特許第5667850号(P5667850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱アルミニウム株式会社の特許一覧

特許5667850樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667850
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/092 20060101AFI20150122BHJP
   C25D 11/18 20060101ALI20150122BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   B32B15/092
   C25D11/18 306Z
   C23C28/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-262311(P2010-262311)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2012-111137(P2012-111137A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 一広
(72)【発明者】
【氏名】山口 恵太郎
【審査官】 河原 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−047177(JP,A)
【文献】 特開平05−309331(JP,A)
【文献】 特開平04−244267(JP,A)
【文献】 特開昭54−094585(JP,A)
【文献】 特開2010−125722(JP,A)
【文献】 特開平05−064770(JP,A)
【文献】 特開2004−330699(JP,A)
【文献】 特開2008−207423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
B29C 49/00− 49/46
49/58− 49/68
49/72− 51/28
51/42、 51/46
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
C09J 1/00− 5/10
9/00−201/10
C23C 24/00− 30/00
C25D 11/00− 11/38
H01G 9/00− 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純アルミニウム又はアルミニウム合金表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜が形成され、この無孔質陽極酸化皮膜の上に、0.5〜10mg/mの塗布量のシランカップリング剤を介してウレタン変性エポキシ系樹脂からなる樹脂膜が被覆されてなり、前記無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は30〜200nmであり、前記樹脂膜の膜厚は3〜20μmであり、前記ウレタン変性エポキシ樹脂の変性率が50%以下であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記ウレタン変性エポキシ樹脂の焼き付け材料温度を200〜280℃とすることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
【請求項3】
請求項記載の樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記ウレタン変性エポキシ樹脂を焼き付け冷却した後、180〜240℃の温度に0.5時間以上再加熱することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサケース、各種センサーキャップ材などの深絞り加工に用いて好適な樹脂被覆アルミニウム板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサケース、各種センサーキャップ材などの外装材には加工性に優れるアルミニウム板が用いられ、その表面には、絶縁性、耐食性、印字性等の性能確保を目的に、エポキシなどの樹脂被覆が施される。加工後に塗装またはラミネートされる場合もあるが、生産性向上のため、加工前に塗装(プレコート)したものが主流になりつつある。
このような樹脂被覆アルミニウム板として、例えば特許文献1〜特許文献3に記載のものがある。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、化成皮膜による下地皮膜が形成されたアルミニウム板に樹脂層が形成されたものが記載されている。化成皮膜としては、通常のクロメート処理等が挙げられ、樹脂としては、エポキシ系の樹脂が用いられている。
特許文献1では、樹脂の数平均分子量が5000〜30000であり、潤滑剤を樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部含有し、この樹脂層の引張強度が40N/mm2以上、伸びが2%以上、厚さが3〜30μmであり、樹脂被覆アルミニウム板を圧下率40%まで圧延した場合の碁盤目試験での碁盤目残存率が60%以上であることが記載されている。
【0004】
特許文献2では、樹脂塗膜として、(a)数平均分子量30000〜80000、塗膜のFT−IR分析において830cm-1の吸光度h1、750cm-1の吸光度h2の比h2/h1が0.1〜10のエポキシ樹脂、(b)数平均分子量7000〜30000、ガラス転移温度が−20℃以上のポリエステル樹脂、(c)アミノ樹脂、(d)イソシアネート樹脂を含有する混合物の硬化物であり、(a)〜(d)の合計含有量を100質量部とすると、(a)70〜98質量部、(b)0〜20質量部、(c)0〜20質量部、(d)2〜20質量部を含有することが記載されている。
【0005】
これら特許文献記載のものに対して、本出願人は、純アルミニウム又はアルミニウム合金表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜を形成し、その上層に数平均分子量が2,000〜100,000であるエポキシ系樹脂をシランカップリング剤を介して被覆することにより、エポキシ系樹脂の密着力を高めたものを提案した(特許文献3)。この場合、無孔質陽極酸化皮膜の膜厚が30〜200nm、シランカップリング剤の無孔質陽極酸化皮膜上への塗布量が0.5〜10mg/m、エポキシ系樹脂の数平均分子量が5,000〜80,000でその被覆の厚さが2〜20μmであるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−334917号公報
【特許文献2】特開2010−111111号公報
【特許文献3】特開2010−125722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に記載の樹脂被覆アルミニウム板により、樹脂の密着力が向上したが、本発明は、樹脂の伸びを改善して可塑性を向上させ、さらに高い加工度であっても樹脂膜の剥離、肌荒れの発生を有効に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂被覆アルミニウム板は、純アルミニウム又はアルミニウム合金表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜が形成され、この無孔質陽極酸化皮膜の上に、0.5〜10mg/mの塗布量のシランカップリング剤を介してウレタン変性エポキシ系樹脂からなる樹脂膜が被覆されてなり、前記無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は30〜200nmであり、前記樹脂膜の膜厚は3〜20μmであり、前記ウレタン変性エポキシ樹脂の変性率が50%以下であることを特徴とする。
【0009】
以下に、その構成及び条件の限定理由について説明する。
[純アルミニウム又はアルミニウム合金]
本発明では、基材として純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。純アルミニウム基材としては純度99.0%以上の純アルミニウムを用いることができる。また、アルミニウム合金基材としては、種々のアルミニウム合金を用いることができ、本発明としては特にその組成が限定されるものではない。好適には、1000系、3000系(Al−Mn系)合金、5000系(Al−Mg系)合金などを挙げることができる。以下では、純アルミニウム又はアルミニウム合金を単にアルミニウムと表記する。
【0010】
[無孔質陽極酸化皮膜(有孔率5%以下)]
樹脂を被覆する下地として無孔質陽極酸化皮膜がアルミニウム表面に設けられている。
ここで、無孔質陽極酸化皮膜とは、皮膜が均一に形成された部位の断面観察において、皮膜表面からアルミニウム素地に向けて、規則的に形成される孔(通常開口部は1〜10nmで皮膜厚さに対して60%以上の深さを有する)が5%(表面から見た孔の総面積の比率)以下(孔が存在しないものも含まれる)の無孔質な皮膜である。有孔率がゼロ%の無孔質な皮膜は、有孔率が数%の皮膜に対して、格段に耐食性に優れるのでより好ましい。
なお、無孔質陽極酸化皮膜が薄いと、均一な皮膜形成が難しく、樹脂との密着性が低下する。そのため、膜厚は30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。一方、膜厚が厚いと、深絞り加工時に陽極酸化皮膜のクラックが発生し、樹脂との密着性が低下する。そのため、膜厚は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
【0011】
[樹脂膜]
樹脂膜は、高温高湿下での耐久性・耐熱性向上、電子部品表面の絶縁性確保等のために設けられ、この樹脂膜自体の伸びを改善し、可塑性をさらに向上させて、密着性、耐肌荒れ性を良くするために、変性エポキシ樹脂が用いられる。変性の内容としては、例えば、脂肪族変性(ジカルボン酸、モノカルボン酸、アルキルフェノールなどによる)も挙げられるが、ウレタン変性が好ましい。変性率が高くなり過ぎると、耐熱性や耐溶剤性が劣化するおそれがあるので、50%以下とするのが好ましい。20〜40%の変性率とするのがより好ましい。
形成する変性エポキシ樹脂の厚さは、性能を確保するため適切な厚さが望ましい。厚さが薄いと、ケース加工時に樹脂に割れが生じやすく、性能が劣る。このため3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。一方、変性エポキシ樹脂が厚過ぎると経済的に不合理である。このため20μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
【0012】
[シランカップリング剤]
本発明の樹脂被覆アルミニウム板において、前記樹脂膜は前記無孔質陽極酸化皮膜の上に0.5〜10mg/mの塗布量のシランカップリング剤を介して設けられているとよい。
無孔質陽極酸化皮膜にシランカップリング剤を塗布してエポキシ樹脂を被覆することでエポキシ樹脂でも無孔質陽極酸化皮膜に対して高い密着性が得られ、絞り比の高いケース成形が可能となる。
シランカップリング剤にはアミノ系、エポキシ系、アクリル系等を用いることができ、本発明としては特定のものに限定されるものではない。
シランカップリング剤の塗布量は、その機能を良好にするため適量が望ましい。少ないと密着性向上の効果は認められない。0.5mg/m以上が好ましく、1mg/mがより好ましい。一方、シランカップリング剤をあまりに多く塗布すると、シランカップリング剤自体の凝集力が低下する場合があり、塗膜が剥離しやすくなる。このため、10mg/m以下が好ましく、5mg/m以下がより好ましい。
【0013】
本発明の製造方法は、前記樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記変性エポキシ樹脂の焼き付け材料温度を200〜280℃とすることを特徴とする。
もう少し詳しく述べると、アルミニウム基板上に液体樹脂塗料を塗布、又はフィルムを貼付した後に、高温短時間の加熱、いわゆる焼き付け処理を行うことにより、基板表面を被覆するものである。
変性エポキシ樹脂は、焼き付け時に脱水反応により硬化して密着する。焼き付け材料温度が200℃未満では耐水性が十分でなく、加水分解により密着性が低下するおそれがあり、280℃を超えると、塗膜の変色、劣化が生じるおそれがあるので好ましくない。脱水反応を促進させるために通常よりも高温とするとよく、240〜260℃の焼き付け温度とするのがより好ましい。
【0014】
また、本発明の製造方法は、前記樹脂被覆アルミニウム板の製造方法であって、前記変性エポキシ樹脂を焼き付け冷却した後、180〜240℃の温度に0.5時間以上再加熱することを特徴とする。
変性エポキシ樹脂の焼き付け材料温度を高くする代わりに、再加熱して脱水反応を促進させるのである。焼き付け材料温度を高くできない変性種の場合等に特に効果的である。再加熱温度が180℃未満、あるいは時間が0.5時間未満では脱水が十分でなく、密着性が低下するおそれがあり、240℃を超えると、塗膜の変色、劣化が生じるおそれがあるので好ましくない。再加熱条件としては、200〜220℃で1時間以上がより好ましい。この再加熱する場合は、樹脂の焼き付け材料温度は例えば230℃未満であってもよい。なお、加熱時間の上限としては2時間も行えば十分である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無孔質陽極酸化皮膜に変性エポキシ樹脂を被覆したので、変色や白濁等に対する優れた耐食性を有するとともに、樹脂の伸びが改善されて加工性がさらに向上し、加工度が高くても剥離の発生が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム板の一実施形態を説明する。
この樹脂被覆アルミニウム板は、純アルミニウム又はアルミニウム合金表面に有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜が形成され、この無孔質陽極酸化皮膜の上に変性エポキシ系樹脂からなる樹脂膜がシランカップリング剤を介して被覆されてなり、前記無孔質陽極酸化皮膜の膜厚は30〜200nmであり、前記樹脂膜の膜厚は3〜20μmであり、前記変性エポキシ樹脂の変性率が50%以下である。
【0017】
アルミニウムとして、1000系、3000系(Al−Mn系)合金、5000系(Al−Mg系)合金などを用いる。このアルミニウムに対し、陽極酸化処理を行う。
【0018】
[陽極酸化]
陽極酸化処理に先立って前処理を行う。前処理は特に限定されるものではない。例えば、アルカリ性の脱脂液で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチング、硝酸水溶液でデスマット処理を行う。
陽極酸化処理は、酸化皮膜の溶解力が低い電解液を用いて行い、電圧を調整して好適には厚さ30〜200nmの無孔質陽極酸化皮膜を形成させる。
陽極酸化の電解液は、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウムといったリン酸塩、もしくは珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムといった珪酸塩の水溶液であれば、酸化被膜の溶解力が低く、有孔率5%以下の無孔質陽極酸化皮膜が形成される。
陽極酸化皮膜の膜厚は、好ましくは、30nm以上、より好ましくは50nm以上で、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下とする。
【0019】
[シランカップリング剤]
陽極酸化皮膜表面に、アミノ系、エポキシ系、アクリル系等のシランカップリング剤を塗布することで、樹脂との密着性を向上させる。シランカップリング剤の塗布量は、好ましくは0.5mg/m以上、より好ましくは1mg/m以上とし、好ましくは10mg/m以下、より好ましくは5mg/m以下、とする。
【0020】
[樹脂膜]
シランカップリング剤を塗布したアルミニウム陽極酸化板の表面に、変性エポキシ系樹脂からなる樹脂膜を被覆する。この樹脂膜は、塗料を塗布して加熱乾燥により焼き付けるか、フィルムを加熱溶解して貼り合わせてもよい。塗布方法は、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、などを用いることができる。
変性エポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型などをベースに、例えば、脂肪族変性(ジカルボン酸、モノカルボン酸、アルキルフェノールなどによる)、ウレタン変性などの変性処理がなされたものを用いることができる。
この変性エポキシ樹脂を用いることにより、樹脂膜自体の伸びを改善し、可塑性をさらに向上させて、密着性、耐肌荒れ性を良くする。変性率が高くなり過ぎると、耐熱性や耐溶剤性が劣化するおそれがあるので、50%以下とするのが好ましい。20〜40%の変性率とするのがより好ましい。
この樹脂膜の厚さは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上で、好ましくは20μm以下、より好ましくは8μm以下とする。
【0021】
この変性エポキシ樹脂は、焼き付け時に脱水反応により硬化して密着する。焼き付け材料温度は200〜280℃とするのが好ましく、200℃未満では耐水性が十分でなく、加水分解により密着性が低下するおそれがあり、280℃を超えると、塗膜の変色、劣化が生じるおそれがあるので好ましくない。脱水反応を促進させるために通常よりも高温とするとよく、240〜260℃の焼き付け温度とするのがより好ましい。
【0022】
以上により得られる樹脂被覆アルミニウム板は、絞り加工などの成形加工を経て電解コンデンサケースなどに好適に利用される。但し、本発明の樹脂被覆アルミニウム板としては、利用分野がこれに限定されるものではなく、電化製品、容器、機械部品などの用途にも利用することができる。
【0023】
なお、変性エポキシ樹脂の変性種によっては、焼き付け温度を前述の高温にまで高めることができない場合があるので、その場合は、焼き付け後に再加熱するとよい。再加熱条件としては、180〜240℃の温度で0.5時間以上とされる。温度が180℃未満、あるいは時間が0.5時間未満では脱水が十分でなく、密着性が低下するおそれがあり、240℃を超えると、塗膜の変色、劣化が生じるおそれがあるので好ましくない。200〜220℃で1時間以上がより好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の実施例を説明する。
厚さ0.3mmのJIS1100アルミニウム板を、5%水酸化ナトリウム水溶液で50℃で10秒間エッチングして脱脂処理した後、10秒間水洗した。さらに、10%硝酸溶液に室温で10秒間浸漬して中和した後、10秒間水洗して乾燥した。
次いで、ケイ酸塩水溶液を電解液として、所定の電解電圧で陽極酸化処理を行った。電解時間は、無孔質陽極酸化皮膜が十分形成される時間とした。
陽極酸化処理後、10秒間水洗して乾燥し、さらにシランカップリング剤を表1に示す量で塗布した。比較例として、下地処理をリン酸クロメート処理としたもの、シランカップリング剤を塗布しなかったものも作製した。
【0025】
上記で形成された無孔質陽極酸化皮膜の膜厚を以下の方法で測定した。
すなわち、陽極酸化後の皮膜表面について、任意の20箇所を5万倍の電子顕微鏡で観察し、全面積に対する孔の面積の割合を求めた。膜厚は、皮膜をダイヤモンド刃を備えたスーパーミクロトームで切断し、切断した断面を透過顕微鏡観察して測定した。
得られた陽極酸化皮膜の表面に、表1に示す変性率による変性エポキシ系樹脂塗料を、表1の膜厚になるようにバーコーターで塗布し、焼付けした。変性種はウレタンとした。焼き付け時間は40秒とし、焼き付け温度を表1に示すように変えて焼き付けた。焼き付け後に再加熱(200℃×1時間)を加えたものは再加熱「有」とし、焼き付けた後に再加熱することなく供試材としたものを再加熱「無」とした。
【0026】
得られた供試材について、以下の項目について評価し、その結果を表1に示した。
密着性評価:圧延率60%で冷間圧延した後、碁盤目試験を行ない、残マス数を百分率で表した。残マス数60%以上を合格とした。
耐肌荒れ性:圧延率60%で冷間圧延した後、樹脂膜の表面状態を顕微鏡で観察することにより、3段階評価し、肌荒れが認められなかったものを◎、若干の肌荒れが認められたものの実用上問題ないとされるものを○、微小クラック等による肌荒れが認められたものを×とした。
熱着色性:260℃×10分間で加熱し、加熱後の着色度合いを目視で評価した。着色が全く認められなかったものを◎、若干の着色が認められたが実用上問題ないとされるものを○、着色が認められたものを×とした。
高温高湿耐久性(耐加水分解性の指標となる):オートクレーブにて121℃×24時間後の樹脂の状態を目視で評価した。変化なしが◎、わずかな変化が認められるものの実用上問題なしとされるものを○、劣化したものを×とした。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、本発明の樹脂被覆アルミニウム板では、優れた密着性、耐肌荒れ性、耐熱着色性、高温高湿耐久性を有している。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。