【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂被覆アルミニウム板は、純アルミニウム又はアルミニウム合金表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜が形成され、この無孔質陽極酸化皮膜の上に
、0.5〜10mg/m2の塗布量のシランカップリング剤を介してウレタン変性エポキシ系樹脂からなる樹脂膜が被覆されてなり、前記無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は30〜200nmであり、前記樹脂膜の膜厚は3〜20μmであり、前記
ウレタン変性エポキシ樹脂の変性率が50%以下であることを特徴とする。
【0009】
以下に、その構成及び条件の限定理由について説明する。
[純アルミニウム又はアルミニウム合金]
本発明では、基材として純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。純アルミニウム基材としては純度99.0%以上の純アルミニウムを用いることができる。また、アルミニウム合金基材としては、種々のアルミニウム合金を用いることができ、本発明としては特にその組成が限定されるものではない。好適には、1000系、3000系(Al−Mn系)合金、5000系(Al−Mg系)合金などを挙げることができる。以下では、純アルミニウム又はアルミニウム合金を単にアルミニウムと表記する。
【0010】
[無孔質陽極酸化皮膜(有孔率5%以下)]
樹脂を被覆する下地として無孔質陽極酸化皮膜がアルミニウム表面に設けられている。
ここで、無孔質陽極酸化皮膜とは、皮膜が均一に形成された部位の断面観察において、皮膜表面からアルミニウム素地に向けて、規則的に形成される孔(通常開口部は1〜10nmで皮膜厚さに対して60%以上の深さを有する)が5%(表面から見た孔の総面積の比率)以下(孔が存在しないものも含まれる)の無孔質な皮膜である。有孔率がゼロ%の無孔質な皮膜は、有孔率が数%の皮膜に対して、格段に耐食性に優れるのでより好ましい。
なお、無孔質陽極酸化皮膜が薄いと、均一な皮膜形成が難しく、樹脂との密着性が低下する。そのため、膜厚は30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。一方、膜厚が厚いと、深絞り加工時に陽極酸化皮膜のクラックが発生し、樹脂との密着性が低下する。そのため、膜厚は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
【0011】
[樹脂膜]
樹脂膜は、高温高湿下での耐久性・耐熱性向上、電子部品表面の絶縁性確保等のために設けられ、この樹脂膜自体の伸びを改善し、可塑性をさらに向上させて、密着性、耐肌荒れ性を良くするために、変性エポキシ樹脂が用いられる。変性の内容としては、例えば、脂肪族変性(ジカルボン酸、モノカルボン酸、アルキルフェノールなどによる)
も挙げられるが、ウレタン変性
が好ましい。変性率が高くなり過ぎると、耐熱性や耐溶剤性が劣化するおそれがあるので、50%以下とするのが好ましい。20〜40%の変性率とするのがより好ましい。
形成する変性エポキシ樹脂の厚さは、性能を確保するため適切な厚さが望ましい。厚さが薄いと、ケース加工時に樹脂に割れが生じやすく、性能が劣る。このため3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。一方、変性エポキシ樹脂が厚過ぎると経済的に不合理である。このため20μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
【0012】
[シランカップリング剤]
本発明の樹脂被覆アルミニウム板において、前記樹脂膜は前記無孔質陽極酸化皮膜の上に0.5〜10mg/m
2の塗布量のシランカップリング剤を介して設けられているとよい。
無孔質陽極酸化皮膜にシランカップリング剤を塗布してエポキシ樹脂を被覆することでエポキシ樹脂でも無孔質陽極酸化皮膜に対して高い密着性が得られ、絞り比の高いケース成形が可能となる。
シランカップリング剤にはアミノ系、エポキシ系、アクリル系等を用いることができ、本発明としては特定のものに限定されるものではない。
シランカップリング剤の塗布量は、その機能を良好にするため適量が望ましい。少ないと密着性向上の効果は認められない。0.5mg/m
2以上が好ましく、1mg/m
2がより好ましい。一方、シランカップリング剤をあまりに多く塗布すると、シランカップリング剤自体の凝集力が低下する場合があり、塗膜が剥離しやすくなる。このため、10mg/m
2以下が好ましく、5mg/m
2以下がより好ましい。
【0013】
本発明の製造方法は、前記樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記変性エポキシ樹脂の焼き付け材料温度を200〜280℃とすることを特徴とする。
もう少し詳しく述べると、アルミニウム基板上に液体樹脂塗料を塗布、又はフィルムを貼付した後に、高温短時間の加熱、いわゆる焼き付け処理を行うことにより、基板表面を被覆するものである。
変性エポキシ樹脂は、焼き付け時に脱水反応により硬化して密着する。焼き付け材料温度が200℃未満では耐水性が十分でなく、加水分解により密着性が低下するおそれがあり、280℃を超えると、塗膜の変色、劣化が生じるおそれがあるので好ましくない。脱水反応を促進させるために通常よりも高温とするとよく、240〜260℃の焼き付け温度とするのがより好ましい。
【0014】
また、本発明の製造方法は、前記樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記変性エポキシ樹脂を焼き付け冷却した後、180〜240℃の温度に0.5時間以上再加熱することを特徴とする。
変性エポキシ樹脂の焼き付け材料温度を高くする代わりに、再加熱して脱水反応を促進させるのである。焼き付け材料温度を高くできない変性種の場合等に特に効果的である。再加熱温度が180℃未満、あるいは時間が0.5時間未満では脱水が十分でなく、密着性が低下するおそれがあり、240℃を超えると、塗膜の変色、劣化が生じるおそれがあるので好ましくない。再加熱条件としては、200〜220℃で1時間以上がより好ましい。この再加熱する場合は、樹脂の焼き付け材料温度は例えば230℃未満であってもよい。なお、加熱時間の上限としては2時間も行えば十分である。