特許第5668080号(P5668080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5668080真空ポンプ用の保護網及びそれを備えた真空ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668080
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】真空ポンプ用の保護網及びそれを備えた真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   F04D19/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-545635(P2012-545635)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】JP2011067317
(87)【国際公開番号】WO2012070282
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-261624(P2010-261624)
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】奥寺 智
(72)【発明者】
【氏名】坂口 祐幸
【審査官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4250353(JP,B2)
【文献】 国際公開第2008/19614(WO,A1)
【文献】 特開2006−299968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプにおける吸気口の内周部に凹設された固定用溝に保護網の周縁部に形成されたリムを嵌入し、さらに前記固定用溝に止め輪を押し込むことにより前記吸気口の部位に前記保護網を張設するようにした真空ポンプ用の保護網であって、
前記リムの所々に前記止め輪に係止される係止部を前記リムに対しほぼ直角に立設させたことを特徴とする真空ポンプ用の保護網。
【請求項2】
上記保護網は、金網部と、上記リムの内側に架け渡された補強用のリブ部とを備えるとともに前記金網部と前記リブ部とは単一枚の部材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ用の保護網。
【請求項3】
請求項1又は2記載の真空ポンプ用の保護網を備えたことを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ用の保護網及びそれを備えた真空ポンプに関するものであり、特に、固定用溝に対する保護網の止着強度を十分に高めて吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみを十分に抑えることが可能な真空ポンプ用の保護網及びそれを備えた真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ターボ分子ポンプをはじめとする高速回転型の真空ポンプにおいては、ケーシング上端部のフランジ部内側に形成されている吸気口から異物がポンプ機器内の回転体に侵入しないように、その吸気口に異物侵入防止用の保護網が装着されている。前記フランジ部がISO規格のフランジの場合、スペースの問題から、保護網は吸気口の部位にねじ止めにより固定することができない。また、保護網は、所定の強度がないと、吸気口からポンプ内に大気が突入したときポンプ内側にたわんで回転翼等のポンプ内機器に接触してポンプ故障を生じさせるおそれがある。このため、保護網には所定の強度が求められている。
【0003】
このような事情において、真空ポンプ用の保護網及び該保護網の吸気口の部位への固定構造の第1の従来技術としては、例えば、図6図8の(a)、(b)に示すようなものがある。図6は、周縁部に該周縁部に沿った周縁リム1aが形成された金網1を示し、図7は、周縁部の周縁プレート部2aと該周縁プレート部2aの内側に架け渡された十字状のリブ部2bとを備えた金属製の補強プレート2を示している。真空ポンプ用の保護網は、この別部品として形成された金網1と補強プレート2とを重ねあわせて適宜にスポット溶接を施し、この両部品を一体とした複合部品により形成されている。
【0004】
図8の(a)、(b)は、金網1と補強プレート2との複合部品として形成された保護網3の吸気口4の部位への固定構造を示している。真空ポンプにおけるケーシング5上部のフランジ部6内側には環状の固定用溝7が凹設されている。上記の複合部品からなる保護網3は、周縁リム1aと周縁プレート部2aとの重合部が固定用溝7に嵌め入れられ、さらに環状の止め輪8が押し込まれて、保護網3が吸気口4の部位に固定されている。該吸気口4の部位に固定された保護網3の直ぐ下方における真空ポンプ内には、ロータ9に展設された回転翼10が備えられている(図8(a))。
【0005】
また、図9は、真空ポンプ用の保護網及び該保護網の吸気口の部位への固定構造の第2の従来技術を示している。この従来技術では、真空ポンプ用の保護網11が一つの部品で実現され、該保護網11における鍔部の部分が所要角度だけ傾斜状に立ち上げられて傾斜状鍔部11aが形成されている。該傾斜状鍔部11aは、その高さhが固定用溝7の嵌入幅(図9における上下方向幅)に対応した高さに形成され、止め輪を用いずに、この傾斜状鍔部11aの部分を固定用溝7に押し込むことにより、該傾斜状鍔部11aが固定用溝7に緊合して保護網11が吸気口4の部位に固定されている。
【0006】
吸気口4からポンプ内に大気が突入したとき、傾斜状鍔部11aは、図9中、仮想線で示すような変形傾向が生じて該傾斜状鍔部11aの上縁部が固定用溝7内の上面に緊密に接して保護網11の落下が防止されるとともに該保護網11がポンプ内側にたわむのが抑えられる。
【0007】
上記のような真空ポンプ用の保護網に関連する従来技術として、例えば、次のような真空ポンプが知られている。この従来技術は、ターボ分子ポンプ型の真空ポンプの基体をなすベースの下方フランジ部にケーシング基部がねじ止めにより固定されている。ケーシング中央部の回転軸の上端にはロータが取付けられ、このロータにケーシングの内周側に向けて回転翼が一定の間隔を有して放射状に展設されている。他方、ケーシングの内周側にはリング状のスペーサが積層状に多段に配設され、各スペーサ間に基部が挟持された固定翼がロータ側に向けて延設されている。このように回転翼と固定翼とが、それぞれ交互に内側と外側から重なり合ってターボ機構が構成されている。保護網は、吸気口の部位に装着するために周囲に環状の板(リング)が形成され、この環状のリング部がケーシング上部の段部と最上段スペーサとの間に挟持されて吸気口の部位に保持されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−247790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1の従来技術においては、保護網が、別部品として形成された金網と補強プレートとを重ね合わせた複合部品により形成されていたため、コスト高についていた。また、吸気口の部位への固定構造が、金網側の周縁リムと補強プレート側の周縁プレート部とを重合させた偏平形状部分を固定用溝に嵌入し、この後、止め輪を押し込むことにより行われていた。このため、固定用溝に対する保護網の止着強度が不十分になり易く、吸気口からポンプ内に突入する大気の勢いによっては、保護網のポンプ内側へのたわみ量が大きくなってポンプ内機器に接触するおそれがあるとともに、固定用溝への嵌入部が外れて保護網が落下するおそれもあった。
【0010】
第2の従来技術においては、傾斜状鍔部の高さhを固定用溝の嵌入幅に対応した高さに形成し、この傾斜状鍔部の部分を固定用溝に押し込むことにより、該傾斜状鍔部を固定用溝に緊合させて保護網を吸気口の部位に固定するようにしている。このため、傾斜状鍔部の傾斜角度及び高さhの寸法管理等が難しく、また、傾斜状鍔部を固定用溝に押込んで該傾斜状鍔部を固定用溝に緊合させる作業もかなりの難しさを伴い、このような点でコスト高を招いていた。
【0011】
特許文献1に記載の従来技術においては、ケーシングの内周側にリング状のスペーサが積層状に多段に配設され、保護網は、その環状のリング部が最上段スペーサとケーシング上部の段部との間に挟持されて吸気口の部位に固定されている。このため、保護網の交換時等で、保護網の取外しが必要とされる場合は、ベースの下方フランジ部に対するケーシング基部のねじ止めを外してケーシングを引き抜く等の大変な作業が必要となる。
【0012】
そこで、単一枚で所要の強度を有する保護網とすることで該保護網のコスト低減を図り、固定用溝に対する保護網の止着強度を十分に高めて吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみを抑えてポンプ内機器への接触を防止するとともに保護網の落下を防止し、吸気口の部位への保護網の取付けが容易で且つ取外しも容易とするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、真空ポンプにおける吸気口の内周部に凹設された固定用溝に保護網の周縁部に形成されたリムを嵌入し、さらに前記固定用溝に止め輪を押し込むことにより前記吸気口の部位に前記保護網を張設するようにした真空ポンプ用の保護網であって、前記リムの所々に前記止め輪に係止される係止部を前記リムに対しほぼ直角に立設させた真空ポンプ用の保護網を提供する。
【0014】
この構成によれば、リムの所々に該リムに対しほぼ直角に立設された係止部が止め輪に係止されて固定用溝に対する保護網の止着強度が十分に強固なものになる。したがって吸気口からポンプ内に大気が突入したとき保護網のポンプ内側へのたわみが抑えられるとともに保護網の落下が防止される。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記保護網は、金網部と、上記リムの内側に架け渡された補強用のリブ部とを備えるとともに前記金網部と前記リブ部とは単一枚の部材で形成されている真空ポンプ用の保護網を提供する。
【0016】
この構成によれば、保護網を、金網部と補強用のリブ部とを一体として形成したことで保護網自身の強度が高められて、吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみが一層確実に抑えられる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の真空ポンプ用の保護網を備えた真空ポンプを提供する。
【0018】
この構成によれば、固定用溝に対する止着強度が十分に強固で、且つ保護網自身の強度も高められた保護網が吸気口の部位に張設されている。したがって吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみが確実に抑えられる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、固定用溝に対する保護網の止着強度を十分に高めることができる。この結果、吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみを抑えることができて、ポンプ内機器への接触を防止することができるとともに保護網の落下を防止することができる。また、リムに対しほぼ直角に立設させた係止部自身を固定用溝に押込んで該係止部を固定用溝に緊合させるのではないので、吸気口の部位への保護網の取付けが容易で且つ取外しも容易になるという利点がある。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、保護網を、別部品として形成された金網と補強プレートとを重ね合わせた複合部品として形成することなく、単一枚で所要の強度としたことで保護網のコスト低減を図ることができるという利点がある。
【0021】
請求項3記載の発明は、固定用溝に対する止着強度が十分に強固で、且つ保護網自身の強度も高められた保護網が吸気口の部位に張設されていることで、吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみを確実に抑えることができて保護網が回転翼等のポンプ内機器に接触することによるポンプ故障を防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例として示す真空ポンプの縦断面図。
図2】本発明の実施例に係る真空ポンプ用の保護網に適用される保護網の平面図。
図3図2の保護網における係止部部分の拡大図であり、(a)は正面方向から見た斜視図、(b)は側面方向から見た斜視図。
図4図2の保護網を固定用溝に止着する際に用いられる止め輪の平面図。
図5図2の保護網の吸気口の部位への固定構造を一部省略して示す横断面図。
図6】第2の従来技術における金網の平面図。
図7】同上従来技術における補強プレートの平面図。
図8】同上従来技術における保護網の吸気口の部位への固定構造を示す図であり、(a)は固定構造の全体を示す横断面図、(b)は図(a)における固定用溝への保護網の止着部分を拡大して示す横断面図。
図9】第2の従来技術における固定用溝への保護網の止着部分を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、単一枚で所要の強度を有する保護網とすることで該保護網のコスト低減を図り、固定用溝に対する保護網の止着強度を十分に高めて吸気口からポンプ内に大気が突入したときの保護網のポンプ内側へのたわみを抑えてポンプ内機器への接触を防止するとともに保護網の落下を防止し、吸気口の部位への保護網の取付けが容易で且つ取外しも容易とするという目的を達成するために、真空ポンプにおける吸気口の内周部に凹設された固定用溝に保護網の周縁部に形成されたリムを嵌入し、さらに前記固定用溝に止め輪を押し込むことにより前記吸気口の部位に前記保護網を張設するようにした真空ポンプ用の保護網であって、前記リムの所々に前記止め輪に係止される係止部を前記リムに対しほぼ直角に立設させることにより実現した。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の好適な実施例を図2乃至図5を参照して説明する。なお、図4及び図5において、前記図8の(a)、(b)における構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符合を以って示し、重複した説明を省略する。
【0025】
図1は本発明に係る真空ポンプの縦断面図である。
図1において、真空ポンプ100は、吸気口110と排気口120とを有する筐体130を備えている。該筐体130内には、上部にターボ分子ポンプ部140と、その下方に円筒形のネジ溝ポンプ部150が設けられているとともに、該ターボ分子ポンプ部140内と該ネジ溝ポンプ部150内を通って前記吸気口110と前記排気口120を連通してなる排気経路240が形成されている。
【0026】
前記排気通路240は、より具体的には、前記ターボ分子ポンプ部140の後述する相対向しているロータ170の外周面と前記筐体130の内周面との間の隙間、及び前記ネジ溝ポンプ部150の後述する円筒ロータ210の外周面とステータ230の内周面との間の隙間を相互に連通させるとともに、前記ターボ分子ポンプ部140側の隙間上端側を前記吸気口110に連通させ、かつ、前記ネジ溝ポンプ部150側の隙間下端側を前記排気口120に連通して形成されている。
【0027】
前記ターボ分子ポンプ部140は、回転軸160に固設されたアルミ合金製のロータ170の外周面に突設された多数の回転翼180,180…と、前記筐体130の内周面に突設された多数の固定翼190,190…との組み合わせからなる。
【0028】
前記ネジ溝ポンプ部150は、前記ターボ分子ポンプ部140におけるロータ170の下端部の円筒ロータ210と、該円筒ロータ210の外周と小隙間を有して対向し、該小隙間と共に前記排気経路240の一部を形成してなるネジ溝220が設置されたステータ230とからなる。該ネジ溝220は、下方へ行くに従って深さが浅くなるようにして形成されている。また、該ステータ230は、前記筐体130の内面に固定されている。そして、前記ネジ溝220の下端は前記排気経路240の最下流側において前記排気口120に連通される。
【0029】
また、前記回転軸160の中間部には、モータ筐体250内に設けられたインダクションモータ等の高周波モータ260のモータロータ260aが固定されている。該回転軸160は、磁気軸受で支承され、上部及び下部に保護軸受270,270が設けられている。
【0030】
次に、図1に示す真空ポンプの動作について説明する。前記高周波モータ260の駆動によって前記吸気口110から流入した気体は、分子流あるいはそれに近い中間流状態にあり、その気体分子は前記ターボ分子ポンプ部140の回転する前記回転翼180,180…と前記筐体13から突設した前記固定翼190,190・・・との作用より、下方向に運動量が与えられ、該回転翼180,180…の高速回転に伴って下流側へ気体が圧縮移動する。
【0031】
また、圧縮移動された気体は、前記ネジ溝ポンプ部150において、回転する前記円筒ロータ210と、小間隙を有して形成された前記ステータ230に沿って下流に行くにしたがって深さが浅くなる前記ネジ溝220とに導かれるようにして、粘性流状態まで圧縮されながら前記排気通路240内を流れ、前記排気口120から排出される。
【0032】
次に、本実施例に係る真空ポンプ用の保護網の構成を説明する。図2乃至図4において、本実施例における保護網12は、1枚の金属板にエッチング処理を施すことにより、周縁部にリム12aを備えた金網部12bと前記リム12aの内側に架け渡された補強用の十字状のリブ部12cとが一体となった単一枚で形成されている。金網部12bには、例えば蜂の巣状に多数の六角孔が穿孔されている。
【0033】
前記リム12aの所々には、後述する止め輪に係止される係止部12dが、図3の(a)、(b)に示すように、該リム12aに対しほぼ直角に立設されている。係止部12dは、前記エッチング処理の際に、リム12aから外方に突出した突出部を形成し、該突出部をリム12aに対しほぼ直角に折曲げることにより形成されている。図2に示すように、係止部12dは、保護網12の周縁部に、2個を一組とした四組がそれぞれ等間隔をおいて形成されている。
【0034】
図4は、止め輪8を示している。止め輪8は、一部が切り欠かれ、その切欠部8aに適宜の間隙が形成されている。
【0035】
次に、図5を用いて上述のように構成された真空ポンプ用の保護網の吸気口の部位への固定及び作用を説明する。リム12aの外縁には、該リム12aに対し、ほぼ直角に係止部12dが立設されている。このようなリム12aを吸気口4の内周部に凹設された固定用溝7に嵌入し、さらに該固定用溝7に止め輪8を押し込む。
【0036】
このとき、止め輪8は、その切欠部8aの部分に形成されている間隙が縮減するように固定用溝7に押し込まれることで拡開傾向が生じ、この拡開傾向が係止部12dを、さらに押し込むように作用して該係止部12dを備えたリム12aが、固定用溝7に強固に止着される。このような係止部12dを備えたリム12a部分の固定用溝7への止着態様により保護網12が吸気口4の部位に固定される。
【0037】
また、保護網12は、金網部12bと補強用のリブ部12cとが一体に形成されていることで保護網12自身も強度が高められている。したがって吸気口4からポンプ内に大気が突入したとき保護網12のポンプ内側へのたわみが十分に抑えられるとともに保護網12の落下が防止される。
【0038】
前述したように、係止部12dは、保護網12の周縁部に、2個を一組とした四組がそれぞれ等間隔をおいて形成され、この四組の部分の係止部12dが止め輪8で押し込まれて固定用溝7に止着されている。また、係止部12d自身を固定用溝7に押込んで該係止部12dを固定用溝7に緊合させて止着しているのではなく、係止部12dを止め輪8で押込んで止着しているので、止め輪8の取付け又は取外しのみで吸気口4の部位への保護網12の取付け及び取外しが容易になる。
【0039】
上述したように、本実施例に係る真空ポンプ用の保護網及びそれを備えた真空ポンプにおいては、保護網12を、別部品として形成された金網と補強プレートとを重ね合わせた複合部品として形成することなく、単一枚で金網部12bと補強用の十字状のリブ部12cとを一体に形成して所要の強度としたことで保護網12のコスト低減を図ることができる。
【0040】
固定用溝7に対する保護網12の止着強度を十分に高めることができる。この結果、吸気口4からポンプ内に大気が突入したときの保護網12のポンプ内側へのたわみを抑えることができて、保護網12が回転翼等のポンプ内機器に接触することによるポンプ故障を防止することができるとともに保護網12の落下を防止することができる。
【0041】
リム12aに対しほぼ直角に立設させた係止部12d自身を固定用溝7に押込んで該係止部12dを固定用溝7に緊合させるのではないので、吸気口4の部位への保護網12の取付けが容易で且つ取外しも容易になる。
【0042】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
単一枚で所要の強度を有する保護網とすることで該保護網のコスト低減を図り、固定用溝に対する保護網の止着強度を十分に高めて吸気口から気体吸入機構内に大気が突入したときの保護網の気体吸入機構内側へのたわみを抑えて気体吸入機構内機器への接触を防止するとともに保護網の落下を防止し、吸気口の部位への保護網の取付けが容易で且つ取外しも容易とすることが不可欠な気体吸入機構全般に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 金網
2 補強プレート
3 保護網(従来)
4 吸気口
5 ケーシング
6 フランジ部
7 固定用溝
8 止め輪
9 ロータ
10 回転翼
11 保護網(従来)
12 保護網
12a リム
12b 金網部
12c リブ部
12d 係止部
100 真空ポンプ
110 吸気口
120 排気口
130 筐体
140 ターボ分子ポンプ部
150 ネジ溝ポンプ部
160 回転軸
170 ロータ
180 回転翼
190 固定翼
210 円筒ロータ
220 ネジ溝
230 ステータ
240 排気通路
250 モータ筐体
260 高周波モータ
260a モータロータ
270 保護軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9