特許第5667985号(P5667985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポクセルの特許一覧

特許5667985インスリンとトリアジンの組合せ及び糖尿病を治療するためのその使用
<>
  • 特許5667985-インスリンとトリアジンの組合せ及び糖尿病を治療するためのその使用 図000018
  • 特許5667985-インスリンとトリアジンの組合せ及び糖尿病を治療するためのその使用 図000019
  • 特許5667985-インスリンとトリアジンの組合せ及び糖尿病を治療するためのその使用 図000020
  • 特許5667985-インスリンとトリアジンの組合せ及び糖尿病を治療するためのその使用 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5667985
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】インスリンとトリアジンの組合せ及び糖尿病を治療するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20150122BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20150122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   A61K31/53
   A61K37/26
   A61P43/00 121
   A61P3/10
   A61P3/00
   A61K9/08
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-539914(P2011-539914)
(86)(22)【出願日】2009年11月13日
(65)【公表番号】特表2012-511521(P2012-511521A)
(43)【公表日】2012年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2009008099
(87)【国際公開番号】WO2010066326
(87)【国際公開日】20100617
【審査請求日】2012年11月13日
(31)【優先権主張番号】08021617.9
(32)【優先日】2008年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509170040
【氏名又は名称】ポクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】メサンジョー ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】クラヴォ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】オード アニック
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−520858(JP,A)
【文献】 治療と診断,2005年,VOL.93, NO.5,P.701-708
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその生理学的に許容できる塩から選ばれる少なくとも1種の化合物とインスリンとの組み合わせを含む、組み合わせ医薬。
【請求項2】
インスリン抵抗性と関係がある疾患の予防処置若しくは治療処置及び/又はモニタリングのための請求項記載の医薬。
【請求項3】
疾患が、糖尿病、糖尿病前症、低耐糖能、高血糖症、代謝症候群、糖尿病性腎症、神経障害、網膜症、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患からなる群から選択される、請求項に記載の医薬。
【請求項4】
経口投与又は非経口投与のための、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
前記インスリンが、単一投薬単位として前記式(I)の化合物との固定組合せで存在する、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
前記インスリンと前記化合物が、単一包装単位内の別々の投薬単位として存在する、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
グルコース恒常性の増強のための、請求項1記載の医薬。
【請求項8】
グルコースに対する耐糖能及び/又はインスリン分泌を増加させる、請求項記載の医薬。
【請求項9】
化合物が、体重1kg当たり25〜200mgの用量範囲の投与のために供給される、請求項に記載の医薬。
【請求項10】
インスリン及び化合物が同時投与又は逐次投与の形態で供給される、請求項に記載の医薬。
【請求項11】
インスリン抵抗性と関係がある疾患の予防処置若しくは治療処置及び/又はモニタリングのためのキットであって、第1の投薬単位として1種以上の医薬的に許容できるアジュバントと共に、活性成分として有効量のインスリンを含み、かつ第2の投薬単位として1種以上の医薬的に許容できるアジュバントと共に、有効量の5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン及びその生理学的に許容できる塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、前記キット
【請求項12】
疾患が、インスリン依存性糖尿病およびインシュリン非依存性糖尿病からなる群より選ばれる、請求項記載の医薬。
【請求項13】
非経口投与用注射溶液である、請求項記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(I)
【0002】
【化1】
【0003】
(式中、基R1〜R6は、請求項1に記載の意味を有する)
の少なくとも1種の化合物、及び/又はその生理学的に許容できる塩と組み合わせてインスリンを含む、薬物として使うための組成物に関する。本発明の別の目的は、インスリン抵抗性(IR)と関係がある生理的状態及び/又は病的状態の予防処置若しくは治療処置及び/又はモニタリングのための、医薬的に容認できるアジュバントと共に活性成分としてインスリン及び式(I)の少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物に関する。本発明は、第1の投薬単位としてのインスリン及び第2の投薬単位としての式(I)の少なくとも1種の化合物を含む医薬包装単位にも関する。
【背景技術】
【0004】
肥満症、IR及び脂質異常症などの代謝疾患は、世界中で罹患率及び死亡率の主要原因として浮上しつつある。特にここ10年の間に、一般社会でIRが非常に蔓延した状態になってきており、健康保険に重大な影響を及ぼしている。IRは、インスリンの正常な作用に対して低減した不十分な体の応答として定義される。IRは、心血管疾患及びII型糖尿病(T2DM)の発症の重要な危険因子である。糖尿病は、多くの病理学的徴候のある慢性疾患である。糖尿病は、脂質及び糖の代謝の障害並びに循環障害を伴う。さらに、IRは、まとめて示すと代謝症候群又は症候群Xと呼ばれる種々の心血管の危険因子(例えば、肥満、脂質代謝異常、高血圧及び血液凝固異常)と関係がある。従って、インスリン抵抗性症候群(症候群X)は、特にインスリン作用の低減を特徴とし(Presse Medicale (1997), 26(14): 671-677)、上述した多くの病的状態、特に糖尿病、さらに特にインスリン非依存性糖尿病に関与するが、さらに特定の大血管性合併症、例えばアテローム性動脈硬化症、又は微小血管性合併症、例えば網膜症、腎症及び神経障害にも関与する。今やIRが代謝症候群の根底にある統一原因因子であり得るという相当な証拠が存在する(Turner & Hellerstein (2005) Curr Opin Drug Discovery & Develop 8(1): 115-126)。
組織のインスリン応答性を直接改善することを目的とした現在の治療的介入はチアゾリジンジオン(TZD)を適用する。しかし、TZDは全身インスリン感受性を改善することを示したが、最近、心不全の危険性を高めることが分かってきた。従って、その特徴の1つがIRである、蔓延しつつある撹乱された代謝疾患との闘いにおいてIR治療のための代替物が必要である。
I型糖尿病(又はインスリン依存性糖尿病)を治療するための薬剤としてインスリンを適用することも知られている。インスリンは、インスリン非依存性糖尿病の治療で血糖降下薬(hypoglycemiant agent)としても使われる。従来技術EP0193256及びEP0207581は、それぞれ抗高血糖薬及び脂質低下薬(hypolipemiant)としてチアゾリジン-2,4-ジオンを教示しているので、該化合物が抗糖尿病薬として開示されている。これらの化合物は、さらにペルオキシソーム増殖因子-活性化受容体(PPARγ)の活性化因子である。特定のPPARγチアゾリジン-2,4-ジオン誘導体、例えばロシグリタゾンとインスリンの組合せは、既にSmithKline Beechamによって特許出願WO1998/57636で開示されている。しかし、インスリン投与量が多いままであり、体重増加が伴ってくる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の基礎を形成する技術的課題は、インスリン抵抗性と関係がある疾患の予防又は治療で有効に適用できる医薬組成物、特に治療効力を高め、かつ副作用を最小限にするような組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩と組み合わせてインスリンを含む、薬物として使うための組成物を提供することによって、この問題を解決する。ここで、式(I)の化合物は以下のように定義される。
【0007】
【化2】
【0008】
式中、
R1、R2は、それぞれ相互独立に、H又はAを表し、
R3、R4は、それぞれ相互独立に、H、A、2〜6個のC原子を有するアルケニル、2〜6個のC原子を有するアルキニル、Ar又はHetを表し、
R5とR6は、一緒に2、3、4又は5個のC原子を有するアルキレンをも表し、
R5、R6は、それぞれ相互独立に、H、A、(CH2)nAr、(CH2)mOAr、(CH2)mOA又は(CH2)mOHを表し、
R5とR6は、一緒に2、3、4又は5個のC原子を有するアルキレンをも表し(1つのCH2基がO、NH若しくはNAに置き換わっていてもよく、及び/又は1個のH原子がOHに置換されてもよい)、
Arは、フェニル、ナフチル又はビフェニルを表し(それぞれ無置換であるか或いはHal、A、OA、OH、COOH、COOA、CN、NH2、NHA、NA2、SO2A及び/又はCOAで一置換、二置換又は三置換されている)、
Hetは、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する単環式、二環式若しくは三環式の飽和、不飽和又は芳香族ヘテロ環(無置換であってよく或いはHal、A、OH、OA、NH2、(CH2)nAr、NHA、NA2、COOH、COOA及び/又は=O(カルボニル酸素)で一置換、二置換若しくは三置換されていてもよい)、
Aは、1〜10個のC原子を有する不分岐若しくは分岐アルキル(1〜7個のH原子がFに置換されてもよい)、又は3〜7個のC原子を有する環式アルキルを表し、
Halは、F、Cl、Br又はIを表し、
mは、1、2、3、4、5又は6を表し、かつ
nは、0、1又は2を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】1型ラットモデルの血漿グルコースに及ぼすインスリンと5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの組合せの効果を示す。
図2】インスリンと5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの組合せによる治療36日後のOGTT血漿グルコース変動(mmol/l)を示す。
図3】グルコース負荷及びインスリン(3UI/日)と5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの組合せによる治療36日後のOGTT血漿インスリン変動(pmol/l)を示す。
図4】各群:コントロール、インスリン(3UI/日)+5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン(75mg/kg b.i.d.)及びインスリン(3UI/日)+5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン(150mg/kg b.i.d.)の空腹時高血糖レベルの分布(パーセント)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
驚くべきことに、発明者らは、糖尿病などのIRに起因する医学的適応症、及びそれと関連する疾患に取り組むため、式(I)のトリアゾール化合物及びその誘導体を、インスリンとの組合せ医薬組成物において活性成分として適用できることを実証した。この出願を提出する前、式(I)の化合物はWO2001/55122に記載の方法で調製できることが知られているだけだった。式(I)の化合物は、IR症候群と関係がある疾患の治療で有用であり得る。式(I)の代表化合物は現在、臨床評価中である。しかし今では、本発明の根底にある前記トリアジン誘導体とインスリンの組合せが、グルコース代謝のコントロールの改善に相乗的に作用することが見出された。本発明は、強力なグルコース恒常性改善を明らかにする。これらの現象は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)及び代謝症候群のような特定臨床像のための本発明の併用療法の基礎を形成する、インスリンと式(I)の化合物の組成物の影響によって刺激される。
本発明の組成物は、良い耐容性と共に非常に有益な薬理学的特性を示す。標準的なインスリン療法と比較して、式(I)のトリアジン誘導体と併用すると、投与しなければならないインスリンの用量を有意に減らすことができ、それによって前臨床試験で検査されるいずれの用量の組成物でも増量を防止できる。結果として、上記組成物はIR及び/又はIR媒介疾患の予防、治療及び/又はモニタリングによく適している新規の組合せ薬物を表す。さらに詳しくは、本発明の組成物は、広範な患者のための強力な抗糖尿病薬を与える。
【0011】
当業者に既知の技術によって本発明の組成物の前記生物学的活性を決定できる。適切な実験動物は、例えばマウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、類人猿又はブタである。IRのin-vivo評価にとって究極の判断基準は、正常血糖高インスリングルコースクランプ(euglycemic-hyperinsulinemic glucose clamp)である。他の手段は、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価(homeostasis model assessment of insulin resistance)(HOMA-IR)又は頻回採血経口グルコース負荷試験(frequently sampled oral glucose tolerance test)(FSOGTT300-22)であり、この300-22は300分間で22のサンプルという意味である。インスリン感受性の変化を決定するのに好適な技術は、感度が高く、再現性があり、操作が簡単で、相対的にハイスループットでなければならない。
全身解糖の安定な同位体質量分析評価を含む、最近開発された重水素化グルコース処理試験(deuterated glucose disposal test)(2H-GDT)は、血漿インスリン*グルコースの単位当たりの2H2O生産(動物又は個体の重水素化[6,6’-2H2]グルコースによる(経口)負荷からの重水素(2H)の放出速度及び測定された血漿インスリン濃度に基づいている)を測定することによって、IRの評価を可能にする(Turner & Hellerstein (2005) Curr Opin Drug Discovery & Develop 8(1): 115-126)。さらに、[6,6’-2H2]グルコース負荷後に得られた絶対的2H2O生産を測定することによって、IRに対する膵臓β細胞の補償度を評価することができる。周囲インスリンの単位当たりの解糖処理(インスリン感受性を反映する)と達成されるグルコース利用の絶対速度(IRに対する膵臓補償を反映する)を区別することによって、膵臓補償の妥当性を評価することができる。2H-GDTは、以下の原理に順守するように設計される:i)環境グルコース濃度及びインスリン濃度は、生理学的に関連のある代謝状態を反映するはずであり、ii)試験は組織によるインスリン媒介グルコース利用を測定し、確立したモデルにおけるIRを明らかにすべきであり、及びiii)この方法は、心血管転帰及びT2DMの危険性を予測できることが分かっている他の試験と同程度の代謝状態を反映すべきである。基礎的グルコース利用状態と最大グルコース利用状態との間の「ダイナミックレンジ」の血清インスリン濃度は、これらの基準を満たす(Beysen et al. (2007) Diab Care 30:1143-1149)。さらに、定量的様式で動物又はヒトの全身解糖を測定する2H-GDTは、正常血糖高インスリングルコースクランプと強い相関がある。結果として、特に相対的にハイスループットで、かつ多くの常用されている前臨床動物モデルにおいて、インスリン感受性に及ぼす薬剤のin-vivo効果並びにインスリン代償性応答を決定するため本発明の範囲内では前記動態アッセイの利用が好ましい。さらに、2H-GDTは、同程度の簡単さとスループットのある臨床状況に完全にトランスレーショナルである。
【0012】
本発明の意味では、式(I)の化合物は、その溶媒和物、プロドラッグ、互変異性体、エナンチオマー、ラセミ体及び立体異性体を(その全ての比率の混合物を含め)含む医薬的に使用できる誘導体を包含するものと定義される。溶媒和物及び/又は生理学的に許容できる塩が好ましく、さらに好ましくは生理学的に許容できる酢酸塩、最も好ましくは生理学的に許容できる酸付加塩である。
トリアジン誘導の「溶媒和物」という用語は、不活性溶媒分子の化合物上への付加を意味し、それらの相互の引力のために形成される。溶媒和物は、例えば、一若しくは二水和物又はアルコキシドである。
用語「プロドラッグ」は、例えば、アルキル又はアシル基、糖又はオリゴペプチド(これらは、生体内で迅速に切断されて本発明の有効化合物を形成する)を用いて修飾された、本発明の化合物を意味する。これらには、例えば、Int. J. Pharm. 115: 61-67 (1995)に記載されているように、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体も含まれる。本発明の化合物は、加溶媒分解、特に加水分解、又は水素化分解によってそれらの官能性誘導体から遊離させることによって得られる。同様に、本発明の化合物は、エステル、炭酸塩、カルバミン酸塩、尿素、アミド又はリン酸塩(これらの場合、実際に生物学的に活性な形態は、代謝を通じてのみ遊離される)などのいずれの所望のプロドラッグの形態でもあり得る。in-vivoで変換して生理活性物質(すなわち本発明の化合物)をもたらし得るいずれの化合物も本発明の範囲及び精神内のプロドラッグである。種々の形態のプロドラッグが技術上周知であり、開示されている(例えばWermuth et al. (1996) The Practice of Medicinal Chemistry, Chapter 31: 671-696, Academic Press; Bundgaard, H. (1985) Design of Prodrugs, Elsevier; Bundgaard, H. (1991) A Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5: 131-191, Harwood Academic Publishers)。さらに、化学物質は体内で代謝物に変換され、これが適切な場合には同様に所望の生物学的作用(場合によってはさらに明白な形でさえ)誘発することが知られている。本発明のいずれの化合物から代謝によってin-vivoで変換されたいずれの生物学的に活性な化合物も本発明の範囲及び精神内の代謝物である。
【0013】
本発明の化合物は、純粋なE又はZ異性体としてそれらの二重結合異性体の形態、又はこれらの二重結合異性体の混合物の形態で存在し得る。可能であれば、本発明の化合物は、互変異性体、例えばケト−エノール互変異性体の形態で存在し得る。
式(I)は、光学的に活性な形態(立体異性体)、例えばエナンチオマーをも包含する。本発明の化合物の全ての立体異性体が混合物の形態又は純粋若しくは実質的に純粋な形態のいずれかで考えられる。本発明の化合物は、いずれの炭素原子のところにも不斉中心有し得る。結果として、本発明の化合物は、それらのラセミ体の形態、純粋なエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの形態或いはこれらのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物の形態で存在し得る。混合物は、立体異性体のいずれの所望の混合比をも有し得る。例えば、1つ以上の不斉中心を有し、かつラセミ体として又はジアステレオマー混合物として存在する本発明の化合物は、それ自体既知の方法でそれらの光学的に純粋な異性体、すなわちエナンチオマー又はジアステレオマーに分割され得る。本発明の化合物の分離は、キラル若しくは非キラル相上のカラム分離によって、又は光学的に活性な溶媒からの再結晶によって、又は光学的に活性な酸若しくは塩基を用いて、又は例えば光学的に活性なアルコールのような光学的に活性な試薬を用いた誘導体化後のラジカルの脱離によって起こり得る。
本発明は、本発明の化合物の混合物、例えば2つのジアステレオマーの、例えば比1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100又は1:1000の混合物の使用にも関する。これらは立体異性化合物の特に好ましい混合物である。組成物は、本化合物と、少なくとも1種の誘導体、又は誘導体の混合物(それぞれ、例えば溶媒和物及び/又は塩を含んでよい)との混合物を含んでもよい。
【0014】
化合物、特に本発明の化合物を定義するために本明細書で使用する命名法は、一般的に化合物、特に有機化合物のIUPAC機構の規則に基づいている。本発明の上記化合物の説明のために示される用語は、本明細書又は請求項で明白に別の意味を示さない限り、常に以下の意味を有する。
上記及び下記の基R1、R2、R3、R4、R5、R6は、明白に別の意味を示さない限り、式(I)について示した意味を有する。
Aは、非分岐(直鎖)又は分岐であり、かつ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のC原子を有するアルキルを表す。Aは、好ましくはメチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル、またさらにペンチル、1-、2-若しくは3-メチルブチル、1,1-、1,2-若しくは2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1-、2-、3-若しくは4-メチルペンチル、1,1-、1,2-、1,3-、2,2-、2,3-若しくは3,3-ジメチルブチル、1-若しくは2-エチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-若しくは1,2,2-トリメチルプロピル、さらに好ましくは、例えば、トリフルオロメチルを表す。さらに、Aは、好ましくは1、2、3、4、5又は6個のC原子を有するアルキル、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル又は1,1,1-トリフルオロエチルを表す。非常に特に好ましくは、Aはメチルを表す。
環式アルキル(シクロアルキル)は、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを表す。
アルケニルは、2、3、4、5又は6個のC原子を有し、好ましくはビニル又はプロペニルを表す。
アルキニルは、2、3、4、5又は6個のC原子を有し、好ましくはC≡CH又はC≡C-CH3を表す。
Arは、例えば、o-、m-若しくはp-トリル、o-、m-若しくはp-エチルフェニル、o-、m-若しくはp-プロピルフェニル、o-、m-若しくはp-イソプロピルフェニル、o-、m-若しくはp-tert-ブチルフェニル、o-、m-若しくはp-ヒドロキシフェニル、o-、m-若しくはp-アミノフェニル、o-、m-若しくはp-(N-メチルアミノ)フェニル、o-、m-若しくはp-(N-メチルアミノカルボニル)フェニル、o-、m-若しくはp-メトキシフェニル、o-、m-若しくはp-エトキシフェニル、o-、m-若しくはp-エトキシカルボニルフェニル、o-、m-若しくはp-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、o-、m-若しくはp-(N-エチルアミノ)フェニル、o-、m-若しくはp-(N,N-ジエチルアミノ)フェニル、o-、m-若しくはp-フルオロフェニル、o-、m-若しくはp-ブロモフェニル、o-、m-若しくはp-クロロフェニル、o-、m-若しくはp-(メチルスルホニル)フェニル、o-、m-若しくはp-シアノフェニル、o-、m-若しくはp-カルボキシフェニル、o-、m-若しくはp-メトキシカルボニルフェニル、o-、m-若しくはp-アセチルフェニル、さらに好ましくは2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-若しくは3,5-ジフルオロフェニル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-若しくは3,5-ジクロロフェニル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-若しくは3,5-ジブロモフェニル、2,4-若しくは2,5-ジニトロフェニル、2,5-若しくは3,4-ジメトキシフェニル、3-アミノ-4-クロロ-、2-アミノ-3-クロロ-、2-アミノ-4-クロロ-、2-アミノ-5-クロロ-若しくは2-アミノ-6-クロロフェニル、2,3-ジアミノフェニル、2,3,4-、2,3,5-、2,3,6-、2,4,6-若しくは3,4,5-トリクロロフェニル、2,4,6-トリメトキシフェニル、2-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル、p-ヨードフェニル、3,6-ジクロロ-4-アミノフェニル、4-フルオロ-3-クロロフェニル、2-フルオロ-4-ブロモフェニル、2,5-ジフルオロ-4-ブロモフェニル、3-ブロモ-6-メトキシフェニル、3-クロロ-6-メトキシフェニル、3-フルオロ-4-メトキシフェニル、3-アミノ-6-メチルフェニル又は2,5-ジメチル-4-クロロフェニルを表す。Arは、特に好ましくはフェニル、ヒドロキシフェニル又はメトキシフェニルを表す。
【0015】
さらなる置換に関係なく、Hetは、例えば、2-若しくは3-フリル、2-若しくは3-チエニル、1-、2-若しくは3-ピロリル、1-、2-、4-若しくは5-イミダゾリル、1-、3-、4-若しくは5-ピラゾリル、2-、4-若しくは5-オキサゾリル、3-、4-若しくは5-イソオキサゾリル、2-、4-若しくは5-チアゾリル、3-、4-若しくは5-イソチアゾリル、2-、3-若しくは4-ピリジル、2-、4-、5-若しくは6-ピリミジニル、さらに好ましくは1,2,3-トリアゾール-1-、-4-若しくは-5-イル、1,2,4-トリアゾール-1-、-3-若しくは-5-イル、1-若しくは5-テトラゾリル、1,2,3-オキサジアゾール-4-若しくは-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-3-若しくは-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-若しくは-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-若しくは-5-イル、1,2,3-チアジアゾール-4-若しくは-5-イル、3-若しくは4-ピリダジニル、ピラジニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-若しくは7-インドリル、4-若しくは5-イソインドリル、インダゾリル、1-、2-、4-若しくは5-ベンズイミダゾリル、1-、3-、4-、5-、6-若しくは7-ベンゾピラゾリル、2-、4-、5-、6-若しくは7-ベンゾオキサゾリル、3-、4-、5-、6-若しくは7-ベンズイソオキサゾリル、2-、4-、5-、6-若しくは7-ベンゾチアゾリル、2-、4-、5-、6-若しくは7-ベンズイソチアゾリル、4-、5-、6-若しくは7-ベンゾ-2,1,3-オキサジアゾリル、2-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-キノリル、1-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-イソキノリル、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-シンノリニル、2-、4-、5-、6-、7-若しくは8-キナゾリニル、5-若しくは6-キノキサリニル、2-、3-、5-、6-、7-若しくは8-2H-ベンゾ-1,4-オキサジニル、さらに好ましくは1,3-ベンゾジオキサール-5-イル、1,4-ベンゾジオキサン-6-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4-若しくは-5-イル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-イル又はジベンゾフラニルを表す。
【0016】
ヘテロ環式基は、部分的又は完全に水素化されていてもよい。従って、さらなる置換に関係なく、Hetは、例えば、2,3-ジヒドロ-2-、-3-、-4-若しくは-5-フリル、2,5-ジヒドロ-2-、-3-、-4-若しくは-5-フリル、テトラヒドロ-2-若しくは-3-フリル、1,3-ジオキソラン-4-イル、テトラヒドロ-2-若しくは-3-チエニル、2,3-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-若しくは-5-ピロリル、2,5-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-若しくは-5-ピロリル、1-、2-若しくは3-ピロリジニル、テトラヒドロ-1-、-2-若しくは-4-イミダゾリル、2,3-ジヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-若しくは-5-ピラゾリル、テトラヒドロ-1-、-3-若しくは-4-ピラゾリル、1,4-ジヒドロ-1-、-2-、-3-若しくは-4-ピリジル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-若しくは-6-ピリジル、1-、2-、3-若しくは4-ピペリジニル、2-、3-若しくは4-モルフォリニル、テトラヒドロ-2-、-3-若しくは-4-ピラニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサン-2-、-4-若しくは-5-イル、ヘキサヒドロ-1-、-3-若しくは-4-ピリダジニル、ヘキサヒドロ-1-、-2-、-4-若しくは-5-ピリミジニル、1-、2-若しくは3-ピペラジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-若しくは-8-キノリル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-若しくは-8-イソキノリル、2-、3-、5-、6-、7-若しくは8-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ-1,4-オキサジニル、さらに好ましくは2,3-メチレンジオキシフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニル、2,3-エチレンジオキシフェニル、3,4-エチレンジオキシフェニル、3,4-(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-若しくは-6-イル、2,3-(2-オキソメチレンジオキシ)フェニル又はまた3,4-ジヒドロ-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-6-若しくは-7-イル、さらに好ましくは2,3-ジヒドロベンゾフラニル、2,3-ジヒドロ-2-オキソフラニル、3,4-ジヒドロ-2-オキソ-1H-キナゾリニル、2,3-ジヒドロベンゾオキサゾリル、2-オキソ-2,3-ジヒドロベンゾオキサゾリル、2,3-ジヒドロベンズイミダゾリル、1,3-ジヒドロインドリル、2-オキソ-1,3-ジヒドロインドリル又は2-オキソ-2,3-ジヒドロベンズイミダゾリルをも表す。
【0017】
Hetは、好ましくはピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルフォリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ-1,3-ジオキソリル、インダゾリル又はベンゾ-2,1,3-チアジアゾリルを表し、それぞれ無置換であるか或いはA、COOA、Hal及び/又は=O(カルボニル酸素)で一置換、二置換若しくは三置換されている。
R1及びR2は、好ましくはAを表す。R3及びR4は、好ましくはHを表す。R5は、好ましくはHを表す。R6は、好ましくはAを表す。さらに好ましくは、R1及びR2がメチルを表し、R3及びR4がHを表し、R5がHを表し、かつR6がメチルを表す。
本発明の最も好ましい実施形態では、組成物は、化合物5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンを含む。本発明の非常に好ましい実施形態では、組成物はエナンチオマー(+)5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンを含む。
式(I)のトリアジン誘導体及びその調製のための出発原料は、それぞれ、文献に記載されているように(例えば標準的な書物、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)、すなわち前記反応のために知られ、かつ適した反応条件下で、それ自体既知の方法で作製される。ここではさらに詳細に述べていないが、それ自体既知の変形を利用することもできる。所望により、出発原料を粗製反応混合物中に非分離状態で残すことによって、出発原料をin-situで形成させることもできるが、即座にそれらをさらに本発明の化合物に変換する。他方で、反応を段階的に行なうことができる。
【0018】
参照によってその開示全体が本明細書に援用されるEP1250328B1により、下記式(II)
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R1、R2、R3、R4は、上記意味を有する)
の化合物を、下記式(III)、(IV)又は(V)
【0021】
【化4】
【0022】
(式中、
R5、R6は、上記意味を有し、かつ
R7は、メチル又はエチル基である)
の化合物と反応させることによって、式(I)の化合物を調製することができる。
ここで、前記反応は、極性溶媒(例えばエタノール又はジメチルホルムアミド)中、かつ有機酸(例えばカンファースルホン酸)又は無機酸(例えば塩酸)の存在下で行なわれる。
しかし、下記式(II)
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、R1、R2、R3、R4は、上記意味を有する)
の化合物と、下記式(VI)
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、R5、R6は、上記意味を有する)
の化合物との反応を含む方法によって、式(I)の化合物を調製するのが好ましい。
驚くべきことに、ジヒドロ-1,3,5-トリアジンアミン誘導体の合成過程を検討すると、従来技術に比べて少なくとも同等又はより高い収率で式(I)の化合物が得られることが分かった。ここで言及し得る重大な利点は、かなり短い反応時間及び少ない廃棄物である。これは、結果としてかなり低いエネルギー消費をも意味する。本発明の方法では、形成される式(I)の化合物1モル当たり1分子の水が遊離される。従来技術の方法では、形成される式(I)の化合物1モル当たり2分子のアルコールが遊離される。
好ましい出発原料としてのメトホルミンは、下記構造を有する。
【0027】
【化7】
【0028】
一般式(II)を有する化合物はビグアナイドであり、平均的当業者はその合成を習得している。該化合物の合成を開示するくつかの刊行物を例として引用する(FR 1 537 604; FR 2 132 396; Slotta & Tschesche (1929) Ber. 62b: 1398; Shapiro et al. (1959) J. Org. Chem. 81: 3725, 3728, 4636)。
式(II)及び(III)の化合物の反応は、好ましくは適切な極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール若しくはtert-ブタノール等;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)若しくはジオキサン等;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチル若しくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)等;ケトン、例えばアセトン若しくはブタノン等;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミド若しくはジメチルホルムアミド(DMF)等;ニトリル、例えばアセトニトリル等;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)等;エステル、例えば酢酸エチル等、又は前記溶媒の混合物中で進行する。特にイソブタノール、さらに好ましくはエタノール及びイソプロパノールが優先される。
使用する条件に応じて、反応時間は数分〜14日、特に好ましくは3〜12時間である。反応温度は約50℃〜150℃、通常は90℃〜120℃である。
本発明の前記化合物をその最終的な非塩形態で使用することができる。他方で、本発明は、これらの化合物の、種々の有機酸及び無機酸並びに有機塩基及び無機塩基から技術上周知の手順で誘導できるそれらの医薬的に許容できる塩の形態での使用をも包含する。本発明の化合物の医薬的に許容できる塩形態は、大部分が常法で調製される。
【0029】
反応は、好ましくは有機酸又は無機酸の存在下で行なわれる。従って、無機酸、例えば硫酸、硝酸、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸若しくは臭化水素酸など、リン酸、例えばオルトリン酸など、スルファミン酸、さらなる有機酸、特に脂肪族、脂環式、アラリファティック(araliphatic)、芳香族又はヘテロ環式一塩基若しくは多塩基性カルボン酸、スルホン酸又は硫酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン-若しくはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ及びジスルホン酸、ラウリル硫酸を使用することができる。また例えば市販のDowex(登録商標)又はAmberlyst(登録商標)などの酸性カチオン性イオン交換樹脂も本発明の意味で適切かつ好ましい。さらに好ましくはp-トルエンスルホン酸、さらに塩酸、メタンスルホン酸、硫酸若しくはカンファースルホン酸、又は酸性カチオン性イオン交換樹脂、例えばDowex(登録商標)50、Amberlyst(登録商標)15又はDowex(登録商標)DR-2030が優先する。最も好ましくは、反応は、p-トルエンスルホン酸又は酸性カチオン性イオン交換樹脂の存在下で行なわれる。
【0030】
式(I)の塩基は、酸を用いて、例えばエタノール等の不活性な溶媒中で等価量の該塩基と酸の反応後エバポレーションによって、関連酸付加塩に変換することもできる。この反応に特に適した酸は、生理学的に許容できる塩を与える当該酸である。従って、無機酸、例えば上記無機酸を使用することができる。式(I)の化合物の単離及び/又は精製のため、生理学的に許容できない酸との塩、例えばピクリン酸塩を使用できる。
上述した件に関して、本明細書で相互交換可能に使用する「医薬的に許容できる塩」及び「生理学的に許容できる塩」という表現は、本発明の関係では、本発明の化合物をその塩の1つの形態で含む活性成分を意味する(特にこの塩形態が以前に使用されていた活性成分の遊離形態又は活性成分のいずれかの他の塩形態に比べて活性成分の薬物動態学的特性を向上させる場合)ものと解釈されることが分かる。活性成分の医薬的に許容できる塩形態は、この活性成分に初めて、以前は有していなかった所望の薬物動態学的特性をもたらすこともでき、かつ体内におけるその治療効果に関してこの活性成分の薬物動態にポジティブな影響を与えることさえできる。
本発明の非常に好ましい態様では、本組成物は、5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩を含む。本発明の別の非常に好ましい実施形態では、本組成物は、エナンチオマー化合物塩(+)5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩を含む。
【0031】
本発明の組成物の他成分を表すインスリンは、ポリペプチド性の血糖低下(hypoglycemiant)ホルモンであり、多くの既知の方法によって得られる。これらの方法、さらに詳しくは化学的、半合成的、生物学的(特にヒト又は動物のインスリンの単純抽出によって)又は生物発生的(組換えインスリンの発現によって)であり得る。本発明の目的では、用語「インスリン」は、ヒトインスリンと構造上の差異を有するが、ヒト又は動物のインスリンと比べて生物学的活性を有意には変えないインスリン類似体を包含する。従って、特に言及し得るインスリン類似体には、Insuman(登録商標)(Aventis)、Organosuline(登録商標)(Organon)、Humalog(登録商標)(Lillyからのインスリンリスプロ)、Lantus(登録商標)(Aventisからのインスリングラルギン)及びNovolog(登録商標)(Novo Nordiskからのインスリンアスパルト)がある。
【0032】
上述したように、本発明は、インスリンと、本発明の少なくとも1種のトリアジン化合物及び/又はその誘導体とを含み、任意に賦形剤及び/又はアジュバントを含んでよい薬物に関する。本発明の意味では、「アジュバント」は、同時に(simultaneously)、同時に(contemporarily)又は逐次的に投与した場合、本発明の活性成分に対する特異的応答を可能にし、増強し又は変更するあらゆる物質を表す。注射液用の既知アジュバントは、例えば、アルミニウム組成物、例えば水酸化アルミニウム若しくはリン酸アルミニウム等、サポニン、例えばQS21等、ムラミルジペプチド若しくはムラミルトリペプチド、タンパク質、例えばγ-インターフェロン若しくはTNFなど、M59、スクアレン又はポリオールである。本発明の意味では、用語「アジュバント」は「賦形剤」及び「医薬的に許容できるビヒクル」という表現をも包含し、ヒト又は動物内で副作用、例えばアレルギー反応を引き起こさないいずれの溶媒、分散媒質、吸収遅延剤などをも意味する。結果として、本発明は、活性成分として有効量のインスリンと、有効量の、本明細書の中で定義される式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその医薬的に許容できる塩を、医薬的に容認できるアジュバントと共に含む医薬組成物にも関する。
本発明の意味における「薬物」、「医薬組成物」又は「医薬製剤」は、本発明の1種以上のトリアジン化合物又はその製剤と組み合わせてインスリンを含み、かつIRと関係がある疾患に苦しむ患者の全体的な状態又は該生体の特定領域の状態の病原性の改変を少なくとも一時的に確立できるように、患者の予防、治療、追跡調査又はアフタケアにおいて使用できる、医薬分野のいずれの薬剤でもある。
さらに、活性成分を単独で投与してよく、或いはさらに他の治療と併用してよい。医薬組成物に式(I)の複数の化合物を使用することで別の相乗効果を達成し得る。またインスリンと式(I)の化合物を、異なる構造スキャフォールドの少なくとも別の薬剤と併用することもできる。全ての活性成分を同時又は逐次的に使用することができる。
【0033】
いずれの所望の適切な方法、例えば経口(頬側又は舌下を含め)、直腸、経鼻、局所(頬側、舌下又は経皮を含め)、腟内又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内を含め)方法による投与に医薬製剤を適応させ得る。製薬技術で既知の全ての方法を利用して、例えば、活性成分を賦形剤又はアジュバントと併用することによって該製剤を調製することができる。単一径路を介して(例えば注射によって)又は異なる経路を介して(例えば式(I)の化合物については経口で、インスリンについては注射によって)患者に投与するように、本発明の医薬組成物を調合することができる。
本発明の医薬組成物は、一般的な固体若しくは液体担体、希釈剤及び/又は添加剤並びに薬品製造工学にとって通常のアジュバントを用いて、かつ適切な薬用量で既知の方法で作製される。単一剤形を作製するために活性成分と併用する賦形剤の量は、治療する宿主及び特定の投与様式に応じて変化する。適切な賦形剤には、異なる投与経路、例えば経腸(例えば経口)、非経口又は局所適用などに適しており、かつ本発明の活性成分又はその塩と反応しない有機若しくは無機物質が含まれる。適切な賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセタート、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース又はデンプン等、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びワセリンである。
【0034】
経口投与に適応した医薬製剤は、例えば、カプセル剤若しくは錠剤;散剤若しくは顆粒剤;水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液;食用泡沫剤(foam)若しくは泡沫食品;又は水中油液体エマルション若しくは油中水液体エマルションのような個別単位として投与することができる。従って、例えば、錠剤又はカプセル剤の形態で経口投与する場合、活性成分を、例えば、エタノール、グリセロール、水などのような、経口用の無毒かつ医薬的に許容できる不活性な賦形剤と併用することができる。散剤は、活性成分、詳しくは本化合物を適切な微細サイズに粉砕し、それを同様に粉砕した医薬賦形剤、例えば、食用炭水化物、例えばデンプン又はマンニトール等と混合することによって調製される。同様に香料、防腐剤、分散剤及び色素が存在してもよい。カプセル剤は、上述したように散剤混合物を調製し、それで成形ゼラチンシェルを充填することによって作製される。充填操作前に、流動促進剤及び潤沢剤、例えば固形状の高分散性ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はポリエチレングリコール等を散剤混合物に添加することができる。カプセル剤が摂取された後の薬物の利用能を改善するため、同様に崩壊剤又は可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム等を添加してよい。
【0035】
さらに、望ましいか又は必要な場合、適切な結合剤、潤沢剤及び崩壊剤並びに色素を同様に混合物に組み込むことができる。適切な結合剤として、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース又はβ-ラクトース等、トウモロコシ製の甘味料、天然及び合成ゴム、例えば、アカシア、トラガント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が挙げられる。これらの剤形で使用する潤沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴム等が挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒又は乾式圧縮し、潤沢剤及び崩壊剤を添加し、混合物全体を圧縮して錠剤を与えることによって調合される。粉末混合物は、活性成分、詳しくは適切なやり方で粉砕した化合物を上述したように、希釈剤又は基剤と混合し、かつ必要に応じて例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン又はポリビニルピロリドン等の結合剤、例えばパラフィン等の溶解遅延剤、例えば四級塩などの吸収促進剤、及び/又は例えばベントナイト、カオリン又はリン酸二カルシウム等の吸収剤と混合することによって調製される。粉末混合物を例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム又はセルロース若しくはポリマー材料の溶液などの結合剤で湿らせ、それを篩いを通して押し出すことによって造粒することができる。造粒の代わりに、粉末混合物を打錠機に通すことができ、不均一形状の塊を得、これを砕いて顆粒を形成する。錠剤鋳込型に固着するのを防止するため、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク又は鉱油を添加して顆粒を潤滑にすることができる。潤滑にした混合物を次に圧縮して錠剤を得る。造粒又は乾式圧縮工程を行なわずに、本発明の活性成分を自由流動性不活性賦形剤と混ぜ合わせてから直接圧縮して錠剤を得ることもできる。シェラック(shellac)密封層から成る透明若しくは不透明保護層、糖若しくはポリマー材料の層及びワックスのグロス(gloss)層が存在してよい。異なる投薬単位を区別することができるように、これらのコーティングに色素を添加することができる。
【0036】
例えば、溶液、シロップ剤及びエリキシル剤などの経口液を投薬単位の形態で調製して、所定量が予め特定された量の活性成分を含むようにすることができる。シロップ剤は、適切に香味付けした水溶液に化合物を溶解させることによって調製され、一方エリキシル剤は無毒のアルコールビヒクルを用いて調製される。懸濁剤は、無毒ビヒクルに活性成分、詳しくは本化合物を分散させることによって調合され得る。例えばエトキシル化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル等の可溶化剤及び乳化剤、防腐剤、香味添加剤、例えば、ペパーミント油若しくは天然甘味料若しくはサッカリン、又は他の人工甘味料などを同様に添加することができる。
所望により、経口投与用の投薬単位製剤をマイクロカプセルに被包することができる。例えば、微粒子材料をポリマー、ワックス等でコーティングまたは包埋することによって、放出を延長し又は持続するように製剤を調製することもできる。
本発明の化合物並びにその塩、溶媒和物及び生理学的に機能性の誘導体を、小型単層ベシクル、大型単層ベシクル及び多重膜ベシクル等のリポソーム送達系の形態で投与することができる。種々のリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等からリポソームを形成することができる。
本発明の化合物を、目的地への指令輸送、標的細胞内における取り込み及び/又は分布を促進する別の分子と融合又は複合化することもできる。化合物分子が結合する個々の担体としてモノクローナル抗体を使用することによって、本発明の化合物並びにその塩、溶媒和物及び生理学的に機能性の誘導体を送達することもできる。標的薬物担体としての溶解性ポリマーに化合物を結合させることもできる。このようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール又はパルミトイル基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンを包含し得る。さらに、薬物の制御放出の達成に適した分類の生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリラート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーに化合物を結合させてよい。
【0037】
レシピエントの表皮と長時間密着させるための独立したプラスターとして、経皮投与に適応した医薬製剤を投与することができる。従って、例えばPharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般論として記載されているイオン泳動によって、活性成分をプラスターから送達することができる。
軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、散剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル又は油として、局所投与に適応した医薬組成物を調合することができる。眼又は他の外部組織、例えば口及び皮膚の治療のためには、局所軟膏又はクリームとして製剤を適用するのが好ましい。軟膏を与えるために調合する場合、活性成分をパラフィン又は水混和性クリーム基剤のどちらかと併用することができる。或いは、活性成分を水中油クリーム基剤又は油中水基剤と調合してクリームを与え得る。眼への局所投与に適応した医薬製剤には、活性成分を適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁させた点眼剤が含まれる。口内の局所投与に適応した医薬製剤には、ロゼンジ剤、香錠および洗口剤が含まれる。
直腸投与に適応した医薬製剤は、座剤又は浣腸の形態で投与することができる。座剤の調製のためには、それ自体既知の方法で活性素を適切な基礎成分、例えばポリエチレングリコール又は半合成グリセリドと混合する。
担体物質が固体である経鼻投与に適応した医薬製剤は、例えば、20〜50μmの範囲の粒径を有する粗粉末を含み、この粉末を鼻で吸い取るように、すなわち鼻に近くに保持した粉末含有容器から鼻腔を通して速やかに吸入することによって投与される。担体物質として液体を含む経鼻スプレー又は点鼻剤として投与するのに適した製剤には、水又は油中の活性成分溶液が含まれる。吸入による投与に適応した医薬製剤には、種々のタイプの、エアロゾルを含む加圧ディスペンサー、噴霧器又は吸入器によって生成し得る微粒子ダスト又はミストが含まれる。インスリン及び式(I)の化合物を吸入によって投与してよい。インスリンの吸入の効力については、特にSkyler et al. (2001) Lancet 357(9253): 331-335によって考察されている。例えば、Inhale Therapeutic Systems, CAによって開発され、かつUS5,997,848に記載されているエアロゾル及び吸入方法は、送達される用量の吸収及び再現性を最適化できるようにする。
腟内投与に適応した医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として投与することができる。
非経口投与に適応した医薬製剤として、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤並びに該製剤を治療すべきレシピエントの血液と等張にする溶質を含む水性及び非水性無菌注射液;並びに懸濁媒体及び増粘剤を含み得る水性及び非水性無菌懸濁液が挙げられる。該製剤を単回用量又は多数回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで投与することができ、かつ使用直前に無菌担体液、例えば注射用水を添加するだけでよい冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。この処方に従って調製される注射用溶液及び懸濁液は、無菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製され得る。インスリンを含む組成物は、好ましくは非経口投与、さらに詳しくは注射による投与を目的とする。
【0038】
特に上述した成分に加えて、製剤は、特定の製剤タイプに関して当技術分野で通常の他の薬剤を含でもよいことは言うまでもなく;従って、例えば、経口投与に適した製剤は香料を含み得る。
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は経口又は非経口投与され、さらに好ましくは非経口投与され、最も好ましくは非経口投与用の注射液として投与される。特に、活性成分は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を包含することを意味する医薬的に許容できる塩のような水溶性形態で提供される。さらに、本発明の活性成分及びその塩を凍結乾燥させ、結果として生じた凍結乾燥物を用いて、例えば、注射用製剤を作製し得る。上記製剤を滅菌してよく及び/又は補助剤、例えば担体タンパク質(例えば血清アルブミン)、潤沢剤、防腐剤、安定剤、充填剤、キレート化剤、酸化防止剤、溶剤、結合剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を与えるため)、緩衝物質、着色料、香味料及び1種以上のさらなる活性物質、例えば1種以上のビタミン等を含んでよい。添加剤は技術上周知であり、種々の製剤で使用される。
【0039】
本発明の医薬組成物を投与するためのそれぞれの用量若しくは投薬量範囲は、後述するように、IRに関係がある疾患の症状を軽減するという所望の予防又は治療効果を果たすために十分高い。いずれの特定のヒトへの投与の具体的な用量レベル、頻度及び期間も、使用する具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事制限、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物併用及び該具体的療法を適用する特定の疾患の重症度といった種々の因子によって決まるであろう。当業者は、周知の手段と方法を用いて日常的な実験事項として正確な用量を決定することができる。
本明細書では、用語「有効量」又は「有効用量」又は「用量」を相互交換可能に使用し、これらの用語は、疾患又は病的状態に及ぼす予防効果又は治療関連効果、すなわち、組織、系、動物又はヒトにおいて、例えば研究者又は医師が探求又は所望する生物学的若しくは医学的応答を引き起こす効果を有する医薬化合物の量を意味する。「予防効果」は、発病する可能性を減少させ、又は疾患の発生を阻止させえする。「治療関連効果」は、疾患の1つ以上の症状をある程度軽減するか或いは疾患若しくは病的状態と関係がるか又はその原因である1つ以上の生理学的若しくは生化学的パラメーターを部分的又は全体的に正常に戻す。さらに、「治療的に有効な量」という表現は、この量を受けなかった対応する対象と比較して、以下の結果:疾患、症候群、状態、愁訴、障害若しくは副作用の改善された治療、治癒、予防若しくは排除又は疾患、愁訴若しくは障害の進行の減少をも有する量を意味する。「治療的に有効な量」という表現は、正常な生理学的機能を高めるのに有効な量をも包含する。
【0040】
投薬単位当たり所定量の活性成分を含む、投薬単位の形態で医薬製剤を投与することができる。該製剤中の予防的又は治療的に活性な成分の濃度は、約0.1〜100wt%で変化し得る。好ましくは、約0.5〜1.000mg、さらに好ましくは1〜700mgの用量で式(I)の化合物又はその医薬的に許容できる塩を投与する。式(I)の化合物の単位用量が12.5〜200mgの前記化合物を含むことがさらに最も好ましい。インスリンの単位用量が10〜400IU(国際単位)、さらに好ましくは0.1〜1IUのインスリンを含むことも好ましい。
治療医又は獣医は、いくつかの因子(例えば動物の年齢及び体重、治療を要する正確な状態、状態の重症度、製剤の性質及び投与方法)を考慮することによって、本発明の化合物の治療的に有効な量を最終的に決定しなければならないが、IR及び/又はIR症候群関連病態、例えば糖尿病の治療に有効な本発明の化合物の量は、一般的に1日0.02〜200mg/kg(レシピエント(哺乳動物)の体重)の範囲、特に典型的に1日10〜180mg/kg(体重)、さらに好ましくは70〜160mg/kg、最も好ましくは75〜150mg/kgの範囲内である。従って、体重が70kgの成体哺乳動物の1日当たりの実際量は、通常14〜14,000であり、この量を1日当たりの単回用量として投与するか或いは通常は1日の総用量が同じになるように、1日当たり一連の部分用量(例えば、2、3、4、5又は6回等)で投与することができる。塩若しくは溶媒和物又はその生理学的に機能性の誘導体の有効量は、それ自体は本発明の化合物の有効量のフラクションとして決定され得る。本明細書に記載の他の状態の治療に同様の用量が適していると推測できる。
【0041】
この組成物は、治療的に有効な量の種々の活性素を含む。その結果インスリン及び式(I)の化合物のそれぞれの量の比は変化する。特に、いずれの場合も成体について、1日のインスリン投薬量は、体重1kg当たり0.5〜1.0IUの範囲であり、式(I)の化合物の1日の投薬量は25〜200mgの範囲である。
従って、ヒト医学及び獣医学で本発明の治療方法を採用することができる。本発明によれば、式(I)の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩は、IRと関係がある疾患、又はIR自体それぞれの予防処置若しくは治療処置又はモニタリングに適している。ここで、疾患の発症の前又は後に本化合物を1回又は数回投与することができ、治療として作用する。上記発明用途の医薬品は、特に治療処置のために使用される。モニタリングは、例えば応答を増加させ、IR関連疾患の病原及び/又は症状を完全に根絶するため、好ましくは化合物を明確な間隔で投与する、一種の治療とみなされる。同一組成物又は異なる組成物を適用することができる。本薬物を用いて、発病する可能性を減少させ、或いはIRと関係がある疾患の開始を前もって予防することさえでき、或いは生じている症状及び継続している症状を治療することもできる。本発明の意味では、対象が上記生理学的又は病理学的状態のいずれかの前提条件、例えば家族性素質、遺伝的欠陥、又は以前に経験した疾患などを所有する場合、予防処置が賢明である。
【0042】
本発明に関連する疾患は、糖尿病、糖尿病前症、低耐糖能、高血糖症、代謝症候群、糖尿病性腎症、神経障害、網膜症、アテローム性動脈硬化症及び心血管疾患、さらに血管再狭窄、膵炎及び神経変性疾患の群から選択される。
本発明の好ましい実施形態では、疾患が代謝症候群である。医学的徴候「代謝症候群」は、心血管疾患を発症する危険性を高める医学的障害の組合せである。中心的な肥満症に加えて、代謝症候群として分類するためには2つのさらなる症状及び特徴:空腹時高血糖(T2DM、空腹時血糖異常、耐糖能障害又はインスリン抵抗性によって表される)、高血圧及び脂肪代謝障害(例えばHDLコレステロール減少及び/又はトリグリセリド上昇)を満たさなければならない。
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脂質異常症、肥満症、動脈性高血圧、大血管性合併症、特にアテローム性動脈硬化症、及び微小血管性合併症、特に網膜症、腎症及び神経障害から選択される、IR徴候群と関係がある1つ以上の病態を治療するのに適している。本発明のさらに好ましい実施形態では、疾患が腎症及び/又は神経障害である。医学的徴候「腎症」は、主に非炎症的に引き起こされる腎臓及び腎臓機能の疾患に関する。本発明の範囲内で検証するサブタイプはキンメルスティール-ウィルソン症候群(Kimmelstiel-Wilson syndrome)及び毛細血管間糸球体硬化症としても知られる糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)(nephropatia diabetica)によって反映される。それは、腎臓の糸球体内の毛細血管の脈管障害によって引き起こされる進行性の腎臓疾患であり、ネフローゼ症候群及び結節性糸球体硬化症によって特徴づけられる。それは、長期にわたる糖尿病に起因し、多くの西洋諸国において透析の主な原因である。さらに、医学的徴候「神経障害」は、普通は末梢神経障害の省略形である。末梢神経障害は、末梢性の運動ニューロン、感覚ニューロン、自律神経ニューロンの機能及び構造の混乱と定義され、ニューロンの全体又は選択レベルが関与する。神経障害は、糖尿病などの他の疾患、又はアルコール乱用のような神経毒性物質から二次的に起こることが多い。
【0043】
医薬組成物がIRの代謝症候群に対して少なからぬ作用を示すことによって糖尿病を治療するのに特に適していることが本発明のさらに別の好ましい実施形態である。従って、本発明で特に優先的に取り扱う医学的徴候は、糖尿病、さらに好ましくは真性糖尿病、最も好ましくはIDDM及びNIDDMである。NIDDMの高血糖を低減することが非常に好ましい。本組成物は、I型糖尿病とII型糖尿病を含めたいずれの型の糖尿病も、好ましくはI型糖尿病及び/又はII型糖尿病、さらに好ましくはT2DMを治療するため、また該疾患の種々の段階でもよく適合している。
本発明の別の態様によれば、インスリン及び式(I)の少なくとも1種の化合物を同時又は逐次的に、好ましくは別々の医薬組成物、一方は医薬的に許容できるビヒクル中にインスリンを含み、他方は医薬的に許容できるビヒクル中に式(I)の化合物を含む形態で投与する。しかし、インスリンと式(I)の化合物を同じ医薬組成物中で組み合わせて併用して投与することを排除するものではない。本発明の文脈では、「医薬の組合せ」及び「併用投与」という用語は、これらの態様のどれか一つを意味する。
さらに詳細には、「併用投与」は、本発明の目的では、固定(fixed)組合せ、特に自由な組合せ、すなわちインスリンと式(I)の化合物のどちらも1つの投薬単位として一緒に存在するか、或いは別々の投薬単位として存在するインスリンと前記化合物を直接連続して又は相対的に長い時間間隔で投与することを意味する。相対的に長い時間間隔は、最大24時間までのタイムスパンを意味する。「投薬単位」は、特に、できる限り問題を少なくして活性成分の放出が達成される医薬剤形を意味する。これには、特に、錠剤、コーティング錠剤又はペレット剤、カプセル内微小錠剤及び液剤が含まれ、その剤形は2種の活性成分(一方はインスリン、他方は式(I)の化合物)が、最適な活性成分プロファイル、ひいては作用プロファイルが果たされるように、放出されるか、又は体にとって有効利用されるように有利に設計されている。
【0044】
固定組成物、すなわち両成分を含む単一の医薬製剤として同時投与するためには、例えば、注射液若しくは注入液、又はその凍結乾燥形として固定組成物を調製し、それをアンプルに充填する。凍結乾燥形の固定組成物は簡単かつ安全な取扱いを保証する。通常の医薬注射剤を添加することによって該組成物をアンプル内で溶解させて静脈内投与する。この再構成溶液が組合せ投薬単位の一部であり得る。別々の投薬単位として使うためには、好ましくはこれらを1つのパック内で一緒に利用し、投与前に混合するか又は逐次投与する。例えば、2つの投薬単位の相互について相対的な配置、処方欄及び/又は着色に関して、2つの投薬単位の個々の成分を摂取する時間(投薬計画)が患者に明白なように、それ自体既知のやり方で設計されているブリスターパックに2つの投薬単位を一緒に詰める。この自由な組合せは、有効量のインスリンと有効量の式(I)の化合物を個々に患者に割り振ることによって有益である。別の可能性は、インスリン及び前記化合物の単製剤、すなわち独立薬物の提供である。これらの単製剤が、本発明の併用に必要な量の成分を含有するように変換される。それぞれの薬物の併用投与に関する添付文書に、対応する説明書が加えられる。
さらに、特にIRと関係がある疾患の予防処置若しくは治療処置及び/又はモニタリングを行なうため、第1の投薬単位には、1種以上の医薬的に許容できるアジュバントと共に、活性成分として有効量のインスリンを含み、かつ第2の投薬単位には、1種以上の医薬的に許容できるアジュバントと共に、有効量の前記定義どおりの式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩を含む医薬包装単位として本発明を実施することができる。本発明の包装単位は、本発明の方法をどのように実施するかの取扱説明書を構成するか又は使用者を取扱説明書に仕向ける記事を包含し得る。本組成物及びその投与に関する本明細書の前記教示は、好都合であれば限定されることなく該医薬包装単位について有効かつ適用可能と解される。
【0045】
本発明は、IRと関係がある疾患の予防処置若しくは治療処置及び/又はモニタリングのための、本発明の定義どおりの式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩と組み合わせたインスリンの使用にも関する。さらに、本発明は、IRと関係がある疾患の予防処置若しくは治療処置及び/又はモニタリングのための薬物の製造のための、本発明の定義どおりの式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩と組み合わせたインスリンの使用にも関する。本薬物を用いて、IRと関係がある疾患の開始を前もっと防止し、或いは生じているか又は継続している症状を治療することができる。本発明に関係する疾患は、好ましくは糖尿病及び/又はその関連疾患であり、関連疾患は、さらに好ましくは代謝症候群、糖尿病性腎症及び神経障害の群から選択される。さらに、本組成物に関する本明細書の前記教示は、本組成物及びその塩の使用に限定することなく、前記疾患の予防及び治療用薬物の製造に有効かつ適用可能である。
【0046】
本発明の目的は、グルコース恒常性の増強のための、本明細書の定義どおりの式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩と組み合わせたインスリンの使用でもある。ここで、「増強」は、測定方法及び関与する生体の実態によって引き起こされる通常の統計学的範囲内で、初期読みを超えるパラメーター値を指す。グルコースに対する耐糖能及び/又はインスリン分泌は、グルコース恒常性を評価するための好ましいパラメーターを表し、その一方又は両方の増加がグルコース恒常性の増強を示す。耐糖能及び/又はインスリン分泌、特にインスリン分泌は、好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%増加する。該増加は、好ましくは式(I)の化合物が体重1kg当たり25〜200mgの用量範囲、さらに好ましくは体重1kg当たり75〜150mgの用量範囲の投与のために供給される場合に得られる。この使用はin-vitro又はin-vivoモデルのどちらでも実施され得る。in-vitro使用は、好ましくはIR、さらに好ましくはIDDM又はNIDDMを患うヒトのサンプルに適用される。例えば、式(I)の数化合物及び/又はインスリンとの混合物の試験は、哺乳動物対象の治療に最もよく適している当該組成物の選択を可能にする。選択された誘導体のin-vivo用量率は、有利にはin-vitroデータに関してそれぞれ特異的細胞のIRの重症度に予め調整される。従って、治療効力が著しく増強される。さらに、本発明の組成物に関する本明細書の前記教示は、都合が良い場合には、限定することなくIRの低減のための本化合物の使用について有効かつ適用可能とみなされる。
本発明は、さらに詳しくは、インスリン及び式(I)の化合物が同時投与に適した形態である上記使用に関する。或いは、本発明は、インスリン及び式(I)の化合物が逐次投与に適した形態である上記使用に関する。
【0047】
本発明の別の目的は、インスリン抵抗性と関係がある疾患の治療方法であって、該治療が必要な哺乳動物に、有効量の本発明の定義どおりの式(I)の少なくとも1種の化合物及び/又はその生理学的に許容できる塩と組み合わせて有効量のインスリンを投与する方法を提供する。治療すべき哺乳動物は特にヒトである。好ましい治療は、経口又は非経口投与である。インスリンとトリアジン化合物の併用投与を利用して、IDDM若しくはNIDDMに苦しむ患者、又は現存するIRに基づいて該疾患を発症する危険性のある人を治療すると、これらの個体における全身のインスリン感受性を改善し、IRを軽減する。該改善は、好ましくは式(I)の化合物を体重1kg当たり25〜200mgの用量範囲、さらに好ましくは体重1kg当たり25〜200mgの用量範囲で投与すると得られる。別の好ましい態様では、トリアジン化合物5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンを異なる用量で使用し、さらに好ましくは5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩を使用する。周知の装置を介してインスリンを投与することができる。本発明及びその実施形態の前記教示は、都合が良ければ、本治療方法に限定することなく有効かつ適用可能である。
【0048】
本発明の範囲内で、インスリン及び式(I)のトリアジン誘導体を含む医薬組成物が初めて提供される。本発明は、IR及び/又は関連疾患、特に1型糖尿病のある患者の、インスリン治療のみに比べて良好なグルコース恒常性の改善に取り組む。本発明の医薬組成物の投与の結果として、グルコースに応答してインスリン分泌が少なくとも部分的又は完全にでさえ修復される。さらに、インスリンとトリアジン誘導の併用は、インスリンの効果の強い相乗作用を誘発する。従って、有利には式(I)のトリアジン誘導体をインスリンと結び付けて、特に1型糖尿病において、また2型糖尿病においてもインスリンの治療用量を減らすことができる。インスリンペレットの存在下で該トリアジン誘導体を用いた両型の糖尿病患者の慢性治療は、それぞれ、空腹時血糖値の低減及び耐糖能の増加に特に有益であるが、いずれの投与計画も上記パラメーターを改善する。別の重要な点は、グルコース分布の低レベルへのシフトである。本組成物の使用は、症状の直接的かつ迅速な減少をもたらす幅広い療法の有望な新規アプローチである。この影響は、IR及び/又はIRから生じる病気と効率的に闘うのに特に有益である。本化合物及びその誘導体は、高い特異性及び安定性;低い製造コスト及び便利な取扱いを特徴とする。これらの特徴は、再現性のある作用(交差反応性及び副作用がないことを含め)、及びそれらのマッチング標的構造との信頼性のある安全な相互作用の基礎を形成する。
本明細書で引用する全ての参考文献は、参照によって本発明の開示に組み込まれる。
【0049】
この発明は、本明細書に記載の特定の方法、具体的な物質、使用及びキット(該事項は、当然変化し得るので)に限定されないことを理解すべきである。また本明細書で使用する用語法は、特定の実施形態を説明する目的のみのためであり、かつ添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定する意図でないことも理解すべきである。添付の特許請求の範囲を含め、本出願で使用する場合、「a」、「an」、及び「the」等の単数形の単語は、その文脈が明白にそうでないと述べていない限り、それらの対応する複数形の単語を包含する。従って、例えば「塩(a salt)」との言及は、単一の塩又は複数の異なる塩を包含し、逆もまた同じであり、「方法(a method)」との言及は、当業者に既知の等価な工程及び方法への言及を包含する等である。特に定義しない限り、本出願で使用する全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術の当業者が一般的に解釈するのと同じ意味を有する。
本発明の実施又は試験では、本明細書に記載の方法及び材料と同様又は等価な方法及び材料を使用できるが、好適な実施例について後述する。以下の実施例は、説明の目的で提供するものであり、限定のつもりではない。実施例内では、活性を混入する(実際上いつでも)ことのない標準的な試薬及び緩衝液を使用する。特に、明示的に実証された特徴の組合せに限定されないように実施例を解釈すべきであるが、本発明の技術的課題が解決されるならば、例証された特徴を限定せずに再び組み合わせてよい。
以下の図及び表中、化合物5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンはEMDと略記する。
【実施例】
【0050】
実施例1:4-アミノ-3,6-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩の調製
上記及び後記で、全ての温度は℃で与える。以下の実施例では、「通常の仕上げ(work-up)」は、必要ならば、水を加え、必要ならば、最終生成物の構成に応じてpHを2〜10の値に調整し、混合物を酢酸エチル又はジクロロメタンで抽出し、相を分け、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、エバポレートし、生成物をシリカゲル上クロマトグラフィー及び/又は再結晶によって精製する。
(比較実験)500mlのイソブタノール中の250.2gのメトホルミン塩酸塩、213.6gのアセトアルデヒドジエチルアセタール及び12.5gのトルエン-4-スルホン酸一水和物の混合物を還流下で40時間加熱した。蒸留で溶媒の一部を除去した。混合物を10℃に冷却し、沈殿物を分別して224.7g(77.4%)の4-アミノ-3,6-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩を得た。
A)2405.9gのイソブタノール中の1002.6gのメトホルミン塩酸塩、359.1gのパラアルデヒド及び51.6gのトルエン-4-スルホン酸一水和物の混合物を還流下で6時間加熱した。蒸留で溶媒の一部を除去した。混合物を12℃に冷却し、白色沈殿物を分別して953.8g(81.4%)の4-アミノ-3,6-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩を得た。
B)237.8mlのイソブタノール中の100.1gのメトホルミン塩酸塩、36.5gのパラアルデヒド及び4gのDowex DR-2030の混合物を還流下で6時間加熱した。引き続き触媒をろ別し、蒸留で溶媒の一部を除去した。溶液の残りを10〜15℃に冷却し、白色沈殿物を分別して93.5g(80.7%)の4-アミノ-3,6-ジヒドロ-2-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン塩酸塩を得た。
【0051】
実施例2:5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンと共同してインスリンペレットを用いた短期慢性治療(4週間)のグルコース恒常性に及ぼす効果
高用量のストレプトゾトシン(STZ)の注射によって得た高血糖かつ低インスリン1型ラットモデルで研究を行なった。雄性ウィスターラット(Charles River)をSTZで62.5mg/kg IPにて処理した。STZ注射3日後にベースライン血糖値についてラットをスクリーニングした。35〜40mmol/lの血糖値を有する動物をこの研究から排除した。選択後、日3にインスリンのペレットを皮下移植した(1+1/2のインプラント)。各インプラントの放出速度は24時間毎に2Uだった。これらの実験条件では、各ラットにほぼ40日間24時間毎に3Uのインスリンを注入した(Limplant LINSHIN CANADA)。糖尿病の誘発10日後に、5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンを75及び150mg/kg b.i.d.の2回の用量で経口投与した。当業者には、例えばWO2003/092726の開示によってさらなる実験の詳細が分かり、日常的事項として容易に改変することができる。
インスリンペレットの移植後、血漿インスリンレベルは各群で安定的していた(表2)。さらに、インスリンペレットは、36日後にインスリンのないコントロール群(データ示さず)の44.65±1.54mmol/lに比べて血漿グルコースを有意に下げて21.46±3.1mmol/lとした(表1、図1)。
5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの投与後、血漿グルコースがさらに減少した。この5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの効果は用量依存性だった。75mg/kg b.i.d.では、治療の最後には高血糖が21.46±3.1から18.86±2.77mmol/lに低下したが、高用量の150mg/kg b.i.dでは、治療の最後に高血糖が21.46±3.1から14.85±2.03mmol/lに低下した(表1、図1)。
【0052】
投与したグルコースがどれだけ迅速に血液から除去されるかの決定は、グルコース負荷試験を利用して行なった。グルコースを経口投与した。つまり通常の試験は、技術上当業者に周知の経口グルコース負荷試験(oral glucose tolerance test)(OGTT)だった。実験動物を18時間絶食させた後にグルコース溶液を投与した。グルコース(血糖)の測定のため間隔を空けて採血し(表3参照)、さらにインスリンレベルを測定して、それぞれIR又は欠陥の程度を検出した。糖尿病のスクリーニングのため、最も重要なサンプルは、インスリン分泌が低下しているか又はIRの哺乳動物で血糖値が増大する2時間サンプルである。
インスリンのみに比し、インスリンと5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの組合せは耐糖能を改善し、この効果も用量依存性だった(表3、図2)。用量が高いほど、ラットは平均的にグルコースによく耐えた。各群内のOGTT血漿グルコース濃度の詳細な分布を以下に与える(図4参照)。
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
インスリンのみに比し、インスリンと5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの併用は、グルコースに対するインスリン分泌を適度に増やした(図3)。
空腹時高血糖レベルの分布の分析は、インスリンと5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンの併用が血漿グルコース濃度区分を低レベルに変化させることを示した、インスリンと150mg/kg b.i.d.の5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンを併用して治療したラットのほとんど50%が、10mmol/lより低い高血糖レベルを示した(図4)。
【0056】
実施例3:医薬製剤
A)注射バイアル:3リットルの再蒸留水中の100gの本発明の1種以上の活性成分と5gのリン酸水素二ナトリウムの溶液を2N塩酸でpH6.5に調整し、無菌ろ過し、注射バイアルに移し、無菌条件下で凍結乾燥させて無菌条件下で密封した。各注射バイアルは5mgの活性成分を含有した。
B)座剤:20gの本発明の1種以上の活性成分の混合物を100gの大豆レシチン及び1400gのココアバターと溶かし、型に注いで冷ました。各座剤は20mgの活性成分を含有した。
C)溶液:1gの本発明の1種以上の活性成分、9.38gのNaH2PO4・2H2O、28.48gのNa2HPO4・12H2O及び0.1gの塩化ベンザルコニウムから940mlの再蒸留水中で溶液を調製した。pHを6.8に調整し、溶液を1リットルとし、放射線で滅菌した。点眼剤の形態でこの溶液を使用できた。
D)軟膏剤:500mgの本発明の1種以上の活性成分を99.5gのワセリンと無菌条件下で混合した。
E)錠剤:1kgの本発明の1種以上の活性成分、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルク及び0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を各錠剤が10mgの活性成分を含有するように常法で圧縮して錠剤を得た。活性成分5,6-ジヒドロ-4-ジメチルアミノ-2-イミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジンを含む他の錠剤を表4〜9に従って調製した。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
F)コーティング錠剤:前記パラグラフE)と同様に圧縮して錠剤とし、引き続き常法でスクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカント及び色素のコーティングで被覆した。
G)カプセル剤:2kgの本発明の1種以上の活性成分を常法で各カプセルが20mgの活性成分を含有するように硬ゼラチンに導入した。
H)アンプル:60リットルの再蒸留水中の1kgの本発明の1種以上の活性成分の溶液を無菌ろ過し、アンプルに移し、無菌条件下で凍結乾燥させて無菌条件下で密封した。各アンプルは10mgの活性成分を含有した。
I)吸入スプレー:14gの本発明の1種以上の活性成分を10リットルの等張NaCl溶液に溶解させ、溶液をポンプ機構で市販のスプレー容器に移した。この溶液は口内及び鼻内に噴霧できた。1スプレーショット(約0.1ml)は約0.14mgの用量に相当した。
図1
図2
図3
図4