(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、前記側壁の吸気側又は排気側の一端に形成された略方形のフランジと、を備えた軸流ファンであって、
前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ互いに前記フランジの一辺に対して略垂直な同一方向に前記内周面から外周面へ貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、
前記スリット群は、前記スリットの貫通方向に直交する前記内周面の接線の接点から前記インペラの回転方向の前方側に位置する前記スリットの数が、前記接線の接点から前記インペラの回転方向の後方側に位置する前記スリットの数よりも多い、
軸流ファン。
中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、外周面に少なくとも1つの平面部を含み且つ前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、を備えた軸流ファンであって、
前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ互いに前記平面部に対して略垂直な同一方向に前記内周面から外周面へ貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、
前記スリット群は、前記スリットの貫通方向に直交する前記内周面の接線の接点から前記インペラの回転方向の前方側に位置する前記スリットの数が、前記接線の接点から前記インペラの回転方向の後方側に位置する前記スリットの数よりも多い、
軸流ファン。
中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、を備えた軸流ファンであって、
前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ前記内周面から外周面へ互いに平行且つ同一方向に貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、
前記スリット群の少なくとも1つの前記スリットには、前記スリットを構成する壁面における前記中心軸に近い方側の端部を厚肉にすることによって、前記端部に、前記スリットにおける空気の流入方向を前記スリットの貫通方向から前記インペラの回転方向に近づけるように変更するテーパ状の風案内部が形成されている、
軸流ファン。
請求項3〜9のいずれかに記載の軸流ファンのハウジングにおけるスリット群のスリットの貫通方向にスライドして離型させて前記スリット群の複数のスリットおよびその外周面を樹脂成形するためのスライド金型であって、
前記複数のスリットに対応する部分は、先端が前記風案内部を形成するようにテーパ状に切りかかれている、
スライド金型。
中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、外周面に少なくとも1つの平面部を含み且つ前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、を備えた軸流ファンであって、
前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ前記内周面から前記平面部へ貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、
前記スリット群は、前記1つの平面部において、異なる2以上の貫通方向のスリットで構成され、
前記スリットの貫通方向は、前記スリットにおける空気の流入方向を、前記インペラの回転方向に近づける方向である、
軸流ファン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の軸流ファンでは、スリットにおける吸気効率に対して改善する余地が充分にあった。この点について、
図16を参照しながら説明する。
【0006】
上記の軸流ファンは外形が方形のハウジング1を備え、そのハウジング1の各辺には複数のスリット4a〜4kで構成されるスリット群4が形成されている。スリット群4の各スリット4a〜4kは、ハウジング1の内周面2から各辺の外周面3へ貫通している。この各スリット4a〜4kの貫通方向は、互いに略平行であり、ハウジング1の各辺に対して垂直な方向となっている。このようなスリット構造では、スリット4a〜4kにおける空気の流入方向Wがインペラ(図示せず)の回転方向Rと大きく異なる領域(
図16に示すPの領域)が生じる。つまり、インペラにおける吸気方向はその回転方向Rに沿った方向となるが、上記Pの領域では空気の流入方向Wがインペラの吸気方向と大きく異なる。そのため、このPの領域ではスリットから流入した空気がインペラに吸気されにくくなり、ファン全体の吸気効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、吸気効率を改善した軸流ファン及びその製造に用いるスライド金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面における軸流ファンは、中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、前記側壁の吸気側又は排気側の一端に形成された略方形のフランジと、を備えたものであって、前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ互いに前記フランジの一辺に対して略垂直な同一方向に前記内周面から外周面へ貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、前記スリット群は、前記スリットの貫通方向に直交する前記内周面の接線の接点から前記インペラの回転方向の前方側に位置する前記スリットの数が、前記接線の接点から前記インペラの回転方向の後方側に位置する前記スリットの数よりも多い、ものである。
【0009】
また、本発明の別の一側面における軸流ファンは、中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、外周面に少なくとも1つの平面部を含み且つ前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、を備えたものであって、前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ互いに前記平面部に対して略垂直な同一方向に前記内周面から外周面へ貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、前記スリット群は、前記スリットの貫通方向に直交する前記内周面の接線の接点から前記インペラの回転方向の前方側に位置する前記スリットの数が、前記接線の接点から前記インペラの回転方向の後方側に位置する前記スリットの数よりも多い、ものである。
【0010】
上記のような構成では、
図5や
図8に示すように、スリット群において、前記接線の接点からインペラの回転方向の後方側に位置するスリットの数が相対的に少なくなるため、空気の流入方向がインペラの吸気方向(換言すると、インペラの回転方向)と大きく異なりやすいスリットが削減される。これにより、スリットから流入した空気がインペラに吸気されにくくなる状態を抑制することができ、その結果、吸気効率が向上する。
【0011】
また、本発明の別の一側面における軸流ファンは、中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、を備えたものであって、前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ前記内周面から外周面へ互いに
平行且つ同一方向に貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、前記スリット群の少なくとも1つの前記スリット
には、
前記スリットを構成する壁面における前記中心軸に近い方側の端部
を厚肉にすることによって、前記端部に、前記スリットにおける空気の流入方向を前記スリットの貫通方向から前記インペラの回転方向に近づけるように変更するテーパ状の風案内部が形成されている、ものである。
【0012】
上記のような構成では、
図10や
図12に示すように、スリットにおける空気の流入方向が風案内部によってインペラの吸気方向(換言すると、インペラの回転方向)により近づく。例えば
図10に示すような斜めスリットのスリット群においては、全体的に空気の流入方向はインペラの吸気方向に近づく傾向となるが、特にインペラの回転方向の最前方側に位置するスリットにおける空気流入方向は逆にインペラの吸気方向よりも回転方向前方側にずれやすい。ところが、本発明では、そのスリットにおける空気流入方向を風案内部によってインペラの吸気方向に近づけることが可能となる。よって、吸気効率が向上する。また、
図12に示すようなハウジングの一辺に対して垂直に貫通するスリット(ストレートスリット)のスリット群においては、インペラの回転方向後方側に位置するスリットの空気流入方向がインペラの吸気方向と大きく異なりやすい。つまり、空気流入方向がインペラの吸気方向よりも回転方向後方側へ大きくずれやすい。ところが、本発明では、そのスリットにおける空気流入方向を風案内部によってインペラの吸気方向に近づけることが可能となる。よって、吸気効率が向上する。
【0013】
また、本発明の別の一側面における軸流ファンは、中心軸を中心に径方向外方へ突出し且つ周方向に配列された複数の羽根を有し、前記中心軸を中心に回転するインペラと、外周面に少なくとも1つの平面部を含み且つ前記インペラの外周を囲む側壁を有するハウジングと、を備えたものであって、前記側壁は、その内周面の周方向に配列され且つ前記内周面から前記平面部へ貫通する複数のスリットで構成されたスリット群を備え、前記スリット群は、
前記1つの平面部において、異なる2以上の貫通方向のスリットで構成され
、前記スリットの貫通方向は、前記スリットにおける空気の流入方向を、前記インペラの回転方向に近づける方向である。
【0014】
上記のような構成では、例えば
図13に示すように、スリット群においてインペラの回転方向後方側におけるスリットの貫通方向を回転方向前方側におけるスリットの貫通方向よりも回転方向前方側へ向くようにした場合、回転方向後方側のスリットにおいて空気流入方向をよりインペラの吸気方向に近づけることができる。これにより、吸気効率が向上する。つまり、本発明の構成では、スリット群における少なくとも1つのスリットの貫通方向を他のスリットの貫通方向よりもインペラの吸気方向に近づけることにより、吸気効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面における軸流ファンは、高い吸気効率を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。なお、本発明の実施形態における説明では便宜上各図面の上下方向を「上下方向」とするが、実際の取り付け状態における方向を限定するものではない。また、説明の便宜上、中心軸J1に平行な方向を軸方向とし、中心軸J1を中心とする半径方向を径方向として示す。
【0018】
《実施形態1》
本発明の実施形態1について
図1〜
図6を参照しながら説明する。本実施形態の軸流ファンAは、例えば、電子機器の筐体内部における高温の空気を外部へ排出して、電子機器を冷却するものである。
【0019】
[全体構成]
軸流ファンAの全体構成について説明する。
図1および
図2に示すように、軸流ファンAは、ハウジング10と、インペラ20と、モータ部30とを備えている。
【0020】
モータ部30は、有蓋略円筒状のロータヨーク31を有し、そのロータヨーク31の外側面にインペラ20が取り付けられている。ロータヨーク31には、シャフト32の一端部が締結固定されている。ロータヨーク31は、シャフト32を中心として回転する。シャフト32の回転軸を中心軸J1とする。
【0021】
インペラ20は、略円筒状のインペラカップ部22と、中心軸J1を中心として回転することで空気流を発生する複数の羽根21とで構成されている。複数の羽根21は、
図2に示されているように、インペラカップ部22の外側面において、中心軸J1を中心とする周方向に等間隔に配設されている。インペラ20が回転することにより空気が羽根21によって下方向(
図1における下方向)に押し出され、中心軸J1方向の気流が発生する。
【0022】
ハウジング10は、側壁11と、ベース部12と、支持リブ13とを備えている。側壁11は、内周面が略円筒形状であり、外形形状が略方形である。インペラ20は、径方向外方側から側壁11によって囲まれている。つまり、側壁11はインペラ20が中心軸J1を中心に回転した際に発生する空気流の空気流路を構成する。羽根21と側壁11との間には接触しないように、径方向に間隙が構成されている。側壁11の四隅のそれぞれには、電子機器等に軸流ファンAを取り付けるための、取付孔101が形成されている。取付孔101は、側壁11の四隅を中心軸J1方向に貫通している。なお、取付孔101は、側壁11の四隅ではなく、別の位置に形成されてもよい。取付孔101の変形例については図示を省略する。
【0023】
図1において、側壁11は、その上端および下端のそれぞれに上側開口部(吸気側)と下側開口部(排気側)とを有している。側壁11の上側開口部には、中心軸J1に垂直な空気流路の断面積が側壁11の上端部に向けて拡大するように、傾斜面11a、11dが形成されている。つまり、傾斜面11a、11dは、中心軸J1方向上方側に向かうに従い、中心軸J1から離れるように形成されている。特に、傾斜面11aは、中心軸J1を中心とする円錐面の一部で構成されている。
【0024】
側壁11の下側開口部には、中心軸J1に垂直な空気流路の断面積が中心軸J1方向下方側に向けて拡大するように、傾斜面11b、11eが形成されている。つまり、傾斜面11b、11eは、中心軸J1方向下方側に向かうに従い、中心軸J1から離れるように形成されている。特に、傾斜面11bは、中心軸J1を中心とする円錐面の一部で構成されている。
【0025】
ただし、傾斜面11a,11bについては、中心軸J1に垂直な空気流路の断面積が中心軸J1方向下方もしくは上方に向けて拡大するような形状であれば円錐面には限定されない。
【0026】
また、本実施形態においては、側壁11の四隅を除く部位にも傾斜面11d、11eが形成されているが、この傾斜面11d、11eの傾斜角度は微小である。このため、傾斜面11d、11eが構成されていなかった場合においても、風量特性に大きな影響を与えない。よって、傾斜面11d、11eの有無に関しては限定されない。
【0027】
中心軸J1方向において、傾斜面11aと傾斜面11bとの間には、中心軸J1から側壁11の内周面までの距離が内周面のいずれの位置においてもほぼ一定となるストレート面11cが形成されている。側壁11は樹脂射出成形による金型によって形成されている。このため、ストレート面11cは、上方側に向けて中心軸J1からの距離が遠くなるような微小な傾斜面が構成されている。これは、金型から成形品を離型することを考慮して設定された抜き勾配(draft angle)と呼ばれる傾斜であって、軸流ファンAの風量特性にはほぼ影響を与えない。
【0028】
側壁11の径方向内方には、モータ部30を支持固定するベース部12が配置されている。更に詳しく説明すると、ベース部12は、中心軸J1方向において側壁11の下端部に対応する位置に配置される。ベース部12は、中心軸J1を中心とする有底略円筒状に形成されている。また、ベース部12の中央には、中心軸J1を中心とする有底略円筒状の軸受ハウジング12aが構成されている。軸受ハウジング12aの内側面には、後述する軸受を構成するスリーブ34が支持されている。
【0029】
ベース部12の外側面には、径方向外方に向けて4本の支持リブ13が突設されている。更に、4本の支持リブ13は、中心軸J1を中心としてベース部12の外側面に対して周方向に配列されている。支持リブ13は径方向外方において、側壁11の内周面に連結接続されている。更に詳しく説明すると、支持リブ13は、側壁11の内周面である傾斜面11bに連結接続されている。よって、ベース部12は、4本の支持リブ13によって側壁11に支持されている。側壁11とベース部12と複数の支持リブ13とは、射出成形によって連続的に一体形成されている。この際に用いられる材料は樹脂である。ただし、樹脂による射出成形に限定されるものではなく、アルミニウム合金によるダイカストによって側壁11とベース部12と複数の支持リブ13とが連続的に一体形成されてもよい。
【0030】
軸受ハウジング12aの内部には、スリーブ34が固定されている。また、シャフト32は、スリーブ34に挿通される。シャフト32は、スリーブ34によって回転可能に支持され、軸受が構成される。スリーブ34は、例えば焼結のような多孔質材料に潤滑用オイルを含侵させた円筒状の部材である。スリーブ34は潤滑用オイルが含侵されていることにより、スリーブ34の内周面とシャフト32の径方向の間隙には潤滑用オイルが介在される。つまり、シャフト32は潤滑用オイルを介してスリーブ34に回転自在に支持される。なお、スリーブ34は上述のような潤滑オイルを介してシャフト32を回転自在に支持するすべり軸受に限定されず、ボールベアリングのような転がり軸受を使用してもよい。軸受部材の選定については、軸流ファンAに要求される特性及びコストを考慮して適宜選択すればよい。
【0031】
ロータヨーク31の内周面には、略円筒状のロータマグネット33が固定されている。ロータマグネット33は、複数の磁極が周方向において交互に並ぶように着磁されている。ロータマグネット33の内方にはステータ部が配置されている。ステータ部は、ステータコア35と、コイル37と、インシュレータ36と、回路基板38と、で構成されている。ステータコア35は、軸受ハウジング12aの外側面に支持されている。ステータコア35には、インシュレータ36を介して銅線が巻き付けられコイル37が構成されている。ステータコア35の下端には、インペラ20の回転を制御する回転制御回路を有する回路基板38が配置されている。
【0032】
回路基板38は、電子部品およびコイル37の端末がプリント基板上に実装されることで回転制御回路が構成されている。外部電源から供給された電流をICやホール素子等の電子部品を介してコイル37に流すことによりステータコア35の外周面に発生する磁束を制御することができる。これにより、ステータコア35の外周面に発生する磁束とロータマグネット33に着磁された磁束との相互作用により中心軸J1を中心とするトルクが発生し、インペラ20が中心軸J1を中心に回転する。
【0033】
[スリットの構成]
次に、ハウジング10の側壁11に形成されるスリット110a〜110hについて
図3〜
図5を参照しながら詳しく説明する。なお、
図3および
図5は、便宜上、インペラ20およびモータ部30等は省略している。
【0034】
側壁11のストレート面11cには、外方に向けて貫通する複数のスリット110a〜110hが形成されている。側壁11は、上述したように外形形状が略方形であり、その外周面11fに4つの平面部(4辺)を含むものである。複数のスリット110a〜110hは、側壁11の内周面であるストレート面11cの周方向に配列されている。そして、複数のスリット110a〜110hは、互いに同一方向且つ各平面部(各辺)に対して略垂直な方向に、内周面のストレート面11cから外周面11fへ貫通している(
図5に示す貫通方向T)。本実施形態では、各平面部(各辺)において複数のスリット110a〜110hで1つのスリット群110を構成している。つまり、本実施形態の側壁11には、各平面部(各辺)に対応して4つのスリット群110が形成されている。
【0035】
各スリット群110のスリット110a〜110hは、
図4に示すように、それぞれの長手方向Lが中心軸J1に対して傾斜角αを有している。傾斜角αは、0度以上90度未満の範囲が適切である。なお、本実施形態においてスリット110a〜110hは、ストレート面11cに対応する部位にのみ形成されているが、傾斜面11a,11d,11b,11eに跨って形成されていてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態において、各スリット群110は、
図5に示すように、スリット110a〜110hの貫通方向Tに直交するストレート面11cの接線Gの接点Eからインペラ20の回転方向Rの前方側に位置するスリットの数が、接線Gの接点Eからインペラの回転方向Rの後方側に位置するスリットの数よりも多い。具体的に、本実施形態では、前方側に位置するスリットの数は5つ(スリット110a〜110e)で、後方側に位置するスリットの数は2つ(スリット110g、110h)である。なお、ここでは接点Eと重なるスリット110fは計上しないこととした。
【0037】
上述したように、側壁11とベース部12と複数の支持リブ13とは、樹脂材料による射出成形によって成形される。本実施形態における側壁11の内周面、複数の支持リブ13、ベース部12は、中心軸J1方向にスライドする上金型および下金型にて成形される。上金型と下金型とを中心軸J1方向において接触させることによって、上金型と下金型および後述するスライド金型40との間に閉空間が構成され、閉空間内に溶融樹脂を射出がされる。前記閉空間の形状は、側壁11および複数の支持リブ13、ベース部12の形状に形成されている。前記閉空間内において溶融樹脂が固化され、上金型と下金型とが離間することで、一体に形成された側壁11と複数の支持リブ13とベース部12が得られる。上述の通り、側壁11、複数の支持リブ13、ベース部12はアルミニウム合金が用いられるダイカストによって成形されても良い。
【0038】
スリット群110は、
図6に示すように、4つのスライド金型40にて形成される。4つのスライド金型40は、側壁11の4つの平面部(各辺)のそれぞれの垂直方向と略平行にスライドする(スライド方向S1)。スライド金型40は、径方向内方に向けて突出した複数のスリット形成部41を備えている。スライド金型40は、上金型および下金型のスライドに連動して中心軸J1と垂直な方向にスライドする。上金型および下金型が中心軸J1方向に接触しているときには、スライド金型40は、上金型および下金型の接触面付近を径方向外方から覆っている。つまり、側壁11の外周面11fは、スライド金型40によって形成される。上金型および下金型、スライド金型40が互いに接触することで形成される閉空間内には上述するスリット形成部41が入り込んでいる。スリット形成部41は、上金型および下金型の側壁11の内周面を形成する部位まで延びている。金型の閉空間内に溶融樹脂が射出された際に、樹脂はスリット形成部41を避けて充填される。つまり、閉空間内のスリット形成部41に該当する部位が側壁11のスリット110a〜110hとなる。また、上金型および下金型が中心軸J1方向に互いに離間しているときには、4つのスライド金型40のそれぞれは上金型および下金型から径方向外方に向けて離れた位置にスライドされている。このように、スリット110a〜110hはスライド金型40によって形成される。
【0039】
インペラ20が中心軸J1を中心に回転した際には、
図1における上方側に滞留している空気が
図1における下方側に向けて流れる。その際に、軸流ファンAの上方側に滞留する空気は、ハウジング10の側壁11の内周面つまり傾斜面11a,11dを通過して側壁11内に流入される。側壁11の内周面は、中心軸J1方向において傾斜面11aが形成される部位よりも、ストレート面11cが形成される部位の方が、空気流路の中心軸J1に垂直な断面積が小さくなる。ベルヌーイの定理より、ストレート面11cを通過する空気流の方が、傾斜面11aを通過する空気流より、流速が速くなる。ストレート面11cを通過する空気流の流速は、他の領域に比べて最も流速が速くなっているため、側壁11の周りの気圧に対して負圧の状態となる。これにより、各スリット群110のスリット110a〜110hを通過して、側壁11の内周面側に空気が流入される。これによって、軸流ファンAの風量を稼ぐことができる。
【0040】
そして、本実施形態では、上述したように、各スリット群110において、インペラ20の回転方向Rの前方側に位置するスリットの数が、インペラ20の回転方向Rの後方側に位置するスリットの数よりも多くなるように構成している。これにより、スリット群110において、スリットにおける空気の流入方向W(即ち、スリット110a〜110hの貫通方向T)がインペラ20の吸気方向(換言すると、インペラ20の回転方向R)と大きく異なりやすい、インペラ20の回転方向Rの後方側のスリット数が削減される。言い換えると、各スリット群110において、空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向に比較的近いスリットの数が相対的に多くなる。そのため、スリット110a〜110hから流入した空気がインペラ20に吸気されにくくなる状態を抑制することができる。その結果、スリット110a〜110hにおける吸気効率が向上する。よって、軸流ファンAの風量特性が向上する。
【0041】
また、スリットにおける空気の流入方向Wとインペラ20の吸気方向とが大きく異なると、騒音が発生する。ところが、本実施形態では、空気の流入方向Wとインペラ20の吸気方向とが大きく異なるスリットの数を相対的に減らすので、その騒音を抑制することができる。
【0042】
また、スリットにおける空気の流入方向W(スリットの貫通方向T)をインペラ20の吸気方向に近づける方法として、例えばスリットの貫通方向Tを側壁11の各辺に対する垂直方向から傾斜させることが考えられる(斜めスリット)。ところが、その場合、スリットおよび側壁11の外周面11fを形成するスライド金型(
図11参照)が比較的シャープな形状を有するものとなる。そうすると、スライド金型が破損しやすくなり、その寿命が短くなってしまう。この点、本実施形態の場合、スリット110a〜110hの貫通方向Tが側壁11の各辺に対して略垂直となっているため、
図6に示すようにスライド金型40はシャープな形状を殆ど有しなくなる。よって、スライド金型40の寿命が短くなるのを回避できる。
【0043】
なお、本実施形態では、各スリット群110において、スリット110a〜110hの数は上述したものに限られない。また、各スリット群110において、前方側に位置するスリット数および後方側に位置するスリット数についても上述したものに限られず、前方側のスリット数が後方側のスリット数よりも多ければよい。
【0044】
なお、本実施形態では、側壁11の外形形状を略方形(4つの平面部を有する形状)としたが、これに限らず、互いに対向する2つの平面部を有する、いわゆるたわら型の形状であってもよく、側壁11の外周面11fが少なくとも1つの平面部を含む形状であればよい。
【0045】
《実施形態2》
本発明の実施形態2について
図7および
図8を参照しながら説明する。本実施形態の軸流ファンAは、上述した実施形態1においてハウジング10の側壁の構成を変更したものである。
【0046】
本実施形態に係るハウジング10の側壁15は、上述した実施形態1とは異なり、全体が円筒状に形成されている。この側壁15の下端部に対応する位置にベース部12が配置され、図示しないが、ベース部12の外側面には径方向外方に向けて4本の支持リブ13が突設されており、この点は上述した実施形態1と同様である。また、側壁15の下側一端(排気側)に略方形のフランジ14が形成されている。このフランジ14の四隅には、取付孔102が形成されている。
【0047】
側壁15には、径方向外方に向けて貫通する4つのスリット群120が形成されている。各スリット群120は、複数のスリット120a〜120hで構成されている。複数のスリット120a〜120hは、側壁15の内周面15aの周方向に配列されている。そして、複数のスリット120a〜120hは、互いに同一方向且つフランジ14の各辺に対して略垂直な方向に、内周面15aから外周面15bへ貫通している(
図8に示す貫通方向T)。本実施形態では、フランジ14の各辺に対応してスリット群120が形成されている。
【0048】
そして、本実施形態においても上述した実施形態1と同様に、各スリット群120は、スリット120a〜120hの貫通方向Tに直交する内周面15aの接線Gの接点Eからインペラ20の回転方向Rの前方側に位置するスリットの数が、接線Gの接点Eからインペラの回転方向Rの後方側に位置するスリットの数よりも多い(
図8参照)。具体的に、本実施形態では、前方側に位置するスリットの数は5つ(スリット120a〜120e)で、後方側に位置するスリットの数は2つ(スリット120g、120h)である。なお、ここでは接点Eと重なるスリット120fは計上しないこととした。この構成により、上述した実施形態1と同様、各スリット群120において、スリットにおける空気の流入方向W(即ち、スリット120a〜120hの貫通方向T)がインペラ20の吸気方向(換言すると、インペラ20の回転方向R)と大きく異なりやすい、インペラ20の回転方向Rの後方側のスリット数が削減される。言い換えると、各スリット群120において、空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向に比較的近いスリットの数が相対的に多くなる。そのため、スリット120a〜120hから流入した空気がインペラ20に吸気されにくくなる状態を抑制することができる。その結果、スリット120a〜120hにおける吸気効率が向上し、且つ、騒音を抑制することができる。その他の構成、作用および効果については上述した実施形態1と同様である。
【0049】
《実施形態3》
本発明の実施形態3について
図9〜
図11を参照しながら説明する。本実施形態の軸流ファンAは、上述した実施形態1においてスリットの構成を変更したものである。
【0050】
本実施形態に係るハウジング10の側壁11には、上述した実施形態1と同様、外周面11fの各平面部(各辺)にスリット群130が形成されている。各スリット群130は、複数のスリット130a〜130jで構成されている。各スリット群130のスリット130a〜130jは、側壁11の内周面であるストレート面11cの周方向に配列されている。また、複数のスリット130a〜130jは、側壁11のストレート面11cから外周面11fへ互いに同一方向に貫通している。また、各スリット130a〜130jの貫通方向Tは、側壁11の各平面部(各辺)の垂直方向に対して傾斜している。つまり、貫通方向Tはインペラ20の吸気方向(回転方向R)に近づく方向に傾斜している。このように傾斜するスリット130a〜130jをここでは斜めスリットという。
【0051】
そして、
図10に示すように、各スリット130a〜130jの中心軸J1に近い方側(即ち、ストレート面11c側)にはテーパ状の風案内部1301,1302が形成されている。具体的に、各スリット群130において、インペラ20の回転方向Rの最前方側に位置するスリット130aおよびその隣のスリット130bのそれぞれには、インペラ20の回転方向前方側の部位(内壁)に風案内部1301が形成されている。この風案内部1301は、中心軸J1に近い方側の端部(即ち、ストレート面11c側の端部)にいくに従ってインペラ20の回転方向後方側に傾斜するテーパ状に形成されている。つまり、この風案内部1301は、スリット130a、130bを通過する空気をそのスリット130a、130bの貫通方向Tに対してインペラ20の回転方向後方側に案内するように形成されている。また、各スリット群130において、インペラ20の回転方向Rの最後方側に位置するスリット130jおよび残りのスリット130c〜130iのそれぞれには、インペラ20の回転方向後方側の部位(内壁)に風案内部1302が形成されている。この風案内部1302は、中心軸J1に近い方側の端部(即ち、ストレート面11c側の端部)にいくに従ってインペラ20の回転方向前方側に傾斜するテーパ状に形成されている。つまり、この風案内部1302は、スリット130c〜130jを通過する空気をそのスリット130c〜130jの貫通方向Tに対してインペラ20の回転方向前方側に案内するように形成されている。
【0052】
スリット130aおよびスリット130bのそれぞれでは、風案内部1301によって、空気の流入方向Wがスリットの貫通方向Tから回転方向後方側に変更される。これにより、スリット130aおよびスリット130bにおける空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向(換言すると、インペラ20の回転方向R)により近づく。斜めスリットのスリット群においては、全体的に空気の流入方向はインペラ20の吸気方向に近づく傾向となるが、インペラの回転方向の特に最前方側に位置するスリットにおける空気流入方向は逆にインペラの吸気方向よりも回転方向前方側にずれやすい。ところが、本実施形態では、そのスリット130a,130bにおける空気流入方向Wを風案内部1301によってインペラ20の回転方向後方側へ変更してインペラ20の吸気方向に確実に近づけることができる。これにより、吸気効率が向上し且つ騒音が抑制される。
【0053】
また、スリット130c〜130jのそれぞれでは、風案内部1302によって、空気の流入方向Wがスリットの貫通方向Tから回転方向前方側に変更される。これにより、スリット130c〜130jにおける空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向(換言すると、インペラ20の回転方向R)により近づく。斜めスリットの場合でも、インペラの回転方向の後方側(特に、最後方側)に位置するスリットにおいては空気流入方向がインペラの吸気方向に充分には近づかず、空気流入方向がインペラの吸気方向よりも回転方向後方側へ大きくずれやすい。ところが、本実施形態では、これらスリット130c〜130jにおける空気流入方向Wを風案内部1302によってインペラ20の回転方向前方側へ変更してインペラ20の吸気方向により近づけることができる。これにより、吸気効率が向上し且つ騒音が抑制される。
【0054】
なお、本実施形態では、スリット130bとスリット130cとの間で風案内部1301,1302の形成位置を回転方向前方側の部位と回転方向後方側の部位とに区分けするようにしたが、これに限らない。少なくとも、回転方向Rの最前方側に位置するスリット130aには回転方向前方側の部位に風案内部1301を形成し、回転方向Rの最後方側に位置するスリット130jには回転方向後方側の部位に風案内部1302を形成すれば、どのスリットの間で区分けするようにしてもよい。つまり、スリット130a〜130jの貫通方向Tの傾斜角度とインペラ20の吸気方向とを考慮して、空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向により近づくように風案内部1301,1302の形成位置を定めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、各スリット群130において、インペラ20の回転方向Rの最前方側に位置するスリット130aと、インペラ20の回転方向Rの最後方側に位置するスリット130jだけに風案内部1301,1302を形成するようにしてもよい。また、各スリット群130において、インペラ20の回転方向Rの最前方側に位置するスリット130aだけに風案内部1301を形成してもよい。また、各スリット群130において、インペラ20の回転方向Rの最後方側に位置するスリット130jだけに風案内部1302を形成してもよい。また、スリット130a〜130jの貫通方向Tの傾斜角度とインペラ20の吸気方向とを考慮して、回転方向最前方側に位置するスリット130aと回転方向最後方側に位置するスリット130jとの間に形成されるスリット130b〜130iの少なくとも1つに、風案内部を形成することで効果があれば、必ずしも回転方向最前方側に位置するスリット130a、もしくは、回転方向最後方側に位置するスリット130jに風案内部を設ける必要はない。
【0056】
また、
図11に示すように、本実施形態の側壁11のスリット130a〜130jおよび外周面11fは、スライド金型40をスリット130a〜130jの貫通方向T(スライド方向S2)にスライドして離型させることによって樹脂成形される。このスライド金型40には、スリット130a〜130jに対応するスリット形成部41が設けられている。このスリット形成部41は、先端が風案内部1301,1302を形成するようにテーパ状に切りかかれてなる切欠き部41aを有している。これにより、スリット130a〜130jの貫通方向Tにスライド金型40をスライドさせるだけで、スリット130a〜130jに風案内部1301,1302を容易に形成することができる。
【0057】
また、スリット130a,130b(即ち、スリット130a〜130jのうち回転方向前方側に風案内部1301が形成されるスリット)に対応するスリット形成部41において、その先端に切欠き部41aを有しない場合、その先端はシャープな形状となり、そのスリット形成部41が破損しやすくなる。本実施形態のスリット130a,130bに対応するスリット形成部41では、その先端に切欠き部41aを有する。そのため、スリット形成部41の先端がシャープな形状となるのを抑えることができる。その結果、スリット形成部41が破損しにくくなり、スライド金型40の寿命が延びる。
【0058】
また、スリット形成部41の先端に切欠き部40aが形成されることで、スライド金型40をハウジング10からスライドして離型させる際において、スライド時の樹脂とスライド金型40との間に生じる摩擦力が(スリット形成部がシャープな形状のスライド金型と比べて)低減される。これによって、スライド金型40を離型させやすくなる。
【0059】
《実施形態4》
本発明の実施形態4について
図12を参照しながら説明する。本実施形態の軸流ファンAは、上述した実施形態1においてスリットの構成を変更したものである。
【0060】
本実施形態に係るハウジング10の側壁11には、上述した実施形態1と同様、外周面11fの各平面部(各辺)にスリット群140が形成されている。各スリット群140は、複数のスリット140a〜140kで構成されている。各スリット群140のスリット140a〜140kは、側壁11の内周面であるストレート面11cの周方向に配列されている。また、複数のスリット140a〜140kは、側壁11のストレート面11cから外周面11fへ互いに同一方向に貫通している。また、各スリット140a〜140kの貫通方向Tは、上述した実施形態1と同様、側壁11の各平面部(各辺)に対して略垂直な方向となっている。このように貫通方向Tが各平面部(各辺)に略垂直なスリット140a〜140kをここではストレートスリットという。
【0061】
そして、
図12に示すように、各スリット140a〜140kの中心軸J1に近い方側(即ち、ストレート面11c側)にはテーパ状の風案内部1401が形成されている。具体的に、各スリット群140において、スリット140a〜140kのそれぞれには、インペラ20の回転方向後方側の部位(内壁)に風案内部1401が形成されている。この風案内部1401は、中心軸J1に近い方側の端部(即ち、ストレート面11c側の端部)にいくに従ってインペラ20の回転方向前方側に傾斜するテーパ状に形成されている。つまり、この風案内部1401は、スリット140a〜140kを通過する空気をそのスリット140a〜140kの貫通方向Tに対してインペラ20の回転方向前方側に案内するように形成されている。
【0062】
スリット140a〜140kのそれぞれでは、風案内部1401によって、空気の流入方向Wがスリットの貫通方向Tから回転方向前方側に変更される。これにより、スリット140a〜140kにおける空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向(換言すると、インペラ20の回転方向R)により近づく。ストレートスリットの場合、インペラの回転方向の後方側(特に、最後方側)に位置するスリットにおいては空気流入方向がインペラの吸気方向と大きく異なりやすい。また、ストレートスリットの場合でも、インペラの回転方向の前方側に位置するスリットにおいて空気流入方向がインペラの吸気方向に充分には近づかない場合がある。このような場合でも、本実施形態では、これらスリット140a〜140kにおける空気流入方向Wを風案内部1401によってインペラ20の回転方向前方側へ変更してインペラ20の吸気方向により近づけることができる。これにより、吸気効率が向上し且つ騒音が抑制される。
【0063】
また、本実施形態では、各スリット群140において、全てのスリット140a〜140kに対して風案内部1401を形成するようにしたが、これに限らず、インペラ20の回転方向Rの最後方側に位置するスリット140kだけに形成してもよいし、その最後方のスリット140kから所定の数のスリット(最後方のスリット140kを含む)にだけ形成してもよい。また、インペラ20の回転方向Rの最前方側に位置するスリット140aだけに形成してもよいし、その最前方のスリット140aから所定の数のスリット(最後方のスリット140aを含む)にだけ形成してもよい。また、スリット140a〜140kの貫通方向Tの傾斜角度とインペラ20の吸気方向とを考慮して、回転方向最前方側に位置するスリット140aと回転方向最後方側に位置するスリット140kとの間に形成されるスリット140b〜140jの少なくとも1つに、風案内部を形成することで効果があれば、必ずしも回転方向最前方側に位置するスリット140a、もしくは、回転方向最後方側に位置するスリット140kに風案内部を設ける必要はない。
【0064】
図示しないが、本実施形態においても、上述した実施形態3と同様、スリット形成部の先端に風案内部1401に対応する切欠き部が形成されたスライド金型によって、スリット140a〜140kおよび外周面11fが樹脂成形される。また、上述した実施形態3と同様、スリット形成部の先端に切欠き部が形成されることで、スライド金型をハウジング10からスライドして離型させる際において、スライド時の樹脂とスライド金型との間に生じる摩擦力が(スリット形成部がシャープな形状のスライド金型と比べて)低減される。これによって、スライド金型を離型させやすくなる。
【0065】
《実施形態5》
本発明の実施形態5について
図13および
図14を参照しながら説明する。本実施形態の軸流ファンAは、上述した実施形態1においてスリットの構成を変更したものである。
【0066】
本実施形態に係るハウジング10の側壁11には、上述した実施形態1と同様、外周面11fの各平面部(各辺)にスリット群150が形成されている。各スリット群150は、複数のスリット151a〜151e,152a〜152fで構成されている。各スリット群150のスリット151a〜151e,152a〜152fは、側壁11の内周面であるストレート面11cの周方向に配列されている。また、複数のスリット151a〜151e,152a〜152fは、側壁11のストレート面11cから外周面11f(各辺)へ貫通している。
【0067】
そして、各スリット群150は、スリット151a〜151e,152a〜152fの貫通方向Tが2種類となっている。つまり、各スリット群150は、異なる2以上の貫通方向Tのスリット151a〜151e,152a〜152fで構成されている。具体的に、各スリット群150は前方側スリット群151と後方側スリット群152とに区分される。前方側スリット群151は、インペラ20の回転方向Rの前方側に位置し、貫通方向Tが互いに略平行なスリット151a〜151eで構成されている。後方側スリット群152は、前方側スリット群151よりもインペラ20の回転方向Rの後方側に位置し、貫通方向Tが互いに略平行なスリット152a〜152fで構成されている。
【0068】
前方側スリット群151におけるスリット151a〜151eの貫通方向Tは、上述した実施形態1と同様、貫通方向Tが側壁11の平面部(各辺)に対して略垂直な方向となっている。後方側スリット群152におけるスリット152a〜152fの貫通方向Tは、側壁11の各平面部(各辺)に対する垂直方向から傾斜している。つまり、本実施形態において、後方側スリット群152の貫通方向Tは、前方側スリット群151の貫通方向Tに対して、側壁11の内周面であるストレート面11c側から外周面11f側へいくに従って前方側スリット群151から遠ざかる方向に傾いている。
【0069】
このような構成では、各スリット群150において、後方側スリット群152のスリット152a〜152fの空気の流入方向Wをインペラ20の吸気方向に近づけることができる。これにより、吸気効率が向上し且つ騒音が抑制される。つまり、本実施形態によれば、スリット群150において空気の流入方向Wがインペラ20の吸気方向と大きく異なりやすい回転方向後方側のスリットを傾斜させるようにしたため、効果的に吸気効率を向上させることができる。
【0070】
なお、本実施形態では、各スリット群150においてインペラ20の回転方向の最後方側に位置するスリット152fだけを後方側スリット群152のように側壁11の各平面部(各辺)に対する垂直方向から傾斜しているスリットとしてもよいし、それ以外のいずれか1以上のスリット151a〜151e,152a〜152eを後方側スリット群152のように側壁11の各平面部(各辺)に対する垂直方向から傾斜しているスリットとしてもよい。つまり、スリット群150における少なくとも1つのスリットの貫通方向Tを他のスリットの貫通方向Tよりもインペラの吸気方向に近づけるように傾斜させることにより、吸気効率を向上させることが可能となる。また、本実施形態において、前方側スリット群151の貫通方向Tは側壁11の各平面部(各辺)に対して垂直な方向でなくてもよい。また、本実施形態に係るハウジング10の側壁11に、前方側スリット群151、後方側スリット群152とは異なる傾斜方向のスリットをさらに設けてもよい。本実施形態では、一つの平面部(辺)に2以上の傾斜方向を有するスリットを設けることで、効果的に吸気効率を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、
図14に示すように、前方側スリット群151およびそれに対応する外周面11fを成形するための第1スライド金型42と、後方側スリット群152およびそれに対応する外周面11fを成形するための第2スライド金型43とが対となっている。具体的に、第1スライド金型42には前方側スリット群151のスリット151a〜151eに対応するスリット形成部44が設けられ、第2スライド金型43には後方側スリット群152のスリット152a〜152fに対応するスリット形成部45が設けられている。第1スライド金型42および第2スライド金型43は、それぞれ前方側スリット群151の貫通方向T(スライド方向S1)および後方側スリット群152の貫通方向T(スライド方向S2)に、スライドする。このように、本実施形態では、スリット群150において全てではなく一部のスリット152a〜152f(後方側スリット群152)だけを傾斜させるようにしたので、全てのスリットを傾斜させる場合と比べて、上述した第2スライド金型43を小型化することができる。これにより、破損しやすく寿命が短くても、金型の材料費を軽減できる。
【0072】
《その他の実施形態》
その他の実施形態について
図15を参照しながら説明する。この軸流ファンAは、上述した実施形態1においてハウジング10の側壁11の構成を変更したものである。
【0073】
この実施形態に係るハウジング10の側壁11は、スリット群160(複数のスリット160a〜160hで構成)が形成される部分の厚みが略一定となるように、外周面11fに肉盗み部16が設けられている。つまり、側壁11のスリット群160が形成される部分において、インペラ20の回転方向Rの前方側および後方側の部分はその間の部分と略同じ厚みとなっている。このように、側壁11のスリット群160が形成される部分において、回転方向前方側および回転方向後方側の部分の厚みを薄くすることができる。これにより、回転方向前方側および回転方向後方側に位置するスリットの貫通方向Tにおける長さ(ストローク)を短くでき、そのスリットにおける空気の流入抵抗を低減することができる。その結果、吸気効率が向上する。