【実施例1】
【0030】
図1に、実施例1に係る油圧ショベルの側面図を示す。
図1において、下部走行体10は、
図1では片側のみを示している一対のクローラ11及びクローラフレーム12で構成されている。また、
図1には図示されていない一対の走行油圧モータ13,14を有し、各クローラ11を独立して駆動制御する。また、減速機構等も下部走行体10に設置されている。
【0031】
旋回体20は、旋回フレーム21,エンジン22,アシスト発電モータ23,旋回電動モータ25,キャパシタ24,旋回機構26,旋回油圧モータ27および図示しない減速機構等で構成され、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転軸は結合されており、回転軸によって結合された旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27は、旋回機構26を介して旋回体20を制駆動する。
【0032】
エンジン22は、旋回フレーム21に設けられている。また、キャパシタ24は、エンジン22と同軸上に設けられたアシスト発電モータ23と、旋回油圧モータ27および旋回機構26と同軸上に設けられた旋回電動モータ25とに接続されており、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25が制駆動することによって、キャパシタ24は充放電されることになる。旋回機構26は、下部走行体に対して旋回体20及び旋回フレーム21を旋回させる。減速機構は、旋回電動モータ25の回転を減速させる。
【0033】
また、旋回体20には、ブーム31,ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32,ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33,アーム33を駆動するためのアームシリンダ34,アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35およびバケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されたショベル機構30が搭載されている。
【0034】
さらに、旋回体20の旋回フレーム21上には、走行油圧モータ13,14(
図1には不図示),旋回油圧モータ27,ブームシリンダ32,アームシリンダ34,バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための図示しない油圧ポンプ41、および、各アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42を含む油圧システム40が搭載されている。油圧ポンプ41は、エンジン22によって駆動される。
【0035】
図2に、実施例1に係る油圧ショベルの主要電動・油圧機器のシステム構成図を示す。
図2に示すように、エンジン22の駆動力は油圧ポンプ41に伝達される。また、コントロールバルブ42は、油圧ポンプ41から吐出された作動油が油圧配管43によって供給されて図示されない旋回操作レバーからの指令(操作方向,操作量)に応じて、旋回油圧モータ27,ブームシリンダ32,アームシリンダ34,バケットシリンダ36及び走行油圧モータ13,14への作動油の吐出量及び吐出方向の制御を行う。
【0036】
キャパシタ24はチョッパ51に接続され、キャパシタ24の直流電力はチョッパ51を介して所定の母線電圧に昇圧される。所定の値に昇圧された電圧は、旋回電動モータ25を制駆動するための旋回電動モータ用インバータ52およびアシスト発電モータ23を制駆動するためのアシスト発電モータ用インバータ53に入力される。アシスト発電モータ用インバータ53は平滑コンデンサ54を介してチョッパ51と接続されており、平滑コンデンサ54は母線電圧を安定化させるために設けられている。
【0037】
旋回油圧モータ27の作動油の出入口ポートには、それぞれAポート側リリーフ弁28およびBポート側リリーフ弁29が設けられている。
図3に示すように、旋回油圧モータ27は作動油の入口と出口になる2つのポートを持っており、本明細書では、左旋回する際に作動油の入口となるポートをAポート、出口となるポートをBポートとし、右旋回する際に作動油の入口となるポートをBポート、出口となるポートをAポートと定義する。
このAポート側リリーフ弁28およびBポート側リリーフ弁29は、電磁式可変リリーフ弁からなり、旋回油圧モータ27のAポート圧力,Bポート圧力をそれぞれ制御するものである。
【0038】
なお、図示していないが、Aポート圧力,Bポート圧力をそれぞれ検出する圧力センサが設けられている。
【0039】
コントローラ80は、図示されない旋回操作レバー操作量,旋回油圧モータ圧力,旋回油圧モータ回転数等を用いて、油圧ポンプ41,Aポート側リリーフ弁28およびBポート側リリーフ弁29の制御を行う。さらに、パワーコントロールユニット55の制御も行う。電気・油圧信号変換デバイス75は、コントローラ80からの電気信号を油圧パイロット信号へ変換するものであり、例えば電磁比例バルブに相当する。
【0040】
図3に、実施例1に係る油圧ショベルの油圧システムの詳細を示す。
【0041】
旋回操作レバー72は、図示されない圧力源からの圧力を操作量に応じて減圧する減圧弁機能を持ち、旋回操作レバー72の操作量に応じた操作圧力をコントロールバルブ42の内部に備えられる旋回スプール44の左右いずれかの圧力室に与える。旋回スプール44は、圧力室に作用する操作圧力に応じて切換量(スプールストローク)が制御されて油圧ポンプ41から旋回油圧モータ27へ供給される作動油の流量を制御するものであり、旋回操作レバー72からの操作圧力により、旋回スプール44は中立位置OからA位置又はB位置に連続的に切り換わる。
【0042】
例えば、旋回操作レバー72が中立状態である場合には、旋回スプール44が中立位置Oにある時は、油圧ポンプ41から吐出された作動油は、ブリードオフ絞りを通ってタンクへ戻る。
【0043】
一方、例えば、旋回操作レバー72が左旋回を行うように操作された場合には、旋回スプール44がA位置に切り換わってブリードオフ絞りの開口面積が減少し、メータイン絞り、メータアウト絞りの開口面積が増加する。油圧ポンプ41から吐出された作動油はこのA位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27のAポートに送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はA位置のメータアウト絞りを通ってタンクへ戻る。このような作動油の制御を行うことで、旋回油圧モータ27は左に回転する。
【0044】
また、例えば、旋回操作レバー72が右旋回を行うように操作された場合には、旋回スプール44がB位置に切り換わってブリードオフ絞りの開口面積が減少し、メータイン絞り、メータアウト絞りの開口面積が増加する。油圧ポンプ41から吐出された作動油はB位置のメータイン絞りを通って旋回油圧モータ27のBポートに送られ、旋回油圧モータ27からの戻り油はB位置のメータアウト絞りを通ってタンクへ戻る。このような作動油の制御を行うことで、旋回油圧モータ27はA位置の場合とは逆方向の右に回転する。
【0045】
なお、旋回スプール44が中立位置OとA位置の中間に位置している時は、油圧ポンプ41が吐出した作動油はブリードオフ絞りとメータイン絞りに分配される。中立位置OとB位置の中間の場合も同様である。
【0046】
Aポート側リリーフ弁28は、旋回油圧モータ27のAポートと旋回スプール44の間に備えられている。また、Bポート側リリーフ弁29は、旋回油圧モータ27のBポートと旋回スプール44の間に備えられている。これらのAポート側リリーフ弁28およびBポート側リリーフ弁29は、
図3には図示しないコントローラ80からの指令に従って、各ポート側のリリーフ圧を変更可能な構成となっている。
【0047】
リリーフ弁28,29は、電磁式可変リリーフ弁としたが、
図6に示す構成にして、使用するリリーフ弁を、高圧側28a,29aと低圧側28b,29bに、切換弁28c,29cで切り換える方式にしても良い。
【0048】
図4に、本実施例における旋回スプール44のスプールストロークに対するブリードオフ開口面積を示したブリードオフ開口面積線図を破線で示す。ここで、スプールストロークは旋回レバー操作量によってのみ変化するので、旋回レバー操作量と考えても良い。また、例えば旋回油圧モータ単独で旋回体を駆動する従来の建設機械において、良好な操作性を確保できる旋回油圧モータの開口面積を実線で示す。本実施例における旋回スプール44のブリードオフ開口面積の大きさは、始点と終点、つまり旋回操作レバー72が中立状態および最大状態においては、実線で示された開口面積とほぼ同じとし、中間域では従来機よりも広くなるように設定されている。
【0049】
ここで、旋回スプール44のブリードオフ絞りの開口面積が広くなると、旋回油圧モータ27で得られる駆動トルクは小さくなる。よって、本実施例のような開口面積特性を有する場合には、旋回操作レバーが中間域での旋回油圧モータ27の駆動トルクは、実線で示した開口面積を有する旋回スプールにおいて生じる駆動トルクと比較すると小さくなるように設定される。一方、旋回操作レバーが中立状態および最大状態においては、開口面積は実線で示した開口面積とほぼ同じになるように設定されているため、旋回油圧モータの駆動トルクはほぼ同じ大きさとなる。
【0050】
また
図5に、本実施例における旋回スプール44のスプールストロークに対するメータアウト開口面積を示したメータアウト開口面積線図を示す。
図4と同様に、スプールストロークは旋回レバー操作量によってのみ変化するので、旋回レバー操作量と考えても良い。また、例えば旋回油圧モータ単独で旋回体を駆動する建設機械において、良好な操作性を確保できる旋回油圧モータの開口面積を実線で示す。本実施例における旋回スプール44のメータアウト開口面積の大きさは、始点と終点は、実線で示された開口面積とほぼ同じ面積で、中間域では本発明の方が実線で示された開口面積よりも広くなるように設定されている。上述と同様に、制動トルクの大きさはメータアウト絞りの開口面積の大きさに依存するので、旋回レバー操作量が中間域での旋回油圧モータ27の制動トルクは、従来機の旋回油圧モータの制動トルクよりも小さくなる。また、旋回レバー操作量が中立および最大状態においては、実線の開口面積とほぼ同じにしているので、旋回油圧モータ27の制動トルクの大きさとほぼ同じになるように設定される。
【0051】
以上のように、旋回操作レバーの操作量に対して決定される旋回スプール44のブリードオフ開口面積やメータアウト開口面積に応じて、それぞれ旋回油圧モータの制動および駆動トルクの大きさが決定される。
【0052】
図7は、Aポート側リリーフ弁28の制御方法をフロー図にて示したものである。なお、
図7の制御はコントローラ80の1制御周期毎に行われる。
【0053】
油圧ショベルのシステムを起動する。起動の際は、Aポートのリリーフ圧は通常所定の値に設定されている。まず、ステップS1でAポートのリリーフ圧が通常の所定値であるか否かを判断する。通常の所定値である場合は、ステップS2に進み、現在の旋回油圧モータ27のAポート圧力と、あらかじめ設定した閾値P1とを比較する。Aポート圧力が閾値P1よりも小さい場合には、ステップS3に進み、モータ回転数が、あらかじめ設定した正値である閾値N1の−1倍よりも小さい、又は、左旋回操作レバーの操作量(以下左旋回操作量と称する)が、あらかじめ設定した閾値L1よりも大きいかを判断する。モータ回転数が、あらかじめ設定した正値である閾値N1の−1倍よりも小さい、又は、左旋回操作量が、あらかじめ設定した閾値L1よりも大きいと判断される場合には、ステップS4にてAポートのリリーフ圧を下げる処理を行う。一方、ステップS3にてモータ回転数が、あらかじめ設定した正値である閾値N1の−1倍よりも小さい、又は、左旋回操作量が、あらかじめ設定した閾値L1よりも大きいと判断されない場合には、ステップS1に戻り再度Aポートのリリーフ圧が通常の所定値かを判断する。
【0054】
また、ステップS2にてAポート圧力が閾値P1よりも大きいと判断される場合には、ステップS1に戻り再度Aポートのリリーフ圧が通常の所定値であるかの判断が行われる。
【0055】
ここで、モータ回転数は左旋回を正、右旋回を負と定義し、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転数は同じとする。また、閾値P1は、リリーフ圧を下げた時のリリーフ圧以下の値に設定し、閾値N1および閾値L1は0近傍の値とする。なお、モータ回転数が−N1よりも小さい時は、Aポートは旋回油圧モータ27のメータアウト側になっており、左旋回操作量がL1よりも大きい時は、Aポートは旋回油圧モータ27のメータイン側になっている。
【0056】
ステップS1でAポートのリリーフ圧が通常の所定値でないと判断されると、ステップS5でモータ回転数があらかじめ設定した正値である閾値N2の−1倍よりも大きい、かつ、左旋回操作量があらかじめ設定した閾値L2よりも小さいかを判断する。上記条件を満たすと判断された場合には、ステップS6に進みAポートのリリーフ圧を通常値に戻す。上記条件を満たさない場合には、ステップS1に戻り再度Aポートのリリーフ圧が通常の所定値かを判断する。ここで、N2および閾値L2は0近傍の値とする。閾値N1はN2以上、閾値L1はL2以上の値に設定する。
【0057】
ここで、ステップS2の条件は省略しても良い。つまり、
図7のAポート圧力の判定は、常に「yes」としても良い。また、ステップS3とステップS5はモータ回転数の条件のみにして、左旋回操作量の条件を用いない、すなわち、メータイン側のリリーフ圧の変更を行わないようにしても良い。この場合、後述する制御方法では、旋回電動モータ25の駆動トルクが大きくなりにくくなり、放電しにくくなる。また、ステップS3とステップS5は左旋回操作量の条件のみにして、モータ回転数の条件を用いない、すなわち、メータアウト側のリリーフ圧の変更を行わないようにしても良い。この場合、後述する制御方法では、旋回電動モータ25の制動トルクが大きくなりにくくなり、充電しにくくなる。
【0058】
また、ステップS3でモータ回転数の条件を満たした時と、左旋回操作量の条件を満たした時で、リリーフ圧の下げ方を変える、すなわち、メータアウト側とメータイン側でリリーフ圧の下げ方を変えても良い。例えば、メータアウト側のリリーフ圧の下げ方をメータイン側よりも大きくすれば、後述する制御方法では、旋回電動モータ25の制動トルクが駆動トルクよりも大きくなりやすくなり、充電しやすくなる。
【0059】
図8は、Bポート側リリーフ弁29の制御方法をフロー図にて示したものである。旋回方向が左右で逆であること、それに伴いモータ回転数の正負が逆ということ以外は、
図7と同じ制御方法である。
【0060】
以上のような
図7,
図8のような制御フローに基づいて、AポートおよびBポートのリリーフ圧を下げることで、旋回油圧モータの制駆動トルクを小さくすることができる。
【0061】
なお、本実施例では、旋回スプールの開口面積を設定すること、およびリリーフ圧制御を行うことによって、旋回油圧モータトルクを減少させるようにしたが、いずれか一方の構成をとることによって旋回油圧モータトルクを減少させるような構成をとってもよい。
【0062】
以下、旋回電動モータの制御方法を説明する。
図9は、旋回電動モータ25の制御方法をフロー図にて示したものである。なお、
図9の制御はコントローラ80の1制御周期毎に行われる。
【0063】
初めに、ステップS10で不図示の圧力センサによって検出された旋回油圧モータ27のAポート圧力とBポート圧力の差から、油圧モータトルクを計算する。次に、ステップS11でその油圧モータトルクによって、旋回油圧モータ27が駆動トルク又は制動トルクを発生しているかを判定する。例えば、Aポート圧力がBポート圧力よりも大きく、かつ、モータ回転方向が左旋回方向であれば、駆動トルクを発生していると判定される。このような判定を行い、旋回油圧モータ27が駆動トルクを発生していると判定される場合は、ステップS12で駆動ゲインテーブルを用いて、旋回電動モータトルク指令値T1を算出する。ここで用いる駆動ゲインテーブルは、例えば、
図10に示すような旋回レバー操作量に応じて決定される駆動ゲインからなり、この駆動ゲインは、
図4に示した旋回スプール44のブリードオフ開口面積の特性に基づいて決定されるものである。
図4に示したブリードオフ開口面積は、旋回操作レバー72が中間域にある場合には、油圧モータ単独で旋回の駆動を行う場合に用いられるような旋回油圧モータの駆動トルクと比較して、旋回油圧モータの駆動トルクが小さくなるように設定しており、駆動ゲインは、
図10に示すように旋回操作レバー72が中間域にある場合において、駆動ゲインが最大となるように設定される。前述のステップS12では、この駆動ゲインテーブルを用いて決定される駆動ゲインに前述の油圧モータトルクを乗じた値を電動モータトルク指令値T1として得るものである。
【0064】
一方、ステップS11が否定され、旋回油圧モータ27が制動トルクを発生していると判定された場合には、ステップS13で制動ゲインテーブルを用いて、旋回電動モータトルク指令値T1を算出する。ここで用いる制動ゲインテーブルは、例えば、
図11に示すような旋回レバー操作量に応じて決定される制動ゲインからなり、この制動ゲインテーブルは、
図5に示した旋回スプール44のメータアウト開口面積線図の特性に基づいて決定されるものである。
図5に示したメータアウト開口面積は、旋回操作レバー72が中間域において、油圧モータ単独で旋回の駆動を行う場合に用いられるような旋回油圧モータの制動トルクと比較して、旋回油圧モータの制動トルクが小さくなるように設定しており、制動ゲインは、
図11に示すように旋回操作レバー72の中間域にある場合において制動ゲインが最大になるように設定しており、この制動ゲインテーブルから決定される制動ゲインに旋回油圧モータトルクを乗じた値を電動モータトルク指令値T1とする。
【0065】
以上のように、旋回電動モータトルク指令値T1は、旋回操作量および油圧モータトルクを考慮した指令値である。この旋回電動モータトルク指令値T1に基づいて旋回電動モータを制駆動することで、建設機械のフロントの姿勢や積荷、旋回レバー操作量等に起因する旋回油圧モータトルクの変化により、所望の旋回電動モータトルクが得られない状況を回避することができる。よって、旋回油圧モータおよび旋回電動モータによって制駆動する複合旋回モードにおいて、旋回操作レバーの操作量に応じたトルクを得られることができ、オペレータは旋回操作レバーの操作に応じて旋回体を所望の加減速度で操作することができ、良好な操作性を得ることができる。
【0066】
なお、本発明においては、制動時に回収したエネルギのみを用いて駆動することが電気機器の効率の向上に繋がるため、駆動エネルギよりも制動エネルギのほうを大きくする設計にすることが好ましい。よって、上述の駆動ゲインテーブルおよび制動ゲインテーブルは、同じ旋回操作レバーの操作量に対して制動ゲインのほうが大きくなるように設定されることが好ましい。
【0067】
次にステップS14で、
図7の制御によってAポートのリリーフ圧が下がっており、かつ、Aポート圧力が予め設定した閾値P2よりも高いか否かを判定する。この条件を満たす場合には、ステップS15にて、Aポートのリリーフ圧を下げることによる旋回油圧モータのトルク減少分を旋回電動モータで発生させるような値TRを電動モータトルク指令値T2と設定する。(トルク指令値T2=TR)
【0068】
一方、ステップS14で上記条件Aポートリリーフ圧が下がっており、かつ、Aポート圧力が閾値P2よりも高いか否かの判定において、条件を満たさないと判断される場合には、ステップS16で
図8の制御によってBポートのリリーフ圧が下がっており、かつ、Bポート圧力があらかじめ設定した閾値P2よりも高いかを判定する。これらの条件を満たす場合には、前述と同様に、Bポートのリリーフ圧を下げることによる旋回油圧モータのトルク減少分を旋回電動モータで発生させるような値TRを電動モータトルク指令値をT2と設定する。(トルク指令値T2=TR)ここでトルク指令値T2=TRは、Aポートリリーフ弁28やBポートリリーフ弁29の制御において、旋回油圧モータの通常所定のリリーフ圧から下げられることによって小さくなる旋回油圧モータのトルクを補うようなトルク指令値となっている。例えば、リリーフ圧の下げ幅および油圧モータの容積に基づいて算出される値である。
【0069】
一方、Bポートのリリーフ圧が下がっており、かつ、Bポート圧力があらかじめ設定した閾値P2よりも高いかを判定し、条件を満たさないと判断された場合には、ステップS17で電動モータトルク指令値T2=0とする。
【0070】
ここで、閾値P2は、通常よりも小さく設定したリリーフ圧の値よりも若干、例えば数MPa小さい値とし、ポートのリリーフ圧が下がっている時、任意の時点でのポート圧力とP2とを比較することでその時点でリリーフをしているかを判断することができる。
【0071】
次にステップS18にて、以上のように求めた旋回電動トルク指令値のT1とT2の大きさを比較し、大きいほうの電動モータトルク指令値を、旋回電動モータ25のトルク指令値として選択する。そしてこのトルク指令値を用いてパワーコントロールユニット55を制御して旋回油圧モータトルクの減少分のトルクを、旋回電動モータによってを発生させる。これにより旋回操作レバーの操作量に応じたトルクを、旋回油圧モータ27と旋回電動モータ25の合計トルクによって得ることができる。よって、オペレータは、旋回操作レバーの操作量に応じた所望のトルクを旋回体に対して得られることができ、良好な操作性を得ることができる。
【0072】
また本実施例は、前述したように旋回操作レバーの位置が中立状態および最大状態で、旋回体を旋回油圧モータ単独で制駆動する油圧単独モードと、旋回操作レバーの位置が中間域で、旋回油圧モータ及び旋回電動モータの合計トルクによって制駆動する複合旋回モードとを有するものである。そして、それぞれの運転モードを旋回レバー操作量に応じて切り換える構成を有する。そのため、複合旋回モードにおいて旋回レバー操作量に応じた所望の合計トルクが得られない場合には、各モードによって、旋回操作レバーの操作量に応じて生じる旋回体の加減速度が異なる事が生じ得る。この加減速度の違いにより、オペレータは操作上の違和感を感じることになる。そこで、本実施例において算出した旋回電動トルク指令値に基づいて旋回電動モータを制駆動することで、旋回操作レバーの操作量に応じた旋回油圧モータおよび旋回電動モータの合計トルクを得ることができる。よって、各運転モードにおける旋回体の加減速の違い、およびそのことによるオペレータの違和感を緩和することができ、良好な操作性を実現することが可能となる。
【0073】
また、本実施例のように旋回電動モータのトルク指令値を算出し、旋回電動モータを制駆動することによって、油圧モータ単独で制駆動する、例えば油圧ショベル等の建設機械の操作に慣れたオペレータも、旋回体の加減速度の違いによる違和感を感じることなく旋回操作レバーの操作量に応じた操作をすることができる。
【0074】
なお、上記旋回電動モータのトルク指令値算出において、ステップS18にてトルク指令値T1とT2の大きい方を選択した後、ステップS19にて旋回機構26に過度の負荷をかけないように、トルク指令値に、旋回油圧モータ27と旋回電動モータ25の合計トルクが、従来機の油圧モータのトルクを超えないようにする制限をかけても良い。また、旋回電動モータ25のトルクが急変することで、オペレータに違和感を覚えさせないように、トルク指令値の変化率に制限をかけても良い。また、旋回電動モータ25で駆動トルクを発生した際は、その仕事率の分だけ、油圧ポンプ41の仕事率を減らすように、油圧ポンプ41の容積を減少させる制御を行うことによって、エンジンの負荷を減らすことができる。