(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668306
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】コネクタシェル
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20150122BHJP
H01R 13/648 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
H01R12/58
H01R13/648
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-71853(P2010-71853)
(22)【出願日】2010年3月26日
(65)【公開番号】特開2011-204526(P2011-204526A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2013年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116182
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 照雄
(72)【発明者】
【氏名】高木 壯一
(72)【発明者】
【氏名】筒井 敬貴
(72)【発明者】
【氏名】江口 毅
【審査官】
石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−019075(JP,A)
【文献】
特開2006−210517(JP,A)
【文献】
特開平06−196225(JP,A)
【文献】
特開2007−242346(JP,A)
【文献】
特開2005−005091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/58
H01R 13/648
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に取り付けられるコネクタシェルであって、
取り付け時において前記基板の第1の側に配置され、内部にプラグ挿入空間を画成するシェル本体と、
前記シェル本体と一体であって、前記基板にはんだ付けされて取り付けられる取付片とを有し、
前記取付片には、取り付け時において前記基板の第1の側から当該第1の側の反対側である第2の側にわたって延びるように開放端を有しない溝が形成されており、
取り付けの前後を通じて前記溝の幅は不変であり、
取り付け時において前記溝よりも前記基板から離間する位置に断面積減少部が設けられており、
取り付け時において前記基板と平行な面に現れる前記断面積減少部の断面積は、取り付け時において前記基板と平行な面に現れる前記取付片の前記溝が形成されている部分の断面積よりも小さいことを特徴とするコネクタシェル。
【請求項2】
前記断面積減少部は、前記溝に連通する開口を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のコネクタシェル。
【請求項3】
前記開口は、前記溝の幅よりも広い部分を有していることを特徴とする請求項2に記載のコネクタシェル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグが挿入されるレセプタクルに用いられるコネクタシェルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラグが挿入されることで電子部品間の電気的接続を確立するレセプタクルが知られている。このレセプタクルも他の電子部品同様、小型化が要請され、他の小型電子部品と同様にはんだリフロー方式によって基板表面へ表面実装されている。
【0003】
従来のレセプタクル100の断面図を
図4に示す。レセプタクル100は、プラグ挿入空間を画成する略角筒状コネクタシェル101と、プラグ挿入空間に配置されたプラグ案内片104と、プラグ案内片104に設けられプラグ側端子と導通可能な接続端子105とを有する。コネクタシェル101はシェル本体102と、シェル本体102から基板106に向かって突出する取付片103とを有し、取付片103が基板106にはんだ付けされることによりレセプタクル100が基板106に取り付けられる。
【0004】
コネクタシェル101を基板106へはんだ付けする際は、取付片103をはんだ溶融温度まで加熱してはんだを取付片103に付着させる必要がある。この時、シェル本体102も取付片103と一緒に加熱されてしまうので、リフロー工程で必要以上のはんだ110が取付片103を伝ってシェル本体102の側壁を上ってしまう虞があった。このとき、
図4の符号Aで示すはんだ110はプラグ挿入空間まで上ってきて固化したもので、挿入されるプラグと干渉してしまってプラグが所定位置まで挿入できなくなる虞があった。
【0005】
このため、はんだ上がりを確実に防止するために何らかの措置を講じる必要がある。そこではんだ上がりを防止する技術として、はんだ付けされる領域の上部にはんだ上がり防止層を形成して、はんだ上がり防止層より上にはんだが上がらないようにする技術が知られている。
【0006】
特許文献1には、コネクタ部材の接点部位にはんだとぬれ性の低い樹脂やセラミックスをコネクタ端子に塗布してはんだ上がり防止帯を形成する方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、はんだ付けされる端子部において、ニッケル下地層の上にはんだが付着しやすい金めっき層を設けてはんだ付け領域を形成し、更にこのはんだ付け領域の上部にレーザー光線を照射してはんだとぬれ性の劣るニッケル・金合金層を形成してはんだ這い上がり防止領域を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−246424号公報
【特許文献2】特開2005−243468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のようなはんだ上がり防止技術が知られているが、これらの方法は樹脂やセラミックを塗布したり、レーザー加工を施したりするので、工数が嵩む。そこで、本発明は簡便な方法で安価にはんだ上がりを防止できるコネクタシェルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下のコネクタシェルが提供される。
(1) 基板に取り付けられるコネクタシェルであって、
内部にプラグ挿入空間を画成するシェル本体と、
前記シェル本体と一体であって、前記基板にはんだ付けされて取り付けられる取付片とを有し、
前記プラグ挿入空間の前記基板側を基板取付基準面と規定したとき、
前記取付片の先端は、前記シェル本体から前記基板取付基準面を挟んで前記プラグ挿入空間の反対側に延出して前記基板にはんだ付けされ、
前記取付片の先端と前記シェル本体との間には断面積を減少させる断面積減少部が設けられ、
前記断面積減少部は、前記基板取付基準面よりも前記プラグ挿入空間側に位置することを特徴とするコネクタシェル。
(2) 前記断面積減少部は前記取付片に設けられた開口であることを特徴とする(1)のコネクタシェル。
(3) 前記取付片には、前記取付片の前記先端側から前記開口に延びて、前記開口にはんだを誘導する溝が設けられていることを特徴とする(2)のコネクタシェル。
(4) 前記開口は前記溝よりも幅広であることを特徴とする(3)のコネクタシェル。
【発明の効果】
【0011】
はんだ付けのために取付片の先端に加えられる熱は、取付片の先端からシェル本体まで伝わる。一般に部材の断面積が小さいほどその部材を伝わる熱量は減少するため、断面積を減少させる断面積減少部によって取付片の先端からシェル本体への熱伝導が妨げられる。したがって、はんだ付け時に取付片の先端をはんだ融点温度まで加熱した時でも、シェル本体がはんだ融点温度まで加熱されることを抑制できる。はんだは相手材がはんだ融点温度近傍まで加熱された時に相手材に付着するため、はんだ融点温度まで加熱されないシェル本体まではんだが上がることを防止できる。
【0012】
さらに、この断面積減少部は、基板取付基準面よりもプラグ挿入空間側に位置するので、プラグ挿入空間を画成するシェル本体の内側側面にはんだが上がってきたとしても、はんだが断面積減少部に溜まることで、はんだがプラグ挿入空間に侵入してプラグと干渉することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるコネクタシェルを用いたレセプタクルの斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施形態にかかるコネクタシェルを用いたレセプタクルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係るコネクタシェル2を適用したレセプタクル1の斜視図である。レセプタクル1は、プラグ挿入空間を内部に有するコネクタシェル2と、プラグ挿入空間内に配置されるプラグ案内片3と、プラグ案内片3に設けられプラグ側端子と導通可能な接続端子4とを備え、基板5に取り付けられている。
不図示のプラグがプラグ案内片3で案内されながらコネクタシェル2のプラグ挿入空間に挿入されると、プラグ側の端子と接続端子4とが導通し、両者間の電気的接続が確立される。
【0016】
コネクタシェル2は、略角筒状のシェル本体6と、シェル本体6から基板5側に延出する一対の取付片7とを有する。シェル本体6は、略矩形状に打ち抜かれた一枚の導電性の金属板を折り曲げて略角筒状に形成されたものであり、基板5に当接される底壁6bと、一対の側壁6sと、底壁6bに対向する上壁6uとを有する。
【0017】
一対の取付片7は、一対の側壁6sから基板5側に向かって延出するシェル本体6と一体の部位である。この取付片7はシェル本体6の素材となる金属板を略U字状に打ち抜き、これに折り曲げ加工を施すことによってシェル本体6と一体的に形成される。
【0018】
取付片7の先端はシェル本体6から基板取付基準面を挟んでプラグ挿入空間の反対側に延出し、基板5に設けられた取付穴5aに挿入されてはんだ付けされる。なお、本実施形態では、基板取付基準面とはプラグ挿入空間の基板5側を構成するシェル本体6の底壁6bの内面である。
【0019】
この取付片7の先端とシェル本体6との間には、その断面積を減少させる断面積減少部としての開口8が形成されている。開口8はシェル本体6を金属板から形成する際に、金属板を円形に打ち抜くことによって形成される。
【0020】
開口8が形成されていることによって、取付片7の先端側からシェル本体6側に向けて取付片7の断面積が減少されている。換言すれば、開口8によって、開口8の位置で基板5と平行な面に現れる取付片7の断面積が、取付片7の先端側の取付片7の断面積と比べて小さくされている。
【0021】
はんだ付けの際は、はんだを付着させる部材をはんだ溶融温度まで加熱する必要がある。このとき、取付片7の先端を加熱すると、取付片7を伝ってシェル本体6まで熱が伝わる。一般に、部材中を所定時間に伝わる熱量は部材の断面積に比例するので、取付片7からシェル本体6への伝熱経路である取付片7の断面積が開口8によって減少されていると、所定時間に取付片7の先端からシェル本体6まで伝導される熱量が減少する。すなわち、開口8によって取付片7の先端からシェル本体6への熱伝導が抑制される。したがって取付片7をはんだ溶融温度まで加熱してもシェル本体6ははんだ溶融温度まで昇温されないので、はんだがシェル本体6に付着することを防止できる。
【0022】
また、この開口8がシェル本体6の底壁6bの内面(基板取付基準面)よりもプラグ挿入空間側に開口するので、万一基板5からプラグ挿入空間まではんだが上がってきても、溶融はんだを開口8で貯留することができるので、はんだがプラグ挿入空間側へ侵入して固化することを防止できる。したがって、プラグをプラグ挿入空間に挿入するときにはんだと干渉することを確実に防止できる。
【0023】
さらに取付片7には、その先端側から開口8側に延びて溶融はんだを開口8に誘導する溝9が設けられている。この溝9もシェル本体6を金属板から形成する際に金属板をスリット状に打ち抜くことによって形成される。溝9によって、はんだ付け時に基板5側から上ってくる溶融はんだを開口8まで確実に誘導することができ、はんだを開口8で貯留させることができる。
【0024】
また、溝9によって取付片7の先端側の体積の一部を減少させているので、取付片7の先端側の熱容量を低下させることができる。したがって、取付片7の先端を短時間の加熱ではんだ融点温度付近まで加熱することができるので、シェル本体6へ伝導される熱量を低減することができる。よって、シェル本体6がはんだ融点温度まで加熱されることを抑制され、シェル本体6へのはんだ上がりを防止できる。
【0025】
以上の開口8及び溝9はシェル本体6を金属板から形成する際に円形あるいは長円形に金属板を打ち抜くだけで加工できるので、従来の樹脂やセラミックの塗布やレーザー加工と比べて簡単で低コストではんだ上がりを確実に防止できる。
【0026】
なお、開口8は溝9よりも減少させる断面積を大きく形成されている。換言すれば開口8の切り抜かれた幅寸法は溝9の切り抜かれた幅寸法よりも大きく形成されている。はんだ付けの際に溶融はんだが溝9を満たしながらプラグ挿入空間側へ上っていくと、プラグ挿入空間側に設けられる開口8の幅が広いので、開口8に貯留される溶融はんだの液面が上昇しにくくなる。したがって、プラグ挿入空間側へのはんだの侵入を抑制できる。
【0027】
以上の本実施形態にかかるレセプタクル1による効果を、
図2を参照して説明する。
図2は基板5にはんだ付けされて取り付けられたレセプタクル1の開口8を含む垂直断面図である。
【0028】
レセプタクル1を基板5にはんだ付けする際、断面積減少部である開口8によって取付片7からシェル本体6への熱伝導が抑制されるので、はんだ付けのために取付片7を加熱してもシェル本体6ははんだ溶融温度まで温度が上昇しない。したがって取付片7を伝ってその先端からプラグ挿入空間側まで上がってきたはんだ10はシェル本体6には付着しないので、上ってきたはんだ10がプラグ挿入空間に侵入することがない。したがって、プラグとはんだ10とが干渉することを防止することができる。
【0029】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係るレセプタクル1Aを示す斜視図である。第1実施形態では略角筒状のシェル本体6を用いていたが、第2実施形態では断面略U字状のシェル本体11を用いている。
【0030】
第2実施形態においては、シェル本体11は金属板を折り曲げて形成された、底壁を持たない断面略U字状の部材である。この略U字状のシェル本体11はU字の開放端部11sを基板5の取付面5aに当接させることにより、基板5とシェル本体11とでプラグ挿入空間を画成している。
【0031】
この場合、基板取付基準面はシェル本体11に対向する基板5の取付面5aが該当し、取付片7の先端はプラグ挿入空間側のシェル本体11の側壁から基板取付基準面である基板5の取付面5aを挟んで反対側まで延出する。
【0032】
このように、底壁のないレセプタクル1Aであっても、取付片7の先端とシェル本体11との間で、かつ、基板取付基準面よりもプラグ挿入空間側に位置する開口8によって、上述の第1実施形態と同様にプラグ挿入空間側へのはんだ上がりを防止することができる。
【0033】
以上の第1,2実施形態では略角筒型のコネクタシェルを例に挙げて説明したが、円筒型等、コネクタシェルの形状は特に限られない。
【0034】
また、上述の実施形態では断面積減少部(開口8)の形状は円形のものを図示したが、本発明はこれに限られず、例えば断面積減少部を矩形や三角形状としてもよい。また、上述した実施形態では単一の断面積減少部を設けた例を説明したが、複数設けてもよい。さらに、本実施形態では取付片7の中央に断面積減少部を設けた構成を図示したが、取付片7の両側から切り込まれた形状のスリット等、取付片7の側方に設けてもよい。つまり、取付片7からシェル本体6,11への熱伝導を抑制するように断面積を減少させることができれば断面積減少部の形状は限られない。
【符号の説明】
【0035】
1,1A レセプタクル
2 コネクタシェル
3 プラグ案内片
4 接続端子
5 基板
6,11 シェル本体
7 取付片
8 開口(断面積減少部)
9 溝
10 はんだ