【実施例1】
【0013】
以下に、本発明に係る屋根構造を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は、建屋1の屋根構造2の一例として清掃工場のごみピット建屋の全体図を示している。
図1に示すごみピット建屋1は、ごみ回収用のトラック10で回収されたごみ12を一時的に仮置きするごみピット11が地上から深さ約16mで形成され、ごみピット11の床面から約55mの高さに屋根構造2が構築されている。前記屋根構造2は、
図2に拡大して示すように、同屋根構造2に沿って一例として約4.75mの間隔をあけて設置された鉄骨梁3、3の間を小梁4で接合して屋根架構が形成され、同屋根架構の上面に台形波形状の折版5で葺いた構成である。
前記鉄骨梁3は、
図2に示すようにH型鋼で構成されており、その寸法は一例としてフランジ30a、30bの幅が30cm程度、ウェブ31の成が90cm程度である。前記鉄骨梁3の上フランジ部30aとウェブ31の上方部分には連結部材6を溶接して接合しており、前記隣接する鉄骨梁同士3、3は、前記連結部材6へボルト6a…で接合した小梁4よって接合されている。前記小梁4もH型鋼で構成されており、その寸法は一例としてフランジの幅が12cm程度、ウェブの成が25cmである。
なお、鉄骨梁3の上フランジ30aの上面には、同上面と小梁の上面とが面一となるように調整部材32が設置されている。
【0014】
前記鉄骨梁3の下フランジ30b、30bの間には、
図2〜4に示すように、鋼製のフラットデッキ7が鉄骨梁3の長手方向に沿って複数枚並べて架け渡され、鉄骨梁3の下フランジ30b、30bへ載置された該フラットデッキ7の縁部が、同鉄骨梁3の下フランジ30bの上面へ溶接7aされて強固に固定されている。
前記フラットデッキ7は厚さが1.6mm程度であり、
図3及び
図5に示すように、上面が平坦で上端部に閉じ合わせ部71を持つ長手方向の補強リブ70を下面側に複数条備えている。そして、
図5に示すように、一方の縁部には、フラットデッキ7の上面より一段下がった水平片72が形成されており、他方の縁部には、隣接するフラットデッキ7の閉じ合わせ部71へ差し込む直角折り曲げ部73が形成されている。隣接するフラットデッキ7、7同士は、一方のフラットデッキ7の直角折り曲げ部73が形成された側の端部を、他方のフラットデッキ7の水平片72へ載置させ、閉じ合わせ部71へ前記直角折り曲げ部73を差し込むことにより接合される。
【0015】
上記鉄骨梁3の下フランジ30b、30bの間に設置された複数のフラットデッキ7のうち、鉄骨梁3と直交する鉄骨梁9に隣接するフラットデッキ7は、前記直交する鉄骨梁9の長手方向へ沿う縁部が該鉄骨梁9の下フランジ部の上面へ載置されて溶接等で強固に固定されている(
図4及び
図6を参照)。
また、
図6に示すように、直交する鉄骨梁3、9が交差する位置に柱14がある場合には、前記柱14の側面へ支持部材14aを溶接等により固定し、該支持部材14aの上面へ載置させたフラットデッキ7の縁部を溶接して強固に固定させる。因みに、前記柱14は、一例として約40cm×40cm角程度の角形鋼を用いた構成を示しているが、H型鋼を用いた構成で実施することもできる。また、前記支持部材14aは、柱14が前記寸法で成る場合、柱14の側面から約5cm程度外方へ突き出す構成とする。
なお、
図6に示す実施例の場合は、前記鉄骨梁3に直交する鉄骨梁9の上下フランジ間へガセットプレート9aを溶接して固定し、該ガセットプレート9aへ溶接又はボルト接合により固定された小梁40が設けられており、上記構成のフラットデッキ7は、鉄骨梁3と小梁40の下フランジ間へ架設させる。なお、詳細に図示することは省略したが、この場合の折版屋根葺きは、鉄骨梁3、9の上フランジの上部へ公知の例えばC型鋼による母屋を架設し、タイトフレームを設けて葺いても良い。
【0016】
上記鉄骨梁3の下フランジ30b、30b間に設置されたフラットデッキ7の上面には、その全面にわたり防臭用の気密性シート8が敷設されており、臭気を閉じ込める気密構造とされている。
以下に、フラットデッキ7の上面に気密性シート8を敷設する作業を
図7及び8に基づいて説明する。
前記長尺の気密性シート8は、一例として塩化ビニル製で、厚さ2mm程度、幅1.8m程度であり、ロール状に巻かれた状態で現場に運ばれる。
先ず、上述したように鉄骨梁3、3の下フランジ30b、30b間に設置したフラットデッキ7の上面へ専用接着剤を塗布し、
図7に示すように、その上からロール状の気密性シート8を回転させて、該気密性シートをフラットデッキ7の上面へ貼り付ける。なお、隣接する気密性シート8、8相互の接合縁同士80、80は、
図7に拡大して示すように、15mm〜20mm程度に重ね合わせる。そして、フラットデッキ7の上面に気密性シート8を貼り付け終えたら、同気密性シート8の上面からローラーで満遍なく押圧し、該気密性シート8を前記フラットデッキ7の上面へ圧着させる。
次に、前記専用接着剤が乾き、前記気密性シート8がフラットデッキ7の上面へ完全に貼り付いた後、
図8(a)に示すように、前記気密性シート8、8相互の接合縁部同士80、80の重なった部分を落とし込み用工具81を用いてV字状又はU字状にカットする。カットする深さは気密性シート8の厚みの1/2〜2/3程度とする。
次に、
図8(b)に示すように、前記カットした接合縁部80へ目地溶接棒(図示は省略)を差し込んだノズル84を設置し、溶接機82を手前に引きながら、溶接作業を行う。その後、
図8(c)に示すように、気密性シート8の上面から若干盛り上がった溶接済みの目地溶接棒83へトリムガイド85を当てがい、スパチュラナイフ86等で一度荒削りをした後、
図8(d)に示すように、前記気密性シート8の上面と略面一となるように丁寧に目地仕上げを行う。
【0017】
上記気密性シート8の周縁部は、該気密性シート8の周縁部が周接する部材の立ち上がり面へ気密構造に止着されている。前記部材の立ち上がり面とは、大梁(3又は9)や小梁等40の鉄骨梁のウェブ面、柱14の側面、鉄筋コンクリート壁面や軽量気泡コンクリート壁面等の躯体壁面13をいう。
具体的には、前記気密性シート8の鉄骨梁3の長手方向に沿う縁部は、
図9に示すように、フラットデッキ7の縁部を越えた前記鉄骨梁3の下フランジ部30b又はウェブ31の境界部分に、鉄骨梁3の長手方向へ沿ってシール材87を設け、該シール材87の上から気密性シート8の縁部を貼り付けて、該境界部分の隙間を塞いで気密構造にする。なお、前記シール材87は不定形又は定形の例えばウレタン系、シリコン系、エポキシ系、アクリル系で構成されたものが使用される。
前記気密性シート8の周接する鉄骨梁9の長手方向に沿う縁部も、前記シール材87を用いて周接する鉄骨梁9の下フランジ又はウェブへ止着して気密構造にする。
但し、気密構造としては、前記鉄骨梁3、9のウェブへシール材87を止着した構成がより好ましい。
同様に、
図1に示すように敷設した気密性シート8と躯体壁面13との境界部分や、
図6に示すように敷設した気密性シート8と柱14の側面との境界部分においてもシール材87を使用して該境界部分の隙間を塞ぎ気密構造にする。
【0018】
したがって、本発明に係る屋根構造は、屋根構造2を構成する鉄骨梁3の下フランジ30b、30b間へフラットデッキ7を架設して平坦面を形成し、該平坦なフラットデッキ7の上面へ防臭用の気密性シート8を敷設して臭気を閉じ込める気密構造を実現できるので、該気密性シート8を使用して容易に、且つフラットデッキ7の上に乗って下向きの作業姿勢で迅速に施工することができる。
【0019】
上記屋根架構の上面に設置される鋼製の折版5は、
図2に示すように、断面が台形波形状であり、上辺部が上記小梁4へタイトフレーム用ボルト5aや溶接等で接合されている。前記折版
5を設置するに際し、作業員は鉄骨梁3の下フランジ30b、30b間に設置したフラットデッキ7を足場代用として作業を行うことができる。よって、前記フラットデッキ7が折版5の設置作業に必要な作業足場を提供でき、仮設足場を省略でき、作業員の安全性も確保できるから落下防止用ネットの仮設も省けて、経済的に短工期に施工することができる。
【0020】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、もとより本発明は実施例の構成に限定されるものではない。いわゆる当業者が必要に応じて行うであろう設計変更その他の応用、改変の範囲まで含むことを念のため申し添える。