【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の非水電解質二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、上記正極活物質が、Li
x1Na
y1Co
αMn
βO
γ(0.66<x1<1.1、0<y1≦0.02、0.75≦α
≦0.92、
0.08≦β≦0.25、1.9≦γ≦2.1)で表されるリチウム含有酸化物であることを特徴としている。
【0014】
上記リチウム含有酸化物はO2構造の酸化物を含んでいる。空間群C2/m又はC2/mに属する酸化物を含んでいてもよい。また、Li
2MnO
3やO3構造のLiCoO
2が20%未満含まれていてもよい。
【0015】
上記リチウム含有酸化物は、ナトリウム、ナトリウムのモル量を超えないリチウム、コバルト、及びマンガンを含むナトリウム含有酸化物のナトリウムをリチウムにイオン交換することによって作製することができるが、Li
x2Na
y2Co
αMn
βO
γ(0<x2≦0.1、0.66<y2<0.75、0.75≦α
≦0.92、
0.08≦β≦0.25、1.9≦γ≦2.1)で表されるナトリウム含有酸化物に含まれるナトリウムの一部をリチウムでイオン交換することによって作製することがより好ましい。
【0016】
上記正極活物質は、コバルト及びマンガンを含み、かつコバルト含有量が高いO2構造を多く含むため、平均放電電位が高く、かつ高電位でも結晶構造が安定している。そのため、上記正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質二次電池は、エネルギー密度が高く、かつ充放電サイクル特性に優れる。
【0017】
特に、放電終止電位2.0V(vs. Li/Li
+)以上充電終止電位5.0V(vs. Li/Li
+)以下の電位範囲において優れた充放電サイクル特性を示す。放電終止電位3.2V(vs. Li/Li
+)以上充電終止電位5.0V(vs. Li/Li
+)以下の電位範囲、さらに放電終止電位3.2V(vs. Li/Li
+)以上充電終止電位4.8V(vs. Li/Li
+)以下の電位範囲であれば、より優れた充放電サイクル特性を示す。尚、放電終止電位を高くすると充放電サイクル特性が良くなるのは、結晶構造が安定化するからである。また、充電終止電位を低くするほど充放電サイクル特性が良くなるのは、電解質の分解が抑えられるからである。
【0018】
上記正極活物質のリチウム含有量x1が上記範囲より少ないと充放電に関与できるリチウムが少なくなるため、理論容量が減少する。また、リチウム含有量x1が上記範囲より多いと遷移金属サイトにリチウムが入り、容量密度が減少する。
【0019】
ここで、上記正極活物質のコバルト量が増加するにつれて、イオン交換後のリチウム量が増加する。これは、コバルトはイオン交換前のナトリウム酸化物中では3価以上の状態でも安定であるのに対し、イオン交換後のリチウム含有酸化物中では3価が安定な状態となり、イオン交換時にコバルトが還元され、リチウムイオンが構造中に吸蔵されるためと推測される。
【0020】
上記正極活物質のナトリウム含有量y1が上記範囲より多いと、ナトリウムが挿入・脱離するときに結晶構造の破壊が起こりやすくなる。一方でy1≦0.02の範囲では、構造が安定化すると考えられる。尚、y1≦0.02の場合、XRD測定では、ナトリウムを検出できない場合がある。
【0021】
上記正極活物質のコバルト含有量αが上記範囲より少ないと放電電位が低くなる。また、コバルト含有量αが上記範囲より多いと4.6V(vs. Li/Li
+)以上の充電過程で安定な結晶構造が得られない。尚、コバルト含有量αは0.80〜0.95の範囲であると、エネルギー密度がさらに高くなるためより好ましい。
【0022】
上記正極活物質のマンガン含有量βが上記範囲より多くなると、3.2V以下の放電容量密度が増し、結果的に平均放電電位の低下を招く。
【0023】
尚、上記正極活物質に、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、クロム、バナジウム、セリウム、チタン、鉄、カリウム、ガリウム、インジウムから選ばれる元素のうち少なくとも一つの元素を添加してもよい。添加量がコバルトとマンガンの総mol量に対して10mol%以下である場合、充電時の熱安定性が改善されることが予想される。
【0024】
本願発明で用いられる負極の例としては、リチウム、珪素、炭素、錫、ゲルマニウム、アルミニウム、鉛、インジウム、ガリウム、リチウム合金、予めリチウムを吸蔵させた炭素並びに珪素、及びこれらの合金並びに混合物が挙げられる。
【0025】
電極の導電性が優れている場合は、導電剤を添加しなくても電極として機能するが、電極の導電性が低い場合は、導電剤を電極に添加することが望ましい。導電剤としては、導電性を有する材料であればよく、特に導電性が優れている酸化物、炭化物、窒化物、炭素材料の少なくとも一種を用いることができる。酸化物としては、酸化スズ、酸化インジウム等が挙げられる。炭化物としては、炭化タングステン、炭化ジルコニウムが挙げられる。窒化物としては、窒化チタン、窒化タンタル等が挙げられる。
【0026】
尚、導電剤を添加させる場合、その添加量が少ないと、正極における導電性を充分に向上させることができない。一方、その添加量が多くなり過ぎると、正極における活物質の割合が少なくなって高いエネルギー密度が得られなくなる。このため、導電剤の量が活物質の総量に対し0質量%より多く30質量%以下であることが好ましく、さらに1質量%以上20質量%以下、さらに2質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましい。
【0027】
電極に添加するバインダーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアセテート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエンラバー、カルボキシメチルセルロースから選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0028】
本願発明で用いられるバインダーの量が多いと、正極に含まれる活物質の割合が小さくなるため、高いエネルギー密度が得られなくなる。そのため、バインダーの量は活物質の総量に対し0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、さらに1質量%以上20質量%以下、さらに2質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましい。
【0029】
本願発明で用いる非水溶媒の例としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、二トリル類、アミド類、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0030】
環状炭酸エステルの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、又はこれらの水素基の一部若しくは全部がフッ素化されたものを用いることができる。環状炭酸エステルの例としては、トリフルオロプロピレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0031】
鎖状炭酸エステルの例としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、又はこれらの水素の一部若しくは全部がフッ素化されたものを用いることができる。
【0032】
エステル類の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0033】
環状エーテル類の例としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1、3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテルなどが挙げられる。
【0034】
鎖状エーテル類の例としては、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルなどが挙げられる。
【0035】
二トリル類の例としては、アセトニトリル等が、アミド類の例としては、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0036】
本願発明で用いるリチウム塩の例としては、従来のリチウムイオン二次電池において電解質として一般に使用されているものを用いることができ、例えば、LiBF
4、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiAsF
6、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、から選択される少なくとも1種を用いることができる。