(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロース系粘稠化剤が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される非イオン性界面活性剤である請求項1乃至3のいずれかに記載の粘膜適用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明におけるセルロース系粘稠化剤は、セルロースのヒドロキシル基を極性基もしく
は非極性基で置き換えることで得られるセルロース誘導体であって、水性組成物に粘性を
付与することができる化合物である。セルロースのヒドロキシル基を置換する官能基とし
てはメトキシル基、エトキシル基、ヒドロキシエトキシル基やヒドロキシプロポキシル基
等がある。セルロース誘導体を例示すると、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒド
ロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース
、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチ
ルセルロースまたはこれらの薬理学的に許容される塩などを挙げることができる。なかで
も好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメ
チルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはこ
れらの塩から選ばれる少なくとも1種である。ここで、薬理学的に許容される塩としては
、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ
土類金属、アルミニウムなどの金属との塩などが例示できる。
【0016】
また、本発明に用いるセルロース系粘稠化剤は、置換基の置換度や分子量に制限はない
が、例えば、重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ま
しくは1万〜10万程度のものを使用することができる。また、これらのセルロース系粘
稠化剤は、市販のものを用いることができ、これらの化合物を1種または2種以上を組み
合わせて使用してもよい。
【0017】
セルロース系粘稠化剤の粘膜適用組成物に対する使用量は、組成物に付与する所望の粘
度に応じて適宜設定することができ分子量や種類などによって異なるので一概に規定でき
ないが、通常、セルロース系粘稠化剤の組成物中の濃度として、0.001〜10%、好
ましくは0.005〜5%、さらに好ましくは0.01〜2%、特に好ましくは0.1〜
2%程度で用いることができる。
【0018】
本発明における非イオン性界面活性剤は、セルロース系粘稠化剤と配合することによっ
て粘膜適用組成物の粘度を低下させるが、特定の植物油とともに配合することによって粘
膜適用組成物の粘度低下を抑制できる。かかる非イオン性界面活性剤としては、通常当業
者が粘膜適用組成物に利用しうるものを用いることができ、例えば、非イオン性界面活性
剤であるポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)−ポリオキシプロピレン(以下
、POPともいう。)ブロックコポリマー (例えば、ポロクサマー407 、ポロクサマー23
5 、ポロクサマー188 など) ;ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブ
ロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20) ,
モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80) ,POEソルビタンモノステ
アレート(ポリソルベート60),POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65
) などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5 ,POE硬化ヒマ
シ油10 ,POE硬化ヒマシ油20 ,POE硬化ヒマシ油40 ,POE硬化ヒマシ油50、P
OE硬化ヒマシ油60 ,POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)
ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4) セチルエーテ
ルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどの
POEアルキルフェニルエーテル類などが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数
を示す。
【0019】
なかでも好ましくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー
、POEソルビタン脂肪酸エステル類又はPOE硬化ヒマシ油類から選ばれる非イオン性
界面活性剤であり、特に好ましくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロッ
クコポリマー、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である。
【0020】
非イオン性界面活性剤の眼科用組成物中における使用量は、界面活性剤の種類などによ
って異なるので一概に規定できないが、通常、0.0001〜5%、好ましくは0.00
1〜1%、より好ましくは0.001〜0.8%、特に好ましくは0.005〜0.5%
程度で用いられる。非イオン性界面活性剤と本発明の特定の植物油の割合は、植物油の種
類などによって異なるので一概に規定できないが、通常、植物油の総量1重量部に対して
、非イオン性界面活性剤を総量として、好ましくは0.5〜100重量部、より好ましく
は1〜50重量部、さらに好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは2〜8重量部程度
である。
【0021】
本発明の組成物では、特定の植物油、すなわち、ゴマ油、オリブ油、ダイズ油またはラ
ッカセイ油、アルモンド油、小麦胚芽油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワ
リ油、綿実油又はヤシ油から選ばれる少なくとも1種の植物油を必須成分として含有する
。
【0022】
ゴマ油とは、ゴマ科ゴマ属の植物(Sesamum indicum Linne(Pedaliaceae)等)の種子
から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得ることがで
きるが、例えば日本薬局方に収載されたゴマ油は(第14改正 日本薬局方解説書D-389〜3
90参照)、冷圧法で採取した油を炒らずに精製して得ることできる。
【0023】
オリブ油とは、モクセイ科オリーブ属の植物(Olea europaea Linne(Oleaceae)等)
の果実から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて果実から得るこ
とができるが、例えば日本薬局方に収載されたオリブ油は(第14改正 日本薬局方解説書
D-174〜177参照)、成熟果実を直ちに冷圧(加熱せずに搾油する)法により搾油し、その
後物理的なろ過や遠心分離で処理し、通常の精製工程に掛けて得ることができる。
【0024】
ダイズ油とは、マメ科ダイズ属(Glycine max Merrill(Leguminosae)等)の植物の種
子から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得ることが
できるが、例えば日本薬局方に収載されたダイズ油は(第14改正 日本薬局方解説書D-70
0〜701参照)、ダイズを破砕・圧扁後(冷圧又は温圧しても精油できる)、溶剤(ヘキサ
ン)による抽出法で採油することができる。
【0025】
ラッカセイ油とは、マメ科ラッカセイ属(Arachis hypogaea Linne(Leguminosae)等
)の植物の種子から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子か
ら得ることができるが、例えば、日本薬局方に収載されたラッカセイ油は(第14改正 日
本薬局方解説書D-1194〜1196参照)、種子をロールで粉砕し、加熱し、圧搾し、得られた
油をろ過し精製して得ることができる。
【0026】
アルモンド油とは、バラ科サクラ属(Prunus amygdalus Batsch(Rosaceae)等)の核
仁から得られる植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて核仁から得るこ
とができる(医薬品添加物規格1998 P97等参照)。
【0027】
小麦胚芽油とは、イネ科コムギ属(Triticum aestivum Linne(Gramdneae)等)の植物
の胚芽から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて胚芽から得るこ
とができる(医薬品添加物規格1998 P318等参照)。
【0028】
ツバキ油とは、ツバキ科ツバキ属(Camellia japonica Linne(Theaceae)等)の植物
の種子から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得るこ
とができるが、例えば、日本薬局方に収載されたツバキ油は(第14改正 日本薬局方解説
書D-778〜779参照)、天日又は人工乾燥し種皮を除いた種子を粉砕して蒸煮し圧搾し、そ
の後ろ過して精製して得られる。
【0029】
トウモロコシ油とは、イネ科トウモロコシ属(Zea mays Linne(Gramineae)等)の胚
芽から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて胚芽から得ることが
できるが、例えば、日本薬局方に収載されたトウモロコシ油は(第14改正 日本薬局方解
説書D-816〜817参照)、胚芽を穀粒から取り分け、急熱乾燥後圧搾し、圧搾かすをヘキサ
ンで抽出して採油することができる。
【0030】
ナタネ油とは、アブラナ科アブラナ属(Brassica campestris Linne subsp. napus Hoo
ker fil.et Anderson var. nippo-oleifera Makino(Cruciferae)等)の植物の種子から
得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得ることができる
が、例えば、日本薬局方に収載されたナタネ油は(第14改正 日本薬局方解説書D-839参
照)、種子を加熱し圧搾した後、そのかすを溶剤抽出し、圧搾油と合わせ原油とするのが
一般的である。得られた原油を精製して用いる。
【0031】
ヒマワリ油とは、キク科ヒマワリ属(Helianthus annuus Linne(Compositae)の植物
の種子から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得るこ
とができる(医薬品添加物規格1998 P518等参照)。
【0032】
綿実油とは、アオイ科ワタ属(Gossypium hirsutum Linne(Gossypium)又はその同属
植物(Malvaceae)等)の植物の種子から得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精
製方法を用いて種子から得ることができるが、例えば、種子から圧搾法又は抽出法により
得た不揮発性の脂肪油を精製して得ることができる(医薬品添加物規格1998 P719 or 第
14改正 日本薬局方解説書B-936等参照)。
【0033】
ヤシ油とは、ヤシ科ココヤシ属(Cocos nucifera Linne(Palmae)等)の植物の種子か
ら得た植物油をいう。公知の搾取方法・公知の精製方法を用いて種子から得ることができ
るが、例えば、日本薬局方に収載されたヤシ油は(第14改正 日本薬局方解説書D-1160〜
1161参照)、コプラを粉砕して蒸煮して圧搾し、浮遊物を除いて精製して得られる。
【0034】
これらの特定油は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、なかで
も好ましくは、ゴマ油、オリブ油、ダイズ油、ラッカセイ油であり、特に好ましくはゴマ
油である。なお、これらの特定の植物油は、通常当業者が粘膜適用組成物に利用しうるも
のを用いることができ、市販のものを用いることもできる。
【0035】
本発明の特定の植物油の粘膜適用組成物中における使用量は、植物油の種類などによっ
て異なるので一概に規定できないが、通常、0.00001〜60%、好ましくは0.0
001〜30%、より好ましくは0.0001〜10%、特に好ましくは0.001〜1
%程度である。眼科用組成物の場合には、0.00001〜0.5%程度がさらに好まし
い。さらに、具体的にゴマ油の場合、通常、0.00001〜20%、好ましくは0.0
001〜10%、より好ましくは0.0001〜5%、特に好ましくは0.0005〜0
.3%程度である。
【0036】
本発明の特定の植物油による粘度低下抑制効果は、粘膜適用組成物中にエチレンジアミ
ン酢酸誘導体またはその塩を配合した場合に、更に顕著となる。本発明では、セルロース
系粘稠化剤と非イオン性界面活性剤とを含有しているが、特定の植物油をともに含有する
ことによって粘度が安定に保持され、さらに、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩
を含有することによって、粘度安定性がさらに改善された粘膜適用組成物が得られる。
【0037】
かかるエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩としては、例えば、エデト酸(エチレ
ンジアミン四酢酸,EDTA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジエチレントリ
アミン五酢酸(DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(H
EDTA)などが例示できる。これらは、1種又は2種以上配合でき、薬理学的に又は生
理学的に許容される塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)として使用して
もよい。なかでも好ましくは、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であり、例えばエチ
レンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以
下、エデト酸ナトリウムともいう。)である。
【0038】
本発明の粘膜適用組成物中におけるエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩の含有量
は分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、好ましくは0.0001
〜1%、より好ましくは0.0005〜0.5%、特に好ましくは0.001〜0.3%
程度である。
【0039】
本発明の粘膜適用組成物中にさらにメントール、カンフル又はボルネオールから選択さ
れる1種又は2種以上の化合物を配合した場合には、使用感の改善効果がより顕著となる
。これらの化合物はd体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、ペパーミント油やユ
ーカリ油などの精油を用いてもよい。
【0040】
本発明の粘膜適用組成物におけるメントール、カンフル又はボルネオールから選択され
る1種又は2種以上の化合物の使用量は、化合物の総量として、0.0001〜5%が好
ましく、0.001〜2%がより好ましく、0.005〜1%がさらに好ましく、0.0
07〜0.8%が特に好ましい。
【0041】
本発明において、セルロース系粘稠化剤を含有した粘膜適用組成物は、所望の効果を得
るために適切な粘度に初期設定して設定粘度を長期的に安定に保持することができる。眼
科用組成物の粘度は、眼粘膜に適用した時の差し心地(使用感)や薬物滞留能、ドライア
イなどの疾患の治療等に多大な影響を与えることから、適切な粘度を設計し、設計した粘
度が長期的に安定に保持されることが重要となる。適切な粘度を設定する場合において、
通常、1.2mPa・s以上、例えば眼科用組成物では20℃における粘度が2mPa・
s以上に保持して設計することが好ましく、通常2〜300mPa・s、好ましくは、2
〜200mPa・s、特に好ましくは5〜100mPa・s、更に好ましくは10〜80
mPa・s程度に設計することができる。粘度が2mPa・s以下であれば、セルロース
系粘稠化剤の有用な効果を十分に発揮することができず、300mPa・s以上では、ね
ばつきが大きく製造工程の管理が難しくなりやすい。鼻科用組成物では20℃における粘
度が2〜10万mPa・s以上に保持して設計することが好ましく、通常2〜10万mP
a・s、好ましくは、50〜1万mPa・s、特に好ましくは100〜5000mPa・
s程度に設計することができる。
【0042】
本発明の粘膜適用組成物は、発明の効果を利用するものであればその使用用途は特定さ
れず、医薬品、医薬部外品、雑品等の各種分野において利用することができる。例えば、
点眼剤(ハードまたはソフトコンタクトレンズを装用中にも使用することができる点眼剤
を含む、また、点眼薬ともいう。)、洗眼剤(ハードまたはソフトコンタクトレンズを装
用中にも使用することができる洗眼剤を含む。)、眼軟膏剤、コンタクトレンズ装着液、
コンタクトレンズ用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューションなど)
、点鼻剤などが挙げられる。なかでも、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、点鼻
剤に有用である。
【0043】
本発明の粘膜適用組成物には、本発明の効果を妨げない限り、種々の成分(薬理活性成分
や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有してもよい。このような成分の種類は特に制
限されず、例えば、充血除去成分、眼調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒ
スタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分、殺菌薬
成分、糖類、多糖類またはその誘導体、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、前述
以外の水溶性高分子、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、緑内障治療薬などが例示できる
。本発明において好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピ
ネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナ
ファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、
硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラー
ゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロ
ピンなど。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロ
ン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、
アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウ
ム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノ
クス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フ
マル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸ク
ロルフェニラミンなど。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フ
ラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、
パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢
酸トコフェロールなど。
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチ
ニン、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシ
ウム・カリウム混合物、グルタミン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
抗菌薬成分または殺菌薬成分:例えば、、アルキルポリアミノエチルグリシン、、スル
ファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スル
フイソミジンナトリウム、、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、ホウ酸、など。
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、トレハロースなど。
多糖類又はその誘導体:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリ
ウムなど。
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなど。
前述以外の水溶性高分子:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニル
ピロリドンなど。
局所麻酔薬成分:例えば、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン
、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエ
チル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン
、塩酸リドカインなど。
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレ
ドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプ
ロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコル
チゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキ
サメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセト
ニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、
メチルプレドニゾロンなど。
【0044】
粘膜適用組成物中のこれらの成分の配合量は製剤の種類、活性成分の種類などに応じて
適宜選択され、各種成分の配合量は当該技術分野で既知である。例えば、製剤全体に対し
て0.0001〜30%、好ましくは、0.001〜10%程度の範囲から選択できる。
より具体的には、各成分の含有量は、例えば眼科用組成物について以下の通りである。
【0045】
充血除去成分(血管収縮薬又は交感神経興奮薬):例えば、0.0001〜0.5%、
好ましくは、0.0005〜0.3%、さらに好ましくは0.001〜0.1%。
眼筋調節薬成分:例えば、0.0001〜0.5%、好ましくは、0.0005〜0.
1%、さらに好ましくは0.0005〜0.01%。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、0.0001〜10%、好ましくは0.00
01〜5%。
抗ヒスタミン薬成分または抗アレルギー薬成分:例えば、0.0001〜10%、好ま
しくは0.001〜5%。
ビタミン類:例えば、0.0001〜1%、好ましくは、0.0001〜0.5%。
アミノ酸類:例えば、0.0001〜10%、好ましくは0.001〜3%。
抗菌薬成分または殺菌薬成分:例えば、0.00001〜10%、好ましくは、0.0
001〜10%。
糖類:例えば、0.0001〜5%、好ましくは0.001〜5%、さらに好ましくは
0.01〜2%。
多糖類又はその誘導体:例えば、0.0001〜2%、好ましくは0.01〜2%、さ
らに好ましくは0.01〜1%。
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:例えば、0.001〜5%、好ましくは0.
01〜1%。
前述以外の水溶性高分子:例えば、0.001〜10%、好ましくは0.001〜5%、
さらに好ましくは0.01〜3%。
局所麻酔薬成分:例えば、0.001〜1%、好ましくは0.01〜1%。
ステロイド成分:例えば、0.001〜1%、好ましくは0.01〜1%。
【0046】
また、本発明の粘膜適用組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途
や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を
併用して含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤
などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘
剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料または
清涼化剤、緩衝剤、などの各種添加剤を挙げることができる。
【0047】
以下に本発明の粘膜適用組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定
されない。
増粘剤:例えば、デキストラン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸又はその塩、
ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴー
ル、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
界面活性剤:例えば、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤
;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウ
ムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸
ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロ
ルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナト
リウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プ
ロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベン
ジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)
、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカ
プロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、ト
リエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カ
ルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水
素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二
ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレン
グリコールなど。
香料又は清涼化剤:例えば、上記した以外のゲラニオール、メントン、酢酸リナリル、
シトラールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
緩衝剤:アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸緩衝剤、
酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、ク
エン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナ
トリウム、ホウ酸、ホウ砂 、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン
酸二水素カリウムなど。
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒド
スルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタ
ノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
溶解剤、基剤:オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、パラフィン、ヒマ
シ油、プラスチベース、ラノリン、ワセリンなど。
【0048】
増粘剤:例えば、0.0005〜50%、好ましくは、0.001〜10%
糖類:例えば、0.001〜10%、好ましくは、0.01〜5%
界面活性剤:例えば、0.0001〜10%、好ましくは、0.005〜5%
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、0.00001〜5%、好ましくは、0.0001
〜2%
pH調節剤:例えば、0.00001〜5%、好ましくは、0.0001〜2%
等張化剤:例えば、0.001〜10%、好ましくは、0.01〜5%
香料または清涼化剤:例えば、0.00001〜5%、好ましくは、0.0001〜2%
緩衝剤:例えば、0.001〜10%、好ましくは、0.01〜5%
【0049】
本発明の粘膜適用組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調整し
て用いる。浸透圧は、100〜1200mOsm、好ましくは100〜600mOsm、
特に好ましくは150〜400mOsm程度であり、生理食塩液に対する浸透圧比は、通
常、0.3〜4.1、好ましくは0.3〜2.1、特に好ましくは0.5〜1.4程度で
ある。
【0050】
本発明の粘膜適用組成物は、必要に応じて、生体に適用可能な範囲内の浸透圧に調整し
て用いる。pHは、通常、pH4.0〜10.0、好ましくは4.5〜9.5、特に好ましく
は5.0〜9.0である。pHの調整は、緩衝剤、前記pH調整剤などを用いて行うことが
できる。
ここで、緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤
、酢酸緩衝剤などが挙げられる。好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸
緩衝剤及びクエン酸緩衝剤である。特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤またはリン酸緩
衝剤である。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土
類金属塩などのホウ酸塩、ホウ酸とホウ酸塩との組み合わせが挙げられる。リン酸緩衝剤
としては、リン酸、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩、
リン酸とリン酸塩との組み合わせが挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤と
して、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的には、ホウ酸又はその
塩 (ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムなど) 、リン酸又は
その塩 (リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど)
、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、クエン酸又はその塩(
クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなど)が挙げられる。緩衝剤として、ホウ酸緩衝
剤又はリン酸緩衝剤を用いる場合、本発明の眼科用組成物中におけるこれらの緩衝剤の濃
度は、例えば、0.0001〜10.0%程度である。
【0051】
本発明の粘膜適用組成物は、公知の方法により製造できる。半固形剤、液剤は、基剤と
各成分とを混合し、調製できる。さらに、必要により、ろ過滅菌処理工程や、容器への充
填工程等を加えることができる。
【0052】
また、本発明は、セルロース系粘稠化剤、非イオン性界面活性剤、およびゴマ油、オリ
ブ油、ダイズ油、ラッカセイ油、アルモンド油、小麦胚芽油、ツバキ油、トウモロコシ油
、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油またはヤシ油から選ばれる少なくとも一種の植物油を配
合することにより組成物の粘度を安定化する方法を包含する。
さらに、本発明は、セルロース系粘稠化剤、非イオン性界面活性剤、およびゴマ油、オ
リブ油、ダイズ油、ラッカセイ油、アルモンド油、小麦胚芽油、ツバキ油、トウモロコシ
油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油またはヤシ油から選ばれる少なくとも一種の植物油を
配合することにより組成物の使用感を改善する方法を包含する。なお、含有するセルロー
ス系粘稠化剤の種類、非イオン性界面活性剤の種類、特定の植物油、これらの使用量等は
、本発明の組成物に関する前述の記載に従って行うことができる。
【実施例1】
【0053】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実
施例によって限定されるものではない。
粘度の測定方法
粘度測定方法は円すい一平板形回転粘度計を用いる方法(第十四改正日本薬局法に記載
の、一般試験法、45.粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(3)円すい−平板形回転粘度計
」の項に記載の方法)に従った。具体的には、市販の円すい−平板形回転粘度計と適宜選
択されたロータとを用いて測定した。
なお、粘度の測定においては、市販の粘度計、例えば、E型粘度計[トキメック(TO
KIMEC)製、東機産業(日本)から販売]、シンクローレクトリックPC 型(ブルッ
クフィールド、米)、フェランティシャーリー(フェランティ、英)、ロートビスコR (ハー
ケ、独)、IGK ハイシャーレオメーター(石田技研、日本)、島津レオメーターR (島津
製作所、日本)、ワイセンベルグレオゴニオメーター(サンガモ、英)、メカニカルスペク
トロメーター(レオメトリックス、米)等を利用できる。そして、これらの市販の粘度計と
ローターを適宜選択し、披検試料測定毎にJIS Z8809により規定されている石油系の炭化
水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として適宜調整することにより、20℃におけ
る粘度を測定することができる。
【0054】
具体的には、
図1に示すように、円すい1と平円板2との間の角度αの隙間に試料を入
れ、円すい1又は平円板2を一定の角速度ω若しくはトルクTで回転させ、定常状態に達
したときの平円板2又は円すい1が受けるトルク若しくは角速度を測定し、試料の粘度η
を次式により算出することによって粘度を測定した。
η =100×(3α/2πR
3)・(T /ω)
η :試料の粘度(mPa ・s)(Pa ・s =10
3 mPa・s )
α :平円板2と円すい1がなす角度(rad)
π :円周率
R :円すい1の半径(cm)
T :平円板2又は円すい1面に作用するトルク(10
−7N・m)
ω :角速度(rad/s)
【0055】
本試験における各比較例、各実施例の粘度は、E型粘度計の1種であるTVE−20L形
粘度計コーンプレートタイプ(トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本))を用
いて、以下の測定条件の下で測定を行った。
測定条件:
TVE−20L形粘度計コーンプレートタイプに付属の標準コーンロータ(
図1における円す
い1に相当)(α=1°34’、半径(R)=24mm)をフルスケール・トルク6.737×10
-7 N
m のスプリングを介してモータで回転させる。測定時、粘度計は回転軸が水平面に対して
垂直になるように設置する。
被検試料1mlをコーンロータの所定の位置(プレート、
図1における平円板2に相当)
に載置し、温度が20.0℃になるまで放置する。次いで、装置を被検試料の粘度に応じた回
転数で回転させ、表示された粘度を読み取る。高精度の測定結果を得るために、被検試料
測定前に、JIS Z 8809 により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を
校正用標準液として用い、測定値が標準液の粘度に一致するように調整する。なお、TV
E-20L形粘度計コーンプレートタイプ以外の市販の機種を用い、上記と同様にコーンロー
タを選択して実施し、適宜校正することにより、同等の結果を得ることもできる。
使用ローター:標準ローター(1°34’、R=24mm)
回転数 :50rpm
試料量 :1ml
測定温度 :20℃
時間 :3分間後の粘度を測定値とした。
【0056】
試験例1 粘度安定性試験
試験に用いた各実施例及び試験例の調製は、表1に示す処方に従った。具体的には、実
施例1の調製方法を示す。0.6gのヒドロキシエチルセルロース(商品名「フジケミH
EC」 CF−V 住友精化製)を100mlの精製水中にて攪拌溶解し、ヒドロキシエ
チルセルロース(表中はHEC)の溶解後、3.6gホウ酸、0.7gホウ砂を加えて溶
解した(調整液A)。1.0gのポリソルベート80(商品名「ニッコールTO−10M
」 日本サーファクタント製)と、0.01gのゴマ油(商品名「日局ごま油」 かどや
製油株式会社製)を攪拌溶解しつつ精製水50mlを加え攪拌溶解した(調整液B)。調
整液Bを調整液Aに加え、さらに精製水を加えて全体を200mlとした(pH=7.2
)。粘度を測定した後、ガラス瓶に100mlずつ充填した。さらに実施例1に従い、他
の実施例及び比較例も調製した。
【0057】
表1に示す処方で調製した各実施例、各比較例のそれぞれの粘度を測定した。その後、
透明ガラス瓶に10mL充填し密栓して、50℃の恒温槽(ナガノ科学機械製作所製 C
H20−11M)内にて7日間保管した。7日間保管後に再度粘度を測定した。熱処理前
前後における粘度測定値から、粘度残存率(%)=50℃7日間保管後の粘度÷50℃保
管前粘度×100を算出した。
結果は、表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
試験の結果、セルロース系粘稠化剤の粘度低下は、非イオン性界面活性剤の存在により
促進されるが、ゴマ油を含有することによって植物油の濃度依存的に粘度低下を抑制でき
ることが確認された。さらにゴマ油とともにEDTAを含有した実施例では、粘度の低下
抑制効果が増強されることが示された。本発明の組成物では、製剤設計に際して設定した
所望の粘度が長期にわたり安定的に保持されており、粘膜適用組成物としてより優れてい
ることが確認された。
【0060】
試験例2 粘度安定性試験
試験に用いた各実施例及び試験例の調製は、表2及び3に示す処方に従った。具体的に
は、実施例6の調製方法を示す。0.6gのヒドロキシエチルセルロース(商品名「フジ
ケミHEC」 CF−V 住友精化製)を100mlの精製水中にて攪拌溶解した(調整
液A)。1.0gのポリソルベート80(商品名「ニッコールTO−10M」 日本サー
ファクタント製)と、0.1gのゴマ油(商品名「日局ごま油」 かどや製油株式会社製
)を攪拌溶解しつつ精製水50mlを加え攪拌溶解した(調整液B)。調整液Bを調整液
Aに加え、さらに精製水を加えて全体を200mlとした。粘度を測定した後、ガラス瓶
に100mlずつ充填した。さらに、実施例6に従い他の実施例及び比較例も調製した。
なお、試験に用いたヒドロキシプロピルメチルセルロース(表中はHPMC)は商品名「
メトローズ65SH−4000」信越化学工業製のものである。オリブ油は、(商品名「
オリブ油」小堺製薬製)、ダイズ油は、(商品名「ダイズ油」小堺製薬製)のものである
。ラッカセイ油は、(商品名「ラッカセイ油」小堺製薬製)のものである。
【0061】
表に示す処方で調整された各実施例、各比較例のそれぞれを透明ガラス瓶に10mL充
填し密栓して、粘度を測定した。これらのガラス瓶充填品を、50℃の恒温槽(ナガノ科
学機械製作所製 CH20−11M)内にて2週間保管した。2週間保管後に再度粘度を
測定した。熱処理前前後における粘度測定値から、粘度残存率(%)=50℃7日間保管
後の粘度÷50℃保管前粘度×100を算出した。
結果は、表2び3示す。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
試験の結果、セルロース系粘稠化剤の粘度低下は、特定の植物油を含有することによっ
て抑制できることが確認された。本発明の組成物では、製剤設計に際して設定した所望の
粘度が長期にわたり安定的に保持されており、粘膜適用組成物としてより優れていること
が確認された。
【0065】
下記表4〜表8に示す処方の配合成分を精製水に溶解させ全量を100mlとし、滅菌
濾過して、点眼剤(または点眼薬)、洗眼剤(または洗眼薬)、コンタクトレンズ(CL
)用液剤を調製した。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
試験例3 使用感試験
試験に用いた試験製剤の調製は、表10に示す処方に従った。
具体的には試験製剤2の調製方法を示す。塩化ナトリウム、塩化カリウム、ソルビン酸
カリウム、エデト酸ナトリウム、ポリソルベート80(TO−10M)、ポリクサマー4
07、l−メントール、ゴマ油(商品名「日局ごま油」 かどや製油株式会社製)、ホウ
砂及びホウ酸を50mlの精製水中にて攪拌溶解して、さらにカルボキシメチルセルロー
スナトリウム(表中はCMC、商品名「AGガムM」第一工業製薬株式会社)を添加して
攪拌溶解させ、ホウ砂を攪拌溶解しながら添加後、精製水及び塩酸/水酸化ナトリウムを
適量加えてpH=7.5に調整して全体を100mlとした。
他の試験製剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウムの代わりに、ヒドロキシエチ
ルセルロース(商品名「フジケミHEC」CF−V 住友精化株式会社)、ヒドロキシプ
ロピルセルロース(商品名「メトローズ65SH−4000」信越化学工業株式会社)を
用いて同様に調整した。
【0073】
調整した試験製剤を点眼容器に濾過充填して試験に用いる点眼剤を製し、各試験用点眼
剤を20名の専用モニター(裸眼10名、酸素透過性ハードコンタクトレンズ装用者5名
、ソフトコンタクトレンズ装用者5名)に点眼してもらい、使用感を評価した。ゴマ油を
含まない点眼剤(試験製剤1、3、5)を両眼に1滴点眼した後、30分後にゴマ油を含
む点眼剤(試験製剤2、4、6)を両眼に点眼して、先に点眼したゴマ油を含まない点眼
剤とゴマ油を含む点眼剤との使用感を比較して、以下の評価基準により使用感を評価した
。コンタクトレンズを装用していない裸眼のモニター及びコンタクトレンズ装用モニター
の評価点の平均値を表に示す。
【0074】
評価基準
粘つきの有無:
ゴマ油含有点眼剤の方が、粘つきがなくさらさらしている 3点
ゴマ油含有点眼剤とゴマ油を含有しない点眼剤が同じ程度である 2点
ゴマ油含有点眼剤の方が、粘ついている 1点
視野のにじみ程度:
ゴマ油含有点眼剤の方が、視野のにじみや曇りが速やかに解消した 3点
ゴマ油含有点眼剤とゴマ油を含有しない点眼剤が同じ程度である 2点
ゴマ油含有点眼剤の方が、視野のにじみや曇りが解消しにくい 1点
【0075】
【表10】
【0076】
試験の結果、セルロース系粘稠化剤と非イオン性界面活性剤を含有する点眼剤において
、ゴマ油を添加すると、粘つき感が解消して瞬きが軽くサラサラした感じが得られ、視野
のにじみが速やかに解消することが示された。さらに、オリブ油、ダイズ油においても、
同様の結果が得られた。
【0077】
試験例4 摩擦感試験
試験に用いるため含水率38%のポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、pHE
MA)ゲルを作製し、2cm×5cmの長方形ブロックを切り出して生理食塩水に2日間浸漬し
た。浸漬したpHEMAゲルを生理食塩水から取り出して軽く水を拭き取ってから、試料
台に固定したシャーレ上に置き速やかにMIU値を5回測定して平均値を求めた(これを
基礎値とする)。次に、同様に浸漬しておいたpHEMAゲルを取り出して軽く水をふき
取った後、1mLの試験試料を滴下して5回連続してMIU値を測定した。減少率を、(p
HEMAゲルのMIU基礎値−各試験試料滴下pHEMAゲルのMIU値)÷pHEMA
ゲルのMIU基礎値として算出し、各試験試料につき3枚のPHEMAゲルにて各5回ず
つ測定を行い、MIU減少率の平均を算出した。MIU値が減少するほど、pHEMAゲ
ル表面が滑りやすくなったことを示している。
なお、MIU値の測定には、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社)を用い
た。摩擦感テスターの測定条件、感度H(20g/v)、荷重50(gf)、SPEED 10mm/secとし
て、PHEMAゲルを交換する都度、摩擦子をエタノールでクリーニングして行った。
【0078】
試験試料は以下のとおりとした。なお、HPMC及びゴマ油は、試験例3で用いたものと同じ
ものを使用した。
試験試料1:精製水
試験試料2:HPMC(0.6%)及びTO−10M(0.01%)の水溶液
試験試料3:HPMC(0.6%)、TO−10M(0.01%)及びゴマ油(0.002%)の水溶液
試験試料4:HPMC(0.6%)及びゴマ油(0.002%)の水溶液
【0079】
試験の結果、試験試料1でのMIU値減少率(%)は0.04、試験試料2では、0.
159、試験試料3では0.240、試験試料4では0.120であった。意外なことに
セルロース系粘稠化剤にゴマ油を添加した場合に、MIU値の減少率は僅かであったが、
セルロース系粘稠化剤と非イオン性界面活性剤の存在下でゴマ油を添加した場合には、顕
著にMIU値が減少した。
したがって、本発明の組成物において、pHEMAゲル上における摩擦を低減させる効
果を奏することが確認された。pHEMAゲルはコンタクトレンズに汎用される素材であ
りかかるゲル上での摩擦低減は、本発明が、コンタクトレンズと眼瞼結膜との間、コンタ
クトレンズと角膜表面の間又は眼瞼結膜と角膜表面との間に生じる摩擦を低減させること
により、瞬きの感覚を軽くしたりコンタクトレンズにより眼に与える刺激のリスクを軽減
して使用感を向上させる効果を有することを示唆するものである。また、コンタクトレン
ズ装着時に使用すると、コンタクトレンズ装着時の異物感などの不快感を格段に低下する
ことが可能となる。
なお、結果は示さないが、試験例3で用いたヒドロキシエチルセルロース及びカルボキ
シメチルセルロースナトリウムによっても同様の結果が得られた。
【0080】
試験例5 潤い持続試験
表11に示す処方の試験用点眼剤(pH=7.5に調整)を調製し、各試験用点眼剤を点
眼した後の潤い感の持続効果の評価を行った。10名の被験者(うち裸眼者5名、酸素透
過性ハードコンタクトレンズ装用者2名、ソフトコンタクトレンズ装用者2名)に両眼に
1滴ずつ点眼後、時間を計りながら、30秒毎に以下に示す評価基準で評価してもらい各
被験者の評価の平均値を求めて潤いの持続を試験した。結果は
図2に示す。なお、各試験
用点眼剤の点眼間隔は1時間とした。
【0081】
潤いの評価基準:
8 非常に潤っている
7 よく潤っている
6 やや潤っている
5 やや少し潤っている
4 ごく少しであるが潤っている
3 どちらかというと潤っている
2 潤いと乾燥のどちらも感じない
1 やや乾燥感がある
0 乾燥感がある
【0082】
【表11】
【0083】
試験の結果、ゴマ油を含有する試験用点眼剤2では、対照とした試験用点眼剤と潤い感
の持続に差がなかった。粘度が40mPa・sの試験用点眼剤では、試験用点眼剤4及び試験
用点眼剤6において潤い感の持続は差が認められなかったが、粘度が3.5mPa・sの試験用
点眼剤では、試験用点眼剤3及び試験用点眼剤5の対比において、潤い感の持続効果が認
められた。比較的低粘度の点眼剤において、ゴマ油の添加によって潤い感の持続効果が顕
著に認められた。