(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照射野規制部が前記X線発生器の前方で前記X線の一部を通過させる開口を有する開口部からなり、前記照射野規制部が前記開口の前記高さ方向の幅と、前記高さ方向の位置との少なくともいずれかを変化させて前記関心領域にのみ前記細隙X線ビームを照射する構成にしている請求項1から請求項5のいずれかに記載の医療用X線撮影装置。
前記開口部が、前記高さ方向に伸長し前記X線を細隙に規制するスリットを有するスリット部材と前記スリットの前記高さ方向の一端と他端を遮蔽量が可変となるよう規制する遮蔽部材からなり、前記スリット部材と前記遮蔽部材が前記開口を形成することを特徴とする請求項6に記載の医療用X線撮影装置。
前記照射野規制部が、前記部分パノラマX線撮影中に、前記開口部における前記開口の前記高さ方向の幅と、前記高さ方向の位置との少なくともいずれかを変化させて、前記関心領域にのみ前記細隙X線ビームを照射することを特徴とする請求項6、7のいずれかに記載の医療用X線撮影装置。
前記画像処理部が、前記フレーム画像に基づいて、前記断層面をパノラマ断層に沿って複数生成し、生成した複数の断層面の画像データの重ね合わせ処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の医療用X線撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の望ましい実施形態を説明する前に、本発明の医療用X線撮影装置の基本構成、パノラマ撮影の基本原理について説明する。
【0038】
医療用X線撮影装置
図1に本発明の医療用X線撮影装置の概略構成を示す。
【0039】
医療用X線撮影装置Mは、
図1に示したように、被写体OへX線を照射するX線発生器11を備えたX線発生部10と、被写体Oを透過したX線ビームXBを受けるX線検出器21を備えたX線検出部20と、被写体Oを挟んで対向する位置にX線発生部10およびX線検出部20をそれぞれ支持する支持部30と、被写体Oの位置を固定するための被写体保持部40と、X線撮影を行う際にX線ビームXBの走査のために支持部30を駆動させる走査駆動部50と、装置本体の制御を行う本体制御部60と、X線検出部20で取得されたX線透過画像を処理して、パノラマ、セファロなどの撮影種別に応じたX線画像を生成するための画像処理部70とを備え、さらに、本体制御部60には主制御部61を備えている。
【0040】
ここに、X線発生部10は、X線を発生するX線発生器11と、X線発生器11から発生したX線Xの照射範囲つまりX線照射領域を制限する照射野規制部12とを備えている。
また、照射野規制部12は、通常は一次スリットやコリメータなどと呼ばれるもので、開口12Sを備えており、X線発生器11から発生されたX線を、開口12Sにより照射領域が制限されたX線ビームXBとして、被写体Oの撮影部位に向けてX線照射がなされ、X線検出器21上には被写体Oの撮影部位のX線透過像が生成される。
【0041】
一方のX線検出部20は、X線検出器21で生成されたX線透過画像を画像データとして本体制御部60に送出する。X線検出部20は前述のカセット(筐体)22などを用いたX線検出器21の交換が可能な構成であってもよいし、X線検出器21が固定されたものであってもよい。
【0042】
X線検出器21は、カセットなどの筐体22に設けてあるが、筐体22をX線検出部20に着脱自在な構成にしてもよい。
【0043】
このようなX線検出器21は、表面に入射されたX線を可視光に変換するシンチレータと、シンチレータで変換された可視光を受光して電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、シンチレータを必要とせずX線を直接電気信号に変換するカドミウムテルルセンサなどの2次元イメージセンサとで構成される。X線を直接電気信号に変換するセンサを用いてもよい。これらのセンサを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0044】
2次元X線検出器21を構成するイメージセンサは、フォトダイオードなどの光電変換素子、固体撮像素子等が面状に配列された、m行n列(m、nはそれぞれ、m>1,n>1となる自然数)の画素より成るフレームセンサを特にフラットパネルに形成したものが好適に用いられる。
【0045】
本体制御部60は、主制御部61、操作部66、表示部67を備えており、表示部67には、被写体Oの撮影画像のほか、必要な情報が表示できる構成にしている。また、画像処理部70は、マウスやキーボードによる入力を受け付ける操作部75と、画像生成部73で生成されたパノラマ画像などを表示する表示部76とを備えている。
【0046】
主制御部61は、CPUを内蔵し、走査軌道設定部61a、照射領域設定部61bを備えている。
【0047】
走査軌道設定部61aは、操作部66、表示部67を通じて、診断者などによってパノラマ撮影、セファロ撮影などのX線撮影の種別が選択されると、X線ビームXBの走査を行うために走査駆動部50が実行すべき撮影軌道に適合した駆動情報を設定し、照射領域設定部61bは、操作部66、表示部67を通じて、診断者が希望する被写体の関心領域rが特定されると、これらの情報に基づいて、X線ビームXBが関心領域rにのみ照射されるため、後述するようなX線ビームXBの走査制御条件を算出し設定する。
本願でいう関心領域rは、被写体の診断すべき部位であり、診断者がその関心領域rの範囲のX線画像があれば診断の目的を果たせると考える領域である。
パノラマ撮影を例にとると、診断者が全顎のパノラマ画像がなければ診断の目的が果たせないと考える場合は全顎が関心領域rとなり、診断者が全顎のうち、一部のパノラマ画像があれば診断の目的が果たせると考える場合はその一部が関心領域rとなる。
本発明では、照射領域設定部61bが算出設定するX線ビームXBの走査制御条件によって、X線ビームの高さ方向の広がりの両端の位置の少なくとも一方を高さ方向に移動させて、関心領域のみにX線照射領域を可変設定しており、この点が特徴となっている。
なお、これらの撮影軌道やX線ビームXBの走査制御条件は、ブロック図では、主制御部61に走査軌道設定部61a、照射領域設定部61bを区別して記載しているが、主制御部61が同一のプログラムを実行して機能するものであってもよい。なお、被写体に関心領域を特定する操作や手順などについては、後述する。
【0048】
走査駆動部50は、後述の第2の実施形態におけるX−Yテーブル53からなるような構成のものが適宜用いられる。
【0049】
支持部30には旋回軸(軸部)Rxが設けられ、この軸部Rxに、厳密には、軸部Rxの軸心Rxcに旋回中心Rを置いて旋回可能となっている。
【0050】
図示の例では、支持部30は、軸心Rxcを中心に旋回することで、X線発生器11とX線検出器21も軸心Rxcを中心に旋回するが、支持部30の旋回中心RすなわちX線発生器11とX線検出器21の旋回中心Rは必ずしも機械的な旋回軸Rxの軸心Rxcと一致した位置にあるとは限らない。
【0051】
例えば、本願出願人がすでに出願している特開2007−29168の構成では、旋回手段の旋回と旋回軸移動機構による旋回軸の移動の同時連動による合成運動により、上記の旋回軸の位置にかかわらず、撮影上の回転中心を生じさせているが、このような機構を適宜用いて旋回軸Rx、軸心Rxcの位置に関わらず旋回中心Rを設定する構成にしてもよい。
【0052】
パノラマX線撮影の基本原理
図2は、パノラマX線撮影の基本原理を示している。
パノラマ撮影では、X線発生器11とX線検出器21とを歯列弓Sを挟んで旋回させながら、X線ビームXBは、例えば、左顎にX線照射する位置から前歯中央を通じて右顎まで移動する。つまり、X線発生器11は、位置Lt1、Lt2、Lt3、…の順に、X線検出器21は、位置Lr1、Lr2、Lr3、…の順に移動する。その後、X線発生器11は、位置Lt4、Lt5の順に、X線検出器21は、位置Lr4、Lr5の順に移動する。図中の曲線Laは、X線ビームXBの軌跡によって描かれた包絡線を示している。
【0053】
なお、
図2では、図が不明瞭にならないよう、X線発生器11、X線検出器21、X線ビームXB、包絡線Laについて、左顎へのX線照射から前歯中央へのX線照射までの様子を実線で示し、前歯中央から右顎へのX線照射までの様子は鎖線と点線で示している。
【0054】
パノラマX線撮影では、
図4に示す、歯列弓に対応した、曲面断層領域SA全体に対するパノラマX線撮影を、「全体パノラマX線撮影」と呼び、この全体パノラマX線撮影によって得られるパノラマ画像を全体パノラマ画像と呼ぶ(
図5(a)参照)。歯列弓全体をほぼ歯列弓の形状に沿って内包する曲面断層領域SAは、パノラマ撮影の撮影対象領域の全体である。ここでは、全顎を曲面断層領域SAとする。
【0055】
パノラマX線撮影時には、走査駆動部50を動作させることによって、旋回軸Rxが2次元に水平移動し、同時に支持部30は、軸心Rxc(
図1参照)を中心にして水平に旋回しながら、X線発生器11はX線ビームXBを被写体Oに向けて照射する。X線ビームXBの照射方向は、旋回軸Rxの2次元移動と支持部30の旋回軸周りの旋回移動の合成運動によって、歯列弓Sを含む撮影対象となる曲面断層領域SA内における歯牙に対して略垂直となるように制御される。
【0056】
このようなパノラマX線撮影では、X線検出器21で得られるX線画像の拡大率を一定に保つため、X線ビームの走査中は、X線発生器11、X線検出器21、歯列弓Sの3者の距離が一定または略一定に保持される必要があり、そのために、X線発生器11とX線検出器21の走査軌道は、多数の被写体の歯列弓Sに適合する制御パターンを種々準備しておくことが望ましい。CPUを用いて、大人、子供などの被写体の特徴や撮影部位を入力するだけで、歯列弓Sを想定した最適化された制御パターンが算出できるようにしてもよい。
【0057】
X線ビームXBの強度は、X線発生制御部62によって、X線発生器11の管電流および管電圧を制御して行う。X線発生器11から放射されたX線ビームXBは、開口12S(
図9参照)で制限された被写体Oを透過し、さらに、X線検出器21で受け止められて、X線透過像が生成される。ここに、X線検出器21は、X線検出制御部63より制御信号が与えられて、所定のタイミング毎に、画像データを生成してX線検出制御部63に送出し、X線透過画像が生成される。
【0058】
X線検出器21から出力されたX線透過画像は、X線検出制御部63から主制御部61、通信インターフェース65を通じて画像処理部70に送信される。
【0059】
画像処理部70では、このX線検出器21からのX線透過画像を通信インターフェース65、74を通じて受信すると、メモリ部72に格納する。
【0060】
X線検出部20は、X線検出器21に被写体Oを透過したX線ビームXBが照射されると画像データを出力する。すなわち、X線検出器21の2次元イメージセンサは、X線検出制御部63より制御信号に基づいて、各画素で撮像動作(光電変換)とリセット動作(電荷再結合)とを繰り返し、所定のタイミング毎に、電気信号が水平転送および垂直転送されることで、1枚のフレーム画像を生成する。
【0061】
X線検出器21はX線検出制御部63から所定タイミングでクロックパルスを受け、支持部30の旋回動作によるシフト量に応じて撮像動作を行い、このとき、X線検出制御部63によって2次元イメージセンサの信号の水平転送および垂直転送が制御されることで、2次元イメージセンサで生成された画像データが1枚のフレーム画像毎にシリアルデータとして、X線検出部20より出力される。
X線発生部10およびX線検出部20の位置がシフトするたびに、X線検出部20は、異なる撮影位置関係(X線発生部10、X線検出部20、および被写体Oの位置関係)に対応したX線投影画像となるフレーム画像を構成する画像データを出力する。
【0062】
このようなX線検出器21はX線ビームXBが充分検出できれば特に形状を限定することなく使用できる。例えば、コーンビームが検出できる程の広がりを有したフラットパネルディテクタの検出面の一部で細隙X線ビームを受光することも可能であり、検出面が細長いものには限らない。
【0063】
このX線検出部20から出力された画像データは、X線検出制御部63に転送された後、通信インターフェース65を介して、画像処理部70に送信される。
画像処理部70は、その画像データを通信インターフェース74で受信すると、メモリ部72に格納する。メモリ部72は、同一のパノラマX線撮影で取得された画像データを、1つのデータ群としてまとめて記憶し、撮影日時や被験者を特定する情報にリンクさせて記憶する。これにより、一度のパノラマX線撮影で得られた複数のフレーム画像による画像データ群が、パノラマX線撮影毎にまとめて管理され、画像生成部73は、このメモリ部72に記憶された画像データ群に基づいて、パノラマ画像を生成する。
【0064】
フレーム画像の重ね合わせ処理
医療用X線撮影装置Mは、以上のような方法でパノラマX線撮影を終了すると、画像処理部70は、そのメモリ部72には、複数のフレーム画像による画像データ群が記憶され、それぞれ撮影時の旋回中心Rの位置と旋回角度と共に記憶される。
座標処理部77は、このメモリ部72に記憶されるデータに基づいて、画像データ群を構成する各フレーム画像における各画素が、どの方向からの被写体Oに対するX線照射で得られたものか、つまり、3次元座標におけるいずれの線(被写体Oの透過線)上に存在するかを特定する。
【0065】
これに対して、画像生成部73は、座標処理部77で確認されたそれぞれのフレーム画像について、各画素の位置と被写体Oの透過線の方向とそれらの位置との対応を認識し、例えば全顎パノラマ撮影の場合には、
図4に示すように歯列弓Sの曲面に沿った断層面T1〜Tn(nは自然数)の各座標位置に対応した画素位置を確認すると、画像処理部74では、断層面T1〜Tnのそれぞれについて、各フレーム画像に対応した同一の座標位置を示す画素のデータ(透過線量を表すデータ)を合成して、パノラマ画像を構成する画像データを生成することも可能である。
【0066】
画像処理部74は、このような方法で断層面Tk(kは、1〜nの自然数)の任意の座標位置のデータを取得する際、その座標位置に対応する画素を含んだフレーム画像を抽出し、抽出したフレーム画像の対応する画素のデータを合成してフレーム画像をの重ね合わせを行う。このような複数フレーム画像の重ね合わせ処理では、加算処理、積算処理などが利用される。
【0067】
ここで、フレーム画像は投影方向に投影した画像であるので、重ね合わせの方向は、投影方向に交差する方向に画像を並べた重ね方となるが、フレーム画増の数に応じた重み付け加算を行ってもよい。これにより、断層面Tkの各座標位置におけるデータ量が算出され、このデータ量を断面層Tk上で二次元分布させて、断層面Tkにおけるパノラマ画像データが生成される。
【0068】
また、画像生成部73は、生成した断層面T1〜Tnについてのパノラマ画像データを、3次元空間上において、断層面T1〜Tnそれぞれの面方向に対して垂直な方向に並べる演算を行ってもよい。この演算により、断層面T1〜Tnのそれぞれについて、パノラマ画像として2次元分布されている各座標位置のデータ量を3次元分布させて、所望の部位の3次元ボリューム画像データないし多断層画像データを生成することができる(例えば、
図6における歯列弓SAの場合には、S1〜S9の部分)。
このように生成されたボ3次元ボリューム画像データないし多断層画像データは、生成元となるフレーム画像による画像データ群と関連付けられて、メモリ部72に記憶される。
断層面T1〜Tnのうちの一部のみを断層画像データを生成してもよいし、いずれか1層のみの断層画像データを生成してもよい。
【0069】
このようにして、座標処理部77と画像生成部73とが協働することで、パノラマX線撮影で取得された画像データ群に基づいて3次元ボリューム画像データないし多断層画像データ、断層画像データが生成され、メモリ部72に記憶され、その後、診断者などが操作部76を操作して、所望の断層面によるX線投影画像が要求される。
【0070】
主制御部71は、操作部66の操作によって、診断者などが実行を希望する断層撮影において、断層面を特定すると、これに関連した情報を座標処理部77に与える。これに対して、座標処理部77は、要求された断層面の3次元座標を算出して、主制御部71に通知する。
これにより、主制御部71は、メモリ部72に記憶した3次元ボリューム画像データに基づいて、X線投影画像に対する断層面上の各座標位置におけるデータ量を読み出して、画像生成部73に与えると、画像生成部73は与えられた各座標位置でのデータ量に基づいて、診断者によって所望された断層面における画像データを生成する。
【0071】
パノラマ画像の断層面は上述のように予め3次元ボリュームデータないし多断層画像データを準備しておいて、診断者が特定したときに生成してもよいが、メモリ部72にはフレーム画像の画像データの記憶のみをしておいて、断層面が特定されたときに、その断層面の画像データを生成するようにしてもよい。
【0072】
画像生成部73が、診断者が所望する断層面の画像データを生成すると、生成された断層面の画像は表示部76に表示される。表示部76には、パノラマ画像以外にも、2等分法、平行法、咬合法、咬翼法などによる口内法画像を生成して表示してもよい。
【0073】
また、3次元ボリューム画像データに基づいて、関心領域の立体的3次元画像を生成することもできる。
【0074】
例えば、全体パノラマX線撮影を行った後、診断者が特定の断層面のパノラマ画像を要求すれば、
図5(a)のように、歯列弓S全体を対象としたパノラマ画像が生成され、表示部76に表示されるが、所望する断層面を歯列弓Sの曲率に対して交差する方向に指定して、その断層面におけるX線投影画像を表示部76に表示することも可能である。
勿論、特定される断層面が撮影領域よりも狭い範囲のものである限り、その部分の断層面画像を表示することも可能である。
【0075】
また、画像処理部70では、複数の断層面相互の間隔を、パノラマX線撮影対象領域の部位ごとに設定する処理を行うようにしてもよい。
【0076】
また、パノラマ断層画像の処理対象領域の厚みをパノラマX線撮影対象領域の部位ごとに設定する処理を行うようにしてもよい。
【0077】
図1の医療用X線撮影装置Mは、部分パノラマX線撮影を行うこともでき、例えば、歯列弓Sにおける一部の歯牙または顎骨の一部を関心領域rとして、その部分についてのパノラマ画像を撮影することができる。
本願にいう部分パノラマX線撮影とは、全顎の一部をパノラマX線撮影の対象領域とするパノラマX線撮影である。
また、部分パノラマX線撮影は、高さ方向に関して一部であっても、走査方向に関して一部であっても、その双方に関して一部であってもよい。例えば、上下の前歯周辺のように、全歯列のうちの上顎と下顎の数本ずつ、例えば2〜3本ずつの歯牙のみを対象とするものであってもよく、上顎と下顎のいずれか一方のみの歯牙全体を対象とするものであってもよく、上顎と下顎のいずれか一方のみの歯牙全体のうちの数本例えば2〜3本の歯牙のみを対象とするものであってもよい。
【0078】
このために、X線ビームを走査させる途中においても、X線ビームの照射領域つまりX線照射領域の高さ方向の広がりの両端の位置の少なくとも一方を高さ方向に移動させて、X線ビームの照射領域を限定するような、X線ビームの走査制御ができるようになっており、これによって被験者へのX線被爆量が抑制できる。
また、X線ビームの走査制御は、X線ビームの照射領域の高さ方向の広がりの両端の位置の高さが一定に保たれるようにして、照射領域を制限するようにもできる。
このような本発明による医療用X線撮影装置Mでは、X線ビームXBの高さ方向の位置および広がりを自由に設定し、さらにそれらをX線ビームXBの走査中にも可変できる構成にし、被写体に対するX線ビームの照射領域を、診断すべき部位に限定するので、被験者へのX線被爆量を最小限に抑えられる。
【0079】
また、医療用X線撮影装置Mは、図示しないモード切換部を本体制御部60に設けるなどして、全体パノラマX線撮影モードでの撮影や、部分パノラマX線撮影モードでの撮影が行える兼用機として構成してもよく、部分パノラマX線撮影のみが行える装置としてもよい。
【0080】
また、このような医療用X線撮影装置Mを他のX線断層撮影にも適用できることはいうまでもない。例えば、X線断層撮影は、平面断層撮影と曲面断層撮影があるが、例えば、顎関節部分についてのみ、平面の断層の撮影を行う場合にも用いられる。
例えば、口内法画像は、2〜4本程度の本数の歯牙の歯根から歯冠までが収まる程度の単純透視画像が従来より周知であるが、例えばこの口内法画像を平面断層の断層面画像として生成してもよい。
【0081】
平面断層の断層面では、例えば2〜4本程度の本数の歯牙の歯根から歯冠までのX線画像が収まる程度の広さの検出面を備えたX線検出器21を用いて、目的とする関心領域rを間に挟んでX線発生器11とX線検出器21を互いに逆方向に移動させながら、X線ビームXBを照射して所望の断層面に対応するようにして、フレーム画像をシフト合成する方法でもよいし、部分パノラマX線撮影と同じ軌道または近似の軌道での撮影を行い(目的とする断層面を平面に設定して座標演算する)、所望の断層面に対応するようにフレーム画像をシフト合成する方法でもよい。
【0082】
X線発生器11とX線検出器21を互いに逆方向に移動させて撮影する方式を採用する場合、X線発生器11とX線検出器21を直線移動させる方式(Planigraphy)も、円弧移動させる方式(Tomography)も可能であるが、いずれの場合も、X線発生器11のX線が発生する焦点と目的の断層面との間の距離とX線検出器の検出面と目的の断層面との間の距離の比率が一定に保たれる必要がある。
【0083】
なお、X線撮影時におけるX線発生器11の振れ角は50度以内が望ましいが、歯列弓Sに直交ないし交差する方向に目的とする断層面を設定して撮影してもよい。
平面断層の断層面画像を診断に用いれば、パノラマの断層面では歯牙の重複が生じる箇所でも重複が避けられることがある、これを併用すれば、隣接歯牙の間に齲触があって通常のパノラマ断層画像では確認しにくい場合にも診断が可能となる。
【0084】
X線断層撮影は、他に、上顎洞部分の断層撮影にも適用でき、この上顎洞部分の断層撮影も平面の断層を撮影する場合と曲面の断層を撮影する場合がある。これらのX線断層撮影においても、部分パノラマX線撮影と同じく部分X線断層撮影を行うことができることはいうまでもない。
【0085】
また、X線撮影時に、特定された関心領域rの一部に対してX線ビームXBを部分的に照射していき、結果的に関心領域rの全体をX線ビームXBで照射してもよい。
【0086】
更に、言うまでもないが、パノラマX線撮影はX線断層撮影の一例であり、パノラマX線撮影における関心領域はX線断層撮影における関心領域の一例である。これは、部分パノラマX線撮影と部分X線断層撮影の場合も同様である。
なお、全体パノラマ画像も、部分パノラマ画像も、右顎が左側に、左顎が右側に位置するように表示してもよいし、左右を反転して、右顎が右側に、左顎が左側に位置するように表示してもよい。
【0087】
以下、本発明のX線撮影装置の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
【0088】
図1の医療用X線撮影装置Mは、上述した全体パノラマX線撮影以外に、部分パノラマX線撮影を行うことができる。
【0089】
部分パノラマX線撮影においては、例えば、前歯周辺のみの局所領域SBを関心領域rとして特定して撮影する場合は、
図3に示すように、被写体Oに照射されるX線ビームXBが包絡線Laの一部Lb(
図3における実線部分)のみを形成するようにX線ビームXBを照射する。
図3の例では、局所領域SBは前歯2本と、その左右の隣の歯を含んでいるので、X線検出部20は、X線検出器21からの局所領域SBにおけるX線投影画像による複数枚のフレーム画像を、画像データとして出力すればよい。
【0090】
X線発生部10は、X線ビームXBが包絡線Lbを形成するタイミングのみ、X線発生器11からX線が発生するように制御され、この場合、支持手段30は全体パノラマX線撮影のときと同じように撮影軌道を旋回し、局所領域SBのパノラマ撮影に必要な軌道でのみX線ビームを照射をする。
【0091】
X線発生制御部62は、主制御部61から、支持部30の旋回角度やX線発生部10およびX線検出部20の位置を基にした情報を受けて、局所領域SBに対するX線撮影の開始位置と終了位置を認識し、X線発生器11のX線照射のON/OFF制御をする。
X線発生器11のX線照射のON/OFFは、走査駆動部50の図示しない各種モータの駆動量を基準として制御されてもよいが、X線発生制御部62が、支持手段30の旋回の開始指令を起点として、走査駆動部50の図示しない各種モータの駆動をする時間を表すタイムテーブルを参照して、X線照射のON/OFF期間を設定するものとしてもよい。
【0092】
支持手段30は、走査駆動部50により、局所領域SBに対するX線照射の前後に多少旋回する程度にしてもよい。この構成によれば、支持手段30の旋回のモーメントが充分になった時点でX線照射が開始でき、旋回停止も機械的に無理のない減速により行うことができる。局所領域SBに対するX線照射の前後の旋回軌道は、必ずしも全体パノラマX線撮影のときと同じ旋回角度とする必要はない。
【0093】
例えば、支持手段30が被検者導入退出の妨げにならないホームポジションの位置、角度をとるとすれば、支持手段30は、X線発生部10とX線検出部20が被検者導入のホームポジションから局所領域SBに対するX線照射開始の位置に最短距離で移動してくるように移動でき、局所領域SBに対するX線照射終了の位置から被検者退出のホームポジションへ最短距離で移動するように制御できる。
【0094】
X線発生部10は、X線検出部20側にシャッター機構を備え、X線発生制御部62で、X線発生器11からのX線照射が常になされるように制御してもよい。
また、X線発生器11のX線照射も必ずしも常に行わずとも、シャッターの開期間の前後、多少の期間を含んでX線照射し、その他の期間はX線照射を停止してもよい。
また、シャッターの開期間の前のみについて、多少の期間を含んでX線照射するようにしてもよく、この構成によれば、X線発生器11がアクティブになって充分に立ち上がった状態でX線照射ができる。
【0095】
パノラマ撮影の選択は、例えば、操作部66によって、表示部67によって選択ボタンを表示して、全体パノラマX線撮影を選択するボタンが指定されれば、曲面断層領域SA全てを撮影対象とする全体パノラマX線撮影が実行されるようにしてもよく、また、部分パノラマX線撮影を選択する場合は、上下顎の模式的なパノラマ画像または歯列弓Sの模式的な画像を表示部67に表示し、撮影対象となる局所部位を模式的な画像上で特定するものとしてもよい。
【0096】
このような方法で撮影対象が特定されると、支持手段30のX線撮影の開始位置と終了位置が設定される。
例えば、
図3のような、前歯のみを含む局所領域SBの部分パノラマX線撮影をすることが指定されたときには、主制御部61は、既に、演算で算出した走査軌道を走査軌道設定部61aに設定し、照射領域設定部61bは、この軌道上におけるX線ビームの照射開始点P1および終了点P2、X線ビームの高さ方向の幅などを算出して設定する。
走査軌道は、局所部位ごとに算出され特定されるので、走査軌道上のどの範囲に、どの角度でX線ビームXBを照射するかなど、X線照射条件が定まる。走査軌道は、支持手段30の旋回角度と旋回軸Rxの位置の制御で設定できる。
【0097】
医療用X線撮影装置Mは、部分パノラマX線撮影を終了したとき、撮影した複数のフレーム画像による画像データ群を記憶し、フレーム画像からのデータの合成、パノラマ画像データの生成を行う。画像生成部73が、主制御部71から与えられた、各座標位置でのデータ量に基づいて、診断者によって所望された断層面におけるX線投影画像となる画像データを生成する。
【0098】
このX線投影画像は、歯列弓Sの曲率に沿った断層面におけるパノラマ画像だけでなく、歯列弓Sの曲率に沿った断層面に対して交差するような任意の方向の断層面による断層画像も含まれる。すなわち、診断者が特定した関心領域rにおいて、断層面が広がる方向や範囲も指定できるようにしておいて、任意の方向の断層面が撮影できるようにしておくこともできる。
【0099】
上述のように医療用X線撮影装置Mは、全顎が関心領域として特定されると、全体パノラマX線撮影を終了した後、特定の断層のパノラマ画像が要求されたときには、
図5(a)のような、歯列弓S全体を対象としたパノラマ画像が表示される。
一方、全顎の所望の部位が関心領域rとして特定されると、その部位について部分パノラマX線撮影を行った後、特定の断層のパノラマ画像が要求されたときには、
図5(b)のような、局所領域SBにおける歯列弓Sの一部を対象としたパノラマ画像が表示される。
また、関心領域rが特定されても、断層面が特定されないときには、その関心領域内で予め準備している断層面を特定したパノラマ画像がデフォルト断層面画像として生成され、表示部67に表示される。
また、所望の断層面を、歯列弓Sの曲面に交差する面として指定することもでき、X線撮影した領域内であれば、任意の断層面におけるX線投影画像を生成して、表示部76に表示することもできる。さらに、X線撮影した領域よりも狭い範囲の断層面を特定して、X線投影画像を生成して表示部76に表示させることもできる。
【0100】
このように、部分パノラマX線撮影と全体パノラマX線撮影とを選択して実行できる構成のものでは、例えば、歯科治療において、治療前に、全体パノラマX線撮影を行い、患者の全ての歯牙の状態を確認して、治療が必要な歯牙とその状態を把握できる。
また、治療後においては、治療を施した歯牙の状態のみを確認するべく、医用量X線撮影装置Mで部分パノラマX線撮影を行ってもよい。
このとき、既に全体パノラマX線撮影によって取得されたパノラマ画像を表示部67に表示させ、表示部67に表示されたパノラマ画像上で、操作部66を操作して、部分パノラマX線画像を生成するようにしてもよい。
【0101】
<第2の実施形態>
図7は医療用X線撮影装置MAの基本構成を示している。この装置MAは、
図1の医療用X線撮影装置Mの構成に照射野規制部駆動機構13を更に備えている。
【0102】
この第2の実施形態では、照射野領域設定部61bが算出し、設定した制御条件によって、X線ビームの高さ位置を可変する点が特徴となっており、そのために照射野規制部駆動機構13を設けている。
照射野規制部駆動機構13は、照射野領域設定部61bが算出し設定したX線ビームの走査条件に応じて、X線ビームXBの走査時に、照射野規制部12を作動して、X線ビームXBの照射領域を、被写体Oの撮影部位に応じて変位させるようになっている。
その他の構成は、
図1に示した基本構成と同様であるので、対応する部分には、同一の符号を付して説明は省略する。
座標処理部77は図示を略してあるのみで、特に本実施形態で排除されるわけではない。
【0103】
被写体の関心領域は、直方体、立方体などのような幾何学的に規則的な形状ではなく、通常は不規則な形状であるが、これは撮影種別ごとに、また診療の目的に応じて特定されるので、X線ビームXBの広がりを関心領域に合致させることが余計なX線被曝を避けるために望まれ、このような事情に鑑みて、本発明者らは、X線ビームの走査中は、X線ビームXBの照射領域を、診断が望まれる部位に限定するため本発明装置を提案している。
【0104】
ついで、本発明におけるX線ビームの走査制御について、従来手法と比較して説明する。
【0105】
図8はX線撮影の基本原理を示している。
図8では、X線発生器11から放出されるX線束Xが照射野規制部12によって絞り規制されてX線ビームXBとして、被写体Oに照射する様を示している。
【0106】
一般に、従来から使用されているX線撮影では、
図8に示すように、X線ビームXBは、被写体Oに対し、焦点XFと、X線ビームXBの高さ方向の広がりの一方の端部XB1と、他方の端部XB2との位置関係によってX線の照射領域が特定されて、被写体Oを通過したX線によって、X線検出器21の検出面21a上に被写体OのX線透過画像が生成される。被写体Oに照射されるX線ビームXBのX線照射領域の高さ方向の幅は、XB1上の特定の点XBaの位置と、XB2上の特定の点XBbの位置によって特定される。
【0107】
また、X線ビームXBの高さ方向の広がりの一方の端部XB1と、他方の端部XB2の位置は、照射野規制部12の開口12Sの高さ方向における一方の端部12S1と他方の端部12S2の位置によって決定される。
【0108】
従来のX線ビームの走査制御では、X線ビームXBは、
図9(a)に示すように、照射野規制部12の開口12Sの高さ方向の幅12VWとX線ビームXBの走査方向HDの幅12HWとによって特定され、検出器21の検出面21aでその高さ方向VDに広がる。
【0109】
X線ビームXBが細隙X線ビームであると、広い撮影領域が走査できるが、X線ビームXBは、
図9(b)に示すように、1次スリット12の開口12Sに応じた高さ方向の寸法VWと、X線ビームXBの走査方向の幅HWとで高さ方向の撮影領域が特定され、走査方向HDに沿って一直線に走査がなされる。
図2を参照すれば、X線ビームXBは開口12Sを通過して、歯列弓Sを走査する。
歯列弓Sに対して、開口12Sが走査方向に沿って移動することで、走査がなされる。
この場合、開口12Sによって規制されるX線ビームXBの高さ方向の広がりVW、走査方向の幅HWはいずれも変化することなく、一定のままである。
【0110】
これに対して、本発明者らが提案するX線ビームXBの走査制御では、
図9(c)に示したように、X線ビームXBは、走査方向HDに移動しながら、高さ方向、つまり走査方向HDと交差する方向VDに上下に変化させることで、被写体Oの特定部位にのみにX線を照射するようにしている。この図では、X線ビームXBの高さ方向の広がりの両端の位置の少なくとも一方、すなわちX線ビームXBの端部XB1、端部XB2の少なくとも一方の位置がX線ビームの走査中に、被写体Oの関心領域rの位置に合わせて高さ方向に移動している。
【0111】
図10は、本発明における、パノラマX線撮影時における照射野規制部12の動作を示している。
照射野規制部12は、後述するスリット部材12aに、
図12などに示す遮蔽部材134、136…を組み合わせて構成され、X線ビームXBの走査中において、開口12Sを上下に移動させることで、X線ビームXBの高さ方向の広がりを規制して被写体Oに向けて照射するようになっている。
【0112】
パノラマ撮影を行うときは、支持部30を被写体Oの周りに旋回させながら、照射野規制部駆動機構13によって照射野規制部12を作動して、開口12Sの位置を高さ方向に変位させX線ビームXBを被写体Oに照射するため、開口12Sは、
図10の(a)〜(c)に示したように、支持部30の旋回動作に伴って、H1〜H2の間を上下に移動させている。
【0113】
ここに、開口12Sの高さ方向の幅は、従来のパノラマ撮影で用いられる開口の高さ方向の幅よりも小さく形成され、H1、H2は、開口12Sの上端の最上位置、最下位置を示している。
【0114】
なお、照射野規制部12は、H1、H2間の位置変化を強調するために、H1については実際より高めに、H2については実際より低めに描いてあるが、実際の位置変化は、それほど大きいものではない。
【0115】
図11(a)は、本発明の第2の実施形態
の部分パノラマX線撮影によって得られた
部分パノラマX線画像としての全顎パノラマX線画像であり、全顎が関心領域として特定され、斜線部分はX線照射が規制された領域、白抜部分がX線照射を受けた領域となっている。
また、
図11(b)は、X線パノラマ撮影の際の開口12Sの高さ位置の変化を支持部30の旋回角度に対応させて示しており、支持部30がLEθ→MMθ→REθと旋回移動するに伴って、パノラマ画像の対応した部分LE、MM、REが順次、X線ビームの照射を受けて、X線透過画像が生成されていることが分かる。
【0116】
本実施形態では、支持部30が旋回している間に、開口12SはH1〜H2の間を上下に移動するので、全顎を関心領域に指定した場合は、
図11(a)に示したような、左右の顎関節側Px、Pxが高く、前歯側MMが低くなったパノラマX線画像が生成され、結果として、斜線部分へのX線被曝をなくすことが出来る。
【0117】
なお、医療用X線撮影装置が立位の状態で被写体のパノラマX線撮影を行うものでは、X線ビームXBの走査方向は支持手段30の旋回軸に交差し、X線ビームXBと交わる水平面上または略水平な面上のX線ビームXBの経路上にある1点の変位方向となるが、横臥した状態でパノラマX線撮影を行うものでは、X線ビームXBの走査方向は支持手段30の旋回軸に交差し、X線ビームXBと交わる垂直面上または略垂直な面上のX線ビームXBの経路上にある1点の変位方向となる。
【0118】
医療用X線撮影装置MAは、
図1の医療用X線撮影装置Mと同じく、本体制御部60、主制御部61、X線発生器制御部62、X線発生器制御部62、X線検出制御部63、通信インターフェース65、操作部66、表示部67などを備える。
【0119】
支持部30は、例えば、
図10に示したような旋回アームによって構成され、旋回アームは、X線発生部10とX線検出部20とを、被写体Oを挟んで対向するようにして支持し、パノラマ撮影中は、走査駆動部50によって被写体Oの回りを旋回する。
【0120】
走査駆動部50は、支持部30の旋回軸Rxを旋回軸Rxと交差する水平面内の1方向(X軸方向)に変位させるためのX軸モータ51と、X軸方向と直交する方向(Y軸方向)に旋回軸Rxを変位させるためのY軸モータ52と、X軸モータ51およびY軸モータ52の駆動によって支持部30を水平面内で移動させるX−Yテーブル53と、支持部30を旋回軸Rxの旋回中心Rを軸心として旋回させる旋回用モータ54とを備えている。
【0121】
このような走査駆動部50は、X軸モータ51およびY軸モータ52を回転駆動させて、X−Yテーブル53上で支持部30の旋回軸Rxを移動させ、支持部30の旋回中心Rを所定位置に変位させ、更に旋回用モータ54の回転駆動によって、X線発生部10とX線検出部20とを被写体Oの周りに旋回させ、これらを同時に駆動することで、X線発生部10およびX線検出部20による、前述したパノラマX線撮影が行われる。
【0122】
支持部30は、X線発生部10およびX線検出部20と共に、X線撮影部を構成しているが、旋回軸Rxを固定して、この旋回軸Rxを旋回用モータ54が回転駆動するようにしてもよい。
【0123】
また、X−Yテーブル53に旋回軸Rxを固定し、この旋回軸Rxに対して支持部30を回動可能に取り付けて、支持部30に固定した旋回用モータ54で旋回軸Rxに駆動力を作用させて支持部30を回転駆動するようにしてもよい。
【0124】
本体制御部60は、本体制御部60内の各ブロックと送受する各データの演算処理を行う主制御部61と、X線発生部10内のX線発生器11のON、OFFや、X線発生器11における管電流および管電圧の値などを制御するX線発生制御部62と、X線検出部20内のX線検出器21を制御すると共にX線検出部20からの画像データを受けるX線検出制御部63と、走査駆動部50内の各モータ51,52,54および照射野規制部駆動機構13へ供給する制御信号を生成するモータドライバ64と、画像処理部70との間で信号を送受信する通信インターフェース65と、診断者の操作による入力を受付ける操作部66と、液晶ディスプレイなどで構成される表示部67とを備える。
【0125】
モータドライバ64は、走査軌道設定部61aから制御信号を受け、走査駆動部50に与える駆動信号に変換する駆動信号変換部の役割を持つ。
【0126】
本体制御部60は、操作パネルなどで構成される操作部66を設けており、被写体となる被験者の性別や年齢などの入力を受け、X線撮影のためのパノラマ撮影の種別や、撮影部位の位置や大きさが選択されると、選択された撮影種別、撮影部位に対して、支持手段30の撮影軌道(走査軌道)を算出し、さらに、算出された撮影軌道が走査軌道設定部61aに設定され、照射領域設定部61bは、指定された関心領域にのみX線ビームを照射するため必要な制御条件を算出設定する。パノラマ撮影以外に、他の種類の撮影がなされる場合は、撮影種別が選択されると、選択された撮影種別に対して撮影軌道が算出され、設定される。
【0127】
例えば、撮影種別をパノラマ撮影とし、被写体Oが大人であれば標準的な大人に応じた位置・大きさのパノラマ断層を撮影するように、子供であれば標準的な子供に応じた位置・大きさのパノラマ断層を撮影するように旋回中心Rの軌道と、支持手段30の旋回角度とが算出され、X線ビームXBの撮影軌道が決定される。
【0128】
パノラマ撮影は、支持手段30の旋回軸Rxの移動と支持手段30の旋回軸Rx周りの旋回動作とを合成した運動により決定されるので、旋回軸Rxの軌道と、この軌道上の各位置における支持部30の旋回角度(X線ビームXBの走査撮影軌道)の制御パターンを、撮影プロファイル情報として準備しておいてもよい。このプロファイル情報には開口の高さ位置を含ませてもよい。
【0129】
このような撮影プロファイル情報は基本情報を1つだけ準備して、基本情報から随時撮影軌道を算出するようにしてもよいし、大人・子供の別や性別などに応じた撮影軌道の複数の制御パターンを予め準備しておいて、選択して用いるようにしてもよい。
【0130】
なお、上述の例は支持部30の旋回軸RxをX軸モータ51とY軸モータ52の駆動で変位させる構成例であるが、支持部30の旋回角度に応じて旋回軸Rxが予め設けた溝に沿って変位するような機械的な旋回軸移動案内構成としてもよく、この場合は図示の走査軌道設定部61aはソフトウェア的な制御要素ではない。
【0131】
走査駆動部50は、図示の例ではX軸モータ51、Y軸モータ52、X−Yテーブル53、旋回用モータ54が走査駆動部を構成する例を示しているが、X線ビームXBでの走査を実現させるためにX線ビームXBを移動させる構成であればよく、上述のX−Yテーブル53を用いるものには限定されず、X線発生部10、X線検出部20を2次元に移動できる適宜な機構を採用することができる。
【0132】
主制御部61は、算出した旋回中心Rの軌道と旋回角度による撮影軌道情報を、モータドライバ64に通知し、モータドライバ64は、走査駆動部50内の各モータ51、52、54のそれぞれに駆動信号を出力し、これにより、支持部30が水平方向に変位しながらX線発生部10およびX線検出部20が、各位置で最適な位置に変位し旋回する。
なお、図示の例ではモータドライバ64を本体制御部内の独立の要素として表示したが、各モータに駆動信号を出力する機能を例えば主制御部61内部に持たせることもできるので、独立の要素として必須のものではない。後述する
図22のモータドライバ64についても同様である。
【0133】
主制御部61は、支持部30の旋回角度に対する、開口12Sの高さ位置の変位量を予め記憶している。関心領域rの指定に従ってその都度算出してもよい。
【0134】
この場合の制御基準情報は、パノラマX線撮影の開始時における、支持部30の撮影開始時の旋回角度に対する開口12Sの高さ位置を基準位置とし、支持部30が所定角度で旋回する毎に、この基準位置に対して高さ方向に変位させる開口の変位量の情報で構成される。撮影開始時の高さ位置は任意の位置を設定しても構わない。
【0135】
主制御部61は、パノラマX線撮影の間、支持部30の旋回角度に対する、開口12Sの高さ位置を移動させる変位制御を行う。この変位制御は、モータドライバ64の駆動信号出力によって行われ、モータドライバ64による駆動信号出力により、支持部30の移動も同時に行われる。
【0136】
主制御部61には、撮影プロファイルとして、被写体における撮影部位に応じた、X線ビームXBの走査撮影軌道、この軌道上の各位置における支持部30の旋回角度に加えて、X線ビームXBの関心領域に対する照射位置を特定する開口12Sの高さ位置を含ませてもよい。このような撮影プロファイル情報としては、前述したように、大人・子供の別や性別などに応じた複数の制御パターンを準備して選択して用いることが望ましい。
さらに、子供については、年代別に標準的な骨格を基準にしてもよい。
【0137】
主制御部61は、この撮影プロファイル情報に基づいて、パノラマX線撮影を実行するが、撮影プロファイル情報を用いることなく、操作部66によって撮影部位の位置を入力することで、撮影開始時の旋回角度に対する開口12Sの高さ位置を算出するようにしてもよい。この場合、主制御部61は、算出した撮影開始時の旋回角度に対する開口12Sの高さ位置と、記憶している基準情報とに基づいて、
図11(b)に示すような、支持部30の旋回角度に対する開口12Sの高さ位置を決定する。
【0138】
さらに、主制御部61は、X線発生制御部62およびX線検出制御部63の制御動作を、モータドライバ64による駆動動作に同期させ、これにより、X線発生制御部62は、モータドライバ64による走査駆動部50の駆動によって決定され、支持部30の旋回中心Rの位置や旋回角度に応じて、X線発生器11に与える管電流および管電圧の少なくとも一方の値を制御することもできる。
【0139】
X線発生器11に与える管電流または管電圧は、X線発生部10がX線ビーム束を照射する領域に応じた値に設定する。例えば、X線ビーム束の照射領域内に、X線撮影対象以外の障害物(頸椎など)がある場合は、管電流または管電圧の少なくとも一方を大きくするなどのように、X線発生部10から照射するX線量を最適な値に制御することが望ましい。
【0140】
ついで、照射野規制部駆動機構について説明する。
図12(a)〜(c)は、照射野規制部駆動機構13の具体例を示している。
それぞれの構成を詳細に説明すると、
図12(a)に示した照射野規制部駆動機構13は、高さ方向に伸長する開口121を開設したスリット部材12aの一方端122をガイド溝131に嵌入し、スリット部材12aの反対側の他方端123に、それぞれの内部にネジ溝を形成した雌ネジ部124,124を設け、これらの雌ネジ部124,124に、ネジ山を形成したモータ133の回転軸132を螺合貫通させた構造とされており、照射野規制部12はスリット部材12aで構成され、その開口121が開口12Sを構成している。
【0141】
図12(a)の開口121の高さ方向の幅は、従来のパノラマ撮影に用いられるスリットの幅よりも制限されて小さくなっている。スリット部材12aはX線の一部を通過させる開口121を形成する開口部を構成している。
【0142】
このような構造によれば、本体制御部60からモータ133に制御信号を与え、モータ133を正転、逆転させることで、回転軸132に螺合した雌ネジ部124,124を螺進させてスリット部材12aを上下に移動させることができるので、X線ビームXBの走査時に、モータ133を正逆転制御すれば、開口12Sを上下に移動させて、被写体Oの撮影部位に照射するX線ビームXBの照射位置を高さ方向に沿って変位させることができる。
【0143】
図12(b)の照射野規制部駆動機構13は、
図12(a)のスリット部材12aの開口121よりも、高さ方向の幅が広く、従来のパノラマ撮影に用いられるスリットと同じ幅を有する開口121を有している。スリット部材12aで構成された照射野規制部12は、スリット部材12aの開口121よりも水平方向に広くなった開口134cを開設した遮蔽板134を組み合わせて構成されており、遮蔽板134の一方端138をガイド溝131に嵌め入れ、遮蔽板134の反対側の他方端137に、それぞれの内部にネジ溝を形成した雌ネジ部135,135を設け、この雌ネジ部135,135に、ネジ山を形成したモータ133の回転軸132を螺合貫通させた構造とされている。
【0144】
スリット部材12aに開設された開口121と、遮蔽板134に開設した開口134cとの重ね合わせによって、開口12Sが形成されており、開口134cは、縦方向は開口121のそれより小さいが、横方向は開口121のそれよりも大きい寸法になっている。
【0145】
このような構造によれば、本体制御部60からモータ133に制御信号を与え、モータ133を正転、逆転させることで、回転軸132が回転して、回転軸132と螺合した雌ネジ部135,135を螺進させて、遮蔽板134を上下に移動させることができる。
したがって、X線ビームXBの走査時に、被写体の撮影部位に応じて、モータ133を正逆転制御させて開口12Sを上下させることができるので、被写体Oへ照射するX線ビームXBの照射位置を高さ方向に沿って変位させることができる。
【0146】
また、スリット部材12aを取り外せば、遮蔽板134の開口134cよりX線コーンビームを放射できるので、局所X線CT撮影も可能となり、さらに、スリット部材12aを着脱可能な構成にすれば、医療用X線撮影装置Mを、上述の全体パノラマX線撮影と局所照射X線CT撮影とを兼用する医療用X線撮影装置に構成することもできる。
【0147】
更に、回転軸132とガイド溝131を図示のものよりもさらに長くして、遮蔽板134を上昇させて、遮蔽板134が開口121を全く閉塞しない位置に移動させて、前述の全体パノラマX線撮影も可能な構成にしてもよい。
【0148】
また、遮蔽板134の開口134cが、スリット部材12aの開口121の上下端の方に向かって進んでいくと、遮蔽板134の開口134cと、スリット部材12aの開口121との重合部が、開口134cの上下幅よりも小さくなるので、そのときに重合部で形成される開口12Sの上下方向の開口寸法も増減変化させることが出来る。
【0149】
この例では、遮蔽板134は遮蔽部を構成し、スリット部材12aと遮蔽板134との組み合わせはX線の一部を通過させる開口12Sを形成する開口部を構成している。
【0150】
図12(c)に示す照射野規制部駆動機構13も、
図12(b)と同様のスリット部材12aを用い、遮蔽板136と組み合わせて構成されているが、遮蔽板136は、水平方向に移動する構成になっている。
【0151】
スリット部材12aは、前述したものと同様な縦長の開口121を開設しており、遮蔽板136は、その下方端137をガイド溝131に嵌め入れ、上方端138に、それぞれの内部にネジ溝を形成した雌ネジ部135c,135cを設け、これらの雌ネジ部135c,135cに、ネジ山を形成したモータ133の回転軸132を螺合貫通させた構造とされている。そして、遮蔽板136に開設した開口136cは、上下が同じ寸法となって斜め下方向に延びている。
【0152】
このような構造によれば、スリット部材12aに開設された開口121と、遮蔽板136に開設した開口136cとの重ね合わせによって、開口12Sが形成されるので、本体制御部60からモータ133に制御信号を与え、モータ133を正転、逆転させれば、回転軸132が回転して、この回転軸132に螺合した雌ネジ部135c,135cを螺進させて、遮蔽板136を水平方向に移動させることができる。
したがって、X線ビームXBの走査時に、被写体の撮影部位に応じて、モータ133を正逆転制御すれば、開口12Sを上下させて、被写体Oへ照射するX線ビームXBの照射位置を高さ方向に沿って変位させることができる。
【0153】
また、遮蔽板136は水平方向に延びる開口136cを、被写体の撮影部位に応じた形状に形成しておけば、簡易なX線透過フィルタとなるので、開口136cの形状以外に照射されるX線ビームXBを遮断することができるので、被写体Oの撮影部位の形状に応じた開口を形成した遮蔽板を種々準備しておけば、これを取り替えることで、撮影部位以外へのX線被曝を簡易に防止することができる。
【0154】
なお、図示はしないが、この実施例の変形として、X線検出部20において、X線検出器21が高さ方向に対して変位するものとしてもよい。この場合、X線発生部10の照射野規制部12の高さ位置の変位に合わせて、X線検出器21の高さ位置も変位させ、高さ方向において、X線発生器11の焦点XFからX線検出器21の検出面の中心を結ぶ直線上に、常に、照射野規制部12の中心ないしX線ビームXBの中心が存在するようにすれば、X線検出器21へのX線照射領域を略一定とすることができ、X線検出器21の検出面面積を狭めることができる。また、X線検出器21がX線検出部20に固定され、支持部30に対してX線検出部20全体が高さ方向に対して変位できる構成としてもよい。
【0155】
この実施例では、遮蔽板136は遮蔽部を構成し、スリット部材12aと遮蔽板136との組み合わせはX線の一部を通過させる開口12Sを形成する開口部を構成している。
【0156】
<第3の実施形態>
医療用X線撮影装置の第3の実施形態について説明する。
【0157】
この実施形態の医療用X線撮影装置は、ブロック図で示す限り、
図7と異なるところはないので、ブロック図は省略する。この実施形態の特徴は、照射領域設定部61bが算出したX線ビームの走査制御条件を実行するために、照射野規制部駆動機構13が、X線ビームの走査中において、開口の高さ方向の位置を変化させるだけでなく、開口幅を広くしたり、狭くしたり変更できる機能を備えた点にある。
【0158】
図13(a)〜(c)は、この実施形態よって実行されるX線ビームXBの走査制御パターンを示している。
【0159】
このX線ビームの走査制御は、X線ビームXBは、走査中、開口12Sの高さ方向の開口幅、つまりX線ビームXBの高さ方向の広がりを、被写体Oの関心領域rの形状に応じて大小変化させることによって、第2の実施形態よりも、最適な範囲に制限できる点にある。
【0160】
図13(a)は、X線ビームXBの高さ方向の幅はX線ビームXBの走査に伴って、順次上下共に小さくなるように絞って行くパターン、
図13(b)は、X線ビームXBの高さ方向の幅を、下端はそのままにして、上端のみをX線ビームXBの走査に伴って順次小さく変化させていくパターンを示している。
図13(c)のように、X線ビームXBの高さ方向の幅を従来のX線ビームの走査に比べて小さくし、X線ビームXBの高さ方向の幅を一定にして走査させてもよい。
【0161】
また、図示しないが、X線ビームの走査制御は、
図9(c)に示したように走査方向を高さ方向VDに変化させてもよい。
【0162】
このようなX線ビームXBの走査制御は、X線ビームの走査中に、開口12Sの高さ方向の幅を大小制御することによって容易に実現できる。
【0163】
実際のX撮影時には、被写体Oの関心領域rの位置や形状に応じて、X線ビームXBは高さ方向の幅を広げたり、縮めたりして変化させ、また、必要に応じて、X線ビームの高さ方向の位置も変位させる。
【0164】
図14(a)〜(c)は、照射野規制部駆動機構の他例を示している。
この実施形態では、照射野規制部駆動機構13Cは、いずれもが開口の高さ方向の開口幅を自在に変化させる構成になっている。
【0165】
図14(a)に示す照射野規制部駆動機構13Cは、高さ方向に伸長する開口121を開設したスリット部材12aと、この開口121に対して互いに平行に配置された、上下で1組の遮蔽板134a,134bを組み合わせて構成され、スリット部材12aは固定されると共に、1組の遮蔽板134a,134bは、それぞれの同じ側の一方端を、対応して設けたガイド溝131a,131bに嵌め入れ、他方端にはネジ溝を形成した雌ネジ部135a,135bを設け、これらの雌ネジ部135a,135bを、対応して設けた1組のモータ133a,133bのネジ山を形成した回転軸132a、132bに螺合貫通させている。スリット部材12aの開口121の高さ方向の幅は、従来のパノラマ撮影に用いられるスリットと同じ幅であってもよい。
【0166】
ここで、1組の遮蔽板134a,134bを、それらの間に隙間が形成されるように平行移動させて、遮蔽板134a,134bのそれぞれで、開口121の上、下端を塞げば、そのとき生じた隙間と、スリット部材12aに開設された開口121の重合した部分が開口12Sを形成する。
【0167】
このような構造によれば、本体制御部60から2つのモータ133a,133bに制御信号を与え、それぞれのモータ133a、133bを組み合わせて駆動させれば、1組の遮蔽板134a,134bを上下に移動させてX線通過孔12Sを上下方向に広くしたり、狭くできる。
したがって、X線ビームXBの走査時に、被写体Oの撮影部位に応じて、開口12Sの高さ方向の開口幅をより細かい精度で変化させて、被写体Oへ照射するX線ビームXBの照射位置を高さ方向に沿って変位させることができる。
【0168】
なお、遮蔽板134aを上昇させ、遮蔽板134bを下降させて、開口121を全く閉塞しない位置に移動させれば、前述した全体パノラマX線撮影も可能になる。
【0169】
この実施例では、遮蔽板134a、134bは遮蔽部を構成し、スリット部材12aと遮蔽板134a、134bはX線の一部を通過させる開口12Sを形成する開口部を構成している。
【0170】
図14(b)に示す照射野規制部駆動機構13Cは、L字状の2枚の遮蔽板134a1,134b1を、中央部に開口136aが形成されるように、互いに逆向に配置した構成になっており、2枚のL字状の遮蔽板134a1,134b1は、同じ側端に、それぞれの内部にネジ溝を形成した雌ネジ部135a,135bを設け、それぞれの雌ネジ部135a、135bを、ネジ山を形成した2つのモータ133a,133bの回転軸132a,132bに螺合貫通させている。
【0171】
この実施例では、2つの遮蔽板134a1,134b1の中央部に形成される開口136aが開口12Sを構成し、遮蔽板134a1、134b1は、遮蔽部を構成し、かつ、X線の一部を通過させる開口136a(12S)を形成する開口部を構成している。
【0172】
このような構造によれば、本体制御部60から2つのモータ133a,133bに制御信号を与え、それぞれのモータ133a、133bを組み合わせて駆動させることで、X線通過孔12Sを絞りシャッターのようにして広げたり狭くしたりするだけではなく、高さ方向の幅は維持しながら位置のみ高さ方向に変更できる。したがって、X線ビームXBの走査時に、被写体の撮影部位に応じて、被写体Oへ照射するX線ビームXBの照射位置をより精度高く変位させることができる。
【0173】
図14(c)に示す照射野規制部駆動機構13Cは、高さ方向に伸長する開口121を開設したスリット部材12aと、開口136dを形成した遮蔽板134dとを組み合わせ、遮蔽板134dは、その下方に基台141を設けて、基台141には、それぞれにネジ溝を形成した1組の雌ネジ部142、142を設けて、それぞれの雌ネジ部142,142を、モータ144のネジ山を形成した回転軸143に螺合貫通させている。
【0174】
また、遮蔽板134dは、一方端をガイド溝に嵌入し、他方端には、それぞれにネジ溝を形成した1組の雌ネジ部135、135を設けて、それぞれの雌ネジ部135,135を、基台141上に固定したモータ133のネジ山を形成した回転軸132に螺合貫通させ、スリット部材12aに形成した開口121と、遮蔽板134dに形成した開口136dとを重合させることによって、開口12Sを形成している。
ここに、遮蔽板134dは遮蔽部を構成し、スリット部材12aと遮蔽板134dはX線の一部を通過させる開口12Sを形成する開口部を構成している。
【0175】
スリット部材12aに形成された開口121は、縦長の形状をなしているが、遮蔽板134dに形成した開口136dは、図では、右側端が左側端よりも寸法が大きく開口した台形状になっているので、遮蔽板134dをモータ144の回転駆動によって左方向に移動させて、開口121と開口136dを重合させて、通過孔12Sを形成すれば、開口12Sの高さ方向の開口幅は移動に伴って増大し、逆に右方向に移動させれば、開口12Sの高さ方向の開口幅は移動に伴って減少する。
【0176】
したがって、このような構造によれば、本体制御部60から2つのモータ133,144に制御信号を与え、それぞれのモータ133、144を組み合わせ駆動させることで、X線通過孔12Sの高さ方向の幅を広くしたり、狭くしたりできるので、X線ビームXBの走査時に、被写体Oの撮影部位に応じて、X線ビームの高さ方向の広がりを細かい精度で変化させて、被写体Oに照射することができる。
【0177】
なお、遮蔽板134dに形成した開口136dの形状を被写体の撮像部位に合わせて構成することで、
図12(c)の場合と同様に、簡易なX線被曝防止フィルタが構成できる。
【0178】
図15は、前述したX線ビームの走査制御の結果、
取得した全顎の
部分パノラマX線画像を示している。図において、白抜き部分が関心領域rに対応した部位であり、斜線部分は
図11と同様に、X線ビームの照射が制限されている部位を示している。
【0179】
この図に示したパノラマX線画像を、
図11(a)と比較すると、
図15のパノラマX線画像では、左、右の顎関節から前歯部に至る部分と、左、右の顎関節の外方は、さらにX線の照射が制限され、より診断に必要とされない余分な部分のX線被曝が軽減されていることが分かる。
【0180】
ついで、上下顎、上顎のみ、下顎のみを、関心領域に特定してパノラマ撮影する際の照射野規制部の制御動作を、更に具体的に説明する。
図16(a)〜(c)は、この場合における照射野規制部12の開口12Sの位置変化を示している。これらの図において、実線12h1、12h2、12h3が開口12Sの上端部の位置を示し、破線12l1、12l2、12l3が、開口12Sの下端部の位置を示している。
【0181】
この開口12Sの上端部の位置は、例えば図
14(a)図示の例では、遮蔽板134aの下端の位置であり、開口12Sの下端部の位置は134bの上端の位置である。
【0182】
全顎が関心領域に特定されて上下顎両方のパノラマX線撮影を行う場合は、照射領域設定部61bが算出し設定したX線ビームの制御条件によって、照射野規制部12で構成される開口12Sの高さ幅(Z軸方向の幅)は、幅L1に設定され、、上顎または下顎それぞれのパノラマX線撮影を行う場合は、開口12Sの高さ幅(Z軸方向の幅)は、幅L1より狭い幅L2またはL3に設定される。
【0183】
この場合は、
図16(a)に示すように、X線ビームXBの照射領域が、左側の顎関節の部位にあるときは、開口12Sの上端部の高さ位置は最高点HA1にあり、下端部の高さ位置は最高点HB1にある。そして、X線ビームXBの照射領域が左側の顎関節周辺から前歯周辺に移動すると、開口12Sの上端部の高さ位置は最低点HA2に、下端部の高さ位置は最低点HB2に変位し、更にX線ビームXBの照射領域が右側の顎関節の部位まで移動すると、開口12Sの上端部の高さ位置は最高点HA1に達し、下端部の高さ位置は最高点HB1に変位する。
【0184】
また、上顎のみを関心領域に特定されて上顎のパノラマ撮影する場合は、
図16(b)に示すように、X線ビームXBの照射領域が、左側の顎関節の部位にあるときは、開口12Sの上端部の高さ位置は最高点HA1にあり、下端部の高さ位置は前述の最高点HB1よりは高い位置の最高点HC1にある。
そして、X線ビームXBの照射領域が左側の顎関節周辺から前歯周辺に移動すると、開口12Sの上端部の高さ位置は最低点HA2まで降下し、下端部の高さ位置は前述の最低点HB2よりは高い位置の最低点HC2に変位する。X線ビームXBの照射領域が右側の顎関節の部位に移動すると、開口12Sの上端部の高さ位置は最高点HA1に達し、下端部の高さ位置は最高点HC1に変位する。なお、最高点HC1、最低点HC2は上顎の歯列の下端の位置に対応している。
【0185】
更に、下顎が関心領域に特定されてパノラマ撮影する場合は、
図16(c)に示すように、X線ビームXBの照射領域が、左側の顎関節の部位にあるときには、開口12Sの上端部の高さ位置は前述の最高点HA1よりは低い位置の最高点HD1にあり、下端部の高さ位置は最高点HB1にある。
そして、X線ビームXBの照射領域が左側の顎関節周辺から前歯周辺に移動すると、開口12Sの上端部の高さ位置は前述の最高点HA2よりは低い位置の最低点HD2に、下端部の高さ位置は最低点HB2に変位する。X線ビームXBの照射領域が右側の顎関節に移動すると、開口12Sの上端部の高さ位置は最高点HD1にあり、下端部の高さ位置は最高点HB1に変位する。ここに、最高点HD1、最低点HD2は下顎の歯列の上端の位置に対応させてある。
【0186】
ここでは、上顎、下顎のみのパノラマX線撮影において、歯牙の存在する領域のを関心領域にしているが、歯牙の存在しない顎関節周辺を関心領域として特定する場合には、上顎骨の上側部位、下顎骨の上側部位に対してX線ビームXBが照射される。
【0187】
また、
図16(b)の最高点HC1と
図16(c)の最高点HD1、
図16(b)の最低点HC2と
図16(c)の最低点HD2の高さは一致させてもよい。
【0188】
この実施形態では、このように、特定された関心領域に応じて、上顎のみまたは下顎のみのパノラマX線撮影、または、上下顎両方のパノラマX線撮影のいずれかが操作部66(
図2参照)を操作して選択されると、照射領域設定部61bはX線ビームの走査中における、X線ビームの照射位置(高さ位置)とビーム幅を決定し、照射野規制部12を作動して開口の高さ幅L1、L2またはL3を変位させて、被写体OにX線ビームXBが照射される。
【0189】
図17(a)は、
図16(b)に示すパターンのX線ビームの走査制御を用いて撮影した上顎の
部分パノラマX線撮影における
部分パノラマ
X線画像を示しており、この図では、白抜部分が関心領域r、斜線部分がX線照射が規制されて照射されない領域である。
図17(b)は、
図16(b)に示すパターンのX線ビームの走査制御を用い、さらにX線ビームXBの走査方向にX線ビームの照射規制を行うことで、前歯付近のみを関心領域rに指定して、X線画像を取得している。
【0190】
図18(a)は、
図16(c)に示すパターンのX線ビームの走査制御を用いて撮影した下顎のパノラマX線撮影におけるパノラマ画像、
図18(b)は、
図16(c)に示すパターンのX線ビームの走査制御に、さらにX線ビームXBの走査方向にX線ビームの照射規制を行うことで、前歯付近のみを関心領域rに指定して取得したX線画像を示している。
【0191】
また、X線ビームXBの照射領域の高さ方向と交差する走査方向の広がりの両端の位置の少なくとも一方を任意の位置に設定する構成においては、走査中に両端の位置の高さを一定にすることも可能であり、このような構成は、特定の歯牙のみの情報が必要な場合に特に有用である。
【0192】
ついで、照射領域設定部の機能を、操作部、表示部の動作とともに説明する。
照射野設定部61bは、診断者が操作部66を操作するなどして、部分パノラマX線撮影を選択すると、予め準備している下顎の模式的なパノラマ画像または歯 列弓Sの模式的な画像などを表示部67に表示し、診断者が操作部66を操作して選択図上で特定した関心領域rを受付ける。
診断者による関心領域rの設定操作は、選択図となる下顎の1点をピンポ
イントで指定したとき、その点を中心とした所定の矩形が撮影対象領域になるようにしてもよいし、選択図上で関心領域rとなる部分を選択して指定するようにしてもよい。
例えば、下顎右側の臼歯付近の部分パノラマ画像が必要であれば、
図31で示したような選択図を表示させて、診断の必要な部位を関心領域として特定すればよく、関心領域としては、例えば、上顎前歯、下顎前歯、上顎臼歯、下顎臼歯などが考えられ、それらのどの部位であっても特定できる。
このような構成は、目的に応じた特定のソフトウエアを組み込んだマン・マシーンインターフェースを用いれば容易に構成できる。
【0193】
このようにして、関心領域rが設定されると、照射領域設定部61bが算出し、設定したX線ビームの走査制御条件は主制御部61に与えられ、主制御部61は、支持部30の走査軌道におけるX線撮影の開始位置と終了位置を設定して、走査駆動部50を制御し、また、照射野規制部12を作動して、X線ビームXBの走査中は、X線ビームの高さ幅および高さ位置が、関心領域rに合わせて制御され、X線ビームは、関心領域rのみに制限して照射される。
【0194】
図31に示した選択図を用いて、XHH−XHL、XWL−XWRで囲まれた部位を関心領域rとして設定操作すると、被写体Oに照射されるX線ビームXBは、高さ位置の座標XHL、XHHが一定になるようにして、開口12Sの高さ幅、高さ位置が設定され、X線ビームXBは、開始位置の座標XWLと終了位置の座標XWRとの間の区間のみ照射される。支持部30の駆動は、撮影軌道全体に渡って行ってもよいし、X線ビームの照射開始位置と終了位置に至る区間のみ軌道上を移動させてもよい。
【0195】
照射野規制部12は、例えば
図14(a)図示のような、照射野規制部駆動機構13Cを備えてもよい。このような構成では遮蔽板134aの下端の位置と遮蔽板134bの上端の位置の制御で開口12Sの位置制御をすることができる。
【0196】
また、関心領域を特定した部分パノラマX線撮影は、1回に限らず、複数箇所について連続で行ってもよい。すなわち、ある歯牙2〜3本の領域の部分パノラマX線撮影に連続して別の箇所の歯牙2〜3本の領域の部分パノラマX線撮影を行うようにしてもよく、それぞれの歯牙の領域の高さが異なる場合は、開口12Sの高さを歯牙の領域の高さに適応させるよう変更して撮影を行う。
なお、
図31に示した例では、X線ビームXBが、高さ位置の座標XHL、XHHが一定になるようにして、開口12Sの高さ幅、高さ位置が設定されているが、
図17(b)、
図18(b)について説明したように、高さ位置の座標が走査中に変化してもよい。
この場合は
図33に示したように関心領域rの設定がなされ、高さ位置の座標が走査中に一定の位置にはなく、XHL1〜XHL2、XHH1〜XHH2のように順次変化する。
【0197】
このように連続して撮影した画像は、一挙に表示してもよいが、それぞれの歯牙の領域の高さ、位置に応じて画面上に並べてもよい。
この方法により、歯列の右から左に全歯牙を対象に部分パノラマX線撮影を行うこともでき、そのようにして撮影した全歯牙の画像を画面上に並べて表示することもできる。
【0198】
このような部分パノラマX線撮影では、診断に必要な最小限の範囲を関心領域として任意に設定でき、その領域にのみX線ビームを照射をすることで、被曝量の低減ができる。
特に
図31のように高さ方向の規制と走査方向の規制を同時に行う場合は被曝量低減の効果が大きい。
【0199】
本実施形態の医療用X線撮影装置Mにおいて、照射野規制部12および照射野規制部駆動機構13は、
図19(a)に示す構成にしてもよい。すなわち、独立して高さ方向(Z軸方向)に変位する遮蔽部材134a,134bを備えることで、遮蔽部材134a,134b間の高さ幅(Z軸方向の幅)を、幅L1,L2のいずれかに設定できる。つまり、上下顎両方をパノラマX線撮影する場合は、
図19(a)のように、遮蔽部材134a,134b間の高さ幅が幅L1とされる。上顎をパノラマX線撮影する場合は、
図19(b)のように、遮蔽部材134a,134b間の高さ幅が幅L2とされる。
【0200】
下顎をパノラマX線撮影する場合は、図示しないが、
図19(b)と同様、遮蔽部材134a,134b間の高さ幅が幅L3とされる。
【0201】
また、本実施例の変形例であるが、照射野規制部12および照射野規制部駆動機構13は、上述の
図19(a)の構成以外に、
図20(a)のような構成としてもよい。
すなわち、照射野規制部12が、高さ幅が幅L1となる開口121と、高さ幅が幅L2となる開口121bとを、Z軸方向の一直線上に並べて設けた構成となる。このように構成することで、スリット移動機構13が、モータ133によりネジ軸132を回転させて、照射野規制部12を高さ方向に変異させて、X線ビームXBを通過させるための開口として、開口121,121bのいずれかより選択するものとしてもよい。なお、このように構成されるとき、開口121,121bは、選択された一方の開口の高さ位置がパノラマX線撮影動作によって変異されているときに、X線発生器11からのX線ビームXBが他方の開口から漏れることのない位置に設置される。
【0202】
さらに、
図20(b)のように、照射野規制部12が、高さ幅が幅L1となる開口121と、高さ幅が幅L2となる開口121bとを、Z軸方向に対して垂直な方向(水平方向)に並べて設けた構成としてもよい。そして、X線検出部10には、レール溝131、ネジ軸132、およびモータ133で構成されるスリット移動機構13と照射野規制部12とが設置される台座部141が設置される。この台座部141は、その軸方向が水平方向となるネジ軸143に螺号した雌ネジ部142を備える。そして、ネジ軸143を回転させるモータ144が設けられる。このように構成することで、モータ144によってネジ軸143が回転して、台座部141が、開口121,121bの並ぶ水平方向に移動する。この台座部141の変位により、照射野規制部12が水平方向に移動するため、X線発生器11からのX線ビームXBを通過させる開口として、開口121,121bのいずれかが選択される。
【0203】
さらに、
図21に示すように、開口121を備えた照射野規制部12の前方に、ネジ軸153に螺号した雌ネジ部152を備えた2つの遮蔽部材151が設置される構成としても構わない。このとき、高さ方向(Z軸方向)に対して上下に配置される遮蔽部材151の雌ネジ部152それぞれのネジ溝が、互いに逆方向とされる。そして、ネジ軸153は、2つの雌ネジ部152それぞれが螺号される領域それぞれのネジ山が逆方向となるように構成される。よって、モータ154によってネジ軸153が回転すると、2つの遮蔽部材151それぞれは、その高さ方向(Z軸方向)に沿って、照射野規制部12の開口121の中心に対して対称となるように、同時に変位する。このように、2つの遮蔽部材151が高さ方向に対して同時に変位することで、この2つの遮蔽部材151によって構成される高さ幅を変えて、X線発生部10からのX線照射領域の高さ幅を変化させることができる。
【0204】
なお、上述の第1、第2の実施形態において、パノラマX線撮影時に、照射野規制部12および支持部30のいずれかの高さ位置が、支持部30の旋回角度に応じて連続的に変位するものとしたが、段階的に変位するものとしてもよい。例えば、
図6に示すように、歯列弓Sを撮影対象とするときにおいて、曲面断層領域SAを複数の領域S1〜S9に区分したとき、領域S1〜S9それぞれに対して、照射野規制部12または支持部30を、高さ位置HAs1〜HAs9に予め設定しておく。このようにすれば、領域Sn(nは、1〜9のいずれかの自然数)のいずれかを部分パノラマX線撮影するための局所領域として指定したとき、照射野規制部12または支持部30を、高さ位置HAsnに固定したまま、部分パノラマX線撮影が実行できる。
【0205】
本実施形態により、従来の口内法によるX線撮影画像の撮影領域と同じ範囲にX線照射して、医師が見慣れた従来の口内法によるX線撮影画像と同様のX線画像を部分パノラマX線画像によって生成できる。
【0206】
<第4の実施形態>
ついで、本発明の医療用X線撮影装置の第4の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0207】
図22は、医療用X線撮影装置MBの基本構成を示すブロック図である。
【0208】
この実施形態の特徴は、照射領域設定部61bが算出設定したX線ビームXBの制御条件で支持部移動機構を作動して、X線ビームの照射領域を制御する点にあり、支持部移動機構13Aは走査駆動部50によって構成されている。
図1に示す医療用X線撮影装置と同一の目的で使用する部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0209】
支持部移動機構13Aは、支持部30を旋回させる旋回用モータ54と、支持部30を高さ方向(Z軸方向)に変位させるためのZ軸モータ55と、Z軸モータ55によって支持部30を高さ方向に変位させるZ軸テーブル56と、を備える。このZ軸モータ55は、本体制御部60側に設けたモータドライバ64からの制御信号を受けて回転し、Z軸テーブル56を駆動することで、支持部30を高さ方向(Z軸方向)に変位させる。
また、スリット部材などで構成される照射野規制部12は、第2の実施形態とは異なり、X線発生部10内に固定されている。
【0210】
被写体Oの全顎パノラマX線撮影を行う場合、本実施形態では、支持部30は、被写体Oの周りを旋回しながら、左右の顎関節部分で最高点Hxに到達し、前歯部分で最低点Hyまで降下するように、支持部30は最高点Hxと最低点Hyとの間を連続的に上下に移動する。
【0211】
図23(a)〜(c)は、X線ビームXBの走査時における支持部30と、被写体Oとの位置関係を、支持部30の旋回動作に対応させて示している。
図24は、この実施形態において、パノラマ撮影を行う際に、X線ビームXBの走査時における支持部30の高さ位置を、支持部30の旋回角度に対応させて示した図であり、
支持部30がLEθ→MMθ→REθと旋回移動することは
図11(b)と同様である。
【0212】
X線ビームの走査時は、被写体Oや照射野規制部12に設けた開口12Sは、固定した状態にあるが、被写体Oや開口12Sを同時に上下に移動させてもよく、照射位置が被写体Oの撮影部位から外れて、照射域が不用意に拡大しなければよい。
【0213】
支持部移動駆動機構13Aは、支持部30の旋回軸Rxを直接、上下に移動させる構成でなく、支持部30を枢支し、かつ支持部30全体を昇降させる昇降手段を設けて、その昇降手段を昇降させる機構によって構成されてもよい。
また、第4の実施形態において、第2、第3の実施形態の照射野規制部駆動機構13をさらに併設した構成としてもよい。
【0214】
図26のような医療装置も本発明として適用できる。
図では、支持部30を枢支し、かつ支持部30全体を昇降させる昇降手段である昇降アーム35が、被写体保持部40に接続された患者フレーム45に対して、高さ方向において相対的に昇降する医療装置MB‘を示しており、昇降アーム35と患者フレーム45との間にはZ軸移動機構36を設けている。
【0215】
Z軸移動機構36は、その軸方向がZ軸方向(高さ方向)となるネジ軸を設けているが、このネジ軸をモータで回転させる構成にしてもよい。
【0216】
このような構成では、X線撮影のためにX線ビームXBを被写体Oに照射しながら、Z軸移動機構36を駆動して昇降アーム35の高さ位置を患者フレーム45に対して相対的に変位させて昇降させることで、被写体OへのX線照射を高さ方向に変位できる。
【0217】
図25(a)、(b)は、第4の実施形態
の部分パノラマX線撮影によって得られる
部分パノラマX線画像を示している。
【0218】
X線ビームXBの照射によってX線検出器21によって生成されるX線透過画像を、そのまま重ね合わせ並べると、生成された画像は、高さ方向の位置が無視されて、
図25(a)に示したようなパノラマ画像が生成される。そのため、画像生成部73では、高さ方向の位置補正を行い、その結果、
図25(b)に示したように、全顎の各部位が自然な高さ位置で配列されたパノラマ画像が生成されている。
【0219】
なお、本実施形態において、さらに第2の実施形態と同様、パノラマX線撮影を行う際に、開口12Sの高さ幅を変更する構成を採用し、上下顎両方、いずれか一方のみが選択可能とした構成を採用してもよい。
【0220】
このように支持部30の高さ位置を変位させる構成を採用する場合は、照射野規制部12は、
図20(a)のように、高さ幅の異なる開口121,121bをZ軸方向に並べた構成としてもよいし、
図20(b)のように、この開口121,121bを水平方向(Z軸方向に対して垂直な方向)に並べた構成としてもよい。
なお、
図20(a)のように、開口121,121bがZ軸方向に並べる構成では、照射野規制部12をZ軸方向にスライドさせることで、パノラマX線撮影に利用する開口が選択されるが、
図20(b)のように、開口121,121bが水平方向に並べる構成では、照射野規制部12を水平方向にスライドさせることで、パノラマX線撮影に利用する開口が選択される。
【0221】
なお、照射野の高さを変位させつつ、X線ビームXBの高さ方向の幅を可変とする構成としてもよい。
【0222】
<第5の実施形態>
ついで、本発明の医療用X線撮影装置の第5の実施形態について説明する。
【0223】
本実施形態は、被写体O、支持部30を固定した状態で、照射領域設定部61bが算出設定したX線ビームXBの制御条件でX線発生器11と照射野規制部12とを一体的に作動させる構成である。
【0224】
図27、
図28は、本実施形態の要部をなすX線発生部10の概略構成を示している。
【0225】
図27では、支持部30からX線発生部10に延びる基部10Bは梁部10BMを垂下させ、その先端に軸10Pを設けている。X線発生器11は、照射野規制部12が中空のブロック11Bを介して固定されており、頂部には軸10Pが貫通する軸受11Cが固定され、軸受11Cは軸10P回りに回動可能となっている。
【0226】
また、基部10Bには円弧の中心が軸10Pの軸心と一致するような円弧状のラック10R1が設けられ、X線発生器11の頂部にはモータ57が固定されて、その回転軸はラック10R1と噛み合うピニオン57Pが固定されている。
【0227】
このような構造によれば、モータ57を回転駆動すれば、ラック10R1上をピニオン57Pが回転しながら移動し、その移動に伴ってX線発生器11も軸10Pを中心にして回動するので、X線ビームXBを被写体Oに向けて照射し、支持部30を旋回させながら、X線発生器11を回動駆動させれば、X線発生器11の回動に伴って照射野規制部12も図示の低位置RLから高位置RHに、またはその逆に変位するので、照射野規制部12に規制されたX線ビームXBもその照射位置を高さ方向に変位させることができる。
【0228】
また、この実施形態では、軸10P、軸受11C、モータ57、ラック10R1、ピニオン57P、X線発生器11、照射野規制部12、ブロック11Bを組み合わせた機構が照射野規制部駆動機構13Bを構成している。
【0229】
図28は、X線発生器11が高さ方向にスライドして変位する構成になっている。
【0230】
基本的な構造を説明すると、支持部30のX線発生部10に延びる基部10Bは、1組のガイド部材10T、10Tと、ラック10R2を垂下させ、X線発生器11には複数のローラ11W・・・が対応して設けられ、これらのローラ11W…で、それぞれのガイド部材10T、10Tを挟持し、X線発生器10の筐体の上方に設けたモータ58の回転軸にはピニオン58Pを設けて、ラック10R2に噛合させている。X線発生器11の前面には照射野規制部12が中空のブロック11Bを介して固定されている。
【0231】
このような構造において、X線ビームXBを被写体Oに向けて照射し、支持部30を旋回させながら、モータ58を回転駆動すれば、ラック10R2上をピニオン58Pが回転しながら移動し、その移動に伴ってX線発生器11もX線発生部10内部で高さ方向にスライドして移動する。
【0232】
この実施形態では、ガイド部材11T、ローラ11W、モータ58、ラック10R2、ピニオン58P、X線発生器11、照射野規制部12、ブロック11Bを組み合わせた機構が照射野規制部駆動機構13Bを構成している。
【0233】
このような構成によれば、第4の実施形態のように支持手段30全体を移動させる必要はなく、X線発生器11の移動のみで、被写体Oの撮影部位に対してX線ビームXBの照射位置を変位させることが可能である。
【0234】
なお、図示はしないが、この第5の実施形態の変形として、X線発生部10内部で支持部30に対して固定された照射野規制部12に対してX線発生器11のみを高さ方向に移動させて、X線ビームXBが照射する位置を高さ方向に変位させる構成にしてもよい。
【0235】
次いで、照射領域設定部について説明する。
照射領域設定部61bは、操作部66を操作することで、表示部67にX線断層撮影のための選択図を、撮影種別に応じて種々な態様で表示させ、表示部67上で診断者の希望する被写体の部位を関心領域として受付けて、X線ビームの走査制御のための条件を設定するプログラムを内蔵した構成になっている。
この照射領域設定部61bは、本明細書では、走査軌道設定部61aとは独立した機能を有したものとして説明しているが、いずれも、CPUを内蔵した主制御部60に含まれるものであり、走査軌道設定部61aと同一のプログラムを実行することで機能を果たすものであってもよい。
【0236】
第1の実施態様として、表示部67に歯列弓のイラストを選択図として表示して、設定操作された関心領域を受付ける態様について説明する。
【0237】
この場合、表示部67には、
図29に示すような歯列弓のイラスト100が表示されるが、イラスト100は2次元の場合に限られず、3次元であってもよい。
3次元表示の例としては、いわゆるコンピュータグラフィックスなどで見られるような、立体的な上下の歯の歯列弓Sの3次元画像データを生成して、斜視図として表示するもの、あるいは操作を加えて回動表示するものなどが考えられる。
診断者などが、
図29に示すような歯列弓Sが表示された表示部67を見て、操作部66を用いて関心領域rを設定する。例えば、歯列弓のイラスト100と重ねて表示される図示の枠Ifの移動、拡張、縮小などを用いて関心領域rを特定する。なお、イラストが3次元の場合は、関心領域rの表示も半透明の立方体等の3次元で表示される。
【0238】
図29では、関心領域rを枠Ifで表示しているが、図示の向かい合う2つのカギ型指標Ipで関心領域rを挟んで囲うようにしてもよく、図示の、ポインタでコーナーIcをドラッグなどで移動させて自由に変形する可動の枠Ifmで関心領域rを囲むようにしてもよい。
【0239】
枠の形状も矩形に限らず、円、三角形、五角以上の多角形など様々考えられる。
【0240】
関心領域rの中心を十字で表示すると自動的にその近辺の領域が指定される等の他の表示方法でもよい。
【0241】
点線で図示したように予め定めた複数のブロックIrbのうちから所望のブロックを選択指定する方式を採用してもよい。
【0242】
図29のように関心領域rを特定すると、照射領域設定部61bは、関心領域rのみにX線ビームが照射される制御条件を算出設定して、パノラマX線撮影が行われる。
【0243】
表示部67の画面上に表示する選択図は、
図29に示す歯列弓のイラスト100のような被写体をイラスト化した画像でもよいし、位置の設定さえ適切に行ってあれば、イラストの代わりに通常の可視光を撮影するカメラで被写体を実写して得た画像を用いてもよい。
【0244】
次に模式的なイラストを選択図として用いる例を説明する。
【0245】
イラストは、現実的な形状であってもよいが、
図30(a)および
図30(b)に示すような模式的なイラスト100Dのような画像でもよい。
【0246】
図30(a)では、上顎右側の前歯から臼歯までを1番から8番までのRHのグループとし、上顎左側の前歯から臼歯までを1番から8番までのLHのグループとし、下顎右側の前歯から臼歯までを1番から8番までのRLのグループとし、下顎左側の前歯から臼歯までを1番から8番までのLLのグループとして表示している。
【0247】
この図において、TMJRは右側顎関節であり、TMJLは左側顎関節を示している。RHのグループ、LHのグループに対してRLのグループ、LLのグループは咬合面を挟んで対称となる関係にあり、RHのグループ、RLのグループに対してLHのグループ、LLのグループは正中線を含む面を挟んで対称となる関係にある。TMJRとTMJLも正中線を含む面を挟んで対称となる関係にある。
【0248】
関心領域を特定するためには、例えば、表示部67をタッチパネルとして、該当箇所をタッチで特定してもよいし、表示部67の画面上に表示するポインタをマウスなどで動かして特定してもよいし、画像に表示された番号を、例えば右上の1番を特定したい場合にキーボードで「RH8」のように入力できるようにしてもよい。 また、グループ内のいずこかを指定するとグループ全体が関心領域になるように設定してもよいし、自由に範囲指定できるようにしてもよい。
【0249】
例えば、表示部67をタッチパネルとした場合に、ある歯牙から別の歯牙まで指でなぞるようにタッチすると、その範囲内の歯牙が関心領域になるように制御することもできる。
【0250】
関心領域の範囲指定については、例えば
図30(b)のようにゾーン別に区画してゾーン指定する構成も考えられる。図示の例では、
図30(a)のイラスト100Dと同様のイラスト100D´のような模式的な画像においてRHグループの1番から5番までの前歯寄りのゾーンをRH1、6番から8番までの臼歯のゾーンをRH2のようにゾーン別区画している。同様に、LHグループの1番から5番までの前歯寄りのゾーンをLH1、6番から8番までの臼歯のゾーンをLH2で、RLグループの1番から5番までの前歯寄りのゾーンをRL1、6番から8番までの臼歯のゾーンをRL2で、LLグループの1番から5番までの前歯寄りのゾーンをLL1、6番から8番までの臼歯のゾーンをLL2で区画している。
【0251】
例えば、表示部67をタッチパネルとした場合は、RH2の枠の部分をタッチするとRH2の6番から8番までが収まる範囲が関心領域として特定されるように構成できる。
【0252】
単にRHのグループ、LHのグループ、RLのグループ、LLのグループという特定ができるようにしてもよい。その例として、表示部67をタッチパネルとした場合に、
図30(a)、
図30(b)に示す「RH」の枠の部分をタッチするとRHのグループの1番から8番まで全てが収まる範囲がCT撮影の対象として特定されるような構成などが考えられる。
【0253】
また、予め枠を準備しておいて、表示部67の上でその枠に希望範囲が収まるように移動させて特定できるようにしてもよい。
【0254】
他に、表示部67の画面上に表示する選択図として、被写体をX線撮影して得た画像を用いてもよい。
【0255】
この場合、例えば、
図32(a)に示すように、被写体をパノラマ撮影して得たパノラマ画像を選択図として表示する例が考えられる。
【0256】
図32(a)のパノラマ画像に、例えば
図29で説明した可動の枠Ifmと同じ可動の枠Ifmを表示するなどして、各種の枠や指標を表示して用いてもよい。
【0257】
歯科でしばしば行われる診断として、診察の初期に1度パノラマ撮影を行い、その後治療の後に再度X線撮影する診断がある。この場合に、診察の初期に撮ったパノラマ画像を位置の指定に用いることで、治療の後には治療した部位のみの部分パノラマX線撮影が可能である。
例えば、全顎パノラマX線画像を表示部67に表示し、その画像上で関心領域rの設定操作が可能にしておき、後日の診療で必要が生じた部位に対してのみ入力があると、座標処理部77で全体パノラマX線撮影を行った際の条件などから操作された関心領域rのみがX線照射されるように前述の高さ位置HAsnが設定されて制御されるようにしてもよい。
【0258】
図32(b)のように、被写体oの透視X線画像を異なる角度から撮影し、その角度ごとに得られた透視X線画像を表示し、表示された透視画像上で目標位置を指定し、目標部位のCT撮影を行う例なども考えられる。このような表示例としては、例えば本願出願人の出願にかかるWO2006/109808公開公報の構成を適宜応用可能である。
【0259】
また、複数のボタンをこのイラストを立体化したような形状と配置で設けて、位置指定するようにしてもよく、これは画面上に領域特定用の画像を表示することなく、直接部位の指定を行う例として考えられ、以上の歯牙別の指定、範囲指定、グループ別区画の指定などは、実施例相互間で適宜応用できる。