(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭等を粉砕する装置として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
ここで、竪型粉砕機は、原料を効率的に微粉砕することができるという優れた特性を有している反面、原料の種類や粉砕条件によって、異常振動が発生するという問題点を有していた。竪型粉砕機に発生する異常振動は、様々な原因によって誘発されるために、その振動原因に応じた様々な対策を講じる必要がある。そのため、竪型粉砕機について、従来から数多くの異常振動防止対策が提案されている。
【0003】
例えば、異常振動が発生し易くなる状況として、原料を微粉砕するために機内で原料を繰り返し粉砕するようなケースが知られている。
なぜなら、原料を微粉砕する際には、竪型粉砕機内で繰り返し原料を粉砕する必要がある。機内で繰り返し粉砕される原料は、循環原料と呼ばれるが、循環原料の粒径は、竪型粉砕機に新たに投入された粉砕前の原料に比較すれば、当然に、小さい。
【0004】
前述した循環原料は、細かな製品を得ようとすればするほど、小さくなるが、細かい粒子は細粒になればなるほど多量の空気を抱え込む。特に、原料を微粉砕しようとすれば、循環原料の量が増えるので、回転テーブル上の原料層は、粒径の小さな細かな原料を多く含み、空隙率の高い、所謂、嵩高い状態(嵩密度としては低い状態)になる。
【0005】
前述した嵩高い原料層は、空気を大量に含んでいるために、粉砕ローラ等が滑りやすい状態になり、見かけ上、原料層の摩擦係数が小さくなって滑りやすいような状況になる。
従って、嵩高い原料層を、粉砕ローラによって一挙に粉砕しようとすれば、回転テーブル上の原料層の上で、粉砕ローラが滑ってスリップしてしまい、粉砕ローラの回転が不規則になって、異常振動が発生するという問題が生じた。
【0006】
なお、異常振動を防止する方法の一つとして、特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。特許文献1に開示の従来技術は、補助ローラを用いて回転テーブル上の原料層を脱気し、一旦、圧密化することによって、粉砕ローラに原料を効率よく噛み込ませるという技術である。
【0007】
また、異常振動が発生し易くなる状況として、他に例えば、原料を機内で脱気する際において、運転中に原料層の高さに変化が生じるようなケースが知られている。
一般的に、竪型粉砕機で粉砕する原料の種類と量に応じて、補助ローラを回転テーブル方向に押しつける力(押圧力と称することもある)が決定されるが、その際において、竪型粉砕機では、通常、回転テーブル外周に配したダムリングと呼ばれる堰によって、回転テーブル上に滞留する原料層の厚みを調整し、該調整した原料層の厚みの原料を粉砕するに適した補助ローラの押圧力を適宜選定する。
【0008】
ところが、竪型粉砕機の運転中に原料の性状が変化する場合もあって、そのような場合に、機内での粉砕状態が変化して、原料層の厚みなどが変化してしまうケースもある。そのような場合に、補助ローラの押圧力が、脱気するに適した値から外れて、その結果として、異常振動が発生するという問題が生じることがあった。
【0009】
このような異常振動を防止する方法の一つとして、特許文献2に開示されるような従来技術が公知である。特許文献2に開示の従来技術は、回転テーブル上の原料層の状況に応じて粉砕ローラの圧下力(押圧力)を変化させるという技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、特許文献1又は2に開示された従来技術は、振動を防止する言う点で、一定の効果が期待できると記載されている。
しかし、特許文献1に開示された従来技術においても、補助ローラで圧密する際の嵩高い原料層は、空気を大量に含んで滑りやすい状況という点に変わりはない。
補助ローラで原料層を押す圧力は粉砕ローラで原料層を粉砕する圧力より小さいので、基本的に補助ローラで大きな振動が生じにくい構造であるにしても、空気を多量に含んだ原料層を補助ローラで急激に圧密すれば、原料層中の空気が一気に脱気されて、原料層と補助ローラとの間に多量の空気が介在することになる。その結果、原料層と補助ローラとの間に多量の空気が滞留し、補助ローラと原料層が大きくスリップして振動が発生するという問題が生じた。そのため、補助ローラで原料層を圧密化するにも限度があり、原料層と補助ローラとの間に多量の空気を介在させないように注意する必要があった。
【0013】
また、特許文献2に開示された従来技術は、例えば、原料供給量等をモニタリングすることによって、原料層の変化を検出し、該検出した結果に基づいて、粉砕ローラの圧下力を変化させている。
言い換えれば、特許文献2に開示された従来技術の方式は、原料供給量等の状況をセンサ等で測定し、その測定値に基づいて、ローラの適正な押圧力を算出した上で、油圧シリンダ等の油圧制御に反映させなければならない。そのため、原料層が変化してからローラの圧下力を調整するまでに制御の遅れが生じる可能性がある。
また、原料供給量等の状況から原料層の変化を予測して制御したとしても、予測制御では原料層の変化を正確に予測できない場合もあり、逆に、ローラの押圧力を早く調整しすぎたりする懸念もあった。
【0014】
特に、原料の性状が不均一で、原料層の厚みが、短い周期で厚くなったり薄くなったり繰り返して変化するような運転状況下においては、実際に、原料層の厚みの変化と、ローラ押圧力の調整との間に時間的なずれがあると、制御系がハンチングを起こし、返って異常振動を助長する。
また、特許文献2に開示された従来技術の方式は、ローラの押圧力を調整するために、複雑な制御装置を必要とする上、場合によっては、原料層の変化を正確に捉えることができずに、制御不良となることもある。
【0015】
本発明は、以上、説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、原料を微粉砕する際において、嵩高くなった原料層の厚みの変化にも、リアルタイムで確実に対応して、異常振動を防止し、原料を効率良く粉砕するに好適な竪型粉砕機に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機は、
(1) 粉砕ローラと補助ローラとを備えて、該回転テーブル上に投入した原料を、該補助ローラにより脱気してから粉砕ローラによって粉砕する竪型粉砕機であって、
前記補助ローラは、ローラ幅方向に延びる複数列の溝部を備えて、該溝部の両端部における溝深さ寸法を、該ローラ幅方向の中央付近の溝深さ寸法より、小さく形成したことを特徴とし、ケーシングに軸支したスイングレバーの一端側に補助ローラを配して、他端側に油圧式のシリンダを連結するとともに台座を設けて、該台座がスイングレバーの回動によって前後に移動して、該スイングレバーの回動方向に対して伸縮するスプリングに当接することにより、該台座がスプリングに当接した後、該スプリングを圧縮して伸縮量を変化させて粉砕ローラを回転テーブルの方向に押しつける力をスプリングの反力により調整して減少させる構成とした。
【0018】
(
2) (
1)に記載の竪型粉砕機において、前記溝部の両端部における溝深さ寸法を、1mmから10mmの範囲とした。
【0019】
(
3) (
2)に記載の竪型粉砕機において、前記補助ローラの中心径の寸法が、粉砕ローラの中心径の寸法より大きく形成した。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複雑な制御装置を備えなくても、運転中、回転テーブル上の原料層の状況に合わせて、補助ローラを回転テーブルに押しつける力を、リアルタイムで調整することができ、さらに、補助ローラによって原料層を脱気する際において、原料層が圧密される際に生じる多量の空気を、溝部から速やかに排出させることができる。
従って、嵩高くなった原料層の厚みの変化にも、リアルタイムで確実に対応して、異常振動を防止して、原料を効率良く粉砕することができる。
【0021】
また、補助ローラに幅方向に延びる複数列の溝を配して、該溝の両端部にガスが抜けるための隙間を確保するとともに、該ローラの幅方向中央付近の溝の深さ寸法が、該溝の両端部の深さ寸法より大きくなるように構成することによって、原料層が圧密される際に生じる多量の空気を、溝の両端部から速やかに排出させることができる。
【0022】
なお、前記溝部の両端部の深さ寸法について、1mmから10mmの範囲とすることにより、溝部の中の空気を速やかに排出することができる。
【0023】
また、補助ローラの中心径の寸法を粉砕ローラの中心径の寸法より大きくすれば、補助ローラによる圧密部分の幅が大きくなるので、原料層の急激な容積変化が避けられ、より振動を抑える効果的が高まる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の1例について詳細に説明する。
図1〜
図6は本実施形態に係わり、
図1は竪型粉砕機の全体構成を説明する概念図であり、
図2はスイングレバー調節機の配置と構造を説明する図である。
図3は補助ローラと粉砕ローラの配置並びに補助ローラに設けた溝部配列を説明する図であり、
図4は補助ローラの構造並びに溝部の配列を説明する図である。
図5及び
図6は補助ローラの溝部の形状を説明する図である。
図7は補助ローラによる原料層の圧密挙動を概念的に説明する図である。
図8はスイングレバーの位置とローラ押圧力の関係を説明する図であり、(1)は従来技術に関するものであり、(2)は本実施形態によるものである。
図9は原料層とローラについて速度と摩擦係数の関係を示したものである。
【0026】
以下、本発明による竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、
図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング1B、1A、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2Bと駆動モータ2Mによって駆動される回転テーブル2、コニカル型の粉砕ローラ3及び補助ローラ5等を備えている。なお、本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、駆動モータ2Mの駆動用電源としてインバータ電源を備えて、運転中、回転テーブルの回転速度が任意の変更可能な可変速式の竪型粉砕機1である。また、
図1に示す実施形態の竪型粉砕機1は、回転テーブル2の上方に、回転式の分級機14を備えており、分級機14の分級機構として、回転テーブル2の上方に配された回転分級羽根14Aが、竪型粉砕機1の上部に設置された図示しない駆動モータにより駆動され、自在に回転する構成となっている。
【0027】
また、
図1に示す竪型粉砕機1においては、回転テーブル2の下方にガスを導入するためのガス供給口33を設けており、さらに回転テーブル上方に該ガスと共に製品を取り出すための上部取出口39を設けている。
図1に示した竪型粉砕機1は前述の構成によって、運転中に、ガス供給口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、回転テーブル2下方から分級機14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が生じる構成となっている。
なお、回転テーブル2上で粉砕された原料は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、分級機14方向に流れるが、径が大きく重量の大きな原料は分級機14まで到達できずに、或いは通過できずに落下することによって、竪型粉砕機1内で循環し、再度粉砕される循環原料となる。そして、分級機14を通過した径の小さな原料は、上部取出口39から製品として取り出される。
【0028】
ここで、本実施形態において粉砕ローラ3は、
図3に示すように、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)に複数個(本実施形態においては2個)が配されて、回転テーブル2の方向に押圧されるよう構成されている。なお、粉砕ローラ3は、回転テーブル2が回転することにより、回転テーブル2に対して、原料を介して従動して回転する。なお、粉砕ローラ3は、回転テーブル2上において、その外周部分に2個が対向するようにして配されているとともに、粉砕ローラ3と位相を90度ずらしたような形で、補助ローラ5が2個配されている。
【0029】
ここで、
図4に示すように、本実施形態において、補助ローラ5は、コニカル型のローラであって、補助ローラ5のローラ幅方向(補助ローラ5の転動面の幅方向)に延びる複数本の溝部Mが加工されている。なお、参考までに、
図4において、補助ローラ5について、ローラ幅方向の寸法をローラ幅寸法Lとして、ローラ幅方向中心部のローラ直径寸法をローラ中心径寸法Dとして、記載した。また、前述の溝部の形状を説明するために、
図6に、補助ローラ5の表面部分を切り出して展開した図を概念的に示す。
図6のA部外観図を見ればわかるように、補助ローラ5の幅方向に延びる複数本の溝部Mが一定間隔で配設されている。
【0030】
また、本実施形態においては、前述した溝部Mの形状に特徴があり、溝部Mの両端部にガスが抜けるための隙間を確保するとともに、ローラ幅方向中央付近の溝部Mの深さ寸法が、溝部Mの両端部の深さ寸法より大きく加工してある。
図5に溝部Mの断面形状を示す。溝部Mは、ローラの幅方向に延びて、ローラを横断するように形成されており、溝部Mの両端部については、深さ数ミリの溝深さ寸法(h1)で溝加工がしてあり、溝部Mの中に入ったガスが抜けるための隙間を確保しているとともに、溝部Mのローラ中心部付近については、両端部より、深く(深さ寸法:h2)まで削り込んだ溝加工としている。
【0031】
ここで、ガスが抜けるために必要な端部の溝深さ寸法h1について説明すれば、あまり小さすぎると、排出するための隙間が小さくなりすぎて溝部Mの中の空気が十分に排出させることができない。また、あまり寸法が大きすぎると、排出時のガス速度が遅くなって、原料層の中でガスを噴出しにくくなり、その結果、返ってガスの排出が悪くなる。従って、溝深さ寸法h1は、1mmから10mmの範囲とすることが好ましい。
【0032】
さらに、本実施形態においては、
図3に示すように、補助ローラ5の大きさを粉砕ローラ3より大きくしている。
図4に補助ローラ5の構成を概念的に示すが、本実施形態において、補助ローラ5の中心径寸法D(補助ローラ5の転動面の幅方向中心部の直径寸法)は、粉砕ローラ3の中心形寸法の約1.2倍とした。
【0033】
なお、補助ローラ5は、原料を粉砕するためのローラではない。そのため、通常は、補助ローラ5について、ローラ幅寸法Lは粉砕ローラ3のローラ幅寸法と同一、ローラ中心径寸法Dは粉砕ローラの中心径寸法より小さく設計された。
これは、補助ローラ5と粉砕ローラ3とのローラ幅寸法を同一にしさえすれば、粉砕ローラ3で粉砕する原料層を補助ローラ5で圧密できるであろうという考え方からによる。
従って、従来は、補助ローラ5の中心径寸法Dは、粉砕ローラ3の中心径寸法より小さくても、十分に補助ローラ5としての機能を果たすものと考えられていた。
その結果、コストを削減するためとして、補助ローラ5は、粉砕ローラよりも、ローラ中心径寸法を小さくして作られることが一般的であった。
粉砕ローラ3として作られたローラをそのまま流用して補助ローラ5として使用する場合も散見されるが、その場合でも補助ローラ3と粉砕ローラ5は同一径にしかならない。
【0034】
しかし、詳細は後述するが、出願人は、補助ローラ5にて、嵩高い原料層を圧密する場合は、前述した補助ローラ5の幅寸法Lのみならず、中心径寸法Dの大きさが、圧密の効果に大きく作用することを知見したため、敢えて、粉砕ローラ3より補助ローラ5の中心径寸法Dを大きくする構成とした。
【0035】
なお、本実施形態においては、
図1に示したように、ケーシング1Bの軸受部7に軸支したスイングレバー6の上方側アーム部分6Aに補助ローラ5を配し、下方側アーム部分6Bに油圧式シリンダ8のピストンロッド8Aを連結した。
また、本実施形態においては、
図1に示すように、下方側アーム部分6Bとケーシング1Bとの間にスイングレバー調節機50を配している。
【0036】
以下、
図2を用いて、スイングレバー調節機50の構造を説明する。
本実施形態によるスイングレバー調節機50は、ケーシング1Bに固設されて、その内周にねじ部N1が形成された円筒状の固定管51(スタンド51と称することもある)、固定管51の内周部に形成されたねじ部N1に螺合し、回転することによってスイングレバー方向に前後の移動するスプリングケース54、スプリングケース54に設けられた調整板54Aに形成されたねじ孔N2(ねじ部N2と称することもある)に螺挿されて貫通し、回転することによってスイングレバー方向に前後の移動する調整棒56(スピンドル56と称することもある)、及び、スプリングケース54の中に挿入されて、その一端が調整板54に当接し、他端がスイングレバー6の下方側アーム部分6Bに配した台座60の台座ベース60Aに当接するスプリング52から構成されている。
なお、台座60は、スプリング52に当接する台座ベース60Aと、調整棒56に当接するスピンドル受け60Bを備えている。
また、調整棒56の反スイングレバー側の端部には、調整棒56を回転させるためのハンドル58が設置されている。
【0037】
以下、スイングレバー調節機50の機能を説明する。
本実施形態によるスイングレバー調節機50によれば、第一の調節機能として、スプリングケース54を回転させることにより、スプリング52の伸縮状態を変化させて、スイングレバー6によって補助ローラ5を回転テーブル2に押しつける力(ローラ押圧力)を調節することができる。
【0038】
第一の調節機能について、その機構を説明する。
ケーシング1Bに固定されている固定管51に対して、スプリングケース54を回転させることにより、スプリングケース54は、スイングレバー方向に対して前後に移動する。ここで、本実施形態におけるスプリングケース54は、ガイド筒54Bと調整板54で構成されており、ガイド筒54の中にスプリング52が挿入されて、ガイド筒54Bの反スイングレバー側の端に設けた調整板54Aにスプリング52の一端が当接して固定された状態となっている。従って、スプリングケース54を回転させることによって、スプリングケース54に設けた調整板54Aの位置がスイングレバー方向に対して前後に移動し、調整板54Aに固定されたスプリング52の一端も前後に移動する。
【0039】
運転中において、下方側アーム部分6Bは、スイングレバー6の回動にあわせて、スイングレバー調節機側に向けて前後に移動する。仮に、調整板54Aと台座60の台座ベースとの間の距離が、スプリング52の自然長より短くなると、台座ベース60Aがスプリング52に当接し、その結果、スプリング52は、調整板54Aと台座ベース60Aとの間に挟まれて圧縮されることになり、縮められた分だけスプリングとして反力を発揮する。
【0040】
なお、スイングレバー6が、スプリング52の反力によって押し戻される力は、補助ローラ5を回転テーブル2に押しつける力を弱める方向に働くことになる。
従って、本実施形態によるスイングレバー調節機50を使用すれば、スプリングケース54を回転させることにより、スプリング52の伸縮状態を変化させることができ、その結果、スイングレバー6によって補助ローラ5を回転テーブル2に押しつける力を調節することができる。
【0041】
また、本実施形態によるスイングレバー調節機50によれば、第二の調節機能として、スイングレバー6の回動範囲を制限して、補助ローラ5と回転テーブル2の最小離間距離を調節することができる。
第二の調節機能について、その機構等を説明すると、調整棒56に取り付けたハンドル58を回すことによって、調整棒56を回転させると、調整板54Aに形成されたねじ部N2に螺挿された調整棒56は、スプリングケース54内を、スイングレバー方向に対して前後に移動して、調整棒56と台座60の離間距離が変化する。
【0042】
本実施形態においては、スイングレバー6がスイングレバー調節機側に回動した場合において、補助ローラ5が回転テーブル2側に押しつけられるよう移動する構成となっているが、台座60のスピンドル受け60Bに対して、調整棒56が当接すると、スイングレバー6は、それ以上、スイングレバー調節機側に回動できなくなる。
スイングレバー6の回動が停止すると、補助ローラ5の下降が停止して、それ以上、補助ローラ5が回転テーブル2側に押しつけられるよう移動することができなくなる。
従って、本実施形態によれば、調整棒56と台座60の離間距離を変化させて、補助ローラ5と回転テーブル2の最小離間距離を調節することができる。
【0043】
なお、本実施形態に用いることのできる竪型粉砕機1の型式は、前述したものに限らないことは勿論であり、本発明の技術思想を逸脱しないで変更が可能である。
【0044】
以下、本実施形態による竪型粉砕機1の運転方法について、その好ましい1例を説明する。竪型粉砕機1の原料投入口35に投入された原料(本実施形態においては石炭)は、原料投入シュート13を介して回転テーブルの中央付近に投入されて、渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブルの外周側に移動する。
そして、回転テーブル上に投入された原料は、後述する循環原料と回転テーブル2上で合わさって、その大部分が補助ローラ5で圧密されて脱気された後、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。そして、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料は、回転テーブル2の外縁部に周設されたダムリング15を乗り越えて、回転テーブル上面2の外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。
【0045】
なお、環状通路30に達した原料は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、回転セパレータ14方向に流れようとするが、径が大きく重量の大きな原料は、セパレータ14まで到達することができず、或いはセパレータ14を通過できずに、落下することにより、竪型粉砕機1内で循環して繰り返し粉砕される循環原料となる。
そして、原料を微粉砕する場合において、竪型粉砕機1内には循環原料の割合が大きくなり、嵩高い原料層が形成される。
【0046】
なお、循環原料は、所定の粒径となって機外に排出されるまで、繰り返し、回転テーブル上に供給され、補助ローラ5で圧密されて脱気された後、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。一方、所定の粒径まで小さく粉砕された原料は、セパレータ14に到達して通過することにより、上部取出口39より粉砕品として取り出される。
【0047】
ここで、本実施形態においては、運転中に何らかの影響によって原料層の厚みが変化しても、例えば、
図10に示したような従来技術による竪型粉砕機においては、油圧シリンダ力とローラ自重によりローラ押圧力が決まるために、
図8(1)の線図に示すように、補助ローラ5を回転テーブル2に押しつけるローラ押圧力は変わらない。
【0048】
それに比較して本実施形態では、
図8(2)に示すように、原料層の厚みが小さい場合において、スプリング52による反力が発生して、補助ローラ5を回転テーブル2に押しつける粉砕ローラ押圧力が小さくなる。
【0049】
ここで、本実施形態において、調整棒56と台座ベース60Aの離間距離が、スプリング52の自然長と同一になるスイングレバー位置をA点とすると、A点より前記離間距離が長くなるケースにおいて、スプリング52による反力が生じない。従って、ローラ押圧力は、油圧シリンダ力とローラ自重を合算したものになる。
【0050】
また、本実施形態においては、A点より前記離間距離が短くなるケースで、スプリング52による反力が生じるから、ローラ押圧力が小さくなり、補助ローラ5の押圧力は、油圧シリンダ6による押圧力とローラ自重を合算したものから、スプリング52による反力を差し引いた力が押圧力となる。
従って、本実施形態においては、補助ローラ5と回転テーブル2の間の離間距離が小さくなる場合において、言い換えれば、原料層の厚みが薄い場合において、ローラ押圧力が小さく、原料層の厚みが大きくなるにつれて徐々にローラ押圧力が大きくなっていった後、ある一定値以上の原料層厚みになった時点からローラ押圧力が一定値となる。
従って、本実施形態による竪型粉砕機によれば、原料層の厚みに応じて、リアルタイムに、補助ローラ5を回転テーブル2に押しつける力を調整することができ、常に原料層の厚みに適したローラ押圧力にて脱気することが可能である。
【0051】
特に、原料を微粉砕するような場合は、機内に滞留する循環原料の割合が増加するが、循環原料の割合は、原料の性状によって影響を受けやすく、変化しやすい。
従って、原料層の嵩高さが変化しやすく、振動の原因となりやすいので、本実施形態における竪型粉砕機の構成はより効果的である。
なお、前述した特許文献2に開示の従来技術のように原料の供給量をモニタリングしたとしても、循環原料の割合を正確に予測することは困難であり、本実施形態のように、原料層の厚みの変化にあわせてリアルタイムにローラ押圧力を変化させることは難しい。
【0052】
また、本実施形態による竪型粉砕機によれば、原料層の厚みの変化にあわせて、自然にローラ押圧力が変化するから、複雑な制御装置を用いて制御する必要もなく、従って、制御の遅れも生じない。そのため、特に、原料層の厚みが、短い周期で厚くなったり薄くなったり繰り返し変化するような場合においても、十分にその変化に対応して、異常振動を抑制することが可能である。
【0053】
さらに、本実施形態においては、回転テーブル上に投入した原料を、補助ローラ5により脱気してから粉砕ローラ3によって原料を粉砕するが、補助ローラ5にガス抜きのための溝部を形成している。そのため、原料層が圧密される際に生じる多量の空気を、該溝の中に入れた後、該溝の両端部から速やかに排出させることができる。
従って、従来技術のように、原料層と補助ローラの間で多量の空気が滞留しないので、異常振動が抑制される。
【0054】
また、本実施形態においては、溝の両端部の深さを浅くし、ローラタイヤの幅方向中心付近について、両端部をより深く凹ませて形成している。
従って、本実施形態における竪型粉砕機1は、原料の脱気時において、深く形成した溝部の中心部付近に大量の空気を導入することができ、導入した大量の空気について両端部に形成した浅い溝から一気に排出する構成となっている。
その結果、両端部に形成した浅い溝から排出する空気の速度を高めることができるので、例え、該溝部の両部が、原料層の中に埋まっていたとしても、排出する空気の速度の勢いによって、溝部を覆った原料を吹き飛ばすことができ、空気の排出が速やかに行われるという優れた作用効果を有する。
【0055】
なお、補助ローラ5の前と後で原料層の高さに違いがないとすれば、運転時に補助ローラ5が原料層を圧密する部分は、補助ローラ5の最下点をつないだ線分(ローラを幅方向に横切って延びる一本の線)となるため、例え、中心径寸法Dが大きくても小さくても、圧密部分の寸法に大きな変化はない。従来技術は、そのような考え方に基づいて、補助ローラ5の中心径寸法Dを小さ目に作成されていた。
【0056】
しかし、実際に補助ローラ5によって原料を圧密すれば、補助ローラ5に噛み込まれる前と後で、原料層の高さに大きな違いが生じる。そして、補助ローラ5に噛み込まれる前と後で、原料層の高さに違いが生じるとすれば、中心径寸法Dが大きいほど、前述した圧密部分の線分の幅が広くなる。具体的に言えば、圧密部分(前述したローラを幅方向に横切って延びる一本の線分)の幅寸法が広くなってくる。
言い換えれば、原料層が嵩高い場合は、補助ローラ5を大きくすればするほど、一度に多くの原料層部分を噛み込んだ状態とすることが可能になる。
【0057】
図7に、中心径寸法Dに対する原料層の圧密部分の幅寸法Xの関係を示す。
補助ローラ5の前と後で原料層の高さが変化した(前寸法がT1、後寸法がT2)場合に、補助ローラ5の中心径寸法がD1>D2ならば、圧密部分の幅寸法はX1>X2となる。そして、補助ローラ5の前と後で原料層の高さ方向の寸法の変化量が同一であるなら、圧密部分の幅寸法X1が大きい中心径寸法D1の方が、緩やかな容積変化を示すことになる。特に、原料を微粉砕する場合には、嵩高い原料層を圧密するので、補助ローラ5の前と後で原料層の高さの違いが大きく、中心径寸法Dを大きくすることにより、圧密部分の幅が大きくなるので、原料層の急激な容積変化が避けられ、効果的である。
本実施形態の竪型粉砕機1においては、補助ローラ5に対しても、急激な容積変化を緩和して、緩やかな容積変化をさせているので、異常振動を生じにくい。