(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)アジピン酸単位、(b)イソフタル酸単位、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、ジアミン成分単位とを含むポリアミド共重合体であって、
前記(a)、前記(b)、及び前記(c)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b)の含有量(モル%)と前記(c)の含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たし、
前記(a)、前記(b)、及び前記(c)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%に対して、前記(a)アジピン酸単位の含有量が34〜80モル%であり、前記(b)イソフタル酸単位の含有量が0.1〜26モル%であり、前記(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が15〜43モル%である、ポリアミド共重合体。
(c)>(b)≧0.1 ・・・(1)
前記(a)、前記(b)、及び前記(c)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%に対して、前記(a)アジピン酸単位の含有量が40〜80モル%であり、前記(b)イソフタル酸単位の含有量が0.1〜25モル%であり、前記(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が15〜40モル%である、請求項1に記載のポリアミド共重合体。
前記(a)アジピン酸、前記(b)イソフタル酸、及び前記(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む前記ジカルボン酸成分と、前記ジアミン成分との共重合における最終重合到達温度が270℃以上である、請求項11に記載のポリアミド共重合体の製造方法。
前記共重合の原料モノマーとして用いる前記(c)1,4−シクロジカルボン酸中の前記シス異性体(c−2)に対する前記トランス異性体(c−1)のモル比率((c−1)/(c−2))が、50/50〜10/90である、請求項11〜14のいずれか一項に記載のポリアミド共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[ポリアミド共重合体]
本実施の形態のポリアミド共重合体は、(a)アジピン酸単位、(b)イソフタル酸単位、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、ジアミン成分単位とを含むポリアミド共重合体であって、前記(a)、前記(b)、及び前記(c)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b)の含有量(モル%)と前記(c)の含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たすポリアミド共重合体である。これにより、吸水剛性、熱時剛性に優れるだけでなく、成形外観性にも優れるポリアミド共重合体とすることができる。
(c)>(b)≧0.1 ・・・(1)
【0014】
ポリアミド共重合体中のジカルボン酸成分単位の組成割合としては、(a)、(b)及び(c)を含むジカルボン酸成分単位の合計100モル%に対して、好ましくは(a)アジピン酸単位の含有量が40〜80モル%、(b)イソフタル酸単位の含有量が0.1〜25モル%、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が15〜40モル%であり、より好ましい組成割合は(a)アジピン酸単位の含有量が45〜80モル%、(b)イソフタル酸単位の含有量が1〜25モル%、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が20〜40モル%であり、更に(b)と(c)の関係が上記式(1)を満たすポリアミド共重合体である。組成割合を上記範囲内とし、且つ、式(1)の関係を満たすことにより、成形外観性を損なうことなく、吸水剛性、熱時剛性が更に優れたポリアミド共重合体とすることができる。ポリアミド共重合体を構成する各組成の割合は核磁気共鳴装置(NMR)によって求めることができる。
【0015】
本実施の形態に用いられるジアミン成分単位を構成するものとしては、特に限定されないが、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンなどが挙げられ、これらの中でも、脂肪族ジアミンが好ましい。
【0016】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。これら脂肪族ジアミン成分の中でも、剛性の観点から、ヘキサメチレンジアミンを用いるのが好ましい。
【0017】
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0018】
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0019】
これらのジアミン成分は、それぞれ1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0020】
本実施の形態のポリアミド共重合体には、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、(a)アジピン酸、(b)イソフタル酸、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、重縮合可能なアミノ酸、ラクタムなどを共重合成分として用いることができる。
【0021】
(a)アジピン酸、(b)イソフタル酸、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0022】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である、脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよい。
【0023】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、並びに、スルホン酸基及びそのナトリウム塩などのその塩である基などが挙げられる。
【0024】
重縮合可能なアミノ酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などが挙げられる。
【0025】
ラクタムとしては、例えば、ブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタムなどが挙げられる。
【0026】
これらのジカルボン酸成分、アミノ酸成分、及びラクタム成分は、それぞれ1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0027】
本実施の形態のポリアミド共重合体は、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位を含むことが好ましい。かかる単位を含むことで、吸水剛性、及び高温剛性に一層優れるポリアミド共重合体とすることができる。
【0028】
本実施の形態のポリアミド共重合体の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のために、末端封止剤を更に添加することができる。例えば、本実施の形態のポリアミド共重合体を重合する際に、公知の末端封止剤を更に添加することができる。
【0029】
末端封止剤としては、特に限定されず、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられる。それらの中でも、製造コストの観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。これらの末端封止剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
末端封止剤として用いられるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するモノカルボン酸であれば特に限定されず、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。これらのモノカルボン酸は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するモノアミンであれば特に限定されず、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;などが挙げられる。これらのモノアミンは、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリアミド共重合体の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び/又は他の成分との混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミド共重合体を融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び/又は他の成分との混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び/又は他の成分との混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(プレポリマー・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、及び/又は他の成分との混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法などが挙げられる。
【0033】
重合形態としては、特に限定されず、バッチ式でも連続式でもかまわない。また、重合装置も特に限定されず、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
【0034】
上記の製造方法の中でも、生産性の観点から、熱溶融重合法が好ましい。熱溶融重合法としては、例えば、バッチ式の熱溶融重合法などが挙げられる。バッチ式の熱溶融重合法の重合温度条件としては、特に限定されないが、生産性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは170℃以上である。例えば、アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩、又は水溶液などを、110〜200℃の温度下で攪拌し、約60〜90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。続いて、内部圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上、更に好ましくは270℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除くとともに、圧力を徐々に抜いて常圧又は減圧下で重縮合を行う熱溶融重合法を用いることができる。
【0035】
さらには、アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩、又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。
【0036】
例えば、上記した、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位を含むポリアミド共重合体は、熱溶融重合法によって製造することができる。ポリアミド共重合体の構造単位は核磁気共鳴装置(NMR)によって確認することができる。
【0037】
本実施の形態のポリアミド共重合体の製造方法としては、(a)アジピン酸、(b)イソフタル酸、及び(c)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、ジアミン成分とを共重合させて、前記(c)1,4−シクロジカルボン酸のトランス異性体(c−1)、シス異性体(c−2)、前記(a)アジピン酸、及び前記(b)イソフタル酸を含むジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b)に由来する単位の含有量(モル%)と前記(c−1)に由来する単位の含有量(モル%)の関係が下記式(2)を満たすポリアミド共重合体を得る工程を有することが好ましい。下記式(2)を満たすポリアミド共重合体とすることにより、成形外観性を損なうことなく、吸水剛性及び高温剛性を一層向上させることができる。
(c−1)>(b)≧0.1 ・・・(2)
【0038】
さらに、アジピン酸、イソフタル酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、ジアミン成分との共重合における最終内部温度は、好ましくは270℃以上、より好ましくは280℃以上、更に好ましくは290℃以上である。これにより、ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス異性体単位の含有量を増やすことができ、成形外観性を損なうことなく、吸水剛性及び熱時剛性に一層優れるポリアミド共重合体を得ることができる。例えば、上記した熱溶融重合法を採用する場合、最終内部温度を上記温度範囲としつつ、常圧で又は減圧して重縮合を行うことが好ましい。
【0039】
ニーダーなどの押出型反応機を用いる場合、押出の条件は、特に限定されないが、減圧度は0〜0.07MPa程度が好ましい。押出温度は、JIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点よりも1〜100℃程度高い温度であることが好ましい。剪断速度は、100(sec
−1)以上程度であることが好ましく、平均滞留時間は、0.1〜15分間程度であることが好ましい。上記の押出条件とすることにより、着色や高分子量化できないなどの問題の発生を効果的に抑制できる。
【0040】
触媒は、ポリアミドの製造に用いられる公知のものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルト亜リン酸、ピロ亜リン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、2−(2’−ピリジル)エチルホスホン酸、及びそれらの金属塩などが挙げられる。金属塩の金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモンなどの金属塩やアンモニウム塩などが挙げられる。また、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどのリン酸エステル類も用いることができる。
【0041】
本実施の形態のポリアミド共重合体に原料モノマーとして用いられる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。原料モノマーとして用いられる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、トランス異性体とシス異性体のどちらか一方を用いてもよいし、トランス異性体とシス異性体の種々の比率の混合物として用いてもよい。1,4−シクロジカルボン酸は高温で異性化し一定の比率になることや、シス異性体が、トランス異性体よりも、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして用いる(c)1,4−シクロジカルボン酸中のシス異性体(c−2)に対するトランス異性体(c−1)のモル比率((c−1)/(c−2))は、好ましくは50/50〜10/90であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。トランス異性体/シス異性体比を上記範囲とすることにより、成形外観性を損なうことなく、吸水剛性及び熱時剛性に一層優れるポリアミド共重合体とすることができる。トランス異性体/シス異性体比は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0042】
本実施の形態のポリアミド共重合体の分子量は、特に限定されないが、成形性及び機械物性がより優れている観点から、その数平均分子量(Mn)は、好ましくは7000〜100000であり、より好ましくは7500〜50000であり、更に好ましくは10000〜40000である。数平均分子量(Mn)は、例えば、トリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1モル%溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶媒として用い、標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。ポリアミド共重合体の数平均分子量(Mn)が7000以上の場合には、靱性の低下を一層抑制できる傾向があり、また100000以下の場合には、成形性の低下を一層抑制できる傾向がある。
【0043】
本実施の形態のポリアミド共重合体の融点は、好ましくは210〜340℃であり、より好ましくは230〜330℃であり、更に好ましくは240〜320℃であり、より更に好ましくは240〜300℃である。融点の測定は、JIS K7121に準じて行うことができる。より具体的には、例えば、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定することができる。具体的には、サンプル8mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、400℃まで昇温して、得られた融解曲線のピーク温度を融点とする。融点が210℃以上の場合には、耐薬品性や耐熱性の低下を一層抑制できる傾向があり、340℃以下の場合には成形時の熱分解などを一層抑制できる傾向がある。
【0044】
本実施の形態のポリアミド共重合体のガラス転移温度は、好ましくは50〜110℃であり、より好ましくは50〜100℃であり、更に好ましくは50〜90℃である。ガラス転移温度の測定は、JIS K7121に準じて行うことができる。より具体的には、例えば、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定することができる。まず、試料をホットステージ(例えば、Mettler社製、「EP80」)で溶融させ、溶融状態のサンプルを液体窒素中に急冷し、固化させ、測定サンプルとする。測定サンプル10mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、30〜300℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定することができる。ガラス転移温度が50℃以上の場合には、耐熱性や耐薬品性の低下を起こし難く、吸水性が増すことを効果的に防止できる。また、ガラス転移温度が110℃以下の場合には、成形外観性が更に優れたものが得られる。
【0045】
本実施の形態では、上記したポリアミド共重合体(A)と、無機充填材(B)とを含むポリアミド樹脂組成物とすることができる。無機充填材(B)を含むことにより、剛性に優れるポリアミド樹脂組成物とすることができる。
【0046】
[無機充填材(B)]
本実施の形態に用いられる無機充填材(B)としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデンなどが挙げられる。これらの中でも、物性、安全性、及び経済性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、アパタイトが好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
【0047】
ガラス繊維、及び炭素繊維としては、特に限定されず、長繊維タイプから短繊維タイプ、及び異型断面タイプ(例えば、まゆ型、長円型)のものまで任意の形状のガラス繊維、及び炭素繊維が使用可能である。
【0048】
ガラス繊維や炭素繊維の中でも、高い特性を発現できる観点から、数平均繊維径は3〜30μmが好ましく、重量平均繊維長は100〜750μmが好ましく、重量平均繊維長数と平均繊維径とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものが好ましい。特に、数平均繊維径が3〜30μm、重量平均繊維長が100〜750μm、重量平均繊維長と平均繊維径とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものがより好ましい。
【0049】
ウォラストナイトは、高い特性を発現できる観点から、数平均繊維径は3〜30μmが好ましく、重量平均繊維長は10〜500μmが好ましく、前記アスペクト比(L/D)が3〜100のものが好ましい。特に、数平均繊維径が3〜30μm、重量平均繊維長が10〜500μm、前記アスペクト比(L/D)が3〜100であるものがより好ましい。
【0050】
タルク、マイカ、カオリン、窒化珪素、チタン酸カリウムは、高い特性を発揮できる観点から、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものが好ましい。
【0051】
上記した無機充填材(B)の数平均繊維径及び重量平均繊維径は、顕微鏡法により測定することができる。例えば、ペレット状のガラス繊維を含有するポリアミド樹脂組成物を、該ポリアミド樹脂組成物の分解温度以上で加熱し、残ったガラス繊維を、顕微鏡を用いて写真撮影し、ガラス繊維の径を計測する方法により測定することができる。顕微鏡法によって得られた測定値から、数平均繊維径及び重量平均繊維径を計算する方法としては、下記式(3)及び式(4)が挙げられる。
数平均繊維径=ガラス繊維長さの合計/ガラス繊維の数 ・・・(3)
重量平均繊維径=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計 ・・・(4)
【0052】
前記無機充填材(B)は、機械強度向上の観点から、表面処理されたものが好ましい。表面処理剤としては、特に限定されず、例えば、カップリング剤やフィルム形成剤を用いることができる。
【0053】
カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤などが挙げられる。
【0054】
シラン系カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアなどが挙げられる。これらの中でも、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのアミノシラン及びエポキシシランが、経済性と取り扱い性に優れるという観点から、好ましい。
【0055】
チタン系カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネートイソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどが挙げられる。
【0056】
フィルム形成剤としては、特に限定されず、例えば、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエンなどの不飽和単量体とのコポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマーなどの重合体が挙げられる。これらの中でも、経済性と性能に優れるという観点から、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が好ましい。
【0057】
このようなカップリング剤及びフィルム形成剤を用いて、無機充填材(B)の表面処理を行う方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、上記カップリング剤及びフィルム形成剤の有機溶媒溶液又は懸濁液を、いわゆるサイジング剤として表面に塗布するサイジング処理;ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダーなどを用いて塗布する乾式混合;スプレーにより塗布するスプレー法;インテグラルブレンド法;ドライコンセントレート法などが挙げられる。また、これらの方法を組合せた方法(例えば、カップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法など)も挙げられる。これらの中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法、及びこれらを組合せた方法が好ましい。
【0058】
ポリアミド共重合体(A)100質量部に対する無機充填材(B)の配合量は、特に限定されないが、好ましくは1〜300質量部であり、より好ましくは1〜200質量部であり、更に好ましくは1〜180質量部であり、より更に好ましくは5〜150質量部である。無機充填材(B)の配合量を上記範囲内にすることにより、機械特性に優れ、かつ押出性及び成形性に支障をきたす傾向を抑えることができる。これらの無機充填材(B)は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本実施の形態のポリアミド共重合体には、必要に応じて、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、及び耐候性の向上を目的に、劣化抑制剤を添加してもよい。劣化抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸銅及びヨウ化銅などの銅化合物、ヒンダードフェノール化合物などのフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、及びイオウ系安定剤などからなる群より選ばれる少なくとも1種の劣化防止剤が挙げられる。これらの、劣化抑制剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0060】
本実施の形態のポリアミド共重合体には、必要に応じて、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を配合してもよい。成形性改良剤としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドなどからなる群より選ばれる少なくとも1種の成形性改良剤が挙げられる。
【0061】
高級脂肪酸としては、例えば、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸などの炭素数8〜40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸及びモンタン酸などが好ましい。
【0062】
高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。金属塩の金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウムなどが好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウムなどの第1,2族元素、並びにアルミニウムなどがより好ましい。高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、成形性の観点から、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩などが好ましい。
【0063】
高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。これらの中でも、成形性の観点から、炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコールなどが挙げられる。高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどが挙げられる。
【0064】
高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、成形性の観点から、好ましくはステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカ酸アミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカ酸アミドである。これらの、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0065】
本実施の形態のポリアミド共重合体には、必要に応じて、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、特に限定されないが、例えば、ニグロシンなどの染料、酸化チタン及びカーボンブラックなどの顔料、アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタンなどの金属粒子、並びにマイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレークなどのメタリック顔料などからなる群より選ばれる少なくとも1種の着色剤が挙げられる。
【0066】
本実施の形態のポリアミド共重合体には、必要に応じて、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を配合してもよい。他の樹脂としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂やゴム成分などが挙げられる。
【0067】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、66、612、66/6Iなどの他のポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレンなどの縮合系樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンープロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの含ハロゲンビニル化合物系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0068】
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、又はブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴムなどのコアシェルタイプなどが挙げられる。これらのゴム成分は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0069】
本実施の形態のポリアミド共重合体に、無機充填材、劣化抑制剤、成形性改良剤、着色剤、他の樹脂などを配合する方法としては、特に限定されず、公知の押出技術を用いて配合することができる。その際、配合、混練方法や混練順序は、特に限定されず、通常用いられる混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、及びリボンブレンダーなどを用いて混合できる。混練機としては、通常、1軸又は多軸の押出機が用いられるが、これらの中でも、生産性の観点から、減圧装置を備えた2軸押出機が好ましい。
【0070】
本実施の形態では、上記したポリアミド共重合体やポリアミド樹脂組成物を含む成形品とすることができる。本実施の形態のポリアミド共重合体を成形する方法としては、本実施の形態のポリアミド共重合体やポリアミド樹脂組成物から成形品を得ることができる方法であれば、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)などの成形方法が挙げられる。これらの成形方法により、本実施の形態のポリアミド共重合体を含む成形品を得ることができる。
【0071】
本実施の形態のポリアミド共重合体やポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、成形外観性を損なうことなく、吸水剛性及び熱時剛性に優れるため、様々な用途に用いることができる。成形品としては、特に限定されないが、例えば、自動車部品、電気部品、電子部品、携帯機器部品、機械・工業部品、事務機器部品、航空・宇宙部品において、好適に用いることができる。
【0072】
自動車部品としては、例えば、自動車の内装・外板・外装部品、自動車エンジンルーム内の部品、自動車電装部品などが挙げられる。電器・電子部品としては、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品ハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、及びモーターエンドキャップなどが挙げられる。携帯機器部品としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、携帯ゲーム機器、デジタルカメラなどの筐体、及び構造体などが挙げられる。また、本実施の形態の成形品は、表面外観に優れるので、成形品表面に塗装膜を形成させた成形品としても好ましく用いられる。塗装膜の形成方法は公知の方法であれば特に限定されず、例えば、スプレー法、静電塗装法などの塗装によることができる。また、塗装に用いる塗料は、公知のものであれば特に限定されず、メラミン架橋タイプのポリエステルポリオール樹脂塗料、アクリルウレタン系塗料などを用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例によって本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の測定法は以下のとおりである。
【0074】
[測定方法]
[ポリアミドの数平均分子量(Mn)]
ポリアミド又は成形品の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。装置は東ソー(株)製、「HLC−8020」を、検出器は示差屈折計(RI)を、溶媒はトリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1モル%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を、カラムは東ソー(株)製、「TSKgel−GMHHR−H」2本と「G1000HHR」1本を用いた。溶媒流量は0.6mL/min、サンプル濃度は1〜3(mgサンプル)/1(mL溶媒)であり、フィルターでろ過し、不溶分を除去し、測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、数平均分子量(Mn)を算出した。
【0075】
[ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス異性体比率、及びポリアミド共重合体中の構成単位]
ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス異性体比率は、ポリアミド共重合体30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、
1H−NMRで測定した。装置は日本電子(株)製、「JNM ECA−500」を用いた。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来するピーク面積とシス異性体に由来するピーク面積の比率からトランス異性体比率(トランス異性体/シス異性体)を求めた。また、ポリアミド共重合体中の構成単位の割合は、
1H−NMRで測定し、各成分に由来するピーク面積の比率から求めた。
【0076】
[融点(℃)]
融点は、JIS K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、Tm1+40℃の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温、2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)のピーク温度を融点(Tm2(℃))とした。
【0077】
[ガラス転移温度(℃)]
ガラス転移温度は、JIS K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定した。まずサンプルをホットステージ(Mettler社製、「EP80」)で溶融させ、溶融状態のサンプルを液体窒素中で急冷し、固化させ、測定用サンプルとした。測定用サンプル10mgを、昇温速度20℃/minの条件下、30〜300℃の範囲で昇温して、そのガラス転移温度を測定した。
【0078】
[機械物性評価用の成形品の作製]
成形品は、射出成形機を用いて作製した。射出成形機は日精樹脂(株)製、「PS40E」を用いた。金型温度を100℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、厚み4mmの試験片を得た。なお、シリンダー温度は、前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度条件に設定した。
【0079】
[曲げ弾性率の測定]
前記厚み4mmのISOダンベルを作製し、試験片とした。得られた試験片を用いて、ISO178に準じて、曲げ弾性率を測定した。
【0080】
[吸水後曲げ弾性率の測定]
前記ISOダンベルを試験片として用いて、80℃の温水中で24時間浸漬後、ISO178に準じて曲げ弾性率を測定した。Wet保持率は下記式を用いて求めた。
Wet保持率(%)=吸水後(Wet)曲げ弾性率/吸水前(Dry)曲げ弾性率×100
【0081】
[100℃曲げ弾性率の測定]
前記厚み4mmの試験片を用いて、100℃雰囲気下でISO178に準じて曲げ弾性率を測定した。100℃保持率は下記式を用いて求めた。
100℃保持率(%)=100℃曲げ弾性率/吸水前(Dry)曲げ弾性率×100
【0082】
[成形外観性評価用の成形品の作製]
成形品は、射出成形機を用いて作製した。射出成形機は東芝機械(株)製、「IS150E」を用いた。金型温度を90℃に設定し、射出12秒、冷却20秒の射出成形条件で、縦130mm×横130mm×厚み4mmの試験片を得た。なお、シリンダー温度は、前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度条件に設定した。
【0083】
[成形外観性の評価]
堀場(株)製、ハンディ光沢度計「IG320」により、前記成形外観性評価用の成形品の60℃反射グロス値を求めた。
【0084】
[b値の測定]
日本電色工業(株)製、測色色差計「ZE−2000」を用いて、反射法でポリアミド共重合体(A)のペレットのb値を求めた。
【0085】
本実施例のポリアミド共重合体の製造において、下記化合物を用いた。
(1)アジピン酸 和光純薬工業(株)製 商品名:アジピン酸
(2)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 イーストマンケミカル製 商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体(モル比)=25/75)
(3)イソフタル酸 和光純薬工業(株)製 商品名:イソフタル酸
(4)ヘキサメチレンジアミン 和光純薬工業(株)製 商品名:ヘキサメチレンジアミン
【0086】
[ポリアミド共重合体(A)]
[実施例1]ポリアミド共重合体(a1)の製造
アジピン酸517.0g(3.54モル)、イソフタル酸55.1g(0.33モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸285.5g(1.66モル)、ヘキサメチレンジアミン642.3g(5.53モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を準備した。この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110〜150℃の温度下で撹拌しながら、水蒸気を徐々に抜いて、溶液濃度70質量%まで濃縮した。その後、内部温度を218℃まで昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そして、内部温度が270℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。得られたポリアミド共重合体を2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は69.8モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a1)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a1)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0087】
[実施例2]ポリアミド共重合体(a2)の製造
アジピン酸440.9g(3.02モル)、イソフタル酸91.1g(0.55モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸330.6g(1.92モル)、ヘキサメチレンジアミン637.4g(5.49モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は291℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は71.4モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a2)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a2)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0088】
[実施例3]ポリアミド共重合体(a3)の製造
アジピン酸509.4g(3.49モル)、イソフタル酸128.7g(0.77モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸219.1g(1.27モル)、ヘキサメチレンジアミン642.9g(5.53モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は292℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は71.8モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a3)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a3)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0089】
[実施例4]ポリアミド共重合体(a4)の製造
アジピン酸433.3g(2.97モル)、イソフタル酸173.3g(1.04モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸255.3g(1.48モル)、ヘキサメチレンジアミン638.1g(5.49モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は293℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.0モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a4)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a4)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0090】
[実施例5]ポリアミド共重合体(a5)の製造
アジピン酸595.3g(4.07モル)、イソフタル酸83.4g(0.50モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸172.9g(1.00モル)、ヘキサメチレンジアミン648.4g(5.58モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.2モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a5)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a5)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0091】
[実施例6]ポリアミド共重合体(a6)の製造
アジピン酸333.5g(2.28モル)、イソフタル酸207.6g(1.25モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸327.5g(1.90モル)、ヘキサメチレンジアミン631.4g(5.43モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は70.2モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a6)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a6)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0092】
[実施例7]ポリアミド共重合体(a7)の製造
アジピン酸332.9g(2.28モル)、イソフタル酸135.2g(0.81モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸401.6g(2.33モル)、ヘキサメチレンジアミン630.3g(5.42モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は292℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.1モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a7)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a7)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0093】
[実施例8]ポリアミド共重合体(a8)の製造
アジピン酸268.1g(1.83モル)、イソフタル酸233.1g(1.40モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸371.7g(2.16モル)、ヘキサメチレンジアミン627.1g(5.40モル)とした以外は実施例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は291℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.3モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a8)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a8)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0094】
[比較例1]ポリアミド共重合体(a9)
アジピン酸692.2g(4.74モル)、イソフタル酸74.9g(0.45モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸77.7g(0.45モル)、ヘキサメチレンジアミン655.2g(5.64モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を準備した。この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110〜150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を218℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、253℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。これを2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。得られたポリアミド共重合体(a9)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a9)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0095】
[比較例2]ポリアミド共重合体(a10)
アジピン酸595.9g(4.08モル)、イソフタル酸129.9g(0.78モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸125.0g(0.73モル)、ヘキサメチレンジアミン649.1g(5.59モル)とした以外は比較例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。得られたポリアミド共重合体(a10)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a10)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0096】
[比較例3]ポリアミド共重合体(a11)
アジピン酸317.5g(2.17モル)、イソフタル酸270.7g(1.63モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸280.6g(1.63モル)、ヘキサメチレンジアミン631.2g(5.43モル)とした以外は比較例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。得られたポリアミド共重合体(a11)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a11)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0097】
[比較例4]ポリアミド共重合体(a12)
アジピン酸509.9g(3.49モル)、イソフタル酸174.8g(1.05モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸171.7g(1.00モル)、ヘキサメチレンジアミン643.6g(5.54モル)とした以外は比較例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。得られたポリアミド共重合体(a12)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a12)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0098】
[実施例9]ポリアミド共重合体(a13)
アジピン酸509.4g(3.49モル)、イソフタル酸128.7g(0.77モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸219.1g(1.27モル)、ヘキサメチレンジアミン642.9g(5.53モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110〜150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を218℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、253℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。このとき、重合の最終内部温度は275℃であった。これを2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は56.7モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a13)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a13)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0099】
[実施例10]ポリアミド共重合体(a14)
アジピン酸433.3g(2.97モル)、イソフタル酸173.3g(1.04モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸255.3g(1.48モル)、ヘキサメチレンジアミン638.1g(5.49モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110〜150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を218℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、253℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。このとき、重合の最終内部温度は275℃であった。これを2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は58.1モル%であった。得られたポリアミド共重合体(a14)の組成を表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を
1H−NMRにより分析することによって求めた。得られたポリアミド共重合体(a14)の吸水剛性、熱時剛性、及び成形外観性を、上記記載の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0100】
[無機充填材(B)]
ガラス繊維(b1) Chongqiung Polycomp International Corporation製 商品名:ECS301HP 平均繊維径:10μm、カット長:3mm
【0101】
<実施例11>
ポリアミド共重合体(a1)100質量部を、東芝機械社製、TEM35mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。さらに、サイドフィード口より、ポリアミド共重合体(A)100質量部に対して、ガラス繊維(b1)を100質量部の割合で供給し、紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性、及び成形外観性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0102】
<実施例12>
ポリアミド共重合体(a2)を用いた以外は実施例11に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0103】
<実施例13>
ポリアミド共重合体(a3)を用いた以外は実施例11に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0104】
<実施例14>
ポリアミド共重合体(a3)100質量部を、東芝機械社製、TEM35mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。さらに、サイドフィード口より、ポリアミド共重合体(A)100質量部に対して、ガラス繊維(b1)を50質量部の割合で供給し、紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性、及び成形外観性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0105】
<実施例15>
ポリアミド共重合体(a4)を用いた以外は実施例11に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性の評価を行った。
【0106】
<実施例16>
ポリアミド共重合体(a5)を用いた以外は実施例11に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性、及び成形外観性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0107】
<実施例17>
ポリアミド共重合体(a6)を用いた以外は実施例11に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性、及び成形外観性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0111】
<実施例18>
ポリアミド共重合体(a13)を用いた以外は実施例11に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。上記記載の方法により、吸水剛性と熱時剛性、及び成形外観性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
表に示すように、各実施例のポリアミド共重合体から得られた成形品は、成形外観性を損なうことなく、いずれも優れた吸水剛性、熱時剛性を有することが確認された。一方、(b)の含有量(モル%)と(c)の含有量(モル%)の関係が、(b)=(c)である比較例1、3、及び(b)と(c)の関係が(b)>(c)である比較例2、4のポリアミド共重合体から得られた成形品は、吸水剛性、100℃での熱時剛性が大きく低下したことが確認された。さらに、(b)と(c)の関係が(c)>(b)であり、且つ(c−1)>(b)≧0.1である実施例3、4のポリアミド共重合体から得られた成形品は、実施例9、10の成形品に比較して、吸水剛性、熱時剛性が一層優れていることが確認された。
【0116】
本出願は、2009年9月8日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2009−207233)及び2009年9月8日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2009−207245)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。