【実施例】
【0022】
(実施例1)
締結固定具にかかる実施例について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1〜
図3に示すごとく、締結固定具1は、雄ネジと螺合可能な雌ネジ部111を一端に備えると共に、締結用工具と係合可能な係合部112を他端に備えた締結本体部11と、締結本体部11の外周側面から外周側に向かって延設されたハンドル部12とを備えている。ハンドル部12の外径寸法は、係合部112の外径寸法よりも大きく設定してある。
【0023】
以下、さらに詳細に説明する。
図1〜
図3に示すごとく締結固定具1が有する締結本体部11は、略円柱状をなす一つの部材によって形成されており、その一端に配された雌ネジ部111と、他端側に配された係合部112と、外周側面に形成された回り止め部113とを有している。
【0024】
図3に示すごとく、締結本体部11の一端に配された雌ネジ部111は、締結本体部11の一端側の端面の中心位置において、軸方向に沿って形成された下穴の内周側面にネジ山を形成してなる。雌ネジ部111は、対応する雄ネジと螺合可能に構成されている。
【0025】
図1〜
図3に示すごとく、締結本体部11の他端に配された係合部112は、締結本体部11の他端側の端面から突出して形成されており、その軸方向から見たとき六角形状の外形をなしている。係合部112は、六角レンチやスパナなどの工具と係合可能に構成されている。
【0026】
図3に示すごとく、回り止め部113は、締結本体部11における一端側の位置に形成されている。回り止め部113の外形は、締結本体部11の軸方向から見たとき、略正方形の外形をなしている。回り止め部113を設けることにより、締結本体部11とハンドル部12とが、相対的に回転することを防止し、両者を一体に回転させることができる。
【0027】
図1〜
図3に示すごとく、締結本体部11の外周側面には、締結本体部11と共にインサート成型されたハンドル部12が形成されている。ハンドル部12は、樹脂材料からなり、締結本体部11における回り止め部113の外側に形成された把持部121と、把持部121の下方に形成されたハンドル筒部126と、把持部121の表面に形成された表示部13とを有している。
【0028】
図1〜
図3に示すごとく、把持部121は、締結本体部11の中心軸線と直交するように延設された3つの凸状部122からなる三つ又形状を有しており、各凸状部122は、中心軸線を中心として互いに等角度で配されている。
図2に示すごとく、把持部121を軸方向から見た際の外形に外接するハンドル側外接円の直径R2は、係合部112を軸方向から見た際の外形に外接する係合側外接円R1よりも大きく設定してある。
【0029】
図1〜
図3に示すごとく、把持部121は、他端側の位置において中心軸線と直交する平面上に形成された上面部123と、上面部123と直交すると共に垂下して形成された側面部124とを有している。また、上面部123と側面部124との間には、両者を繋ぐ曲面からなる曲面部125が形成されている。
把持部121の下方に形成されたハンドル筒部126は、円筒状をなしており、把持部121の下面から締結本体部11における他端近傍の間の外周側面を覆うように形成されている。
【0030】
図1〜
図3に示すごとく、表示部13は、上面部123に配された上面側表示部131と曲面部125に配された曲面側表示部132との2つを形成してある。
上面側表示部131は、1つの凸状部122の上面部123に形成してある。上面側表示部131には、緩み方向を示すための矢印記号と文字とを記載してある。本例においては、電源接続構造への使用を想定し、上面側表示部131に電源の切断を示す文字を記載した。
【0031】
図1〜
図3に示すごとく、曲面側表示部132は、上面側表示部131が形成された凸状部122と反対側の位置に配された曲面部125に形成してある。曲面側表示部132には、締結固定具1を締結固定する際の締結トルクの管理値を示す文字として、5.8N・m〜7.5N・mと記載してある。
【0032】
以下、本例の締結固定具1の作用効果について説明する。
締結固定具1は、上記のごとく、係合部112とハンドル部12とを備えている。係合部112においては、該係合部112に締結用工具を係合させ締結固定具1を雄ネジに螺合し、締結固定及び締結固定の解除をすることができる。このように、締結用工具を用いることで、締結固定具1の締付けトルクの管理を容易とし、締付トルクの精度を従来と同等とすることができる。
【0033】
また、ハンドル部12の外径は、係合部112の外径に比べて大きく設定してある。そのため、作業者の手によって、ハンドル部12を把持し回転させることで、締結固定具1による締結固定の解除をするのに必要な回転力を発生させることができる。これにより、締結用工具を用いることなく、容易に締結固定具1による締結固定の解除をすることができる。
【0034】
このように、締結固定具1によれば、締結固定時には、係合部112を用いることで精度の高い締結固定を可能とし、締結固定を解除する際には、ハンドル部12を用いることで迅速かつ容易に締結固定を解除することが可能となる。
【0035】
また、ハンドル部12は、締結本体部11の中心軸線と直交するように延設された3つの凸状部122からなる三つ又形状を有しており、各把持部121は、中心軸線を中心として互いに等角度で配されている。そのため、ハンドル部12を把持しやすい形状とすることができ、その作業性を向上することができる。
【0036】
また、雌ネジ部111と係合部112とは1つの部材によって一体に形成されている。そのため、締結用工具によって係合部112へ加えられる締付トルクを効率よく雌ネジ部111へと伝達することができる。また、締結固定具1を構成する部品点数を低減することが可能となる。
【0037】
また、ハンドル部12は、文字又は記号が記載された表示部13を有している。そのため、表示部13に、使用にかかる注意や、締付けトルク値の範囲を記載することにより、締結固定具1を安全かつ正しく使用することができる。
【0038】
本例において、締結固定具1のハンドル部12は、締結本体部11に固定されているが、締結本体部11の軸方向に移動可能に構成されていてもよい。この場合には、ハンドル部12を締結固定具1の一端側に退避させ、誤ってハンドル部12を操作することを防止できる。また、退避位置へと移動したハンドル部12は、締結本体部11と相対して回転可能に配されていてもよい。
【0039】
以上のごとく、締結固定具1によれば、締結固定時における締付けトルクの精度を確保しつつ、容易に締結固定を解除することができる。
【0040】
(実施例2)
本例は、実施例1の締結固定具1を用いた電源接続構造100を示す例である。
図4及び
図5に示すごとく、電源接続構造100は、車両におけるバッテリー3と電気配線2とを接続するものである。
電源接続構造100は、実施例1の締結固定具1と、車両側に接続された電気配線2と、バッテリー3のマイナス側電極に接続されたターミナル4とを有している。
【0041】
図5に示すごとく、電気配線2は、車両の電気回路と接続された接続コード21と、接続コード21の一端に配された端子部22とを有している。
接続コード21は、図示しない電気導電性を有する導電ワイヤーと、導電ワイヤーの周囲を覆う電気絶縁性を有する絶縁層とを有している。
【0042】
図5及び
図6(a)示すごとく、端子部22は、接続コード21の導電ワイヤーと接続固定されるカシメ部222と、カシメ部222から延設された端子本体部221と、端子本体部221に連結された閉口部材225とを有している。
カシメ部222は、かしめ前の状態において略円筒状をなしており、その内周に導電ワイヤーを挿通配置してカシメ部222をかしめることにより、カシメ部222と導電ワイヤーとが圧着され電気的に接続される。
【0043】
図5及び
図6(a)に示すごとく、カシメ部222から延設された端子本体部221は、カシメ部222が配された側と反対側に延設された一対の脚部223を有している。一対の脚部223の先端側には、各脚部223から外側に向かって突出する接続凸部228が形成されている。また、一対の脚部223の間には、略U字状の凹部224が形成されている。
【0044】
図6(b)に示すごとく、閉口部材225は、略直方体形状をなしており、その長手方向と平行に配された4つの側面230の1つには、円弧状の断面形状を有する凹溝部229が形成されている。また、凹溝部229が形成された側面と直交して配された1つの側面230には、一対の脚部223の先端形状と対応した外形形状を有する接続凹部231が形成されている。
【0045】
図6(c)に示すごとく、端子本体部221と
閉口部材225とは、一対の脚部223の先端を接続凹部231に嵌合することにより、両者を着脱可能に連結される。このとき、端子本体部221と閉口部材225とに囲まれた空隙によって、ターミナル4が有する雄ネジ部417を挿通可能な貫通孔226を形成している。
【0046】
車両に搭載されたバッテリー3は、その上面に、プラス側電極及びマイナス側電極をなす2つのバッテリーポスト31を有している。バッテリーポスト31は、先端側に向かって縮径する円錐台形状をなしている。
【0047】
図5及び
図7に示すごとく、マイナス側電極をなすバッテリーポスト31に配されたターミナル4は、バッテリーポスト31に固定されるターミナル保持部41と、ターミナル保持部41を締め付ける締付部412と、電気配線2と接続されるターミナル連結部413とを備えている。
ターミナル保持部41は、略長方形状の板材をその長手方向が円周上に配されるよう略円筒状に形成されており、軸方向から見たとき円周上に開口する開口部411を有している。
【0048】
図5及び
図7に示すごとく、ターミナル保持部41の開口部411に配された一対の端部には、径方向外側に向かって延設された一対の締付部412と、各締付部412にそれぞれ貫通形成されたボルト挿通穴416を備えている。
ボルト挿通穴416には、ボルト414を挿通してあり、ボルト414には、ナット415と螺合してある。尚、ボルト414とナット415とは、ターミナル保持部41の内径がバッテリーポスト31の外径よりも大きくなる位置まで螺合してある。
【0049】
図5及び
図7に示すごとく、ターミナル連結部413は、ターミナル保持部41において締付部412と反対側の位置における下端部から、ターミナル保持部41の軸線方向と垂直な平面上に形成されると共に締付部412と反対側に向かって延設されている。ターミナル保持部41の略中央位置には、ターミナル連結部413の軸方向と平行に立設した雄ネジ部417を配してある。
【0050】
次に本例の電源接続構造100の組み付け順序を説明する。
まず、バッテリー3のマイナス側電極をなすバッテリーポスト31にターミナル4を組み付ける。
ターミナル保持部41の内側にバッテリーポスト31を挿通配置し、ボルト414とナット415とを締結する。ボルト414とナット415とを締結すると、開口部411の間隔を狭めると共にターミナル保持部41の内径が狭められる。これにより、ターミナル保持部41をバッテリーポスト31に固定することができる。
【0051】
次に、電気配線2をターミナル4と接続する。
図5に示すごとく、電気配線2の端子部22における貫通孔226の内側に、ターミナル4が有する雄ネジ部417を挿通配置する。そして、締結固定具1の係合部112に締結用工具を係合し、締結用工具を用いて、締結固定具1との雌ネジ部111とターミナル4の雄ネジ部417とを螺合し締結固定する。これにより、電気配線2とバッテリー3のマイナス側電極をなすバッテリーポスト31とが電気的に接続される。
【0052】
電源接続構造100においては、車両におけるバッテリー3のマイナス側電極と車両の電気配線2とを、締結固定具1を用いて電気的に接続している。車両において、マイナス側電極と電気配線2とは、通常の使用時には適切に締結固定され、緊急時や長期間使用しない場合には容易に締結固定を解除できることが望まれている。そのため、締結固定具1を用いることで、上記の要求を満足する優れた電源接続構造100を実現することができる。
【0053】
また、
図8に示すごとく、本例の電源接続構造100において、電気配線2とバッテリー3のマイナス側電極をなすバッテリーポスト31との接続解除をする場合、締結固定具1のハンドル部12を把持すると共に回転させることにより、端子部22の固定を解除する。そして、電気配線2を脚部223の延設方向と反対側へと引っ張ると、脚部223の先端に配された閉口部材225と端子部22とが分離する。閉口部材225と分離した端子部22においては、脚部223の間が開口しているため、ここから雄ネジ部417を抜くことができる。
【0054】
電源接続構造100において、電気配線2が有する端子部22は、電気配線2と接続されると共に同一方向に延設された一対の脚部223を備えた端子本体部221と、一対の脚部223の先端部同士を繋ぐように配された閉口部材225とを有しており、貫通孔226が端子本体部221と閉口部材225とに囲まれた空隙によって形成されると共に、閉口部材225が端子本体部221から着脱可能に構成されている。そのため、締結固定具1とターミナル4の雄ネジ部417との螺合を緩めた状態で、端子本体部221と閉口部材225との連結を解除することにより、端子本体部221の一対の脚部223における先端側の開口部411から雄ネジ部417を抜き取ることができる。これにより、締結固定具1を雄ネジ部417から完全に取り外すことなく、より迅速かつ容易にマイナス側電極と電気配線2との接続を解除することができる。
【0055】
以上のごとく、本例の電源接続構造100によれば、通常の使用時には適切に締結固定し、緊急時等には容易に締結固定を解除することができる。