【実施例1】
【0015】
最初に、
図1〜
図7を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。本発明は、発電層として色素増感型の光発電層を用いた色素増感太陽電池に適用した例である。
図1(A)は本実施例の太陽電池を光入射面側から見た平面図,
図1(B)は光入射面側から正極基板の配線層側を透過して見た平面図,
図1(C)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。前記
図1(B)は
図1(C)を#D−#D線に沿って切断し矢印方向に見た状態に相当する。
図2〜
図4は、本実施例の太陽電池の作製工程を示すものであって、詳細は後述する。
図5は、本実施例の太陽電池の積層構造を示す分解斜視図,
図6は、本実施例の太陽電池を構成する負極,発電層,正極,配線層の配置及び接続部分を、光入射側から透過して見た平面図である。
図7は、本実施例の太陽電池を構成する4つの光電変換素子(発電セル)の接続構造を示す模式図である。
【0016】
まず、
図1,
図5〜
図7を参照して、本実施例の太陽電池の構造を説明する。本実施例の太陽電池10は、4つの発電セル28A〜28D(
図5参照)が、太陽電池10の略中央部の開口部を除いて、その周囲に配置された構造であって、全体が略ディスク状となっている。前記4つの発電セルは、後述するように直列接続されている。
図1(C)に示すように、本実施例の太陽電池10は、負極基板(ないし発電基板)12と、正極基板(対向基板)30が対向した構成となっている。そして、前記負極基板12と正極基板30の周囲に設けられた封止剤62により形成された空間内に電解液74が封止されており、前記負極基板12に設けられた発電層24A〜24Dが前記電解液74に接触している。
【0017】
前記負極基板12は、略中央部に貫通孔20を有する略円形であって、透明導電膜付基板14と発電層24A〜24Dにより構成されている。前記透明導電膜付基板14は、プラスチック基板16上に透明導電膜18を有する積層構造である。本実施例では、前記プラスチック基板16が、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板又はPEN(ポリエチレンナフタレート)基板であり、透明導電膜18がメッシュ付ITOである。該透明導電膜18は、
図5及び
図6(B)に示すように、4つに分割され、第1の負極18A,第2の負極18B,第3の負極18C,第4の負極18Dを構成する。第1の負極18Aは、前記貫通孔20の周囲に形成された負極端子部19を有している。前記貫通孔20は、正極基板30と貼り合わせた時に、該貫通孔20の周囲が正極基板30と重ならずに露出するため、該露出部分に前記負極端子部19を形成することにより、負極を太陽電池10の略中央部から取り出すことができる。
【0018】
前記第1の負極18A〜第4の負極18D上には、
図6(C)に示すように、表面に色素が担持された多孔質の半導体からなる第1の発電層24A〜第4の発電層24Dが設けられている。前記第1の負極18A〜18D同士は、分割用のパターン22に設けられた封止剤26により絶縁され、前記第1の発電層24A〜24D同士も、前記封止剤26により絶縁される。詳しくは、後の製造工程において説明する。
【0019】
次に、正極基板30について説明する。正極基板30は、積層構造のプリント基板31を利用して構成されており、略中央部に前記負極基板12の貫通孔20よりも径の大きい貫通孔46を有している。また、正極基板30は、ポリイミド層32と、その一方の主面に形成された第1の正極38A〜第4の正極38Dと、前記ポリイミド層32の他方の主面に形成された第1の配線層44A〜第4の配線層44Dを備えている。該第1の配線層44A〜第4の配線層44Dが設けられる方が非受光側である。前記第1の正極38A〜第4の正極38Dの上には、触媒層55A〜55Dが設けられている。前記プリント基板31は、ポリイミド層32の一方の主面に、Cu薄膜34とAu薄膜36からなる導体層38を有し、他方の主面に、Cu薄膜40とAu薄膜42からなる導体層44を有している。
【0020】
そして、前記導体層38を所定のパターンでエッチングすることにより、4分割された前記第1の正極38A〜第4の正極38Dが形成される(
図5及び
図6(D)参照)。これら第1の正極38A〜第4の正極38D同士は、封止剤60により互いに絶縁されている。該第1の正極38A〜第4の正極38Dは、前記負極基板12の第1の負極18A〜第4の負極18Dに対応する位置に形成されている。そして、前記第1の負極18Aと、第1の発電層24Aと、第1の正極38Aにより、
図5に示すように第1の発電セル28Aが形成される。同様に、第2の負極18B,第2の発電層24B,第2の正極38Bにより第2の発電セル28Bが形成され、第3の負極18C,第3の発電層24C,第3の正極38Cにより第3の発電セル28Cが形成され、第4の負極18D,第4の発電層24D,第4の正極38Dにより第4の発電セル28Dが形成される。
【0021】
また、前記ポリイミド層32の他方の主面の導体層44を所定のパターンでエッチングすることにより、4分割された第1の配線層44A〜第4の配線層44Dが形成される(
図6(E)参照)。これら第1の配線層44A〜第4の配線層44D同士は、
図5に示す保護層64を配線層44A〜44Dの裏側に設けるとともに、これらを分割する溝(パターン)に設けることで、互いに絶縁されている。前記第1の配線層44A〜第4の配線層44Dは、それぞれ、前記第1の正極38A〜第4の正極38Dに対応するものであるが、本実施例では、その位置が上下方向に一致せず、隣接する正極にも重なる位置に形成されている。例えば、第1の配線層44Aについては、
図5における右側部分は上層の第1の正極38Aと重なり、左側部分は、前記第1の正極38Aと隣接する第2の正極38Bと重なるという具合である。第2の配線層44B〜第4の配線層44Dについても基本的には同様である。なお、第4の配線層44Dは、前記貫通孔46の周囲に形成された正極端子部45を有している。前記貫通孔46の周囲に前記正極端子部45を形成することにより、正極を太陽電池10の裏面側,すなわち、前記負極と同一方向から取り出すことが可能となる。
【0022】
次に、前記第1の発電セル28A〜第4の発電セル28Dを直列接続するための構造について説明する。まず、第1の正極38A〜第4の正極38Dと、第1の配線層44A〜第4の配線層44Dは、前記ポリイミド層32を貫通するスルーホール52A〜52Dを用いることで、前記ポリイミド層32を挟んで上下で電気的に接続される。第1の正極38Aは、隣接する第2の正極38B側に設けられた複数(図示の例では5つ)のスルーホール52A中に充填された導体54により、第1の配線層44Aに電気的に接続される。上述した通り、前記第1の配線層44Aは、第1の正極38Aと第2の正極38Bの双方に重なる位置に形成されているため、配線層44Aにおける第1の正極38Aとの接続位置は、隣接する第4の配線層44D側となる(
図5参照)。
【0023】
同様に、第2の正極38Bは、隣接する第3の正極38C側に設けられたスルーホール52B及び導体54により、第2の配線層44Bに接続される。その接続位置は、第1の配線層44A寄りの位置である。第3の正極38Cは、隣接する第4の正極38D側に設けられたスルーホール52C及び導体54により、第3の配線層44Cに接続される。その接続位置は、第2の配線層44B寄りの位置である。第4の正極38Dは、隣接する第1の正極38A側に設けられたスルーホール52D及び導体54により、第4の配線層44Dに接続される。その接続位置は、第3の配線層44C寄りの位置である。前記スルーホール52A〜52Dは、本実施例では、外周側に形成されている。これは、受光面の全面にスルーホールを設けることで触媒層の面積減少による発電量の低下を防止するためである。また、スルーホール52A〜52Dは、本実施例では、それぞれ5つ設けることとしたが、その数は必要に応じて増減してよい。
【0024】
次に、発電セル28A〜28Dを、配線路68〜72を利用して太陽電池10の外周側において直列接続する。まず、第1の発電セル28Aについては、負極18Aは、負極端子部19により外部に接続される。一方、前記発電セル28Aの正極38Aは、前記スルーホール52Aにより裏面の第1の配線層44Aに接続されている。そして、該第1の配線層44Aの外周側であって前記スルーホール52Aが形成されていない位置,すなわち、第2の発電セル28Bと重なる位置において、積層方向に導電性ペーストを設けることにより配線路68が形成される。該配線路68は、第2の発電セル28Bの負極18Bに接続する(
図5及び
図7参照)。
【0025】
第2の発電セル28Bの正極38Bは、前記スルーホール52Bにより裏面の第2の配線層44Bに接続される。そして、該第2の配線層44Bの外周側であって前記スルーホール52Bが形成されておらず、第3の発電セル28Cと重なる位置において、積層方向に設けられた導電性ペーストからなる配線路70により、前記第2の正極38Bは、前記第2の配線層44Bを介して第3の発電セル28Cの負極18Cに接続する(
図5及び
図7参照)。
【0026】
第3の発電セル28Cの正極38Cは、前記スルーホール52Cにより裏面の第3の配線層44Cに接続される。そして、該第3の配線層44Cの外周側であって前記スルーホール52Cが形成されておらず、第4の発電セル28Cと重なる位置において、積層方向に設けられた導電性ペーストからなる配線路72により、前記第3の正極38Cは、前記第3の配線層44Cを介して第4の発電セル28Dの負極18Dに接続する(
図5及び
図7参照)。
【0027】
第4の発電セル28Dの正極38Dは、前記スルーホール52Dにより裏面の第4の配線層44Dに接続される。該配線層44Dには、正極端子部45が設けられており、該正極端子部45により正極が外部に取り出される(
図5及び
図7参照)。このように、前記配線路68〜72は、負極端子部19が設けられている第1の負極18Aと、正極端子部45が設けられている第4の配線層44Dと接続している正極38Dを除いて、隣接する発電セルの負極と正極を太陽電池10の外周側において電気的に接続する。従って、電解液74から離された位置での直列接続が可能となり、構造的に電解液の漏洩による腐食の問題を軽減することができる。
【0028】
次に、
図2〜
図4も参照しながら、本実施例の太陽電池10の製造方法について説明する。
図2は、前記負極基板12の作製工程を示す平面図及び断面図,
図3は、前記正極基板30の作製工程を示す平面図及び断面図である。
図4は、前記負極基板と正極基板の貼り合わせ前の様子を示す平面図及び貼り合わせ後の主要断面図である。まず、
図2を参照して、負極基板の作製について説明する。なお、
図2において、(A-1)〜(D-1)は、作製中の電極等を光の入射側からプラスチック基板を透過した見た平面図である。また、
図2(A-2)〜(D-2)は、前記(A-1)〜(D-1)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た負極基板全体の断面図である。
【0029】
まず、透明導電膜18が成膜されたプラスチック基板16(PEN,PETなど)を用意し、
図2(A-1)に示すように略中央部に貫通孔20を形成する。プラスチック基板16の外形は例えば、120mm、貫通孔20の径は15mmである。次に、
図2(B-1)及び(B-2)に示すように、レーザーエッチングにより透明導電膜18をパターニングする。パターン22は、
図2(B-1)に示すように、前記透明導電膜18を4分割して4つの負極18A〜18Dを形成するものである。具体的には、前記貫通孔20の周囲に負極端子部19を形成するように形成された内周部22Aと、該内周部22Aから外周部に向けて放射状に形成された4本の放射状部22Bを有している。なお、前記内周部22Aは、完全な円形ではなく、前記負極端子部19が第1の負極18Aに接続するように、3/4円形状となっている。
【0030】
次に、前記負極18A〜18D上に、前記負極端子部19の部分と外周部分を除いて、低温用酸化チタンペーストをスクリーン印刷で1〜3層成膜し、80℃で10分間乾燥した。更に、光閉じ込め層として粒子径が発電層よりも大きい低温用酸化チタンペーストをスクリーン印刷で1層成膜し、80℃で10分間乾燥した。発電層及び光閉じ込め層を静水圧プレス機で190MPaでプレスし、70℃で30分のUV−オゾン処理を行い、その後N719の色素溶液に50℃で4時間浸漬することで色素吸着を行った。吸着後に無水
アセトニトリルで余剰色素を洗浄し、室内乾燥することで第1の発電層24A〜第4の発電層24Dを形成した。更に発電層24A〜24Dを形成していない部分をエタノールで洗浄し、封止剤26をディスペンサーで塗布した(
図2(D-1)及び(D-2)参照)。
【0031】
封止剤26は、前記パターン22に対応する形状であって、中央側の円形の内周部26Aと、そこから放射状に形成された4つの放射状部26Bと、外周部26Cを有している。なお、前記封止剤26は、負極18A〜18Dの最外周部分が露出するように塗布される。また、封止剤26は、
図2(D-2)に示すように、前記発電層24A〜24Dの表面から突出するように塗布される。これは、後述する正極基板30と貼り合わせたときに、発電層と正極の間に、電解液74を封止する空間を形成するためである。以上のようにして、負極基板12が完成する。
【0032】
次に、
図3を参照して正極基板30の製造方法を説明する。なお、
図3において、(A-1)〜(E-1)は作成中の正極側を光の入射側から透過して見た平面図,(B-2)〜(E-2)は作成中の正極基板裏面の配線層を光の入射側から透過して見た平面図,(A-2)及び(B-3)は前記(A-1)及び(B-1)をそれぞれ#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C-3)〜(E-3)は前記(C-1)〜(E-1)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。まず、
図3(A-1)に示すように、多層構造のプリント基板31を用意し、略中央部に貫通孔46を形成する。プリント基板31の外形は116〜118mm,貫通孔
46の径は25mmである。前記プリント基板31は、
図3(A-2)に示すように、ポリイミド層32の表裏にCu薄膜34,40が形成され、さらにその上にAu薄膜36,42が形成された構造となっている。以後、説明を容易にするため、前記ポリイミド層32の一方の主面(光入射側)のCu薄膜34及びAu薄膜36を合わせて導体層38といい、他方の主面のCu薄膜40及びAu薄膜42を合わせて導体層44という。
【0033】
次に、ウェットエッチングにより、前記導体層38,44をパターニングする。導体層38側については、
図3(B-1)に示すように、パターン48を形成することにより4分割し、第1の正極38A〜第4の正極38Dを形成する。前記パターン48は、前記貫通孔46の周囲に形成された内周部48Aと、該内周部48Aから外周に向けて放射状に形成された4つの放射状部48Bと、ポリイミド層32の外周が露出するように形成された外周部48Cを有する。一方、裏面の導体層44については、
図3(B-2)に示すようにパターン50を形成することにより4分割された第1の配線層44A〜44Dが形成される。前記パターン50は、前記貫通孔46の周囲に正極端子部45を残すように形成された内周部50Aと、該内周部50Aから外周に向けて放射状に形成された4つの放射状部50Bを有している。なお、前記内周部50Aは、完全なリング状ではなく、前記正極端子部45が第4の配線層44Dと接続するように、3/4円形状となっている。なお、前記配線層44A〜44Dは、前記正極38A〜38Dに対応して設けられるものであるが、本実施例では、配線層44A〜44Dと正極38A〜38Dの位置は完全に一致してはおらず、約45°ずれて形成されている。
【0034】
次に、前記第1の正極38A〜第4の正極38Dと、第1の配線層44A〜第4の配線層44Dを接続するためのスルーホール52A〜52Dを形成して、内部に導体54をメッキし(
図3(C-1)〜(C-3)参照)、第1の正極38Aと第1の配線層44A,第2の正極38Bと第2の配線層44B,第3の正極38Cと第3の配線層44C,第4の正極38Dと第4の配線層44Dをスルーホール接続する。例えば、正極38A〜38D上のスルーホール形成部分の金属をウェットエッチングにより除去し、露出したポリイミド層32にレーザーで孔を開け、無電解メッキによりポリイミド層32に対して上下の導通を確保する。次に、前記正極38A〜38D上に、負極18A〜18Dのチタニア層と対向する触媒層55A〜55Dを形成する。本実施例では、まず、パターン48を剥離可能な樹脂やテープで被覆した後に、正極38A〜38D上に、Ti薄膜56A〜56Dをスパッタにより成膜し、更にその上にPt薄膜58A〜58Dをスパッタにより成膜する(
図3(D-1)及び(D-3)参照)。スパッタによる成膜の後、パターン48の被覆を除去する。以後、説明を容易にするために、Ti薄膜56A〜56DとPt薄膜58A〜58Dの2層を合わせて触媒層55A〜55Dと表現する。
【0035】
更に、触媒層55A〜55Dを形成した側に、封止剤60をディスペンサーで塗布する(
図3(E-1)及び(E-3)参照)。封止剤60は、前記パターン48に対応する形状であって、中央側の円形の内周部60Aと、そこから放射状に形成された4つの放射状部60Bと、外周部60Cを有している。前記外周部60Cは、前記スルーホール52A〜52Dを覆うように形成するとよい。また、封止剤60は、触媒層55A〜55Dの表面から突出するように塗布される。これは、前記負極基板12と貼り合わせたときに、発電層と正極の間に、電解液74を封止する空間を形成するためである。以上のようにして正極基板30が完成する。
【0036】
次に、以上のようにして形成した負極基板12(
図4(A-1)と、正極基板30(
図4(A-2))とをそれぞれの封止剤26,60を対向させ、電解液74を負極18A〜18Dの発電層24A〜24Dに染み込ませた後、真空貼り合わせを行った。貼り合わせ後、
図4(A-2)に点線で示す位置に、銀などの導電性ペーストを設けて外周部に3つの配線路68,70,72を形成し、負極と配線層を電気的に接続する。具体的な接続形態については、前記
図5及び
図7で説明した通りである。その後、配線層44A〜44D側に保護層64として、アクリル樹脂などのスピンコート法により形成する。該保護層64は、前記貫通孔46に相当する開口66を有するとともに、前記配線層44A〜44D間に設けられているパターン50を埋めるように形成され、開口66の縁部67は、前記正極端子部45と配線層44A〜44Cの間のパターン50Aを埋めて絶縁している。
【0037】
以上のようにして、太陽電池セル10が完成する。完成後の太陽電池10を、
図4(A-2)に示す#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図が
図4(B)であり、#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図が
図4(C)である。太陽電池10は、略中央部の開口の内周側において、負極端子部19が露出しており、その外周側に正極端子部45が露出している。そのため、
図1(C)に矢印FAで示すように、内周側を図示しない接続コネクタの負極に接続し、外周側を矢印FBで示すように前記接続コネクタの正極に接続することで、電極の取り出しが可能となる。このような接続の仕方としては、例えば、特開2012−134451号公報に開示されている接続構造を利用することができる。このような太陽電池10は、必要に応じて、前記接続用コネクタを複数備えたパネル等に並べて使用される。
【0038】
このように、実施例1によれば、発電層が設けられた負極を正極と対向させ、周囲に設けられた封止剤により形成された空間に電解液が封止された光電変換素子が複数配設された色素増感太陽電池において、正極を形成した絶縁層の他方の主面に、前記正極に対応する配線層を形成して第1の電極連結手段により正極と接続する。また、光電変換素子の負極と、隣接する光電変換素子の正極に接続する配線層とを、電池の外周側において第2の電極連結手段により接続することとした。このため、次のような効果がある。
(1)電池の外周側で発電セル28A〜28Dが直列接続する構造とすることで、電解液74の漏洩の影響を受けにくくなり、電解液74に含まれるヨウ素に接触して電気的接続部分(配線路68〜72)が腐食する可能性を最小限に抑えることができる。このため、ヨウ素に対して腐食性の高い金属である銀ペーストなどを使用して配線路68〜72を形成することで低抵抗化が可能となり、発電セル28A〜28D単体での出力が大きくなるため、これら発電セル28A〜28Dを接続した太陽電池10の全体の出力電圧を高く保つことができる。
【0039】
(2)正極38A〜38Dと配線層44A〜44Dを接続するスルーホールを、外周側に形成したので、受光面積を減らさずに、電気的接続が可能となる。
(3)正極38A〜38Dと配線層44A〜44Dの位置がずれているため、後述する実施例2のように、引出用の細線部を形成する必要がないため高抵抗化せず、複数の発電セル28A〜28Dを同じ形で接続することができるため、出力が安定する。
(4)透明導電膜18として網状のメッシュ電極を利用しているため、大面積化しても発電効率が低下する(高抵抗化する)ことがない。すなわち、従来技術では、発電セル1個当たりの大面積化が困難であったのに対し、本発明では、メッシュ電極とすることで平面の抵抗を下げることができるため、ベタ塗りの発電層24A〜24Dを形成しても、ある程度の発電効率を出すことが可能となる。
(5)太陽電池10を、光ディスク型としたので、可搬性が高く、複数の電池を併用してパネル化等も容易である。
【実施例2】
【0040】
次に、
図8を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。前記実施例1は、正極と発電層の位置をずらして形成するとともに、接続用のスルーホールを外周部に設ける構成としたが、本実施例は、正極と発電層の位置を、絶縁層を挟んで上下で概略一致させ、かつ、スルーホールを全面に形成した例である。
図8(A-1)及び(B)は作製中の正極基板の正極側を光入射側から透過して見た平面図,
図8(A-2)は作製中の正極基板の配線層側を光入射側から透過して見た平面図,
図8(C)は(A-2)及び(B)を#E−#E線で切断し矢印方向に見た断面図である。
【0041】
本実施例では、負極基板12の構造及び製造方法は、実施例1と同様であるので、
図8を参照して、正極基板80の製造方法のみを説明する。多層構造のプリント基板31を用意し、略中央部に貫通孔46を形成するところまでは、実施例1と同様である。次に、ポリイミド層32の両主面の導体層をウェットエッチングによりパターニングする。光入射側の導体層については、
図8(A-1)に示すように、パターン82を形成することにより、4分割された第1の正極84A〜第4の正極84Dが形成される。前記パターン82は、前記貫通孔46の周囲に形成された内周部82Aと、該内周部
82Aから外周に向けて放射状に形成された4つの放射状部82Bと、ポリイミド層32の外周が露出するように外周部に形成された外周部82Cを有する。
【0042】
一方、ポリイミド層32の裏面の導体層については、
図8(A-2)に示すようにパターン88を形成することにより4分割された第1の配線層90A〜第4の配線層90Dが形成される。前記パターン88は、前記貫通孔46の周囲に正極端子部95を残すように形成された内周部88Aと、該内周部88Aから外周に向けて放射状に形成された4つの放射状部88Bと、該放射状部88Bの先端から外周に沿って形成された3つの外周部88Cを有している。該外周部88Cは、第1の配線層90A〜第3の配線層90Cが、隣接する第2の配線層90B〜第4の配線層90Dの外周側に引出部92A〜92Cを有するように形成される。本実施例では、
図8(A-1)及び(A-2)に示すように、正極84A〜84Dと、配線層90A〜90Dの位置の大部分が一致している。
【0043】
次に、前記第1の正極84A〜第4の正極84Dと、第1の配線層90A〜第4の配線層90Dを接続するためのスルーホール94A〜94Dを形成して、内部に導体54をメッキし、第1の正極84A〜第4の正極84Dと第1の配線層90A〜90Dをポリイミド層32を挟んで上下でスルーホール接続する。前記スルーホール94A〜94Dは、実施例1と異なり、外周部ではなく全面に複数設けられる。次に、前記正極84A〜84D上に、負極18A〜18Dのチタニア層と対向する触媒層98A〜98Dを形成する(
図8(B))。更に、触媒層98A〜98Dを形成した側に、封止剤100をディスペンサーで塗布した(
図8(B))。封止剤100は、前記パターン88に対応する形状であって、中央側の円形の内周部100Aと、そこから放射状に形成された4つの放射状部100Bと、外周部100Cを有している。外周部100Cは、ポリイミド層32の外周部が露出するように塗布される。また、前記封止剤100は、触媒層98A〜98Dの表面から突出するように塗布される。これは、前記負極基板12と貼り合わせたときに、発電層と正極の間に、電解液74を封止する空間を形成するためである。以上のようにして正極基板80が完成する。
【0044】
次に、以上のようにして形成した正極基板80と、実施例1と同様にして形成された負極基板12とを、それぞれの封止剤100,26が対向するように貼り合わせ、電解液74を封止する。貼り合わせ後、
図8(A-2)に点線で示す位置に、銀などの導電性ペーストを設けて外周部に3つの配線路102,104,106を形成し、隣接する発電セルの負極と配線層を電気的に接続する。例えば、配線路102については、
図8(C)の断面に示すように、正極基板80の裏面に形成された第1の配線層90Aの引出部92Aと、負極基板12の第2の負極18Bが配線路102によって電気的に接続される。すなわち、配線路102及び引出部92Aによって、第1の発電セルの正極84Aとスルーホール94A及び導体54を介して接続された第1の配線層90Aが、隣接する第2の発電セルの負極18Bと外周側において電気的に接続する。他の配線路104,106による接続についても同様である。その後、配線層90A〜90D側に実施例1と同様の保護層64として、アクリル樹脂などのスピンコート法により形成する。
【0045】
本実施例で作製した色素増感太陽電池にAM1.5の擬似太陽光を照射しながら、IV測定装置を用いて、各々の光電変換素子のJsc,Voc,FF,EFFを得た。その結果、Vocは2.2Vを示し、一つの光ディスク型DSCで、出力電圧が大幅に向上した。なお、本実施例は、4つのセルを直列した構造であるが、デバイスに応じて直列数を増やし、出力電圧を更に上げることも可能である。
【0046】
本実施例の基本的な作用・効果は、前記実施例1と同様である。なお、電解液74の漏洩による腐食の問題がない場合であっても、受光面を大面積化することで大電流が流れる場合には、本実施例のようにスルーホールを全面に設けることで、スルーホールが抵抗となるため、ポリイミド層32の上下の電極間(正極と配線層間)の抵抗が低くなる。電解液74と接した正極の電極表面を流れる距離が長いほど、電子は電解液74に補足される可能性が高くなる。従って、全面に設けたスルーホールにより、電子を迅速に裏面に導出し、電流取り出し効率を上げることができる点で利点がある。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、負極,発電層,配線層をそれぞれ4分割することとしたが、これも一例であり、2分割又は3分割であってもよいし、4分割以上とすることを妨げるものではない。
(2)前記実施例では、負極,発電層,配線層は、隣接する負極同士,発電層同士,配線層同士でほぼ同じ形状としたが、これも一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。しかしながら、同一形状あるいは対象形状とすることにより、発電部位から取り出し部位までの距離がほぼ同等となるため、出力がばらつかないという点で利点がある。
(3)太陽電池10自体の形状や中央の貫通孔の形状も一例であり、円形に限定されるものではなく、4角形状としてもよい。
(4)前記実施例で示したスルーホールによる接続位置は一例であり、同様の効果を奏する範囲内で適宜設計変更可能である。外周側の配線路による接続位置についても同様であり、外周側であれば、負極,正極,配線層の配置や形状に応じて適宜変更可能である。
(5)前記実施例1では、透明電極(負極)を網状のメッシュ電極としたが、これも一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。