【実施例1】
【0014】
実施例1について
図1、
図2を用いて説明する。
【0015】
本実施例の空気調和装置はサーバー機械室などの冷房運転に特に有利な効果を奏するものであり、真冬のような外気温度が低い場合であっても冷房対象であるサーバー機械室は30℃程度で運用される。このように外気温度がサーバー機械室内の温度より低ければ、冷媒を単に循環することにより冷却できるため、圧縮機を使用することなく低消費電力にて冷房運転を行うことができる。このような低温外気の冷熱を利用するシステムをフリークーリングと呼ぶ。フリークーリングを効果的に行うため、冷媒の強制循環装置を追加したシステムが開発されつつあり、強制循環にポンプを使うことで、圧縮機を用いる冷凍サイクルに対して低消費電力にて冷房運転を行うことが可能である。
【0016】
なお、空気調和装置に付帯する設備として、冷凍機からの冷却水を通過させて空気を冷却する冷却コイルを直列に併設することで、空気調和装置と冷却コイルを通過する空気の温度差を大きくして、空気調和装置本体の低消費電力化に対応する方法がある。しかしながら、この方法は空気調和システム全体で見ると構造が煩雑化し導入コストがアップするという問題がある。
【0017】
そこで本実施例においては、上記のように冷却コイルを直列に併設することでコストを増大することなく、空気調和装置単独で低消費電力化し、尚且つ信頼性の高い空気調和装置について説明する。
【0018】
図1は、本実施例の情報通信向け空気調和装置の構成を説明するための図である。空気調和装置は、室外機6、室内機7からなり、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁4、蒸発器5を順次冷媒配管で接続して冷房運転を行う圧縮機による圧縮機サイクル運転と、凝縮器2、ポンプ3(強制冷媒循環ポンプ)、膨張弁4、蒸発器5を順次冷媒配管で接続して冷房運転するポンプによるポンプサイクル運転との双方のサイクル運転を行う。なお、両サイクルで凝縮器2、膨張弁4、蒸発器5を共有する。室内機7側には、膨張弁4、蒸発器5、アキュームレータ16、圧縮機1が搭載され、順次接続されている。蒸発器5の出口側には、冷媒温度を検出する温度センサ14と冷媒圧力を検出する圧力センサ15を備えており、これらのセンサの検出値を用いて冷媒過熱度を検出する。
【0019】
圧縮機サイクルとポンプサイクルは、室内側熱負荷と外気条件により切り替わるが、基本的には外気温度が室内温度よりも低い場合には圧縮機サイクル運転からポンプサイクル運転に切り替える。これによりポンプは圧縮機よりも消費電力が非常に低いために圧縮機サイクル運転に比べて低消費電力にて運転することが可能となる。
【0020】
ここでポンプ起動前において、それまでの運転履歴により、アキュームレータ16に冷媒が溜まり込んでいると想定されることがあり得る。このような場合にポンプ3を起動するとポンプ3の入口側に十分な液冷媒が存在しておらず、ガス冷媒がポンプ3に流入する虞がある。このように多くのガス冷媒がポンプ3に流入するとポンプ3はいわゆるキャビテーションを起こす虞があり、冷媒循環を行うことができなくなる。
【0021】
そこで本実施例の空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機1と、圧縮機1により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器2と、凝縮器2により凝縮された冷媒を減圧する減圧手段(膨張弁4)と、該減圧手段(膨張弁4)により減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器5と、蒸発器5から流れる冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する気液分離器(アキュームレータ16)と、気液分離器(アキュームレータ16)内の冷媒を加熱するヒーター24とを備えている。
【0022】
そして、圧縮機1が停止した状態で凝縮器2から流れる液冷媒を循環させるポンプ3、をさらに備え、ポンプ3が起動する前にヒーター24を動作することにより気液分離器(アキュームレータ16)内の冷媒を加熱し、その後にポンプ3を起動して当該ポンプ3により冷媒を循環させるポンプサイクル運転を行うものである。
【0023】
このようにポンプ起動前にヒーター24(アキュームレータヒーター)により、アキュームレータ16内の冷媒を加熱することで、冷媒の乾き度が大きくなる、もしくは過熱領域となり、液冷媒として存在していた冷媒が気化冷媒として冷媒がアキュームレータ16から室外機6側へ移動するため、凝縮器2の出口側に設けられた余剰冷媒調整器9に十分な液冷媒を確保することができる。よって、ポンプ起動時においては液冷媒がポンプ3に流入するため、キャビテーションを行うことなく安定してポンプ起動、及びその後のポンプサイクル運転を行うことが可能となるものである。
【0024】
図2は圧縮機サイクル運転、ポンプサイクル運転を説明するモリエル線図を示している。モリエル線図の示す内容については周知であるため詳細な説明は省略する。
図2において飽和蒸気線の右側が過熱領域であり、気相のみの状態になる。この加熱の度合いを示すのが過熱度であり圧力検出手段15による検出圧力に対して求まる飽和温度に対して、温度検出手段14による検出温度との差により求めることができる。たとえば圧力検出手段15による検出圧力に対して求まる飽和温度が20℃で、温度検出手段14による検出温度が25℃の場合には飽和温度より高く過熱状態にあり過熱度は5度である。
【0025】
ポンプサイクル運転時、蒸発器5の出口側の過熱度を室外機送風機8、ポンプ3、膨張弁4のいずれかの回転数・開度、もしくはその組み合わせにより制御する。しかし、それでもなお、蒸発器5の出口側の過熱度が確保できない場合、すなわち
図2の「ポンプによる冷凍サイクル」の下側の線(蒸発器5による液冷媒の蒸発過程)において飽和領域から過熱領域に達しない場合には、室内機7側の気液分離器16(アキュームレータ)に冷媒が溜まり込んでしまうことがあり得る。このような状態が継続すると、ポンプ3の入口側の冷媒不足が生じるため、ポンプ3のキャビテーション発生の原因となり得る。
【0026】
そこで本実施例の空気調和装置においては、ヒーター24を停止させた状態でポンプ3により冷媒を循環させるポンプサイクル運転を行っている場合に、蒸発器5の出口側の過熱度が設定値以下である場合に、ヒーター24を動作させ気液分離器(アキュームレータヒーター)の冷媒を加熱する。すなわち、蒸発器5の出口側の過熱度が確保できていない場合に、強制冷媒循環ポンプ3のキャビテーションが発生すると判断するキャビテーション検出機構を備えたものである。これにより、室内機7のアキュームレータ16に溜まり込んでいた冷媒を室外機6側に移動させることができるので、ポンプ入口側の冷媒不足を解消し、キャビテーション発生を防止することができる。
【0027】
図1において圧縮機1の入口配管と開止弁もしくは逆止弁13を介し、ポンプ3の運転時に圧縮機1をバイパスする配管に接続されている。圧縮機1の出口側には、液冷媒が逆流することを避けるため、逆止弁が接続されている。この逆止弁は、開止弁とし圧縮機運転に応じた開閉制御としても良い。ポンプ3は室内機、室外機に対して独立して設置され、制御装置を内蔵する。ポンプ3入口側には、冷媒の過冷却度をモニタするための圧力センサ10、温度センサ11を配している。
【0028】
図2において飽和液線の左側に位置する状態が、過冷却といい、液相のみの状態となる。この過冷却の度合いを示すのが、過冷却度であり、圧力センサ10による検出圧力に対して求まる飽和温度に対して、計測された温度の差より求めることができる。たとえば、検出圧力に対する飽和温度が10℃、計測された温度が5℃であれば、飽和温度より低く、過冷却であり、過冷却度が5度である。
【0029】
ポンプサイクル運転時は、過冷却度に応じ室外機送風機8、ポンプ3、膨張弁4のいずれかの回転数・開度、もしくはその組み合わせの制御により過冷却度を制御しキャビテーションを抑える。すなわち、
図2において飽和領域から過冷却領域に達するようにするものである。なお、ポンプ入口・出口には、圧縮機運転時、冷媒がポンプをバイパスするよう逆止弁23を介したバイパス配管で接続される。またポンプ前後への配管は、阻止弁20を介することで、ポンプ停止、圧縮機運転状態にて、ポンプの交換が可能とする構造である。
【0030】
ポンプは駆動音を抑えるため、その入口側配管もしくは出口側配管、もしくは入口出口両側に、消音機12が配置されておりポンプ駆動音を抑える。消音器12は、単純膨張形、挿入管形、クインケ管、共鳴管、何れでも良い。加えて、ポンプ駆動による固体伝播音を抑えるため、ポンプ3は、筐体構造物に対し、ゴム、シリコンなど固有振動数が低い振動絶縁体を介し固定する。
【0031】
またポンプ3は室外機6の近傍に設置することにより、凝縮器2−ポンプ3間の配管長を短くなるため、凝縮器2にて過冷却域に入り液化した冷媒が、配管損失にて、圧力低下、気化することを抑えることとなり、ポンプ3にキャビテーションが生じる虞を低減することができる。またポンプ3は筐体の底面に設置し、該底面は、室外機6筐体の底面より低い位置に設置することで、ポンプ起動時にポンプ内に気相が入るリスクを減らすことができる。すなわち、液冷媒は重力により下方に移動し、一方でガス冷媒は上方に移動するものであり、低い位置に設置されたポンプ3に液冷媒が流れ易くすることでキャビテーション発生するリスクを低減することができる。
【0032】
なお、キャビテーション運転を避けるため、圧縮機運転に切り替わった場合、圧縮機1の液冷媒圧縮が起こることもあり得る。よって室内風量、ポンプ運転周波数、室内機膨張弁4、いずれか、もしくはその組み合わせによる蒸発器5の出口側での過熱度が確保できない場合(
図2において飽和領域に留まる場合)、気液分離器16(アキュームレータ)をヒーター24にて加熱し、液冷媒を追い出す制御を行う。
【実施例2】
【0033】
以下、
図3を用いて実施例2について説明する。同一の符号については実施例1と同様なので説明を省略する。
【0034】
図3は、凝縮器2−ポンプ3間の配管長を短くするため、室外機6内にポンプ3を内蔵したものである。これにより凝縮器2にて過冷却域に入り液化した冷媒が、配管損失にて圧力低下、気化することをより抑えることとなり、ポンプキャビテーションリスクを減らすことができる。
【0035】
さらにポンプ3は室外機6内において下部に設置することが望ましい。これによりガス冷媒は上方へ移動することからガス冷媒がポンプ3に流入する虞を防止することができる。またポンプ3は凝縮器高さ3分の1以下の低い位置に設置することにより、ポンプ起動時にポンプ3にガス冷媒による気相が入るリスクを減らすことができる。凝縮器2よりも低い位置にポンプ3を設置することによっても同一の作用効果を奏することが可能である。
【0036】
なお、本実施例の空気調和機は室外に設置される室外機6と、室内に設置される室内機7とを備えて構成され、室内機7は、圧縮機1を内部に備えるものである。すなわち、本実施例においてはポンプ3を室外機6に内蔵していることから、さらに圧縮機を室外機6に設置すると大型化につながる。そこで本実施例において圧縮機1を室内機7に内蔵することで室外機の小型化を図るものである。
【0037】
通常の空気調和装置の場合には室内機の側にはユーザーがいることから騒音が大きな問題となり、室内機に圧縮機を配置することは難しい。しかし本実施例の空気調和装置は、サーバー等の機械室の冷房に適用されることから室内機側の騒音が大きな問題とならないことから、このように室外機6にポンプ3、そして室内機7に圧縮機1をそれぞれ内蔵することが有効である。また室内機に圧縮を設置した場合、室外機に圧縮機を搭載した場合よりも、長配管時における配管損失による冷媒循環量の低下現象が少なく抑えられるため、長配管でも高効率な圧縮サイクルを維持でき、システムの高効率化に繋がる。