特許第5668269号(P5668269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5668269-除湿式エアシステム 図000002
  • 特許5668269-除湿式エアシステム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668269
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】除湿式エアシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20150122BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20150122BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20150122BHJP
   F15B 11/06 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   B01D53/26 Z
   B01D63/02
   B01D53/22
   F15B11/06 L
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2007-19707(P2007-19707)
(22)【出願日】2007年1月30日
(65)【公開番号】特開2008-183521(P2008-183521A)
(43)【公開日】2008年8月14日
【審査請求日】2009年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100100804
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 宏太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141438
【弁理士】
【氏名又は名称】吉迫 大祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏弘
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−300268(JP,A)
【文献】 特開昭63−054918(JP,A)
【文献】 特開昭63−054919(JP,A)
【文献】 特開2002−320816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
B01D 53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気源からのエアを切換弁を介してエア使用機器に供給するように構成されたエアシステムにおいて、上記切換弁とエア使用機器とを、水分選択透過性の高分子浸透膜からなる中空状の除湿部材を介して接続すると共に、該除湿部材を大気中に配置して該除湿部材の外周面を大気に接触させることにより、上記切換弁から上記除湿部材を通してエア使用機器に供給される供給エアを該除湿部材で除湿すると共に、該除湿部材で分離された水分を上記外周面から大気に放散させるように構成したことを特徴とする除湿式エアシステム。
【請求項2】
上記除湿部材が通気性のある保護カバーで覆われていることを特徴とする請求項1に記載のエアシステム。
【請求項3】
上記除湿部材の両端にそれぞれパイプ状をした支持体兼用の接続具が取り付けられ、この接続具を介して該除湿部材が上記切換弁とエア使用機器との間に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアシステム。
【請求項4】
上記エア使用機器から排出される排出エアを、供給時と同じ除湿部材を通して切換弁から外部に排出するように構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のエアシステム。
【請求項5】
上記除湿部材が中空糸膜であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のエアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気源からの圧力エアを切換弁を介してエア使用機器に供給するように構成されたエアシステムに関するものであり、さらに詳しくは、エアを除湿するための手段を備えた除湿式エアシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気源からの圧力エアによってエアシリンダ等のエア使用機器を駆動するように構成されたエアシステムにおいては、上記圧縮空気源とエア使用機器との間に切換弁が接続され、この切換弁を介して上記圧縮空気源からのエアがエア使用機器に供給される。
この種のエアシステムにおいて、上記切換弁が切り換わってエアがエア使用機器に向けて出力される場合、該エアが配管内やエア使用機器内で断熱膨張するため、その温度が低下し、該エア中の水分が凝縮して霧状のミストになる。このミストは、エアの給排が繰り返されることによって徐々に成長し、結露となってエア使用機器に錆びを発生させたり、潤滑剤を消失させて該エア使用機器の円滑な作動を阻害するなどの弊害をもたらすことになる。
【0003】
このため、本出願人は、特許文献1に記載されているように、高分子浸透膜を用いた除湿装置(除湿式結露防止装置)を提案し、この除湿装置を切換弁とエアシリンダとの間に接続することにより、該切換弁から出力されるエアをこの除湿装置で除湿し、ドライエアとした状態でエアシリンダに供給できるようにした。
上記除湿装置は、ハウジングの内部に、多数の中空糸膜を並列に並べて形成した中空糸膜モジュールセットを2組並列に収容すると共に、エアシリンダに流入する流入空気とエアシリンダから流出する流出空気との流れを制御するための三方弁を複数個内蔵したもので、切換弁から出力された上記流入空気は、上記中空糸膜モジュールセットの各中空糸膜内を流通することにより除湿され、ドライエアとしてエアシリンダに供給され、該シリンダから流出する上記流出空気は、上記中空糸膜の外側に形成された流路を流通することにより、上記流入空気の除湿によって上記中空糸膜の表面に浸透した水分と接触して加湿され、切換弁を通じて外部に排出されるように構成されている。
【特許文献1】特開2001−300268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記除湿装置は、ハウジングの内部に中空糸膜を収容したものであるため、エアの除湿により該中空糸膜の表面に浸透した水分をパージエアで上記ハウジングの外部に強制的に放出させる必要があり、このため、ハウジングの内部にパージエア用の流路を形成したり、パージエアの流れを制御するための三方弁を設けなければならず、構造がやや複雑で、全体として大形になり、小形のエアシリンダに接続して使用するのには不向きであった。
【0005】
そこで本発明の目的は、除湿によりエアから分離された水分をパージエアで強制的に大気に放散させる必要のない、構成が簡単でコンパクトな除湿手段を備えたエアシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、圧縮空気源からのエアを切換弁を介してエア使用機器に供給するように構成された除湿式エアシステムにおいて、上記切換弁とエア使用機器とを、水分選択透過性の高分子浸透膜からなる中空状の除湿部材を介して接続すると共に、該除湿部材を大気中に配置して該除湿部材の外周面を大気に接触させることにより、上記切換弁から上記除湿部材を通してエア使用機器に供給される供給エアを該除湿部材で除湿すると共に、該除湿部材で分離された水分を上記外周面から大気に放散させるように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、上記除湿部材が通気性のある保護カバーで覆われていることが望ましい。
本発明において好ましくは、上記除湿部材の両端にそれぞれパイプ状をした支持体兼用の接続具が取り付けられ、この接続具を介して該除湿部材が上記切換弁とエア使用機器との間に接続されていることである。
また、本発明においては、上記エア使用機器から排出される排出エアを、供給時と同じ除湿部材を通して切換弁から外部に排出するように構成することもできる。
本発明においては、上記除湿部材として中空糸膜を使用することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、除湿部材を大気に接触させ、除湿によりエアから分離された水分を自然蒸発で大気に放散させるようにしたので、該水分をパージエアによって強制的に放散させる必要がなく、このため、パージエア用の流路も、パージエアの流れを制御するための三方弁も必要なく、構造が簡単でコンパクトな除湿手段を備えたエアシステムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明に係る除湿式エアシステムの一実施形態を記号を用いて概略的に示すものである。このエアシステムは、圧縮空気源1からの圧力エアを切換弁2を介してエア使用機器3に供給することにより、この圧力エアでエア使用機器3を駆動するように構成されたもので、上記切換弁2とエア使用機器3との間に、高分子浸透膜を用いた2つの除湿器4a,4bが接続されている。
なお、図にはエア使用機器3としてエアシリンダが代表的に示されているため、以下の説明においては、このエアシリンダにエア使用機器と同じ符号「3」を付して説明するものとする。
【0010】
上記エアシリンダ3は、シリンダチューブ6の内部を摺動するピストン7と、該ピストン7から延出するロッド8とを有し、上記ピストン7の両側にヘッド側圧力室9aとロッド側圧力室9bとが形成されている。
また、上記切換弁2は、電磁操作式の5ポート切換弁であって、供給ポートPと、2つの出力ポートA,Bと、2つの排出ポートEA,EBとを有し、上記供給ポートPに上記圧縮空気源1が接続され、2つの出力ポートA,Bと上記エアシリンダ3の2つの圧力室9a,9bとの間にそれぞれ、上記除湿器4a,4bが接続されている。
【0011】
上記除湿器4a,4bは、図2からも分かるように、水分選択透過性の高分子浸透膜で形成された中空状の除湿部材11を有し、この除湿部材11を複数本並列に配設してなる除湿部材束11Aの両端に、それぞれ、パイプ状をした支持体兼用の接続具12を、合成樹脂製のポッティング材13を介して取り付けたもので、各除湿部材11の表面は、外部に露出することにより大気に直接接触している。
【0012】
そして、上記除湿部材束11Aの一端の接続具12を、エアシリンダ3の接続ポート15に取り付けられた管継手16に差し込んで接続すると共に、上記除湿部材束11Aの他端の接続具12を、配管チューブ17の先端に取り付けられた管継手18に差し込んで接続し、この配管チューブ17の基端部を、切換弁2の出力ポートA,Bに取り付けられた図示しない管継手に差し込んで接続することにより、上記2つの除湿器4a,4bが、上記エアシリンダ3のヘッド側圧力室9a及びロッド側圧力室9bと切換弁2の2つの出力ポートA,Bとの間にそれぞれ接続されている。従って、これらの除湿器4a,4bは、別々に形成されて互いに同じ構成を有するものである。
【0013】
上記高分子浸透膜は、エアは透過させないが該エア中の水分は透過させる水分選択透過性の浸透膜で、例えばフッ素系イオン交換膜やポリイミド系イオン交換膜等が好適に使用される。しかし、これ以外のものであっても良いことはもちろんである。
また、上記除湿部材11は、中空状をしていて内部をエアが加圧状態で流通できるものであればどのような形態のものでも良く、好適な例は、中空の糸状(線状)に加工された中空糸膜である。
【0014】
上記各管継手16,18は、何れも簡易接続式の管継手であって、上記接続具12又は配管チューブ17を単に接続口に差し込むだけで抜け止め状態に接続するこさせるとができ、接続した該接続具12又は配管チューブ17を取り外すときは、リリース用のプッシャ19を押し込むことによって該接続具12又は配管チューブ17に係止した爪を外す構成のものである。しかし、このような管継手の構成は既に周知であるため、これ以上の説明は省略する。
図中20は位置センサで、シリンダチューブ6にホルダ21により取り付けられ、ピストン7に取り付けた永久磁石を検出することによって該ピストン7の動作位置を検出するものである。
【0015】
上記構成を有するエアシステムにおいて、図1は、圧縮空気源1からの圧力エアが、切換弁2の供給ポートPから第2出力ポートB及び第2除湿器4bを通じてエアシリンダ3のロッド側圧力室9bに供給され、エアシリンダ3のヘッド側圧力室9aのエアが、第1除湿器4aから切換弁2の第1出力ポートA及び第1排出ポートEAを通じて大気に排出されることにより、ピストン7が下降してロッド8が短縮した状態を示している。
【0016】
この切換状態において、上記ロッド側圧力室9bに供給される供給エアは、上記第2除湿器4bの各除湿部材11内を通ることによって除湿され、ドライエアとしてロッド側圧力室9bに流入する。そしてこのとき、エアから分離されて上記除湿部材11の表面に浸透した水分は、該除湿部材11の表面が大気に直接接触しているため、自然蒸発で大気に放散されることになる。
また、上記ヘッド側圧力室9aから排出される排出エアは、第1除湿器4aの各除湿部材11内を流通し、ドライエアの状態のまま切換弁2の第1出力ポートAから第1排出ポートEAを通じて大気に排出される。
【0017】
図1の切換状態から上記切換弁2が切り換わり、第1出力ポートAが供給ポートPに連通すると共に、第2出力ポートBが第2排出ポートEBに連通すると、圧縮空気源1からの圧力エアは、上記第1出力ポートA及び第1除湿器4aを通じてエアシリンダ3のヘッド側圧力室9aに供給され、ロッド側圧力室9bのエアは、第2除湿器4bから切換弁2の第2出力ポートB及び第2排出ポートEBを通じて大気に排出されるようになり、ピストン7が上昇してロッド8が伸長する。このとき、上記ヘッド側圧力室9aに供給される供給エアは、上記第1除湿器4aの各除湿部材11内を通ることによって除湿され、ドライエアとして該ヘッド側圧力室9aに流入する。そして、エアから分離されて上記除湿部材11の表面に浸透した水分は、自然蒸発で大気に放散される。
また、上記ロッド側圧力室9bから排出される排出エアは、第2除湿器4bの各除湿部材11内を流通し、ドライエアの状態のまま切換弁2から大気に排出されることになる。
【0018】
従って、エアシリンダ3に供給される供給エアの除湿によって除湿部材11の表面に浸透した水分を、パージエアで強制的に大気の放散させる必要がなく、パージエアを流すための流路や、その流れを制御するための三方弁等を必要としないため、除湿器4a,4bを簡単でコンパクトに構成することが可能である。しかも、エアシリンダ3から排出される排出エアは、除湿部材11を通ってドライエアの状態のまま切換弁2を通じて排出されるため、エアを加湿して排出する場合のように凝縮した水分が切換弁2に付着して不都合を及ぼすようなこともない。逆に、エア供給時に切換弁2に供給エア中の水分が付着した場合でも、排出エアによってこの水分が除去されることになる。
【0019】
上記実施例では、上記除湿器4a,4bの除湿部材11の表面が外部に完全に露出することによって大気と直接接触しているが、該除湿部材11の表面を通気性のある保護カバー22で覆うことにより、この保護カバー22を介して大気と接触させても良い。この場合、図1及び図2に点線で示すように、上記保護カバー22を、除湿部材束11Aの回り全体を取り囲むように被設して両接続具12に取り付けても、各除湿部材11毎に個別に被設しても良い。場合によっては、上記保護カバー22を2つの除湿器4a,4bに個別に取り付けるのではなく、2つ除湿器4a,4bをまとめて覆うように取り付けることもできる。
上記保護カバー22は、金属製又は合成樹脂製の多孔質の薄板によって形成することができる。また、この保護カバー22は、硬質であっても良いが、除湿器4a,4bにある程度の可撓性をもたせたい場合には、半硬質のものや柔軟性のあるものを用いることもできる。
【0020】
また、上記実施例では、上記除湿器4a,4bがそれぞれ複数の除湿部材11を備えているが、例えば、小形のエア使用機器にエアを供給する場合のようにエア流量が少ない場合には、該除湿部材11の数は1つであっても良い。あるいは、使用条件によっては、一方の除湿器4aと他方の除湿器4bとで除湿部材11の数や通孔の大きさ(断面積)等を互いに違えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るエアシステムの構成図である。
図2】エアシリンダと除湿器との接続部分の構成を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 圧縮空気源
2 切換弁
3 エア使用機器
11 除湿部材
11A 除湿部材束
12 接続具
22 保護カバー
図1
図2