(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.透明基板の概要>
図1は、本発明の好ましい実施形態による透明基板の概略断面図である。この透明基板100は、無機ガラス10と無機ガラス10の片側または両側(図示例では両側)にそれぞれ配置された樹脂層20,20’とを有する。樹脂層20,20’は、それぞれ第1の熱可塑性樹脂層21,21’と第2の熱可塑性樹脂層22,22’とを有する。
【0010】
第1の熱可塑性樹脂層21,21’は、それぞれ無機ガラス10に直接(すなわち、接着剤または粘着剤を介することなく)形成され、該第1の熱可塑性樹脂層21,21’の上に、さらに第2の熱可塑性樹脂層22および22’がそれぞれ直接(すなわち、接着剤または粘着剤を介することなく)形成される。末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂およびエポキシ系末端カップリング剤を含む第1のキャスティング溶液を塗布することにより得られる第1の熱可塑性樹脂層21,21’が、無機ガラス10に直接形成されるように樹脂層20,20’をそれぞれ形成することにより、接着剤や粘着剤を介して無機ガラスに樹脂層を形成したものに比べ、高温高湿環境下でも、無機ガラスと樹脂層との密着性が優れ、さらに切断時にクラックが進展し難い透明基板が得られる。
【0011】
上記エポキシ系末端カップリング剤は、好ましくは、無機ガラスと化学結合(代表的には、共有結合)している。その結果、上記無機ガラスと上記第1の熱可塑性樹脂層との密着性に優れる透明基板を得ることができる。
【0012】
上記透明基板の総厚は、その構成に応じて任意の適切な値に設定され得る。好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは140μm以下であり、特に好ましくは80μm〜130μmである。本発明によれば、上記のように第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層を形成することにより、無機ガラスの厚みを、従来のガラス基板よりも格段に薄くすることができる。すなわち、第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層を含む樹脂層は、薄くても耐衝撃性および靭性の向上に寄与し得るので、軽量・薄型で、かつ、優れた耐衝撃性を有する透明基板が得られる。無機ガラス、第1の熱可塑性樹脂層、および第2の熱可塑性樹脂層それぞれの厚みは後述する。
【0013】
上記透明基板にクラックを入れ屈曲させた際の破断直径は、好ましくは50mm以下であり、より好ましくは40mm以下である。破断直径が上記の範囲内であれば、優れた可撓性を有する透明基板を得ることができ、透明基板の耐久性として実用上問題なく用いることができる。
【0014】
上記透明基板のヘイズ値は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。このような特性の透明基板であれば、例えば、表示素子に用いた場合に、良好な視認性が得られる。
【0015】
上記透明基板の波長550nmにおける透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。上記透明基板は、好ましくは、180℃で2時間の加熱処理を施した後の光透過率の減少率が5%以内である。このような減少率であれば、フラットパネルディスプレイの製造プロセスにおいて必要な加熱処理を施しても、実用上許容可能な光透過率を確保できるからである。
【0016】
上記透明基板の表面粗度Ra(実質的には、第2の熱可塑性樹脂層の表面粗度Ra)は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。上記透明基板のうねりは、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下である。このような特性の透明基板であれば、品質に優れる。なお、このような特性は、例えば、後述する製法により実現され得る。
【0017】
上記透明基板は、寸法安定性を有することが好ましい。例えば、透明基板は、170℃における平均線膨張係数が、好ましくは20ppm℃
−1以下であり、さらに好ましくは10ppm℃
−1以下である。上記の範囲であれば、例えば、本発明の透明基板を表示素子に用いた場合に、複数の熱処理工程に供されても、画素のずれや配線の破断・亀裂が生じにくい。
【0018】
<B.無機ガラス>
本発明の透明基板に用いられる無機ガラス10は、板状のものであれば、任意の適切なものが採用され得る。上記無機ガラスは、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記無機ガラスのアルカリ金属成分(例えば、Na
2O、K
2O、Li
2O)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0019】
上記無機ガラスの厚みは、好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは20μm〜90μmであり、特に好ましくは30μm〜80μmである。本発明においては、無機ガラスの片側または両側に第1の熱可塑性樹脂層および第2の熱可塑性樹脂層を含む樹脂層を有することによって、無機ガラスの厚みを薄くすることができる。
【0020】
上記無機ガラスの波長550nmにおける透過率は、好ましくは85%以上である。上記無機ガラスの波長550nmにおける屈折率n
gは、好ましくは1.4〜1.65である。
【0021】
上記無機ガラスの密度は、好ましくは2.3g/cm
3〜3.0g/cm
3であり、さらに好ましくは2.3g/cm
3〜2.7g/cm
3である。上記範囲の無機ガラスであれば、軽量の透明基板が得られる。
【0022】
上記無機ガラスの成形方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記無機ガラスは、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃〜1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記無機ガラスの薄板成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形された無機ガラスは、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学研磨されてもよい。
【0023】
上記無機ガラスは、市販のものをそのまま用いてもよく、あるいは、市販の無機ガラスを所望の厚みになるように研磨して用いてもよい。市販の無機ガラスとしては、例えば、コーニング社製「7059」、「1737」または「EAGLE2000」、旭硝子社製「AN100」、NHテクノグラス社製「NA−35」、日本電気硝子社製「OA−10」、ショット社製「D263」または「AF45」等が挙げられる。
【0024】
<C.樹脂層>
樹脂層20および20’は、無機ガラス10の片側、または両側に形成される。樹脂層20,20’は、それぞれ第1の熱可塑性樹脂層21,21’、および第2の熱可塑性樹脂層22,22’を含み、無機ガラス10の上に、第1の熱可塑性樹脂層21,21’、第2の熱可塑性樹脂層22,22’の順にそれぞれ積層される。該第2の熱可塑性樹脂層22および22’は、単一の層であっても、複数層であってもよい。本発明の透明基板が、無機ガラス10の両側に樹脂層20および20’を備える場合、該樹脂層20および20’は同一の積層体であっても、異なる積層体であってもよい。また、第1の熱可塑性樹脂層のみが同一であってもよく、第2の熱可塑性樹脂層のみが同一であってもよい。好ましくは、樹脂層20および20’は同一の積層体である。
【0025】
樹脂層20および20’の厚みは、それぞれ、好ましくは50μm以下である。
【0026】
<C−1.第1の熱可塑性樹脂層>
第1の熱可塑性樹脂層21および21’は、上記第1のキャスティング溶液を無機ガラス10の片側、または両側にそれぞれ直接塗工することにより形成される。上記第1のキャスティング溶液は、末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂、およびエポキシ系末端カップリング剤を含む。第1の熱可塑性樹脂層21および21’が無機ガラス10の両側に配置される場合、それぞれの第1の熱可塑性樹脂層21,21’は、同一の組成で構成されてもよく、異なる組成で構成されてもよい。好ましくは、それぞれの第1の熱可塑性樹脂層21,21’は、同一の組成で構成される。
【0027】
第1の熱可塑性樹脂層21,21’の厚みは好ましくは20μm以下である。第1の熱可塑性樹脂層の厚みを上記の範囲にすることで、高温高湿環境下でも無機ガラスと第2の熱可塑性樹脂層との十分な密着性が得られる。第1の熱可塑性樹脂層21,21’の厚みは、より好ましくは0.001μm〜20μmであり、さらに好ましくは0.001μm〜15μmであり、特に好ましくは0.01μm〜10μmである。上記の好ましい範囲であれば、十分な透明性を満足する透明基板を得ることができる。第1の熱可塑性樹脂層21および21’が無機ガラス10の両側に配置される場合、第1の熱可塑性樹脂層21および21’の厚みは同一であっても、異なっていてもよい。好ましくは、第1の熱可塑性樹脂層21,21’の厚みは同一である。したがって、特に好ましくは、無機ガラス10の両側に配置された第1の熱可塑性樹脂層21および21’は、同一の組成で同一の厚みになるように構成される。
【0028】
上記第1の熱可塑性樹脂層の波長550nmにおける透過率は、好ましくは80%以上である。上記第1の熱可塑性樹脂層の波長550nmにおける屈折率(n
r)は、好ましくは1.3〜1.7である。
【0029】
上記第1の熱可塑性樹脂層の弾性率は、好ましくは1GPa以上であり、さらに好ましくは1.5GPa以上である。上記の範囲とすることによって、無機ガラスを薄くした場合でも、当該樹脂層が変形時の欠陥への引き裂き方向の局所的な応力を緩和するので、無機ガラスへのクラックや破断が生じ難くなる。
【0030】
上記第1の熱可塑性樹脂層の破壊靭性率は、好ましくは1MPa・m
1/2〜10MPa・m
1/2であり、さらに好ましくは2MPa・m
1/2〜6MPa・m
1/2である。
【0031】
<C−1−1.末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂>
上記第1のキャスティング溶液は、末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂を含む。上記第1の熱可塑性樹脂は、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂であれば、任意の適切なものを用いることができる。上記第1の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート等を末端水酸基変性した熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。このような熱可塑性樹脂を用いれば、高温高湿環境下でも無機ガラスとの密着性に優れ、かつ靭性にも優れる樹脂層を得ることができる。このように靭性に優れる樹脂層を用いれば、切断時のクラックが進展しがたい透明基板を得ることができる。なお、上記末端水酸基変性は、任意の適切な方法が用いられ得る。
【0032】
上記末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂の重合度は、好ましくは90〜6200、さらに好ましくは130〜4900、特に好ましくは150〜3700である。
【0033】
上記末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、好ましくは2.0×10
4〜150×10
4であり、さらに好ましくは3.0×10
4〜120×10
4であり、特に好ましくは3.5×10
4〜90×10
4である。上記末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂の重量平均分子量が2.0×10
4未満であると、上記熱可塑性樹脂層の靭性が不足し、無機ガラスを補強するという効果が不十分となるおそれがあり、150×10
4を超えると高粘度になりすぎるためハンドリング性が悪くなるおそれがある。
【0034】
上記末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは150℃〜350℃であり、さらに好ましくは180℃〜320℃であり、特に好ましくは210℃〜290℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる透明基板を得ることができる。
【0035】
上記の末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂としては、市販のものを用いてもよい。市販の末端にフェノール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、住友化学社製の「スミカエクセル 5003P」等が挙げられる。
【0036】
第1の熱可塑性樹脂が末端に有する水酸基は、好ましくはフェノール性水酸基である。第1の熱可塑性樹脂がフェノール性水酸基を末端に有することにより、第1の熱可塑性樹脂層に含まれるエポキシ系末端カップリング剤との強固な相互作用を得られる。
【0037】
上記水酸基の含有量は、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂100重合度あたり、好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5〜2.0である。水酸基の含有量がこのような範囲であれば、上記エポキシ系末端カップリング剤との優れた相互作用を得ることができる。
【0038】
<C−1−2.エポキシ系末端カップリング剤>
上記第1のキャスティング溶液は、エポキシ系末端カップリング剤を含む。上記エポキシ系末端カップリング剤中のエポキシ基は、上記第1の熱可塑性樹脂と化学結合または相互作用し得ると推測され、上記エポキシ系末端カップリング剤中のシリル基は、上記無機ガラスの有する置換基(例えば、水酸基)と化学結合することができるので、第1の熱可塑性樹脂層は上記無機ガラスとの密着性にも優れる。結果として、本発明の透明基板は、無機ガラスと第1の熱可塑性樹脂層との密着性が向上し、高温高湿環境下でも優れた密着性を有する。
【0039】
上記エポキシ系末端カップリング剤としては、任意の適切なものを用いることができる。具体例には、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
エポキシ系末端カップリング剤は、市販品を用いてもよい。市販のエポキシ系末端カップリング剤としては、例えば、信越化学工業社製、商品名「KBM−303」(2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、商品名「KBM−403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、商品名「KBE−402」(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、商品名「KBE−403」(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)等が挙げられる。
【0041】
上記エポキシ系末端カップリング剤の含有量は、第1の熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは10重量部〜50重量部であり、より好ましくは15重量部〜40重量部であり、さらに好ましくは20重量部〜35重量部である。エポキシ系末端カップリング剤の含有量を上記の範囲にすることで、無機ガラスと樹脂層との密着性を十分に向上させることができる。さらに、透明基板の総厚を厚くしても、所望のヘイズ値を有する透明基板が得られる。
【0042】
<C−1−3.環状エーテル化合物、環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物>
上記第1のキャスティング溶液は、好ましくは、環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物をさらに含む。環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物を含有すれば、当該第1の熱可塑性樹脂層と無機ガラスとを安定的に密着させることができるので、高い歩留まりで透明基板を得ることができる。
【0043】
環状エーテル化合物としては、任意の適切なものを用いることができ、例えば、オキセタン類等の4員環の環状エーテル化合物、テトラヒドロフラン類等の5員環の環状エーテル化合物、テトラヒドロピラン類等の6員環の環状エーテル化合物、エポキシ類等が挙げられる。環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物としては、任意の適切な環状エーテル化合物を開環させたものを用いることができ、例えば、上記の環状エーテル化合物を開環させた化合物が挙げられる。環状エーテル化合物の開環方法としていは、任意の適切な方法が用いられる。
【0044】
上記エポキシ類としては、分子中にエポキシ基を持つものであれば、任意の適切なものが使用できる。上記エポキシ類としては、例えば、ビスフェノールA型,ビスフェノールF型、ビスフェノールS型及びこれらの水添加物等のビスフェノール型;フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型等のノボラック型;トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型等の含窒素環型;脂環式型;脂肪族型;ナフタレン型、ビフェニル型等の芳香族型;グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型等のグリシジル型;ジシクロペンタジエン型等のジシクロ型;エステル型;エーテルエステル型;およびこれらの変性型等のエポキシ系樹脂が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。好ましくは、上記エポキシ類は、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂、脂環式型エポキシ系樹脂、含窒素環型エポキシ系樹脂、又はグリシジル型エポキシ系樹脂である。また、特開2008-107510号公報に開示されているエポキシ系プレポリマーを用いてもよい。
【0045】
上記オキセタン類は、好ましくは、下記一般式(I)、(II)、または(III)で表わされる化合物である。
【0047】
上記式(I)中、R
1は水素原子、シクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜10のアルキル基を表わす。
【0050】
上記式(III)中、R
2はシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜10のアルキル基を表わす。nは1から5までの整数である。
【0051】
上記オキセタン類としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)、2−エチルヘキシシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0052】
上記の環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物としては、市販のものを用いてもよい。市販の環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物としては、例えば、東亞合成社製のアロンオキセタン OXT−221、ダイセル化学工業製のセロキサイド2021P、EHPE3150、DIC社製のエピクロンHP4032等が挙げられる。
【0053】
環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物の含有量は、第1の熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは5重量部〜50重量部、より好ましくは5重量部〜30重量部であり、さらに好ましくは5重量部〜20重量部である。環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物の含有量を上記の範囲にすることで、加熱下での環状エーテル化合物由来の樹脂層の着色を抑制することができる。
【0054】
上記第1の熱可塑性樹脂層は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、希釈剤、老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、安定剤、可塑剤、消泡剤、補強剤等が挙げられる。樹脂組成物に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0055】
<C−2.第2の熱可塑性樹脂層>
第2の熱可塑性樹脂層22および22’は、第2のキャスティング溶液を第1の熱可塑性樹脂層21および21’の上にそれぞれ塗工することにより、形成される。第2のキャスティング溶液は、第2の熱可塑性樹脂を含む。第2の熱可塑性樹脂層22および22’が無機ガラス10の両側に配置される場合、それぞれの第2の熱可塑性樹脂層22,22’は、同一の組成で構成されてもよく、異なる組成で構成されてもよい。好ましくは、それぞれの第2の熱可塑性樹脂層は、同一の熱可塑性樹脂で構成される。第2の熱可塑性樹脂層22および22’は、単一の層であっても、複数の層であってもよい。第2の熱可塑性樹脂層22および22’が複数の層である場合、該複数の層は同一の樹脂組成物から形成されていても、異なる樹脂組成物から形成されていてもよい。
【0056】
上記第2の熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは5μm〜60μm、より好ましくは20μm〜50μm、さらに好ましくは20μm〜40μmである。第2の熱可塑性樹脂層22および22’が、透明基板の両側に配置される場合、第2の熱可塑性樹脂層22および22’の厚みは同一であっても、異なっていてもよい。好ましくは、第2の熱可塑性樹脂層22および22’の厚みは同一である。したがって、特に好ましくは、無機ガラス10の両側に配置された第2の熱可塑性樹脂層22および22’は、同一の組成で同一の厚みになるように構成される。このような構成であれば、加熱処理されても、無機ガラスの両面に熱応力が均等に掛かるため、反りやうねりがきわめて生じ難くなる。
【0057】
第2の熱可塑性樹脂は、第1の熱可塑性樹脂と相溶性を示すものであれば、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂等が挙げられる。
【0058】
上記第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは150℃〜350℃であり、より好ましくは170℃〜330℃であり、さらに好ましくは190℃〜300℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる透明基板を得ることができる。
【0059】
上記第2の熱可塑性樹脂層の25℃における弾性率は、好ましくは1.5GPa〜10GPaであり、より好ましくは1.8GPa〜9GPaであり、さらに好ましくは2GPa〜8GPaである。このような範囲であれば、無機ガラスを薄くした場合でも、当該第2の熱可塑性樹脂層が変形時の欠陥への引き裂き方向の局所的な応力を緩和するので、無機ガラスへのクラックや破断が生じ難くなる。
【0060】
第2の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値は、好ましくは1.5Mpa・m
1/2〜10Mpa・m
1/2であり、より好ましくは、2Mpa・m
1/2〜8Mpa・m
1/2であり、特に好ましくは2.5Mpa・m
1/2〜6Mpa・m
1/2である。このような範囲であれば、第2の熱可塑性樹脂層に含まれる第2の熱可塑性樹脂が十分な粘度を有するため、無機ガラスのクラックの進展や破断を防ぎ、良好な屈曲性を有する透明基板を得ることができる。第2の熱可塑性樹脂層の25℃における破壊靱性値が1.5Mpa・m
1/2以上であれば、高い屈曲性を実現することができるが、通常、破壊靱性値の上限値は10Mpa・m
1/2である。
【0061】
上記第2の熱可塑性樹脂層の波長550nmにおける透過率は、好ましくは80%以上である。上記第2の熱可塑性樹脂層の波長550nmにおける屈折率(n
r)は、好ましくは1.3〜1.7である。
【0062】
上記第2の熱可塑性樹脂層は、耐薬品性を有することが好ましい。具体的には、表示素子作製の際の洗浄工程等に用いられる溶剤に対して、耐薬品性を有することが好ましい。表示素子作製の際の洗浄工程等に用いられる溶剤としては、アセトンが挙げられる。
【0063】
上記第2の熱可塑性樹脂層は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。該添加剤としては、上記第1の熱可塑性樹脂層に用いられ得る添加剤と同じものが挙げられる。樹脂組成物に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0064】
<D.その他の層>
本発明の透明基板100は、樹脂層20および20’の無機ガラス10とは反対側(第2の樹脂層22,22’の上)に、さらに任意の適切な層を設けてもよく、例えば、透明導電性層やハードコート層等が挙げられる。
【0065】
透明導電性層は、表示素子や太陽電池の基板として本発明の透明基板を使用する際に、電極や電磁波シールドとして機能させるために用いられる。透明導電性層に用いる材料としては、任意の適切なものが用いられ得る。具体的には、銅や銀等の金属、ITO(インジウム錫酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)等の金属酸化物、ポリチオフェンやポリアニリン等の導電性高分子、カーボンナノチューブ等の材料が挙げられる。
【0066】
ハードコート層は、透明基板に耐擦傷性や表面平滑性を付与することができる。ハードコート層に用いる材料やその形成方法としては、任意の適切なものが用いられ得る。材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂やこれらの混合物が挙げられる。ハードコート層の形成方法としては、例えば、上記の樹脂を熱や活性エネルギー線により硬化させる方法が挙げられる。
【0067】
<E.透明基板の製造方法>
本発明の透明基板100は、任意の適切な方法で製造することができる。例えば、上記無機ガラス10の片側に、上記第1のキャスティング溶液を直接塗工し、第1の熱可塑性樹脂層21を形成する工程、および該第1の熱可塑性樹脂層21の上に、上記第2のキャスティング溶液を直接塗工し、第2の熱可塑性樹脂層22を形成する工程を含む。透明基板100が、無機ガラスの両側に樹脂層20および20’を有する場合、さらに、無機ガラスの他方の面に、上記第1のキャスティング溶液を直接塗工し、第1の熱可塑性樹脂層21’を形成する工程、および該第1の熱可塑性樹脂層21’の上に、上記第2のキャスティング溶液を直接塗工し、第2の熱可塑性樹脂層22’を形成する工程を含む。
【0068】
第1の熱可塑性樹脂層21および21’の形成方法は、末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂、およびエポキシ系末端カップリング剤を含む第1のキャスティング溶液を無機ガラス10の片側または両側に塗工し塗工層を形成する塗工工程、該塗工層を乾燥させる乾燥工程、および乾燥後の塗工層を熱処理する熱処理工程からなる。第1のキャスティング溶液は、好ましくは、さらに環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物を含む。第1のキャスティング溶液における、末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂、エポキシ系末端カップリング剤、ならびに環状エーテル化合物および/または環状エーテル化合物の環状部分が開環した化合物の含有量は、上記のとおりである。
【0069】
上記塗工工程の際に使用される塗工溶媒は、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、芳香族系溶媒、高極性溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン等が挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、フェノール等が挙げられる。高極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
【0070】
上記第1のキャスティング溶液の塗工方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング法;フレキソ印刷等の凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法等の凹版印刷法、オフセット印刷法等の平版印刷法、スクリーン印刷法等の孔版印刷法等の印刷法が挙げられる。
【0071】
上記第1の熱可塑性樹脂層は、好ましくは、第1のキャスティング溶液を塗布した後、塗布層を乾燥して得られる。乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には100℃〜200℃であり、乾燥時間は代表的には1〜30分である。乾燥している間に、エポキシ系末端カップリング剤と末端に水酸基を有する第1の熱可塑性樹脂とを反応させることができる。
【0072】
上記第1の熱可塑性樹脂層の熱処理方法は、任意の適切な熱処理方法が採用され得る。代表的には、熱処理温度は50℃〜180℃であり、熱処理時間は1〜20分である。熱処理により、エポキシ基末端カップリング剤と無機ガラス表面とを化学結合により結合させることができる。
【0073】
次いで、上記の方法で形成された第1の熱可塑性樹脂層21,21’の上に、第2のキャスティング溶液をそれぞれ直接塗工し、第2の熱可塑性樹脂層22,22’を形成する。第2の熱可塑性樹脂層22および22’は、上記第1の熱可塑性樹脂層21および21’の形成方法と同様の方法を用いて形成され得る。具体的には、第2の熱可塑性樹脂層22,22’の形成方法は、第2の熱可塑性樹脂を含む第2のキャスティング溶液を第1の熱可塑性樹脂層21,21’の上に塗工し塗工層を形成する塗工工程と、該塗工層を乾燥させる乾燥工程からなる。塗工工程については、上記と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0074】
上記第2の熱可塑性樹脂層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には80℃〜150℃であり、乾燥時間は代表的には1〜30分である。
【0075】
本発明の透明基板の製造方法は、好ましくは、形成された第1の熱可塑性樹脂層21,21’および第2の熱可塑性樹脂層22,22’、すなわち、樹脂層20および20’をさらに乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の樹脂層20および20’を熱処理する熱処理工程を含む。これらの工程を含むことにより、無機ガラス、第1の熱可塑性樹脂層、および第2の熱可塑性樹脂層の間の化学結合、または相互作用をより強固にすることができる。乾燥方法としては、上記の任意の適切な方法が採用され得、加熱乾燥方法の場合、乾燥温度は代表的には、100℃〜200℃であり、乾燥時間は代表的には1〜30分である。熱処理方法は、任意の適切な熱処理方法が採用され得、代表的には、熱処理温度は50℃〜180℃であり、熱処理時間は1〜20分である。
【0076】
本発明の透明基板の製造方法は、用途に応じて、第2の熱可塑性樹脂層22,22’の上に、さらに、任意の適切なその他の層を形成する工程を含む。その他の層としては、上記D項に例示した透明導電性層やハードコート層等が挙げられる。その他の層を形成する方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。
【0077】
<F.用途>
本発明の透明基板は、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示素子や、太陽電池、有機EL素子等の照明素子に好適に用いることができる。また、本発明の透明基板は、可撓性、屈曲性および耐衝撃性にも優れるため、フィルム状の表示素子や太陽電池、照明素子にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0078】
本発明について、以下の実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、厚みはアンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
【0079】
[実施例1]
末端に水酸基を有するポリエーテルサルホン(スミカエクセル 5003P、住友化学社製)36.2gをシクロペンタノン172g、およびN,N−ジメチルホルムアミド10.8gの混合溶媒に溶かし、末端に水酸基を有するポリエーテルサルホンが16.5重量%の溶液を得た。得られた溶液に、レベリング剤(BYK307、ビックケミー社製)0.027g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(セロキサイド2021P、ダイセル化学工業社製)1.81g、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(アロンオキセタン OXT−221、東亞合成社製)1.45g、2−メチルイミダゾール1.09g、エポキシ系末端カップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)9.05gを添加し、第1のキャスティング溶液を得た。
無機ガラス(厚み:50μm、縦10cm×横4cm)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、上記第1のキャスティング溶液を塗工し、100℃で10分間乾燥させ、さらに170℃で20分間熱処理し、厚みが1μmの第1の熱可塑性樹脂層を形成した。他方の面についても、同様の処理をし、第1の熱可塑性樹脂層を形成した。
ポリアリレート(M−4000、ユニチカ社製)90gをシクロペンタノン600gに溶かし、第2のキャスティング溶液を得た。得られた第2のキャスティング溶液を、上記第1の熱可塑性樹脂層の上に塗工し、90℃で15分間乾燥させた。さらに、他方の面の第1の熱可塑性樹脂層の上にも、第2のキャスティング溶液を塗工し、85℃で10分間乾燥させた。次いで、両面を130℃で10分間乾燥させ、さらに170℃で20分間熱処理し、片側の厚みが36.5μmの第2の熱可塑性樹脂層を形成した。得られた透明基板の総厚は、125μmであった。
【0080】
[実施例2]
ポリアリレート1(M−4000、ユニチカ社製)の代わりに、ポリアリレート2(U−100、ユニチカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、総厚が125μmの透明基板を得た。
【0081】
[実施例3]
第1の熱可塑性樹脂層の厚みを10μmにした以外は、実施例1と同様にして、総厚が143μmの透明基板を得た。
【0082】
[比較例1]
末端に水酸基を有するポリエーテルサルホン(スミカエクセル 5003P、住友化学社製)の代わりに、末端に水酸基を有さないポリエーテルサルホン(スミカエクセル 5200P、住友化学社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、総厚が125μmの積層体を得た。
【0083】
[比較例2]
エポキシ系末端カップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)の代わりに、アミノ基含有カップリング剤(KBM603、信越化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、総厚が125μmの積層体を得た。
【0084】
[参考例1]
ポリアリレート1(M−4000、ユニチカ社製)90gを塩化メチレン600gに溶かし、さらにレベリング剤(BYK307、ビックケミー社製)0.0675gを添加したキャスティング溶液を得た。
無機ガラス(厚み:50μm、縦10cm×横4cm)の片面表面をメチルエチルケトンで洗浄後、コロナ処理を行い、アミノ基含有カップリング剤(KBM−603、信越化学工業社製)を塗布し、110℃で10分間乾燥させた。カップリング処理をした無機ガラスの上に上記キャスティング溶液を塗工し、40℃で15分間乾燥させた。他方の面にも、同様に、カップリング処理をして、上記キャスティング溶液を塗工し、40℃で10分間乾燥させた。次いで、両面を60℃で10分間、110℃で20分間乾燥させた後、200℃で20分間熱処理を行い、総厚が125μmの積層体を得た。
【0085】
〈評価〉
上記実施例、比較例、および参考例で用いた第2の熱可塑性樹脂層および、上記で得られた透明基板および積層体を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
(1)密着性試験
JIS K 5400の碁盤目剥離試験により評価した。すなわち、樹脂層側の表面(第2の熱可塑性樹脂の表面)上10mm角中に1mm間隔にカッターで切れ目を入れ、100個の碁盤目を作り、粘着テープをその上に貼り付けた後、剥離し、無機ガラスから剥離した樹脂層の碁盤目の数により密着性を評価した。
実施例で得られた透明基板、および比較例と参考例で得られた積層体を、温度60℃、湿度90%の環境下に500時間置き、500時間経過後の透明基板について、同様に碁盤目剥離試験により密着性を評価した。
剥離した樹脂層の碁盤目の数が0個の場合は○、1個以上の場合は×とした。
(2)破断直径
(a)実施例で得られた透明基板、および比較例と参考例で得られた積層体を評価用試料として準備した。
(b)無機ガラス露出部分の縦辺端部の中央に5mm以下のクラックを入れた。
(c)評価用試料の縦辺を屈曲させ、クラックが、無機ガラス露出部分を進展し、さらに樹脂等の積層領域において1cm進展した時点での、縦辺を円周とする円の直径を破断直径とした。
(3)ヘイズ
(株)村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM−150」を用い、JIS K7136に基づき、実施例で得られた透明基板、および比較例と参考例で得られた積層体のヘイズ値を測定した。
(4)弾性率
Hysitron社製 製品名「Tribo Indenter」を用いて、温度25℃において、第2の熱可塑性樹脂層の単一押し込み測定(押し込み因子:Berkovich(三角錐形)、押し込み深さ:230〜280nm)により測定した。
(5)破壊靭性値
各実施例、比較例、および参考例で用いた第2の熱可塑性樹脂を用いて、厚み50μm、幅2cm、長さ15cmの短冊状樹脂サンプルを作製し、短冊長手方向の端部(中央部分)にクラック(5mm)を入れた。オートグラフ(島津製作所製、AG−I)により短冊長手方向に引っ張り応力を加え、温度25℃でのクラックからの樹脂破断時の応力を測定した。試験条件は、チャック間距離を10cm、引っ張り速度を10mm/minとして行った。得られた破断時の引っ張り応力σとクラック長a、サンプル幅bを以下の式に代入し、破断時の破壊靭性値K
ICを求めた。
【数1】
(6)ガラス転移温度
各実施例、比較例、および参考例で用いた第2の熱可塑性樹脂を用いて、セイコーインスツールメンツ社製DSC「Exstar6000 DSC6220」を用いて、ピーク値からガラス転移温度を求めた。
【0086】
【表1】
【0087】
[評価]
実施例1〜3の透明基板は、高温高湿(温度:60℃、湿度:90%)の環境下に500時間置いた後であっても、無機ガラスと樹脂層との密着性に優れていた。さらに、これらの透明基板は、クラックや破断が生じにくいものであり、さらにヘイズ値も抑制されていた。
【0088】
比較例1および2の積層体は、高温高湿環境下に置く前の段階で、無機ガラスと樹脂層が剥離した。さらに、無機ガラスが割れてしまうため、破断直径やヘイズを測定することができなかった。参考例1の積層体は、高温高湿環境下に置く前の段階では、優れた密着性を有していたが、高温高湿環境下に500時間置いた後では無機ガラスと樹脂層とが剥離した。さらに、無機ガラスが割れてしまうため、破断直径やヘイズを測定することができなかった。