライヤー59内に設置した濾し網60と循環ポンプ46との間に吸入ホース45を接続する。その他の構成については実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0055】
この状態において、電源コード48を介してろ過装置10に給電し、タイマースイッチ49でろ過装置10の運転時間を適宜に設定すると、運転ランプ56が点灯してろ過装置10が運転中であることを知らせると共に、循環ポンプ46が始動して、ろ過処理が開始される。すなわち、フライヤー59内の油を濾し網60を通過させる間に該油に含まれる油かすなどの大きな不純物を除去した後、吸入ホース45を介して循環ポンプ46で吸入し、これを導入ホース47を介して導入口15からフィルターケース11に導入し、ここでフィルター1によってろ過された後の油を排出口16から吐出ホース42を介してフライヤー59に戻すというサイクルのろ過処理を、タイマースイッチ49で設定された時間継続して行うものである。タイマー設定することなく連続運転しても良いし、フライヤー59の運転に連動させてろ過処理を行っても良い。実施例1の場合と同様、フィルター1の目詰まりなどによって圧力計52が異常値を示したときは、タイマースイッチ49を0に戻してろ過装置10を停止させる。
【0056】
この実施例によれば、フライヤー59による揚げ調理を行いながら油をろ過することができるので、揚げ調理を中断する必要がなく、常に不純物や水分が取り除かれた清浄な油で揚げ調理を行うことができる利点がある。
【0057】
この実施例に基づいて、各種の揚げ物素材(鶏肉の唐揚げ、コロッケ、かき揚げ、アジフライ、春巻、イカリング、ドーナツ、ポテト、たこ焼きなど)をフライヤー59で揚げ調理した後の油汚れを実験した。フィルター1には、周縁部3を含めた外径が約12cm、周縁部3の内側において多数の帯状ないし麺状の裁断片2同士が絡み合った状態になっている部分の内径が約10cmの大きさのものを用いた。実験は、2009年9月下旬から同年12月下旬までの3ヶ月間にわたって土曜日、日曜日および祝日は除く毎日行った結果、延べ日数は53日であった。素材の総重量は123kgであった。廃棄した油はなく、フライヤーの油量が一定になるように都度足し油を行い、総量32kl(キロリットル)となった。
【0058】
この実験において揚げ調理された各種の揚げ物食品はいずれも食感・食味が良く、油の劣化を感じさせないものであった。また、市販の酸価測定用試験紙を用いてフライヤー59内の油の酸価を測定したところ、実験開始から終了まで酸価に変化は見られず、油の劣化がないことが確認された。また、圧力計52が0.4kg/cm
2を示したところでフィルター1を適時交換し、フィルターケース11から取り出したところ、いずれも帯状ないし麺状の裁断片2同士が絡み合った状態が維持されており、且つ、これらには内部まで全体に満遍なく油が染み込んでいて、フィルター内部にランダムに形成された無数のろ過通路がろ過能力を向上させていることが実証された。