(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動力変換機構は、前記電動モータの出力を回転運動、回転打撃運動または打撃運動に変換して前記先端工具に伝達する3モードタイプであることを特徴とする請求項1記載の電動工具。
前記脱落防止手段は、前記案内溝の前記連結溝との連通部分に隣接して設けられ、前記連結溝の径方向内側面から径方向外側に突出する係止突起であることを特徴とする請求項1または2記載の電動工具。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1に示す電動工具としてのハンマドリル11は、コンクリートやレンガ等の被削材への孔空け作業などに用いられる手持ち式の電動工具である。
【0021】
このハンマドリル11は樹脂製のケース12を備えている。ケース12は、ハンドル部13が一体に形成された第1ケース半体12aと、底付き円筒状の第2ケース半体12bとを組み合わせて構成されており、全体としてガン形状となっている。
【0022】
ケース12の内部には、このハンマドリル11の駆動源となる電動モータ14が収容されている。図示する場合では、電動モータ14としてはブラシレスモータが用いられている。この電動モータ14は2つの軸受15,16により支持された出力軸14aを備えており、この出力軸14aは第2ケース半体12bの軸方向に向けて配置されている。
【0023】
なお、符号17は出力軸14aに固定されたファンである。
【0024】
ケース12のハンドル部13にはマイクロコンピュータで構成された制御装置18が収容されており、電動モータ14の作動は、この制御装置18により制御されるようになっている。制御装置18はハンドル部13の下端から引き出された電源コード19を介して図示しない商用電源に接続されている。また、ハンドル部13にはスイッチ機構21が収容されており、このスイッチ機構21も制御装置18に接続されている。スイッチ機構21はハンドル部13から突出するトリガ22を有しており、このトリガ22の操作量(引込み量)に応じた制御信号を制御装置18に出力するようになっている。つまり、作業者等によりトリガ22が操作されると、そのトリガ22の操作量に応じた速度となるように制御装置18により電動モータ14の作動が制御される。
【0025】
第2ケース半体12bの先端部分には、ソケットやチャック等の工具取付部23が回転自在に設けられている。この工具取付部23には、例えばドリルビット等の先端工具24が装着される。
【0026】
ケース12の内部には、電動モータ14と工具取付部23の間に位置して、動力変換機構31が収容されている。動力変換機構31は、その動力変換モードとして3つのモードを備えた3モードタイプとなっており、電動モータ14の出力は、回転運動、回転打撃運動または打撃運動のいずれかの運動に選択的に変換されて先端工具24に伝達される。つまり、このハンマドリル11は、動力変換機構31の動力変換モードを切り替えることにより、その作動モードを、回転モード、回転打撃モード、打撃モードの3つのモードに切り替えることができるようになっている。
【0027】
次に、動力変換機構31の詳細について説明する。
【0028】
図2に示すように、動力変換機構31は、電動モータ14の出力軸14aに平行な中間軸32を備えている。この中間軸32は軸受33によりケース12の内部に回転自在に支持されており、その一端には入力ギヤ34が固定されている。入力ギヤ34は電動モータ14の出力軸14aの先端に固定されたファーストピニオン35に噛み合わされている。これにより、電動モータ14が作動すると、中間軸32は電動モータ14に駆動されて回転する。
【0029】
中間軸32にはレシプロベアリング36が相対回転自在に装着されている。レシプロベアリング36は、その内輪36a、外輪36bおよびこれらの間に配置されるボール等の転動体36cとを有しており、中間軸32に装着される内輪36aの回転運動を外輪36bに設けられた出力ピン36dの往復運動に変換するものである。
【0030】
中間軸32とレシプロベアリング36の間の動力伝達を断続するために、中間軸32にはレシプロベアリング36に対して軸方向に隣接してクラッチ部材37が装着されている。クラッチ部材37は中間軸32にスプライン係合しており、中間軸32とともに回転し、且つ、中間軸32に対して軸方向に移動自在となっている。クラッチ部材37がレシプロベアリング36に接する位置にまで移動すると、図示しないクラッチ歯同士が噛み合い、クラッチ部材37がレシプロベアリング36の内輪36aに係合する。これにより、レシプロベアリング36はその内輪36aがクラッチ部材37を介して中間軸32に固定された動力伝達状態となる。反対に、クラッチ部材37がレシプロベアリング36から離れる方向に移動し、図示しないクラッチ歯の噛み合いが解除されると、レシプロベアリング36は中間軸32の回転が伝達されない動力遮断状態となる。
【0031】
ケース12の内部には、工具取付部23と同軸且つ中間軸32と平行にピストン38が収容されており、レシプロベアリング36の出力ピン36dはこのピストン38に連結されている。ピストン38はケース12の内部で軸方向に往復動自在となっており、中間軸32の回転がレシプロベアリング36に伝達されると、出力ピン36dにより駆動されて軸方向に往復運動するようになっている。ピストン38の内部には打撃子39が軸方向に移動自在に収容されており、先端工具24と打撃子39との間には中間子41が配置されている。ピストン38が軸方向に往復運動すると、打撃子39とピストン38とにより形成される空気室42に圧力変動が生じる。空気室42に圧力変動が生じると、その圧力変動により打撃子39が軸方向に駆動されて中間子41に衝突し、この中間子41を介して先端工具24に打撃力が加えられる。打撃子39の中間子41への衝突はピストン38の往復動に合わせて連続して行われる。
【0032】
このように、中間軸32の回転がレシプロベアリング36に伝達されると、電動モータ14の出力が先端工具24に打撃運動として伝達される。
【0033】
中間軸32の先端にはピニオンスリーブ43が圧入により固定されている。また、中間軸32のクラッチ部材37とピニオンスリーブ43との間の部分にはセカンドピニオン44が中間軸32に対して軸方向に移動自在且つ相対回転自在に装着されている。セカンドピニオン44は、ピニオンスリーブ43の側に移動し、その先端部分がピニオンスリーブ43に係合することにより、ピニオンスリーブ43を介して中間軸32に固定された動力伝達状態となる。反対に、セカンドピニオン44は、ピニオンスリーブ43から離れる方向に移動してピニオンスリーブ43との係合が解除されると、中間軸32の回転が伝達されない動力遮断状態となる。
【0034】
セカンドピニオン44の回転を先端工具24に伝達するために、ケース12の内部には、シリンダ45(回転伝達スリーブ)が収容されている。シリンダ45は円筒状に形成されて内部にピストン38を相対回転自在に収容しており、また、その先端部において工具取付部23に連結されている。シリンダ45の外周には出力ギヤ46が固定されており、この出力ギヤ46がセカンドピニオン44に噛み合わされている。これにより、中間軸32の回転がピニオンスリーブ43を介してセカンドピニオン44に伝達されると、その回転がシリンダ45に伝達され、工具取付部23つまり先端工具24が回転する。
【0035】
クラッチ部材37とセカンドピニオン44の間にはスプリング47が配置され、このスプリング47によりクラッチ部材37とセカンドピニオン44は互いに離れる方向に付勢されている。また、クラッチ部材37には切替スリーブ48が装着され、この切替スリーブ48をレシプロベアリング36から離れる方向に駆動することにより、クラッチ部材37をレシプロベアリング36から離れる方向に移動させることができるようになっている。
【0036】
次に、この動力変換機構31の動力変換モードを切り替えるための切替部材について説明する。
【0037】
第2ケース半体12bの下面には、切替部材としての切替ダイアル51が回動自在に装着されている。この切替ダイアル51を回転操作することにより、動力変換機構31の動力変換モードを切り替えて、ハンマドリル11の作動モードを回転モード、回転打撃モードまたは打撃モードのいずれかに設定することができる。
【0038】
切替ダイアル51は樹脂製となっており、
図3に示すように、円板状に形成された基盤51aの一面に略直方体形状でトンネル状のつまみ部51bを備えている。
【0039】
基盤51aの他面側には取付ボス部51cが一体に設けられている。この取付ボス部51cは基盤51aと同軸の円筒状に形成されており、その外周部分には径方向外側に突出する4つの係止片51d,51eが周方向に等間隔に並べて設けられている。3つの係止片51dは互いに周方向の幅が同一に設定されており、残りの1つの係止片51eは、その周方向の幅が他の係止片51dよりも大きく設定されている。
【0040】
一方、ケース12の第2ケース半体12bの下面には、切替ダイアル51を装着するための装着凹部52が設けられている。装着凹部52は円形に凹んで形成されており、
図4に示すように、その軸心には取付孔53が設けられている。取付孔53は、円形の孔部分の外周縁に、取付ボス部51cの係止片51d,51eに対応した4つの切り欠き部53a,53bを備えた形状に形成されている。これらの切り欠き部53a,53bは、係止片51d,51eと同様に、3つの切り欠き部53aは互いに周方向の幅が同一に設定され、残りの1つの切り欠き部53bのみ、その周方向の幅が他の切り欠き部53aよりも大きく設定されている。なお、各切り欠き部53a,53bは、それぞれ対応する係止片51d,51eよりも周方向の幅が僅かに大きく形成され、各係止片51d,51eは対応する切り欠き部53a,53bを通過可能とされている。
【0041】
取付ボス部51cは、
図5(a)に示すように、その幅の大きい係止片51eを幅の大きい切り欠き部53bに合わせるとともに、他の係止片51dを幅の小さい切り欠き部53aに合わせた位置つまり着脱位置に位置合わせされることにより、取付孔53に対して着脱可能となる。つまり、切替ダイアル51は、着脱位置に位置合わせされたときにケース12に対して着脱自在となる。
【0042】
一方、取付ボス部51cが取付孔53に挿入され、次いで、切替ダイアル51が着脱位置から周方向(
図5中反時計回り方向)に回されることにより、
図5(b)に示すように、各係止片51d,51eがケース12に係止されて、切替ダイアル51はケース12に回動自在に取り付けられた状態となる。
【0043】
このように、本発明のハンマドリル11では、切替ダイアル51を着脱位置に位置合わせした状態で取付ボス部51cをケース12の取付孔53に差し込み、この状態から切替ダイアル51を回転させることで、切替ダイアル51をケース12に取り付けることができる。そのため、ケース12の内部で止め輪を取り付けるなどの煩雑な作業が不要となり、切替ダイアル51のケース12への取り付け作業は容易である。
【0044】
切替ダイアル51の取付ボス部51cの先端部分には、動力変換機構31の動力変換モードを切り替えるための突起部51fが設けられている。突起部51fは取付ボス部51cと一体に形成されており、その形状は円柱状であり、取付ボス部51cの先端から軸方向に突出している。また、突起部51fは切替ダイアル51(取付ボス部51c)の軸心からずれて(偏心して)配置されており、切替ダイアル51が回転操作されると、その回転に応じて動力変換機構31に対する軸方向の位置が変位するようになっている。
【0045】
図2に示すように、突起部51fは、クラッチ部材37に装着された切替スリーブ48とセカンドピニオン44に設けられた鍔部44aとの間に配置されている。切替ダイアル51が回転操作されると、突起部51fは、その回転方向に応じて切替スリーブ48またはセカンドピニオン44を軸方向に駆動して、中間軸32とレシプロベアリング36の間の動力断続と、中間軸32とセカンドピニオン44との間の動力伝達とを断続するようになっている。
【0046】
次に、切替ダイアル51の回転操作によるハンマドリル11の作動モードの切替動作について説明する。
【0047】
切替ダイアル51が回転操作されて回転モードを選択する位置つまり回転モード選択位置に設定されると、切替ダイアル51の突起部51fが
図2に示す位置に対して図中右側に変位し、切替スリーブ48が突起部51fにより
図2中右側に向けて駆動される。切替スリーブ48が
図2中右側に向けて駆動されると、切替スリーブ48により引かれてクラッチ部材37がレシプロベアリング36から離れる方向に移動し、クラッチ部材37とレシプロベアリング36との係合が解除される。このとき、セカンドピニオン44はスプリング47により付勢されてピニオンスリーブ43に係合した状態に保持される。したがって、切替ダイアル51が回転モード選択位置に設定されると、電動モータ14の出力は先端工具24に回転運動としてのみ伝達され、先端工具24は電動モータ14に駆動されて回転する。
【0048】
次に、切替ダイアル51が回転操作されて回転打撃モードを選択する位置(
図2に示す位置)つまり回転打撃モード選択位置に設定されると、切替ダイアル51の突起部51fが、
図2に示す位置に変位する。突起部51fが
図2に示す位置となると、クラッチ部材37がレシプロベアリング36に係合し、セカンドピニオン44がピニオンスリーブ43に係合した状態となる。したがって、切替ダイアル51が回転打撃モード選択位置に設定されると、電動モータ14の出力は、先端工具24に回転運動として伝達されるとともに打撃運動としても伝達される。つまり、回転打撃モードでは、先端工具24は電動モータ14に駆動されて回転するとともに、これに打撃力が加えられる。
【0049】
次に、切替ダイアル51が回転操作されて打撃モードを選択する位置つまり打撃モード選択位置に設定されると、切替ダイアル51の突起部51fが
図2に示す位置に対して図中左側に変位する。突起部51fが
図2に示す位置に対して図中左側に変位すると、鍔部44aが突起部51fにより押されてセカンドピニオン44がピニオンスリーブ43から離れる方向に移動し、セカンドピニオン44のピニオンスリーブ43との係合が解除される。このとき、クラッチ部材37はスプリング47により付勢されてレシプロベアリング36に係合した状態に保持される。したがって、切替ダイアル51が打撃モード選択位置に設定されると、電動モータ14の出力は先端工具24に打撃運動としてのみ伝達され、先端工具24は回転せずに打撃力だけが加えられて作動する。
【0050】
このように、切替ダイアル51を回転操作することにより、ハンマドリル11の作動モードを回転モード、回転打撃モード、打撃モードのいずれかのモードに選択的に切り替えることができる。
【0051】
切替ダイアル51の操作性を高めるためには、回転操作された切替ダイアル51を各モード選択位置に固定する機能が必要である。また、上述のように、切替ダイアル51は、着脱位置となるとケース12に対して着脱自在となるので、切替ダイアル51のケース12からの脱落を防止するためには、切替ダイアル51が不意に着脱位置に移動することを防止する構造が必要である。
【0052】
そのため、本発明のハンマドリル11では、切替ダイアル51にロック解除ボタン61を設けるとともに、このロック解除ボタン61に固定した制御ピン62をケース12の装着凹部52に設けた制御溝63に係合させて、切替ダイアル51の作動を制御するようにしている。
【0053】
図6に示すように、ロック解除ボタン61は、切替ダイアル51のつまみ部51bに装着されている。つまみ部51bの内部にはスプリング64が収容され、このスプリング64によりロック解除ボタン61はつまみ部51bから突出する方向(径方向外側)に付勢されている。
【0054】
制御ピン62は断面円形の鋼材製となっており、ロック解除ボタン61の先端部の下面に固定されて当該下面からケース12の側に向けて突出している。
【0055】
制御溝63はケース12の装着凹部52の取付孔53の周りの底面部分に形成されており、その断面は断面矩形とされ、また、その溝幅は制御ピン62の外径よりも広く設定されている。
【0056】
切替ダイアル51がケース12に装着されると、制御ピン62の先端部が制御溝63に係合する。制御溝63に係合した制御ピン62は制御溝63に沿ってのみ移動することができる。これにより、切替ダイアル51の回転方向の作動は、制御ピン62を制御溝63に沿って移動させるように、これらの係合により制御されることになる。
【0057】
制御溝63は取付孔53を中心とした円弧状の連結溝63aを備えている。また、連結溝63aの両端部と中間部には、それぞれ径方向外側に向けて突出するロック溝63b,63c,63dが連ねて設けられている。つまり、ロック溝63b,63c,63dは連結溝63aにより互いに連結されている。
【0058】
図7に示すように、連結溝63aに沿って制御ピン62を移動させ、いずれかのロック溝63b,63c,63dに制御ピン62を係合させることにより、切替ダイアル51を回転モード選択位置、回転打撃モード選択位置または打撃モード選択位置に保持させることができる。つまり、
図7中右側となるロック溝63bに制御ピン62が係合すると、切替ダイアル51は回転モード選択位置となり、中央部のロック溝63cに制御ピン62が係合すると切替ダイアル51は回転打撃モード選択位置となり、
図7中左側のロック溝63dに制御ピン62が係合すると切替ダイアル51は打撃モード選択位置となる。制御ピン62はロック解除ボタン61とともにスプリング64により径方向外側に付勢されているので、制御ピン62がいずれかのロック溝63b,63c,63dに係合すると、切替ダイアル51は当該位置に保持される。切替ダイアル51を回転操作して他の作動モードを選択する際には、ロック解除ボタン61を押して制御ピン62をロック溝63b,63c,63dから連結溝63aに移動させる。これにより、制御ピン62を連結溝63aに沿って移動させて、切替ダイアル51を他のモード選択位置へ回転させることができるようになる。
【0059】
制御溝63には、切替ダイアル51の着脱位置に対応した着脱溝63eが設けられている。着脱溝63eは連結溝63aに対して周方向にずれて設けられており、
図5(a)に示すように、切替ダイアル51が着脱位置となったときに制御ピン62が着脱溝63eに係合するようになっている。つまり、制御ピン62を着脱溝63eにまで移動させることにより、切替ダイアル51のケース12からの着脱が可能とされる。この着脱溝63eは、案内溝63fを介して連結溝63aに連ねられている。案内溝63fの一端は、連結溝63aのロック溝63bとロック溝63cとの間の部分において連結溝63aに対して径方向内側に向けて連ねられており、案内溝63fの他端は着脱溝63eの径方向内側の端部に連ねられている。
図5(b)に示すように、着脱位置においてケース12に装着された切替ダイアル51を、ロック解除ボタン61を操作しながら回転させ、制御ピン62を着脱溝63eから案内溝63fを通して連結溝63aに移動させることにより、切替ダイアル51はモード選択可能にケース12に取り付けられた状態となる。
【0060】
一方、本発明のハンマドリル11では、作動モードの切り替えのために切替ダイアル51を回転操作したときに、不意に切替ダイアル51が着脱位置にまで回転してケース12から離脱することを防止するために、制御溝63に3つの脱落防止手段を設けるようにしている。
【0061】
1つ目の脱落防止手段として、制御溝63には、案内溝63fの連結溝63aとの連通部分つまり案内溝63fの連結溝63aからの入り口部分に隣接して係止突起としての第1突起71が設けられている。この第1突起71は、連結溝63aの径方向内側面を楔状に切り欠くことにより、当該切り欠き部分と案内溝63fとの間において連結溝63aの径方向内側面から径方向外側に突出する凸形状に形成されている。この第1突起71のロック溝63cの側を向く面は、連結溝63aの径方向内側面に対して垂直となっている。
【0062】
この第1突起71により、切替ダイアル51が、回転打撃モード選択位置または打撃モード選択位置から回転モード選択位置に向けて、ロック解除ボタン61が押されたまま回転操作されても、制御ピン62が案内溝63fに入ることが防止される。つまり、
図8(a)に示すように、ロック解除ボタン61が押された状態では、制御ピン62はロック溝63cとロック溝63bとの間において連結溝63aの径方向内側面に沿って移動するが、連結溝63aの径方向内側面には第1突起71が設けられるので、制御ピン62が第1突起71に当接して、それ以上の切替ダイアル51の回転が阻止される。また、この状態から、さらに切替ダイアル51を回転モード選択位置に向けて回転させるためには、ロック解除ボタン61の押し込みを解除する必要がある。ロック解除ボタン61の押し込みが解除された状態で切替ダイアル51が回転モード選択位置に向けて回転操作されると、制御ピン62は連結溝63aの径方向外側面に沿って移動するので、制御ピン62が案内溝63fに入ることがない。切替ダイアル51が回転モード選択位置にまで移動すると、制御ピン62はロック溝63bに係合し、切替ダイアル51は回転モード選択位置に保持される。
【0063】
このように、本発明のハンマドリル11では、案内溝63fの連結溝63aとの連通部分に隣接して第1突起71を設けるようにしたので、ロック解除ボタン61が押されたまま切替ダイアル51の回転操作が行われても、制御ピン62が不意に連結溝63aから案内溝63fに入り込むことを防止することができる。したがって、切替ダイアル51が不意に着脱位置にまで回転操作され、これがケース12から脱落することを防止することができる。
【0064】
2つ目の脱落防止手段として、制御溝63には、ロック溝63bとロック溝63cとの間において案内溝63fを連結溝63aに連ねるようにした構造が採用されている。つまり、本発明では、案内溝63fの連結溝63aからの入り口部分をロック溝63bとロック溝63cとの間に配置するようにしている。この構造により、ロック溝63bと案内溝63fとの間には、周方向に向けて突出する凸形状の第2突起72が形成されている。
【0065】
この第2突起72が設けられた構成とされることにより、切替ダイアル51を着脱位置にまで回転させるためには、
図8(b)に示すように、切替ダイアル51を、連結溝63aの着脱位置の側の端部となる回転モード選択位置から着脱位置とは逆方向に向けて回転させ、次いで、ロック解除ボタン61を押しんで制御ピン62を案内溝63fに入り込ませ、さらに、切替ダイアル51を着脱位置に向けて回転させる操作が必要となる。このような複雑な操作が必要となるので、切替ダイアル51が不意に着脱位置にまで回転操作されることが防止されることになる。
【0066】
このように、本発明のハンマドリル11では、ロック溝63bと案内溝63fとの間に第2突起72を設けるようにしたので、切替ダイアル51が不意に着脱位置にまで回転操作されてケース12から脱落することを防止することができる。
【0067】
また、第2突起72を設けたことにより、切替ダイアル51が回転モード選択位置にあるときに、モード切替操作のためにロック解除ボタン61が押されても、制御ピン62は第2突起72に当接して、直接、案内溝63fに入り込むことが防止される。
【0068】
なお、ロック解除ボタン61が押されたまま切替ダイアル51が回転モード選択位置から回転打撃モード選択位置の側に回転操作されることにより、制御ピン62が案内溝63fに入り込んだとしても、この場合、操作者は切替ダイアル51を回転打撃モード選択位置の側に向けて回転操作することを意図しているので、ロック解除ボタン61の押し込みが解除されることにより制御ピン62が連結溝63aに戻され、不意に着脱溝63eにまで移動することはない。
【0069】
3つ目の脱落防止手段として、制御溝63には、案内溝63fを連結溝63aと着脱溝63eとの間でクランク状に曲げた構造が採用されている。この構造により、案内溝63fの径方向内側面には径方向外側に突出する凸形状の第3突起73が形成され、案内溝63fの径方向外側面には径方向内側に突出する凸形状の第4突起74が第3突起73に対して周方向にずれて形成されている。
【0070】
第3突起73と第4突起74によって案内溝63fがクランク状に形成されることより、制御ピン62が連結溝63aから案内溝63fに不意に入り込んだとしても、制御ピン62がそのまま着脱溝63eにまで移動することが防止される。つまり、
図8(c)に示すように、制御ピン62が案内溝63fに入り込んでも、この制御ピン62を着脱溝63eにまで移動させるためには、切替ダイアル51を着脱位置に向けて回転させ、次いで、ロック解除ボタン61の押し込みを解除し、切替ダイアル51を再度着脱位置に向けて回転させ、次いでロック解除ボタン61を再度押し込み、切替ダイアル51を着脱位置に向けて再度回転させ、さらにロック解除ボタン61の押し込みを解除する、という複雑な操作が必要となる。そのため、制御ピン62が連結溝63aから案内溝63fに不意に入り込んだとしても、制御ピン62が容易に着脱溝63eに移動することがない。
【0071】
このように、本発明のハンマドリル11では、案内溝63fを第3突起73と第4突起74とを有するクランク形状に形成するようにしたので、案内溝63fに入り込んだ制御ピン62が着脱溝63eに容易に移動することを防止して、切替ダイアル51が不意に着脱位置にまで回転操作されてケース12から脱落することを防止することができる。
【0072】
前述のように、切替ダイアル51は、ケース12に設けられた取付孔53に取付ボス部51cを挿入し、これを回転させることによりケース12に回動自在に取り付けられる。また、切替ダイアル51のロック解除ボタン61に設けた制御ピン62をケース12に設けた制御溝63に係合させて切替ダイアル51の回転を制御するとともに、制御溝63に脱落防止手段である第1突起71、第2突起72、第3突起73および第4突起74を設けて制御ピン62が不意に連結溝63aから着脱溝63eに移動することを防止するようにしている。したがって、取付ボス部51cと取付孔53との係合により切替ダイアル51をケース12に容易に取り付ける構造としても、切替ダイアル51が不意にケース12から脱落することを防止することができる。
【0073】
このように、本発明のハンマドリル11では、切替ダイアル51に設けられた取付ボス部51cをケース12の取付孔53に差し込み、ロック解除ボタン61を操作しながら回転させることで切替ダイアル51をケース12に取り付けることができるので、ケース12の内部で止め輪を取り付けるなどの煩雑な作業を不要として、切替ダイアル51のケース12への取り付け作業を容易にすることができる。
【0074】
また、制御溝63に脱落防止手段である第1突起71、第2突起72、第3突起73および第4突起74が設けられることにより、切替ダイアル51が回転操作されたときに制御ピン62が連結溝63aから着脱溝63eへ移動することが阻止されるので、作動モードの切替え操作時に切替ダイアル51がケース12から不意に脱落することを防止することができる。
【0075】
次に、本発明の変形例について説明する。
【0076】
図4に示す場合では、制御溝63には3つの脱落防止手段が設けられるが、それぞれの脱落防止手段のいずれか1つのみを設けるようにしてもよい。
【0077】
例えば、
図9(a)に示すように、制御溝63に、係止突起である第1突起71のみを設けるようにしてもよい。また、
図9(b)に示すように、制御溝63に、ロック溝63bとロック溝63cとの間で案内溝63fを連結溝63aに連ねた構造、つまり第2突起72のみを設けるようにしてもよい。さらに、
図9(c)に示すように、制御溝63に、クランク状に曲げた案内溝63fの構造つまり第3突起73と第4突起74のみを設けるようにしてもよい。
【0078】
なお、
図9においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0079】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施の形態においては、本発明が適用される電動工具としてハンマドリル11を記載しているが、これに限らず、作動モードを切替可能な電動工具であれば、他の電動工具に本発明を適用してもよい。
【0080】
また、前記実施の形態においては、ハンマドリル11は3つの作動モードに切替可能とされているが、これに限らず、例えば、回転モードと回転打撃モードの2つのモードにのみ切替可能なハンマドリルに本発明を適用してもよい。
【0081】
さらに、前記実施の形態においては、切替部材は円形の切替ダイアル51として構成されているが、これに限らず、例えばレバー状に形成された切替レバー等、他の形状に構成するようにしてもよい。
【0082】
さらに、前記実施の形態においては、取付ボス部51cと取付孔53とによる切替ダイアル51のケース12への取付構造は、4つの係止片51d,51eと切り欠き部53a,53bを備えた構造とされているが、これに限らず、着脱位置で切替ダイアル51がケース12に対して着脱可能となり、そこから回転させることでケース12に保持される構造であれば、他の構造を採用してもよい。