(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載された内視鏡用対物レンズをはじめとする従来の内視鏡用対物レンズでは、光学性能の維持及び寸法上の制約を鑑みると、視野角として140°程度が一般的である。この程度の視野角では、例えば大腸内の管壁やヒダの裏側等を観察するときに内視鏡の湾曲部を湾曲させて先端部の向きを変える必要がある。しかし、例えば管腔径が細い場合等は先端部の動きが制限されるため、先端部を所望の向きに変えられないことがある。また、先端部を様々な向きに変えながら診断を進める場合、操作が煩雑であると共に診断時間が長期化する。これは、術者と患者の両者にとって負担であるため望ましくない。
【0005】
そこで、内視鏡用対物レンズを更に広視野角化して観察視野を広範にすることが望まれる。特許文献1において視野角を更に広げるには、屈折率の更に高いレンズを用いて内視鏡用対物レンズを設計する必要がある。しかし、屈折率の更に高いレンズを選択して広視野角化を試みた場合、倍率色収差が大きく発生して画質劣化が生じる虞がある。特に、観察視野の周辺ほど色ずれが顕著に現れて、管腔観察に適した光学性能が達成されないという問題が指摘される。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光学性能を良好に維持しつつ小型かつ広視野角に設計された内視鏡用対物レンズ、及び内視鏡を提供することである。
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る内視鏡用対物レンズは、物体側から順に、負のパワーを持つ第一のレンズ群、絞り、正のパワーを持つ第二のレンズ群を有する。このうちの第一のレンズ群は、物体側から順に、像側に凹面を向けた負の前群側レンズ、像側に凸面を向けた正の前群側レンズを少なくとも有する。また、第二のレンズ群は、物体側から順に、像側に凸面を向けた正の後群側レンズ、負のレンズと正のレンズとを接合した接合レンズを少なくとも有する。かかる内視鏡用対物レンズは、光学性能を良好に維持しつつ小型かつ広視野角を両立するため、第一のレンズ群の焦点距離をf
F(単位:mm)と定義し、該第一のレンズ群と第二のレンズ群との合成焦点距離をf(単位:mm)と定義し、負の前群側レンズの物体側の面の曲率半径をR
1(単位:mm)と定義し、該負の前群側レンズの像側の面の曲率半径をR
2(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(1)、(2)
−3.5≦f
F/f≦−1.5・・・(1)
1.3≦SF≦1.6・・・(2)
但し、SF=(R
1+R
2)/(R
1−R
2)
を満たすように構成されている。
【0008】
条件(1)の上限を超える場合、第一のレンズ群の負のパワーが過大であるため、広視野角設計を試みるとコマ収差や色収差等の諸収差を良好に補正するのが難しい。また、第二のレンズ群の倍率を高く設定せざるを得ないため、組立時の第一のレンズ群と第二のレンズ群との群間隔の誤差に伴う第二のレンズ群の倍率変化をおさえることが難しい。倍率変化に伴う視野角変化が大きいため、仕様を満足する視野角の保証が難しい。条件(1)の下限を下回る場合は、レンズ外径をおさえて設計することが難しく、小型化に不向きである。また、第一のレンズ群の倍率を高く設定せざるを得ないため、第一のレンズ群が光軸に対して偏心して組み付けられた際の像面倒れが大きく、観察視野周辺で画質劣化が生じやすい。なお、像面倒れは、理想的には光軸を基準に対称に残存する像面湾曲が、結像レンズの組立時の偏心量及び偏心方向に依存して光軸を基準に非対称に残存する現象をいう。
【0009】
条件(2)の上限を超える場合、電子スコープを管腔内に押し進める際の既存の挿入感(詳しくは後述する)が失われる。また、負の前群側レンズは、物体側の面の曲率半径が小さくなり当該面の突出量が増えるため、洗浄性が低下すると共に損傷しやすくなる。条件(2)の下限を下回る場合は、管壁等が表示される観察視野周辺の解像度が低下するため、管腔観察に適さない。また、負の前群側レンズは、物体側の面の曲率半径が大きいため、当該面への入射角が大きくなり光量損失が生じやすい。
【0010】
本発明に係る内視鏡用対物レンズは、視野角を広げた場合に懸念される観察視野周辺の光学性能の劣化がより一層おさえるべく、負の前群側レンズの焦点距離をf
1と定義した場合に、次の条件(3)
−1.8≦f
1/f≦−1.1・・・(3)
を満たす構成としてもよい。
【0011】
条件(3)の上限を超える場合、負の前群側レンズのパワーが強いため、非点収差と色収差を良好に補正することが難しく周辺解像度が低下する。条件(3)の下限を下回る場合は、負の前群側レンズのパワーが弱いため、有効光束半径をおさえつつ視野角を広げるといった設計に不向きである。
【0012】
本発明に係る内視鏡用対物レンズは、像面湾曲を管腔観察に適した状態に保ちつつ視野角を広げるため、正の後群側レンズの焦点距離をf
3と定義した場合に、次の条件(4)
2.0≦f
3/f≦4.0・・・(4)
を満たす構成としてもよい。
【0013】
条件(4)の上限を超える場合、内視鏡用対物レンズ全体として正のパワーが強いため、ペッツバール和が大きくなり、観察対象の管腔径が細いときに像面がアンダーに傾きやすい。条件(4)の下限を下回る場合は、内視鏡用対物レンズ全体として正のパワーが弱いため、ペッツバール和が小さくなり、観察対象の管腔径が太いときに像面がオーバーに傾きやすい。何れの場合も、管壁等が表示される観察視野周辺の解像度が低下して、管壁等を鮮明な映像で観察するのが難しい。
【0014】
本発明に係る内視鏡用対物レンズは、観察視野周辺での解像度を高めつつ観察視野中心付近の解像度の低下を有効に避けるため、結像面における最大像高をyと定義し、最大像高yよりも低い中間像高をy
iと定義し、最大像高yに対応する半画角をω
mと定義し、中間像高y
iに対応する半画角をω
iと定義した場合に、次の条件(5)
1.3×sin(ω
i/1.3)≦y
i/f≦3.0×sin(ω
i/3.0)・・・(5)
但し、60°≦ω
i≦ω
m
を満たす構成としてもよい。
【0015】
条件(5)の上限を超える場合、観察視野中心付近における解像度の低下が避けられない。条件(5)の下限を下回る場合は、観察視野周辺における解像度の低下が避けられない。
【0016】
正の前群側レンズは、像面倒れによる観察視野周辺の解像度の低下を有効におさえるべく、物体側の面を平面としてもよい。
【0017】
本発明に係る内視鏡用対物レンズは、表面反射による光量損失を有効におさえるべく、最大像高yに入射する光線の、負の前群側レンズの物体側の面への入射角をθと定義した場合に、次の条件(6)
θ≦75°・・・(6)
を満たす構成としてもよい。
【0018】
条件(6)を外れる場合に例えば負の前群側レンズを高屈折率硝材を用いて形成すると、表面反射による光量損失が大きい。
【0019】
本発明に係る内視鏡用対物レンズは、例えば電子スコープの絶縁性能を保証するため、結像面における最大像高をyと定義した場合に、次の条件(7)
2.0≦R
1/y≦5.5・・・(7)
を満たす構成としてもよい。
【0020】
条件(7)の上限を超える場合、負の前群側レンズのコバ厚を十分に確保することができないため、絶縁性能を保証するに足るコバ厚を確保するのが難しい。また、負の前群側レンズの物体側の面への入射角が大きいため、表面反射による光量損失量が増加する。条件(7)の下限を下回る場合、負の前群側レンズの物体側の面は突出量が増えるため、洗浄性が低下すると共に損傷しやすくなる。
【0021】
本発明に係る内視鏡用対物レンズは、負の前群側レンズにおいて物体側の面の突出量をおさえつつ表面反射による光量損失もおさえるべく、結像面における最大像高をyと定義し、最大像高yにおける負の前群側レンズの有効光束半径をDと定義した場合に、次の条件(8)
2.0≦D/y≦3.0・・・(8)
を満たす構成としてもよい。
【0022】
条件(8)の上限を超える場合、負の前群側レンズの物体側の面の突出量がおさえられる一方、当該面への入射角が大きいため、表面反射による光量損失量が増加する。また、内視鏡用対物レンズの全長(光軸方向の寸法)をおさえることが難しい。条件(8)の下限を下回る場合は、負の前群側レンズの物体側の面において表面反射による光量損失がおさえられる一方、当該面の突出量が増えるため、洗浄性が低下すると共に損傷しやすくなる。
【0023】
第二のレンズ群は、広視野角化に伴って増加する像面湾曲をより一層良好に補正するため、正の後群側レンズと接合レンズとの間に正レンズを更に有する構成としてもよい。
【0024】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る内視鏡は、上記内視鏡用対物レンズを先端に搭載したことを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、光学性能を良好に維持しつつ小型かつ広視野角に設計された内視鏡用対物レンズ、及び内視鏡が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態の電子スコープの外観を示す外観図である。
【
図2】本発明の実施形態(実施例1)の内視鏡用対物レンズ及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施例1の内視鏡用対物レンズの各種収差図である。
【
図4】本発明の実施例2の内視鏡用対物レンズ及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施例2の内視鏡用対物レンズの各種収差図である。
【
図6】本発明の実施例3の内視鏡用対物レンズ及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施例3の内視鏡用対物レンズの各種収差図である。
【
図8】本発明の実施例4の内視鏡用対物レンズ及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施例4の内視鏡用対物レンズの各種収差図である。
【
図10】本発明の実施例5の内視鏡用対物レンズ及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施例5の内視鏡用対物レンズの各種収差図である。
【
図12】本発明の実施例6の内視鏡用対物レンズ及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施例6の内視鏡用対物レンズの各種収差図である。
【
図14】本発明の実施例1において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図15】本発明の実施例2において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図16】本発明の実施例3において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図17】本発明の実施例4において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図18】本発明の実施例5において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図19】本発明の実施例6において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図20】本発明の比較例1において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【
図21】本発明の実施形態において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の電子スコープ、及び該電子スコープに組み込まれた内視鏡用対物レンズについて説明する。
【0028】
図1は、本実施形態の電子スコープ1の外観を示す外観図である。
図1に示されるように、電子スコープ1は、可撓性を有するシース(外皮)11aによって外装された可撓管11を有している。可撓管11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された先端部12が連結されている。可撓管11と先端部12との連結箇所にある湾曲部14は、可撓管11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作(具体的には、湾曲操作ノブ13aの回転操作)によって屈曲自在に構成されている。この屈曲機構は、一般的な電子スコープに組み込まれている周知の機構であり、湾曲操作ノブ13aの回転操作に連動した操作ワイヤの牽引によって湾曲部14を屈曲させるように構成されている。先端部12の方向が上記操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ1による撮影領域が移動する。
【0029】
先端部12の樹脂製筐体の内部には、内視鏡用対物レンズ100(
図1中破線で囲んだブロック)が組み込まれている。内視鏡用対物レンズ100は、撮影領域中の被写体の画像データを採取するため、被写体からの光を固体撮像素子(図示省略)の受光面上に結像させる。
【0030】
本実施形態の電子スコープ1は、例えば消化器系を観察するための内視鏡を想定する。電子スコープ1には、大腸等の細い管腔を広範な視野で撮影するため、小型かつ広視野角が要求される。そこで、電子スコープ1では、寸法の大きい搭載部品である内視鏡用対物レンズ100を小型に設計することにより、先端部12の外形寸法がおさえられている。内視鏡用対物レンズ100はまた、観察視野を広範にして術者による病変部等の見落としを減らすため、小型でありつつも広視野角に設計されている。内視鏡用対物レンズ100の視野角は、例えば170°以上が望ましい。
【0031】
図2は、本発明の実施例1(詳しくは後述)の内視鏡用対物レンズ100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。次においては、
図2を参照しつつ、本発明の実施形態の内視鏡用対物レンズ100について詳細に説明する。
【0032】
内視鏡用対物レンズ100は、
図2に示されるように、物体(被写体)側から順に、第一のレンズ群G1、絞りS、第二のレンズ群G2を少なくとも有している。第一のレンズ群G1、第二のレンズ群G2を構成する各光学レンズは、内視鏡用対物レンズ100の光軸AXを中心として回転対称な形状を有している。第二のレンズ群G2の後段には、固体撮像素子用の色補正フィルタFが配置されている。色補正フィルタFは、固体撮像素子を保護するカバーガラスCGに接着されている。
【0033】
上記において「少なくとも有している」としたのは、本発明の技術的思想の範囲において、別の光学素子を追加する構成例もあり得るからである。例えば、本発明に係る内視鏡用対物レンズに対して光学性能に実質的に寄与しない平行平板を追加する構成例や、本発明に係る内視鏡用対物レンズの構成及び効果を維持しつつ別の光学素子を付加する構成例が想定される。第一のレンズ群G1、第二のレンズ群G2の説明においても、同様の理由で「少なくとも有している」と表現している。
【0034】
第一のレンズ群G1は、絞りSよりも物体側に配置されたレンズ群である。第一のレンズ群G1は、物体側から順に、像側に凹面を向けた負レンズL1、像側に凸面を向けた正レンズL2を少なくとも有している。第一のレンズ群G1は、内視鏡用対物レンズ100の広視野角化、つまり広範囲に亘る被写体を取り込むため、全体として負のパワーを有している。なお、広視野角化のために負レンズL1のパワーを強くすると、第一のレンズ群G1と第二のレンズ群G2との非対称性が大きくなるため歪曲収差の補正が難しくなると共に、負の屈折面の曲率が大きくなるためコマ収差や色収差等の諸収差が大きくなる。そこで、本実施形態では、絞りSの手前に正レンズL2を配置して負レンズL1による強い負のパワーを第一のレンズ群G1内で打ち消す構成を採用している。
【0035】
また、正レンズL2は、負レンズL1を広視野角化することで生じやすくなる像面倒れによる観察視野周辺の解像度の低下を有効におさえるべく、物体側の面が平面であることが望ましい。
【0036】
第二のレンズ群G2は、絞りSよりも像側に配置されたレンズ群である。第二のレンズ群G2は、物体側から順に、正レンズL3、負レンズL4と正レンズL5とを接合した接合レンズCLを少なくとも有している。第二のレンズ群G2は、第一のレンズ群G1によって取り込まれた広範囲に亘る被写体を固体撮像素子の受光面上で結像させるため、全体として正のパワーを有している。なお、正のパワーを持つ第二のレンズ群G2において、正レンズL3に、像側に凹面を向けたレンズを採用した場合、射出角度が大きくなってしまう。そのため、十分な射出瞳距離を確保することが難しい。かかる問題を避けるべく、本実施形態では、正レンズL3は、像側に凸面を向けて配置されている。また、第一のレンズ群G1の負のパワーを広視野角化のために強めるほど第一のレンズ群G1内で発生する倍率色収差が大きくなる。第一のレンズ群G1内で発生した倍率色収差を効率良く補正するため、本実施形態では、軸外光線が最も高い位置を通る第二のレンズ群G2内に接合レンズCLを配置する構成を採用している。
【0037】
以下において、説明の便宜上、各光学部品の物体側の面、像側の面をそれぞれ、第一面、第二面と記す。また、絞りSは、光軸AXを中心とした所定の円形開口を有する板状部材、又は第一のレンズ群G1の絞りSに最も近いレンズ面(
図2の構成例においては、正レンズL2の第二面r4)であって光軸AXを中心とした所定の円形領域以外にコーティングされた遮光膜である。絞りSの厚みは、負レンズL1や正レンズL2等の各光学レンズの厚みと比べて非常に薄く、内視鏡用対物レンズ100の光学性能を計算する上で無視しても差し支えない。そのため、本明細書においては、絞りSの厚みを0とみなして説明を進める。
【0038】
内視鏡用対物レンズ100は、第一のレンズ群G1の焦点距離をf
F(単位:mm)と定義し、全系の(第一のレンズ群G1と第二のレンズ群G2の合成)焦点距離をf(単位:mm)と定義し、負レンズL1の第一面の曲率半径をR
1(単位:mm)と定義し、負レンズL1の第二面の曲率半径をR
2(単位:mm)と定義した場合に、次の条件(1)、(2)
−3.5≦f
F/f≦−1.5・・・(1)
1.3≦SF≦1.6・・・(2)
但し、SF=(R
1+R
2)/(R
1−R
2)
を満たすように構成されている。
【0039】
条件(1)は、第一のレンズ群G1の焦点距離f
Fと全系の焦点距離fとの比を規定している。条件(1)の上限を超える場合、内視鏡用対物レンズ100の小径化設計に適するものの、第一のレンズ群G1内の負のパワーが過大であるため、広視野角設計を試みるとコマ収差や色収差等の諸収差を良好に補正するのが難しい。また、第二のレンズ群G2の倍率を高く設定せざるを得ないため、組立時の第一のレンズ群G1と第二のレンズ群G2との群間隔の誤差に伴う第二のレンズ群G2の倍率変化をおさえることが難しい。倍率変化に伴う視野角変化が大きいため、仕様を満足する視野角の保証が難しい。
【0040】
条件(1)の下限を下回る場合、諸収差の補正には有利であるものの、内視鏡用対物レンズ100の外径をおさえて設計することが難しく、小型化に不向きである。また、第一のレンズ群G1の倍率を高く設定せざるを得ないため、第一のレンズ群G1が光軸AXに対して偏心して組み付けられた際の像面倒れが大きく、観察視野周辺で画質劣化が生じやすい。
【0041】
条件(2)は、負レンズL1の形状を規定している。条件(2)の上限を超える場合、周辺像高における画角変化が非常に緩やかで(すなわち、観察視野周辺で倍率が非常に高くなり)周辺解像度が高くなる。この場合、観察視野周辺に表示される管壁等を高解像度で観察できるため好適と思われる。しかし、その代償として、電子スコープを管腔内に押し進める際の既存の挿入感(例えば視野角140°の電子スコープを挿入中に得られていた挿入感)が失われる。ここでいう挿入感とは、術者が電子スコープを体腔内にどの程度挿入したかを画面に表示される映像を通じて把握する感覚をいう。条件(2)の上限を超える場合は、電子スコープ1を管腔内に押し進める際に観察視野周辺に表示される管壁等の流れが速すぎるため、既存の電子スコープの操作に慣れている術者にとっては電子スコープ1の挿入量を把握するのが難しい。また、負レンズL1は、第一面の曲率半径が小さくなり第一面の突出量が増えるため、洗浄性が低下すると共に電子スコープ1管理時に他の構造物等に衝突して破損するリスクが高くなる。なお、第一面の突出量は、第一面の光軸AX上での接平面と第一面の有効光束径の最周縁との、光軸AX方向の距離と定義される。
【0042】
条件(2)の下限を下回る場合、周辺像高における画角変化が急激で(すなわち、観察視野周辺での倍率が低く)、既存の電子スコープとの挿入感の差が少ないため、電子スコープ1が扱いやすくなる。しかし、その代償として、管壁等が表示される観察視野周辺の解像度が低下するため、管腔観察に適さない。また、負レンズL1は、第一面の曲率半径が大きくなり第一面の突出量が少なくなるため、洗浄性が改善すると共に破損リスクが軽減する一方、第一面への入射角が大きいため光量損失が生じやすい。
【0043】
条件(1)、(2)が同時に満たされる場合、内視鏡用対物レンズ100を小径におさえつつ広視野角に設計した場合も、コマ収差や色収差等の諸収差が良好に補正される。また、既存の電子スコープの挿入感を損なうことなく観察視野周辺で高解像度を維持することができる。また、組立誤差に起因する視野角変化や像面倒れが有効におさえられる。更に、電子スコープ1の洗浄性や取扱易さを改善しつつも光量損失が有効におさえられる。また、諸収差の補正に非球面レンズが必須ではないため、設計開発の負担が軽減すると共に加工が容易である。
【0044】
内視鏡用対物レンズ100は、負レンズL1の焦点距離をf
1と定義した場合に、次の条件(3)
−1.8≦f
1/f≦−1.1・・・(3)
を満たす構成としてもよい。
【0045】
条件(3)は、負レンズL1の焦点距離f
1と全系の焦点距離fとの比を規定している。条件(3)が満たされる場合、視野角を広げた場合に懸念される観察視野周辺の光学性能の劣化がより一層好適におさえられる。条件(3)の上限を超える場合、負レンズL1のパワーが強いため、非点収差と色収差を良好に補正することが難しく周辺解像度が低下する。条件(3)の下限を下回る場合は、負レンズL1のパワーが弱いため、有効光束半径をおさえつつ視野角を広げるといった設計に不向きである。
【0046】
内視鏡用対物レンズ100は、正レンズL3の焦点距離をf
3と定義した場合に、次の条件(4)
2.0≦f
3/f≦4.0・・・(4)
を満たす構成としてもよい。
【0047】
条件(4)は、正レンズL3の焦点距離f
3と全系の焦点距離fとの比を規定している。条件(4)が満たされる場合、像面湾曲を、予定する被写体(ここでは大腸の管壁等)の観察に適した状態に保ちつつ視野角を広げることができる。条件(4)の上限を超える場合、内視鏡用対物レンズ100全体として正のパワーが強いため、ペッツバール和が大きくなり、観察対象の管腔径が細いときに像面がアンダーに傾きやすい。そのため、管壁等が表示される観察視野周辺の解像度が低下して、管壁等を鮮明な映像で観察するのが難しい。また、正レンズL3の第一面の曲率が小さくなるため、コマ収差が増加してその補正が難しくなる。条件(4)の下限を下回る場合は、内視鏡用対物レンズ100全体として正のパワーが弱いため、ペッツバール和が小さくなり、観察対象の管腔径が太いときに像面がオーバーに傾きやすい。そのため、管壁等が表示される観察視野周辺の解像度が低下して、管壁等を鮮明な映像で観察するのが難しい。オーバーに傾いた像面を補正するには、例えば接合レンズCLを構成する負レンズL4のパワーを強くするために接合面の曲率半径を小さく設定せざるを得ない。この場合、加工性が悪くなるという欠点がある。なお、本実施形態で観察を予定する管腔の径の範囲は、管腔径をΦと定義し、結像面(固体撮像素子の受光面)における最大像高をyと定義すると、次に示す通りである。
10y≦Φ≦20y
【0048】
内視鏡用対物レンズ100は、最大像高yよりも低い中間像高をy
iと定義し、最大像高yに対応する半画角をω
mと定義し、中間像高y
iに対応する半画角をω
iと定義した場合に、次の条件(5)
1.3×sin(ω
i/1.3)≦y
i/f≦3.0×sin(ω
i/3.0)・・・(5)
但し、60°≦ω
i≦ω
m
を満たす構成としてもよい。条件(5)を規定する半画角は、内視鏡用対物レンズ100のうち最も物体側の面(負レンズL1の第一面)に入射する入射光線と光軸AXとがなす傾角と定義される。
【0049】
図21は、条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
図21中、内視鏡用対物レンズ100のうち最も物体側の面(負レンズL1の第一面)、最も像側の面(接合レンズCLを構成する正レンズL5の第二面)をそれぞれ、第1面、最終面と記す。半画角ω
iからω
mの視野範囲は、管腔観察において管壁等が写る注視領域である。以下、この視野範囲を「管壁視野範囲」と記す。また、管壁視野範囲に対応する結像面上の範囲(中間像高y
iから有効画素領域の最周縁まで)を「管壁撮像範囲」と記す。条件(5)の上限を超える場合、管壁撮像範囲が広いため、管壁視野範囲の被写体を高解像度で撮像することができる。しかし、その代償として、管壁視野範囲よりも内側の視野中心付近における解像度の低下が避けられない。例えば病変部を発見して視野中心に寄せた場合、当該病変部を高解像度で撮像することができない。条件(5)の下限を下回る場合は、管壁撮像範囲が狭いため、管壁視野範囲の被写体を高解像度で撮像することができず、管腔観察には不向きである。条件(5)が満たされる場合、管壁視野範囲の被写体を高解像度で撮像できると共に視野中心付近の解像度の低下が有効に避けられる。
【0050】
負レンズL1の第一面は先端部12の外観に露出するため、内視鏡検査終了後に洗浄液を用いて洗浄される。この種の洗浄液の中には、表面処理を劣化させる成分を含むものがある。そのため、負レンズL1の第一面には反射防止コートが施されていない。よって、表面反射による光量損失が懸念される。そこで、内視鏡用対物レンズ100は、次の条件(6)
θ≦75°・・・(6)
を満たすように構成されてもよい。条件(6)を規定する入射角θは、最大像高yに入射する光線の、負レンズL1の第一面への入射角と定義される。入射角は、入射光線と、該入射光線と入射面との交点における接平面の法線とがなす角度で表される。
【0051】
条件(6)が満たされる場合、表面反射による光量損失が有効におさえられる。条件(6)を外れる場合は、屈折率が例えば1.8を超える高屈折率硝材を負レンズL1に用いたときに30%を超える表面反射が生じて光量損失が著しい。すなわち、レンズ材料の選択の余地が狭くなるため望ましくない。
【0052】
内視鏡用対物レンズ100は、次の条件(7)
2.0≦R
1/y≦5.5・・・(7)
を満たす構成としてもよい。
【0053】
条件(7)が満たされる場合、負レンズL1においてコバ厚を十分に確保しつつ第一面における表面反射による光量損失を有効におさえることができる。負レンズL1のコバ厚を十分に確保することにより、先端部12の内部と外部とが誘電率の低い厚みのある材料を介して絶縁されることとなる。条件(7)の上限を超える場合、十分な絶縁性能を保証するに足るコバ厚を確保するのが難しい。また、負レンズL1の第一面への入射角が大きいため、表面反射による光量損失量が増加する。条件(7)の下限を下回る場合、負レンズL1の第一面は突出量が増えるため、洗浄性が低下すると共に電子スコープ1管理時に他の構造物等に衝突して破損するリスクが高くなる。また、負レンズL1の第二面の曲率半径を小さく設定せざるを得ず、加工性が悪くなる。
【0054】
内視鏡用対物レンズ100は、最大像高yにおける負レンズL1の有効光束半径をDと定義した場合に、次の条件(8)
2.0≦D/y≦3.0・・・(8)
を満たす構成としてもよい。
【0055】
条件(8)が満たされる場合、負レンズL1において第一面の突出量をおさえつつ表面反射による光量損失もおさえることができる。条件(8)の上限を超える場合、負レンズL1の第一面の突出量がおさえられる一方、該第一面への入射角が大きいため、表面反射による光量損失量が増加する。また、内視鏡用対物レンズ100の全長(光軸AX方向の寸法)をおさえることが難しく、先端部12の小型化に不向きである。条件(8)の下限を下回る場合は、負レンズL1の第一面において表面反射による光量損失がおさえられる一方、該第一面の突出量が大きくなり、洗浄性が低下すると共に電子スコープ1管理時に他の構造物等に衝突して破損するリスクが高くなる。
【0056】
次に、これまで説明した内視鏡用対物レンズ100の具体的数値実施例を6例説明する。各数値実施例1〜6の内視鏡用対物レンズ100は、
図1に示される電子スコープ1の先端部12に配置されている。
【実施例1】
【0057】
上述したように、本発明の実施例1の内視鏡用対物レンズ100の構成は、
図2に示される通りである。本実施例1の内視鏡用対物レンズ100(及びその後段に配置された光学部品)の具体的数値構成(設計値)は、表1に示される。表1に示される面番号nは、絞りSに対応する面番号5を除き、
図2中の面符号rnに対応する。表1において、R(単位:mm)は光学部材の各面の曲率半径を、D(単位:mm)は光軸AX上の光学部材厚又は光学部材間隔を、N(d)はd線(波長588nm)の屈折率を、νdはd線のアッベ数を、それぞれ示す。表2は、内視鏡用対物レンズ100の仕様(Fナンバー、全系の焦点距離(単位:mm)、光学倍率、半画角(単位:deg)、像高(単位:mm))を示す。
【0058】
【表1】
【表2】
【0059】
図3(a)〜(d)は、本実施例1の内視鏡用対物レンズ100の各種収差図である。具体的には、
図3(a)は、d線、g線(436nm)、C線(656nm)での球面収差及び軸上色収差を示す。
図3(b)は、d線、g線、C線での倍率色収差を示す。
図3(a)、(b)中、実線はd線での収差を、点線はg線での収差を、一点鎖線はC線での収差を、それぞれ示す。
図3(c)は、非点収差を示す。
図3(c)中、実線はサジタル成分を、点線はメリディオナル成分を、それぞれ示す。
図3(d)は、歪曲収差を示す。
図3(a)〜(c)の各図の縦軸は像高を、横軸は収差量を、それぞれ示す。また、
図3(d)の縦軸は像高を、横軸は歪曲率を、それぞれ示す。本実施例1の内視鏡用対物レンズ100は、表1、2、
図3(a)〜(d)に示されるように、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正されていることが分かる。なお、本実施例1の各表又は各図面についての説明は、以降の各数値実施例で提示される各表又は各図面においても適用する。
【実施例2】
【0060】
図4は、本実施例2の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の配置を示す断面図である。本実施例2の内視鏡用対物レンズ100は、
図4に示されるように、本実施例1の内視鏡用対物レンズ100と同じ枚数構成である。
図5(a)〜(d)は、本実施例2の内視鏡用対物レンズ100の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表3は、本実施例2の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の具体的数値構成を、表4は、本実施例2の内視鏡用対物レンズ100の仕様を、それぞれ示す。本実施例2の内視鏡用対物レンズ100は、表3、4、
図5(a)〜(d)に示されるように、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正されていることが分かる。
【0061】
【表3】
【表4】
【実施例3】
【0062】
図6は、本実施例3の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の配置を示す断面図である。本実施例3の内視鏡用対物レンズ100は、次の表6に示されるように、半画角が95°を超えている。そのため、本実施例1又は2と同じレンズ配置では像面湾曲の良好な補正が難しい。そこで、本実施例3の内視鏡用対物レンズ100は、
図6に示されるように、正レンズL3と接合レンズCLとの間に正レンズL6を配置することにより、像面湾曲を良好に補正している。すなわち、本実施例3において第二のレンズ群G2は、正レンズL3、正レンズL6、接合レンズCLの三枚構成である。なお、第一のレンズ群G1については、本実施例1と同じ枚数構成である。
図7(a)〜(d)は、本実施例3の内視鏡用対物レンズ100の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表5は、本実施例3の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の具体的数値構成を、表6は、本実施例3の内視鏡用対物レンズ100の仕様を、それぞれ示す。本実施例3の内視鏡用対物レンズ100は、表5、6、
図7(a)〜(d)に示されるように、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正されていることが分かる。
【0063】
【表5】
【表6】
【実施例4】
【0064】
図8は、本実施例4の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の配置を示す断面図である。本実施例4の内視鏡用対物レンズ100は、
図8に示されるように、本実施例1の内視鏡用対物レンズ100と同じ枚数構成である。
図9(a)〜(d)は、本実施例4の内視鏡用対物レンズ100の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表7は、本実施例4の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の具体的数値構成を、表8は、本実施例4の内視鏡用対物レンズ100の仕様を、それぞれ示す。本実施例4の内視鏡用対物レンズ100は、表7、8、
図9(a)〜(d)に示されるように、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正されていることが分かる。
【0065】
【表7】
【表8】
【実施例5】
【0066】
図10は、本実施例5の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の配置を示す断面図である。本実施例5の内視鏡用対物レンズ100は、
図10に示されるように、本実施例1の内視鏡用対物レンズ100と同じ枚数構成である。
図11(a)〜(d)は、本実施例5の内視鏡用対物レンズ100の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表9は、本実施例5の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の具体的数値構成を、表10は、本実施例5の内視鏡用対物レンズ100の仕様を、それぞれ示す。本実施例5の内視鏡用対物レンズ100は、表9、10、
図11(a)〜(d)に示されるように、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正されていることが分かる。
【0067】
【表9】
【表10】
【実施例6】
【0068】
図12は、本実施例6の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の配置を示す断面図である。本実施例6の内視鏡用対物レンズ100は、
図12に示されるように、本実施例1の内視鏡用対物レンズ100と同じ枚数構成である。
図13(a)〜(d)は、本実施例6の内視鏡用対物レンズ100の各種収差(球面収差、軸上色収差、倍率色収差、非点収差、歪曲収差)図である。表11は、本実施例6の内視鏡用対物レンズ100を含む各光学部品の具体的数値構成を、表12は、本実施例6の内視鏡用対物レンズ100の仕様を、それぞれ示す。本実施例6の内視鏡用対物レンズ100は、表11、12、
図13(a)〜(d)に示されるように、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正されていることが分かる。
【0069】
【表11】
【表12】
【0070】
(比較検証)
表13は、本実施例1〜6に比較例1を加えた7つの各例において条件(5)を除く各条件を適用したときに算出される値の一覧表である。条件(5)については、各例における像高と画角との関係を
図14〜20に示す。なお、比較例1は、特許文献1の実施例1である。
【0071】
【表13】
【0072】
本実施例1〜6の内視鏡用対物レンズ100は、表13に示されるように条件(1)、(2)を同時に満たすことにより、各本実施例の説明で提示した図又は表に示す通り、小型かつ広視野角でありつつも各種収差が良好に補正される。これに対して、比較例1の内視鏡用対物レンズは、表13に示されるように条件(2)を満たさない。そのため、比較例1において外形寸法をおさえつつ光学性能を維持するように設計した場合、視野角を広げるのは難しい。別の側面によれば、比較例1において視野角を広げる(例えば140°を超える視野角を得るため)には、光学性能と小型化の少なくとも一方を犠牲にしなければならない。例えば光学性能を犠牲にした場合、管壁等が表示される観察視野周辺において解像度の著しい低下が避けられない。
【0073】
本実施例1〜6の内視鏡用対物レンズ100は、表13に示されるように、条件(3)、(4)、(6)〜(8)も更に満たす。そのため、本実施例1〜6では、各条件を満たすことによる更なる効果が奏される。これに対して比較例1の内視鏡用対物レンズは、表13に示されるように、条件(3)、(7)、(8)を満たさない。比較例1では、例えば条件(3)の上限を超えるため、非点収差と色収差を良好に補正することが難しく、観察視野周辺において解像度の更なる低下が起こり得る。
【0074】
図14〜19はそれぞれ、本実施例1〜6において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
図20は、比較例1において条件(5)を規定する像高と画角との関係を示す図である。
図14〜20の各図の縦軸は、像高(単位:mm)を示し、横軸は、画角(単位:deg)を示す。各図中、実線(太線)は、各例における条件(5)の値を示し、上下二本の実線(細線)は、条件(5)の上下限を示す。
【0075】
本実施例1〜5の内視鏡用対物レンズ100は、
図14〜18に示されるように、仕様を満たす画角内において条件(5)を満たす。そのため、管壁視野範囲の被写体を高解像度で撮像できると共に視野中心付近の解像度の低下が有効に避けられる。本実施例6の内視鏡用対物レンズ100は、
図19に示されるように、仕様を満たす画角内において条件(5)の上限を僅かに超えるため、視野中心付近の解像度が低下する。比較例1の内視鏡用対物レンズ100は、
図20に示されるように、仕様を満たす画角内において条件(5)の下限を下回るため、管壁視野範囲の被写体を高解像度で撮像することができず、管腔観察には不向きであることが分かる。
【0076】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。