【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、特許請求の範囲の独立請求項に記載した、音響信号を電気信号に変換する装置と、音響信号を電気信号に変換する方法と、プログラム要素と、コンピュータ可読媒体とを提供する。本発明の代表的な例によれば、音響信号を電気信号に変換する装置(例えば、マイクロホンのような音響電気変換器)を提供するものであり、この装置が、2つの(特に正確に2つの)例えば平行に整列させた(特に反射面を互いに対向するように配置するとともに互いに平行に配置した)、例えば固定の(例えば非可撓性で移動不可能な)ミラーであって、これらミラー間のスペース内に結合された(光のような)電磁放射の少なくとも一部分を反射するようにした(特に電磁放射をミラー間で複数回反射させるようにした)これらミラーを有する(特にこれらミラーから成る)干渉計を具えており、音響信号はスペース内に結合(又は導入)されて、この音響信号に応じて電磁放射に影響を及ぼす(又は電磁放射を操作する)(特に音響信号の内容を表すこの音響信号の物理的な特性の結果として電磁放射の少なくとも1つの特性を特性的に変化させる)ようになっており、前記装置は、更に、影響を受けた(又は操作された)電磁放射を検出するとともに、この検出した、影響を受けた電磁放射を、音響信号を表す(例えば音響信号に含まれる情報を有する)電気信号に変換するようにした電磁放射検出器と、(例えば空気圧のような環境状態の変化のような装置以外の状態の変化時に、又は装置の部材、例えば電磁放射検出器と電磁放射源との双方又は何れか一方の連続変化のような装置固有の状態の変化時に)前記装置の動作点を安定化させるようにした動作点安定化ユニットとを具えるようにする。
【0015】
本発明の他の代表的な例によれば、音響信号を電気信号に変換する方法を提供するものであり、この方法は、干渉計の2つのミラー間のスペース内に結合された電磁放射を反射させるステップと、前記音響信号を前記スペース内に結合させて(特に前記音響信号を前記電磁放射と同時に前記スペース内に結合させて、音波と電磁放射とが2つの平行なミラーにより画成された容積を同時に通過させて)前記電磁放射が前記音響信号に応じて影響を受けるようにするステップと、この影響を受けた電磁放射を検出するとともにこの検出した、影響を受けた前記電磁放射を、前記音響信号を表す電気信号に変換するステップと、前記方法を現在の動作点で安定化させるステップとを具える。
【0016】
本発明の更に他の代表的な例によれば、プロセッサにより実行された際に、上述した特徴を有する動作点安定化方法を制御又は実行するようになっているプログラム要素を提供する。
【0017】
本発明の更に他の代表的な例によれば、プロセッサにより実行された際に、上述した特徴を有するデータ処理方法を制御又は実行するようになっているコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読媒体(例えば、CD、DVD、USBスティック、フロッピー(登録商標)ディスク又はハードディスク)を提供する。
【0018】
本発明の例により実行しうる変換目的に対するデータ処理は、コンピュータプログラムにより、すなわちソフトウェアにより、又は1つ以上の特別な電子最適化回路を用いることにより、すなわちハードウェアにより、又はハイブリッド形態で、すなわちソフトウェアコンポーネント及びハードウェアコンポーネントにより実行しうる。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ又はFPGA(Field Programmable Gate Array )を用いて本発明の例を実現させることもできる。
【0019】
用語“音響信号”は特に、音声、音楽又はその他の音のような音響情報を有する力学的な波を表すことができる。音波は、物理的には、音速で移動する小さい圧力変化とみなすことができる。このような音響信号の周波数範囲は、人間の耳に聞こえる周波数をカバーするようにしうるが、可聴下音信号及び超可聴音信号をカバーするようにもできる。
【0020】
用語“電磁放射”は、所望の如何なる波長の光子をも表すことができる。従って、電磁放射は光速で伝播することができ、正確な伝播速度は、電磁放射が伝播する媒質に依存する。このような電磁放射ビームは特に、(例えば、400nm〜800nmの範囲の波長を有する)光ビームとするか、又は赤外線放射とするか、又は紫外線放射とするか、又はX線のような他の波長範囲のものにすることができる。
【0021】
用語“電気信号”は特に、ワイヤ結合伝播経路に沿って流れる電流又はその他の電荷キャリアに符号化された信号を表すことができる。例えば、電子は電気信号のキャリアとなりうる。
【0022】
用語“干渉計”は特に、電磁波、特に光波の干渉を用いて、電磁放射が伝播する媒質の特性を測定する機器を表すことができる。従って、この機器は電磁放射の干渉(及び関連の現象)を測定する装置を表すことができる。特に、この目的のために波形の干渉を用いることができる。従って、干渉法は、2つ以上の波を重畳(干渉)させてこれらの差を検出する技術である。
【0023】
用語“平行に整列された固定ミラー”は特に、互いに予め決定した距離で離間され空間的に固定された2つの、特に正確に2つのミラーを表すことができる。これらのミラーは、互いに平行平面に配置させ、一方のミラー表面で反射された電磁放射が2つのミラー間で複数回伝播して、得られた電磁放射が2つのミラー間のスペース内の音波(従って、圧力)特性に含まれる情報を反映するようにしうる。このようなミラーは、反射面上に入射された光の大部分、例えば95%を反射しうる反射面を有するようにしうる。これらのミラーは平面(すなわち平坦面)の反射面又は湾曲した(例えば凹面の)反射面を有するようにしうる。これら2つのミラーの可能な例は、|…|、(…)、|…)、(…|等としうる。
【0024】
用語“動作点”は特に、デバイスが如何に入力信号に応答しうるかを表しうるこのデバイスの動作特性を表すことができる。動作モードの変更は、光及び音響入力信号が同じ状態であっても、出力が変化し、これにより電気信号が変化する場合に存在するおそれがある。
【0025】
用語“安定化”は特に、システムにより、変化した実際の動作モードを識別できるとともに、システムが所望通りに又は調整した通りに応答する目標とする動作モード又は基準動作モードにシステムを戻すための必要なステップをこのシステムが取りうるということを表わすことができる。
【0026】
本発明の代表的な例によれば、2つの反射ミラーより成る干渉計を、これらのミラー間で複数回伝播する電磁放射ビームにより動作させる。音響内容又は音響情報をミラー間に画成されたスペース内に導入させると、(同時に電磁放射が伝播する媒質である)サンプリングスペース内の実際の圧力特性が、音響信号の内容に応じて時間的に変化し、従って、特性的に変更される。サンプリングにより、干渉計内の電磁放射が、音響信号との相互作用の結果としてこの音響信号の内容を表す検出器出力信号を生じるようにしうる。従って、2つの平行に整列された固定ミラーより成る干渉計を実現することにより、極めて高い精度を有する、特に光学的なマイクロホンを提供しうる。このような構成では機械的に移動する部品が必要とならない為、ビームスプリッタや、分割されたビームが通る基準経路のような複雑で重い光学素子を省略しうる。従って、製造努力が少なくて足り、機械的な安定性を高めることができる。更に、調整機能及び信号対雑音比が優れており、マイクロホンはコンパクトに製造しうる。又、このマイクロホンは他の装置に容易に組み込むことができる。その理由は、通常のマイクロホンでは生じるおそれのある磁界等により、装置の性能が悪影響を受けないである。
【0027】
変換機に干渉計を設けることは、複数の部分的なビームの干渉が促進されて、検出精度が極めて高くなるという趣旨に基づくものである。これらの技術的な手段によれば、マイクロホンを(20kHzまでやそれ以上の)高い音響周波数をも検出する際に極めて正確なものとしうるとともに、高い機械的な安定性をもってコンパクトに製造(例えば、半導体技術でモノリシックに集積化)しうる。安定化機能によれば、大気圧等のような環境状態の変化により生じるおそれのある、所望の動作点からのずれを、マイクロホンが受けないようにしうる。従って、本発明の代表的な例によるデバイスは、劣悪な状態の下でも用いることができる。次に、本発明の更なる代表的な例のデバイスを説明する。しかし、これらの例も本発明の方法、プログラム要素及びコンピュータ可読媒体に適用する。
【0028】
動作点安定化ユニットは、少なくとも1つのパラメータをモニタリングし、特に、デバイスの現在の動作点を表す電気信号(又はその一部分、例えばその直流電流部分)をモニタリングし且つ、予め決定した目標とする動作点からの現在の動作点のずれを決定する場合には、動作点が目標とする動作点に戻るようにデバイスを制御することにより動作点を安定化するように適合させることができる。このデバイスの好適な例は、変換システムの動作点の安定化に関連するようにする。この例には、幾つかの手段を講じることにより、特に変換器の電気出力を、所望に応じ又は必要に応じシステムの動作モード又は動作パラメータ(例えば、光源を附勢する駆動電流)を変更しうる回路に帰還させることにより外部の影響の変化を補償し、これによりデバイスの動作点を安定化させる手段を含めることができる。
【0029】
干渉計は、ファブリペロー型干渉計とすることができる。このようなファブリペロー型干渉計又はエタロンは、互いに平行な2つの高反射性のミラーから構成しうる。これらのミラー間に空気のような媒質を存在させ、この媒質を、検出すべき音波を発生する音源に音響的に結合させることができる。しかし、空気に代わるものとして、音波を伝播する他の多くの媒質が可能である。空気に代わるこのような媒質の例には、他の気体、水、(例えば医療プローブのような医療分野に対し用いるデバイスの例に対する)血液、その他の液体、ゼラチン又は固体がある。
【0030】
波長の関数としてのファブリペロー型干渉計の透過スペクトルは、エタロンの共振に相当する大きな透過のピークを呈する。本発明の代表的な例によりファブリペロー型干渉計を変換器に設けるのが極めて有利である。その理由は、このようにすることにより、適切な性能を遂行するコンパクトで、丈夫で簡単な構成配置が得られる為である。
【0031】
平行に整列された2つの固定ミラーは、これらのミラー間のスペース内に結合された光を複数回反射させるように適合させることができる。従って、システムは可視光に対し動作するようにでき、従って、その構成を簡単にできる。その理由は、光源と、光検出器と、対応する光学素子とが市販されており、本発明の代表的な例にとって簡単に構成しうる為である。干渉効果を高めるのにコヒレントで基本的に単色の光を用いるのが好ましい。
【0032】
或いはまた、干渉計は、色分散を生ぜしめるように設計した光定在波共振器であるG.T.(Gires-Tournois)干渉計とすることができる。フロントミラーは部分的に反射性であり、バックミラーは高反射率を有する。この場合、放射源及び検出器は同じ側に配置する。
【0033】
デバイスに用いる電磁放射検出器は、例えばホトダイオードを有するようにしうる。ホトダイオードは、照明に応答して電気特性が変化する半導体ダイオードとして表すことができる。特に、ホトダイオードは、光に感応する電気特性を有する半導体2端子素子とすることができる。
【0034】
電磁放射検出器は2つのミラーの一方に(例えば、如何なる層又は素子をも間に設けることなしに)直接取り付けることができる。換言すれば、検出器、例えばホトダイオードを一方のミラーの表面に装着又は組み立てることにより、光学的な不整合を安全に防止しうるという理由で、高精度及び極めてコンパクトな配置を達成しうるようにする。他の例では、ミラーと検出器との間に層又は被膜、例えば反射防止層を設けることができる。
【0035】
デバイスは更に、ミラー間のスペース内に結合さすべき電磁放射を発生させるようにした電磁放射源を有するようにしうる。このような電磁放射源は、例えば電流を用いて対応励起させた際に光のような電磁放射を発生する素子としうる。電磁放射を発生させる電気的な機構は特に優れている。その理由は、(電流のような)電気励起信号を調整することにより、電磁放射源の放出特性を調整しうる為である。
【0036】
電磁放射源は、高周波搬送波を用いて電磁放射を発生させるようになっている。電磁放射により(例えば20MHzの)高周波搬送波を変調した場合、対応する検出システムの信号対雑音比を著しく高めることができる。従って、この手段を講じることにより、光マイクロホンを高精度で動作させることができるようになる。
【0037】
電磁放射検出器は2つのミラーの一方に(例えば、如何なる素子又は層をも間に設けることなしに)直接取り付けることができる。特に、電磁放射検出器と電磁放射源との一方を2つのミラーの一方に取り付け、電磁放射検出器と電磁放射源との他方を2つのミラーの他方に取り付けることができる。このようにすることにより、伝播経路を短くした、極めてコンパクトで精度の良い光マイクロホンを得ることができるようになる。その理由は、光の導入と光の検出とを空間的に互いに接近させて行い得る為である。他の例では、ミラーと光源との間に層又は被膜、例えば反射防止層を設けることができる。
【0038】
或いはまた、光源と、ミラーと、光検出器とを共通ブロックとして実現する、例えばこれらの素子をシリコンブロックのような半導体ブロック内に集積化することができる。
【0039】
電磁放射源はレーザを有するようにでき、特に垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を有するようにできる。このようなVCSELは、レーザビームが頂面に対し垂直に放出される種類の半導体レーザダイオードである。或いはまた、他の例では、ウエハから個々のチップをクリービングすることにより形成した表面から発光するエッジ発光型半導体レーザを用いることもできる。VCSELは有利な例となりうるものである。その理由は、このVCSELは、廉価に製造でき、大きな波長範囲に亘って制御でき、小型にできる為である。レーザを用いることにより、単色コヒレント光を確実に用いうるようになる。
【0040】
或いはまた、電磁放射源は、レーザ装置の活性領域が回折格子として構成された分布帰還型レーザを有するようにしうる。分布ブラッグ反射器として知られた格子は、その構造体からの分布ブラッグ散乱中にレーザに対し光帰還を達成し、従って、光キャビティを形成するのに個別のミラーが用いられない。
【0041】
電磁放射源は、この電磁放射源に組み込んだ又は取り付けた、すなわち機能的に割り当てられた、他の電磁放射検出器を有するようにしうる。例えば、電磁放射源内に追加のホトダイオードを埋め込み、組合せの“放射源及び補助検出器部材”を形成するようにしうる。この補助検出器の信号は、主検出器により得られる第1の差動増幅器入力に加えて第2の差動増幅器入力として差動増幅器に用いることができ、電磁放射源の位置での放射特性を表すことができる。このような差分信号解析によれば、精度を更に高めることができる。
【0042】
従って、デバイスには、電磁放射検出器に結合された第1の入力端と、前記他の電磁放射検出器に結合された第2の入力端と、音響信号を表す電気信号を生じる出力端とを有する差動増幅器をも設けることできる。得られた差分信号が電磁放射源からの又はこの電磁放射源を動作させる電力源からの妨害雑音に依存しないようにしうる。
【0043】
デバイスには更に、平行に整列された2つの固定ミラーを強固に連結するとともにミラー間にスペースを画成する剛性連結素子を設けることができる。棒等のような剛性連結素子により2つのミラーを、無作為に変化しえない規定の間隔を有するように連結することができる。このような剛性の連結素子を設けることにより、光マイクロホンが機械的な衝撃等を受けるおそれのある携帯電話又はその他の携帯機器におけるような劣悪な状態の下でもこの光マイクロホンを使用しうるようにできる。2つのミラーをこれらの間に空隙があるように強固に連結することにより、機械的な衝撃を受けた際に光学系の不所望な不整合を安全に回避しうる。
【0044】
デバイスには更に、電気信号を直流電流(DC)成分と交流電流(AC)成分とに分離させるようにした電気信号分離器を設け、交流電流成分が音響信号を表すものとすることができる。例えば、このような電気信号分離器は、交流電流成分を解析回路に供給し音響情報を電気形態で取り出すバイアスティー(交流結合)とすることができる。これとは相違し、直流電流成分を帰還回路で解析して、電流で光源を附勢する電源を制御するようにしうる。バイアスティーは、3つのポートが“T”の字状に配置され、充分に高い周波数(例えば、20Hz〜100kHz)が水平方向でTを通り、低周波数が90°曲がる一種のマルチプレクサとして表すことができる。このようなバイアスティーは、1つのキャパシタと1つのコイルとを以て構成することができる。
【0045】
デバイスには、取り出された直流電流成分が供給される(1つ以上の電子部材が帰還ループに接続されている)帰還回路を設けることができる。帰還は、直流成分から取り出しうるデバイスの動作点を決定するとともに、動作点が、予め決定した基準の(又は目標とする)動作点に調整されるように電磁放射源を制御するように適合させることができる。このような帰還回路は、電気信号分離器の出力を電磁放射源の電源に戻すように結合する電気回路とすることができる。このような帰還回路では、直流電流成分を解析して、“実際の”動作点が“所望の”目標とする又は基準の動作点からずれ、これに応じて動作変数を変えるおそれがあるか否かを決定しうる多数の能動電子素子及び受動電子素子の双方又は何れか一方か又は(ASIC又はFPGAのような)集積回路を配置することができる。このような回路は、比例微分積分調整回路(PID調整回路)とすることができる。このような状況では、例えば、電磁放射源の電源の電気的附勢信号(特に電流)を変更し、レーザダイオードの放射波長のような放射特性を変えることにより、システムを、所望の動作点に戻されるように駆動されるように調整する。帰還ループの制御応答時間は比較的遅く、例えばミリ秒のレンジ(例えば、20m秒〜100m秒)にすることができる。
【0046】
他の例では、制御応答時間が高速となる、すなわちμ秒のレンジ(例えば5μ秒〜50μ秒)となるように帰還ループを設計することができる。この手段を講じることにより、温度、気圧等が異なることによる環境変化を少なくとも部分的に、好ましくは完全に補償することができる(エタロンを通る透過関数は周期的であることに注意すべきである)。
【0047】
デバイスは基板内にモノリシックに集積化しうる。例えば、デバイスを半導体技術、特にシリコン技術で、又はセラミック技術で製造しうる。従って、デバイスの素子の一部又は全てを、堆積処理、エッチング処理、リソグラフ処理又はその他の処理を用いて上述したような半導体基板内にモノリシックに集積化しうる。このようにすることにより、デバイスを極めてコンパクトな構成配置としうる。
【0048】
デバイスは、特に携帯機器に構成した如何なる音響システムの一部をも構成できるものである。例えば、デバイスの例は、マイクロホン、オーディオサラウンドシステム、携帯電話、ヘッドセット、ヘッドホン型再生装置、拡声器型再生装置、補聴器、テレビジョン装置、ビデオレコーダ、モニタ、ゲーム機、ラップトップ型コンピュータ、オーディオプレーヤ、DVDプレーヤ、CDプレーヤ、ハードディスクベースのメディアプレーヤ、無線装置、インターネット無線装置、一般的な娯楽端末、MP3プレーヤ、ハイファイシステム、ビークル娯楽端末、カー娯楽端末、医療通信システム、(血液プローブのような)医療機器、装着式装置、音声通信装置、ホームシネマシステム、ホームシアタシステム、薄型テレビジョン装置、環境創造装置、サブウーファーシステム又はミュージックホールシステムとするか或いはその一部とすることができる。従って、小型の光マイクロホンが有利となる各状況において、上述したデバイスを適用しうる。特に、小型で廉価なデバイスは、頑丈で、精密で、廉価なマイクロホンが望まれている携帯電話のような携帯機器分野に適している。
【0049】
本発明の例によれば、膜のない光マイクロホンを提供する。膜を省略することにより、膜に基づく設計上の制限を受けないという利点が得られる。例えば、膜をベースとするシステムは、光マイクロホンの、膜及びバック電極間の距離、バックボリューム、共振、バック電極の孔、必要とする剛性、表面特性及びその他のような材料に特有の又は幾何学的な制限を考慮する必要がある。本発明の例によれば更に、光マイクロホンの膜の不均一な伸びにより生ぜしめられる通常の信号平均化効果を解決する。従って、(音声、音楽又は他の雑音のような)音響信号を電圧に変換する電気‐光‐音響変換器であって、高ダイナミックレンジ、大きな信号対雑音比、広い周波数レンジ及びハイレンジの線形動作を有する変換器が得られる。このようなマイクロホンには、膜のような機械的に移動する如何なる構成素子をも設けないようにしうる。この手段を講じることにより、膜の存在により生じる多数の問題、特にボディサウンドに関する不所望な感度、バックボリューム、設計上の制限及び材料上の制限を解消しうる。本発明の例は、ボディノイズに対し感応しにくくしうる。このような例は、機械的に高い安定性を有するとともに、妨害を及ぼす風雑音等に感応しなくなる。
【0050】
本発明の代表的な例によるマイクロホンは、機能原理が純粋に光学的である結果として、電磁界を乱すおそれがない。ライトガイドを必要としないファブリペロー型共振器を用いる場合には、構成を簡単にでき、基準信号を必要としなくなる。半導体ダイオード、特にVCSELを用いる場合には、レーザを駆動する電流を連続的に変えることにより、マイクロホンの動作点を調整することができる。従って、天候、標高、圧力又は温度に関する外部状態の変化を補償しうる。差分信号評価機構を構成することにより、測定信号が、レーザ雑音のような不所望な雑音源に全く又は殆ど依存しなくなるようにしうる。更に、信号対雑音比を改善するために、供給電流に高周波変調を行うことによりレーザダイオードの波長を変調させることができる。本発明の一例によるマイクロホンは、半導体基部上にモノリシックに集積化して製造しうる為、システムを小型化しうる。
【0051】
一例では、膜を省略するマイクロホンを構成するのに、ファブリペロー型エタロンと、光検出器と、VCSELレーザダイオードとを組み合わせて、レーザの供給電流を変えることにより、システムの目標動作点を維持するようにしうる。供給電流はレーザの発光波長に影響を及ぼす為、波長を変えることによりエタロンを通る光透過量を変更し、これによりデバイスの動作点を調整することができる。結論付けるに、電磁放射源の供給電流は、動作点を調整するのに用いることができる。これと同時に、(例えば、20Hz〜20kHzの周波数レンジにおける)使用信号を評価するとともに、動作点を(例えば、<20Hzに)安定化させる調整信号を得るのに検出器を用いることができる。調整ループを集積化することにより、最適な動作点を維持させることができる。従って、不所望な環境ファクタによりこのようなデバイスに悪影響を及ぼすことがない。
【0052】
差分信号を評価するためにレーザダイオードにすぐ隣接する基準検出器を用いることができる。基準検出器としては、レーザダイオード内にホトダイオードを設けるようにすることもできる。
【0053】
一例では、信号対雑音比を更に高めるために、使用レンジよりも高い周波数によるレーザの高周波変調及び選択評価を行うようにすることができる。
【0054】
一例によるシステムでは、その感応性は高く、ダイナミックレンジは高いとともに固有雑音は小さい。又、高い音圧でさえも直線的に伝達させることができる。いわゆる機械的な熱雑音は減少又は最小化させることができる。集積化の製造可能性によれば、デバイスを高い費用効率で製造しうる。可視光と比べて他の、例えば赤外線又は紫外線の音波サンプリングプローブが可能である。代表的な例では基準セルが存在しない為に、構成が簡単でコンパクトとなる。
【0055】
本発明の上述した態様及びその他の態様は、以下に説明する代表的な実施例から明らかとなるものであり、これらにつき説明する。