【実施例】
【0026】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例および比較例で用いた試薬は、次の通りである。
【0027】
<アルコキシシリル基を有する化合物:A成分>
(A−1)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。その構造を下記式に示す。
【化8】
【0028】
(A−2)
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン。その構造を下記式に示す。
【化9】
【0029】
(A−3)
3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン。その構造を下記式に示す。
【化10】
【0030】
<チオール化合物:B成分>
(B−1)
メチル-3-メルカプトプロピオネート(粘度1.5mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化11】
【0031】
(B−2)
2−エチルヘキシル−3メルカプトプロピオネート(粘度3.7 mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化12】
【0032】
(B−3)
メトキシブチル−3−メルカプトプロピオネート(粘度3.6 mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化13】
【0033】
(B−4)
ステアリル−3−メルカプトプロピオネート(常温固体)。その構造を下記式に示す。
【化14】
【0034】
(β−1)
比較例用として、β-メルカプトプロピオン酸(粘度8.4 mPa・s)。その構造を下記式に示す。
【化15】
【0035】
セパラブルの4つ口フラスコに温度計と還流管を備え、内部を窒素雰囲気にした。この4つ口フラスコに、表1に示す組成に従いA成分とB成分を仕込み、A成分とB成分を100重量部としたとき1重量部の触媒(1.8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデカ−7−エン、和光純薬工業(株)製)を添加した後、80℃で6時間反応させ、実施例1〜6及び比較例1を得た。実施例1〜6及び比較例1における反応後の25℃における粘度も表1に示す。なお、粘土は東機産業(株)製のR型粘度計を用いて測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
<赤外線吸収スペクトル分析(IR)>
得られた実施例1〜6及び比較例1について、下記条件にて赤外線吸収スペクトル分析を行った。その結果を
図1〜7に示すと共に、代表的なIRピークを以下に示す。
機種;日本分光(株)製 FT/IR-600
セル;KBr上に展開、分解;4cm
−1、積算回数;32回
【0038】
(実施例1)
3460cm
−1:91%T、2947cm
−1:25%T、2481cm
−1:31%T、2360cm
−1:95%T、1738cm
−1:11%T、1439cm
−1:39%T、1360cm
−1:45%T、1194cm
−1:15%T、1086cm
−1:10%T、980cm
−1:57%T、822cm
−1:23%T、677cm
−1:88%T
【0039】
(実施例2)
2958cm
−1:48%T、2841cm
−1:64%T、1736cm
−1:38%T、1462cm
−1:68%T、1387cm
−1:79%T、1348cm
−1:74%T、1194cm
−1:48%T、1090cm
−1:40%T、822cm
−1:58%T
【0040】
(実施例3)
2941cm
−1:61%T、2841cm
−1:70%T、1736cm
−1:36%T、1460cm
−1:76%T、1354cm
−1:76%T、1194cm
−1:49%T、1086cm
−1:36%T、976cm
−1:86%T、820cm
−1:62%T
【0041】
(実施例4)
2924cm
−1:63%T、2852cm
−1:74%T、1736cm
−1:67%T、1458cm
−1:88%T、1167cm
−1:79%T、1090cm
−1:71%T、820cm
−1:85%T
【0042】
(実施例5)
2974cm
−1:72%T、1738cm
−1:58%T、1439cm
−1:81%T、1390cm
−1:83%T、1167cm
−1:64%T、1078cm
−1:55%T、958cm
−1:74%T、791cm
−1:79%T
【0043】
(実施例6)
2947cm
−1:58%T、2841cm
−1:63%T、1736cm
−1:31%T、1439cm
−1:75%T、1358cm
−1:76%T、1194cm
−1:39%T、1086cm
−1:26%T、820cm
−1:50%T
(比較例1)
2922cm
−1:74%T、2852cm
−1:80%T、1716cm
−1:81%T、1541cm
−1:90%T、1456cm
−1:86%T、1036cm
−1:83%T、812cm
−1:92%T
【0044】
上記赤外線吸収スペクトル分析の結果からも明らかなように、C=Cに由来する1600〜1700cm
−1のピークが観測されないことから、A−1、A−2およびA−3がそれぞれB−1〜B−4およびβ−1と反応していることがわかる。
【0045】
<核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)>
また、実施例1〜6について、下記条件にて核磁気共鳴スペクトル分析を行った。その結果を
図8〜13に示すと共に、各NMRスペクトルにおけるピークの帰属を下記に示す。なお、比較例1はNMR用の重溶剤に溶解しなかったため測定できなかった。
機種;日本ブルカー(株)製、400MHz−Advance400、
条件;積算回数16回
溶媒;重クロロホルム
【0046】
(実施例1)
【化16】
a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.5〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.6〜3.7ppm
【0047】
(実施例2)
【化17】
a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜3.0ppm、f、l、m、n、p:1.2〜1.4ppm、j:4.0〜4.1ppm、k:1.7〜1.9ppm、o、q:0.8〜0.9ppm
【0048】
(実施例3)
【化18】
a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c、k、m:1.6〜1.9ppm、d:4.1〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.9〜4.2ppm、l:3.4〜3.5ppm、n:3.4〜3.5ppm
【0049】
(実施例4)
【化19】
a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c、k:1.6〜1.8ppm、d、j:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.9ppm、f、l:1.1〜1.4ppm
【0050】
(実施例5)
【化20】
a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.8〜4.2ppm、k:3.8〜4.2ppm
【0051】
(実施例6)
【化21】
a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、f、g、h:2.6〜2.8ppm、i:3.5〜3.8ppm
【0052】
(比較例1)
【化22】
【0053】
図8〜13及び上記の結果より、CH
2=Cに由来する5.5〜6.5ppmのピークが観測されないことから、A−1、A−2およびA−3がそれぞれB−1〜B−4と反応していることがわかった。
【0054】
<密着性評価>
次に、上記実施例1〜6及び比較例1を用いて密着性を評価した。さらに、反応前の上記A−1のみを用いた場合、反応前の上記B−1のみを使用した場合、デシルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製、C−1とする)を使用した場合、及び密着性向上剤未使用の場合についても、密着性を評価した。密着性の評価対象としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成(株)製、YDPN638〕を使用した。当該エポキシ樹脂98質量%に触媒〔イミダゾール型触媒:(株)アデカ製、EH−4344S〕を2質量%混合した混合物(E−1とする)へ、実施例1〜6や比較例1などを密着性向上剤として表2の配合量に従って配合した。当該組成物を単結晶シリコン基板〔(株)シリコンテクノロジー製、6inchベアシリコンウェーハN型〕にバーコーターで塗布し、150℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た(試料1〜11)。このようにして得られた試料1〜11を温度121℃、相対湿度(RH)100%で8時間処理した後、JIS K5600−5−6に規定される塗膜の機械的性質−付着性(クロスカット法)試験法で評価を行った。これらの結果を表2に示す。なお、評価基準は次の通りである。
○:全く剥離が無い ×:少しでも剥離が発生している
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示した結果より、実施例1〜6の密着性向上剤を使用した試料1〜6では全く剥離は見られず、密着性が良好であった。その一方、試料7は、比較例1の密着性向上剤がゲル化しておりE−1と相溶しなかった。試料8,9は、チオエーテル形成前の化合物を用いており、いずれも剥離が生じて密着性は不良であった。試料10は、密着性向上剤の分子構造中にチオエーテル基を持たないため剥離が生じて密着性が不良であった。試料11は密着性向上材が無添加のため剥離が生じ密着性は不良であった。