(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の合成繊維用処理剤は、平滑成分(A)と、上記一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物(B)とを含有し、イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン及び塩素イオンを所定濃度以下とするものである。以下、詳細に説明する。
【0025】
[平滑成分(A)]
平滑成分(A)は、本発明の処理剤の必須成分である。平滑成分(A)としては、1)脂肪族一価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A1)、2)脂肪族多価アルコールと脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A2)、3)脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A3)、4)分子内に芳香環を有する芳香族エステル化合物(A4)、5)含硫黄エステル化合物(A5)、6)鉱物油(A6)等、合成繊維処理剤として一般的に採用されている公知の平滑成分を挙げることができる。平滑成分(A)は1種又は2種以上を使用できる。
【0026】
1)エステル化合物(A1)
エステル化合物(A1)は、脂肪族一価アルコールと脂肪酸(脂肪族一価カルボン酸)とがエステル結合した構造を有する化合物であり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(A1)は1種又は2種以上を使用できる。
エステル化合物(A1)としては、下記一般式(4)で示される化合物であることが好ましい。
【0027】
【化4】
(式中、R
2は炭素数4〜24のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
3は炭素数6〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【0028】
R
2の炭素数は6〜22が好ましく、8〜20がより好ましく、10〜18がさらに好ましい。該炭素数が4未満では、油膜が弱いために毛羽が増加することがある。一方、該炭素数が24超では、繊維金属間の摩擦が高くなり、毛羽が増加することがある。R
2は、アルキル基とアルケニル基のどちらでもよいが、耐熱性に優れるという観点から、アルキル基が好ましい。
【0029】
R
3の炭素数は6〜22が好ましく、8〜20がより好ましく、10〜18がさらに好ましい。該炭素数が6未満では、油膜が弱いために毛羽が増加することがある。一方、該炭素数が24超では、繊維金属間の摩擦が高くなり、毛羽が増加することがある。R
3は、アルキル基とアルケニル基のどちらでもよいが、油膜強度が強く毛羽が発生しにくいという観点から、アルケニル基が好ましい。
【0030】
エステル化合物(A1)としては、特に限定されないが、例えば、2−デシルテトラデカノイルエルシネート、2−デシルテトラデカノイルオレエート、2−オクチルドデシルステアレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、ブチルパルミテート、ブチルステアレート、ブチルオレート、イソオクチルオレート、ラウリルオレエート、イソトリデシルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソステアリルオレエート、オレイルオクタノエート、オレイルラウレート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルオレエート等が挙げられる。これらの中でも、2−デシルテトラデカノイルオレエート、2−オクチルドデシルステアレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、ラウリルオレエート、イソトリデシルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソステアリルオレエート、オレイルオレエートが好ましい。
【0031】
エステル化合物(A1)は、一般的に市販されている脂肪酸と脂肪族一価アルコールを用いて、公知の方法で合成し、得ることができる。
【0032】
2)エステル化合物(A2)
エステル化合物(A2)は、脂肪族多価アルコールと脂肪酸(脂肪族一価カルボン酸)とがエステル結合した構造を有する化合物であり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(A2)は1種又は2種以上を使用できる。
【0033】
エステル化合物(A2)を構成する脂肪族多価アルコールは、2価以上であれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。多価アルコールは、油膜強度の点から、3価以上が好ましく、3〜4価がより好ましく、3価がさらに好ましい。
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ショ糖等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖が好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタンがより好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパンがさらに好ましい。
【0034】
エステル化合物(A2)を構成する脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和結合の数については特に限定はないが、3つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して潤滑性が損なわれるため、1つ又は2つが好ましい。脂肪酸の炭素数としては、油膜強度と潤滑性の両立から、8〜24が好ましく、10〜20がより好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸は、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を併用してもよい。
【0035】
脂肪酸としては、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
これらの中でも、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸が好ましく、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸がより好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸がさらに好ましい。
【0036】
エステル化合物(A2)は、分子内に2個以上のエステル結合を有する化合物であるが、製糸性の観点から、分子内に3個以上のエステル結合を有する化合物であることが好ましく、分子内に3個のエステル結合を有する化合物であることがさらに好ましい。
エステル化合物(A2)のヨウ素価については、特に限定はない。
【0037】
エステル化合物(A2)の重量平均分子量は、300〜1200が好ましく、300〜1000がより好ましく、500〜1000がさらに好ましい。該重量平均分子量が300未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする場合がある。一方、該重量平均分子量が1200超の場合、平滑性が不足して毛羽が多発し、高品位の繊維が得られないだけでなく、製織や編み工程での品位が劣る場合がある。なお、本発明における重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
【0038】
エステル化合物(A2)としては、例えば、トリメチロールプロパントリカプリレート、トリメチロールプロパントリカプリナート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリオレエート、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート、パルミテート)、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(トリパーム核脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパン(トリヤシ脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパンジカプリレート、トリメチロールプロパンジカプリナート、トリメチロールプロパンジラウレート、トリメチロールプロパンジオレエート、トリメチロールプロパン(ラウレート、ミリスチレート)、トリメチロールプロパン(ラウレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(ミリスチレート、オレエート)、トリメチロールプロパン(ジパーム核脂肪酸エステル)、トリメチロールプロパン(ジヤシ脂肪酸エステル)、ヤシ油、菜種油、パーム油、グリセリントリラウレート、グリセリントリオレエート、グリセリントリイソステアレート、グリセリンジオレエート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタン(ラウレート、ミリスチレート、オレエート)、ソルビタンジラウレート、ソルビタンモノオレエート、ペンタエリスリトールテトラカプリレート、ペンタエリスリトールテトラカプリナート、ペンタエリスリトールテトララウレート、エリスリトールテトララウレート、ペンタエリスリトール(テトラパーム核脂肪酸エステル)、ペンタエリスリトール(テトラヤシ脂肪酸エステル)、エリスリトールトリオレエート、エリスリトールジパルミテート、1,6ヘキサンジオールジオレエート等が挙げられる。
【0039】
エステル化合物(A2)、は一般的に市販されている脂肪酸と脂肪族多価アルコールを用いて、公知の方法で合成し得られたものを使用してもよい。又、天然の果実、種子又は花など天然より得られる天然エステルであって、エステル化合物(A2)の構成を満足する天然エステルをそのまま使用したり、必要に応じて、天然エステルを公知の方法で精製したり、更に精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製を行ったエステルを用いたりしてもよい。又、2種以上の天然エステル(油脂)をエステル交換して得られたエステルを用いてもよい。
【0040】
3)エステル化合物(A3)
エステル化合物(A3)は、脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とがエステル結合した構造を有する化合物であり、また分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。エステル化合物(A3)は1種又は2種以上を使用できる。
【0041】
エステル化合物(A3)を構成する脂肪族一価アルコールは、特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。脂肪族一価アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和結合の数については特に限定はないが、2つ以上有する場合、酸化により劣化が進行して処理剤が増粘して潤滑性が損なわれるため、1つが好ましい。脂肪族一価アルコールの炭素数としては、平滑性と油膜強度の観点から、8〜24が好ましく、14〜24がより好ましく、18〜22がさらに好ましい。脂肪族一価アルコールは、1種又は2種以上を使用してもよく、飽和脂肪族一価アルコールと不飽和脂肪族1価アルコールを併用してもよい。
【0042】
脂肪族1価アルコールとしては、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラコサニルアルコール、ネルボニルアルコール、セロチニルアルコール、モンタニルアルコール、メリシニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラドコサニルアルコール、ネルボニルアルコールが好ましく、ミリストレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコール、ネルボニルアルコールがより好ましく、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、エイコセノイルアルコール、エルカニルアルコールがさらに好ましい。
【0043】
エステル(A3)を構成する脂肪族多価カルボン酸は、2価以上であれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用できる。本発明で用いる脂肪族多価カルボン酸は、チオジプロピオン酸等の含硫黄多価カルボン酸を含まない。脂肪族多価カルボン酸の価数は、2価が好ましい。同様に、分子内にヒドロキシル基を含まないことが好ましい。
脂肪族多価カルボン酸としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらの中でも、アコニット酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が好ましく、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸がより好ましい。
【0044】
エステル化合物(A3)としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸次イソセチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジラウリル、セバシン酸ジオレイル、セバシン酸ジイソセチル等を挙げることができる。
【0045】
エステル化合物(A3)は、分子内に2個以上のエステル結合を有する化合物である。エステル化合物(A3)のヨウ素価については、特に限定はない。
【0046】
エステル化合物(A3)の重量平均分子量は、500〜1000が好ましく、500〜800がより好ましく、500〜700がさらに好ましい。該重量平均分子量が500未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする場合がある。一方、該重量平均分子量が1000超の場合、融点が高くなり、製織や編み工程でのスカム発生の原因となり、品位が劣る場合がある。
【0047】
エステル化合物(A3)、は一般的に市販されている脂肪族一価アルコールと脂肪族多価カルボン酸を用いて、公知の方法で合成し、得ることができる。
【0048】
4)芳香族エステル化合物(A4)
芳香族エステル化合物(A4)は、分子内に少なくとも1つの芳香環を有するエステル化合物である。詳細には、芳香族カルボン酸とアルコールとがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A4−1)、芳香族アルコールとカルボン酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(A4−2)を挙げることができる。また、芳香族エステル化合物(A4)は、分子内にポリオキシアルキレン基を有しない化合物である。芳香族エステル化合物(A4)は、1種又は2種以上を使用できる。
【0049】
エステル化合物(A4−1)を構成する芳香族カルボン酸は、モノカルボン酸であってもよく、多価カルボン酸であってもよい。1種又は2種以上を使用してもよい。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、トリメリット、ピロメリット酸等が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、トリメリット酸がさらに好ましい。
【0050】
エステル化合物(A4−1)を構成するアルコールは、一価アルコールであってもよく、多価アルコールであってもよい。また、脂肪族アルコール、脂環族アルコール、芳香族アルコールのいずれであってもよい。一価アルコールは、1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、一価アルコールが好ましく、脂肪族一価アルコールがさらに好ましい。
【0051】
1価アルコールとしては、アルキルベンゼンアルコール、ジアルキルベンゼンアルコール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ミリストレイルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、バクセニルアルコール、ガドレイルアルコール、アラキジルアルコール、イソイコサニルアルコール、エイコセノイルアルコール、ベヘニルアルコール、イソドコサニルアルコール、エルカニルアルコール、リグノセリニルアルコール、イソテトラコサニルアルコール、ネルボニルアルコール、セロチニルアルコール、モンタニルアルコール、メリシニルアルコール等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エステル化合物(A2)で説明した脂肪族多価アルコールやエステル化合物(A4−2)で説明する芳香族多価アルコール等を挙げることができる。
【0052】
エステル化合物(A4−2)を構成する芳香族アルコールは、1種又は2種以上を使用できる。芳香族系アルコールとしては、芳香族多価アルコールが好ましく、芳香族3価アルコールがさらに好ましい。
芳香族アルコールとしては、アルキルベンゼンアルコール等の芳香族1価アルコール、ジアルキルベンゼンアルコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族多価アルコール等を挙げることができる。これらの中でもビスフェノールA、ビスフェノールZ、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが好ましく、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンがより好ましい。
【0053】
エステル化合物(A4−2)を構成するカルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよい。また、1価のカルボン酸、多価のカルボン酸のいずれでもよい。1種または2種以上を使用してもよい。これらの中でも、1価のカルボン酸が好ましく、脂肪酸がさらに好ましい。脂肪酸は、残留性の点から、飽和であることが好ましい。脂肪酸は直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
【0054】
1価のカルボン酸としては、アルキルベンゼンカルボン酸、ジアルキルベンゼンカルボン酸、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、イソイコサン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
多価のカルボン酸としては、エステル化合物(A3)で説明した脂肪族多価カルボン酸や、エステル化合物(A4−1)で説明した芳香族多価カルボン酸等を挙げることができる。
【0055】
5)含硫黄エステル化合物(A5)
含硫黄エステル化合物は、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物及びチオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのモノエステル化合物から選ばれる少なくとも1種である。
含硫黄エステル化合物は、抗酸化能を有する成分である。該含硫黄エステル化合物を使用することで、処理剤の耐熱性を高めることができる。含硫黄エステル化合物は、1種又は2種以上を使用できる。該含硫黄エステル化合物を構成するチオジプロピオン酸の分子量は、400〜1000が好ましく、500〜900がより好ましく、600〜800がさらに好ましい。該含硫黄エステル化合物を構成する脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。また、脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分岐構造を有していてもよいが、分岐構造を有するものが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は8〜24が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜24がさらに好ましい。脂肪族アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコールおよびイソステアリルアルコールなどが挙げられ、これらの中でもオレイルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
含硫黄エステル化合物は、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物(本段落において、単にジエステルという)とチオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのモノエステル化合物(本段落において、単にモノエステルという)の混合物であってもよい。その際のジエステルとモノエステルのモル比は、100/0〜70/30が好ましく、100/0〜75/25がより好ましく、100/0〜80/20がさらに好ましい。
【0056】
6)鉱物油(A6)
また、本発明の合成繊維用処理剤は、上記以外の平滑成分として、鉱物油を含有してもよい。ここでいう鉱物油は処理剤を希釈するために用いる低粘度希釈剤ではなく、不揮発分に含まれる。鉱物油としては、特に限定はないが、マシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができる。鉱物油は、1種又は2種以上を使用してもよい。鉱物油の30℃における粘度は、100〜500秒が好ましい。
【0057】
平滑成分(A)としては、耐熱性向上の観点から、触媒等を除去して精製したものを用いることが好ましい。
【0058】
[有機スルホン酸化合物(B)]
上記一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物(B)は、本発明の処理剤の必須成分である。平滑成分(A)と有機スルホン酸化合物(B)を含有し、かつイオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO
42−)の重量割合を300ppm以下、塩素イオン(Cl
−)の重量割合を300ppm以下とすることにより、毛羽、糸切れ、ロール汚れを劇的に低減できる。なお、硫酸イオン(SO
42−)を単に硫酸イオン、塩素イオン(Cl
−)を塩素イオンということがある。
一般式(1)中、a及びbは、0以上の整数であって、a+b=5〜17を満たす整数である。a+bが5未満の場合、ロール汚れを低減する効果が小さくなる。一方、a+bが17超の場合、融点が高く、処理剤での相溶性が悪くなり、使用できなくなる。a+bは7〜17が好ましく、10〜15がさらに好ましい。
【0059】
Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基又は有機アミン基である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。アンモニウム基及び有機アミン基としては、NR
aR
bR
cR
dで示される基を挙げることができる。R
a、R
b、R
c及びR
dは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、ポリオキシアルキレン基である。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は、1〜24が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜18がさらに好ましい。ポリオキシアルキレン基は「−(A
1O)
mH」で示され、(A
1O)
mは一般式(2)で示されるものと同様である。
【0060】
NR
aR
bR
cR
dで示される基としては、例えばアンモニウム基、メチルアンモニウム基、エチルアンモニウム基、プロピルアンモニウム基、ブチルアンモニウム基、ヘキシルアンモニウム基、オクチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、ジプロピルアンモニウム基、ジブチルアンモニウム基、ジヘキシルアンモニウム基、ジオクチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリプロピルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、トリヘキシルアンモニウム基、トリオクチルアンモニウム基、テトラメチルアンモニウム基、テトラエチルアンモニウム基、テトラプロピルアンモニウム基、テトラブチルアンモニウム基、テトラヘキシルアンモニウム基、テトラオクチルアンモニウム基、エチルトリメチルアンモニウム基、プロピルトリメチルアンモニウム基、ブチルトリメチルアンモニウム基、ヘキシルトリメチルアンモニウム基、オクチルトリメチルアンモニウム基、メタノールアンモニウム基、エタノールアンモニウム基、プロパノールアンモニウム基、ブタノールアンモニウム基、ヘキサノールアンモニウム基、オクタノールアンモニウム基、ジメタノールアンモニウム基、ジエタノールアンモニウム基、ジプロパノールアンモニウム基、ジブタノールアンモニウム基、ジヘキサノールアンモニウム基、ジオクタノールアンモニウム基、トリメタノールアンモニウム基、トリエタノールアンモニウム基、トリプロパノールアンモニウム基、トリブタノールアンモニウム基、トリヘキサノールアンモニウム基、トリオクタノールアンモニウム基、(EO6)ブチルアミノエーテル基、(EO6)ヘキシルアミノエーテル基、(EO6)オクチルアミノエーテル基、(EO6)デシルアミノエーテル基、(EO6)ラウリルアミノエーテル基、(EO6)テトラデシルアミノエーテル基、(EO6)ヘキサデシルアミノエーテル基、(EO6)オレイルアミノエーテル基、(EO6)ステアリルアミノエーテル基、(EO6)ガドレイルアミノエーテル基、(EO6)テトラコシルアミノエーテル基、(EO10)オレイルアミノエーテル基、(EO10)オレイルアミノエーテル/エルカ酸塩、(EO3)ラウリルアミノエーテル基、(EO3)ラウリルアミノエーテル基、(EO7)ラウリルアミノエーテル基、(EO15)オレイルアミノエーテル基、(PO3、EO5)ステアリルアミノエーテル基、(PO5、EO3)ステアリルアミノエーテル基が挙げられる。
【0061】
有機スルホン酸化合物(B)を含む原料(以下、原料Xという)には、その製法に起因して硫酸ナトリウム及び/又は塩化ナトリウムが含まれている。この原料Xに含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムの比率は、イオンクロマトグラフ法によって、原料Xから検出される硫酸イオンや塩素イオンの重量割合から算出できる。
原料Xが硫酸ナトリウムを含む場合、原料Xから検出される硫酸イオンの重量割合は、有機スルホン酸化合物(B)に対して20000ppm以上である。また、原料Xが塩化ナトリウムを含む場合、原料Xから検出される塩素イオンの重量割合は、有機スルホン酸化合物(B)に対して20000ppm以上である。
このような原料Xを処理剤に用いると、前述したように、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムが紡糸時に延伸ロール上に脱落、蓄積し、糸切れ断糸の増加を引き起こす。また熱延伸を行うロール上では、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムがタールの蓄積を早め、ロール汚れを引き起こす。このような原料Xとしては、HOSTAPUR SAS(ヘキスト社製)、メルソラートH(バイエル社製)等を挙げることができる。
【0062】
本発明の効果を発揮させる点から、本発明の処理剤では、原料Xから硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを低減させた有機スルホン酸化合物(B)を含む原料(以下、原料Yという)を用いることが重要である。具体的には、イオンクロマトグラフ法によって原料Yから検出される硫酸イオンの重量割合が、有機スルホン酸化合物(B)に対して5000ppm以下であること、塩素イオンの重量割合が有機スルホン酸化合物(B)に対して5000ppm以下であることが好ましい。
本願効果をより発揮させる点から、原料Yから検出される当該硫酸イオンの重量割合は、有機スルホン酸化合物(B)に対して4000ppm以下がより好ましく、3000ppm以下がさらに好ましく、2000ppm以下が特に好ましい。同様に、原料Yから検出される塩素イオンの重量割合は、有機スルホン酸化合物(B)に対して4000ppm以下がより好ましく、3000ppm以下がさらに好ましく、2000ppm以下が特に好ましい。
なお、本発明におけるイオンクロマトグラフ法による硫酸イオン、塩素イオンの分析方法は、実施例に記載されたものによる。
【0063】
有機スルホン酸化合物(B)を含む原料Xから、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを低減させる方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。例えば、原料Xが硫酸ナトリウムを含む場合、原料Xにメタノール、水等の溶剤をいれ、硫酸ナトリウム等の無機物を沈降析出させ分離する方法等が挙げられる。また、原料Xが塩化ナトリウムを含む場合、原料Xに含まれる塩化ナトリウムをイオン交換膜により除去する方法やイオン交換樹脂により吸着する方法等が挙げられる。
【0064】
上記の有機スルホン酸化合物(B)は、スルホン酸基を一つ有するモノスルホン酸化合物である。本発明の処理剤は、このモノスルホン酸化合物に加え、下記一般式(5)で示されるジスルホン酸化合物を含有してもよい。
【0066】
式(5)中、c、d及びeは、0以上の整数であって、c+d+e=4〜16を満たす整数である。c+d+eが4未満の場合、ロール汚れを低減する効果が小さくなることがある。一方、l+m+nが17超の場合、処理剤での相溶性が悪くなり、使用できなくなることがある。c+d+eは6〜16が好ましく、9〜14がさらに好ましい。
Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基又は有機アミン基である。Mについての詳細は、一般式(1)のところで説明したMと同様である。
【0067】
上記ジスルホン酸化合物を含有する場合、有機スルホン酸化合物(B)であるモノスルホン酸化合物と一般式(5)で示されるジスルホン酸化合物の重量割合(モノスルホン酸化合物/ジスルホン酸化合物)は、50/50〜99/1が好ましく、70/30〜99/1がより好ましく、80/20〜98/2がさらに好ましい。
【0068】
[有機リン酸エステル化合物(C)]
本発明の処理剤は、毛羽を減少させるという点から、上記の平滑成分(A)、有機スルホン酸化合物(B)に加え、有機リン酸エステル化合物(C)をさらに含有することが好ましい。有機リン酸エステル化合物(C)としては、上記一般式(2)で示される化合物及び上記一般式(3)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0069】
一般式(2)及び(3)中、R
1は炭素数6〜24の炭化水素基である。A
1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であって、mは0〜15の整数である。nは1〜2の整数である。M
1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基又は有機アミン基である。Q
1は、M
1又はR
1O(A
1O)
mである。Yは1又は2である。
【0070】
R
1の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。R
1の炭素数は8〜24が好ましく、12〜24がさらに好ましい。R
1の炭素数は分布があってもよく、R
1は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
A
1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。オキシアルキレン単位の繰り返し数であるmは0〜15の整数であり、0〜10が好ましく、0〜3がさらに好ましく、mが0でポリオキシアルキレン基を含有しない場合が特に好ましい。(A
1O)
mは、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を50モル%以上有するポリオキシアルキレン基が好ましい。
【0071】
nは1〜2の整数である。n=2の場合、上記一般式(2)で示される化合物を構成する2つの有機基[R
1O(A
1O)
m]−は、同一でもよく、異なっていてもよい。
また、Q=R
1O(A
1O)
mの場合、一般式(3)示される化合物を構成する2つの有機基[R
1O(A
1O)
m]−は、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0072】
M
1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム基又は有機アミン基である。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。アンモニウム基及び有機アミン基としては、NR
aR
bR
cR
dで示される基を挙げることができる。NR
aR
bR
cR
dで示される基は、有機スルホン酸化合物(B)のところで説明したMと同様である。
【0073】
有機リン酸エステル化合物(C)は、一般式(2)においてn=1で示される有機リン酸エステル化合物(C1)及び一般式(2)においてn=2で示される有機リン酸エステル化合物(C2)を含む混合物や、有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)及び一般式(3)においてY=1、Q=R
1O(A
1O)
mで示される有機リン酸エステル化合物(C3)を含む混合物であることが好ましい。これら混合物には、一般式(3)においてY=1、Q=水素原子で示される有機リン酸エステル化合物(C4)を含有してもよい。
【0074】
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)及び(C4)並びに無機リン酸のP核積分比率(%)は、31P−NMRにおける各リン原子由来のピークの積分値から計算することができる。なお、P核積分比率(%)は、有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機リン酸の積分値の合計を100%として計算したものをいう。無機リン酸に関しては、後述する。
有機リン酸エステル化合物(C1)のP核積分比率(%)は、25〜85%が好ましく、35〜80%がより好ましく、40〜70%がさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物(C2)のP核積分比率(%)は、15〜65%が好ましく、20〜60%がより好ましく、25〜55%がさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物(C3)のP核積分比率(%)は、0〜50%が好ましく、0〜45%がより好ましく、0〜40%がさらに好ましい。有機リン酸エステル化合物(C4)のP核積分比率(%)は、0〜7%が好ましく、0〜6%がより好ましく、0〜5%がさらに好ましい。無機リン酸のP核積分比率(%)は、0〜10%が好ましく、0〜9%がより好ましく、0〜8%がさらに好ましい。
【0075】
有機リン酸エステル化合物(C)の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。例えば、有機リン酸エステル化合物(C)の製造方法は、R
1O(A
1O)
mHで示される有機ヒドロキシル化合物と無水燐酸P
2O
5とを反応させて反応物を得る工程(I)を含むものである。また、工程(I)において、無機燐酸や水を加えて反応してもよい。有機リン酸エステル化合物(C)の製造方法は、工程(I)の後、水を前記反応物に添加して加水分解する工程(II)を含んでもよい。工程(II)を含むことで、有機リン酸エステル化合物(C)に含まれる有機リン酸エステル化合物(C3)、(C4)の比率を調整することができる。前記反応物に添加する水の量は、前記有機リン酸エステル化合物(C)に対して、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜4重量%がより好ましく、0.1〜3重量%がさらに好ましい。水の添加量が0.01重量%未満及び5重量%超では、有機リン酸エステル化合物(C3)、(C4)の量の調節が困難となる場合がある。有機リン酸エステル化合物(C)の製造方法としては、工程(I)又は工程(II)の後、M
1を有するアルカリ化合物で中和する工程(III)を含んでもよい。
【0076】
有機リン酸エステル化合物(C)は、無水リン酸や無機リン中の不純物由来としてヒ素などの重金属化合物を含んでいる。本発明の処理剤は、ヒ素などの重金属化合物を含有してもよい。処理剤の不揮発分に占める重金属化合物の重量割合は、人体への影響や環境への安全性の点から、0.01重量%以下が好ましく、0.005重量%以下がより好ましく、0.001重量%以下がさらに好ましい。
【0077】
有機リン酸エステル化合物(C)を製造する際に、無機リン酸及び/又はその塩が生成される。そのため、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料(以下、原料Zという)には、無機リン酸及び/又はその塩が含まれている。無機リン酸及び/又はその塩の比率は、有機ヒドロキシル化合物と無水燐酸P
2O
5との割合や反応条件等によって調整することが可能である。
【0078】
[ノニオン界面活性剤(D)]
本発明の処理剤は、原糸に油膜強度、集束性を与え、製糸性を向上させる点から、上記の平滑成分(A)、有機スルホン酸化合物(B)に加え、ノニオン界面活性剤(D)をさらに含有することが好ましい。なお、ノニオン界面活性剤(D)は、前記の平滑成分(A)を除くものいう。ノニオン界面活性剤(D)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0079】
ノニオン界面活性剤(D)としては、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(以下、ポリヒドロキシエステルということがある)、ポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0080】
(ポリヒドロキシエステル、ポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステル)
ポリヒドロキシエステルは、構造上、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上の水酸基がエステル化されていることが好ましい。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0081】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
ポリヒドロキシエステルとしては、例えば、炭素数6〜22(好ましくは16〜20)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。
【0082】
炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸挙げられ、ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸が好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0083】
アルキレンオキシドの付加モル数は、3〜60が好ましく、8〜50がさらに好ましい。アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。アルキレンオキシドの付加は公知の方法により行うことができるが、塩基性触媒の存在下にて行うことが一般的である。
【0084】
ポリヒドロキシエステルは、例えば、多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシモノカルボン酸)を通常の条件でエステル化してエステル化物を得て、次いでこのエステル化物にアルキレンオキシドを付加反応させることによって製造できる。ポリヒドロキシエステルは、ひまし油などの天然から得られる油脂やこれに水素を添加した硬化ひまし油を用い、さらにアルキレンオキシドを付加反応させることによっても、好適に製造できる。
【0085】
ノニオン界面活性剤(D)には、上述のポリヒドロキシエステルの少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルも含まれる。封鎖する脂肪酸の炭素数は6〜24が好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸中の炭化水素基の炭素数は分布があってもよく、炭化水素基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、多環構造を有していてもよい。このような脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。エステル化の方法、反応条件等については特に限定はなく、公知の方法、通常の条件を採用できる。
【0086】
ポリヒドロキシエステル及びポリヒドロキシエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルとしては、例えば、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物モノオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物ジオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、これらのなかでも処理剤の相溶性、油膜強度、毛羽減少の点から、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレートが好ましい。
【0087】
(ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでもグリセリン、トリメチロールプロパン、ショ糖、が好ましい。
【0088】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、4〜70がより好ましく、5〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの重量平均分子量は、300〜10000が好ましく、400〜8000がより好ましく、500〜5000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、毛羽、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が10000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0089】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルとしては、ポリエチレングリコール、グリセリンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジグリセリンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ショ糖エチレンオキシド付加物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0090】
(ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル)
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した化合物と、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0091】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、イソテトラコサン酸等が挙げられる。
【0092】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、5〜70がより好ましく、10〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、300〜7000が好ましく、500〜5000がより好ましく、700〜3000がさらに好ましい。該分子量が300未満の場合、熱処理工程で発煙が発生し、環境を悪化する場合がある。また、断糸の発生を低減できないことがある。一方、該分子量が7000を超えると、処理剤の摩擦が高くなり、毛羽、断糸の発生を低減できないばかりか、かえって悪化することがある。
【0093】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルとしては、グリセリンエチレンオキシド付加物モノラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物ジラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物トリラウレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ソルビタンエチレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリラウレート、ショ糖エチレンオキシド付加物トリラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0094】
(ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル)
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとは、脂肪族一価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテルとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシドの付加モル数としては、1〜100モルが好ましく、2〜70モルがより好ましく、3〜50モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
【0095】
(ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル)
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルとはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、150〜800がより好ましく、200〜700がさらに好ましい。
【0096】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジオレエート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0097】
(多価アルコール脂肪酸エステル)
多価アルコール脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を持つ化合物であり、上記の平滑成分(A)を除く化合物である。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0098】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、イソイコサン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0099】
また該多価アルコール脂肪酸エステルは、少なくとも1つ又は2つ以上の水酸基を有する。
多価アルコール脂肪酸エステルの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、200〜800がより好ましく、300〜600がさらに好ましい。
【0100】
脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレート、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0101】
ノニオン界面活性剤(D)としては、耐熱性向上の観点から、触媒等を除去して精製したものを用いることが好ましい。
【0102】
[合成繊維用処理剤]
本発明の処理剤は、平滑成分(A)と、上記一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物(B)とを含有するものである。さらに、イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO
42−)の重量割合が300ppm以下であり、かつ塩素イオン(Cl
−)の重量割合が300ppm以下である。このように、処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン及び塩素イオンを所定の重量割合以下とすることにより、毛羽、糸切れ、ロール汚れを劇的に低減できる。
当該硫酸イオンの重量割合が300ppm超となる場合又は当該塩素イオンの重量割合が300pm超となる場合、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムが紡糸時に延伸ロール上に脱落、蓄積し、糸切れ断糸の増加を引き起こしたり、熱延伸を行うロール上では、タールの蓄積を早めロール汚れを引き起こしたりする。
なお、本発明におけるイオンクロマトグラフ法による硫酸イオン、塩素イオンの分析方法は、実施例に記載されたものによる。また、本発明における不揮発分とは、処理剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0103】
本願発明の効果をより発揮させる観点から、当該硫酸イオンの重量割合は、250ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。同様に、該塩素イオンの重量割合は、250ppm以下が好ましく、200pm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。
【0104】
硫酸イオン及び塩素イオンの重量割合の調整方法としては、前述したように、有機スルホン酸化合物(B)を含む原料Xに含まれる硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムを低減することにより可能である。
【0105】
処理剤の不揮発分に占める平滑成分(A)の重量割合は、20〜70重量%が好ましく、30〜65重量%がより好ましく、40〜65重量%がさらに好ましく、40〜60重量%が特に好ましい。該重量割合が20重量%未満の場合、平滑性の不足により毛羽が増加することがある。一方、該重量割合が70重量%超の場合、集束性が不足したり、乳化して使用する場合においては、乳化安定性が悪く使用できなくなったりすることがある。
【0106】
処理剤の不揮発分に占める有機スルホン酸化合物(B)の重量割合は、0.5〜7重量%が好ましく、1.0〜7重量%がより好ましく、1.25〜6重量%がさらに好ましく、1.5〜6重量%が特に好ましい。該重量割合が0.5重量%未満の場合、ロール汚れを低減できないことがある。一方、該重量割合が7重量%超の場合、摩擦が高くなり毛羽が増加することがある。
【0107】
本発明の処理剤が有機リン酸エステル化合物(C)を含有する場合、イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出されるリン酸イオン(PO
43−)の重量割合は、500ppm以下であることが好ましい。当該リン酸イオンの重量割合が500ppm超の場合、延伸ロール上に脱落し、糸切れ断糸の増加を引き起こすおそれがある。当該リン酸イオンの重量割合は、400ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましく、200ppm以下が特に好ましい。なお、リン酸イオン(PO
43−)を単にリン酸イオンということがある。
【0108】
リン酸イオンの重量割合の調整方法としては、前述したように、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Zに含まれる無機リン酸及び/又はその塩を低減したり、原料Zの配合量を調整したり、処理剤を珪藻土などの濾過助剤を使用して、濾過することにより可能である。
【0109】
本発明の処理剤が有機リン酸エステル化合物(C)を含む場合、処理剤の不揮発分に占める有機リン酸エステル化合物(C)の重量割合は、0.05〜10重量%が好ましく、0.08〜8重量%がより好ましく、0.1〜7重量%がさらに好ましい。
【0110】
本発明の処理剤がノニオン界面活性剤(D)を含む場合、処理剤の不揮発分に占めるノニオン界面活性剤(D)の重量割合は、20〜70重量%が好ましく、25〜65重量%がより好ましく、30〜65重量%がさらに好ましく、30〜60重量%が特に好ましい。
【0111】
(その他成分)
本発明の合成繊維用処理剤は、処理剤のエマルション化、繊維への付着性補助、繊維からの処理剤の水洗、繊維への制電性、潤滑性、集束性の付与等のために、上記の有機スルホン酸化合物(B)、有機リン酸エステル化合物(C)及びノニオン界面活性剤(D)以外の界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、脂肪酸石鹸等のアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルイミダゾリニウム塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤;ジメチルラウリルアミンオキサイド等が挙げられる。これら界面活性剤は、1種又は2種以上を使用できる。これら界面活性剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める当該界面活性剤の重量割合は、特に限定はないが、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。なお、ここでいう界面活性剤は、重量平均分子量が1000未満のものをいう。
【0112】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、耐熱性を付与するため、さらに酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系、チオ系、ホスファイト系等の公知のものが挙げられる。酸化防止剤は1種又は2種以上を使用できる。酸化防止剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める酸化防止剤の重量割合は、特に限定はないが、0.1〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%が好ましい。
【0113】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0114】
本発明の合成繊維用処理剤は、不揮発分のみからなる前述の成分で構成されていてもよく、不揮発分と原液安定剤とから構成されてもよく、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈したものでもよく、水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンであってもよい。本発明の合成繊維用処理剤が水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンの場合、不揮発分の濃度は5〜35重量%が好ましく、6〜30重量%がより好ましい。不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤の粘度(30℃)は、繊維材料に均一に付与させる点から、3〜120mm
2/sが好ましく、5〜100mm
2/sがさらに好ましい。
【0115】
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。合成繊維用処理剤は、構成する前記の各成分を任意又は特定の順番で添加混合することによって製造される。各成分は、耐熱性向上の観点から、触媒等を除去して精製したものを用いてもよい。特に、本発明に用いる平滑成分(A)やノニオン界面活性剤(D)には、無機物が含まれる場合があり、本発明の効果を著しく低下させる場合は、無機物を除去して精製することが望ましい。無機物を除去して精製する方法としては、公知の方法で行うことができるが、例えば、平滑成分(A)であれば珪藻土を用いた濾過による除去することができ、ノニオン界面活性剤(D)であれば無機合成吸着剤を用いた吸着除去により精製することができる。
【0116】
[合成繊維フィラメント糸条の製造方法及び繊維構造物]
本発明の合成繊維フィラメント糸条の製造方法は、原料合成繊維フィラメント糸条に、本発明の合成繊維用処理剤を付与する工程を含むものである。発明の製造方法によれば、スカムや糸切れの発生を低減することができ、糸品位に優れた合成繊維フィラメント糸条を得ることができる。なお、本発明における原料合成繊維フィラメント糸条とは、処理剤が付与されていない合成繊維フィラメント糸条をいう。
【0117】
合成繊維用処理剤を付与する工程としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することできる。通常、原料合成繊維フィラメント糸条の紡糸工程で合成繊維用処理剤を付与する。処理剤が付与された後、熱ローラーにより延伸、熱セットが行われ、巻き取られる。このように、処理剤を付与した後、一旦巻き取れられることなく熱延伸する工程を有する場合に、本発明の合成繊維用処理剤は好適に使用することができる。熱延伸する際の温度として一例をあげると、ポリエステル、ナイロンでは、産業資材用であれば210〜260℃、衣料用であれば110〜220℃が想定される。
【0118】
原料合成繊維フィラメント糸条に付与する際の合成繊維処理剤は、前述したように、不揮発分のみからなる処理剤、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤、又は水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョン処理剤等が挙げられる。付与方法としては、特に限定されるものではないが、ガイド給油、ローラー給油、ディップ給油、スプレー給油等が挙げられる。これらの中ででも、付与量の管理のしやすさから、ガイド給油、ローラー給油が好ましい。
【0119】
合成繊維用処理剤の不揮発分の付与量は、原料合成繊維フィラメント糸条に対して、0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましく、0.1〜2重量%がさらに好ましい。0.05重量%未満の場合、本発明の効果を発揮することができない場合がある。一方、5重量%超の場合、処理剤の不揮発分が糸道に脱落しやすく、熱ローラー上のタールが著しく増加し、毛羽、断糸に繋がる場合がある。
【0120】
(原料)合成繊維フィラメント糸条としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維のフィラメント糸条が挙げられる。本発明の合成繊維用処理剤は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維に適している。ポリエステル繊維としては、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PET)、トリメチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PTT)、ブチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PBT)、乳酸を主たる構成単位とするポリエステル(PLA)等が挙げられ、ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられ、ポリオレフィン繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。合成繊維フィラメント糸条の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【0121】
(繊維構造物)
本発明の繊維構造物は、上記の本発明の製造方法で得られた合成繊維フィラメント糸条を含むものである。具体的には、本発明の合成繊維用処理剤が付与された合成繊維フィラメント糸条を用いてウォータージェット織機、エアジェット織機、または、レピア織機で織られた織物、および丸編み機、経編み機、または、緯編み機で編まれた編物である。また繊維構造物の用途としては、タイヤコード、シートベルト、エアバッグ、魚網、ロープ等の産業資材、衣料用等が挙げられる。織物、編物を製造する方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【実施例】
【0122】
以下に、実施例により本発明を説明する、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、文中及び表中の「%」は「重量%」を、意味する。
なお、実施例4は参考例4とする。
【0123】
[有機スルホン酸化合物(B)を含む原料X]
(原料X−1)
有機スルホン酸化合物(B)を含む原料X−1として、HOSTAPUR SAS93(ヘキスト社製、有機スルホン酸化合物(B)93重量%)を用いた。原料X−1には、多量のボウ硝が含まれている。原料X−1に含まれる硫酸イオン(SO
42−)及び塩素イオン(Cl
−)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(B)に対して、硫酸イオンは25950ppmであり、塩素イオンは62ppmであった。
【0124】
(原料X−2)
有機スルホン酸化合物(B)を含む原料X−2として、メルソラートH95(バイエル社製、有機スルホン酸化合物(B)95重量%)を用いた。原料X−2には、多量の塩化ナトリウムが含まれている。原料X−2に含まれる硫酸イオン(SO
42−)及び塩素イオン(Cl
−)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(B)に対して、硫酸イオンは820ppmであり、塩素イオンは30170ppmであった。
【0125】
[有機スルホン酸化合物(B)を含む原料Yの調製]
有機スルホン酸化合物(B)を含む原料Y−1、Y−2は、上記の有機スルホン酸化合物(B)を含む原料X−1、X−2を精製し、無機物を除去することにより得ることができる。無機物の除去方法は公知の方法を用いることができ、実施例に示す精製方法に限定されない。
【0126】
(原料Y−1の調製)
メタノール550部とイオン交換水400部を混合し、45±5℃で調温し、攪拌しながら上記の原料X−1 700部を徐々に投入し、完全に溶解させた。次にこの溶解液を室温で20時間静置し、ボウ硝を沈降させた。ボウ硝の含まれない上澄み液を取り出し、60〜80℃で減圧蒸留を行い、メタノールと水の一部を除去し、有機スルホン酸化合物(B)を70重量%含む原料Y−1を得た。
原料Y−1に含まれる硫酸イオン(SO
42−)及び塩素イオン(Cl
−)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(B)に対して、硫酸イオンは1085ppmであり、塩素イオンは60ppmであった。
【0127】
(原料Y−2の調製)
イオン交換水600部を80±5℃に加温し、撹拌しながら上記の原料X−2 400部を徐々に投入し、完全に溶解させた。次にこの溶解液を40℃に冷却後、イオン交換樹脂を用いて塩化ナトリウムを除去し、有機スルホン酸化合物(B)を40重量%含む原料Y−2を得た。
原料Y−2に含まれる硫酸イオン(SO
42−)及び塩素イオン(Cl
−)の含有量(重量割合)をイオンクロマトグラフにて測定したところ、有機スルホン酸化合物(B)に対して、硫酸イオンは105ppmであり、塩素イオンは2115ppmであった。
【0128】
[有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z−1〜Z−6の調製]
(原料Z−1の調製)
反応容器にイソセチルアルコール820部を仕込み、攪拌しながら60±5℃で五酸化二燐180部を反応温度に注意しながら少量ずつ投入した。その後、75±5℃で3時間熟成し、不揮発分が100量%の有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z-1を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ33.05%、29.81%、33.82%、2.76%、0.56%であった。
【0129】
(原料Z−2の調製)
反応容器に炭素数C11〜15のアルコール800部を仕込み、攪拌しながら60±5℃で五酸化二燐200部を反応温度に注意しながら少量ずつ投入した。その後、75±5℃で3時間熟成し、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z−2を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ44.23%、40.31%、13.79%、1.09%、0.58%であった。
【0130】
(原料Z-3の調製)
上記で調製した原料Z−2 997部に、イオン交換水3部を投入し、90℃で3時間の加水処理を行った。その後、115℃で3時間の脱水処理を行い、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z−3を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ56.72%、40.49%、0.00%、0.00%、2.78%であった。
【0131】
(原料Z-4の調製)
反応容器にオレイルアルコール600部を仕込み、攪拌しながら70±5℃で五酸化二燐110部を反応温度に注意しながら少量ずつ投入した。その後、75±5℃で3時間熟成し、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z−4を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ57.65%、35.26%、4.57%、0.44%、2.07%であった。
【0132】
(原料Z−5の調製)
反応容器にオレイルアルコール600部を仕込み、攪拌しながら70±5℃で五酸化二燐110部を反応温度に注意しながら少量ずつ投入した。その後、70±5℃で3時間熟成した。次にイオン交換水15部を投入し、90℃で3時間の加水処理を行い、次いでジブチルエタノールアミン200部を徐々に投入して中和を行い、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z−5を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ55.18%、35.38%、2.43%、0.00%、7.01%であった。
【0133】
(原料Z−6の調製)
上記で調製した原料Z−1 970部に、イオン交換水30部を投入し、90℃で3時間の加水処理を行った。その後、115℃で3時間の脱水処理を行い、有機リン酸エステル化合物(C)を含む原料Z−3を調製した。
有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、それぞれ65.43%、31.74%、0.00%、0.00%、2.83%であった。
【0134】
なお、有機リン酸エステル化合物(C1)、(C2)、(C3)、(C4)及び無機燐酸のP核積分比率は、
31P−NMRを用いて、以下方法で算出した。
測定試料の不揮発分約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水(D
2O)を加えて溶解させて、
31P−NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400、162MHz)で測定した。
【0135】
[実施例1〜11、比較例1〜9]
表2、3に記載の成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤を調製した。調製した各処理剤を用いて、下記の方法でピンの汚れ蓄積、ピンの汚れ拭き取り性、張力変動を評価した。その結果を表2、3に示す。
なお、表2、3の処理剤の不揮発分組成の数字は、処理剤の不揮発分に占める各成分(原料X、Y、Zは、それらの不揮発分)の重量割合を示す。また、表2、3の処理剤成分の詳細は表1に示す。
【0136】
(硫酸イオン(SO
42−)・塩素イオン(Cl
−)・リン酸イオン(PO
43−)の測定方法)
試料(処理剤の不揮発分又は原料X、Y、Zの不揮発分)5gを正確に量りとり、撹拌しながら超純水95gを少しずつ加え、水溶液を作製し、100mlメスフラスコで定容とする。作製した水溶液2mlを、ODS(シリカゲルにオクタデシル基を化学結合させた)前処理カートリッジに通し、親油性の物質を除去した液を、イオンクロマトグラフ分析に供する。以下のイオンクロマトグラフ条件により検出を行った。濃度既知の標準液に対するピーク面積比にて検出量を測定し、硫酸イオン(SO
42−)、リン酸イオン(PO
43−)、塩素イオン(Cl
−)の量を換算した。なお、定量限界は、硫酸イオン(SO
42−)では0.6ppm以下、塩素イオン(Cl
−)では1.0ppm以下、リン酸イオン(PO
43−)では0.3ppm以下であった。表2、3における*は、定量限界以下を示す。
<イオンクロマトグラフ条件>
装置:Dionex製 ICS−1500 サプレッサ使用
分析カラム:Dionex IonPac AS14 内径4.0mm×長さ50mm
ガードカラム:Dionex IonPac AG14 内径4.0mm×長さ250mm
溶離液:3.5mmolNa
2CO
3、1.0mmolNaHCO
3
流量:1.5ml/min
【0137】
(ピンの汚れ蓄積、ピンの汚れ拭き取り性、張力変動の評価)
上記で調製した処理剤を1000デニール、96フィラメントの無給油ポリエステルフィラメントに定量的に20重量%付与させ、走糸法摩擦測定機にて150℃に加熱したローラーを通過させ揮発分を除去した後、250℃に加温した梨地クロムピンと接触させ、初期張力500g、走糸速度2m/分で4時間走行させ、ピンの汚れ蓄積の程度、ピンの汚れ拭き取り性、張力変動を評価した。なお、より厳しい評価を行うため、処理剤を20重量%付与した。
【0138】
ピンの汚れ蓄積の程度は下記基準により評価した。
◎:汚れがほとんど認められない
○:汚れが僅かに認められる
×:明らかに汚れが蓄積している
【0139】
張力変動値は下記式にて算出した。
張力変動値(g)= 糸を4時間走行させた後の張力(g)− 初期の張力(g)
また、張力変動値から、下記基準で張力変動を評価した。
◎:0gから30g未満
○:30g以上50g未満
×:50g以上
【0140】
ピンの汚れ拭き取り性は下記方法で評価した。
梨時クロムピン上に発生した汚れを、水酸化ナトリウムを水とグリセリンに溶解した溶液をガーゼにしみこませて拭き取った。拭き取るまでに要した回数により、拭き取り性を評価した。
◎:5回未満の拭取りで汚れをふき取ることができる
○:5回以上20回未満の拭取りで拭き取ることができる
×:20回以上の拭取りで拭き取れない
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
表2、3からわかるように、実施例では、処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン及び塩素イオンを所定の割合以下とする処理剤を用いているので、ピンの汚れ蓄積がほとんどなく、拭き取り性に極めて優れている。つまり、合成繊維を製造する際のロール汚れを低減でき、ロールの清掃間隔を長くしてその清掃回数を少なくすることができる。また、張力変動値も極めて小さく、毛羽、糸切れを劇的に低減できることがわかる。
一方、比較例では、処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン又は塩素イオンの割合が高く、そのためピンの汚れ蓄積が多くあり、また拭き取り性に劣っている。また、張力変動値が極めて大きく、毛羽、糸切れが多発することがわかる。
【解決手段】 本発明は、平滑成分(A)と、下記一般式(1)で示される有機スルホン酸化合物(B)とを含有する合成繊維用処理剤であって、イオンクロマトグラフ法によって処理剤の不揮発分から検出される硫酸イオン(SO