特許第5667982号(P5667982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5667982電子的反射性絶縁スペーサを有する磁束閉鎖STRAM
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667982
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】電子的反射性絶縁スペーサを有する磁束閉鎖STRAM
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8246 20060101AFI20150122BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20150122BHJP
   G11C 11/15 20060101ALI20150122BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20150122BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   H01L27/10 447
   G11C11/15 112
   H01L29/82 Z
   H01L43/08 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-529345(P2011-529345)
(86)(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公表番号】特表2012-504349(P2012-504349A)
(43)【公表日】2012年2月16日
(86)【国際出願番号】US2009058756
(87)【国際公開番号】WO2010037090
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2011年11月4日
(31)【優先権主張番号】12/239,884
(32)【優先日】2008年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イェンカイ
(72)【発明者】
【氏名】ディミトロフ,ディミタール
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−229544(JP,A)
【文献】 特開2007−157840(JP,A)
【文献】 特開2006−114868(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0061981(US,A1)
【文献】 米国特許第06765819(US,B1)
【文献】 国際公開第2008/100868(WO,A1)
【文献】 特表2012−519957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8246
G11C 11/15
H01L 27/105
H01L 29/82
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的絶縁電子的反射層を介して第2自由磁性層に反強磁性的に連結された第1自由磁性層を含む多層自由磁性素子と、
リファレンス磁性層と、
リファレンス磁性層から前記多層自由磁性素子を隔てる電気的絶縁非磁性トンネルバリヤ層とを含み、
前記電気的絶縁電子的反射層は、頂点および谷を備えた対向する平坦でない主表面を有することにより、もしくは、対向する連続的に傾斜した主表面を有することにより、不均一の厚さを有する、スピン注入トルクメモリユニット。
【請求項2】
前記電気的絶縁電子的反射層は、3〜15オングストロームの範囲にある厚さ値を有する、請求項1に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項3】
前記電気的絶縁電子的反射層は、MgO、CuO、TiO、AlO、TaO、TaNまたはSiNを含む、請求項1に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項4】
前記電気的絶縁電子的反射層は、1〜10オームμm2の面積抵抗を有する、請求項1に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項5】
前記リファレンス磁性層は、合成反強磁性素子を含む、請求項1に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項6】
前記多層自由磁性素子は、前記電気的絶縁電子的反射層を前記第1自由磁性層または前記第2自由磁性層のうちの1つから隔てる電導非磁性層をさらに含む、請求項1に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項7】
前記多層自由磁性素子は第2の電気的絶縁電子的反射層をさらに含み、前記電導非磁性層は、前記電気的絶縁電子的反射層を前記第2の電気的絶縁電子的反射層から隔てる、請求項6に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項8】
前記電導非磁性層は、5〜20オングストロームの範囲にある厚さ値を有する、請求項6に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項9】
前記電導非磁性層は、Ta、Cu、Ru、またはAuを含む、請求項6に記載のスピン注入トルクメモリユニット。
【請求項10】
電気的絶縁電子的反射層および電導非磁性層を介して第2自由磁性層に反強磁性的に連結された第1自由磁性層を含む多層自由磁性素子と、
リファレンス磁性層と、
前記多層自由磁性素子を前記リファレンス磁性層から隔てる電気的絶縁非磁性トンネルバリヤ層とを含み、
前記電気的絶縁電子的反射層は、頂点および谷を備えた対向する平坦でない主表面を有することにより、もしくは、対向する連続的に傾斜した主表面を有することにより、不均一の厚さを有する、スピン注入トルクメモリユニット。
【請求項11】
3〜15オングストロームの範囲にある厚さを有し、MgO、CuO、TiO、AlO、TaO、TaN、またはSiNを含む電気的絶縁電子的反射層を介して第2自由磁性層に反強磁性的に連結された第1自由磁性層を含む多層自由磁性素子と、
合成反強磁性素子を含むリファレンス磁性層と、
前記多層自由磁性素子を前記リファレンス磁性層から隔てる電気的絶縁非磁性トンネルバリヤ層とを含み、
前記電気的絶縁電子的反射層は、頂点および谷を備えた対向する平坦でない主表面を有することにより、もしくは、対向する連続的に傾斜した主表面を有することにより、不均一の厚さを有する、スピン注入トルクメモリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
広がるコンピュータおよび携帯/通信産業の急速な成長は、高容量の不揮発性ソリッドステートデータ記憶素子に対する爆発的な需要を生み出している。不揮発性メモリ、特にフラッシュメモリは、DRAMに代わりメモリ市場の最大のシェアを占めると考えられている。しかしながらフラッシュメモリは、遅いアクセス速度(〜msの書込および〜50−100nsの読出)、制限された耐久性(〜103−104のプログラミング回数)、およびシステムオンチップ(SoC)に集積化することの難しさといったような、いくつかの欠点を有する。フラッシュメモリ(NANDまたはNOR)は、また、32nmノード、および、それより先での重要なスケーリング問題に直面する。
【0002】
磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)は、将来の不揮発性および普遍のメモリに対する別の有望な候補である。MRAMは、不揮発性、高い書込/読出速度(<10ns)、ほとんど制限のないプログラミング耐久性(>1015サイクル)、および待機電力が0であるという特徴を有する。MRAMの基本的な構成要素は、磁気トンネリング接合(MTJ)である。データの記憶は、高抵抗状態と低抵抗状態との間でMTJの抵抗を切換えることによって実現される。MRAMは、MTJの磁化を切換えるための、電流で誘起された磁場を用いることによってMTJ抵抗を切換える。MTJのサイズが縮小されるにつれて切換磁場の大きさが増大し、切換の変動がより厳しくなる。すなわち、発生した高い電力消費が従来のMRAMのスケーリングを制限する。
【0003】
近年、スピン偏極電流で誘起された磁化の切換に基づく新しい書込機構がMRAMの設計に導入された。スピン注入トルクRAM(STRAM)と呼ばれるこの新しいMRAM設計は、MTJを流れる(双方向の)電流を用いて抵抗の切換を実現する。すなわち、STRAMの切換機構は局所的に制約されて、STRAMは従来のMRAMよりも優れたスケーリング特性を有すると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらSTRAMが製造段階に入る前には、歩留まりを制限する多数の要因が克服されなければならない。従来のSTRAM設計における1つの懸念事項は、STRAMセルの自由層の間での厚みのトレードオフである。自由層が厚くなるにつれ熱安定性とデータ保持力とが改善するが、スイッチング電流が自由層の厚みに比例するためにスイッチング電流の必要量も増大する。したがって、STRAMセルを抵抗データ状態の間で切換えるために要求される電流の量が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単な要約
本開示は、反射性絶縁スペーサを含む磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットに関連する。反射性絶縁スペーサは、電気的絶縁電子的反射層とも呼ばれる。電気的絶縁電子的反射層は、スピン電子を自由層にはね返し、自由層の磁化方向の切り替えを支援し、それによって、スピン注入トルクメモリユニットに対して要求されるスイッチング電流を低減する。
【0006】
ある特定の実施例において、反射性絶縁スペーサを有する磁束閉鎖スピン注入トルクメモリが開示される。磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットは、電気的絶縁電子的反射層を介して第2自由磁性層に反強磁性的に連結された第1自由磁性層を含む多層自由磁性素子を含む。電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層は、第1磁性素子をリファレンス磁性層から隔てる。
【0007】
これらのおよびさまざまな他の特徴ならびに利点は、以下に続く詳細な説明を読むことから明らかとなるであろう。
【0008】
図面の簡単な説明
本開示は、添付の図面と関連して、以下に続く本開示のさまざまな実施形態の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】低抵抗状態の例示的な磁気トンネリング接合(MTJ)の断面概略図である。
図2】高抵抗状態の例示的なMTJの断面概略図である。
図3】例示的なスピン注入トルクメモリユニットの概略図である。
図4A】例示的な、不均一な電気的絶縁電子的反射層の概略的な断面図である。
図4B】別の例示的な、不均一な電気的絶縁電子的反射層の概略的な断面図である。
図5】多層リファレンス層を含む例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットの概略図である。
図6A】スペーサ層を含む例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットの概略図である。
図6B】スペーサ層および多層リファレンス層を含む例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットの概略図である。
図7A】スペーサ層および第2反射性スペーサ層を含む例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットの概略図である。
図7B】スペーサ層、多層リファレンス層、および、第2反射性スペーサ層を含む例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面は、必ずしも一定に比率の縮尺ではない。図面で用いられる同様の符号は同様の要素を参照する。しかしながら、特定の図面中の要素を参照するために符号を使用することが、別の図面において同じ符号が付された要素を制限することを意図するものではないということが理解されるであろう。
【0011】
詳細な説明
以下の説明において、説明の一部を形成する添付の図面の組が参照され、図面においては、図示によって、いくつかの特定の実施形態が示される。他の実施形態が意図されるとともに、本開示の範囲または精神から逸脱することなくなされ得るということが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は限定する意味で解釈されるべきではない。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を制限することを意味するものではない。
【0012】
それ以外が示されていなければ、明細書および特許請求の範囲で用いられる形状、量および物理特性を表わすすべての数は、「約(about)」との用語によって、すべての例において変更されるということが理解されるべきである。したがって、逆に示されていなければ、上述の明細書および添付の特許請求の範囲において説明される数値パラメータは近似であって、その近似は、本明細書に開示された教示を利用する当業者によって取得されることが目指される所望の特性に依存して変化し得る。
【0013】
端点による数値範囲の記述は、その範囲内に包含されるすべての数(たとえば1から5は、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4.5を含む)およびその範囲内の任意の範囲を含む。
【0014】
この明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「an」、「the」は、その内容が明らかにそれ以外を示さない限りは、複数の対象を有する実施形態を包含する。この明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、「または(or)」との用語は、その内容が明らかにそれ以外を示さない限りは、概して「および/または(and/or)」を含む意味において用いられる。
【0015】
本開示は、反射性絶縁スペーサを含む磁束閉鎖スピン注入トルクメモリに関連する。反射性絶縁スペーサは、電気的絶縁電子的反射層とも呼ばれる。電気的絶縁電子的反射層は、自由層磁化方向を切り替えることを支援するためにスピン電子を自由層にはね返し、スピン注入トルクメモリユニットに対して要求される切替電流を低減する。自由層素子の磁束閉鎖構造は、メモリユニットの熱的安定性とデータ保持力とを向上する。さらに、メモリセルアレイ内の隣接するメモリの磁気妨害は、自由層素子の略ゼロのモーメントに起因して最小化される。本開示は特に限定されるものではないが、以下に与えられる例の議論を通じて、本開示のさまざまな局面の理解が得られるであろう。
【0016】
図1は、低抵抗状態における例示的な磁気トンネリング接合(MTJ)セル10の断面概略図であり、図2は、高抵抗状態における例示的なMTJセル10の断面の概略図である。MTJセルは、高抵抗状態と低抵抗状態との間で切換可能な任意の有用なメモリセルであり得る。多くの実施形態において、本明細書で記述される可変抵抗性メモリセルは、スピン注入トルクメモリセルである。
【0017】
MTJセル10は、強磁性自由層12と、強磁性リファレンス(すなわち固定された)層14とを含む。強磁性自由層12と強磁性リファレンス層14とは酸化バリア層13またはトンネリングバリア層によって分離される。第1の電極15は強磁性自由層12と電気的に接触し、第2の電極16は、強磁性リファレンス層14と電気的に接触している。強磁性層12,14は、たとえば、Fe、Co、Niのような任意の実用的な強磁性(FM)合金からなり得て、絶縁トンネリングバリア層13は、たとえば酸化物素材(たとえばAl23またはMgO)のような電気的絶縁素材からなり得る。他の適切な素材もまた用いられ得る。
【0018】
電極15,16は、強磁性層12,14を流れる読出電流および書込電流を与える制御回路に、強磁性層12,14を電気的に接続する。MTJセル10の抵抗は、強磁性層12,14の磁化ベクトルの相対的な方向または磁化方向によって決定される。強磁性リファレンス層14の磁化方向は所定の方向に固定される一方で、強磁性自由層12の磁化方向はスピントルクの影響下で自由に回転する。強磁性リファレンス層14の固定は、たとえば、PtMn、IrMnおよびその他のような反強磁性的に整えられた素材を用いた交換バイアスの使用を通じて達成され得る。
【0019】
図1は、低抵抗状態でのMTJセル10を示し、低抵抗状態では、強磁性自由層12の磁化方向が強磁性リファレンス層14の磁化方向と平行であり同じ方向である。これは、低抵抗状態または「0」データ状態と呼ばれる。図2は、高抵抗状態でのMTJセル10を示し、高抵抗状態では、強磁性自由層12の磁化方向が強磁性リファレンス層14の磁化方向と反平行であり逆方向にある。これは高抵抗状態または「1」データ状態と呼ばれる。
【0020】
MTJセル10の磁性層を通る電流がスピン偏極されて、MTJセル10の自由層12にスピントルクを与える場合に、スピン注入を通じて、MTJセル10の抵抗状態、したがってデータ状態を切換えることが起こる。十分なスピントルクが自由層12に与えられた場合、自由層12の磁化方向は、2つの反対方向の間で切換わり得て、したがって、電流の方向に応じて、MTJセル10が平行状態(すなわち低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行状態(すなわち高抵抗状態または「1」データ状態)との間で切換わり得る。
【0021】
例示的なスピン注入トルクMTJセル10は、固定された磁性層14に対する自由磁性層12の相対的な磁化状態を変化させることによって、データビットが磁気トンネリング接合セルに記憶される場合に、複数の可変抵抗メモリセルを含むメモリデバイスを構築するために用いられ得る。記憶されたデータビットは、セルの抵抗を測定することによって読出され得るが、セルの抵抗は、固定された磁性層に対する自由層の磁化方向によって変化する。スピン注入トルクMTJセル10が不揮発性ランダムアクセスメモリの特性を有するために、自由層はランダムな変動に対して熱安定性を示し、その結果、自由層の方向は、そのような変化が生じるようにそれが制御された場合のみ変化する。この熱安定性は、たとえばビットサイズ、形状および結晶異方性といった異なる方法を用いることによる磁気異方性によって達成し得る。さらなる異方性が、交換または磁場のいずれかを通じた、他の磁性層との磁気結合を通じて得られ得る。一般的に、異方性は、薄い磁性層において容易軸(soft axis)と困難軸(hard axis)とを形成する。困難軸と容易軸とは、通常では磁場の形をとる外部エネルギの大きにより定義され、外部エネルギは、より高い飽和磁場を要求する困難軸により、磁化の方向をその方向に完全に回転させる(飽和させる)ことが必要とされる。
【0022】
図3は、例示的なスピン注入トルクメモリユニット20の概略図である。スピン注入トルクメモリユニット20は、多層自由磁性素子FLと、リファレンス磁性層RLと、多層自由磁性素子FLをリファレンス磁性層RLから隔てる電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層TBとを含む。
【0023】
多層自由磁性素子FLは、電気的絶縁電子的反射層ERを介して第2自由磁性層FL2に強磁性的に連結された第1自由磁性層FL1を含む。第1自由磁性層FL1は、第2磁性層FL2の磁化方向と反平行の関係にある磁化方向を有する。したがって、この二重接合自由層素子は、「磁束閉鎖」構造と呼ばれる。反強磁性的な連結は、中間層連結または静的連結のいずれかからもたらされ得る。したがって、この磁束閉鎖自由磁性素子は、スピン偏極した電流によって容易に切り替えられる。この磁束閉鎖自由磁性素子は、高い熱的安定性と高いデータ保持力とを有する。磁束閉鎖自由磁性素子の正味モーメントがゼロまたは略ゼロであることに加えて、隣接するセルに静的磁場が与えられず、セル間の干渉が最小限にされる。
【0024】
リファレンス磁性層RLは、上記のように、0.5よりも大きい、許容できるスピン偏極範囲を有する任意の実用的な強磁性素材であり得る。自由磁性層FL1およびFL2は、上述したように、許容できる異方性を有する任意の強磁性素材であり得る。第1電極層E1と第2電極層E2とは、2つの反対方向の間で多層自由磁性層FLの磁化方向を切換えることが可能な電子の流れを提供し、したがって、上記のように、スピン注入トルクメモリユニット20は、電流の方向に依存して平行状態(すなわち低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行状態(すなわち高抵抗状態または「1」データ状態)との間で切換わり得る。
【0025】
電気的絶縁電子的反射層ERは、薄い酸化物層または窒化物層であり得るとともに、たとえばMgO、CuO、TiO、AlO、TaO、TaNまたはSiNのような、任意の有用な電気的絶縁電子的反射素材から形成され得る。電気的絶縁電子的反射層ERの厚みは3〜15オングストロームの範囲内、または5〜15オングストロームの範囲内であり得る。電気的絶縁電子的反射層ERは、1〜10オームμm2の面積抵抗を有し得る。
【0026】
電気的絶縁電子的反射層ERは、電子の少なくとも一部を自由磁性層FL1および/またはFL2にはね返し、電子の少なくとも一部を通過させることが可能である。これらの反射された電子はスピン電流効率を高めることができ、平行状態(すなわち低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行状態(すなわち高抵抗状態または「1」データ状態)との間でメモリユニット20を切換えるために、磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット20に供給する必要がある電流の量を、効果的に低減する。したがって、電気的絶縁電子的反射層ERは、スピン電子を反射してスピン電流効率を高めることが可能であるので、スイッチング電流は大きく減少し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、電気的絶縁電子的反射層ERは、不均一な厚みを有し得る。これに起因する傾斜電流は、スピン効率をさらに増加させて、スイッチング電流をさらに減少させる。不均一な電気的絶縁電子的反射層ERはまた、出力信号を維持するための直列抵抗をも低減する。
【0028】
いくつかの実施形態において、電気的絶縁電子的反射層ERは、不均一な厚みを有し得る。これに起因する傾斜電流は、スピン効率をさらに増加させて、スイッチング電流をさらに減少させる。不均一な電気的絶縁電子的反射層ERはまた、出力信号を維持するための直列抵抗をも低減する。不均一な電気的絶縁電子的反射層ERの2つの実施形態が示されるとともに以下に説明されているが、任意の不均一な電気的絶縁電子的反射層ER構造がこの開示の範囲内にあることが理解される。
【0029】
図4Aは、例示的な、不均一な電気的絶縁電子的反射層ERの概略断面図である。不均一な厚みを有する電気的絶縁電子的反射層ERの、この図示された実施形態において、電気的絶縁電子的反射層ERは対向する主表面S1およびS2を有し、主表面S1およびS2は、頂点と谷とを定義するとともに、電気的絶縁電子的反射層ERに複数の異なる厚みT1,T2およびT3を与える。電流は、電気的絶縁電子的反射層ERの厚み方向に沿って、対向する平坦ではない主表面S1およびS2を通る。
【0030】
図4Bは、別の例示的な不均一な電気的絶縁電子的反射層ERの概略断面図である。不均一な厚みを有する電気的絶縁電子的反射層ERの、この図示された実施形態において、電気的絶縁電子的反射層ERは対向する平坦な主表面S1およびS2を有する。対向する平坦な主表面S1およびS2は、第1の厚みT1、および低下した第2の厚みとを有する、連続的に傾斜した電気的絶縁電子的反射層ERを規定する。電流は、電気的絶縁電子的反射層ERの厚み方向に沿って、対向する平坦ではない主表面S1およびS2を通る。
【0031】
図5は、別の例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット30の概略図である。この実施例は、図3に、リファレンス層RLを形成する合成反強磁性素子を追加したものに類似する。スピン注入トルクメモリユニット30は、多層自由磁性素子FL、リファレンス磁性層RL、および、多層自由磁性素子FLをリファレンス磁性層RLから隔てる電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層TBを含む。
【0032】
多層自由磁性素子FLは、電気的絶縁電子的反射層ERを介して第2自由磁性層FL2に反強磁性的に連結された第1自由磁性層FL1を含む。第1自由磁性層FL1は、第2磁性層FL2の磁化方向と反平行の関係にある磁化方向を有する。したがって、この二重接合自由層素子は、上述したように、「磁束閉鎖」構造と呼ばれる。
【0033】
示されたリファレンス磁性層RLは、合成反強磁性素子と呼ばれる。合成反強磁性素子は、第1強磁性層FM1と、電導性非磁性スペーサ層SP1によって隔てられる第2強磁性層FM2とを含む。電導性非磁性スペーサ層SP1は、第1強磁性層FM1と第2強磁性層FM2とが反強磁性的に並べられるように構成される。多くの実施例において、第1反強磁性層FM1と第2反強磁性層FM2とは反平行の磁化方向を有し、そのような方向の1つが図示される。反強磁性層AFMは第2電極層E2に隣接する。反強磁性層AFMは、第1強磁性層FM1と第2強磁性層FM2の磁化方向の固定を支援する。
【0034】
開示されたスピン注入トルクメモリユニットにおいて合成反強磁性素子を用いることには多くの利点がある。いくつかの利点は、自由層の静的磁場が低減され、リファレンス層の熱的安定性が向上し、層間拡散が低減されるということを含む。
【0035】
第1強磁性層FM1は、上述したように、0.5以上の許容可能なスピン偏極範囲を有する任意の有用な強磁性素材であり得る。第2強磁性層FM2は、上述したように、任意の有用な強磁性素材であり得る。反強磁性層AFMは、たとえば、PtMn、IrMnなどのような反強磁性的に整えられた素材を用いた交換バイアスの使用によって強磁性層を固定する。電導性非磁性スペーサ層SP1は、たとえば、Ru、Pdなどのような任意の有用な電導性非強磁性素材であり得る。
【0036】
自由磁性層FL1およびFL2は、上述したように、許容可能な異方性を有する任意の強磁性素材であり得る。第1電極層E1と第2電極層E2とは、多層自由磁性素子FLの磁化方向を、反対向きにすることができる電子の流れを供給し、結果として、上述したように、スピン注入トルクメモリユニット30は、平行状態(すなわち、低抵抗状態または「0」データ状態)と、反平行状態、反平行状態(すなわち、高抵抗状態または「1」データ状態)とが、電流の向きに応じて切換えられる。
【0037】
電気的絶縁電子的反射層ERは、酸化層または窒化層であり得、たとえば、MgO、CuO、TiO、AlO、TaO、TaN、またはSiNのような任意の有用な電気的絶縁電子的反射素材で形成される。電気的絶縁電子的反射層ERの厚さは、3〜15オングストローム、または5〜15オングストロームの範囲内にあり得る。電気的絶縁電子的反射層ERは、1〜10オームμm2の面積抵抗を有する。
【0038】
電気的絶縁電子的反射層ERは、電子の少なくとも一部を、自由磁性層FL1および/またはFL2にはね返し、電子の少なくとも一部が、電気的絶縁電子的反射層ERを通過することを許容することができる。これらの反射された電子はスピン電流効率を拡大することができ、磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット30を平行状態(すなわち、低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行(すなわち、高抵抗状態または「1」データ状態)との間で切換えるために磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット30に加える必要がある電流の量を効果的に低減することができる。したがって、電気的絶縁電子的反射層ERがスピン電流効率を増加するようにスピン電子を反射することができるので、スイッチング電流が大幅に低減され得る。
【0039】
いくつかの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERは、不均一の厚さを有し得る。この結果得られる傾斜した電流は、スイッチング電流をさらに低減するようにスピン効率をさらに増加させることができる。不均一の電気的絶縁電子的反射層ERは、出力信号を維持するための直列抵抗も低減することができる。
【0040】
図6Aは、別の例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット40の概略図である。この実施例は、図3に、多層自由磁性素子FLの中に電導性非磁性スペーサ層SP2を加えたものに類似する。スピン注入トルクメモリユニット40は、多層自由磁性素子FL、リファレンス磁性層RL、および、多層自由磁性素子FLをリファレンス磁性層RLから隔てる電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層TBを含む。
【0041】
多層自由磁性素子FLは、電気的絶縁電子的反射層ERおよび電導性非磁性スペーサ層SP2を介して第2自由磁性層FL2と反強磁性的に連結された第1自由磁性層FL1を含む。電導性非磁性スペーサ層SP2は、電気的絶縁電子的反射層ERと第2自由磁性層FL2とを隔てる。しかしながら、別の実施例において、電導性非磁性スペーサ層SP2は、電気的絶縁電子的反射層ERと第1自由磁性層FL1とを隔てる。第1自由磁性層FL1は、第2自由磁性層FL2の磁化方向と反平行の関係にある磁化方向を有する。したがって、上述したように、この二重接合自由層素子は、「磁束閉鎖」構造と呼ばれる。
【0042】
図6Bは、別の例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット40の概略図である。この実施例は、図6Aにリファレンス層RLを形成する合成反強磁性素子を加えたものに類似する。スピン注入トルクメモリユニット40は、多層自由磁性素子FL、リファレンス磁性素子RL、および、多層自由磁性素子FLをリファレンス磁性層RLから隔てる電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層TBを含む。
【0043】
図示されたリファレンス磁性層RLは、合成反強磁性素子と呼ばれる。合成反強磁性素子は、第1強磁性層FM1と、電導性非磁性スペーサ層SP1によって隔てられた第2強磁性層FM2とを含む。電導性非磁性スペーサ層SP1は、第1強磁性層FM1と第2強磁性層FM2とが反強磁性的に並べられるように構成され、多くの実施例において、第1強磁性層FM1と第2強磁性層FM2とは、図示されたように、反平行の磁化方向を有する。反強磁性層AFMは、第2電極層E2と隣接する。反強磁性層AFMは、第1強磁性層FM1および第2強磁性層FM2の磁化方向の固定を支援する。開示されたスピン注入トルクメモリユニットに合成反強磁性素子を用いることには多くの利点がある。いくつかの利点は、自由層の静的な磁場が低減され、リファレンス層の熱的な安定性が向上し、層間拡散が低減されるということを含む。
【0044】
第1強磁性層FM1および第2強磁性層FM2は、上述したように0.5以上の許容可能なスピン偏極範囲を有する任意の有用な強磁性素材であり得る。反強磁性層AFMは、たとえば、PtMn、IrMnなどのような反強磁性的に並べられた素材とバイアスを交換することによって、強磁性層を固定する。反強磁性層AFMは、たとえば、PtMn、IrMnなどの反強磁性的に並べられた素材との交換バイアスを用いることによって、強磁性層を固定する。電導性非磁性スペーサ層SP1およびSP2は、たとえば、Ru、Pdなどのような任意の有用な電導性非強磁性素材から形成され得る。
【0045】
自由磁性層FL1およびFL2は、上述したように、許容可能な異方性を有する任意の強磁性素材であり得る。第1電極層E1および第2電極層E2は、多層自由磁性素子FLの磁化方向を反対方向に切換えることができる電子の流れを供給し、結果として、スピン注入トルクメモリユニット40において、平行状態(すなわち、低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行状態(すなわち、高抵抗状態または「1」データ状態)とが、上述したように電流の流れの方向に依存して切換えられ得る。
【0046】
電気的絶縁電子的反射層ERは薄い酸化層または窒化層であり得、たとえば、MgO、CuO、TiO、AlO、TaO、TaN、またはSiNのような任意の有用な電気的絶縁電子的反射素材から形成され得る。電気的絶縁電子的反射層ERの厚さは、3〜15オングストロームまたは5〜15オングストロームの範囲内にあり得る。多くの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERは、1から10オームμm2の面積抵抗を有する。
【0047】
多層自由磁性素子FLが、(3〜20オングストロームの厚さを有する)電気的絶縁電子的反射層ERと、(5〜20オングストロームの厚さを有する)電導性非磁性スペーサ層SP2とを含むいくつかの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERは、たとえば5〜50オームμm2のような大きな面積抵抗を有し得る。これらの実施例に対して好適な電気的絶縁電子的反射層ERの素材は、電導性非磁性スペーサ層SP2素材がたとえば、Cu、Au、Ag、Cr、Al、Ta、Ru、またはWを含む場合において、たとえばCoFe−O、AlO、NiFeO、MgO、CoFeB−O、NiFe−Oを含む。
【0048】
電気的絶縁電子的反射層ERは、電子の少なくとも一部を、自由磁性層FL1および/またはFL2にはね返し、電子の少なくとも一部が、電気的絶縁電子的反射層ERを通過することを許容することができる。これらの反射された電子はスピン電流効率を拡大することができ、磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット30を平行状態(すなわち、低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行(すなわち、高抵抗状態または「1」データ状態)との間で切換えるために磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット40に加える必要がある電流の量を効果的に低減することができる。したがって、電気的絶縁電子的反射層ERがスピン電流効率を増加するようにスピン電子を反射することができるので、スイッチング電流が大幅に低減され得る。
【0049】
いくつかの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERは、上述したように、不均一の厚さを有し得る。この結果得られる傾斜した電流は、スイッチング電流をさらに低減するようにスピン効率をさらに増加させることができる。不均一の電気的絶縁電子的反射層ERは、出力信号を維持するための直列抵抗も低減することができる。
【0050】
図7Aは、別の例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット50の概略図である。この実施例は、図6Aに、多層自由磁性素子FLの中に電気的絶縁電子的反射層ERを加えたものに類似する。スピン注入トルクメモリユニット40は、多層自由磁性素子FL、リファレンス磁性層RL、および、多層自由磁性素子FLをリファレンス磁性層RLから隔てる電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層TBを含む。
【0051】
多層自由磁性素子FLは、電気的絶縁電子的反射層ERおよび電気的絶縁電子的反射層ERを介して第2自由磁性層FL2と反強磁性的に連結された第1自由磁性層FL1と、第2電気的絶縁電子的反射層ER2とを含む。電導性非磁性スペーサ層SP2は、電気的絶縁電子的反射層ERと第2電気的絶縁電子的反射層ER2とを隔てる。第1自由磁性層FL1は、第2自由磁性層FL2の磁化方向と反平行の関係にある磁化方向を有する。したがって、上述したように、この二重接合自由層素子は、「磁束閉鎖」構造と呼ばれる。
【0052】
図7Bは、別の例示的な磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット50の概略図である。この実施例は、図7Aにリファレンス層RLを形成する合成反強磁性素子を加えたものに類似する。スピン注入トルクメモリユニット40は、多層自由磁性素子FL、リファレンス磁性素子RL、および、多層自由磁性素子FLをリファレンス磁性層RLから隔てる電気的絶縁非磁性トンネリングバリア層TBを含む。
【0053】
図示されたリファレンス磁性層RLは、合成反強磁性素子と呼ばれる。合成反強磁性素子は、第1強磁性層FM1と、電導性非磁性スペーサ層SP1によって隔てられた第2強磁性層FM2とを含む。電導性非磁性スペーサ層SP1は、第1強磁性層FM1と第2強磁性層FM2とが反強磁性的に並べられるように構成され、多くの実施例において、第1強磁性層FM1と第2強磁性層FM2とは、図示されたように、反平行の磁化方向を有する。反強磁性層AFMは、第2電極層E2と隣接する。反強磁性層AFMは、第1強磁性層FM1および第2強磁性層FM2の磁化方向の固定を支援する。
【0054】
開示されたスピン注入トルクメモリユニットに合成反強磁性素子を用いることには多くの利点がある。いくつかの利点は、自由層の静的な磁場が低減され、リファレンス層の熱的な安定性が向上し、層間拡散が低減されるということを含む。
【0055】
第1強磁性層FM1および第2強磁性層FM2は、上述したように0.5以上の許容可能なスピン偏極範囲を有する任意の有用な強磁性素材であり得る。反強磁性層AFMは、たとえば、PtMn、IrMnなどの反強磁性的に調整された素材を用いて交換バイアス使用することによって、強磁性層を固定する。電導性非磁性スペーサ層SP1およびSP2は、たとえば、Ru、Pdなどのような任意の有用な電導性非強磁性素材から形成され得る。
【0056】
自由磁性層FL1およびFL2は、上述したように、許容可能な異方性を有する任意の強磁性素材であり得る。第1電極層E1および第2電極層E2は、多層自由磁性素子FLの磁化方向を反対方向に切換えることができる電子の流れを供給し、結果として、スピン注入トルクメモリユニット50において、平行状態(すなわち、低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行状態(すなわち、高抵抗状態または「1」データ状態)とが、上述したように電流の流れの方向に依存して切換えられ得る。
【0057】
電気的絶縁電子的反射層ERおよび/またはER2は、独立した薄い酸化層または窒化層であり得、たとえば、MgO、CuO、TiO、AlO、TaO、TaN、またはSiNのような任意の有用な電気的絶縁電子的反射素材から形成され得る。電気的絶縁電子的反射層ERおよび/またはER2の厚さは、3〜15オングストロームまたは5〜15オングストロームの範囲内にあり得る。多くの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERおよび/またはER2は、1から10オームμm2の面積抵抗を有する。
【0058】
多層自由磁性素子FLが、(5〜20オングストロームの厚さを有する)電導性非磁性スペーサ層SP2によって隔てられる(各々が3〜20オングストロームの厚さを有する)2つの電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2を含むいくつかの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2は、たとえば5〜50オームμm2のような大きな面積抵抗を有し得る。これらの実施例に対して好適な電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2の素材は、電導性非磁性スペーサ層SP2の素材がたとえば、Cu、Au、Ag、Cr、Al、Ta、Ru、またはWを含む場合において、たとえばCoFe−O、AlO、NiFeO、MgO、CoFeB−O、NiFe−Oを含む。
【0059】
電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2は、電子の少なくとも一部を、自由磁性層FL1および/またはFL2にはね返し、電子の少なくとも一部が、電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2を通過することを許容することができる。これらの反射された電子はスピン電流効率を拡大することができ、磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット30を平行状態(すなわち、低抵抗状態または「0」データ状態)と反平行(すなわち、高抵抗状態または「1」データ状態)との間で切換えるために磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニット50に加える必要がある電流の量を効果的に低減することができる。したがって、電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2がスピン電流効率を増加するようにスピン電子を反射することができるので、スイッチング電流が大幅に低減され得る。
【0060】
いくつかの実施例において、電気的絶縁電子的反射層ERおよびER2の一方あるいは両方は、上述したように、不均一の厚さを有し得る。この結果得られる傾斜した電流は、スイッチング電流をさらに低減するようにスピン効率をさらに増加させることができる。不均一の電気的絶縁電子的反射層ERおよび/またはER2は、出力信号を維持するための直列抵抗も低減することができる。
【0061】
いくつかの実施例において、上述した磁束閉鎖スピン注入トルクメモリユニットは、スピン電子を反射する代わりにスピン電子を拡散する素材層を含み得る。このスピン電子拡散層は上述した電気的絶縁電子的反射層に加えてもしくは代わりになり得る。加えもしくは置き換えられ得る。スピン電子拡散層は、たとえばRu、Pd、Ta、Pt、Alなどのような電導性金属から形成され得る。この層の厚さは10〜50オングストロームの範囲内であり得る。
【0062】
したがって、電子的反射絶縁スペーサを有する磁束閉鎖STRAMの実施例が開示された。上述したものの実施および他の実施は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。当業者は、それらの開示された実施例とは別の実施例を用いて本開示を実用化することができる。開示された実施例は説明のためのものであって限定すべきものではなく、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B