特許第5667981号(P5667981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667981芯鞘複合繊維、同芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸及びその製造方法、並びにそれらの繊維から構成された織編物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667981
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】芯鞘複合繊維、同芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸及びその製造方法、並びにそれらの繊維から構成された織編物
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20150122BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20150122BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20150122BHJP
   D02G 1/02 20060101ALI20150122BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   D01F8/14 Z
   D01F8/06
   D03D15/00 A
   D02G1/02 Z
   D03D15/00 E
   D04B1/16
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-527912(P2011-527912)
(86)(22)【出願日】2011年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2011063128
(87)【国際公開番号】WO2011155524
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2012年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-131416(P2010-131416)
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301067416
【氏名又は名称】三菱レイヨン・テキスタイル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】今北 純哉
(72)【発明者】
【氏名】横山 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高島 嘉守
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−013225(JP,A)
【文献】 特開平08−113828(JP,A)
【文献】 特開2009−079330(JP,A)
【文献】 特公昭46−003814(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/00 − 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と鞘部とを有する芯鞘複合繊維であって、芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1〜3質量%含有し、芯部が屈折率Aの樹脂を主成分とし、鞘部が屈折率Bの樹脂を主成分とし、A及びBが以下の式(1)を満足し、芯部と鞘部との体積比が1/4〜1/10である芯鞘複合繊維。
|A−B|≧0.01・・・(1)
【請求項2】
芯部と鞘部とを有する芯鞘複合繊維であって、芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1〜3質量%含有し、芯部が熱伝導率(W/m・K)Cの樹脂を主成分とし、鞘部が熱伝導率(W/m・K)Dの樹脂を主成分とし、C及びDが以下の式(2)を満足し、芯部と鞘部との体積比が1/4〜1/10である芯鞘複合繊維。
|C−D|≧0.01・・・(2)
【請求項3】
芯部の主成分がポリオレフィン樹脂であり、鞘部の主成分がポリエステル樹脂であり、二酸化チタンを1〜1.9質量%含有する請求項1又は2いずれか一項に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂である請求項3に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項5】
ポリオレフィン樹脂の融点が130℃〜180℃の範囲内である請求項4に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項6】
ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂である請求項4又は5に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項7】
ポリエチレンテレフタレート樹脂が下記式(3)及び(4)を満足するポリエチレンテレフタレート樹脂である請求項6に記載の芯鞘複合繊維。
0.8≦s≦5・・・(3)
2≦a≦15 ・・・(4) ただし、s及びaは、それぞれポリエチレンテレフタレート樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)である。
【請求項8】
下記式(5)を満足する請求項1〜7いずれか一項に記載の芯鞘複合繊維。
10≦CMVR≦40 ・・・(5)
ただし、CMVRは、芯部及び鞘部の主成分の樹脂のうち高い融点を有する樹脂の融点より25℃高い温度における、低い融点を有する樹脂のMVR(cm/10分)である。
【請求項9】
繊維軸に直角方向の断面形状が三角、四角、中空又はY型である請求項8に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項10】
単繊維繊度が3dtex以下である請求項8に記載の芯鞘複合繊維。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項に記載の芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸。
【請求項12】
請求項1〜10いずれか一項に記載の芯鞘複合繊維を、以下の(6)〜(8)を満足する条件で仮撚加工する仮撚加工糸の製造方法。
(TL−20)≦TT≦(TL+30)・・・・・・・・・・(6)
K≦31000・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
0.1cN/dtex≦TE≦0.2cN/dtex・・・(8) ただし、TLは芯部及び鞘部の主成分の樹脂のうち低い融点を有する樹脂の融点、TTは仮撚温度、Kは仮撚係数、TEは仮撚張力を示す。なお、仮撚係数は、仮撚加工を施された繊維の繊度と仮撚数との関係で示される係数で、下記の式で示される。
仮撚係数=仮撚数(t/m)×(繊維の繊度(dtex)÷10×9)1/2
【請求項13】
請求項1又は2いずれか一項に記載の芯鞘複合繊維から構成され、通気度が240〜350cm/cm/秒であり、目付が220〜300g/mの織編物であって、以下の(E)および(F)の少なくとも1つを満足する織編物。
(E)R値が24以下である
(F)赤外線透過率が32%以下である
ただし、R値は遮熱性試験によって測定される温度上昇(℃)である。
【請求項14】
繊維中の二酸化チタンの含有率が1.4〜1.9(質量%)である請求項13記載の織編物。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芯鞘複合繊維から構成された織編物。
【請求項16】
目付が40〜400g/mである請求項15に記載の織編物。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の芯鞘複合繊維を表糸及び/又は裏糸としてリバーシブル編地に編成した請求項15又は16に記載の織編物。
【請求項18】
請求項11に記載の仮撚加工糸から構成された織編物。
【請求項19】
目付が40〜400g/mである請求項18に記載の織編物。
【請求項20】
請求項11に記載の仮撚加工糸を表糸及び/又は裏糸としてリバーシブル編地に編成した請求項18又は19に記載の織編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽からの輻射熱を遮断する芯鞘複合繊維及びその繊維を含む織編物に関する。
本願は、2010年6月8日に、日本に出願された特願2010−131416号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、遮光性を目的としたカーテンや衣服に用いる繊維として、酸化チタンやタルク、硫酸バリウムといった白色顔料や、カーボンブラック、アルミニウム粉末といった無機微粒子を繊維中に分散させる方法による繊維が知られている(特許文献1、2)。また、雪上での白色擬装用途の布帛として、ポリビニルアルコール系繊維が鞘糸で合成繊維マルチフィラメントを芯糸であるコアヤーンからなる、紫外線反射性白色布帛が知られている(特許文献3)。
【0003】
一方、芯鞘複合繊維の技術は、広く知られている。例えば、次のように芯鞘複合繊維の技術を用いて、耐摩擦溶融性を有する繊維を製造することが知られている。その繊維は、鞘部が200℃以上の融点をもつ熱可塑性重合体で、芯部が結晶核剤を含むポリプロピレンである芯鞘複合繊維である(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の方法は、太陽からの輻射熱を十分に遮断するためには、繊維中に大量の無機微粒子を含有させなければならない。その結果、製糸工程の安定性が悪くなるだけでなく、繊維及び製品の風合いが著しく損なわれるという問題がある。
また、特許文献3のポリビニルアルコール系繊維は、輻射熱を遮断する効果はあるが、糸の強度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−81048号公報
【特許文献2】特開平9−137345号公報
【特許文献3】特開平9−228188号公報
【特許文献4】特許第3452291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、繊維の風合いを損なうことなく、太陽の輻射熱すなわち赤外光を効率よく遮蔽又は吸収する繊維、及びその繊維を用いた織編物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、その繊維の紡糸工程の安定性及び仮撚工程の通過性を良好にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、芯部と鞘部とを有する芯鞘複合繊維であって、芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1〜3質量%含有し、芯部が屈折率Aの樹脂を主成分とし、鞘部が屈折率Bの樹脂を主成分とし、A及びBが以下の式(1)を満足し、芯部と鞘部との体積比が1/4〜1/10である芯鞘複合繊維にある。
|A−B|≧0.01・・・(1)
さらに、本発明の要旨は、芯部と鞘部とを有する芯鞘複合繊維であって、芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1〜3質量%含有し、芯部が熱伝導率(W/m・K)Cの樹脂を主成分とし、鞘部が熱伝導率(W/m・K)Dの樹脂を主成分とし、C及びDが以下の式(2)を満足し、芯部と鞘部との体積比が1/4〜1/10である芯鞘複合繊維にある。
|C−D|≧0.01・・・(2)
さらに、本発明の要旨は、下記式(5)を満足する芯鞘複合繊維にある。
10≦CMVR≦40 ・・・(5)
【0008】
ただし、CMVRは、芯部及び鞘部の主成分の樹脂のうち高い融点を有する樹脂の融点より25℃高い温度における、低い融点を有する樹脂のMVR(cm/10分)である。
また、本発明の要旨は、上記式(5)を満足する芯鞘複合繊維を、以下の(6)〜(8)を満足する条件で仮撚加工する仮撚加工糸の製造方法にある。

(TL−20)≦TT≦(TL+30)・・・・・・・・・・(6)
K≦31000・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
0.1cN/dtex≦TE≦0.2cN/dtex・・・(8) ただし、TLは芯部及び鞘部の主成分の樹脂のうち低い融点を有する樹脂の融点、TTは仮撚温度、Kは仮撚係数、TEは仮撚張力を示す。なお、仮撚係数は、仮撚加工を施された繊維の繊度と仮撚数との関係で示される係数で、下記の式で示される。
仮撚係数=仮撚数(t/m)×(繊維の繊度(dtex)÷10×9)1/2
【発明の効果】
【0009】
本発明の芯鞘複合繊維は、繊維の風合いを損なうことなく、太陽からの輻射熱を遮断する。すなわち赤外光を効率よく遮蔽又は吸収する。そして、その繊維を用いた織編物は、カーテンや衣服としたときに、太陽からの輻射熱すなわち赤外光を効率よく遮蔽又は吸収する。
さらに、本発明の芯鞘複合繊維は、紫外光及び可視光を効率よく遮蔽又は吸収する。そして、その繊維を用いた織編物は、カーテンや衣服としたときに、紫外光及び可視光を効率よく遮蔽又は吸収する。
さらに、本発明の芯鞘複合繊維は、耐摩擦溶融性を有する。そして、その繊維を用いた織編物は、スポーツ衣料としたときに、スライディング又は転倒等による摩擦熱を受けても、織編物が溶融しにくい。
また、本発明の芯鞘複合繊維は、紡糸工程において安定的に得られ、その繊維の仮撚工程の通過性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<芯部が屈折率Aの樹脂を主成分とし、鞘部が屈折率Bの樹脂を主成分とし、A及びBが以下の式(1)を満足する>
本発明の芯鞘複合繊維は、芯部が主成分として屈折率Aの樹脂から形成される樹脂組成物からなり、鞘部が主成分として屈折率Bの樹脂から形成される樹脂組成物からなり、A及びBが以下の式(1)を満足する必要がある。|A−B|は、AとBとの差の絶対値を意味する(以下、屈折率差ともいう)。
|A−B|≧0.01・・・(1)
芯鞘複合繊維が(1)式を満足することで、過剰の酸化チタンを含有しないので繊維の風合いを損なうことなく、太陽からの輻射熱を遮断する。すなわち赤外光を効率よく遮蔽又は吸収する。この理由の一つとしては、芯鞘界面において光が反射するためと考えられる。
【0011】
例えば、芯部及び/又は鞘部を形成する樹脂は、ポリエチレン樹脂、ナイロン6樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等である。
繊維便覧 原料編 繊維学会編(1968年11月30日発行)の第218〜219ページの表2・26には、各種樹脂の繊維の繊維軸に直角方向の屈折率について次のように記載されている。
ポリエチレン繊維1.512〜1.520、ポリプロピレン繊維1.488、ナイロン6繊維1.515、ポリエチレンテレフタレート繊維1.372〜1.781
【0012】
<芯部が熱伝導率(W/m・K)Cの樹脂を主成分とし、鞘部が熱伝導率(W/m・K)Dの樹脂を主成分とし、C及びDが以下の式(2)を満足する>
本発明の芯鞘複合繊維は、芯部が熱伝導率(W/m・K)Cの樹脂を主成分とし、鞘部が熱伝導率(W/m・K)Dの樹脂を主成分とし、C及びDが以下の式(2)を満足することが必要である。|C−D|は、CとDとの差の絶対値を意味する(以下、熱伝導率差ともいう)。
|C−D|≧0.01・・・(2)
【0013】
例えば、芯部及び/又は鞘部を形成する樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等である。
繊維便覧 原料編 繊維学会編(1968年11月30日発行)の第107ページの表1・28には、各種高分子物質の50℃の熱伝導率[10−4・cal・deg−1・cm−1・sec−1]について次のように記載されている。
密度0.918g・cm−3のポリエチレン7.0〜9.7、isot−ポリプロピレン5.2、ポリエチレンテレフタレート5.2〜6.8、ポリ塩化ビニル4.0
上の熱伝導率の値の単位を(W/m・K)に変換すると以下の値になる。
密度0.918g・cm−3のポリエチレン0.29〜0.41、isot−ポリプロピレン0.22、ポリエチレンテレフタレート0.22〜0.28、ポリ塩化ビニル0.17
【0014】
<芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1〜3質量%含有する>
本発明の芯鞘複合繊維は、芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1〜3質量%含有する必要がある。二酸化チタンが3質量%以下であることは、太陽の輻射熱を遮断する効果を奏し、二酸化チタンの添加による増粘もさほど大きくないため製糸性不良を発生させない。逆に、二酸化チタンが1質量%以上であることは、目的の太陽の輻射熱を遮断する効果を有する。鞘部に二酸化チタンを配した場合は、製糸後の工程で糸道ガイドを磨耗させることがある。このため、二酸化チタンは、芯部に配することが好ましい。
また、芯部及び鞘部の樹脂に二酸化チタンを含有することは、太陽の輻射熱を遮断する効果が最も得られるので好ましい。使用される二酸化チタンは、合成繊維等の製造の際に使用される二酸化チタンであれば限定されない。
【0015】
しかし、分散性の点からアナターゼ型二酸化チタンを使用することが
好ましい。
さらには、芯鞘複合繊維が二酸化チタンを1.4〜2質量%含有することが好ましい。
また二酸化チタンの一次粒子の平均粒子径は、紡糸工程での安定性を考慮して、0.1〜1μmの範囲内が好ましく、0.1〜0.3μmの範囲内がより好ましい。容易に入手しうる酸化チタンは、例えば、クロノス社製二酸化チタンADD等である。
【0016】
<R値が24以下であること>
本発明の芯鞘複合繊維は、通気度が240〜350cm/cm/秒であり、目付が220〜300g/mである織編物にしたときに、R値が24以下であることが好ましい。R値は遮熱性試験によって測定される温度上昇(℃)である。R値が24以下であることにより、織編物を使用する環境において、快適に使用することができる。R値は、より好ましくは23以下、さらに好ましくは22以下であるとよい。
なお、220〜300g/mという目付の数値は、衣料用の織編物の標準的な目付であり、通気度が240〜350cm/cm/秒という数値は、前述の目付の織編物の標準的な通気度である。
【0017】
比較例1、2および5を見ると、中実のポリエステル繊維において、繊維中のニ酸化チタンの含有率(質量%)が2質量%から下がるにつれ、R値が減少している。
しかしながら、芯部の主成分がポリエチレン樹脂であり、鞘部の主成分がポリエステル樹脂であり、芯と鞘との体積比を変更した実施例1〜5によれば、繊維中のニ酸化チタンの含有率(質量%)が2質量%から下がるにつれR値が上昇している。
この理由としては、芯部と鞘部との樹脂の屈折率差または熱伝導率差が影響していると考えられる。
【0018】
<赤外線透過率が32%以下であること>
本発明の芯鞘複合繊維は、目付が220〜300g/mの織編物にしたときに、赤外線透過率が32%以下であることが好ましい。赤外線透過率が32%以下であることにより、太陽の輻射熱すなわち赤外光が効率よく遮蔽又は吸収される。赤外線透過率はより好ましくは30以下、さらに好ましくは27%以下であるとよい。
なお、前述のR値のときと同様に、実施例1〜5によれば、繊維中のニ酸化チタンの含有率(質量%)が2質量%から下がるにつれ赤外線透過率が上昇している。前述のR値の範囲と赤外線透過率の範囲は同時に満足することが好ましい。
【0019】
<芯部の樹脂組成物の主成分>
本発明の芯鞘複合繊維は、芯部の樹脂組成物が主としてポリオレフィン樹脂から形成されることが好ましい。芯部を形成するポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等である。
熱伝導率の高いポリエチレン樹脂を芯部に配し、ポリエチレン樹脂より熱伝導率の低いポリエステル樹脂等を鞘部に配することは、熱伝導率差が正で、かつ熱伝導率差が大きくなる。このため、熱が繊維の径方向に比べて繊維の長手方向に伝達され易くなり、熱が織編物の厚み方向に伝達されにくくなると考えられる。使用されるポリエチレン樹脂は、公知の繊維グレードの分子量、密度のものであり、特に限定されない。容易に入手しうるポリエチレン樹脂は、例えば、日本ポリエチレン社製カーネルKF283、KF380等である。
【0020】
熱伝導率の低いポリプロピレン樹脂を芯部に配し、ポリプロピレン樹脂より熱伝導率の高いナイロン6樹脂等を鞘部に配することは、熱伝導率差が負で、かつ伝導率差が大きくなる。このため、熱が繊維の径方向に伝達され難くなり、熱が繊維の長手方向に伝達され易くなると考えられる。使用されるポリプロピレンは、公知の繊維グレードの分子量、密度のものであり、特に限定されない。容易に入手しうるポリプロピレン樹脂は、例えば、日本ポリプロ社製ノバテックSA01、SA03等である。
【0021】
また、本発明の芯鞘複合繊維は、織編物に伸縮性、嵩高性等を付与するために必要に応じて仮撚加工が施される。この仮撚加工の工程にとって、芯部の樹脂組成物の主成分は、130℃〜180℃の範囲内の融点をもつポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
当該ポリオレフィン樹脂の融点が130℃以上であることは、仮撚工程における白粉の発生を減少させる。融点が180℃以下であることは、本発明の織編物の耐摩擦溶融性を向上する。
【0022】
<鞘部の樹脂組成物の主成分>
本発明の芯鞘複合繊維は、鞘部の樹脂組成物が主としてポリエステル樹脂から形成されることが好ましい。鞘部を形成するポリエステル樹脂は、公知の繊維グレードのポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等であるが、ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
さらには、ポリエチレンテレフタレートが下記式(3)及び(4)を満足するポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。下記式(3)及び(4)を満足することは、カチオン染料で染色可能とし、かつ常圧染色が可能とする。
0.8≦s≦5・・・(3)

2≦a≦15 ・・・(4) ただし、s及びaは、それぞれポリエチレンテレフタレート樹脂中のスルホイソフタル酸単位の共重合率(モル%)及び炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸の共重合率(モル%)である。
【0023】
sが0.8モル%以上であることは、カチオン染料特有の鮮明性を良好とする。また、sが5モル%以下であることは、重合時のポリマーの溶融粘度を上昇させず、ポリマーの重合度を適切にする。その結果、繊維強度が低下しない。
スルホイソフタル酸の金属塩は、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩)等である。
また必要に応じてこれら化合物のマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類塩が併用される。中でも、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩が最もよく使われる。
【0024】
aが2モル%以上であることは、常圧染色における染色性を良好とする。Aが15モル%以下であることは、ポリエステル樹脂のガラス転移温度や融点を適切な範囲にする。その結果、必要な力学特性、堅牢性、耐熱性等を有する繊維製品が得られる。炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等であり、中でもアジピン酸が好ましい。アジピン酸を用いることは、繊維の非晶構造に適当な乱れを生じさせ、染色性が向上する。
【0025】
<芯部と鞘部との体積比が1/2〜1/10である>
本発明の芯鞘複合繊維における芯部と鞘部との体積比は、1/2〜1/10であることが必要である。芯部鞘部体積比が1/2を超えることは、鞘部が破られ芯部が露出する原因となり、製糸安定性を低下させる。芯部鞘部体積比が1/10未満であることは、繊維の遮熱性を悪化させる。この芯部と鞘部との体積比は、製糸安定性及び遮熱性の点から、1/4〜1/8の範囲内であることが好ましい。
【0026】
<10≦CMVR≦40 ・・・(5)を満足すること>
CMVRは、芯部及び鞘部の主成分の樹脂のうち高い融点を有する樹脂の融点より25℃高い温度における、低い融点を有する樹脂のMVRである。
CMVRは、10≦CMVR≦40であることが好ましい。CMVRが10以上であることは、芯鞘複合繊維を紡糸する際の安定性を良好とする。CMVRが40以下であることは、芯部の主成分の樹脂の融点が鞘部の主成分の樹脂の融点より低い場合において、仮撚加工で発生する白粉を減少させる。
【0027】
なお、白粉は、仮撚加工する際にスピナー、ガイド等に付着するものである。白粉が発生することは、本発明の芯鞘複合繊維の特徴である、太陽の輻射熱を遮断する効果や耐摩擦溶融性の性能が低下させ、織編物の品位も低下させる。
また、白粉の発生は、仮撚加工の通過性及び織物又は編物を製造する際の工程通過性を低下させる。
CMVRが40以下であることが白粉を減少させる理由は定かではないが、以下のように推察される。
芯鞘構造の樹脂組成物が紡糸ノズルから吐出される直前から直後の領域では、溶融状態の鞘部の樹脂組成物が溶融状態の芯部の樹脂組成物を覆っている。このときに、まれに芯部の主成分の樹脂の低分子量成分が鞘部の中に入ることがある。仮撚加工において繊維が変形し、鞘部に入った微量の低分子量成分が露出し、白粉となる。CMVRが40以下であることは、芯部の主成分の樹脂の低分子量成分が鞘部の樹脂組成物の中に入りにくくする。
【0028】
<繊維軸に直角方向の断面形状が三角、四角、中空又はY型>
本発明の芯鞘複合繊維の繊維軸に直角方向の断面形状は、三角、四角、中空又はY型であることが好ましい。当該断面形状が三角、四角、中空又はY型等の多角形であることは太陽光の反射率を高くし、太陽の輻射熱を遮断する効果を向上させる。また、中空断面であることは、熱伝導率が低い空気層の存在により、太陽の輻射熱を遮断する効果を向上させる。
【0029】
<単繊維繊度が3dtex以下である>
本発明の芯鞘複合繊維の単繊維繊度は、3detx以下であることが好ましく、2dtex以下であることがより好ましく、1dtex以下であることがさらに好ましい。単繊維繊度がこのように小さくなるこことは、繊維の表面積を大きくし、太陽光の反射部分が多くなるため、太陽の輻射熱を遮断する効果が向上する。
【0030】
<芯鞘複合繊維の製造方法>
本発明の芯鞘複合繊維は、公知の芯鞘複合繊維の製糸方法で製造される。なお、芯鞘複合繊維の紡糸に用いる紡糸口金の紡糸孔は、通常の紡糸における紡糸口金の紡糸孔より孔径が大きく、0.3〜9.5μmであることが好ましい。
また、紡糸後の延伸の方法は、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸を行う方法又は未延伸糸を巻き取ることなく延伸を行う方法のいずれの方法でもよい。
【0031】
<芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸>
本発明の芯鞘複合繊維は、仮撚加工糸であることが好ましい。仮撚加工糸であることは、繊維軸に直角方向の断面形状が多角形断面になり、太陽光の反射率が高くなり、太陽の輻射熱を遮断する効果が向上する。
【0032】
<芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸の製造方法>

本発明の芯鞘複合繊維からなる仮撚加工糸を製造する仮撚条件は、以下の(6)〜(8)式を満足することが好ましい。
(TL−20)≦TT≦(TL+30)・・・・・・・・・・(6)
K≦31000・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
0.1cN/dtex≦TE≦0.2cN/dtex・・・(8) ただし、TLは芯部及び鞘部の主成分の樹脂のうち低い融点を有する樹脂の融点、TTは仮撚温度、Kは仮撚係数、TEは仮撚張力を示す。なお、仮撚係数は、仮撚加工を施された繊維の繊度と仮撚数との関係で示される係数で、下記の式で示される。
仮撚係数=仮撚数(t/m)×(繊維の繊度(dtex)÷10×9)1/2
【0033】

例えば、鞘部の主成分がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、芯部の主成分がポリプロピレン樹脂の場合、仮撚温度は147〜197℃であることが好ましい。
また、仮撚係数が31000以下であることは、捲縮斑や糸切れを抑制するため好ましい。
さらに、仮撚張力が0.1cN/dtex以上であることは、捲縮斑や糸切れを抑制するため好ましい。また、仮撚張力が0.2cN/dtex以下であることは、仮撚加工糸の毛羽の発生や糸切れが抑制するため好ましい。
【0034】
<目付が40〜400g/mである織編物>
本発明の芯鞘複合繊維は、織編物の構成糸として用いられる。本発明の織編物を得るときに、織組織、編組織、或いは織成方法、編成方法、織機、編機等は、特に限定されない。本発明の織編物は、目付が150〜400g/mであることが好ましい。目付が150g/m以上であることは、輻射熱を遮断する効果が発揮し易い。目付を400g/m以下であることは、厚みが増加せず、蓄熱し難くい。
【0035】
<芯鞘複合繊維を表糸及び/又は裏糸としてリバーシブル編地に編成した織編物>
本発明の織編物の組織は、特に限定されないが、本発明の芯鞘複合繊維のみで構成されることが望ましい。そして、本発明の芯鞘複合繊維を高密度で配し、その芯鞘複合繊維の特長を効率よく発揮させる組織として、リバーシブル編地が挙げられる。リバーシブル編地は、本発明の芯鞘複合繊維を表糸又は裏糸として編成される。
当該リバーシブル編地は、編地の一方の面が輻射熱を遮断する芯鞘複合繊維の構成面で、他方の面が他の繊維の構成面であり、他の繊維の機能又は特長が付加されている。
また、リバーシブル編地の芯鞘複合繊維の構成面は、太陽からの輻射熱だけでなく、人体からの放射熱を遮断する効果を有する。このため、リバーシブル編地による衣服等は、季節、環境によって使い分けられる。
なお、上述の他方の面に使用する他繊維は、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル繊維等の熱可塑性繊維である。また、それぞれの繊維を構成する単繊維の繊維軸に直角方向の断面形状は特に限定されない。この断面形状は、得られる織編物の風合い及び光沢等を考慮して、菊型、円形、扁平及びY字等の断面形状から選択される。
【0036】
<芯鞘複合繊維を含んだ撚糸>
その他、当該織編物は、本発明の芯鞘複合繊維を含んだ撚糸が用いられてもよい。当該撚糸は、本発明の芯鞘複合繊維を撚糸したもの、本発明の芯鞘複合繊維同士を合撚したもの、又は、本発明の芯鞘複合繊維と他繊維とを合撚したものである。例えば、本発明の芯鞘複合繊維と他繊維とが合撚されていることは、当該他繊維の特徴(例えば、光沢感、清涼感、ウェット感等)を織編物に付与する。また、繊維に撚りが付与されることは、弾力性を織編物に付与する。当該撚糸の撚り方向及び合撚数は、特に限定されず、目的の風合い及び外観に応じて決定される。
なお、上述の合撚に使用する他繊維とは、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル繊維等の熱可塑性繊維である。また、それぞれの繊維を構成する単繊維の繊維軸に直角方向の断面形状は、特に限定されない。この断面形状は、得られる織編物の風合い及び光沢等を考慮して、菊型、円形、扁平及びY字等の断面形状から選択される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、各評価項目は、次の方法によって測定した。
【0038】
(R値)
繊維の織編物を作成し、日本化学繊維検査協会の遮熱性測定方法で測定し、測定開始15分後の温度上昇をR値とした。
遮熱性測定方法は、以下の通りである。
黒画用紙の約5mm上に試料を保持し、試料側からランプ光を照射して裏面の画用紙中央の温度を熱電対で経時的に測定した。
使用ランプ:岩崎電気(株)製 アイランプ(スポット)PRS100V500W
照射距離 :50cm
照射時間 :15分間
試験室温度:20±2℃
【0039】
(赤外線透過率、可視光線透過率及び紫外線透過率)
分光光度計(日立社製U−3400型)を用い、以下の(1)〜(6)の操作を順に行い、各透過率を測定した。
(1)織編物の試料を作成した。
(2)250〜2000nmの範囲において5nmごとに、試料なしの状態の透過率(%)(以下Tgという。)を測定した。
(3)試料を分光光度計に取り付け、250〜2000nmの範囲において5nmごとに、試料ありの状態の透過率(%)(以下Tsという。)を測定した。
(4)250〜2000nmの範囲において5nmごとに、Tsを以下の式を用いて補正し、補正した透過率(%)(以下Tという。)を算出した。
T=(Ts/Tg)×100
(5)赤外線領域、可視光線領域及び紫外線領域を以下の波長の範囲とした。
赤外線領域700〜2000nm、可視光線領域400〜700nm、紫外線領域250〜400nm
(6)(5)の各領域ごとにTの算術平均値を算出し、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)及び紫外線透過率(%)とした。
【0040】
(固有粘度)
ポリマー0.25gを粉砕し、フェノール/テトラクロルエタン(50/50)の混合溶剤50mlに溶解し、25℃に温調し自動粘度計(サン電子工業社製AVL−4型)にて測定した。なお、計算式は以下のとおりである。
[η]=[(1+1.04ηsp)1/2−1]/0.26
【0041】
(融点)
示差走査型熱量計(セイコー電子工業社製DSC220)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
【0042】
(メルトフローレート(MFR))
JIS K6758(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0043】
(メルトボリュームレート(MVR))
ISO 1133(2.16kg荷重)に準拠して、280℃で測定した。
【0044】
(仮撚工程での白粉量)
芯鞘複合繊維を、石川製作所製IVF338仮撚機を用いて、仮撚加工を行い、仮撚加工開始後、1時間以上2時間未満に白粉が発生した場合をC、2時間以上8時間未満に白粉が発生した場合をB〜C、8時間以上16時間未満に白粉が発生しなかった場合をB、16時間以上でも白粉が発生しなかった場合をAとした。なお、それぞれの実施例及び比較例における仮撚条件は、特に記載がなければ、仮撚数が3000t/m(84dtexの延伸糸の場合、撚係数は27500である。)、仮撚温度が170℃、仮撚速度が150m/分、仮撚張力が0.15cN/dtexである。
【0045】
(通気度)
20℃、相対湿度65%の環境可変室内で、JIS L 1096 通気性A法(フラジール形法)に従い、通気度試験機FX3300(TEXTEST社製)を用いて測定したときの通気度(cm/cm/秒)を求めた。
【0046】
(耐摩擦溶融性)
JIS L1056(B法)に準拠してローター型摩擦溶融試験(荷重が10kg、3秒間の接圧)を行なうことにより測定した。測定結果は、溶融跡を生じない状態をA、溶融跡を生じるが切断されていないものをB、切断されるものをCとした。
【0047】
(捲縮特性)
JIS L−1013法に準拠して測定した。
【0048】
(実施例1)
ポリエチレン樹脂(PE)(日本ポリエチレン社製、MFR4g/10分)を芯部とした。ポリエチレンテレフタレート(PET)(三菱レイヨン社製、固有粘度[η]0.676、融点256℃)に二酸化チタン(アナターゼ型、一次粒子の平均粒子径0.3μm)を2質量%添加したPETを鞘部とした。
芯鞘複合比(体積比)を1/6とし、孔径0.4mm、孔数24の芯鞘複合紡糸口金を設置した紡糸装置にて、紡糸温度290℃、紡糸速度1800m/分で紡糸して未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を延伸速度600m/分、延伸温度85℃、熱セット温度150℃、最大延伸倍率の0.68倍で延伸し、84dtex24フィラメントの延伸糸を作成した。得られた延伸糸を4本合糸して約330dtexの繊度とした。16ゲージ(本/2.54cm)の横編機を用いてリブ組織の編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0049】
(実施例2〜7及び比較例3、4)
実施例1において、芯鞘複合比(体積比)、芯部の主成分の樹脂を表1のように変更した以外は実施例1と同様に芯鞘複合繊維の延伸糸及び編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0050】
(比較例1)
PETに二酸化チタンを2質量%添加した樹脂組成物(三菱レイヨン社製、固有粘度[η]0.676、融点256℃)を用いて、孔径0.3mm、孔数24の紡糸口金を設置した紡糸装置にて、紡糸温度290℃、紡糸速度1800m/分で紡糸して未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸を延伸速度600m/分、延伸温度85℃、熱セット温度150℃、最大延伸倍率の0.68倍で延伸し、84dtex/24フィラメントの延伸糸を作成した。得られた延伸糸を4本合糸して約330dtexの繊度とした。16ゲージ(本/2.54cm)の横編機を用いてリブ組織の編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0051】
(比較例2、5)
二酸化チタンの添加量を表1のように変更した以外は比較例1と同様に延伸糸及び編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0052】
(実施例8)
孔径0.3mm、孔数36の芯鞘複合紡糸口金を用いて33dtex/36フィラメントの延伸糸を作成した以外は、実施例1と同様に本発明の芯鞘複合繊維の延伸糸を得た。この延伸糸を用い、経165本/2.54cm、緯154本/2.54cm(カバーファクター値1832)のリップルタフタ組織の織物を作成した。得られた織物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
なお、カバーファクター値は以下の式により得られる値である。
カバーファクター値=(DWp)1/2×MWp+(DWf)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0053】
(比較例6)
三菱レイヨン社製のブライト33dtex/36フィラメント常圧カチオン可染糸を用い、経170本/2.54cm、緯161本/2.54cm(カバーファクター値1901)のリップルタフタ組織の織物を作成した。得られた織物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0054】
(実施例9)
孔径0.5mm、孔数48の芯鞘複合紡糸口金を用いて167dtex/48フィラメントの延伸糸を作成した以外は、実施例1と同様に本発明の芯鞘複合繊維の延伸糸を得た。本発明の芯鞘複合繊維を4本引揃え、S撚り方向30t/mの合撚糸とし、経27本/2.54cm、緯30本/2.54cm(カバーファクターCF値1473)の平組織の資材向けターポリン基布を作成した。得られた織物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0055】
(比較例7)
三菱レイヨン社製のセミダル167dtex/48フィラメントポリエステルマルチフィラメントを4本引揃え、S撚り方向30t/mの合撚糸とし、経27本/2.54cm、緯32本/2.54cm(カバーファクターCF値1525)の平組織の資材向けターポリン基布を作成した。得られた織物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0056】
(実施例10)
実施例9と同様に本発明の芯鞘複合繊維の延伸糸を得た。22ゲージ(本/2.54cm)のダブルジャージ編機にて、表糸に本発明の167dtex/48フィラメントのS方向仮撚糸とZ方向仮撚糸とをインターレース加工した加工糸を用い、裏糸に表糸と同じインターレース加工した加工糸とアクリル紡績糸1/52(三菱レイヨン社製)を1:1に用い、2×2鹿の子ブリスター組織の編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0057】
(比較例8)
本発明の芯鞘複合繊維の延伸糸に替えて、三菱レイヨン社製のセミダル167dtex/48フィラメントポリエステルマルチフィラメントのS撚り方向仮撚糸とZ撚り方向仮撚糸とをインターレース加工した加工糸を用いた以外は実施例10と同様に編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)及び通気度を表1に示した。
【0058】
(実施例11〜24)
実施例1において、芯部の主成分の樹脂を表2のように変更した以外は実施例1と同様にして芯鞘複合繊維の延伸糸及び編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)、通気度及び耐摩擦溶融性並びに仮撚工程での白粉量を表2に示した。
【0059】
(実施例25)
実施例11において、繊維軸に直角方向の断面形状を三角とした以外は実施例11と同様にして芯鞘複合繊維の延伸糸及び編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)、通気度及び耐摩擦溶融性並びに仮撚工程での白粉量を表3に示した。
【0060】
(実施例26)
実施例11において、延伸糸を84dtex48フィラメントとした以外は実施例11と同様にして芯鞘複合繊維の延伸糸及び編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)、通気度及び耐摩擦溶融性並びに仮撚工程での白粉量を表3に示した。
【0061】
(実施例27)
実施例11において、延伸糸をさらに仮撚糸とし、当該仮撚糸の編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)、通気度及び耐摩擦溶融性、紡糸安定性並びに仮撚工程での白粉量を表3に示した。
【0062】
(実施例28)
実施例26において、延伸糸をさらに仮撚糸とし、当該仮撚糸の編物を作成した。得られた編物のR値、赤外線透過率(%)、可視光線透過率(%)、紫外線透過率(%)、通気度及び耐摩擦溶融性並びに仮撚工程での白粉量を表3に示した。
【0063】
(実施例29〜34)
実施例12の延伸糸を、石川製作所製IVF338仮撚機を用いて、仮撚速度が150m/分、仮撚張力が0.15cN/dtexで、表4に示したように仮撚温度及び仮撚数(t/m)を変更して仮撚加工を行った。仮撚工程での白粉量の測定結果及び仮撚糸の捲縮率を表4に示した。
【0064】
(実施例35〜40)
実施例16の延伸糸を、石川製作所製IVF338仮撚機を用いて、仮撚速度が150m/分、仮撚張力が0.15cN/dtexで、表4に示したように仮撚温度及び仮撚数(t/m)を変更して仮撚加工を行った。仮撚工程での白粉量の測定結果及び仮撚糸の捲縮率を表4に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の芯鞘複合繊維は、繊維の風合いを損なうことなく、太陽の輻射熱すなわち赤外光を効率よく遮蔽又は吸収し、紡糸工程の安定性及び仮撚工程の通過性が良好である。また本発明の芯鞘複合繊維を用いてなる織編物は、輻射熱を遮断する遮熱性に優れるもので、特に使用分野を限定するものではなく、輻射熱の遮断を必要とする幅広い用途に好適なるものであり、例えばスポーツ衣料分野、帽材、テント、傘等の野外用品、中近東等の酷暑地域の民族衣装等の素材として極めて有用なるものである。