(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シロキサンポリイミド樹脂を使用した従来の感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布により形成したカバーレイ層の場合、弾性率は低くなるものの、銅パターンの端子部に対応するカバーレイ層の領域をフォトリソグラフ技術により開口し、露出した銅パターンに電解メッキにより金属を析出させると、開口部内底隅から銅パターンとカバーレイ層との境界にメッキ液が差し込み、意図しない部分に金属メッキが析出し、それがカバーレイ層の変色をもたらすという問題があった。この問題は、無電解Ni又はAuメッキを行うことなく、直に電解金メッキを析出させる場合に顕著であった。
【0006】
本発明者は、シロキサンポリイミド樹脂を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物に、種々の複素環チオール化合物を配合することにより上述の問題を解決できるのではないかという仮定の下、種々の複素環チオール化合物をスクリーニングしたところ、電解メッキ耐性を改善できないばかりか、メッキ前の密着性すら改善できない複素環チオール化合物がある中で、ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)が上述の問題を解決できることを見出した。このビスムチオールの電解メッキ耐性の改善効果は、シロキサンポリイミド樹脂以外の一般的なポリイミド樹脂を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物にも対しても期待できる。
【0007】
そこで、ビスムチオールを添加した感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、フレキシブルプリント配線板を作成したところ、今度は、露出した銅パターンの表面が赤く変色するという問題が発生した。このような変色は、メッキムラを生じさせてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、以上の従来の技術の問題を解決しようとするものであり、ビスムチオールを添加した感光性ポリイミド樹脂組成物を用いてフレキシブルプリント配線板を作成する際に、露出した導体パターンの表面の変色を除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、感光性樹脂層のフォトリソグラフ処理により感光性樹脂層に開口部を設けた後、感光性樹脂層を架橋硬化させるためのポストベーク処理に先立って、フォトリソグラフ処理に続いて、化学研磨液でソフトエッチング処理することにより、露出した導体パターンの表面の変色を除去することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、基材上に導体パターンが形成されてなる基板と、基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板の製造方法において、以下の工程(a)〜(e):
(a)基材上に導体パターンを形成して基板を取得する工程;
(b)基板の、導体パターンが形成された側の面上に、ポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、ビスムチオールとを含有する感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成する工程;
(c)感光性樹脂層に対しフォトリソグラフ処理を施すことにより所望の領域(端子部)の導体パターンが露出するように、対応する領域の感光性樹脂層を除去する工程;
(d)露出した導体パターン(端子部)を、化学研磨液でソフトエッチング処理する工程; 及び
(e)感光性樹脂層を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層をカバーレイ層とする工程;
を有することを特徴とする製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、基材上に端子部を有する導体パターンが形成されてなる基板と、該端子部を除く基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板の当該端子部形成方法であって、以下の工程(a)〜(e):
(a’)基材上に端子部を有する導体パターンを形成して基板を取得する工程;
(b’)基板の、導体パターンが形成された側の面上に、ポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、ビスムチオールとを含有する感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成する工程;
(c’)感光性樹脂層に対しフォトリソグラフ処理を施すことにより端子部が露出するように、対応する領域の感光性樹脂層を除去する工程;
(d’)露出した端子部を化学研磨液でソフトエッチング処理する工程; 及び
(e’)感光性樹脂層を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層をカバーレイ層とする工程;
を有することを特徴とする端子部形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法又は端子部形成方法においては、感光性樹脂層のフォトリソグラフ処理により感光性樹脂層に開口部を設けた後、感光性樹脂層を架橋硬化させるためのポストベーク処理に先立って、フォトリソグラフ処理に続いて、化学研磨液でソフトエッチング処理する。このため、露出した導体パターンの表面の変色を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、基材上に導体パターンが形成されてなる基板と、基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板の製造方法であり、以下の工程(a)〜(e)、必要に応じて、更に工程(f)を有する。以下に、図面を参照しつつ工程毎に詳細に説明する。
【0015】
<<工程(a)>>
図1に示すように、基材1上に導体パターン2を形成して基板3を取得する。この導体パターン2は、端子部4となる領域を有することができる。
【0016】
基板3を構成する基材1としては、従来よりフレキシブルプリント配線板の基材として使用されている樹脂フィルムを使用することができ、例えば銅箔との線熱膨張係数が近似するポリイミドフィルムを好ましく使用することできる。このような樹脂フィルムの厚みは通常12〜25μmである。
【0017】
基板3を構成する導体パターン2は、基材1上に積層された9〜35μm厚の銅箔等の導体層をフォトリソグラフ技術等の公知のパターニング技術で形成したものである。従って、基板3を形成するための原反として、ポリイミドフィルム基材に銅箔が積層された銅張積層板を原反として使用することが好ましい。なお、導体パターン2の所望の領域が端子部4と指定される。
【0018】
<<工程(b)>>
図2に示すように、基板3の、導体パターン2が形成された側の表面上に、ポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、ビスムチオールとを含有する感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層5’を形成する。感光性樹脂層5’の厚みは、薄すぎると絶縁性の低下を引き起こし、厚すぎると現像残りが発生し易くなる傾向があるので、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜25μmである。
【0019】
感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層5’を形成する方法としては、スピンコーター、バーコーター等の公知の塗布装置を使用するコーティング技術を適用することができる。必要に応じてコーティング後に乾燥処理を施してもよい。その場合、架橋剤による架橋反応が進行しないように行うことが好ましい。
【0020】
本発明で使用する感光性ポリイミド樹脂組成物は、ポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、更に、ビスムチオールとを含有する。このため、この感光性ポリイミド樹脂組成物の塗布により形成されるカバーレイ層に、良好な密着性と電解メッキ耐性を付与することができる。
【0021】
ビスムチオールの感光性ポリイミド樹脂組成物における含有量は、少なすぎると電解メッキ耐性が不十分となり、多すぎると導体パターンが銅パターンである場合に銅硫化銅の生成による銅パターンの黒変の発生が懸念されるので、ポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。
【0022】
感光性ポリイミド樹脂組成物を構成するポリイミド樹脂は、フレキシブルプリント基板のカバーレイ層に適用されている公知のものを使用することができる。例えば、芳香族酸二無水物を含む酸二無水物成分と、芳香族ジアミンを含むジアミン類とをイミド化してなるものである。
【0023】
芳香族酸二無水物としては、ピロメリットテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタン酸二無水物等を挙げることができる。これらは二種以上を併用することができる。中でも、ポジ型の感光性付与の基礎となるアルカリ溶解性を高める点から3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。
【0024】
酸二無水物成分として、上述した化合物に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なポリイミド樹脂の酸二無水物成分として使用されているものと同様の酸二無水物(特許第3363600号明細書段落0009参照)を併用することができる。
【0025】
また、芳香族ジアミンとしては、m−キシリジンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6−ジアミノナフタレン、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(m−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゾフェノフェン、4,4’−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゾフェノフェン、4,4’−ビス(p−アミノフェニルメルカプト)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(p−アミノフェニルメルカプト)ジフェニルスルホン等を挙げることができる。これらは二種以上を併用することができる。
【0026】
また、ポリイミド樹脂として、ジアミン成分の少なくとも一つとして種々のシロキサンジアミンを使用して得たシロキサンポリイミド樹脂を使用することができる。シロキサンポリイミド樹脂を使用した場合には、カバーレイ層の弾性率を低減させ、フレキシブルプリント配線板の反りを軽減することができる。
【0027】
このようなシロキサンポリイミド樹脂としては、例えば、前出の特許文献1〜3に記載のシロキサンポリイミド樹脂を好ましく使用することができる。中でも、以下に説明する、主鎖にアミド結合を有する特許文献3のシロキサンポリイミド樹脂を、導体パターンへの密着性を向上させることができる点で好ましく使用することができる。
【0028】
このようなシロキサンポリイミド樹脂は、以下式(1)で表されるアミド基含有シロキサンジアミン化合物を含むジアミン成分と、前出した少なくとも一種の芳香族酸二無水物を含む酸二無水物成分とを、イミド化してなるものである。
【0029】
ここで、シロキサンポリイミド樹脂の必須ジアミン成分であるアミド基含有シロキサンジアミン化合物は、式(1)の化学構造を有する。
【0031】
式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立的に置換されてもよいアルキレン基であるが、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基を挙げることができる。置換基としては、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基を挙げることができる。中でも、原材料の入手の容易さからトリメチレン基が望ましい。また、R
1及びR
2は同一であって、互いに相違してもよいが、相違すると原材料の入手が困難になるため同一であることが望ましい。
【0032】
また、mは1〜30の整数であるが、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜20の整数である。これは、mが0であると原材料の入手が困難となり、30を超えると反応溶媒に混ざらず分離するからである。一方、nは0〜20の整数であるが、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10の整数である。これは、nは1以上であると、難燃性に優れたジフェニルシロキサン単位が導入されることになり、導入されていない場合よりも難燃性が向上し、20を超えると低弾性への寄与が小さくなるからである。
【0033】
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物の数平均分子量は、m、nの数により変動するが、好ましくは500〜3000、より好ましくは1000〜2000である。
【0034】
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物は、分子の両末端部にアミド結合を有することから、それから調製されたシロキサンポリイミド樹脂にもアミド結合が引き継がれることになる。このため配線板の銅など導体部に対する、アミド基含有シロキサンジアミン化合物由来のポリイミド樹脂の接着性が向上する。
【0035】
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物は、以下の反応スキームに従って製造することができる。
【0037】
式(1)〜(4)中、R
1、R
2、m及びnは、式(1)において既に説明した通りであり、Xは塩素、臭素などのハロゲン原子である。
【0038】
式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物の製造方法においては、まず、式(2)のシロキサンジアミン化合物と、式(3)のニトロベンゾイルハライドを求核置換反応させて式(4)のアミド基含有ジニトロ化合物を形成する。この場合、例えば、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、トルエン等の溶媒中で式(2)の化合物と式(3)の化合物とを加熱混合することにより式(4)のジニトロ化合物を形成することができる(Organic Chemistry,第5版,283頁(Ed.Stanley H. Pine)参照)。
【0039】
次に、式(4)のジニトロ化合物のニトロ基をアミノ基に還元する。これにより式(1)の新規なアミド基含有シロキサンジアミン化合物が得られる。ニトロ基をアミノ基に変換して式(1)の化合物が得られる限り還元方法に制限はないが、例えば安息香酸エチルとエタノールとの混合溶媒中、パラジウムカーボン触媒の存在下で式(4)の化合物を過剰の水素と接触させる方法が揚げられる(Organic Chemistry,第5版,642頁(Ed.Stanley H. Pine)参照)。
【0040】
本発明で使用できるシロキサンポリイミド樹脂を構成するジアミン成分中の式(1)で表されるアミド基含有シロキサンジアミン化合物の含有量は、少なすぎると無電解メッキ耐性が悪化し、多すぎると反りが大きくなるので、好ましくは0.1〜20モル%、より好ましくは0.1〜15モル%である。
【0041】
ジアミン成分には、必須成分である式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物に加えて、反りを小さくするために式(2)のシロキサンジアミン化合物を含有させることができる。式(2)のシロキサンジアミン化合物の含有量は、少なすぎると反り防止の効果が十分でなく、多すぎると難燃性が低下するので、好ましくは40〜90モル%、より好ましくは50〜80モル%である。更に、ジアミン成分は、式(1)及び式(2)のジアミン化合物に加えて、ポジ型の感光性付与の基礎となるアルカリ溶解性を達成するために、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含有することができる。3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンのジアミン成分中の含有量は、少なすぎるとアルカリ溶解性が得られず、多すぎるとアルカリ溶解性が高くなりすぎるので、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは25〜45モル%である。
【0043】
式(2)中、R
1、R
2、m、nは、式(1)で説明したとおりである。
【0044】
ジアミン成分として、式(2)及び3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なポリイミド樹脂のジアミン成分として使用されているものと同様のジアミン化合物(特許第3363600号明細書段落0008参照)を併用することができる。
【0045】
本発明で使用できるシロキサンポリイミド樹脂は、上述した式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物を含有するジアミン成分と、酸二無水物成分とをイミド化することにより製造することができる。ここで、ジアミン成分1モルに対する酸二無水物成分のモル比は、通常、0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1である。また、ポリイミド樹脂の分子末端を封止するために、必要に応じて、ジカルボン酸無水物やモノアミン化合物をイミド化の際に共存させることができる(特許第3363600号明細書段落0011参照)。
【0046】
イミド化の条件としては、公知のイミド化条件の中から適宜採用することができる。この場合、ポリアミック酸などの中間体を形成し、続いてイミド化する条件も含まれる。例えば、公知の溶液イミド化条件、加熱イミド化条件、化学イミド化条件により行うことができる(次世代のエレクトロニクス・電子材料に向けた新しいポリイミドの開発と高機能付与技術、技術情報協会、2003、p42)。
【0047】
以上説明したシロキサンポリイミド樹脂の好ましい態様は、以下の構造式(a)で表されるポリイミド樹脂を必須成分として含有する。また、以下の構造式(b)と構造式(c)のポリイミド樹脂を更に含有することが好ましい。
【0049】
本発明で使用する感光剤としては、従来よりポジ型レジスト組成物の感光剤として使用されているキノンジアジド系感光剤を好ましく使用することができ、例えば、ジアゾナフトキノン(DNQ)、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸または1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸と、低分子芳香族ヒドロキシ化合物とのエステル化合物、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−及び4−メチルフェノール、4,4’−ヒドロキシプロパンとのエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいキノンジアジド系感光剤としてはナフトキノンジアジド誘導体を好ましく挙げることができる。ここで、ナフトキノンジアジド誘導体の具体例としては、以下の化学構造式(F)、(G)、(H)で表されるナフトキノンジアジド誘導体等を挙げることができる。これらは二種以上を併用することができる。これらの中でも、高い感度を示すという点から化学構造式(G)のナフトキノンジアジド誘導体を好ましく使用することができる。
【0051】
なお、これらの化学構造式(F)、(G)及び(H)のそれぞれにおいて、複数存在する置換基Rの全てがナフトキノンジアジドスルホニル基であることが好ましい。他方、すべてのRがHであることはない。
【0052】
本発明で使用する感光性ポリイミド樹脂組成物における感光剤の含有量は、少なすぎると現像が困難となり、多すぎると膜物性が低下する傾向があるので、ポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜30質量%である。
【0053】
架橋剤としては、基本的にポリイミド樹脂の架橋剤として使用されているものを使用することができる。例えば、エポキシ樹脂類、ポリイソシアネート類、ベンゾオキサジン類、レゾール樹脂類などを挙げることができる。また、架橋剤の配合量は、少なすぎると膜物性が低下するおそれがあり、多すぎると現像が困難になる傾向があるので、シロキサンポリイミド樹脂100質量部に対し、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0054】
なお、架橋剤として広く使用されているエポキシ樹脂類やポリイソシアネート類の場合、ビスムチオールと反応し、樹脂組成物をゲル化させることが懸念されるので、主体的に用いることは避けることが好ましい。
【0055】
本発明で使用する感光性ポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて、トルエン、γ−ブチロラクトン、トリグライム、ジグライム、安息香酸メチル、安息香酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶剤を含有することができる。中でも、印刷性が良好なγ−ブチロラクトン、トリグライムを好ましく使用することができる。なお、有機溶剤の使用量は、通常、ポリイミド樹脂固形分100質量部に対し、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
【0056】
本発明で使用する感光性ポリイミド樹脂組成物は、ポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、ビスムチオールと、必要に応じて有機溶剤、その他の添加剤、例えば、防錆剤等とを、常法により均一に混合することにより調製することができる。
【0057】
<<工程(c)>>
次に、
図3に示すように、感光性樹脂層5’に対しフォトリソグラフ処理を施すことにより所望の領域(好ましくは端子部4)の導体パターン2が露出するように、対応する領域の感光性樹脂層を除去する。具体的には、感光性樹脂層5’上に、端子部4に相当する部分が開口したレジストマスクを形成し、露光し、1〜5質量%の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ現像液で現像することにより、導体パターン2の端子部4を露出させればよい。アルカリ現像後に、スプレー水洗を行うことができる。
【0058】
なお、露出した導体パターン2(端子部4)が銅パターンである場合、その表面が赤く変色するが、その赤変色部は、透過型顕微鏡観察(TEM)とエネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)の結果、S・Cuという構成元素からなるものであることが確認できる。従って、赤変色部は、ビスムチオールと銅とのコンプレックスからなる赤被膜であると考えられる。
【0059】
<<工程(d)>>
次に、露出した導体パターン2を化学研磨液でソフトエッチング処理とする。ここで、ソフトエッチング処理とは、露出した導体パターン2(端子部4)の表面の赤変部と表面酸化物とを除去する処理であり、一般に、30℃での銅に対するエッチレートが0.1〜1.0μm/分のエッチング処理を意味する。ソフトエッチング処理の操作としては、エッチング対象物を化学研磨液に浸漬することや、エッチング対象物に化学研磨液をスプレーすることが挙げられる。
【0060】
化学研磨液としては、導体表面をソフトエッチングすることのできるものを広く使用することができる。過硫酸ナトリウム水溶液等の活性酸素を発生させる処理液が挙げられる。中でも、エッチレートの安定性の点から、過酸化水素−硫酸水溶液を好ましく挙げることができる。過酸化水素濃度は、低すぎても高すぎてもエッチレートが不安定となるので、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。また、硫酸濃度も、低すぎても高すぎてもエッチレートが不安定となるので、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0061】
なお、ソフトエッチング処理の後に、スプレー水洗、更に希硫酸水溶液洗浄、スプレー水洗を適宜行うことができる。
【0062】
<<工程(e)>>
次に、感光性樹脂層5’を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層5’をカバーレイ層5とする(
図4)。これにより、端子部4以外の導体パターン2がカバーレイ層5で被覆されたフレキシブルプリント配線板10が得られる。
【0063】
架橋処理としては、使用する架橋剤の種類等に応じて加熱処理や光照射処理が挙げられるが、120〜250℃の温度で、ポストベーキングと称されている加熱処理を行うことが好ましい。また、この加熱処理は、不活性雰囲気(窒素雰囲気等)中で行うことができる。特にビスムチオールの分解点(156℃)を超えない温度で加熱処理することが好ましい。また、架橋処理により、ビスムチオールと架橋剤とが反応しないことが好ましい。
【0064】
<<工程(f)>>
なお、必要に応じて、露出した導体パターン2の端子部4をメッキ処理によりメッキ被膜6で被覆することができる。これにより、
図5に記載のフレキシブルプリント配線板が得られる。メッキ処理としては、無電解メッキ及び/又は電解メッキ処理が挙げられる。ビスムチオールの電解メッキ耐性向上効果を考慮し、直に電解メッキ処理によりメッキ被膜6で被覆することが好ましい。無電解メッキとしては無電解Ni又はAuメッキ等が挙げられ、電解メッキとしては電解Ni又はAuメッキ等が挙げられる。
【0065】
以上説明した本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、以下に示すように、フレキシブルプリント基板の端子部形成方法という側面がある。この端子部形成方法の発明も本発明に包含される。
【0066】
即ち、フレキシブルプリント基板の端子部形成方法は、基材上に端子部を有する導体パターンが形成されてなる基板と、該端子部を除く基板上に形成されたカバーレイ層とを有するフレキシブルプリント配線板の当該端子部形成方法であって、以下の工程(a’)〜(e’)を有する。
【0067】
(a’)基材上に端子部を有する導体パターンを形成して基板を取得する工程;
(b’)基板の、導体パターンが形成された側の面上に、ポリイミド樹脂と、感光剤と、架橋剤と、ビスムチオールとを含有する感光性ポリイミド樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成する工程;
(c’)感光性樹脂層に対しフォトリソグラフ処理を施すことにより端子部が露出するように、対応する領域の感光性樹脂層を除去する工程;
(d’)露出した端子部を化学研磨液でソフトエッチング処理する工程; 及び
(e’)感光性樹脂層を架橋処理して架橋剤を架橋させ、それにより感光性樹脂層をカバーレイ層とする工程。
【0068】
これらの工程(a’)〜(e’)はそれぞれ、先に説明した本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の工程(a)〜(e)で説明したとおりである。
【実施例】
【0069】
以下、発明を実施例により具体的に説明する。
【0070】
参考例1(シロキサンポリイミド樹脂の調製)
(1)シロキサンジアミンの調製
冷却機、温度計、滴下ロート及び撹拌機を備えた2リットルの反応器に、トルエン500g、式(2)のシロキサンジアミン(R1、R2=トリメチレン; 商品名 X−22−9409、信越化学工業株式会社)200g(0.148mmol)、及びトリエチルアミン30g(0.297mol)を投入した。次いで、p−ニトロベンゾイルクロライド54.7g(0.295mol)をトルエン300gに溶解させた溶液を滴下ロートに投入した。反応器内を撹拌しながら50℃まで昇温した後、滴下ロート内の溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、昇温させ撹拌を6時間行い、還流下で反応させた。反応終了後、30℃に冷却し、800gの水を加えて強撹拌した後、分液ロートに移液し、静置分液した。5%水酸化ナトリウム水溶液300gでの洗浄を3回行い、飽和塩化ナトリウム水溶液300gでの洗浄を2回行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、トルエン溶媒を加熱減圧溜去し濃縮後、60℃で1日減圧乾燥した。得られたα−(p−ニトロベンゾイルイミノプロピルジメチルシロキシ)−ω−(p−ニトロベンゾイルイミノプロピルジメチルシリル)オリゴ(ジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン)(以下、
ジニトロ体)を、収量235g(収率96%)で得た。ジニトロ体は淡黄色のオイル状であった。
【0071】
得られたジニトロ体112g(0.068mol)を、撹拌子、水素導入管及び水素球を備えた1リットルの反応器に、酢酸エチル180g、エタノール320g、及び2%パラジウム−炭素20g(含水率50%)を共に投入した。反応器内を水素ガス雰囲気下に置換した後、水素球圧力下に室温で撹拌を2日続けた。反応混合液から触媒をろ過除去し、反応液を減圧加熱下に濃縮した後、減圧下で60℃で乾燥を2日行い、淡黄色のオイルとしてα−(p−アミノベンゾイルイミノプロピルジメチルシロキシ)−ω−(アミノベンゾイルイミノブロピルジメチルシリル)オリゴ(ジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン)(本発明で使用するアミド基含有シロキサンジアミン化合物)を、収量102g(収率95%)得た。得られたアミド基含有シロキサンジアミン化合物のアミン価は69.96KOHmg/gであり、アミノ基当量は802g/molであった。なお、アミン価は、電位差自動滴定装置(AT−500、京都電子工業製)を用いて測定した。アミノ基当量は56.106/(アミン価)×1000により算出した。
【0072】
また、得られたアミド基含有シロキサンジアミン化合物について赤外吸収スペクトルと1H−NMRスペクトルを測定した結果、目的物を得たことを確認できた。なお、赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR420、日本分光株式会社製)を用いて、透過法にて測定した。また、1H−NMRスペクトルは、NMR分光光度計(MERCURY VX−300、バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド)を用いて、重クロロホルム中で測定した。これらの結果を以下に示す。
【0073】
IRスペクトル:
3450cm
−1(ν
N−H)、3370cm
−1(ν
N−H)、3340cm
−1(ν
N−H)、3222cm
−1(ν
N−H)、1623cm
−1(ν
C=O)、1260cm
−1(ν
CH3)、1000〜1100cm
−1(ν
Si−o)
1H−NMR(CDCl
3,δ):
−0.2〜0.2(m、メチル)、0.4〜0.6(m、4H、メチレン)、1.4〜1.8(m、4H、メチレン)、3.2〜3.5(m、4H、メチレン)、3.9(bs、4H、アミノ基水素)、5.8〜6.3(m、2H、アミド基水素)、6.4(m、4H、アミノ基隣接芳香環水素)、7.1〜7.7(m、芳香環水素)
【0074】
(2)シロキサンポリイミド樹脂の調製(式(1)のアミド基含有シロキサンジアミン化合物を全ジアミン成分中に1mol%含有する例)
窒素導入管、撹拌機、及びディーン・スターク・トラップを備えた20リットル反応容器に、シロキサンジアミン化合物(X−22−9409、信越化学工業株式会社)4460.6g(3.30mol)と、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA、新日本理化株式会社、純度99.70%)1912.7g(5.34mol)と、γ−ブチロラクトン287gと、参考例1で得たアミド基含有シロキサンジアミン化合物89.0g(54.3mmol、純度97.10%)との混合液、及びトリグライム2870gを投入し、その混合液を撹拌した。更に、トルエン1100gを投入した後、混合液を185℃で2時間加熱還流させ、続いて減圧脱水およびトルエン除去を行い、酸無水物末端オリゴイミドの溶液を得た。
【0075】
得られた酸無水物末端オリゴイミド溶液を80℃に冷却し、それにトリグライム3431gとγ−ブチロラクトン413gと3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(BSDA、小西化学工業株式会社、純度99.70%)537.80g(1.92mol)とからなる分散液を加え、80℃で2時間撹拌した。そこへ溶剤量の調整のため524gのトリグライムを加え、185℃で2時間加熱還流させた。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、トラップに溜まったトルエン及び水を除去した。以上の操作により、アミド基を有するシロキサンポリイミド樹脂を合成した。得られたシロキサンポリイミド樹脂の実測固形分は47.5%であった。また、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量として63000であった。
【0076】
得られたシロキサンポリイミド樹脂を、トリグライムとγ−ブチロラクトンとの混合溶媒(質量比9:1)で、樹脂分が45質量%となるように希釈し、シロキサンポリイミドワニスとした。
【0077】
参考例2
参考例1のシロキサンポリイミドワニスに、含有されているポリイミド樹脂100質量部に対し、ナフトキノンジアジド(4−NT−300、東洋合成工業(株))10質量部、防錆剤(CDA−10、(株)ADEKA)0.3質量部、ベンゾオキサジン架橋剤(BF−BXZ、小西化学(株))5質量部、及びレゾール樹脂架橋剤(BRL274、昭和高分子(株))2質量部を混合し、ビスムチオールを含有しない感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を調製した。
【0078】
参考例3
参考例1のシロキサンポリイミドワニスに、含有されているポリイミド樹脂100質量部に対し、ビスムチオール0.5質量部、ナフトキノンジアジド(4−NT−300、東洋合成工業(株))10質量部、防錆剤(CDA−10、(株)ADEKA)0.3質量部、ベンゾオキサジン架橋剤(BF−BXZ、小西化学(株))5質量部、及びレゾール樹脂架橋剤(BRL274、昭和高分子(株))2質量部を混合し、ビスムチオールを含有する感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を調製した。
【0079】
実施例1〜3、比較例1〜6、対照例1
実施例1〜3及び比較例2〜6については参考例3のビスムチオールを含有する感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を、対照例1については参考例2のビスムチオールを含有しない感光性シロキサンポリイミド樹脂組成物を、ポリイミドフィルムベースの銅張積層板(エスパネックス、新日鉄化学(株))の銅箔面に、乾燥厚で10μmとなるように塗布して感光性樹脂層を形成した。この感光性樹脂層に対し、表1に示すとおり以下の一連の処理のなかで必要な処理を行い、銅箔に達する開口を形成し、ベーキングすることによりフレキシブルプリント配線板テストピースを得た。
【0080】
a)露光:0.3mm角の開口部が形成されるように、高圧水銀灯から100mW/cm
2の光量で、表1に示す積算光量で露光した。
b)3%NaOH浸漬:40℃の3%水酸化ナトリウム水溶液を用いてディッピング法で現像を行った。
c)スプレー水洗:室温(通常、10〜35℃)のイオン交換水でスプレー水洗を行った。
d)10%化研液浸漬:化学研磨液(過酸化水素1重量%と硫酸1.5重量%とを含有する水溶液(三菱ガス化学(株)製の化学研磨液10%希釈したもの))に30℃にて浸漬した。
e)スプレー水洗:再度、室温のイオン交換水でスプレー水洗を行った。
f)10%硫酸浸漬;室温の10%硫酸水溶液中にディッピングした。
g)200℃イナートベーク:窒素雰囲気下で200℃で加熱処理した。
h)メッキ前化研液浸漬:化学研磨液(過酸化水素1重量%と硫酸1.5重量%とを含有する水溶液(三菱ガス化学(株)製の化学研磨液10%希釈したもの))に30℃にて浸漬した。
i)スプレー水洗:再度、室温のイオン交換水でスプレー水洗を行った。
【0081】
<<評価>>
(1)赤皮膜の有無
g)200℃イナートベークの後に、開口部の露出した銅表面に赤い皮膜が形成されているか否かを目視観察した。観察した色について、ビスムチオールを含有しない感光性ポリイミド樹脂組成物を使用した対照例1の場合の銅表面の赤色の広がりの程度を0(即ち、赤皮膜が存在しない場合)とし、ビスムチオールを含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を使用し且つ10%化研液浸漬を行わない比較例1の場合の銅表面の赤色の広がりの程度を10として、11段階で評価した。得られた結果を表1に示す。評価が「0」であることが最も望ましいが、3以下であれば実用上許容できるレベルである。
【0082】
(2)カバーレイ層の表面ダメージ
現像条件、10%化研液浸漬条件、10%硫酸浸漬条件によるカバーレイ層の表面ダメージを目視観察した。ダメージが生ずると表面がクレータ状表面となり白色に見えるようになるので、観察した色について、比較例6の場合の白色度合いを5とし、対照例1の場合を0として6段階で評価した。得られた結果を表1に示す。評価が「0」であることが最も望ましいが、2以下であれば実用上許容できるレベルである。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から分かるように、露光・現像後、ポストベーク(200℃イナートベーク)前に、10%化研液浸漬を行うと、露出した銅表面の赤皮膜を除去できた。なお、10%化研液浸漬時間が長くなると、カバーレイ層表面がダメージを受ける危険性が増大するので注視が必要となる。また、30秒程度の処理時間が好ましいことがわかる。
【0085】
なお、ビスムチオールを使用していない対照例1の場合、赤皮膜も発生せず、カバーレイ層の表面ダメージも観察されないが、10%化研液浸漬を行わない比較例1〜4の場合、赤皮膜が発生した。しかも、比較例2を注目すると、アルカリ現像時間を比較例1の1.5倍にしても赤皮膜を除去できないことがわかる。また、比較例3に注目すると、比較例1の露光の積算光量とスプレー水洗の時間をそれぞれ2倍にしても、赤皮膜を除去できないことがわかる。比較例4に注目すると、10%硫酸浸漬時間を比較例1の6倍にしても赤皮膜を除去できないことがわかる。
【0086】
また、比較例5及び6に注目すると、10%化研液浸漬処理をポストベークの後、メッキの前に行った場合には、赤皮膜が除去できないことがわかる。
【0087】
<赤皮膜の解析>
TEM(透過型電子顕微鏡)観察・EDX(エネルギー分散型蛍光X線)分析の結果>
対照例1及び比較例1のそれぞれで作成したフレキシブルプリント配線板の露出した銅表面について、TEM(透過型電子顕微鏡)観察とEDX(エネルギー分散型蛍光X線)分析とを行った。
【0088】
まず、フレキシブルプリント配線板に、プラチナを利用する通常のTEM観察用テストピース作成方法を適用することにより、観察用テストピースを調製した。そのテストピースをTEM観察したところ、比較例1の場合には、銅表面に銅とは異なる最大で約7.5nm厚の非常に薄い層が観察された。これが赤皮膜であると考えられる。それに対し、対照例1の場合には、そのような薄い層は観察されなかった。
【0089】
この薄層について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EM−002B、TOPCON(株))を用いて、EDXマッピングしたところ、元素構成がSiではなく、“S・Cu”であることがわかった。ここで、Si源は、シロキサンポリイミド樹脂の主鎖に由来するものであると考えられ、Sはシロキサンポリイミド樹脂の主鎖及びビスムチオールに由来するものであると考えられ、Cuは銅パターンに由来するものであると考えられる。シロキサンポリイミド樹脂の主鎖におけるSiとSの存在量は、Si>Sであるから、“S・Cu”のSは、ビスムチオール由来であると合理的に推論できる一方で、シロキサンポリイミド樹脂の主鎖に由来するものではないことがわかる。
【0090】
<ビスムチオール添加による電解メッキ耐性の確認試験>
なお、参考のために、ビスムチオール添加による電解メッキ耐性の確認試験の結果を以下に簡単に説明する。
【0091】
対照例1及び比較例1のそれぞれで作成したフレキシブルプリント配線板テストピースの露出した銅表面に対し、シアン化金メッキ液(テンペレジスト FX、日本高純度化学(株))を使用し、電流密度1.0A/dm
2で0.3μm厚の金膜を電解メッキにより直に成膜した。銅とカバーレイ層との境界にメッキの差し込みが発生したか否か、目視にて観察した。その結果、対照例1の場合には、差し込みが発生し、開口部の周囲にカバーレイ層に変色が生じた。
【0092】
比較例1の場合、差し込みが発生せず、開口部の周囲にカバーレイ層に変色が生じなかった。しかし、露出した銅表面への電解金メッキ被膜にはメッキむらが観察された。
【0093】
従って、感光性ポリイミド樹脂組成物の電解メッキ耐性の向上のためには、ビスムチオールを配合することが好ましいことがわかった。