(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、電解質中のイオンを分極することにより蓄電し、これを放電することにより電力を供給するデバイスである。
この蓄放電機能により、電気二重層キャパシタは、例えば、電子機器の時計機能や半導体メモリなどのバックアップ電源、マイクロコンピュータやICメモリなどの電子装置の予備電源などに用いられている。
【0003】
特に表面実装が可能な電気二重層キャパシタは、小型化・薄型化が可能であるため、薄型の携帯端末に適している。
このような小型化・薄型化の要望に応えるため、下記の特許文献1では、次に説明するように、凹部を有する容器に分極用の電極と電解質を収納し、開口部を封口板で封止した電気二重層キャパシタが提案されている。
【0004】
図6は、従来の電気二重層キャパシタ100の側面断面図である。
凹部113が形成されたセラミックス製の凹状容器102の底面には、金属層111が設けてあり、金属層111の上面には正極電極106が接合している。金属層111は、凹状容器102を貫通して凹状容器102の底面の正極端子112に電気的に接続しており、このため、正極電極106は、金属層111を介して正極端子112に電気的に接続している。
【0005】
また、封口板103は、金属製の接合金属層108により凹部113の開口部に接合し、凹部113を封口している。
封口板103の下側の面には、集電体として機能する金属層115がメッキ等を用いて形成されており、金属層115の表面には負極電極105が接合している。
凹状容器102の側面には、接合金属層108と凹状容器102の底面の負極端子110を接続する金属層109が形成されている。
そして、負極電極105は、金属層115、接合金属層108、金属層109を介して負極端子110に電気的に接続している。
【0006】
負極電極105と正極電極106の間には、これらの短絡を防ぐセパレータ107が設けられており、また、凹部113には電解質が封入されている。
そして、電気二重層キャパシタ100は、負極端子110、正極端子112に電圧を加えると蓄電し、当該蓄電した電荷を放電してメモリなどに電力を供給する。
【0007】
ところで、金属層109、111は、凹部113の内壁から大気側に貫通しているため、リフロー時などに電気二重層キャパシタ100を加熱すると、電解質の蒸気圧が上昇し、セラミックスと金属層109、111の間から電解質が漏れる可能性があった。
特にセラミックスのシート材を高さ方向に積層して凹状容器102を形成する場合、金属層109は、シート材の層に沿って凹状容器102を貫通するため、金属層109とシート材の層の接合部から電解質が漏れる可能性があった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)実施形態の概要
図1に示したように、電極5は、封口板3に形成された金属層15、凹状容器2と封口板3を接合する接合金属層8、及び、凹状容器2の本体内に形成された貫通電極21を経由して端子10に電気的に接続する。
また、電極6は、凹部13の底面に形成された金属層11、凹部13の下に形成された貫通電極22を経由して端子12に電気的に接続する。
貫通電極21の端部は接合金属層8の下側の面と端子10の上側の面に接合しており、貫通電極22の端部は金属層11の下側の面と端子12の上側の面に接合している。
このように、電極5、6と端子10、12を電気的に接続する配線、即ち、貫通電極21、22が凹状容器2の本体内に形成されているため、加熱により電解質の水上気圧が凹部13で上昇しても、凹状容器2を構成するセラミックスと貫通電極21、22の間から電解質が漏れることはない。
【0014】
(2)実施形態の詳細
本実施の形態の電子部品を構成する電気化学セルについて図面を参照して説明する。なお、以下では、実施の形態として電気二重層キャパシタを例として説明するが、電子部品を非水電解質電池など、他の種類の電気化学セルとすることも可能である。
例えば、負極に、金属リチウムによって活性化された酸化ケイ素(50wt%)と導電助剤(40wt%)とポリアクリル酸系の結着剤(20wt%)で構成された電極シートを用い、正極に、リチウム−マンガン−酸素の元素がスピネル型の結晶構造を有する活物質(85wt%)と導電助剤(10wt%)とPTFE系の結着剤(5wt%)で構成された電極シートを用い、ガラス繊維で出来たセパレーターと、1MのLiN(SO2CF3)2をPCに溶解して電解液で構成される電池が可能である。ここで、正極と負極の大きさは、長さ1mm×幅1.5mm×厚み0.2mmとすることができる。
更に、上述の正極活物質以外にも、Li4Ti5O12、Li4Mn5O12、LiCoO2など用いることもできる。また、負極の活物質として、Li−Si−O、Li−ALなどを用いることもできる。
加えて、PCにLiBF4を1M溶解した電解液などを用いることで、リチウムイオン電池を構成することができる。この時、各活物資に、導電助剤や結着剤を併用できる。
【0015】
図1(a)は、本実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。電気二重層キャパシタ1は直方体形状を有しており、大きさは、例えば、高さが1[mm]以下、縦が2.5[mm]程度、横が3.0[mm]程度の直方体形状を有している。底面および側面の壁の厚みは、約0.1〜0.3mm程度である。
【0016】
電気二重層キャパシタ1、凹部13を有する凹状容器2、下側の面に金属層15が形成された封口板3、電極5、電極6、セパレータ7、接合金属層8、金属層11、貫通電極21、貫通電極22、端子10、金属層11、端子12、及び、凹部13に封入された電解質(図示せず)などを用いて構成されている。
端子10、12は、表面実装のための端子であり、以下では、端子10、12の側を下方向、封口板3の側を上方向とする。
なお、
図1では、部材の接合関係が分かりやすいように、電極5、セパレータ7、電極6の間に間隙を図示しているが、凹部13にこれらの部材を隙間なく詰め込んでもよい。
【0017】
凹状容器2は、例えば、アルミナを用いたセラミックスで構成されており、グリーンシートと呼ばれる柔軟性を有するセラミックスシートを複数枚重ねて焼成して一体化することにより形成される。焼成後の各シートの厚みは、約0.1〜0.3mm程度であり、必要に応じて、厚みを変えることが出来る。グリーンシートには、凹部13に対応する開口部と貫通電極21、22を設置する貫通孔に対応する孔が形成されており、これらグリーンシートを厚さ方向に積層して焼成することにより、凹部13と貫通電極21、22用の貫通孔を有する凹状容器2が形成される。 グリーンシートの積層例については、後ほど変形例2で説明する。
【0018】
凹部13は、上方から見ると矩形の断面を有しており、凹部13の底面には金属層11が形成されている。金属層11は、例えば、グリーンシートにタングステン( W ) 等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを導体印刷し、凹状容器2を焼成することにより形成される。
導体印刷は、例えば、タングステンなどの耐食性があり、高融点の金属材料を含むインキでスクリーン印刷することにより行われる。
【0019】
より詳細には、
図1(b)に示したように、金属層11の表面は、導電性保護層16に覆われている。
タングステンを正極の集電体として使用すると電解質にタングステンが溶解するという性質があり、導電性保護層16は、金属層11が電解質に溶解するのを防ぐために形成されている。
導電性保護層16は、アルミニウム、チタン、ニオブなどの耐食性のよい金属を真空蒸着法やRFスパッタリング法などの厚膜法などで形成してもよい。更に、導電性の樹脂を用いることも可能である。以下の変形例では、簡略化のため導電性保護層16を省略するが同様に形成されている。
なお、導電性保護層16は、金属層11の周囲を隙間無く埋めており、電解液が金属層11に触れないようになっている。
これによって、金属層11が溶出して品質が低下するのを防ぐことができる。
【0020】
図1(a)に戻り、金属層11の上側の面には、電極活物質で構成された電極6が炭素を含有する導電性接着剤により接合している。
電極6は、活性炭を主成分とする電極活物質をシート状に形成して矩形に切断することにより形成されており、例えば、天然素材のヤシガラやピッチを由来とする炭化物や人造材料では、フェノール系樹脂の炭化物をそれぞれ賦活したものが用いられる。
金属層11の電極6と接している部分は、集電体として機能する。
【0021】
凹状容器2の凹部13の下には、先に説明したように孔のあいたグリーンシートを積層することにより、凹部13の底面と凹状容器2の底面に開口部を有する貫通孔が形成されている。
そして、当該貫通孔には、金属層11と端子12を電気的に接続する円柱形状の貫通電極22が形成されている。
貫通電極22の外径と貫通孔の内径は同じに設定されており、貫通電極22と貫通孔の内壁の間には間隙が生じないようになっている。貫通電極は、VIAとも呼ばれる。各貫通電極の直径は約0.1〜0.3mmである。また、各グリーンシートの層間に、中間電極を設けることが出来る。
【0022】
貫通電極22は、この貫通孔にタングステン( W )等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを焼結させたり、カーボン等の導電性ペーストを注入して固化させたり、あるいは、金属製の棒材を挿入することにより形成される。金属製の棒材としては、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、タングステン、ニッケル、銀、金、あるいは、炭素を含む導電性樹脂などを用いることができる。電極6は、金属層11、貫通電極22を介して端子12に電気的に接続している。
【0023】
このように、貫通電極22の貫通孔の両端が金属層11の下側の面、及び端子12の上側の面で封口され、貫通電極22が凹状容器2の本体内部に形成されているため、加熱によって電解質の蒸気圧が上昇し、凹部13の内部が昇圧したとしても、貫通電極22を介して電解質が漏れることはない。
【0024】
凹部13の開口部の端部には、封口板3と凹状容器2を接合する金属層である接合金属層8が形成されている。
接合金属層8は、開口部の端部の全周に形成されたメタライズ層と、メタライズ層の上に形成されたろう材(ニッケル、金など)の層から構成されている。接合金属層8は、封口板3と凹状容器2の間の気密性を確保するためシールリングと呼ばれることもある。
【0025】
メタライズ層は、例えば、コバール(Co:17、Ni:29、Fe:54の比率の合金)で構成されており、コバール製のリング状の金属層を凹状容器2の端部に予め形成しておき、その金属層とろう材を設置して焼成することにより形成される。その後、ろう材の表面はニッケルメッキされる。
後述するように、封口板3を凹部13の開口部に設置して加熱すると、ろう材の表面に予めメッキされたニッケルのメッキ層が溶けて封口板3の金属層15(ニッケルメッキ)と融着し、凹部13が封口板3により封口される。
少なくとも、ろう材の表面、または、金属層15の何れか一方は、他方と比較して、融点が低いことが望ましい。
このような組み合わせとして、例えば、電解ニッケルメッキとリン(P)の添加された無電解メッキで作製された組成の異なるニッケルを用いたり、あるいは、ホウ素(B)の添加された無電解メッキとリン(P)の添加された無電解メッキで作製された組成の異なるニッケルを用いることができる。
【0026】
凹状容器2には、孔をあけたグリーンシートを積層することにより、凹部13を囲む側壁内に、凹部13の開口部の端部と凹状容器2の底面に開口部を有する貫通孔が形成されている。
そして、当該貫通孔には、接合金属層8と端子10を電気的に接続する円柱形状の貫通電極21が形成されている。
貫通電極21の外径と貫通孔の内径は同じに設定されており、貫通電極21と貫通孔の内壁の間には間隙が生じないようになっている。
貫通電極21の材質や形成方法は貫通電極22と同様である。
【0027】
このように、貫通電極21の貫通孔の両端が接合金属層8の下側の面、及び端子10の上側の面で封口され、貫通電極21が凹状容器2の本体内部に形成されているため、加熱によって電解質の水上気圧が上昇し、凹部13の内部が昇圧したとしても、貫通電極21を介して電解質が漏れることはない。
【0028】
なお、以上のように電気二重層キャパシタ1では、貫通電極21、22を凹状容器2の本体内部に形成したため、ハンダの這い上がりを防止することもできる。
従来の電気二重層キャパシタ100(
図6)では、金属層109、111が凹状容器102の側面に形成されていたため、電気二重層キャパシタ100を基板に表面実装すると、ハンダが金属層109、111を伝って這い上がる可能性がある。特に、金属層111にハンダから這い上がると接合金属層108や封口板103と短絡することも考えられる。この点、電気二重層キャパシタ1は、このような心配がない。
更に、貫通電極21、22は、凹状容器2の本体内に格納されているため、外気に触れず、貫通電極21、22の腐食を防止することができる。
【0029】
電気二重層キャパシタ1の説明に戻り、端子10、12は、タングステンを含むインキなどで導体印刷して焼成した後、その表面にニッケルなどをメッキして形成されている。さらに、ニッケルメッキの上に、防錆のため金やスズ等の金属をメッキすることが出来る。メッキには、電解メッキ、無電解メッキなどがあり、また、真空蒸着などの気相法によって形成してもよい。
これにより、端子10、12の高いハンダ濡れ性が確保され、電気二重層キャパシタ1を基板に良好に表面実装することができる。
なお、本実施の形態では、端子10、12を凹状容器2の外側底面部に設けたが、外側側面部に形成したり、あるいは、外側底面から側面に連続して形成してもよい。
端子10、12は、貫通孔に貫通電極21、22を設置した後に形成する。
【0030】
封口板3は、コバールなどで構成された金属部材である。コバールは、セラミックスと熱膨張率がおおよそ等しいため、リフロー時に電気二重層キャパシタ1を加熱した場合に封口板3と凹状容器2の間に発生する応力を抑制することができる。
封口板3の下側の面には、封口板3を接合金属層8に良好に接合するために、ニッケルメッキによる金属層15が形成されている。
金属層15が接合金属層8にろう付けされると封口板3が凹部13の開口部に物理的、及び電気的に接合する。
【0031】
ろう付けは、封口板3を加圧しながら加熱することにより溶解し、封口板3と凹状容器2を接合する。
より具体的には、ローラ電極を封口板3の縁部に適当な圧力で接触させ、通電しながら回転走行させるパラレルシーム溶接を用いることができる。接触抵抗により接合金属層8が加熱され、加圧と加熱が行われる。
【0032】
パラレルシーム溶接を行う場合、接合金属層8と封口板3の相性がよい材料を選択するのが望ましく、例えば、接合金属層8に無電解ニッケルを用いた場合は、封口板3は、コバールに電解ニッケル、を施したものを用いる。または、その逆に、接合金属層8に電解ニッケルを用いた場合は、封口板3は、コバールに無電解ニッケルを施したものを用いる。これにより、必要以上に溶接パワーを上げなくて済む。更に、無電解ニッケルを行う場合は、各種還元剤を用いることができる。例えば、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。ここで、ろう材として、メッキに用いたニッケルを溶融させる際、ニッケルの融点が低い方が望ましい。そこで、メッキの際の還元剤には次亜リン酸を用いることで、仕上がったメッキの化学組成が、「Ni:90%-96%、P:4%-10%」である場合に、ホウ素を含有する場合に比較して、融点が低いので、ろう付けに適する。
また、接合金属層8のシールリングをセラミックスのメタライズ層に固着させるためには、金ろう、銀ろうなどのろう材やハンダ材を用いることも可能である。
【0033】
金属層15の下側の表面には、電極活物質で構成された電極5が炭素を含有する導電性接着剤により接合している。
電極5の材質と形状は電極6と同様である。金属層15の電極5と接している部分は、集電体として機能する。
このようにして、電極5は、金属層15、接合金属層8、貫通電極21を介して端子10に電気的に接続している。
【0034】
電極5、6は、凹部13と封口板3により構成される空洞部内で対面しており、電極5、6の間には、電極5、6の接触による短絡を防止するためのセパレータ7が設置されている。
セパレータ7の材質としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの耐熱性樹脂などに親水性を付与した材料で構成される不織布、又はガラス繊維を用いることができる。
【0035】
更に、凹部13と封口板3より構成される空洞部内には電解質が封入されている。
電解質は、例えば、PC(プロピレンカーボネート)などの非水溶媒に(CH3)・(CH4)3N・BF4などの支持塩を溶かした溶液で構成されている。このように本実施の形態では支持塩として液体を用いるが、ゲル状や固体状の電解質を用いることも可能である。封止方法にも依存するが、電解質として、液体の溶媒を用いる場合は、沸点が200℃以上あることが望ましい。更に、封口時に印加された熱によって蒸気圧が上がらないことが望ましい。電解液中に沸点が100℃未満の低沸点の溶媒を添加することはできるが、少なくとも樹脂の融点における蒸気圧が0.2MPa−G以下が望ましい。
なお、固体の電解質を用いる場合、セパレータ7は不要となる。
【0036】
以上のように、電気二重層キャパシタ1は、空洞部において、セパレータ7を挟んで電極5と電極6が対面(対峙)するが、電極5は、負極電極、電極6は、正極電極として使用される。そのため、端子12は、負極端子、端子10は、正極端子となる。
このように電極の極性を設定する理由は以下の通りである。
【0037】
電極5を負極としたのは、仮に電極5を正極とすると金属層15(ニッケル)が溶け出すのに対し、電極5を負極とすると還元電位が係るため金属層15が溶け出しにくいからである。そのため、金属層15としては、ニッケルの他に銅、真鍮、亜鉛、スズ、金ステンレス、タングステン、アルミニウムなど多くの金属を用いることができる。
一方、金属層11は、溶け出さない材質としてタングステンの他、白金、ステンレススチール(SUS444、SUS239J4L、SUS317J4L)などが使用可能である。
【0038】
以上のように構成された電気二重層キャパシタ1を、端子10を負極、端子12を正極として基板に表面実装し、例えば、携帯電話のメモリやクロックのバックアップ電源として使用することができる。
この場合、携帯電話は、主電源の電池を装着すると同時に電気二重層キャパシタ1を充電しておき、電池交換時や主電源の電圧が低下した場合に、電気二重層キャパシタ1に蓄積された電荷を放電してメモリに電力を供給したり、クロック等の機能を保持する。
【0039】
以上、電気二重層キャパシタ1の構成の一例について説明したが、各種の変形が可能である。
例えば、
図2(a)では、凹状容器2の上端部の全面に渡って接合金属層8が形成してある。
このように全面に接合金属層8を形成すると、コストが高くなるが、封口板3のずれを吸収することができ、歩留まりが向上する。
【0040】
図2(b)の例は、ろう材による接合金属層8aと、接合金属層8aと大きさが異なるシールリングと呼ばれる接合金属層8bにより接合金属層8を形成した例である。
シールリングを用いると封口板3と凹状容器2の気密性をより確かに確保することができる。
より詳細には、接合金属層8aを銀ろうなどで形成し、接合金属層8bをコバールで形成する。更に、図示しないが、接合金属層8a、8bを覆うように無電解ニッケルメッキによってニッケルの膜で覆う。
このようにニッケルで覆われた接合金属層8a、8bに封口板3を載せてローラ電極で溶接すると、接合金属層8a、8bを覆うニッケルと、金属層15を形成するニッケルが溶着し、凹状容器2と封口板3の接合部にフィレットが形成される。
【0041】
また、
図2(c)に示したように、端子10、12の端部は、凹状容器2の底部の端部まで形成せず、端子10、12の端部と凹状容器2の底部の端部が揃っていなくてもよい。
この場合、大判のシート材に多数の電気二重層キャパシタ1を一度に作成し、分割して個々の電気二重層キャパシタ1を取り出す場合に(チョコレートブレークと呼ばれることがある)、分割に伴って端子10、12が剥がれたり、割れたりするのを防止することができる。
【0042】
更に、
図2(d)に示したように、外側底面から側面に連続して形成してもよい。
この場合、端子10、12の端部が凹状容器2の側面にかかって、基板に対して垂直となっている。
このため、電気二重層キャパシタ1をリフローすると、ハンダが端子10、12の垂直部分を這い上がって固化し、電気二重層キャパシタ1と基板との接合強度が向上する。
【0043】
このほかに、例えば、凹状容器2を主成分としてアルミナを90wt%以上とするセラミックスで構成したが、耐熱性樹脂、主成分として珪素(SiO2)を含有するガラス、AL2O3が90%未満で、且つ珪素(SiO2)を含有するセラミックスガラスなどの耐熱材料で構成することも可能である。
凹状容器2をガラスやガラスセラミックスで形成する場合は、低融点のガラスやガラスセラミックスに導体印刷により配線を施し、積層した後、低温で焼成する。
凹状容器2を樹脂で構成する場合、貫通電極21、22をインサート成型することも可能である。
【0044】
以上に説明した実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)電極5と端子10を接続する配線(貫通電極21)、及び電極6を端子12に接続する配線(貫通電極22)が、凹状容器2の本体内部に形成されているため、これらの配線を介した電解質の漏れを防止することができる。特に、電気二重層キャパシタ1を加熱して内部の電解液の蒸気圧が上昇しても電解質の漏れを防止することができる。
(2)電気二重層キャパシタ1は、グリーンシートの積層方向に形成され、凹部13の側面から凹状容器2の外部に貫通する水平方向のメタライズ電極がないため、加熱により内圧が上昇しても電解質の漏出を防止することができる。
(3)電気二重層キャパシタ1の側面に、端子10、12と接続する金属層(従来例の金属層109、111)がないため、表面実装時にハンダの這い上がりによるショートを防止することができる。
(4)貫通電極21、22は、凹状容器2の本体内部に形成されているため、外気に触れず、腐食を防止することができる。
(5)電解質の液漏れ、ハンダの這い上がりなどに起因する不良を低減することができる。
【0045】
(変形例1)
先に説明した実施の形態の電気二重層キャパシタ1では、凹状容器2の底面に貫通電極22を形成した。
しかし、電気二重層キャパシタ1を加熱して凹部13の内圧が高まると、内圧により貫通電極22が抜け落ちたり、あるいは、貫通電極22を中心に周囲に亀裂が生じたりする可能性がある。また、貫通電極22の周囲から電解液が染み出す可能性がある。
そこで、変形例1では、凹部13の底面の外側に貫通電極22を形成し、内圧が貫通電極22に作用しないようにした。
【0046】
図3は、変形例1に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。
金属層11は、凹部13の底面から内壁に侵入し、凹状容器2の本体内部に至っている。金属層11は、凹状容器2の外部には貫通していない。そのため、金属層11に沿って電解質が漏れることはない。
貫通電極22は、一端側が金属層11の凹状容器2の本体内で金属層11に接合し、他端側が端子12に接合している。
金属層11は、凹部13の底面に設置される部分と凹状容器2の本体内部に設置される部分をグリーンシートの表面にタングステン(W)等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを導体印刷することにより形成される。
【0047】
このように、本変形例では、貫通電極22が凹部13の底面の直下の領域の外側に配設されているため、加熱によって凹部13の内圧が高まったとしても、圧力が貫通電極22に直接作用せず、貫通電極22が抜け落ちたり、貫通電極22の周囲に亀裂が生じるのを防ぐことができる。
更に、貫通電極22を接合金属層8で囲まれる領域の直下の領域の外側に配設すると、凹部13から貫通電極22がより遠くに位置し、より安全性を高めることができる。
【0048】
(変形例2)
変形例2も凹部13の内圧の上昇による貫通電極の抜け落ちなどを防止するものである。
図4(a)は、変形例2に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。
貫通電極25の上端は、凹部13の底面にて金属層11の下側の面に接続しており、貫通電極25の下端は、凹状容器2の底部の本体内に形成された金属層23の上側の面に接続している。
【0049】
金属層23は、凹部13の底面直下の領域から当該領域の外部まで延びており、凹部13の底面直下の領域で貫通電極25に接続し、当該外部の領域で貫通電極26に接続している。
そして、貫通電極26は、凹状容器2の本体内で凹部13の直下の領域外に形成された貫通孔を経由して端子12に接続している。
このように、変形例2では、金属層11(集電体)に接続する貫通電極25の中心線と端子12に接続する貫通電極26の中心線が同一延長線上にないように設定されている。
【0050】
ここで、グリーンシートの積層について説明する。
図4(a)では、凹状容器2を構成するセラミックスのシート材(グリーンシート)を破線にて図示している。凹状容器2は、シート材41〜44を積層して焼成することにより形成されている。
金属層23は、シート材41の上側の面に導体印刷して形成されている。
そして、貫通電極25は、それぞれシート材42にあけられた貫通孔に形成され、上端は金属層11に接続し、下端は金属層23に接続する。
貫通電極26は、シート材41にあけられた貫通孔に形成され、上端は金属層23に接続し、下端は端子12に接続している。
なお、貫通電極21は、シート材41〜44に同心にあけられた貫通孔に形成されており、凹部13は、シート材43、44にあけられた開口部によって形成されている。そして、金属層11は、シート材42の上側の面に導体印刷されて形成される。
【0051】
変形例2では、リフロー時に凹部13の内圧が上昇し、貫通電極25に圧力が加わったとしても、貫通電極25の下端がシート材41によって押さえられているため、貫通電極25が脱落することはない。
また、加熱による昇圧で貫通電極25に加わった下方向の圧力は、金属層23に分散されてシート材41に作用する。そのため、局所的に圧力が加わってセラミックスが割れる可能性を低減することができる。
更に、貫通電極26には、凹部13の内圧が作用しないため、貫通電極26が脱落したり、貫通電極26の周囲のセラミックスが割れたりすることはない。
このように、変形例2では、貫通電極26に加わる圧力が凹状容器2の本体内で分散するため、加熱時の破損や液漏れなどを効果的に抑制することができる。
【0052】
また、
図4(b)に示したように、シート材の貫通孔形成部分に中間金属層を設けることもできる。
図の例では、シート材41、42、43の表面の貫通孔形成部分に、それぞれ中間金属層51、52、53が設けられている。
このように、中間金属層を設けると、貫通電極21用の孔の形成の精度が高くない場合や、シート材41〜44の積層時にシート材の位置がずれた場合でも貫通電極21が電気的な接続を維持でき、歩留まりを向上させることができる。
【0053】
(変形例3)
変形例3も凹部13の内圧の上昇による貫通電極の抜け落ちなどを防止するものである。
図5(a)は、変形例3に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。
貫通電極28は、上端が金属層11の下側の面に接合し、下端が端子12の上側の面に接合している。
貫通電極28が貫通する貫通孔は、シート材42の貫通孔の内径がシート材41の貫通孔の内径よりも大きく設定されている。
そのため、貫通電極28には、シート材41、42の積層部分で段部が形成されており、貫通電極28の上端側での断面積が下端側での断面積より大きくなっている。
【0054】
このように貫通電極28が形成されているため、加熱により凹部13の内圧が上昇して圧力が貫通電極28に作用しても、貫通電極28は、段部でシート材41に引っかかるため抜け落ちることはない。
また、当該圧力は、シート材41に分散されるため、セラミックスが割れる可能性も低減される。
【0055】
図5(b)は、変形例3の更なる変形であって、貫通電極28の同一中心線上に直径の異なる複数の金属柱を配置することにより貫通電極28を形成した例である。
シート材42bの貫通孔の直径がシート材42aの貫通孔の直径よりも大きく設定されており、凹状容器2の底面から凹部13の底面に近づくにつれて直径が徐々に大きくなっている。
【0056】
以上に説明した本実施の形態、及び変形例により、次の構成を得ることができる。
凹状容器2は、凹部13を有し、凹部を有する凹状容器として機能している。
金属層11は、凹部13の底面に形成されており、前記凹部の底面に形成された第1の導電体として機能している。
封口板3は、凹部13の上端部に接合して凹部13を封口し、凹部13の側に金属層15と接合金属層8が形成されているため、前記凹部の上端部に接続して前記凹部を封口し、前記凹部側の面に第2の導電体(金属層15と接合金属層8)が形成された封口板として機能している。
電極6は、前記第1の導電体の表面に設置された第1の電極として機能し、電極5は、前記第2の導電体の表面に設置され、前記第1の導電体と所定距離を隔てて対面する第2の電極として機能している。
また、端子10、12は、前記凹状容器の外部に形成された第1の接続端子、及び第2の接続端子として機能している。
貫通電極22は、前記凹状容器の本体内部に形成され、前記第1の導電体と前記第1の接続端子に接続する第1の内部電極として機能している。
貫通電極21は、前記凹状容器の本体内部に形成され、前記第2の導電体と前記第2の接続端子に接続する第2の内部電極として機能している。
凹部13に封入された電解質は、前記第1の電極と前記第2の電極と接する電解質として機能している。
【0057】
変形例2では、貫通電極25、26の中心線が同一直線上にないため、前記第1の内部電極の前記凹部の底面側の中心線と、前記第1の接続端子側の中心線が同一線上にない。
【0058】
変形例1、2では、それぞれ貫通電極22、26が凹部13の底面の直下の領域の外側に形成されているため、前記第1の内部電極の少なくとも一部は、前記凹部の底面の直下の領域の外側に形成されている。
更に、貫通電極22、26を接合金属層8で囲まれる範囲の直下の領域外に形成することも可能であり、前記第1の内部電極の少なくとも一部は、前記凹状容器と前記封口板の接合部分で囲まれる範囲の直下の領域の外側に形成することもできる。
【0059】
また、変形例1、2では、それぞれ金属層11、23が凹状容器2の本体内に形成されているため、前記第1の内部電極は、前記凹状容器の本体内部に形成された金属層を含んでいる。
なお、変形例1では、金属層11が凹部13の側面に侵入しており、貫通電極22は、当該侵入した部分に接合しているため、前記第1の導電体は、前記凹状容器の側面に侵入しており、前記第1の内部電極は、前記第1の導電体の前記侵入した部分に接合している。
更に、変形例2では、前記第1の内部電極は、前記第1の導電体に接合する第1の部分(貫通電極25)と、前記第1の接続端子に接合する第2の部分(貫通電極26)と、前記第1の部分と前記第2の部分に接合する金属層(金属層23)から構成されている。
【0060】
変形例3の貫通電極28は、金属層11側の断面積が端子12側の断面積より大きく形成されているので、前記第1の内部電極は、前記第1の導電体に接合する側の断面積が前記第1の接続端子に接合する側の断面積よりも大きく形成されている。
【0061】
凹状容器2は、セラミックスのシート材を積層して形成されているため、前記凹状容器は、前記第1の内部電極、前記第2の内部電極、及び前記凹部に対応する開口部が形成されたシート材を積層して形成されている。
【0062】
また、電気二重層キャパシタ1は、例えば、携帯電話のメモリやクロックのバックアップ電源として使用することができる。
この場合、当該携帯電話は、電気二重層キャパシタ1で構成された電子部品と、主電源の電池を装着すると同時に前記電子部品に蓄電する蓄電手段と、メモリやクロックなどの所定の機能を発揮する他の電子部品と、蓄電した電荷を放電してメモリやクロックに電力を供給するなど、前記蓄電した電荷を用いて前記他の電子部品に電力を供給する電力供給手段を備えた電子装置として機能している。