(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668104
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】防水構造及び防水方法
(51)【国際特許分類】
E04D 11/00 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
E04D11/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-132013(P2013-132013)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-7314(P2015-7314A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2013年8月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年6月5日、本間ビル屋上(東京都豊島区南長崎1−1−10)
(73)【特許権者】
【識別番号】513159505
【氏名又は名称】有限会社ハイパーシール工業
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】堀川 和人
【審査官】
南澤 弘明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−148202(JP,A)
【文献】
実開昭60−014027(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 11/00
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物の防水構造であって、
(1)一方の表面に非接着性表面を有し、隣接する保護板の間に形成される目地部又は隣接する保護板の間の境界部と、その目地部又は境界部に隣接する保護板端縁部とを、前記非接着性表面側で接触して完全に覆う剛性カバー、
(2)基材シート層とその一方の表面上に担持された粘着剤層とを含み、前記剛性カバーとその剛性カバー両側の保護板粘着領域との上方から、前記粘着剤層が接触するように接着して、前記剛性カバーを保護板表面に固着させる固定シート、及び
(3)前記固定シートの全面及び保護板表面に設けた防水性被覆層
を含むことを特徴とする、保護板を備えた建造物の防水構造。
【請求項2】
建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物の防水方法であって、
(1)一方の表面に非接着性表面を有する剛性カバーにより、隣接する保護板の間に形成される目地部又は隣接する保護板の間の境界部と、その目地部又は境界部に隣接する保護板端縁部とを、前記剛性カバーの非接着性表面側で接触させて完全に覆うように、前記剛性カバーを載置する工程、
(2)基材シート層とその一方の表面上に担持された粘着剤層とを含む固定シートにより、前記剛性カバーの全面とその剛性カバー両側の保護板粘着領域との上方から、前記粘着剤層が接触するように接着して、前記剛性カバーを保護板表面に固着する工程、及び
(3)前記固定シートの全面及び保護板表面に、防水性被覆層を設ける工程
を含むことを特徴とする、保護板を備えた建造物の防水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物に対する防水構造及び防水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物の屋根(ないし屋上床面)や駐車場床面などの広い面積を連続コンクリート層で覆うと、外気の温度変化による膨張及び収縮のために、連続コンクリート層にひび割れが発生する。そこで、従来から、屋根(ないし屋上床面)や駐車場床面などに防水層を施工し、その上を保護コンクリート層で被覆する場合には、被覆用の保護コンクリート層を小区画に分割して、多数の保護コンクリート板(例えば、PCコンクリート板)を、相互に間隔を空けて敷き詰め、隣接する保護コンクリート板の間に目地部を形成し、その目地部に伸縮性目地材を充填する手法が広く実施されている。
【0003】
このような建造物の屋根や床面において、防水層の経年劣化を改修するために、保護コンクリート層の上から更に防水カバーを被覆する技術が、従来から提案されている。例えば、目地部を跨設する目地カバーを保護コンクリート表面に固着し、その上から通気緩衝シートを貼付し、更にウレタン防水材を全般的に塗布する方法(特許文献1)、あるいは、薄い鋼板と粘着剤層とからなる目地被着用複合シートを、目地部とその近傍の保護コンクリート層表面とに接着させ、その上から防水カバーを全般的に設ける方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
特許文献1及び2に記載の方法では、いずれも、目地部に跨って設ける目地カバー(又は目地被着用複合シート)が剛性材料を含んでいるものの、それらの目地カバーを保護コンクリート層表面に接着させるので、目地カバーの上から被覆される防水カバーは、隣接保護コンクリート層の伸縮応力のひずみの影響を直接的に受けることになり、防水カバーが破断しやすいという欠点があった。また、防水改修工事においては、古い目地材を取り除き、新しい目地材を充填してから目地カバーを設けることが一般的であるので、その際に、目地材が乾燥する前の粘稠状態で目地カバーを設けると、目地カバーの裏面全体が目地材及び保護コンクリート層表面に緊密に接着されることになり、保護コンクリート層による伸縮応力を緩和させる目地部の効果を防水カバーに作用させることができなくなるため、防水カバーが更に破断しやすくなる。また、目地材が乾燥してから目地カバーの敷設を行うと、工事期間が長期化する欠点があった。なお、防水改修工事としてではなく、新築時の防水補強工事として目地カバー及び防水カバーを設ける場合にも、同様の欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−215732号公報
【特許文献2】特開2008−95421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物に対して、従来技術の欠点を解消した防水構造及び防水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題は、本発明により、建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物の防水構造であって、
(1)一方の表面に非接着性表面を有し、隣接する保護板の間に形成される目地部又は隣接する保護板の間の境界部と、その目地部又は境界部に隣接する保護板端縁部とを、前記非接着性表面側で接触して完全に覆う剛性カバー、
(2)基材シート層とその一方の表面上に担持された粘着剤層とを含み、前記剛性カバーとその剛性カバー両側の保護板粘着領域との上方から、前記粘着剤層が接触するように接着して、前記剛性カバーを保護板表面に固着させる固定シート、及び
(3)前記固定カバーの全面及び保護板表面に設けた防水性被覆層
を含むことを特徴とする、保護板を備えた建造物の防水構造により解決することができる。
【0008】
また、本発明は、建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物の防水方法であって、
(1)一方の表面に非接着性表面を有する剛性カバーにより、隣接する保護板の間に形成される目地部又は隣接する保護板の間の境界部と、その目地部又は境界部に隣接する保護板端縁部とを、前記剛性カバーの非接着性表面側で接触させて完全に覆うように、前記剛性カバーを載置する工程、
(2)基材シート層とその一方の表面上に担持された粘着剤層とを含む固定シートにより、前記剛性カバーの全面とその剛性カバー両側の保護板粘着領域との上方から、前記粘着剤層が接触するように接着して、前記剛性カバーを保護板表面に固着する工程、及び
(3)前記固定カバーの全面及び保護板表面に、防水性被覆層を設ける工程
を含むことを特徴とする、保護板を備えた建造物の防水方法にも関する。
【0009】
本明細書において、「目地部」又は「目地」とは、隣接する保護板(例えば、保護コンクリート板)の間に形成される空隙ないし隙間を意味し、その「目地部」又は「目地」に充填される充填剤を「目地材」と称する。
また、「非接着性表面」とは、従来技術における粘着剤担持目地カバーなどとの差異を明確にするために、単に、粘着剤ないし接着剤を担持しない表面であることを意味するものであり、金属板やプラスチック板の通常の表面は、非接着性表面である。なお、後述するとおり、剥離性表面は、非接着性表面の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、目地部に跨設される(跨って設置される)剛性カバーが非接着性表面を有し、その非接着性表面側で保護板(及び、場合により目地材)と接触することになるので、剛性カバーが保護板の表面(及び、場合により目地材)と貼着されることがない。従って、隣接保護板の伸縮応力のひずみは、目地部で吸収され、そのひずみの影響が剛性カバーに及ばない。それに加え、剛性カバーの上から貼着される固定シートや防水性被覆層は、目地部の幅よりも広くなった剛性カバーの幅によって、隣接保護板の伸縮応力のひずみを吸収することが可能になるため、防水性被覆層は、更に破断されにくくなる。
【0011】
また、本発明においては、剛性カバーが非接着性表面を有しているので、建造物の屋根(ないし屋上床面)や駐車場床面などの防水改修工事において、古い目地材を取り除き、新しい目地材を充填する場合に、新しい目地材が粘稠な非乾燥状態で剛性カバーを跨設しても、非乾燥目地材が剛性カバーの裏面に貼着されることがなく、非接着状態を保証することができるので、新しい目地材を乾燥させる必要がなくなり、工期短縮が可能になる。更に、前記と同様の構造を有する建造物の屋根(ないし屋上床面)や駐車場床面などの防水新築工事においても、新しい目地材を乾燥させる必要がなくなり、工期短縮が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による防水構造の1実施態様を示す模式的断面図である。
【
図2】
図1の防水構造の形成方法の一部を示す模式的平面図である。
【
図3】本発明による防水構造の別の実施態様を示す模式的断面図である。
【0013】
図1及び
図3は、本発明の防水構造の層状構造を説明することが主目的であるので、各層の厚さを誇張して示すと共に、各層の厚さの相対比も正確なものではない。また、
図2も、本発明の防水構造の形成方法の一部を説明することが主目的であるので、目地部の幅、並びに剛性カバー及び固定シートの幅を誇張して示すと共に、それらの幅の相対比も正確なものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の具体的実施態様を説明する。
図1及び
図3は、コンクリート建造物の屋根(もしくは屋上床面)に、本発明による防水構造10を敷設した状態を模式的に示す断面図であり、
図2は、
図1の防水構造10を敷設する工程の一部を模式的に示す平面図である。
図1〜
図3に示す防水構造10は、剛性カバー1、固定シート2、及び防水性被覆層3を含む。
【0015】
最初に、本発明による防水構造又は防水方法を適用可能な建造物の屋根や床面について、その代表的な態様を説明する。
図1及び
図2(a)に示すように、コンクリート建造物の屋根(もしくは屋上床面)には、一般に、躯体部7(例えば、躯体コンクリート7又は下地コンクリート)の上に、防水層71(例えば、アスファルト防水層)を設け、その上に多数の保護板5(例えば、保護コンクリート板)が敷設され、更に、各保護板5a,5bの間の目地部6に、伸縮性目地材61を充填する。各保護板5は、それぞれ同種材料からなることが多いが、異種材料からなることもある。防水層71が経年劣化した場合には、防水層71、保護板5、及び目地材61を全て交換する改修方法も存在するが、前記特許文献1及び特許文献2に示すように、既存の防水層71、保護板5、及び目地材61の上から、防水改修工事を実施することも広く採用されている。本発明の防水構造又は防水方法の典型的な適用例は、こうした防水改修工事に利用される。
【0016】
また、
図3に示すように、多くのコンクリート建造物の屋根(もしくは屋上床面)の端部や屋上施設の設置部などには、床面から立設する壁部が存在し、防水層71(例えば、アスファルト防水層)は、立設壁部の表面にも設けられるので、その立設防水層71Aの表面には、保護板である保護壁部5Aとして、例えば、保護モルタル板を塗布して設けることが一般に実施されている。床面に平行に敷設される保護板5と、立設防水層71Aの表面に設ける保護壁部5Aとは、それぞれ異種材料からなることが多いので、温度変化によるひずみが存在するが、目地部を設ける場合は少なく、境界部6Aで両者は直接に接触させることも多い。こうした立設防水層71Aも、他の平面防水層71と同様に、経年劣化するので、防水改修工事が必要となり、本発明の防水構造又は防水方法は、こうした構造に対する防水改修工事にも利用することができる。
図1及び
図3に示す構造は、例えば、コンクリート建造物の屋上、屋根、ベランダ、駐車場の床面などに広く利用されており、本発明は、これらの任意の建造物に適用することができる。
【0017】
次に、
図1及び
図2に示す本発明の防水構造及び防水方法について説明する。
本発明の防水構造及び防水方法を適用する前の状態は、
図2(a)に示すように、多数の保護板51,52,53,54が敷設され、隣接保護板51,53と隣接保護板52,54の間に目地部6aが形成され、隣接保護板51,52と隣接保護板53,54の間に目地部6bが形成されている。本発明の防水方法においては、
図2(b)に示すように、最初に、前記目地部6a,6bの全てを完全に覆うように、剛性カバー1A,1B,1Cを、保護板51,52,53,54の上に載置する。こうして、
図1に示すように、剛性カバー1は、保護板5aの保護板端縁部Cと、隣接する保護板5bの保護板端縁部Cとに載置され、目地部6を完全に覆うことができる。
【0018】
本発明に用いる剛性カバーは、保護板と接触する表面が、粘着剤あるいは接着剤を担持していない非接着性表面であり、剛性カバーそれ自体は、保護板に直接的に貼着されることはない。また、本発明においては、剥離剤を担持した剥離性表面を、非接着性表面とすることもでき、非接着性表面として剥離性表面を有する場合には、粘稠な非乾燥状態の目地材が充填された目地部の上から剛性カバーを載置しても、剛性カバーが目地材と強固に貼着することがないので、剛性カバーは、保護板及び目地材が受ける伸縮応力の直接的な影響を受けることがない。
【0019】
剛性カバーの材料は、本発明の防水構造及び防水方法において、形状を保持可能である限り限定されず、典型的には、金属板(例えば、鋼板又はアルミニウム板)やプラスチック板からなることができる。剛性カバーの長手方向の形状は、目地部に跨設させるので、目地部の形状に沿って適宜変化させる。例えば、
図1及び2に示す直線状の目地部に適用する場合は、剛性カバーも帯状とし、例えば、円状ないし楕円状の屋上植栽部の周囲に形成される円状ないし楕円状の目地部に適用する場合は、弧状とすることもできる。剛性カバーの長さ方向の寸法も、適宜調整可能である。また、剛性カバーの幅の形状は、
図1に示すように平板状であることも、あるいは特許文献1に記載の目地カバーのように、中央部を頂部として両側に傾斜した形状(断面逆V字状)としてもよい。
【0020】
剛性カバーの剛性及び厚さは、本発明の防水構造及び防水方法において、形状を保持可能である限り特に限定されないが、例えば、剛性率が15N/mm
2〜50N/mm
2で、厚さが0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。また、剛性カバーの幅の下限は、目地部の幅V(
図1参照)よりも広く、目地部を跨設して隣接保護板上に載置可能であれば、特に限定されない。また、幅の上限も特に限定されないが、目地部の幅V(
図1参照)の10倍を越えると、コストの上昇に伴う効果の上昇が殆ど認められなくなる。
図1に沿って、剛性カバー1の幅と目地部6の幅Vとの関係を説明すると、剛性カバー1が保護板5a,5bと接触する領域の幅Cは、V/5〜5Vであることが好ましく、V/2〜2Vであることが、より好ましい。
【0021】
本発明では、剛性カバーを跨設した後に、
図1及び
図2(c)に示すように、剛性カバー1及びその剛性カバー1の両側の保護板粘着領域A,Aの上方から、固定シート2を貼着する。固定シート2は、基材シート層21とその一方の表面上に担持された粘着剤層22とを含み、前記粘着剤層22が、剛性カバー1の露出(上方)表面、及び保護板表面の粘着領域A,Aと接触するように貼着させるので、前記剛性カバー1を保護板5の表面に固着させることができる。
【0022】
固定シートの粘着剤層は、保護板及び剛性カバーとの粘着性に優れる粘着剤であれば、特に限定されず、例えば、アクリルポリマー系、ブチルゴム系、又はゴムアスファルト系粘着剤を用いることができる。また、固定シートの基材シート層も、前記粘着剤層を担持可能で、剛性カバーを保護板に押さえつけて固定することが可能な物性を有していれば、特に限定されず、例えば、プラスチックフィルム又は不織布を用いることができる。固定シートの厚さも特に限定されないが、0.1mm〜2.0mmであることが好ましい。
【0023】
固定シートの幅の下限は、剛性カバーの幅よりも広く、剛性カバーを保護板に固着可能であれば、特に限定されない。また、幅の上限も特に限定されないが、剛性カバーの幅「V+2C」(
図1参照)の10倍を越えると、コストの上昇に伴う効果の上昇が殆ど認められなくなる。
図1に沿って、固定シート2の幅と剛性カバーの幅「V+2C」との関係を説明すると、固定シート2の粘着剤層22が保護板5a,5bと接触する粘着領域の幅Aは、S=(V+2C)とすると、S/5〜5Sであることが好ましく、S/2〜2Sであることが、より好ましい。
【0024】
本発明では、固定シートを固着した後に、
図1に示すように、防水性被覆層3を防水工事の対象領域の全域に設ける。防水性被覆層としては、従来から使用されている任意の公知の材料を用いることができ、例えば、ウレタン防水材又はアスファルト系防水材を使用することができ、更に、防水塗膜、防水シート、又はそれらの組み合わせ、あるいはそれらの積層体を用いることができる。
【0025】
続いて、
図3に示す本発明の別の態様の防水構造10Aを説明する。
本発明の防水構造及び防水方法を適用する前の状態では、立設防水層71Aの表面の内の下方部は、床面に平行に敷設される末端保護板5の端面で保護され、それ以外の上方部は、保護壁部5Aによって保護されるので、末端保護板5と保護壁部5Aとの境界部6Aが形成される。末端保護板5と保護壁部5Aとは、相互に異種材料からなるので、温度変化に伴う伸縮程度が異なるため、経年でひび割れが発生する。
【0026】
本発明では、
図3に示すように、L字剛性カバー1Aの頂辺部が境界部6Aに当接するように配置する。ここで、L字剛性カバー1Aの外側表面(断面L字の90°を形成する2面とは反対側で、断面L字の270°を形成する2面)が、保護板端縁部C及び保護壁部5Aの端縁部Cと接触するように配置する。従って、L字剛性カバー1Aの外側表面は、非接着性表面である。
【0027】
L字剛性カバーも、
図1及び
図2に示す態様で用いる平坦状剛性カバーと同様の材料からなり、同様の剛性及び厚さを有することが好ましい。L字剛性カバーの水平辺(末端保護板5と接触する辺)と、L字剛性カバーの垂直辺(保護壁部5Aと接触する辺)とは同じ長さであっても、相互に異なっていてもよいが、ほぼ同等の長さであることが好ましい。前記の水平辺及び垂直辺は、それぞれ、好ましくは1cm〜20cmであり、より好ましくは5cm〜15cmである。
【0028】
図3に示す態様では、続いて、固定シート2Aを貼着する。固定シート2Aも、基材シート層とその一方の表面上に担持された粘着剤層とを含み、前記粘着剤層が、剛性カバー1Aの露出表面、並びに保護板5及び保護壁部5Aの粘着領域A,Aと接触するように貼着させるので、前記L字剛性カバー1Aを保護板5及び保護壁部5Aの表面に固着させることができる。
図3に示す態様で用いる固定シート2Aは、
図1及び
図2に示す態様で用いる固定シートと同様のシートであることができる。
【0029】
図3に示す態様でも、固定シートの幅の下限は、L字剛性カバーの幅よりも広く、L字剛性カバー1Aを保護板及び保護壁部に固着可能であれば、特に限定されない。また、幅の上限も特に限定されないが、L字剛性カバー1Aの幅「2C」(
図3参照)の10倍を越えると、コストの上昇に伴う効果の上昇が殆ど認められなくなる。
図3に沿って、固定シート2Aの幅とL字剛性カバー1Aの一方の辺の幅「C」との関係を説明すると、固定シート2Aの粘着剤層が保護板5又は保護壁部5Aと接触する粘着領域の幅Aは、C/5〜5Cであることが好ましく、C/2〜2Cであることが、より好ましい。
【0030】
本発明の防水構造及び防水方法は、建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物であれば、前記の防水改修工事に適用するだけでなく、新築建造物に対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、建造物躯体上に防水層を有し、その防水層の上に複数の保護板を備えた建造物に対して、従来技術の欠点を解消した防水構造及び防水方法を提供する。
【符号の説明】
【0032】
1・・・剛性カバー;1A・・・L字剛性カバー;2,2A・・・固定シート;
3・・・防水性被覆層;5・・・保護板;5A・・・保護壁;6・・・目地部;
6A・・・境界部;7・・・躯体部;10,10A・・・防水構造;
21・・・基材シート層;22・・・粘着剤層;61・・・目地材;71・・・防水層;
A・・・粘着領域の幅;C・・・保護板端縁部の幅;V・・・目地部の幅。