(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合工程においてさらに可塑剤を使用し、前記可塑剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して35重量部以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記混合工程の後に分散助剤として、グリコール化合物および/またはアルキル基を有するシラン化合物を配合し、前記分散助剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して0.5〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記混合工程においてさらに可塑剤を使用し、前記分散助剤および前記可塑剤の合計量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して35重量部以下であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ用ゴム組成物。
請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物又は請求項8若しくは9に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によって製造されたタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いる空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンパウンドを混合する際の混合温度が140℃未満の場合、シリカ−シランカップリング剤間の反応やシリカの分散が不十分となり、60℃tanδが高くなる。
また、ジエン系ゴム、シリカ、メルカプト系シランカップリング剤等を140℃以上で混合する場合、一般的に得られるコンパウンドの粘度が高くなる。これについて本願発明者らは、コンパウンドの混合中にラジカルが発生しその濃度が高くなることがコンパウンドの粘度の上昇の原因であることを見出した。そして本願発明者らはコンパウンド中のラジカルをトラップすればコンパウンドの粘度を低減させることをできることに想到した。
そこで、本発明は、60℃tanδ低減効果を維持しながら加工性に優れる(例えば、未加硫コンパウンドの粘度が低いことや、未加硫コンパウンドの押出物の表面が平滑であるタイヤ用ゴム組成物、その製造方法、該タイヤ用ゴム組成物を用いる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジエン系ゴムが共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30〜90重量%含み、前記1,2−結合の総量が前記ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であり、前記ジエン系ゴム100重量部に対して、特定の式で表されるシランカップリング剤0.5〜20重量部と、シリカ20〜120重量部とを混合する混合工程によって製造され、前記混合工程において加硫剤を使用せず、前記混合工程における混合温度が140℃未満である、タイヤ用ゴム組成物が、60℃tanδ低減効果を維持しながら加工性を改善できることを見出した。
また、本願発明者らは、上記の特定のジエン系ゴム100重量部に対して、特定の式で表されるシランカップリング剤0.5〜20重量部と、シリカ20〜120重量部とを混合する混合工程によって製造され、前記混合工程において加硫剤を使用せず、前記混合工程において、[A]混合温度が140℃未満であること、及び/又は[B]さらに、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び特定の式で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカルトラップ剤を使用し、前記ラジカルトラップ剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部であることによって、系内のラジカルを抑制する、タイヤ用ゴム組成物の製造方法によれば、60℃tanδ低減効果を維持しながら系内のラジカルを抑制して加工性を改善できるタイヤ用ゴム組成物を製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
従来のコンパウンドには混合温度を高くてもコンパウンドの増粘を起こさない組成のものが使用され、そのような組成のコンパウンドには高い混合温度が適用されていたので混合不良を起こすこともあまりなかった。
これに対して、本願発明においては、従来混合不良を起こすとされていた140℃未満の混合温度においても混合不良を起こすことがなく、かつ、成形加工性に優れ、60℃tanδをより低くすることができる、新規なコンパウンドを見出したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜10を提供する。
1. ジエン系ゴムが共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30〜90重量%含み、1,2−結合の総量が前記ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であり、
前記ジエン系ゴム100重量部に対して、下記式(1)で表されるシランカップリング剤0.5〜20重量部と、シリカ20〜120重量部とを混合する混合工程によって製造され、前記混合工程において加硫剤を使用せず、前記混合工程における混合温度が140℃未満であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
(1)
[式中、R
1、R
2およびR
3のうちの少なくとも1つまたは全部が−O−(R
5−O)
m−R
6(R
5は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、R
6は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基であり、mは1〜30の整数であり、R
5が複数の場合複数のR
5は同じかまたは異なってもよい。)であり、
R
1、R
2およびR
3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R
5−O)
m−R
6である場合、残りの基を、炭素数1〜12のアルキル基、−O−R
7(R
7は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基である。)、水素原子または炭素数6〜30のアリール基とすることができ、
R
1、R
2およびR
3は同じかまたは異なってもよく、
R
4は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。]
2. 前記混合工程においてさらに、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び下記式(2)で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカルトラップ剤を使用し、前記ラジカルトラップ剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部である上記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【化2】
(式中、R
1、R
2は同じか又は異なる、炭素数1〜18のアルキル基であり、nは0または1である。)
3. 前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上が末端に水酸基を有することを特徴とする上記1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4. 前記混合工程においてさらに可塑剤を使用し、前記可塑剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して35重量部以下であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
5. 前記混合工程の後に分散助剤として、グリコール化合物および/またはアルキル基を有するシラン化合物を配合し、前記分散助剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して0.5〜5重量部であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
6. 前記混合工程においてさらに可塑剤を使用し、前記分散助剤および前記可塑剤の合計量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して35重量部以下であることを特徴とする上記5に記載のタイヤ用ゴム組成物。
7. 前記ジエン系ゴムがさらに1,2−結合が20重量%未満の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体、ブタジエンゴムおよび天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む上記1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
8. ジエン系ゴムが、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30〜90重量%含み、前記1,2−結合の総量が前記ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であり、
前記ジエン系ゴム100重量部に対して、下記式(1)で表されるシランカップリング剤0.5〜20重量部と、シリカ20〜120重量部とを混合する混合工程によって製造され、前記混合工程において加硫剤を使用せず、前記混合工程における混合温度が140℃未満であることによって系内のラジカルを抑制する、タイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【化3】
(1)
[式中、R
1、R
2およびR
3のうちの少なくとも1つまたは全部が−O−(R
5−O)
m−R
6(R
5は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、R
6は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基であり、mは1〜30の整数であり、R
5が複数の場合複数のR
5は同じかまたは異なってもよい。)であり、
R
1、R
2およびR
3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R
5−O)
m−R
6である場合、残りの基を、炭素数1〜12のアルキル基、−O−R
7(R
7は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基である。)、水素原子または炭素数6〜30のアリール基とすることができ、
R
1、R
2およびR
3は同じかまたは異なってもよく、
R
4は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。]
9. 前記混合工程において、さらに、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び下記式(2)で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカルトラップ剤を使用し、前記ラジカルトラップ剤の量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部である、上記8に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【化4】
(式中、R
1、R
2は同じか又は異なる、炭素数1〜18のアルキル基であり、nは0または1である。)
10. 上記1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物又は上記8若しくは9に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によって製造されたタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いる空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は60℃tanδ低減効果を維持しながら加工性に優れる。本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によれば60℃tanδ低減効果を維持しながら加工性に優れるタイヤ用ゴム組成物を得ることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物または本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によって得られるタイヤ用ゴム組成物を用いる空気入りタイヤは60℃tanδ低減効果が高く生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、
ジエン系ゴムが共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30〜90重量%含み、1,2−結合の総量が前記ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であり、
前記ジエン系ゴム100重量部に対して、下記式(1)で表されるシランカップリング剤0.5〜20重量部と、シリカ20〜120重量部とを混合する混合工程によって製造され、前記混合工程において加硫剤を使用せず、前記混合工程における混合温度が140℃未満であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物である。
【化5】
(1)
[式中、R
1、R
2およびR
3のうちの少なくとも1つまたは全部が−O−(R
5−O)
m−R
6(R
5は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、R
6は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基であり、mは1〜30の整数であり、R
5が複数の場合複数のR
5は同じかまたは異なってもよい。)であり、
R
1、R
2およびR
3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R
5−O)
m−R
6である場合、残りの基を、炭素数1〜12のアルキル基、−O−R
7(R
7は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基である。)、水素原子または炭素数6〜30のアリール基とすることができ、
R
1、R
2およびR
3は同じかまたは異なってもよく、
R
4は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。]
【0010】
ジエン系ゴムについて以下に説明する。
本発明において、ジエン系ゴムが共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30〜90重量%含み、1,2−結合の総量が前記ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であることによって、混合工程における混合温度が低くとも混合不良を起こすことがなく、ラジカルの発生を抑制して、コンパウンドの粘度の上昇を抑制し、加工性に優れ、60℃tanδを低減することができる。
本願発明において使用されるジエン系ゴムは、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を含む。
ジエン系ゴムに含まれる、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、当該共重合体を構成する共役ジエン単位中の1,2−結合の量が、当該共重合体の20〜40重量%であれば特に制限されない。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の骨格は、共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とを共重合して得られた共重合体により構成することができる。共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが例示される。また芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の骨格は、スチレンブタジエンゴムであるのが好ましい。
本発明において、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を構成する共役ジエン単位中の1,2−結合の量は、60℃tanδを低減し加工性に優れるという観点から、当該共重合体の20〜40重量%であり、22〜40重量%であるのが好ましく、25〜40重量%であるのがより好ましい。
【0011】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体はさらに例えば、水酸基、アルコキシシリル基、アミノ基のような官能基を有することができる。官能基は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の末端に結合する及び/又は側鎖として結合することができる。官能基は芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の骨格に直接または基を介して結合することができる。官能基と芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の骨格とを介する基としては、例えば、炭化水素基のような有機基、ポリシロキサンなどが挙げられる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の重量平均分子量は、60℃tanδの低減および加工性の観点から、6.0×10
5〜15×10
5であるのが好ましく、8.0×10
5〜14×10
5であるのがより好ましい。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体として末端に水酸基を有する1種または2種以上を使用することができる。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体はその製造について特に制限されない。
【0012】
本発明において、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の量は、60℃tanδを低減し加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中の30〜90重量%であり、35〜85重量%であるのが好ましく、40〜85重量%であるのがより好ましい。
【0013】
本発明において、ジエン系ゴムはゴム成分として、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体以外の他のジエン系ゴムを含むことができる。他のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(例えば、スチレンブタジエンゴム。1,2−結合が20重量%未満または40重量%を超える、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等を例示することができる。60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、好ましくは天然ゴム、ブタジエンゴム、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%以外のスチレンブタジエンゴムがよい。
他のジエン系ゴムが共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体である場合、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、共役ジエン中の1,2−結合が20重量%未満の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体であるのが好ましい。
他のジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
他のジエン系ゴムの含有量は、他のジエン系ゴムが共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体である場合、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中、15〜55重量%であるのが好ましく、20〜53重量%であるのがより好ましい。
1,2−結合が20〜40重量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の重量平均分子量は6.0×10
5〜15×10
5であるのが好ましく、8.0×10
5〜14×10
5であるのがより好ましい。
他のジエン系ゴムの含有量は、他のジエン系ゴムが芳香族ビニル−共役ジエン共重合体以外である場合(例えば、ブタジエンゴム、天然ゴム)、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中、10〜70重量%であるのが好ましく、10〜65重量%であるのがより好ましい。
【0014】
本発明において、1,2−結合の総量は、60℃tanδを低減し加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であり、15〜55重量%であるのが好ましく、20〜55重量%であるのがより好ましい。なお、ジエン系ゴムがさらに、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含む場合、及び/又は芳香族ビニル−共役ジエン共重合体以外の1,2−結合を有するジエン系ゴム(例えば、ブタジエンゴム)を含む場合、1,2−結合の量は、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が有する1,2−結合、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が有する1,2−結合、及び芳香族ビニル−共役ジエン共重合体以外の1,2−結合を有するジエン系ゴムが有する1,2−結合の合計とする。
【0015】
シランカップリング剤について以下に説明する。本発明において使用されるシランカップリング剤は下記式(1)で表される化合物(メルカプト基含有シランカップリング剤)である。
【化6】
(1)
[式中、R
1、R
2およびR
3のうちの少なくとも1つまたは全部が−O−(R
5−O)
m−R
6(R
5は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、R
6は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基であり、mは1〜30の整数であり、R
5が複数の場合複数のR
5は同じかまたは異なってもよい。)であり、
R
1、R
2およびR
3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R
5−O)
m−R
6である場合、残りの基を、炭素数1〜12のアルキル基、−O−R
7(R
7は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基である。)、水素原子または炭素数6〜30のアリール基とすることができ、
R
1、R
2およびR
3は同じかまたは異なってもよく、
R
4は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。]
【0016】
R
4、R
5で表される、炭素数1〜30の2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(例えばメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基)のような脂肪族炭化水素基;芳香族炭化水素基;これらの組み合わせが挙げられる。
R
6、R
7で表される、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基;ベンジル基、フェネチル基のようなアラルキル基が挙げられる。
mは、1〜30の整数であるのが好ましい。
R
1、R
2およびR
3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R
5−O)
m−R
6である場合、残りの基としての、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基が挙げられる。
【0017】
式(1)で表される化合物は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、デグザ社の商品名「VP Si363」が好ましい。VP Si363は下記式(3)で表される。
【化7】
(3)
式(3)中、R
1、R
2およびR
3のうち2つは−O−(C
2H
4−O)
n−C
13H
27であり残りは−O−C
2H
5であり、nの平均数は5であり、R
4はトリメチレン基である。R
1〜R
3中において−O−C
2H
5が有する−C
2H
5の平均含有量は33%以下である。
シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においてシランカップリング剤の量は、60℃tanδを低減し加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して0.5〜20重量部であり、1.0〜18重量部であるのが好ましく、2.0〜15重量部であるのがより好ましい。
【0018】
シリカについて以下に説明する。本願発明において使用されるシリカは特に制限されない。例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なかでも、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、沈降シリカが好ましい。シリカはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、混合工程において使用されるシリカの量は60℃tanδを低減し加工性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して、20〜120重量部であり、30〜110重量部であるのが好ましい。
【0019】
混合工程においてさらに、
2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、及び下記式(2)で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカルトラップ剤を使用することができる。混合工程においてさらにラジカルトラップ剤を使用する場合、60℃tanδをより低減し加工性により優れる。
【化8】
(式中、R
1、R
2は同じか又は異なる、炭素数1〜18のアルキル基であり、nは0または1である。)
炭素数1〜18のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。nが0である場合、2つの硫黄原子が直接結合することができる。
2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシは下記式で表される化合物である。下記式で表される
2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシはニトロキシドフリーラジカルを有する。
【化9】
ラジカルトラップ剤は、
2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ及び/又は下記式(2)で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物として使用することができる。
ラジカルトラップ剤の量は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部であるのが好ましく、0.2〜4重量部であるのがより好ましい。
【0020】
混合工程においてさらに可塑剤を使用することができる。混合工程においてさらに可塑剤を使用する場合、加工性により優れる。可塑剤は特に制限されない。例えば、石油系鉱物油、コールタール系鉱物油、脂肪油系植物油、フェノールアルデヒド樹脂、ジオクチルフタレート、ポリエステル、ジオクチルセバケート、テルペン樹脂などが挙げられる。可塑剤は予めジエン系ゴム(例えば、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体)に添加されているものであってもよい。
可塑剤の量は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して35重量部以下であるのが好ましく、5〜30重量部であるのがより好ましい。
後述のように、混合工程の後に分散助剤を使用する場合、分散助剤及び可塑剤の合計量は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して35重量部以下であるのが好ましく、10〜35重量部であるのがより好ましい。
【0021】
本発明において、混合工程でジエン系ゴム、式(1)で表されるシランカップリング剤、シリカを少なくとも混合する。
混合工程における混合温度はラジカルの発生を抑制し、60℃tanδを低減し加工性に優れるという観点から、140℃未満であり、120〜138℃であるのが好ましく、125〜135℃であるのがより好ましい。
混合工程において加硫剤及び/又は加硫促進剤もしくは加硫助剤を使用しない。混合工程において加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤を使用する場合、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤の合計量は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して2重量部以下とするのが好ましい。
混合工程における混合方法は特に制限されない。例えば、密閉式ミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練しコンパウンドを製造することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、混合工程によって製造される。また、本願発明においては、混合工程(混合第1ステップ)によって製造されたコンパウンドを用いて、この後必要に応じて、分散助剤を添加する混合第2ステップ、加硫剤及び/又は加硫助剤もしくは加硫助剤を添加する混合第3ステップを設定することができる。
【0022】
本願発明において混合工程(混合第1ステップ)の後に分散助剤を使用する混合第2ステップを設定する場合、分散助剤は、一般的にゴム組成物において使用されるものであれば特に制限されない。例えば、グリコール化合物、アルキル基を有するシラン化合物、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
分散助剤は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、グリコール化合物および/またはアルキル基を有するシラン化合物であるのが好ましい。
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、
プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アルキル基を有するシラン化合物としては例えば、1つのケイ素原子に1つ以上のアルキル基を有する化合物が挙げられる。アルキル基の炭素原子数は1〜18個とすることが
できる。シラン化合物はアルキル基のほかに1〜3個のアルコキシ基を有することができる。具体的には例えば、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランのようなアルキルトリアルコキシシラン;ジアルキルジアルコキシシラン;トリアルキルアルコキシシランが挙げられる。
分散助剤の量は、60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して0.5〜5重量部であるのが好ましく、1〜5重量部であるのがより好ましい。
【0023】
混合第2ステップにおける混合温度は、140℃未満であるのが好ましい。
混合第2ステップにおける混合方法は特に制限されない。公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0024】
本願発明において混合工程(混合第1ステップ)の後または混合第2ステップの後に混合第3ステップを設定する場合、混合第3ステップにおいて使用される、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤はゴム組成物に一般的に使用されるものであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
加硫剤(例えば硫黄)の量はジエン系ゴム100重量部に対して、0.5〜5.0重量部であるのが好ましい。
【0025】
混合第3ステップにおける混合温度は、140℃未満であるのが好ましい。
混合第3ステップにおける混合方法は特に制限されない。公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカ以外の他の充填剤をさらに配合することができる。シリカ以外の他の充填剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示される。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、式(1)以外のシランカップリング剤、老化防止剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤が挙げられる。添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0028】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を加硫する際の条件は特に制限されない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物または後述する本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によって製造されるタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤ(例えば、タイヤトレッド)に好適に使用することができる。
【0029】
次に本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法について以下に説明する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、
ジエン系ゴムが、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30〜90重量%含み、前記1,2−結合の総量が前記ジエン系ゴム全量中の10〜55重量%であり、
前記ジエン系ゴム100重量部に対して、下記式(1)で表されるシランカップリング剤0.5〜20重量部と、シリカ20〜120重量部とを混合する混合工程によって製造され、前記混合工程において加硫剤を使用せず、前記混合工程における混合温度が140℃未満であることによって、系内のラジカルを抑制する、タイヤ用ゴム組成物の製造方法である。
【化10】
(1)
[式中、R
1、R
2およびR
3のうちの少なくとも1つまたは全部が−O−(R
5−O)
m−R
6(R
5は、炭素数1〜30の2価の炭化水素基であり、R
6は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基または炭素数7〜30のアラルキル基であり、mは1〜30の整数であり、R
5が複数の場合複数のR
5は同じかまたは異なってもよい。)であり、
R
1、R
2およびR
3のうちの1つまたは2つが前記−O−(R
5−O)
m−R
6である場合、残りの基を、炭素数1〜12のアルキル基、−O−R
7(R
7は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基、または炭素数7〜30のアラルキル基である。)、水素原子または炭素数6〜30のアリール基とすることができ、
R
1、R
2およびR
3は同じかまたは異なってもよく、
R
4は炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。]
【0030】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造法によって本発明のタイヤ用ゴム組成物を製造することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法において使用される成分は本発明のタイヤ用ゴム組成物と同様である。
混合工程において、さらに、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び式(2)で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカルトラップ剤を使用するのが好ましい。混合工程においてさらにラジカルトラップ剤を使用する場合、60℃tanδをより低減し加工性により優れる。
【化11】
(式中、R
1、R
2は同じか又は異なる、炭素数1〜18のアルキル基であり、nは0または1である。)
ラジカルトラップ剤、その量については上記と同様である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法において、混合工程における混合温度が140℃未満であることは上記と同様である。60℃tanδをより低減し加工性により優れるという観点から、120〜140℃未満であるのが好ましい。
ラジカルトラップ剤が2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである場合、混合温度は120〜140℃未満であるのが好ましい。
ラジカルトラップ剤が式(2)で示されるジアルキルジチオリン酸系化合物である場合、混合温度は120〜140℃未満であるのが好ましい。
【0031】
本発明の空気入りタイヤについて以下に説明する。本発明の空気入りタイヤは本発明のタイヤ用ゴム組成物または本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によって製造されたタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに使用した空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤについて添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、タイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤの実施形態の一例を示す。
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。
【0032】
図1において、左右のビード部3間にタイヤ径方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のカーカス層4が延設され、その両端部がビード部3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。カーカス層4の内側にはインナーライナー層7が配置されている。トレッド部1のカーカス層4の外周側には、タイヤ周方向に傾斜して延在する補強コードをタイヤ軸方向に所定の間隔で配列してゴム層に埋設した2層のベルト層8が配設されている。この2層のベルト層8の補強コードは層間でタイヤ周方向に対する傾斜方向を互いに逆向きにして交差している。ベルト層8の外周側には、ベルトカバー層9が配置されている。このベルトカバー層9の外周側に、トレッド部1がトレッドゴム層12により形成される。トレッドゴム層12は本発明のタイヤ用ゴム組成物により構成されている。各サイドウォール部2のカーカス層4の外側にはサイドゴム層13が配置され、各ビード部3のカーカス層4の折り返し部外側にはリムクッションゴム層14が設けられている。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物または本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によって製造されたタイヤ用ゴム組成物を空気入りタイヤのトレッドに用いる以外特に制限はなく、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<タイヤ用ゴム組成物の製造>
各表の混合第1ステップに示す成分を同表に示す量(重量部)で用いてこれらを密閉型ミキサーで各表に示す混合温度で6分間混練し放出し、得られた混合物に同表の混合第2ステップ、混合第3ステップに示す成分を同表に示す量(重量部)で加えてこれらをオープンロールで混練することによりタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を調製した。
混合第1ステップが本願発明における混合工程に該当する。
第1、2表における混合第2ステップの混合温度は130℃、第1、2表における混合第3ステップの混合温度は130℃であった。第3、4表における混合第2ステップの混合温度は130℃、第3、4表における混合第3ステップの混合温度は130℃であった。第5、6表における混合第2ステップの混合温度は130℃、第5、6表における混合第3ステップの混合温度は110℃であった。
<加硫ゴムサンプルの製造>
上記のようにして得られたタイヤ用ゴム組成物を所定形状の金型中で、160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴムサンプルを製造した。
【0035】
<評価>
上記のようにして得られた、未加硫のタイヤ用ゴム組成物を用いて、押出し加工性、相対ラジカル濃度、ムーニー粘度を以下に示す方法で評価した。また上記のようにして得られた加硫ゴムサンプルを用いて、60℃のtanδを以下の示す方法で測定した。結果を各表に示す。
なお、相対ラジカル濃度、
ムーニー粘度、60℃のtanδの結果について、第1、2表は標準例1を基準として評価され、第3、4表は標準例2を基準として評価され、第5、6表は標準例3を基準として評価された。
・押出し加工性
ASTMD2230に基づき押し出し物の表面状態を目視評価した。評価基準は以下の5段階評価であり4以上が許容される。
5=押出し良好;4=押出し可能;3=押出し不可能;2=押出し不可能でありさらに押出物の表面肌が悪い;1=押出しが不可能でありさらに押出物の表面肌が非常に悪い。
【0036】
・相対ラジカル濃度
日本電子社製のフリーラジカルモニタJES−FR30EXを用いて、未加硫ゴム中のフリーラジカル濃度を測定した。未加硫ゴム試料(5mm幅×30mm長さ×1mm厚)をサンプル管にセットし、20℃の条件で測定を行った。ここで得られる測定結果には、炭素、硫黄の両ラジカルが含まれる。ESRマーカとしてMn
2+をMgOに熱拡散させたものを使用した。各試料中のラジカル濃度をMn(マンガン)マーカのピーク面積を100としたときの相対面積(指数)で表した。指数が大きいほどゴムのラジカル濃度が高いことを表す。
【0037】
・ムーニー粘度
JIS K6300に基づき100℃にて測定した。指数が低いほど加工性に優れる。
・60℃のtanδ
(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定した。指数が低いほど転がり抵抗の低減に優れる。
【0038】
【表1】
【表2】
【0039】
第1表、第2表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1:SBR100重量部に対して20重量部油添されたスチレンブタジエンゴム、SBR中のVn(1,2−結合量)60重量%、OH変性あり、重量平均分子量9.3×10
5、日本ゼオン社製Nipol NS530
・SBR2:SBR100重量部に対して37.5重量部油添されたスチレンブタジエンゴム、SBR中のVn(1,2−結合量)43重量%、OH変性あり、重量平均分子量12.6×10
5、旭化成社製E581
・SBR3:SBR100重量部に対して25重量部油添されたスチレンブタジエンゴム、SBR中のVn(1,2−結合量)33重量%、OH変性あり、重量平均分子量13.3×10
5、日本ゼオン社製NipolNS570
・SBR4:SBR100重量部に対して37.5重量部油添されたスチレンブタジエンゴム、SBR中のVn(1,2−結合量)10重量%、OH変性なし、重量平均分子量6.3×10
5、旭化成社製タフデン1534
・SBR6:SBR100重量部に対して37.5重量部油添されたスチレンブタジエンゴム、SBR中のVn(1,2−結合量)71.5重量%、重量平均分子量7.8×10
5、ランクセス社製、商品名BUNA VSL5025−HM1
・BR:ブタジエンゴム、BR中のVn(1,2−結合量)1重量%、OH変性なし、重量平均分子量5.0×10
5、日本ゼオン社製Nipol1220
・シリカ:ローディア社製、「Zeosil 1165MP」
・シランカップリング剤1:スルフィド系シランカップリング剤、デグッサ社製 Si69VP
・シランカップリング剤2:デグッサ社製 VP Si363
・亜鉛華:酸化亜鉛、正同化学工業(株)製、「酸化亜鉛3種」
・ステアリン酸:日本油脂製、「ビーズステアリン酸」
・老化防止剤:フレキシス製、「6PPD」
・オイル:昭和シェル石油社製、「エキストラクト4号S」
・分散助剤1:丸善石油化学社製、「ジエチレングリコール」
・分散助剤2:信越化学工業社製、「オクチルトリエトキシシラン」
・硫黄:鶴見化学工業社製、「金華印油入微粉硫黄」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業製、「ノクセラー CZ−G」
・加硫促進剤2:三新化学工業製加硫促進剤サンセラーD−G
【0040】
【表3】
【表4】
【0041】
第3、4表に示す成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1:日本ゼオン社製 Nipol NS530(第1表のSBR1と同様)
・SBR3:日本ゼオン社製 Nipol NS570(第1表のSBR3と同様)
・SBR5:SBR100重量部に対して37.5重量部油添されたスチレンブタジエンゴム、SBR中のVn(1,2−結合量)72重量%、重量平均分子量11.7×10
5、ダウケミカル社製 SLR6430
・TEMPO:東京化成工業社製 試薬 2,2,6,6−Tetramethylpiperidine 1−Oxyl
O Free Radical
上記以外の成分は第1表と同様である。
【0042】
【表5】
【表6】
【0043】
第5、6表に示す成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1:第1表のSBR1と同じ
・SBR3:第1表のSBR3と同じ
・SBR5:第3表のSBR5と同じ
・DTP:下記式で表されるジチオリン酸亜鉛塩、ラインケミー社製 Rhenocure ZBOP/S
【化12】
(式中、R
1、R
2はC
pH
2p+1(p=1〜18)で表されるアルキル基であり、nは1である。)
上記以外の成分は第1表と同様である。
【0044】
表に示す結果から明らかなように、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含まず、ジエン系ゴム中の平均ビニル量が高い比較例[I]−1を135℃で混合すると混合不良が起こり、未加硫コンパウンドの押出し後に得られるゴム表面が荒く加工性に劣った。混合温度が140℃以上の比較例[I]−2、3は相対ラジカル濃度が高く、未加硫コンパウンドの押出し後に得られるゴム表面が荒く加工性に劣った。式(1)で表されるシランカップリング剤の量が0.5重量部未満である比較例[I]−4、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上を30重量%未満含み、1,2−結合の総量がジエン系ゴム全量中の10重量%未満の比較例[I]−7は、60℃tanδが高く転がり抵抗が高かった。式(1)で表されるシランカップリング剤の量が20重量部を超える比較例[I]−5
、共役ジエン中の1,2−結合が20〜40重量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の1種または2種以上
の量が所定の範囲を満たさない、比較例[I]−6、比較例[I]−8は未加硫コンパウンドの押出し後に得られるゴム表面が荒く加工性に劣った。
1,2−結合の総量がジエン系ゴム全量中の55重量%を超える、比較例[II]−1、比較例[III]−1は未加硫コンパウンドの押出し後に得られるゴム表面が荒く加工性に劣った。混合温度が140℃以上の比較例[II]−2、3、比較例[III]−2、3は相対ラジカル濃度が高く、未加硫コンパウンドの押出し後に得られるゴム表面が荒く加工性に劣り、ムーニー粘度が高かった。
これに対して、実施例[I]−1〜11、実施例[II]−1〜5、実施例[III]−1〜5は、混合不良及び/又はラジカルの発生を抑制して加工性(コンパウンドの粘度が低く、押出し加工が可能であり、押出し後のゴム表面が滑らかである。)に優れ、60℃tanδを低減することができる。