特許第5668216号(P5668216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5668216電子電力モジュール、および前記モジュールを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668216
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】電子電力モジュール、および前記モジュールを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20150122BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150122BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20150122BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/36 C
   H01L23/36 M
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-532654(P2012-532654)
(86)(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公表番号】特表2013-507761(P2013-507761A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】FR2010052116
(87)【国際公開番号】WO2011042668
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年4月9日
(31)【優先権主張番号】0957001
(32)【優先日】2009年10月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ミッシェル モレル
(72)【発明者】
【氏名】キー リム タン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ヴィヴェ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ ディメリ
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ トメリン
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ ロリン
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−321649(JP,A)
【文献】 特開2009−004666(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/063764(WO,A1)
【文献】 特開2000−294699(JP,A)
【文献】 特開2005−095944(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0144291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/18
H01L 23/36
H01L 23/373
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック(14)を備えるタイプの電力用電子モジュール(10)であって、
−半導体等の電力用電子素子(18)を搭載するための電気回路(26)を形成している金属層と、
−ヒートシンク(20)を形成している金属物質と、
−前記電気回路(26)と前記ヒートシンク(20)との間に挿入された電気絶縁物を形成している誘電体材料層(22)とを備え、
前記スタック(14)は、炭素担持した金属マトリクスを有する複合材料物質(24)を備え、前記炭素担持は、体積百分率で20%と60%との間の範囲の中にあり、前記複合材料物質(24)は、前記電力用電子素子(18)を搭載するための前記電気回路(26)の領域と、前記電気絶縁物(22)との間に挿入されており、前記複合材料物質(24)は、前記電気回路(26)を形成する前記金属層の中への挿入部を形成していることを特徴とするモジュール(10)。
【請求項2】
前記金属マトリクスは、銅またはアルミニウムを備え、前記炭素担持は、30μmよりも短いグラファイトファイバ、グラフェン、または剥離グラファイトを備えていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール(10)。
【請求項3】
前記誘電体材料層(22)は、シリコーン前記誘電体材料層(22)の熱伝導率を改善する充填材料を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のモジュール(10)。
【請求項4】
前記スタック(14)における電気回路(26)を形成する前記金属層、ヒートシンク(20)を形成する前記金属物質、前記誘電体材料層(22)および前記複合材料物質(24)を、ともにクランプするためのクランプ手段(32)を備えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモジュール(10)。
【請求項5】
前記電気回路(26)の少なくとも一部分を収容しているハウジング(12)を備え、
前記ハウジング(12)は、前記スタック(14)およびハウジングボディ(16)によって少なくとも一部分が形成され、前記クランプ手段(32)は、少なくとも1つのハウジングボディ部分(16)と前記スタック(14)とを動かないように固着することに関与していることを特徴とする、請求項4に記載のモジュール(10)。
【請求項6】
電力用電子モジュール(10)を製造するための方法であって、
前記モジュールは、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモジュールであり、
前記方法は、
・前記電気回路(26)を形成するための前記金属層と、
前記複合材料物質(24)とを備えるスタックサブアセンブリー(14A)を形成するステップと、
前記スタックを、前記スタックサブアセンブリー(14A)と、前記誘電体材料層(22)と、前記ヒートシンク(20)とをスタックすることにより形成し、これにより、前記複合材料物質(24)を、一方の、前記電力用電子素子(18)を搭載するための前記電気回路(26)の領域と、他方の、前記電気絶縁物(22)との間に挿入するステップとを備えていることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記複合材料物質(24)は、
−粉末状金属を炭素担持と混合するステップと、
−この混成層をモールドの中に堆積させるステップと、
−前記混成物を、前記金属に依存して、400℃と1100℃との間の範囲にある温度に加熱し、さらにそれを、10MPaと80MPaとの間の範囲にある圧力で圧縮することにより焼結するステップとを実行することにより形成されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混成物を、前記金属に依存して、400℃と900℃との間の範囲にある温度に加熱し、さらにそれを、50MPaと80MPaとの間の範囲にある圧力で圧縮することにより焼結することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スタックサブアセンブリー(14A)は、前記複合材料物質(24)を、前記電気回路(26)を形成するための前記金属層とともにラミネートすることにより形成されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
−粉末状金属被膜層は、前記混成層の上に堆積され、
−前記粉末状金属被膜層および前記混成層は、ともに焼結されて、焼結された後に、前記スタックサブアセンブリー(14A)が得られ、前記スタックサブアセンブリー(14A)の中では、前記混成層は、前記複合材料物質(24)を形成し、前記粉末状金属被膜層は、前記電気回路(26)を形成するための前記金属層を形成していることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
−前記混成層は、導電金属フォイルの上に堆積され、
−前記混成層および前記導電金属フォイルはともに焼結されて、焼結された後に、前記スタックサブアセンブリー(14A)が得られ、前記スタックサブアセンブリー(14A)の中では、前記混成層は、前記複合材料物質(24)を形成し、前記金属フォイルは、前記電気回路(26)を形成するための前記金属層を形成していることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力用電子モジュールに関し、特に、自動車のための電力用電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
DBC(ダイレクトボンド銅、Direct Bound Copperの略記)等の電力用電子モジュールは、従来公知である。
【0003】
このタイプのモジュールは、電気回路を形成する金属層を備え、この金属層の上に、少なくとも1つの電子電力素子(半導体等)が配置されている。モジュールはまた、ヒートシンクを形成する金属物質を備えている。このヒートシンクは、通常、銅またはアルミニウムで作られ、動作している素子から生成される熱を放散させている。電気回路およびヒートシンクは、ともに金属で作られており、それらの間には、誘電体セラミック材料の層が挿入され、電気絶縁体を形成している。
【0004】
従来、これらのモジュールは、素子によって生成される熱の流れが非常に強くて、熱の流れが十分に放散することはできず、プリント回路の信頼性が十分でないときに使用されていた。
【0005】
DBCモジュールでは、銅薄膜がセラミック基板の上に直接に堆積される。銅は、非常に高い電気伝導度を有するという理由で使用されている。
【0006】
この基板は、電気絶縁物としての役割を有し、電気回路とヒートシンクとの間のいずれの短絡も防ぐことができる。セラミック基板の一方の面の上には、銅層が電気回路を形成し、その電気回路の上に、電力用電子素子が直接に半田付けされる。他方の面の上には、銅層によって基板が、ヒートシンクの上にろう付けされる。
【0007】
ヒートシンクは、一般に銅で製作される。銅は、高い熱伝導率(約400Wm-1-1)を有し、効率のよい熱放散を行うことができる。
【0008】
セラミック基板として最も一般的に使用される材料は、アルミナおよび窒化アルミニウムである。この基板は、電気絶縁物としての役割の他に、電力用電子素子からヒートシンクに熱を転送する役割を有し、また同時に、素子の熱膨張係数に近い値の熱膨張係数を有することが必要である。これによって、素子と電気絶縁物とのインタフェースのところに誘起される熱機械応力によって引き起こされる素子の劣化を防ぐことができる。この熱機械応力は、各動作サイクル(温度の上昇および下降)で生ずる。
【0009】
基板(窒化アルミニウムに対しては4.10-6-1)とヒートシンク(17.10-6-1)との間の熱膨張係数の値の差から生ずるこの欠点を克服するために、セラミック基板は、接合部を形成するろう付け物質によって、ヒートシンクの上にろう付けされる。この接合部はまた、素子からヒートシンクへの熱の転送を助ける。
【0010】
このような電力用電子モジュールでは、基板を形成する窒化アルミニウムとヒートシンクを形成する銅との間の熱膨張係数の差によって、熱機械応力は、ろう付け接合部に集中する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電力用電子モジュールを使用している間に、これらの熱機械応力によって、ろう付け接合部のところに機械疲労が生じ、これにより、部分的なボンディングの剥離が引き起こされる可能性がある。この場合には、素子とヒートシンクとの間の熱転送は、もはや好適には動作せず、従って、過熱および素子の劣化という危険が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、このモジュールを形成している要素の熱膨張係数の間の差によって生成される熱機械応力に対する最も高い抵抗を有するモジュールを提供することである。
【0013】
この目的のために、本発明の1つの主題は、スタック備えたタイプの電力用電子モジュールであり、このスタックは、
−電気回路を形成し、半導体等の電力用電子素子を搭載するための電気回路を形成する金属層と、
−ヒートシンクを形成する金属物質と、
−電気回路とヒートシンクとの間に挿入されて、電気的絶縁を形成する誘電体材料層とを備え、
また、このスタックは、炭素担持した金属マトリクスを有する複合材料の物質を備え、炭素担持は、体積百分率で20%と60%との間の範囲にあり、この複合物質は、電力用電子素子を搭載するための電気回路の領域と、電気絶縁物との間に挿入されていることを特徴としている。
【0014】
本発明によると、簡単な構造を有し、容易に実現可能な電力用電子モジュールを製作できるので有利である。
【0015】
素子からヒートシンクへの熱転送を保証するために、要素の間にろう付け接合部を形成する必要がなくなるということは理解しうると思う。この理由によって、繰り返される熱機械応力と、その結果生ずる疲労とをなくすことができる。
【0016】
本発明の別の利点は、一方で、複合材料で作られている物質を備えた電気回路と電気絶縁物との間のインタフェースにおいて、また他方で、電気絶縁物とヒートシンクとの間のインタフェースにおいて、熱機械応力の転送がないということである。
【0017】
本発明の別の利点は、複合材料で作られている物質は、DBCモジュールのセラミック基板を置換してなり、これは、窒化アルミニウムの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有しているということである。従って、この複合材料で作られている物質が、素子の直下に位置しており、その誘電体材料層を介して行われる、ヒートシンクへの熱流の最適な転送を保証することができる。適切な場合には、熱の一部は、複合物質から電気回路へ流れ、更にその後に、誘電体材料層を介して、電気回路からヒートシンクに流れることにより、横方向に放散させることもできる。これにより、素子の温度上昇、および素子の直下にある電気回路の温度上昇を抑制することができる。さらに、複合材料で作られている物質と素子との間の熱膨張係数の差は非常に小さい。従って、複合材料のこの物質は、電気回路と電力用電子素子との間のインタフェースのところで、熱機械応力が広がって行くのを防止している。
【0018】
体積百分率が20%よりも大きな炭素担持量では、熱伝導率の向上は得られない。また、複合材料の物質の熱膨張係数の値と、電力用電子素子の熱膨張係数の値との間の差によって、熱機械応力が生成される。
【0019】
体積百分率60%を超える炭素担持量では、金属による炭素の水和性の問題が生ずる。従って、複合材料が均質な物質を得るのは困難である。
【0020】
本発明によるモジュールは、次に示す更なる特徴の中の1つ以上を備えている。
−金属マトリクスは、基本的に、銅またはアルミニウムを備え、炭素担持は、短いグラファイトファイバ(長さは30μmよりも短いことが望ましい)、グラフェン、または剥離グラファイトを備えている。
−誘電体材料層は、シリコーンを備え、また、可能であれば、その熱伝導率を改善する充填材料を備えている。
−モジュールは、スタックの要素をともにクランプするための手段を備えている。
−モジュールは、少なくとも電気回路の一部分を収容するハウジングを備えており、このハウジングは、少なくとも一部は、スタックおよびハウジングボディによって形成され、クランプ手段は、少なくともハウジングボディの一部分とスタックとを動かないように固着するようになっている。
【0021】
短いファイバのグラファイトを使用することにより、得られる複合材料の物質の異方性を抑制することができる。さらに、製作が容易になる。
【0022】
本発明の別の主題は、本発明における電力用電子モジュールを製造するための方法である。この方法は、次に示すステップを備えることを特徴としている。
・電気回路を形成するための金属層と、
・複合材料で作られた物質とを備えてなるサブアセンブリーを形成するステップと、
スタックサブアセンブリー、誘電体材料層、およびヒートシンクをスタックすることによりスタックを形成し、これにより、複合材料を、一方の、電力用電子素子を搭載するための電気回路の領域と、他方の、電気絶縁物との間に挿入するステップとである。
【0023】
本発明の方法によって形成されるスタックサブアセンブリーは、
−切断、ドリル穴あけ、または折り重ねて電気回路を形成すること、および
−誘電体材料層、およびヒートシンクを使用して、アセンブルすることとを容易に行うことができる。
【0024】
このようなサブアセンブリーは、本発明の方法によれば、製作が容易であるが、従来技術によるセラミック基板では形成することはできない。
【0025】
さらに本発明による方法は、次に示す更なる特徴の中の1つ以上を備えることができる。
a)本方法の1つの実施形態においては、
−スタックサブアセンブリーを、
・少なくとも1つの事前形成する炭素物質を形成するステップと、
・この事前形成した物質をモールドの中に置くステップと、
・第1の量の液体金属をモールドの中に注入し、この液体金属が事前形成した物質の全面を覆うようにするステップと、
・この第1の量の液体金属に圧力(30MPaから40MPaの間の範囲にあることが望ましい)を加えることにより、液体金属が事前形成した炭素物質の中に浸透し、浸透させた事前形成した物質が複合物質を形成し、第1の量の金属の残りの部分が、少なくとも部分的に、電気回路を形成するための金属層を形成するようにするステップとを実行することにより形成し、
−第1の量の液体金属を注入して加圧した後に、第2の量の液体金属をモールドの中に注入することにより、第1の量の金属による処理を完全なものにして、電気回路を形成するための金属層を形成し、
−事前形成した炭素物質を、
・所与の寸法のストリップを不織炭素ファイバのシート状に切断するステップと、
・そのストリップを上下にスタックするステップと、
・そのストリップが互いに集合し合う温度までストリップのスタックを加熱するステップとを実行することにより形成する。
b)本方法の別の実施形態においては、
−複合物質(24)を、
・粉末状にした金属と担持させるべき炭素とを混合するステップと、
・この混成層をモールドの内部に堆積させるステップと、
・この混成層を400℃と1100℃との間の範囲(400℃と900℃の間の範囲にあることが望ましい)の温度に加熱し、また10MPaと80MPaとの間の範囲(50MPaと80MPaとの間の範囲にあることが望ましい)の圧力で圧縮することにより、混成層を焼結するステップとを実行することにより形成し、
−適切な場合には、複合物質(24)と電気回路(26)を形成するための金属層とを一緒にラミネートすることにより、スタックサブアセンブリー(14A)を形成し、
−1つの変形として、
・混成層を導電金属フォイルの上に堆積させ、
・これらの2つの層を一緒に焼結することにより、スタックサブアセンブリーを得て、このスタックサブアセンブリーの中では、混成層は複合物質を形成し、金属フォイルは、電気回路を形成するための金属層を形成する。
【0026】
図面を参照して、以下の説明を読むことにより、本発明をよりよく理解しうると思う。なおこの説明は、単なる例を示すものであり、図1および図2は、それぞれ、本発明における電力用電子モジュールの第1および第2の実施形態の断面を示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態における電力用電子モジュール10を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態における電力用電子モジュール10を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態における電力用電子モジュール10を示す。
【0029】
このモジュール10は、おおむね平坦な形をしたハウジング12を備えている。
【0030】
ハウジング12の壁の少なくとも一部は、要素のスタック14とボディ16とによって形成されている。
【0031】
図1に示す例を見ると、スタック14は、ハウジング12の下面を形成していることが分かる。ボディ16は、ハウジング12の上面を形成している平面サイド16Aと、平面サイド16Aとスタック14とを空間を離して支えている周辺部の横壁16Bと、少なくとも1つの内部壁16Cとを備えている。
【0032】
モジュール10はまた、スタック14に搭載された電力用電子素子を備えている。この例では、この素子は、おおむねウェハの形を有し、電子チップ18とも呼ばれる半導体を備えている。
【0033】
スタック14は、電子チップ18の直下に、図1の下部から上部に向かって、ヒートシンク20を形成する金属物質、電気絶縁物22を形成する誘電体材料層、複合材料で作られている物質24、および、チップ18を搭載している電気回路26を形成する金属層を備えている。従って、電気絶縁物22は、電気回路26とヒートシンク20との間に挿入されている。
【0034】
電気回路26は、全体として、または部分的に、ハウジング12の内部に収容され、チップ18以外の他の素子を搭載することもできることは、言うまでもない。
【0035】
ヒートシンク20は、例えば、基本的に銅で作られており、この材料は、高い熱伝導率を有している。ヒートシンク20は、アルミニウムを基本として作ることもできる。
【0036】
電気絶縁物22を形成している誘電体材料は、シリコーンを備え、また、熱伝導率を改善するための充填材料を備えることもできる。
【0037】
電気回路26は、例えば、基本的に銅またはアルミニウムで作られる。
【0038】
チップ18は、それ自体は公知の方法で、電気回路26の上にろう付けされている。チップ18の電気回路26に対する電気的接続は、従来の様式で行われる。従って、ここに示した例では、この接続は、一方では、チップ18の下面と電気回路26の接触面との間に挿入された、ろう付け物質28によって、また他方では、チップ18と電気回路26とを接続する1つ以上のコネクタ30によって行われる。
【0039】
複合物質24は、チップ18から来る熱を放散させるようになっており、チップ18を搭載している電気回路26の領域と、電気絶縁物22との間に挿入されている。
【0040】
複合物質24は、炭素(チップの熱膨張係数に近い値の熱膨張係数を有する材料)を担持した金属マトリクス(良好な熱伝導率を有する材料)を備えている。炭素担持は、体積百分率で20%と60%との間の範囲にある。ここに記載した例では、金属マトリクスは、基本的に銅またはアルミニウムを備え、炭素担持は、グラファイトの短いファイバ(30μmよりも短い長さであることが望ましい)、またはグラフェン、または剥離グラファイトを備えている。
【0041】
図1に示す実施形態では、複合物質24は、チップ18の直下に比較的局在化した体積を有し、この局在化した体積は、電気回路26を形成している金属層の中への一種の挿入部を形成している。
【0042】
本発明におけるモジュール10は、容易に製作することができる。次に、本発明に関わるモジュール10を製作するための方法を次に述べる。
【0043】
この方法においては、スタックサブアセンブリー14Aを形成するステップは、次のステップを備えている。
・電気回路26を形成するための金属層を生成するステップと、
・複合材料で物質24を作るステップ。
【0044】
一般に、サブアセンブリー14Aは、電気回路26に対して、所望のトポロジーが得られるように設計されている。
【0045】
適切な場合には、チップ18は、電気回路26の上にろう付けされ、チップ18は、この回路26に電気的に接続される。このステップは、後に実行することもできる。
【0046】
ハウジングボディ16の少なくともある部分は、電気回路26の上にモールドされることが望ましい。これらは、例えば、周辺の横壁16Bおよび内部壁16Cで示されている。
【0047】
その後に、スタック14は、サブアセンブリー14A(回路24の上にモールドされたハウジングの部分16Bおよび16Cを含む)、電気絶縁物22、およびヒートシンク20をスタックすることにより形成される。これにより、複合物質24は、チップ18を搭載するための電気回路26の領域と、電気絶縁物22との間に挿入される、
【0048】
スタック14の種々の要素は、公知のクランプ手段32(例えば、ねじ)によって、一緒にクランプされて、動かないように固定される。これは、図1の中に破線で示されている。
【0049】
クランプ手段32によって、少なくともハウジングボディ16の一部分を、スタック14に動かないようにマウントすることが望ましい。従って、図示の例では、手段32によって、ボディ16の平坦面16Aは、スタック14に、動かないように固定されている。適切な場合には、このボディ16の横壁16Bを使用することもできる。
【0050】
ここに記述した例では、横壁16Bおよび内部壁16Cは、それぞれ、階段状の底面の端を有し、これにより、横壁16Bおよび内部壁16Cを、絶縁物22および回路26に対して安定に保持しているということが理解しうると思う。
【0051】
本発明の第1の実施形態におけるモジュール10のスタックサブアセンブリー14Aは、次に示すステップを実行することにより製作すると有利である。
【0052】
先ず最初に、少なくとも1つの事前形成する炭素物質を形成する。
【0053】
この事前形成する炭素物質は、所与の寸法を有するストリップを、不織炭素ファイバのシート状に切断することにより形成することが望ましい。これらのファイバは、例えば、グラファイトの短い(長さは30μmよりも短いことが望ましい)ファイバである。次に、このストリップを、所望の高さになるまで、上下方向にスタックする。引き続いて、ストリップのスタックを、ストリップが互いに集合し合う温度に加熱する。
【0054】
グラファイトファイバの熱伝導率は、500Wm-1-1と1000Wm-1-1との間の範囲にあるのがよいということが理解しうると思う。
【0055】
事前形成する物質を形成した後に、この事前形成した物質をモールドの中に入れ、そのモールドの中に第1の量の液体金属を注入し、この液体金属が、事前形成した物質の全面を覆うようにする。液体金属は、基本的に銅またはアルミニウムからなっていることが望ましい。
【0056】
最後に、この第1の量の液体金属に対して圧力(30MPaと40MPaとの間の範囲にあることが望ましい)を加えて、液体金属を事前形成した炭素物質に浸透させる。この加圧によって、金属マトリクスと炭素ファイバとの間には、強いボンディングが得られ、これらのファイバに対して処理を行う必要はない。
【0057】
従って、液体金属が浸透した事前形成物質は、複合物質24を形成し、第1の量の金属の残りは、少なくとも部分的に、電気回路26を形成するための金属層を形成する。
【0058】
従って、例えば、モールドの中の液体金属の高さは、サブアセンブリー14Aが冷却された後に、このサブアセンブリー14Aが、その1つの面の上で、連続した金属層を形成するように選択することができる。複合物質24の上のこの層の厚さは、チップ18をこの層の上にろう付けすることができて、また同時に、回路26の電気伝導特性は維持されるようにしなければならない。
【0059】
この方法によって、複合物質24と電気回路26との間には、不連続が存在しないということを理解しうると思う。
【0060】
1つの変形例として、第1の量の液体金属の注入と加圧を行った後に、第2の量の液体金属を、モールドの中に注入することができる。これは、第1の量の金属による処理を完全なものにして、電気回路26を形成するための金属層を形成することが目的である。
【0061】
第2の量の液体金属の注入は、第1の量の金属を冷却した後に実行することができる。引き続いて注入する2つの量の金属は、必ずしも同一の金属である必要はない。
【0062】
図2は、本発明の第2の実施形態における電力用電子モジュール10を示している。図2において、図1に示す要素と同様の要素には、同じ符号を付してある。
【0063】
第1の実施形態とは対照的に、炭素担持をした金属マトリクスを有する複合材料からなる物質24は、実質的に、電気回路26の下の全域にわたって延在している。
【0064】
本発明の第2の実施形態におけるモジュール10のスタックサブアセンブリー14Aは、次に示すステップを実行することにより製作することができれば有利である。
【0065】
先ず最初に、次に示すステップを実行することにより、複合物質24を形成する。
【0066】
最初に、粉末状の金属と担持させるべき炭素とを混合する。金属は、例えば、基本的に、銅またはアルミニウムを備え、炭素担持は、例えば、剥離グラファイトの形をしている。グラファイトの熱伝導率は高く、1500Wm-1-1を超えることもあるということは知られている。
【0067】
その後、モールドの中に、この混成物の層を堆積して、この混成物を、400℃と1100℃との間の範囲(400℃と900℃との間の範囲にあることが望ましい。例えば、500℃)の温度で加熱し、さらにこれを、10MPaと80MPaとの間の範囲(50MPaと80MPaとの間の範囲にあることが望ましい)の圧力で圧縮することにより焼結する。この圧力によって、金属マトリクスの内部に、炭素担持の適切な分散と、強いボンディングを保証することができる。グラフェンを担持して得られた複合物質24の構造は、準等方性であるということは理解しうると思う。
【0068】
複合物質24を形成した後に、この複合物質24を、電気回路26を形成するための金属層と共にラミネートすることにより、スタックサブアセンブリー14Aを形成する。
【0069】
スタックサブアセンブリー14Aを製作するこの方法は、本発明の第1の実施形態に関連して上記に示した方法と比較して、事前形成する炭素物質を形成しなくてすむという利点を有する。
【0070】
1つの変形として、複合物質24は、次に示すステップを実行することにより得ることができる。
【0071】
導電金属フォイルをモールドの中に堆積した後に、混成層を、上記で示したように、モールドの中のこの層の上に堆積させる。金属フォイル(例えば、基本的に銅またはアルミニウムを備えている)は、混成層の中に使用したものと同一の金属である必要はない。
【0072】
その後、このフォイルおよび層を、400℃と1100℃との間の範囲(400℃と900℃との間の範囲にあることが望ましい。例えば、500℃)の温度で加熱し、更にそれらを、10MPaと80MPaとの間の範囲(50MPaと80MPaとの間の範囲にあることが望ましい)の圧力で圧縮することにより焼結する。これにより、焼結の後に、スタックサブアセンブリー14Aが得られ、スタックサブアセンブリー14Aの中では、混成層が複合物質24を形成しており、また粉末状金属被膜層が、電気回路26を形成するための金属層を形成している。
【0073】
本発明の第2の実施形態におけるモジュール10に対する製作工程の他のステップは、本発明の第1の実施形態におけるモジュールに関して記述した製作工程のステップと同様である。
図1
図2