(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記(a)段階の廃フィルタは、3重量%〜50重量%のセシウムが捕集されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載のセシウム廃フィルタセラミックインゴットの製造方法。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力発電によって生産される電力は、韓国内電力生産量の約40%を占めており、原子力発電の結果として発生する使用済み核燃料は、毎年850トン程度に達するものと知られている。このような使用済み核燃料のリサイクル方案として、大きくパイロプロセッシング(乾式精練技術工程、Pyroprocessing)が登場している。パイロプロセッシングというのは、高温(500〜650℃)の溶融塩媒質内で電気化学的方法を利用して使用済み核燃料からウラン(U)及び超ウラン(TRU)元素などの核燃料物質を回収する技術である。上記パイロプロセッシングの前処理過程として高温揮発性酸化(voloxidation process)工程が伴われるが、この際、揮発性核種(Kr、Xe、C−14、H−3など)及び準揮発性核種(Cs、Tc、Iなど)が放出されるようになる。したがって、上記核種が施設及び環境に放出されないようにこれを捕集するフィルタを処理する技術と、上記フィルタを処分するために安定した固体状インゴット(ingot)として製造する技術の必要性が強調されている。
【0003】
これと関連して、特許文献1及び特許文献2には、石炭灰及びシリカ40〜65重量%、アルミナ15〜30重量%、鉄酸化物5〜15重量%、モリブデン酸化物1〜15重量%、クロム酸化物1〜10重量%、及びバナジウム酸化物1〜10重量%を含む固体媒質を利用して高温化学的吸着方法によってセシウムを選択的に分離し捕集する技術を提供している。上記先行特許は、パイロプロセッシング前処理高温熱処理工程中に99%以上揮発が予想される半減期が約30年の高放熱及び高放射能核種であるセシウム(Cs−137)をアルミノシリケート成分のセラミックフィルタを利用して安定したセシウムアルミノシリケート(cesium aluminosilicates:(ポルサイト(CsAlSi
2O
6)、CsAlSiO
4、及びCsAlSi
5O
12)相で選択的に捕集することによって、使用済み核燃料の放射線及び熱を減少させて、最終的に処分に必要な面積を低減することができることを提示している。
【0004】
また、放射性高準位廃棄物処理のために頻繁にガラス化方法が行われたが、物理・化学的に堅固なガラス構造中に放射性核種を閉じこめて固体化させてガラス固化体に作るものであって、組成と工程変数に柔軟で且つ放射性に高い抵抗性がある長所があるが、耐浸出性が低い短所がある。W.J.Grayによれば、上記工程でセシウムは、1000℃で5.5%、1100℃で31%、1200℃で100%揮発される。したがって、揮発されたセシウムを再処理しなければならない工程の困難があるだけでなく(W.J.、“Volatility of Some Potential High−Level Radioactive Waste Forms”、Rad.Waste Mgmt.、1(2)、147−169(1980))、ガラス固化体内に含有することができるセシウムは、最大15重量%で、投入する固化剤が増加し、廃棄物量が増加する問題点がある。
【0005】
同時に、ガラス固化体をガンマ線照射器に使用するとき、比放射能(Ci/g、specific activity)が少ないため、実際産業体でガンマ線を照射するために効率的に利用するのに困難がある(International Atomic Energy Agency、Feasibility of Separation and Utilization of Cesium and Strontium from High Level Liquid Waste、Technical Report Series No.356、IAEA、Vienna(1993))。
【0006】
上記のように、揮発性セシウムを捕集する技術と放射性高準位廃棄物をガラス化する技術は公知されたことがあるが、多様な問題点が存在するので、使用済み核燃料高温熱処理工程中に発生する放射性気体状廃棄物を捕集したフィルタを対象にして固化体として製造する新しい方法が要求されている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明者は、使用済み核燃料高温熱処理工程中に発生する放射性気体状廃棄物を安定した固化体として製造する技術開発のために研究した結果、気体状セシウムを捕集したセシウム廃フィルタ自体を焼結し、固化剤としてガラス
原料物質を添加し、安定した固化体を製造することができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、セシウム廃フィルタを粉砕し焼結し、固化剤としてNa
2O、K
2O、Fe
2O
3、TiO
2、MgO、CaOまたはB
2O
3を添加し、熱的安定性に優れており、密度が高くて、向上した耐浸出性を示す安定したセラミックインゴットの製造方法を提供することにある。しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、下記段階を含む、放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴット(ingot)の製造方法を提供する:
(a)気体状セシウムが捕集された廃フィルタを粉砕し、混合する段階;
(b)上記粉砕・混合された廃フィルタを1次焼結させる段階;
(c)上記1次焼結された廃フィルタを粉砕する段階;及び
(d)上記(c)段階で粉砕された粉末を2時間〜10時間2次焼結させて、セラミックインゴットを製造する段階。
【0011】
また、本発明は、上記方法で製造されるセシウム廃フィルタセラミックインゴットであって、上記セシウム廃フィルタセラミックインゴットは、廃フィルタが65重量%〜100重量%含まれる、ことを特徴とするセシウム廃フィルタセラミックインゴットを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパイロプロセッシングの前処理工程のうち高温揮発性酸化工程で放出される放射性セシウム酸化物が捕集されたセシウム廃フィルタを利用してセラミックインゴットを製造する方法は、廃フィルタの粉砕及び900℃〜1800℃の温度での焼結により簡単に安定した固体形態で製造され、セシウムが捕集完了した廃フィルタからセシウムが施設及び環境に放出されることを防止することができ、廃フィルタの処分が容易である。
【0013】
また、上記方法で製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットは、熱的安定性に優れており、密度が向上し、従来技術に比べて少ない固化剤を添加し、セシウムを多量で含有することができるとともに、放射性セシウムの漏出速度が非常に低い長所があり、向上した耐浸出性を示す長所がある。
【0014】
さらに、本発明は、従来のガラス化方法を利用する場合、ガラス化された固化体中のセシウムが容易に揮発し、再処理しなければならなかった問題点を克服し、セシウムの揮発率が約5%以下に低下したセラミックインゴットを提供することができる。また、従来ガラス化方法を利用したとき、セシウム含有量が最大15重量%に過ぎなかったのに対し、本発明によるセシウム廃フィルタインゴットは、セシウム含有量が最大50重量%と顕著に高く、比放射能(Ci/g、specific activity)も高い。したがって、本発明のセシウム廃フィルタインゴットを利用すれば、セシウム同位元素としてリサイクルし、ガンマ放射能分析などにおいてガンマ線照射器に有用に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、前述したように、使用済み核燃料高温熱処理工程中に発生する放射性気体状廃棄物を安定した固化体として製造する方法を研究するために、セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタを粉砕後、混合し、焼結させて、セシウム廃フィルタセラミックインゴットを製造した。
【0017】
その結果、上記方法によって製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットが熱的安定性に優れており、密度が高く、耐浸出性が良く、比放射能が高いことを確認し、本発明を完成した。
【0018】
したがって、本発明は、下記段階を含む、放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットの製造方法を提供する:
(a)気体状セシウムが捕集された廃フィルタを粉砕し、混合する段階;
(b)上記粉砕・混合された廃フィルタを1次焼結させる段階;
(c)上記1次焼結された廃フィルタを粉砕する段階;及び
(d)上記(c)段階で粉砕された粉末を2時間〜10時間2次焼結させて、セラミックインゴットを製造する段階。
【0019】
本発明において使用する用語「インゴット」というのは、物質を高温で溶かし、鋳型に入れて、一定の形態を有するように固めた塊、鋳塊を意味する。
【0020】
本発明において使用する用語「フィルタ」というのは、アルミノシリケート物質を焼結して製造されたセラミック気泡形フィルタを意味し、これを利用して高温(600〜1200℃)で気体状セシウムを化学的に捕集する(trap)物質である。すなわち、本発明の「廃フィルタ」は、既に目標物質、すなわちセシウムの捕集が完了した状態のフィルタである。したがって、本発明において「セシウム廃フィルタ」は、気体で放射性セシウムの捕集が完了した(trapped radioactive Cesium)フィルタを意味する。
【0021】
本発明において使用する用語「焼結」というのは、粉末を加熱し、粉末が互いに堅たく密着されて固体化させることを意味するもので、本発明において焼結工程は、焼結炉、焼成炉、加熱炉、またはか焼炉などを用いて行われ、好ましくは、本発明の実施例において使用する焼結炉であるが、これに制限されず、セシウム廃フィルタが粉砕された粉末を固体化させることができるものは、いずれも可能である。
【0022】
以下、本発明を段階別に詳しく説明する。
【0023】
本発明の(a)段階では、セシウムが捕集された廃フィルタは、石炭灰セラミックフィルタまたはアルミノシリケートセラミックフィルタであるが、揮発性セシウムを捕集することができるフィルタは、いずれでも可能である。本発明のセシウム廃フィルタは、パイロプロセッシングの前処理工程のうち、高温揮発性酸化(voloxidation process)工程で発生する気体状セシウムを上記フィルタを使用してセシウムがセシウムアルミノケイ酸塩(CsAlSi
2O
6、CsAlSi
5O
12、CsAlSiO
4)相などで3重量%〜50重量%捕集されたものである。上記セシウムが捕集された廃フィルタは、粒径が10μm〜60μmになるように粉砕し、均一に混合する。上記粉砕は、ロールミル、ハンマーミル、ディスクミルなどで行うことが好ましく、最も好ましくは、本発明の実施例において使用されるディスクミルであるが、これに限定されるものではなく、均一な混合のために撹拌器などを使用することができるが、均一に混合することができるものなら上記機器に限定されない。
【0024】
本発明の(b)段階は、上記粉砕されたセシウム廃フィルタを500℃〜1500℃で、好ましくは800℃〜1000℃で1次焼結する段階であって、気体状セシウム捕集時にフィルタのセシウム濃度は、フィルタ充填バスケットの軸方向を基準にしてセシウムが流入される引込部分のセシウム廃フィルタは、高濃度(0.14g−Cs/g−filter)であり、引込部分での距離が遠くなるほど低濃度(0.001g−Cs/g−filter)である濃度プロファイルの特徴を有する。したがって、1次焼結を通じてセシウム廃フィルタの高濃度領域で飽和されたセシウムがシリケートガラス質を生成する場合、低濃度領域のアルミノシリケート成分をさらに利用して、安定したセシウムアルミノケイ酸塩(CsAlSi
2O
6、CsAlSi
5O
12、及び/またはCsAlSiO
4)相に転換され得るようにして、均一なセシウム含有量を有することができるようにする。
【0025】
本発明の(c)段階は、上記1次焼結されたセシウム廃フィルタを粒径10μm〜60μmになるように粉砕し、混合する段階である。1次焼結されたセシウム廃フィルタの粉砕及び混合を再び行い、本発明のセシウム廃フィルタセラミックインゴットが容易に焼結されるようにする。
【0026】
本発明の(d)段階は、粉砕及び混合されたセシウム廃フィルタを大気雰囲気で2次焼結し、セシウム廃フィルタセラミックインゴットを製造する段階である。2次焼結は、3℃〜10℃/分の昇温速度で500℃〜1800℃で、好ましくは900℃〜1800℃で3〜6時間行うことが好ましいが、これに制限されるものではない。2回にわたった焼結を通じてインゴットの耐久性を強化することができる。
【0027】
また、本発明の放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットの製造方法は、2次焼結前に固化剤を添加する段階をさらに含むことができるが、上記固化剤は、融点を降下し、物性を改善するために添加されるもので、好ましくは、Na
2O、K
2O、Fe
2O
3、TiO
2、MgO、CaO、またはB
2O
3などが使用されることができるが、これに制限されない。上記固化剤は、(c)段階で粉砕されたセシウム廃フィルタに0重量%〜35重量%で混合されることができ、好ましくは、1重量%〜15重量%で混合されることができ、最も好ましくは、Na
2O1重量%〜10重量%、K
2O 1重量%〜10重量%、B
2O
3 1重量%〜15重量%で使用されることができるが、これに限定されない。上記固化剤は、上記範囲で適切な焼結温度を有するようになり、インゴットの耐久性が
向上し、放射性物質の浸出が減少する。
【0028】
また、本発明は、前述した方法で製造されるセシウム廃フィルタセラミックインゴットであって、上記セシウム廃フィルタセラミックインゴットは、セシウム廃フィルタが65重量%〜100重量%含まれることを特徴とするセシウム廃フィルタセラミックインゴットを提供する。
【0029】
固化剤が添加される場合、セシウム廃フィルタ65重量%〜100重量%に、固化剤は、0重量%〜35重量%であることが好ましい。もし、上記セシウム廃フィルタの含量が65重量%未満の場合には、放射性セシウム酸化物の含量が少ないため、非効率的なセシウム廃フィルタセラミックインゴットが形成される問題があり、固化剤の含量が35重量%を超過する場合には、不安定な固化体が形成される問題がある。
【0030】
本発明によるセシウム廃フィルタセラミックインゴットの浸出速度は、4.0×10
−4g/m
2・dayなので、浸出速度が非常に低くて、耐浸出性に非常に優れていることを確認した(実施例1及び比較例参照)。
【0031】
また、本発明の製造方法によって製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットは、焼結温度1500℃でもセシウム揮発率が約5%以下であり、熱的安定性が高く、セシウム揮発率が非常に低くて、耐浸出性が向上する長所がある(実施例5参照)。
【0032】
本発明での用語「比放射能」は、放射性同位元素を含んでいる物質の単位質量当たり放射能の強度、すなわち特定物質の放射能の強度をその質量で分けた値を意味するものである。本発明の製造方法によって製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットは、セシウム含有量が最大50重量%であるとき、比放射能は、18Ci/gと非常に高くて、ガンマ線の放出が可能なので、ガンマ線照射器用に活用して、食品照射、または産業廃水処理などに使用されることができる(実施例6参照)。
【0033】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明を一層容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕:アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットの浸出特性分析
アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが18重量%捕集されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10μm〜60μmとなるように粉砕後、粉末混合器を利用して混合した。その後、混合されたセシウム廃フィルタ粉末を1000℃で焼結した。そして、焼結されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10μm〜60μmとなるように粉砕後、粉末混合器を利用して混合した。最後に、アルミナるつぼに上記粉末を50gずつ入れて、大気雰囲気下で10℃/分の速度でそれぞれ1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、及び1500℃まで昇温させて、3時間焼結し、セシウム廃フィルタセラミックインゴットを製造した(
図1参照)。
【0035】
製造したセシウム廃フィルタインゴットの浸出特性を分析するために、それぞれの固化体から浸出速度を求めた。浸出実験は、上記セシウム廃フィルタセラミックインゴットを粉砕し、100メッシュ以下で存在する粉末を回収して行われた。上記回収された粉末を蒸留水に入れた後90℃から7日間反応させ、浸出液に存在するセシウムの含有量を分析して浸出速度を求め、その結果を表1に示した。
【0037】
表1に示されたように、製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットのセシウムの浸出速度は、各焼結温度別に1000℃で3.1×10
−3g/(m
2・day)、1100℃で1.8×10
−3g/(m
2・day)、1200℃で7.0×10
−4g/(m
2・day)、1300℃で8.0×10
−4g/(m
2・day)、1500℃で4.0×10
−4g/(m
2・day)であった。上記結果から、アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタインゴットは、セシウムの浸出速度が非常に低いことを確認した。
【0038】
〔実施例2〕:石炭灰フィルタを利用して放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットの浸出特性分析
石炭灰フィルタを利用してセシウムが12.3重量%捕集されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10μm〜60μmとなるように粉砕し、粉末混合器を利用して混合する。その後、混合したセシウム廃フィルタ粉末を1000℃で焼結した。そして、焼結されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10μm〜60μmとなるように粉砕後、粉末混合器を利用して混合した。最後に、アルミナるつぼに上記粉末を50gずつ入れて、大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度でそれぞれ1200℃、1300℃、及び1500℃で3時間焼結し、放射性セシウムが含有された石炭灰セシウム廃フィルタセラミックインゴットを製造した(
図2参照)。製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットの浸出特性を分析するために、浸出実験は、上記セシウム廃フィルタセラミックインゴットを粉砕し、100メッシュ以下で存在する粉末を回収して行われた。上記回収された粉末を蒸留水に入れた後、90℃で7日間反応させ、浸出液に存在するセシウムの含有量を分析し、それぞれのインゴットから浸出速度を求め、その結果を表2に示した。
【0040】
表2に示されたように、石炭灰フィルタを利用したセシウム廃フィルタセラミックインゴットのセシウム浸出速度は、焼結温度によって1200℃で6.0×10
−4g/(m
2・day)、1300℃で3.0×10
−4g/(m
2・day)、1500℃で3.0×10
−4g/(m
2・day)であり、石炭灰フィルタを利用した場合にも、放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタインゴットは、放射性物質漏出速度が非常に低いことを確認した。
【0041】
〔実施例3〕:石炭灰フィルタを利用して放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタにNa
2Oを添加したセシウム廃フィルタインゴットの製造及び浸出特性分析
石炭灰フィルタを利用してセシウムが18重量%捕集されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10μm〜60μmとなるように粉砕後、粉末混合器を利用して混合した。その後、混合したセシウム廃フィルタ粉末を1000℃で焼結した。そして焼結されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10μm〜60μmとなるように粉砕後、粉末混合器を利用して混合した。最後にセシウム廃フィルタとNa
2Oの比が90重量%:10重量%混合し、アルミナるつぼに上記混合物を50g入れて、大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃で3時間焼結し、放射性セシウム酸化物が含有された密度2.3g/cm
3のセラミックインゴットを製造した。また、セシウム廃フィルタインゴットの浸出特性を分析するために、セシウム廃フィルタセラミックインゴットを粉砕し、100メッシュ以下で存在する粉末を回収した。上記回収された粉末を蒸留水に入れた後、90℃で7日間反応させたとき、セシウムの浸出速度が6.0×10
−4g/m
2・dayであって、放射性物質の漏出速度が非常に低いことが分かる。
【0042】
〔実施例4〕:放射性セシウムが捕集された石炭灰セシウム廃フィルタセラミックインゴットの相分析
石炭灰フィルタを利用してセシウムが24重量%捕集されたセシウム廃フィルタを1200℃〜1500℃に焼結させて製造されたセラミックセシウム廃フィルタセラミックインゴットの相を分析するために、X−線回折分析(XRD、Simens、D−5000)した結果、主要ピークの位置によって固化体のセシウムは安定したポルサイト(pollucite、CsAlSi
2O
6)として存在することを確認した(
図4参照)。
【0043】
〔実施例5〕:放射性セシウムが捕集されたアルミノシリケートセシウム廃フィルタセラミックインゴットの相分析
アルミノシリケートフィルタを利用してセシウムが24重量%捕集されたセシウム廃フィルタを1200℃から1500℃まで焼結して製造されたセラミックセシウム廃フィルタインゴットの相を分析するために、X−線回折分析(XRD、Simens、D−5000)した結果、固化体内のセシウムは、CsAlSi
5O
12またはポルサイト(pollucite、CsAlSi
2O
6)として存在することを分かる(表3参照)。
【0045】
〔実施例6〕:石炭灰フィルタを利用して放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットのセシウム含有量変化による比放射能
パイロプロセッシング工程の基準核燃料である加圧軽水炉使用済み核燃料(初期濃度:4.5重量%、燃焼度:55,000MWd/tU、冷却期間:10年)を選定し、ORIGEN−ARP(Automatic Rapid Processing)コードを利用してセシウム廃フィルタインゴット内のセシウム含有量が12重量%、24重量%、50重量%であるときの比放射能を計算し、表4に示した。
【0047】
上記のように、セシウム含有量が12重量%であるとき、4.3Ci/g、24重量%であるとき、8.6Ci/g、50重量%であるとき、18Ci/gであって、比放射能が非常に高いことを確認した。
【0048】
〔比較例〕:アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが捕集されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットとガラス固化体の浸出特性分析
アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが捕集された廃フィルタインゴットとガラス固化体の浸出特性を分析するために、それぞれの試料から浸出速度を求めた。
【0049】
比較例のガラス固化体は、一般的なホウケイ酸ガラス固化体の製造方法で作られるもので、アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが18重量%捕集されたセシウム廃フィルタをディスクミルを利用して10〜60μmとなるように粉砕し、粉末混合器を利用して混合した。その後、セシウム廃フィルタ:B
2O
3:Na
2Oの比が50重量%:20重量%:30重量%となるように混合した後、これをアルミナるつぼに50gを入れて、大気雰囲気下で10℃/分の昇温速度で1200℃で3時間焼結し、放射性セシウムガラス固化体を製造した。
【0050】
上記製造されたホウケイ酸ガラス固化体をディスクミルを利用して粉砕後、100メッシュ以下に存在する粉末を回収した。上記回収された粉末を蒸留水に入れた後、90℃で7日間反応させて、浸出液に存在するセシウム含有量を分析し、浸出速度を求めた。
【0051】
また、アルミノシリケートフィルタを利用して放射性セシウムが捕集された廃フィルタを1200℃で3時間焼結後、製造されたセラミックインゴットの浸出速度(表1参照)を比較した。
【0052】
その結果、セシウム廃フィルタインゴットのセシウム浸出速度は、約7.0×10
−4g/m
2・dayであり、ガラス固化体は、約6×10
−2g/m
2・dayであった。したがって、ガラス固化体の浸出速度がセシウム廃フィルタインゴットに比べて約86倍以上高いので、本発明による方法で製造されたセシウム廃フィルタセラミックインゴットの放射性物質漏出速度が顕著に低いことを確認した。
【0053】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した内容は、すべての面で例示的なものであって、限定的なものではないことを理解しなければならない。