(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668198
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】雨水継手
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
E04D13/08 301L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-189327(P2010-189327)
(22)【出願日】2010年8月26日
(65)【公開番号】特開2012-46944(P2012-46944A)
(43)【公開日】2012年3月8日
【審査請求日】2013年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】仁科 貴志
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−126906(JP,A)
【文献】
特開昭53−148714(JP,A)
【文献】
特開平08−027976(JP,A)
【文献】
実開昭53−163725(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/08
E03B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を流す竪樋の中間部に設置され、前記竪樋の下流に連通する排水流路と、雨水を貯留する雨水タンクに連通する取水流路とに分岐する雨水継手であって、
上下の端部にそれぞれ竪樋の端部を連結可能な筒状であって、外周面を形成する外壁体と、該外壁体の内部に前記排水流路を形成するパイプ体を具備するとともに、側面に開口を有する継手本体と、
前記開口を覆う蓋部と、当該開口から前記継手本体内に挿入される目皿保持部と、前記パイプ体の上端に接合して前記排水流路の上端を形成する筒部と、を有し、前記開口から略水平方向に着脱自在な着脱部材と、
該目皿保持部に保持されて少なくとも前記取水流路を覆うように配置される網状の目皿と、を備えることを特徴とする雨水継手。
【請求項2】
前記筒部は前記パイプ体との接合部分に前記パイプ体の上端と嵌合する段差を有することを特徴とする請求項1に記載の雨水継手。
【請求項3】
前記パイプ体は前記継手本体の水平断面の中央に筒状に形成されており、当該パイプ体の内側に前記排水流路を形成するとともに、当該パイプ体と前記外壁体との間に前記取水流路を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の雨水継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を有効利用するために、竪樋を流下する雨水の一部を途中で外部に取り出す雨水継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全意識の高まりや節約のために竪樋を流下する雨水の一部を取り出してタンクに貯水し、生活用水の一部に使用する雨水利用法が種々提案されており、竪樋に取り付けて、この竪樋内部を流下する雨水を取水する雨水継手が種々提案されている。
【0003】
雨水継手としては例えば特許文献1に、上側の竪樋と下側の竪樋との間に介在し、下側縦樋の開口端に嵌合する様に構成した雨水を取水する筒状の継手であって、上側の竪樋と継手の間に間隙を設けており、外筒と内筒よりなる異径同心二重筒状構造を有し、内筒の下端の等高面で内筒と外筒の間の空間が閉じられることにより雨水を貯留するとともに、内筒上端側で貯留された雨水の上方の全面を覆う様に濾過部材が載置され、雨水貯留部の外筒に外部へ連通する取水管が形成され、雨水貯留部より下方に延びた外筒よりなる放水管に下側の竪樋に接続する着脱容易な嵌合部とを備えた構成の雨水継手が開示されている。
【0004】
このように構成すると、上側の竪樋と継手の間に間隙があるので雨水継手を容易に取り外すことができ、日常的なメンテナンスを容易に行うことができる。また、濾過部材を通過した雨水が貯留されるので取水管にまでゴミが侵入することを防ぐことができ、濾過部材上に堆積したゴミを取り除くことで簡単にゴミ詰まりを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−70086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の構成においては、雨水継手と上側の竪樋との間に常に隙間が空いているので、この隙間から落ち葉などが侵入して、竪樋が余計に詰まりやすくなる虞がある。また、メンテナンスの際に雨水継手を取り外した後、この雨水継手からさらに濾過部材を取り外して濾過部材上に溜まっているゴミを取り除くものであるので、汚れている濾過部材に直接触る必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、上側の竪樋及び下側の竪樋との接合箇所に隙間を設けることなく設置することができ、しかも容易にメンテナンスすることができ、直接目皿に触れることなく目皿上に溜まっているゴミを取り除くことができる雨水継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の雨水継手は、雨水を流す竪樋の中間部に設置され、前記竪樋の下流に連通する排水流路と、雨水を貯留する雨水タンクに連通する取水流路とに分岐する雨水継手であって、上下の端部にそれぞれ竪樋の端部を連結可能な筒状であって、
外周面を形成する外壁体と、該外壁体の内部に前記排水流路を形成するパイプ体を具備するとともに、側面に開口を有する継手本体と、前記開口を覆う蓋部と、当該開口から前記継手本体内に挿入される目皿保持部と、
前記パイプ体の上端に接合して前記排水流路の上端を形成する筒部と、を有し、前記開口から
略水平方向に着脱自在な着脱部材と、該目皿保持部に保持されて少なくとも前記取水流路を覆うように配置される網状の目皿と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の雨水継手は、前記筒部は前記パイプ体との接合部分に前記パイプ体の上端と嵌合する段差を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の雨水継手は、前記パイプ体は前記継手本体の水平断面の中央に筒状に形成されており、当該パイプ体の内側に前記排水流路を形成するとともに、当該パイプ体と前記外壁体との間に前記取水流路を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の雨水継手によると、継手本体の上下の端部がそれぞれ上下の竪樋を固定可能な筒状であるので、上下の竪樋と継手本体とがそれぞれ隙間なく連結されており、継手本体と上下の竪樋との間から竪樋内を流下する雨水が流出することを防ぐことができるとともに、外部から継手本体と上下の竪樋との間を通ってゴミが侵入することを防ぐことができる。また、着脱部材が継手本体の外周面に形成された開口を覆う蓋部と、当該開口から継手本体内に挿入されて網状に形成された目皿を保持する目皿保持部と、を備えており、しかもこの着脱部材が開口から
略水平方向に着脱自在であるので、着脱部材を容易に継手本体から取り外すことができメンテナンスを容易にすることができる。また、着脱部材を継手本体から取り外す際に、メンテナンスの作業者は着脱部材の蓋部を把持して着脱部材を継手本体から取り外して、そのまま
略水平方向に移動させることにより、着脱部材の目皿保持部に保持されている目皿も、継手本体の開口から抜き出すことができるので、汚れている目皿に直接触ることなく、目皿上に溜まっているゴミを取り除くことができる。
【0013】
請求項2に記載の雨水継手によると、継手本体内部に形成されたパイプ体の上端に着脱部材の筒部が接合するものであって、この筒部はパイプ体との接合部分にパイプ体の上端と嵌合する段差を有しているので、パイプ体と筒部との相対位置がずれることがなく、又、接合位置の隙間から排水流路を流下する雨水が漏れることを防ぐことができる。
【0014】
請求項3に記載の雨水継手によると、降水量が少ない場合などには、表面張力により雨水は上側の竪樋の内周面を伝って流下するが、パイプ体が継手本体の水平断面の中央に形成されており当該パイプ体と外壁体との間に取水流路を形成するので、竪樋の内周面を伝って流下した雨水は、外壁体の内面を伝って取水流路に導水される。したがって降水量が少ない雨のときでも効率よく雨水を貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本実施形態の雨水継手の外観構成を示す斜視図。
【
図3】本実施形態の雨水継手の内部構成を示す断面図。
【
図4】本実施形態の雨水継手を分解した状態を説明する斜視図。
【
図5】本実施形態の雨水継手内を流下する雨水排水の流路を説明する断面図。
【
図6】本実施形態の雨水継手の目皿に堆積したゴミを取り除く作業を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図6を参照しつつ、本発明の雨水継手1の最良の実施形態について説明する。建物の図示しない屋根に降り注いだ雨水を建物外に排水するために建物に設置される雨水系排水配管2は、屋根の外周に沿って軒樋3が形成されており、屋根に降り注いだ雨水がこの軒樋3を介して集水器4に集められる。そして、集水器4に集められた雨水は、この集水器4から下方に延びる竪樋5を通過して地面に設置された図示しない雨水排水路に排出される。
図1及び
図5に示すように、竪樋5の中間部には雨水継手1が設置されており、この雨水継手1により、雨水の流路は雨水を竪樋5下流の雨水排水路に排出する排水流路Aと、雨水を貯留可能な雨水タンク9に導水する取水流路Bとに分岐されている。
【0017】
雨水継手1は、
図2及び
図3に示すように、上側の竪樋5aの下端及び下側の竪樋5bの上端にそれぞれ端部を連結可能な筒状であって、外周面に開口65を有する継手本体6と、この継手本体6の開口65に略水平方向から嵌着し及び略水平方向に離脱する着脱部材7と、この着脱部材7に固定される目皿8により構成されている。
【0018】
継手本体6は、樹脂により形成された各角が丸みを帯びた四角筒状に形成されており、
図4に示すようにその上部の外周面が切り欠けて形成された外壁体60と、この外壁体60の上端に固定される四角筒状のアダプタ61と、外壁体60の内部に当該外壁体60の水平断面の中央に円筒状に形成されたパイプ体62と、このパイプ体62の中間部からフランジ状に外側に広がって形成されて、外壁体60の内周面に固着する底体63と、外壁体60の底体63が固着する位置よりも高い位置に形成され、外壁体60から外側に延びる管状の取水管64と、を具備している。そして、外壁体60の外周面上部の切り欠けた部分と、アダプタ61の下端とにより、
図6にしめすように継手本体6の外周面には開口65が形成されている。
【0019】
外壁体60の下端の内周面66は下側の竪樋5bの上端に外挿して連結可能な円形又は角形に形成されている。なお、この外壁体60下端の内周面66が例えば1段目は角形で2段目は円形の2段に形成されていてもよい。すなわち、外壁体60の最下端の内周面66が角形の竪樋5を挿入して固定できる角形に形成しておき、この角形に形成した部分から上方に向かって円形の竪樋5を挿入して固定できる円形に形成しておくことで、円形の竪樋5と角形の竪樋5とのいずれの竪樋5にも固定することができる雨水継手1とすることができる。外壁体60の上端はアダプタ61の下端と嵌合するように立ち上がり部67が形成されている。アダプタ61はその端部に溝が形成されておりこの外壁体60の上端の立ち上がり部67に嵌合することによりアダプタ61が水平方向に移動することを規制している。また、このアダプタ61はその上端の形状が例えば円形のものと角形のものとの2種類用意されており、上側の竪樋5aの形状に応じて選択できる構成である。
【0020】
パイプ体62は、その上端が継手本体6の外周面に形成された開口65の下端よりも高く位置し、その下端は少なくとも底体63よりも下側であって、外壁体60の下端よりも高く位置するように配置されている。パイプ体62の上端は開口65に近接する側が低く、開口65から離れた側が高くなるように、開口65から離れた側の半円に壁部68が形成されている。パイプ体62と外壁体60との間の空間は底体63により上下に分断されており、底体63の上側は取水管64に連通する取水流路Bを形成するとともに、底体63の下側は排水流路Aに連通している。取水管64は略水平方向に延びて形成されており、下端が雨水タンク9に連通した可とう管10の上端が外嵌している。
【0021】
着脱部材7は、継手本体6の開口65を覆う蓋部70と、この開口65から継手本体6内に挿入されて網状に形成された目皿8を保持する目皿保持部71と、パイプ体62の上端に接合して排水流路Aの上端を形成する筒部72と、を有している。蓋部70は、上下方向から見てU字状に形成されており、開口65を覆ったときに継手本体6の外周面と整合して、雨水継手1の外周面の一部を構成する。蓋部70の側縁には嵌合凸条73が形成されているとともに、継手本体6の開口65の側端には嵌合溝69が形成されており、この嵌合凸条73が嵌合溝69に挿入されて嵌合し、蓋部70が開口65に固定される。蓋部70の内側は底が開放したすり鉢状に形成されており、この蓋部70内側の開放縁には、環状に形成され内側に向かって4本のリブ74が延びる目皿保持部71が固定されている。筒部72は目皿保持部71の4本のリブ74の先端に支持されて形成されている。筒部72の下端は同心円上に2重の円管を固定して形成されており、外側の円管が開口65への挿入方向側が短く、開口65への挿入方向と反対側が長く形成されている。これにより、筒部72の下端は開口65に挿入する方向側は外周よりも内周側が下方に突出した段差75aを形成し、開口65への挿入方向と反対側が内周よりも外周側が下方に突出した段差75bを形成している。目皿8は金属糸を網状に織り込んで蓋部70下端の開放縁から筒部72の上端まで中央が開口したドーナツ状に形成されている。
【0022】
以上のように、雨水継手1は、筒部72及びパイプ体62と外壁体60の間であって底体63の上側に取水管64に連通する取水流路Bを形成するとともに、筒部72及びパイプ体62の内側から底体63よりも下側の外壁体60内部に下側の竪樋5bに雨水を流下させる排水流路Aを形成している。
【0023】
この雨水継手1は
図5に示すように、継手本体6の開口65に着脱部材7を取り付けた状態で、上側の竪樋5aの下端が継手本体6のアダプタ61の上端に挿入され、下側の竪樋5bの上端が継手本体6の外壁体60の下端に挿入されて、それぞれ固定される。そして、継手本体6の取水管64に雨水タンク9に連通する可とう管10の上端が外嵌される。屋根から軒樋3を通って集水器4に集められた雨水は、上側の竪樋5aの内周面を伝って雨水継手1の内部に案内される。そして、流下した雨水は外壁体60の内周面を伝って、すり鉢上に形成された蓋部70の内周面を通って目皿8上に案内される。そして目皿8は網状に形成されているので、雨水は枯葉などのゴミを目皿8で漉しとって、目皿8の下方に形成された取水流路Bに流れる。筒部72及びパイプ体62が雨水継手1の水平断面の中央に形成されており、その上端の外側に取水流路Bの入り口が形成されているので、降水量が少ない場合などのように、流下する雨水が少量の場合は、そのほとんどが取水流路Bに取り込まれて効率よく雨水を貯留することができる。また、降水量が多い場合などのように流下する雨水が大量の場合は、取水流路B側に流れきらない雨水を筒部72の上端から排水流路A側に取り込むことができる。
【0024】
また、この雨水継手1の目皿8に枯葉などのゴミが堆積して清掃する必要がある場合は、
図6に示すように、着脱部材7の蓋部70を把持して、継手本体6から水平方向に引き離す。目皿8はこの着脱部材7の目皿保持部71に固定されているので、着脱部材7を継手本体6から引き離すことで、目皿8も継手本体6内部から取り外すことができる。そして、目皿8上に堆積したゴミを取り除いて、目皿8側から継手本体6の開口65に着脱部材7を挿入して、着脱部材7を継手本体6にはめ込む。このとき、筒部72の下端は開口65に挿入する方向側は外周よりも内周側が下方に突出した段差75aを形成し、開口65への挿入方向と反対側が内周よりも外周側が下方に突出した段差75bを形成しており、パイプ体62の上端は開口65に近接する側が低く、開口65から離れた側が高くなるように、開口65から離れた側の半円に壁部68が形成されているので、
図5に示すように互いに嵌合しあい、この筒部72とパイプ体62とが位置ずれすることなく固定される。また、蓋部70の側縁には嵌合凸条73が形成されているとともに、継手本体6の開口65の側端には嵌合溝69が形成されており、この嵌合凸条73が嵌合溝69に挿入されて嵌合し、蓋部70が開口65に固定される。
【0025】
なお、本発明の実施の形態は、上述の実施形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明に係る雨水継手1は、住宅などにおいて竪樋5を流下する雨水の一部を取水して貯留し、生活用水に利用するための雨水継手1として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 雨水継手
5 竪樋
5a 上側の竪樋
5b 下側の竪樋
6 継手本体
7 着脱部材
8 目皿
9 雨水タンク
60 外壁体
62 パイプ体
65 開口
70 蓋部
71 目皿保持部
72 筒部
75a 内周側が突出した段差
75b 外周側が突出した段差