【実施例】
【0070】
試薬および分光光度計
以下の実施例等で用いた試薬および分光光度計は次のものである。
亜硝酸性窒素標準液(イオンクロマトグラフ用):和光純薬工業株式会社 コード147−06341
10重量%塩酸:和光純薬工業株式会社 コード085−07535
1mol/L塩酸:和光純薬工業株式会社 コード083−01095
10w/v%水酸化ナトリウム溶液:和光純薬工業株式会社 コード191−11555
1mol/L水酸化ナトリウム溶液:和光純薬工業株式会社 コード192−02175
0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液:上記の1mol/L水酸化ナトリウム溶液を蒸留水で5倍に希釈したもの。
0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液:上記の1mol/L水酸化ナトリウム溶液を蒸留水で10倍に希釈したもの。
1mol/L硫酸:和光純薬工業株式会社 コード198−09595
1mol/L塩化ナトリウム水溶液:和光純薬工業株式会社製の塩化ナトリウム(コード191−01665)を蒸留水に溶解して濃度調整したもの。
塩化バナジウム(III):シグマアルドリッチジャパン株式会社 コード208272
L−グルタミン酸:和光純薬工業株式会社 コード074−00505
硫酸アンモニウム:和光純薬工業株式会社 コード019−03435
ペルオキソ二硫酸カリウム:和光純薬工業株式会社 コード169−11891
水酸化ナトリウム−ペルオキソ二硫酸カリウム溶液:日本工業規格 JIS K0102「工場排水試験方法(2008)」の45.2「紫外吸光光度法」、a)試薬、4)の記載に従って調製したもの。ここで用いた水酸化ナトリウムは、和光純薬工業株式会社製の窒素測定用(コード 191−08625)であり、また、ペルオキソ二硫酸カリウムは上記のものである。
亜りん酸水素二ナトリウム五水和物:和光純薬工業株式会社 コード191−02905
次亜りん酸ナトリウム一水和物:和光純薬工業株式会社 コード193−02225
1−プロパノール:和光純薬工業株式会社 コード162−04816
ジメチルスルホキシド(試薬特級):和光純薬工業株式会社 コード043−07216
1−アミノアントラキノン:東京化成工業株式会社 コードA0590
2−ニトロアニリン:東京化成工業株式会社 コードN0118
p−ニトロアニリン:東京化成工業株式会社 コードN0119
4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウム:東京化成工業株式会社 コードA0375
2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン:東京化成工業株式会社 コードA0315
1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム:東京化成工業株式会社 コードA0279
スルファニルアミド(試薬特級):和光純薬工業株式会社 コード191−04502
ナフチルエチレンジアミン(窒素酸化物測定用):和光純薬工業株式会社 コード147−04141
分光光度計:株式会社島津製作所の商品名「UV−1600PC」
【0071】
実施例1
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、4.0、8.0および12.0mg[N]/Lの4種類の亜硝酸イオン溶液を用意した。亜硝酸イオン濃度が0mg[N]/Lの亜硝酸イオン溶液は蒸留水をそのまま用い、また、他の亜硝酸イオン溶液は亜硝酸性窒素標準液を蒸留水で希釈することで亜硝酸イオン濃度を調整した。
【0072】
(検量線の作成)
用意した4種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.5mLに対し、1−アミノアントラキノンの1−プロパノール溶液(濃度0.5g/L)1.0mL、10重量%塩酸1.15mLおよび蒸留水0.5mLを添加し、pHを0.2に設定した。ここで蒸留水を添加したのは、亜硝酸イオン溶液の量を後記する評価において吸光度を測定する検査水試料の量と一致させるためである。この亜硝酸イオン溶液を93℃で10分間加熱した後、反応液の360〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図1に示す。
【0073】
次に、測定した吸光スペクトルから、1−アミノアントラキノンによる発色波長である480nmの吸光度を抽出し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。各濃度の亜硝酸イオン溶液の吸光度を表1に示し、また、表1に基づいて作成した検量線を
図2に示す。表1において、吸光度の変化量は、亜硝酸イオン濃度が0.0mg[N]/Lの亜硝酸イオン溶液の吸光度を基準とした場合の変化量(減少量)である。
図2によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜12.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
(評価)
日本工業規格 JIS K0808 水質監視用全窒素自動計測器(2008)の6.2.4に記載された、L−グルタミン酸および硫酸アンモニウムを窒素換算濃度(mg[N]/L)で同量ずつ含む標準試料原液を調製し、これを希釈することで全窒素濃度が6.0および12.0mg[N]/Lの2種類の検査水試料を用意した。
【0076】
各検査水試料に含まれるL−グルタミン酸および硫酸アンモニウムを日本工業規格 JIS K 0102「工場排水試験方法(2008)」の45.2「紫外吸光光度法」に記載の方法を参照して酸化分解した。より具体的には、同法の「c)操作」の1)〜4)に記載の方法により、水酸化ナトリウム−ペルオキソ二硫酸カリウム溶液を用い、各検査水試料のL−グルタミン酸および硫酸アンモニウムを酸化分解した。但し、加熱条件は、95℃、35分に変更した。
【0077】
次に、酸化分解処理を施した各検査水試料3.0mLに対し、亜りん酸水素二ナトリウム五水和物の10重量%塩酸溶液(水分子を含めた亜りん酸水素二ナトリウム五水和物濃度10g/L)を1.0mL添加し、pHを0.2に設定した。そして、各検査水試料を93℃で10分間加熱した。続いて、各検査水試料に対して検量線の作成において用いたものと同じ1−アミノアントラキノンの1−プロパノール溶液1.0mLと塩化バナジウム(III)の10重量%塩酸溶液(塩化バナジウム(III)濃度10.0g/L)0.15mLとを添加し、pHを0.2に設定した後、各検査水試料を93℃で10分間さらに加熱した。加熱終了後の各検査水試料について、480nmの吸光度を測定し、この吸光度から作成した検量線に基づいて各検査水試料の亜硝酸イオン濃度を判定した。結果を表2に示す。
【0078】
なお、表2のFS誤差は、フルスケール誤差の意味であり、検査水試料の全窒素濃度と検査水試料について判定した亜硝酸イオン濃度との差をレンジ幅(検量線を作成した亜硝酸イオン濃度の幅であり、本実施例では12mg[N]/Lである。)で除した値である。
【0079】
【表2】
【0080】
実施例2
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、2.0、4.0および6.0mg[N]/Lの4種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0081】
(検量線の作成)
用意した4種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.0mLに対し、2−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.3g/L)0.5mL、1mol/L塩酸0.4mLおよび蒸留水0.4mLを添加し、pHを0.9に設定した。ここで蒸留水を添加したのは、亜硝酸イオン溶液の量を後記する評価において吸光度を測定する検査水試料の量と一致させるためである。この亜硝酸イオン溶液を97℃で10分間加熱した後、反応液の315〜515nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図3に示す。
【0082】
次に、測定した吸光スペクトルから、2−ニトロアニリンによる発色波長である415nmの吸光度を抽出し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。各濃度の亜硝酸イオン溶液の吸光度を表3に示し、また、表3に基づいて作成した検量線を
図4に示す。表3に表示した吸光度の変化量は、表1と同様のものである。
図4によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜6.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0083】
【表3】
【0084】
(評価)
全窒素濃度が2.0および6.0mg[N]/Lの2種類の検査水試料を実施例1と同様の方法で用意した。
【0085】
各検査水試料を実施例1と同様の方法で酸化分解処理した。そして、酸化分解処理後の各検査水試料2.4mLに対し、次亜りん酸ナトリウム一水和物の1mol/L塩酸溶液(水分子を含めた次亜りん酸ナトリウム一水和物濃度5.0g/L)を0.2mL添加し、pHを1.1に設定した。そして、各検査水試料を97℃で10分間加熱した。続いて、各検査水試料に対して検量線の作成において用いたものと同じ2−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液0.5mLと塩化バナジウム(III)の1mol/L塩酸溶液(塩化バナジウム(III)濃度10.0g/L)0.2mLとを添加し、pHを0.9に設定した。そして、各検査水試料を97℃で10分間加熱した。加熱終了後の各検査水試料について415nmの吸光度を測定し、この吸光度から作成した検量線に基づいて各検査水試料の亜硝酸イオン濃度を判定した。結果を表4に示す。表4において、FS誤差は実施例1と同様の意味である(但し、レンジ幅は6mg[N]/Lである。)。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例3
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、2.0、4.0および6.0mg[N]/Lの4種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0088】
(検量線の作成)
用意した4種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.0mLに対し、p−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.3g/L)0.4mL、1mol/L塩酸0.3mL、1mol/L硫酸と1mol/L塩化ナトリウム水溶液とを同量ずつ混合した溶媒0.3mLおよび蒸留水0.4mLを添加し、pHを0.8に設定した。ここで、硫酸と塩化ナトリウム水溶液との混合溶媒および蒸留水を添加したのは、亜硝酸イオン溶液の量を後記する評価において吸光度を測定する検査水試料の量と一致させるためである。この亜硝酸イオン溶液を93℃で10分間加熱した後、反応液の280〜480nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図5に示す。
【0089】
次に、測定した吸光スペクトルから、p−ニトロアニリンによる発色波長である380nmの吸光度を抽出し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。各濃度の亜硝酸イオン溶液の吸光度を表5に示し、また、表5に基づいて作成した検量線を
図6に示す。表5に表示した吸光度の変化量は、表1と同様のものである。
図6によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜6.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0090】
【表5】
【0091】
(評価)
全窒素濃度が2.0および6.0mg[N]/Lの2種類の検査水試料を実施例1と同様にして用意した。
【0092】
各検査水試料を実施例1と同様の方法で酸化分解処理した。そして、酸化分解処理後の各検査水試料2.4mLに対し、亜りん酸水素二ナトリウム五水和物溶液(水分子を含めた亜りん酸水素二ナトリウム五水和物濃度30g/L)を0.3mL添加してpHを1.0に設定し、各検査水試料を93℃で10分間加熱した。ここで用いた亜りん酸水素二ナトリウム五水和物溶液は、1mol/L硫酸と1mol/L塩化ナトリウム水溶液とを同量ずつ混合した溶媒に亜りん酸水素二ナトリウム五水和物の所定量を溶解することで調製したものである。続いて、各検査水試料に対して検量線の作成において用いたものと同じp−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液0.4mLと塩化バナジウム(III)の1mol/L塩酸溶液(塩化バナジウム(III)濃度10.0g/L)0.3mLとを添加し、pHを0.8に設定した。そして、各検査水試料を93℃で10分間加熱した後、反応液について380nmの吸光度を測定し、この吸光度から作成した検量線に基づいて各検査水試料の亜硝酸イオン濃度を判定した。結果を表6に示す。表6において、FS誤差は実施例1と同様の意味である(但し、レンジ幅は6mg[N]/Lである。)。
【0093】
【表6】
【0094】
参考例1
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、4.0、8.0および12.0mg[N]/Lの4種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0095】
(検量線の作成)
用意した4種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.5mLに対し、1−アミノアントラキノンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.5g/L)1.0mL、塩化バナジウム(III)の10重量%塩酸溶液(塩化バナジウム(III)濃度10.0g/L)0.15mL、次亜りん酸ナトリウム一水和物の10重量%塩酸溶液(水分子を含めた次亜りん酸ナトリウム一水和物濃度5g/L)1.0mLおよび蒸留水0.5mLを添加し、pHを0.2に設定した。pHが上記のように設定された亜硝酸イオン溶液を95℃で10分間加熱した後、反応液の350〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図7に示す。
【0096】
次に、測定した吸光スペクトルから、1−アミノアントラキノンによる発色波長である480nmの吸光度を抽出し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。各濃度の亜硝酸イオン溶液の吸光度を表7に示し、また、表7に基づいて作成した検量線を
図8に示す。表7に表示した吸光度の変化量は、表1と同様のものである。
図8によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜12.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0097】
【表7】
【0098】
(評価)
全窒素濃度が4.0および12.0mg[N]/Lの2種類の検査水試料を実施例1と同様にして用意した。
【0099】
0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液にペルオキソ二硫酸カリウムを溶解し、ペルオキソ二硫酸カリウム濃度が30g/Lの溶液を調製した。各検査水試料2.5mLに対して調製した溶液を0.5mLずつ添加し、各検査水試料を95℃で60分間加熱した。続いて、検量線の作成において用いたものと同じ1−アミノアントラキノンのジメチルスルホキシド溶液1.0mL、塩化バナジウム(III)の10重量%塩酸溶液0.15mLおよび次亜りん酸ナトリウム一水和物の10重量%塩酸溶液1.0mLを添加し、pHを0.2に設定した。そして、各検査水試料を95℃で10分間加熱した後、反応液について480nmの吸光度を測定し、この吸光度から作成した検量線に基づいて各検査水試料の亜硝酸イオン濃度を判定した。結果を表8に示す。表8において、FS誤差は実施例1と同様の意味である(レンジ幅も実施例1と同じく12mg[N]/Lである。)。
【0100】
【表8】
【0101】
参考例2
[参考例2A]
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0および12.0mg[N]/Lの7種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0102】
(検量線の作成)
用意した7種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.0mLに対して1−アミノアントラキノンの1−プロパノール溶液(濃度0.2g/L)2.0mLを添加し、さらに10重量%塩酸0.5mLを添加してpHを0.6に設定した。この亜硝酸イオン溶液を25℃で15分間放置して反応させた後、反応液の282〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図9に示す。
【0103】
次に、測定した吸光スペクトルから1−アミノアントラキノンによる発色波長である480nmの吸光度を抽出し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。結果を
図10に示す。
図10によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜12.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0104】
[参考例2B]
pHを0.6に調整した亜硝酸イオン溶液を25℃で15分間放置して反応させた後、反応液に10w/v%水酸化ナトリウム溶液0.6mLをさらに加えてpHを12.4に調整してから吸光スペクトルを測定した点を除いて参考例2Aと同様に操作し、検量線を作成した。吸光スペクトルの測定結果を
図11に示し、検量線を
図12に示す。
図12によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜12.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0105】
[参考例2C]
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、2.0、4.0および6.0mg[N]/Lの4種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0106】
(検量線の作成)
用意した4種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.0mLに対して2−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.3g/L)0.5mLを添加し、さらに1mol/L塩酸0.2mLを添加してpHを1.2に設定した。この亜硝酸イオン溶液を25℃で10分間放置して反応させた後、反応液の240〜500nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図13に示す。
【0107】
次に、測定した吸光スペクトルから2−ニトロアニリンによる発色波長である410nmの吸光度を抽出し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。結果を
図14に示す。
図14によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜6.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0108】
[参考例2D]
pHを1.2に調整した亜硝酸イオン溶液を25℃で10分間放置して反応させた後、反応液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液0.4mLをさらに加えてpHを12.7に調整してから吸光スペクトルを測定した点を除いて参考例2Cと同様に操作し、検量線を作成した。吸光スペクトルの測定結果を
図15に示し、検量線を
図16に示す。
図16によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜6.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0109】
[参考例2E]
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、0.5、1.0、1.5および2.0mg[N]/Lの5種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0110】
(検量線の作成)
用意した5種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.0mLに対して4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウムの水溶液(濃度0.6g/L)0.2mLを添加し、さらに1mol/L塩酸0.2mLを添加してpHを1.1に設定した。この亜硝酸イオン溶液を25℃で10分間放置して反応させた後、この反応液について4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウムによる発色波長である370nmの吸光度を測定し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。結果を
図17示す。
図17によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜2.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0111】
[参考例2F]
pHを1.1に調整した亜硝酸イオン溶液を25℃で10分間放置して反応させた後、反応液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液0.4mLをさらに加えてpHを12.9に調整してから4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウムによる発色波長である370nmの吸光度を測定した点を除いて参考例2Eと同様に操作し、検量線を作成した。結果を
図18に示す。
図18によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜2.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0112】
[参考例2G]
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、1.0、2.0、3.0、4.0および5.0mg[N]/Lの6種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0113】
(検量線の作成)
用意した6種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.0mLに対してp−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.33g/L)0.3mLを添加し、さらに1mol/L塩酸0.5mLを添加してpHを0.7に設定した。この亜硝酸イオン溶液を25℃で5分間放置して反応させた後、この反応液についてp−ニトロアニリンによる発色波長である380nmの吸光度を測定し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。結果を
図19に示す。
図19によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜5.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0114】
[参考例2H]
pHを0.7に調整した亜硝酸イオン溶液を25℃で5分間放置して反応させた後、反応液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液0.7mLをさらに加えてpHを12.8に調整してからp−ニトロアニリンによる発色波長である380nmの吸光度を測定した点を除いて参考例2Gと同様に操作し、検量線を作成した。結果を
図20に示す。
図20によると、この検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜5.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0115】
[参考例2I]
(亜硝酸イオン溶液の調製)
亜硝酸イオン濃度が0.0、4.0、8.0、12.0および16.0mg[N]/Lの5種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。
【0116】
(検量線の作成)
用意した5種類の亜硝酸イオン溶液のそれぞれ2.5mLに対して2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.5g/L)1.5mLを添加し、さらに1mol/L塩酸0.2mLを添加してpHを1.3に設定した。この亜硝酸イオン溶液を25℃で5分間放置して反応させた後、この反応液について2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノンによる発色波長である520nmの吸光度を測定し、この吸光度から亜硝酸イオン濃度を判定するための検量線を作成した。結果を
図21に示す。
図21によると、作成した検量線は、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜16.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0117】
[参考例2J]
pHを1.3に調整した亜硝酸イオン溶液を25℃で5分間放置して反応させた後、反応液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液0.5mLをさらに加えてpHを12.8に調整してから2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノンによる発色波長である560nmの吸光度を測定した点を除いて参考例2Iと同様に操作し、検量線を作成した。結果を
図22に示す。
図22によると、作成した検量線は、いずれも、少なくとも亜硝酸イオン濃度が0〜16.0mg[N]/Lの範囲で高い直線性を示している。
【0118】
比較例1
亜硝酸イオン濃度が0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1.0mg[N]/Lの11種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で用意した。そして、各亜硝酸イオン溶液に対して日本工業規格 JIS K 0102、工場排水試験方法(2008)43.1.1(非特許文献1)に規定されたナフチルエチレンジアミン吸光光度法を適用し、540nmの吸光度と亜硝酸イオン濃度との関係を調べた。結果を
図23に示す。
【0119】
図23によると、亜硝酸イオン濃度の定量可能範囲は0〜0.3mg[N]/Lの範囲に止まり、本法で高濃度の亜硝酸イオンを定量することはできないことがわかる。
【0120】
参考例3
[参考例3A]
実施例1と同様にして亜硝酸イオン濃度が12.0mg[N]/Lの亜硝酸イオン溶液を調製した。調製した亜硝酸イオン溶液を3本の試験管A、BおよびCのそれぞれに2.5mLずつ入れ、各試験管の亜硝酸イオン溶液へ1−アミノアントラキノンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.5g/L)1.0mLを加えた。また、10重量%塩酸を0.5mLずつ添加し、pHを0.5に設定した。そして、ブロックヒーターを用いて各試験管を下記の条件で加熱した後、360〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図24に示す。なお、
図24には、試験管Aについて、1−アミノアントラキノンのジメチルスルホキシド溶液を添加直後であって加熱前に同様の吸光スペクトルを測定した結果(ブランク)を併せて示している。
【0121】
試験管A:95℃で10分間
試験管B:95℃で30分間
試験管C:85℃で10分間
【0122】
図24によると、加熱後の試験管A〜Cについての吸光スペクトルは、1−アミノアントラキノンによる発色波長である480nmに近い440〜470nm付近において不一致が生じている(
図24の一点鎖線枠内)。これは、480nm付近を中心として発光波長に幅のある発光ダイオードや同様に感度波長に幅のあるフォトトランジスタを用いて1−アミノアントラキノンによる着色の吸光度を測定しようとする場合、加熱温度や加熱時間の変動により吸光度の測定結果が変動することを意味し、亜硝酸イオンの定量結果が不正確になる可能性があることを示している。
【0123】
[参考例3B]
1−アミノアントラキノンのジメチルスルホキシド溶液を1−アミノアントラキノンの1−プロパノール溶液(濃度0.5g/L)に変更した点を除いて参考例3Aと同様に操作し、360〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図25に示す。なお、
図25には、試験管Aについて、1−アミノアントラキノンの1−プロパノール溶液を添加直後であって加熱前に同様の吸光スペクトルを測定した結果(ブランク)を併せて示している。
【0124】
図25によると、加熱後の試験管A〜Cについての吸光スペクトルは、1−アミノアントラキノンによる発色波長である480nmに近い440〜470nm付近においても略一致している(
図25の一点鎖線枠内)。これは、480nm付近を中心として発光波長に幅のある発光ダイオードや同様に感度波長に幅のあるフォトトランジスタを用いて1−アミノアントラキノンによる着色の吸光度を測定しようとする場合においても、加熱温度や加熱時間の変動により吸光度の測定結果が実質的に変動しないことを意味し、信頼性の高い亜硝酸イオンの定量結果が得られることを示している。
【0125】
[参考例3C]
亜硝酸イオン濃度が0.0、4.0、8.0および12.0mg[N]/Lの4種類の亜硝酸イオン溶液を実施例1と同様の方法で調製した。調製した4種類の亜硝酸イオン溶液2.0mLを個別の試験管に入れ、各試験管を90℃のブロックヒーターに装着した。そして、各試験管へ1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウムの水溶液(濃度1.0g/L)0.8mL、10重量%塩酸水溶液0.5mLおよび蒸留水0.5mLを添加し、pHを0.5に設定した。ブロックヒーターによる亜硝酸イオン溶液の加熱温度を95℃に変更して15分間反応させた後、反応液の360〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図26に示す。
【0126】
図26によると、亜硝酸イオン溶液の濃度が異なることで420〜540nmの範囲での極大吸収波長が変動している。これは、測定された吸光スペクトルにおいて、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウムによる着色の吸光スペクトルと、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウムからジアゾニウム塩を経由して生成したヒドロキシ体(1−ヒドロキシ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム)の吸光スペクトルとが融合した状態で現れているためと考えられる。特に、亜硝酸イオン濃度が高いほど極大吸収波長が低波長側へ移動しているのは、亜硝酸イオン濃度が高いためにヒドロキシ体の生成量が相対的に多くなるためと考えられる。
【0127】
[参考例3D]
蒸留水0.5mLに替えて水分子を含めた次亜りん酸ナトリウム一水和物濃度を10g/Lに設定した次亜りん酸ナトリウム一水和物水溶液0.5mLを試験管へ加えた点を除いて参考例3Cと同様に操作し、反応液の360〜600nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図27に示す。
【0128】
図27によると、亜硝酸イオン濃度が異なる場合であっても、亜硫酸イオン濃度が12.0mg[N]/Lの場合を除いて420〜540nmの範囲での極大吸収波長は略一定している。これは、次亜りん酸ナトリウム一水和物水溶液を用いることで実験例3Cのようなヒドロキシ体の生成が抑制され、1−アミノ−4−ブロモアントラキノン−2−スルホン酸ナトリウムによる着色の吸光スペクトルが安定に得られたためと考えられる。
【0129】
参考例4
[参考例4A]
蒸留水2.5mL対してジアゾ化試薬であるp−ニトロアニリンのジメチルスルホキシド溶液(濃度0.3g/L)0.15mLを添加したジアゾ化試薬水溶液を4つ用意し、このうちの3つのそれぞれに1mol/L塩酸を0.03mL、0.06mLおよび0.09mL添加することで水素イオン濃度を0.011mol/L、0.022mol/Lおよび0.033mol/Lに調整した3種類の溶液を調製した。これらの溶液を25℃で5分間放置した後、290〜480nmの吸光スペクトルを測定した。結果を
図28に示す。
図28には、1mol/L塩酸を添加していないジアゾ化試薬水溶液のみについて同様の吸光スペクトルを測定した結果を併せて示している。
【0130】
[参考例4B]
参考例4Aで用意したものと同様のジアゾ化試薬水溶液を4つ用意し、このうちの3つのそれぞれに1mol/L塩酸に替えて1mol/L水酸化ナトリウム溶液を0.03mL、0.06mLおよび0.09mL添加することでpHを7以上に調整した3種類の溶液を調整した。これらの溶液について、参考例4Aと同様の条件で放置した後に吸光スペクトルを測定した。結果を
図29に示す。
図29には、1mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加していないジアゾ化試薬水溶液のみについて同様の吸光スペクトルを測定した結果を併せて示している。
【0131】
[参考例4C]
参考例4Aと同様にして水素イオン濃度を調整した3種類の溶液を調製し、これらの溶液を25℃で5分間放置した。その後、それぞれの溶液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液0.15mLを添加し、pHをそれぞれ12.6、12.5および12.3に調整した3種類の溶液を調製した。これらの溶液について、参考例4Aと同様に吸光スペクトルを測定した結果を
図30に示す。
図30には、参考例4Aで用意したものと同じジアゾ化試薬水溶液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液0.15mLのみを添加することでpHを12.7に調整した溶液について、同様の吸光スペクトルを測定した結果を併せて示している。
【0132】
[参考例4A〜4Cの説明]
参考例4Aに関する
図28は、吸光スペクトルを測定した溶液の水素イオン濃度が異なることで、ジアゾ化試薬であるp−ニトロアニリンの濃度が同じであっても極大吸収波長の吸光度が異なることを示している。より具体的には、溶液の水素イオン濃度が0.011mol/L増加する毎に、極大吸収波長の吸光度は約5%低下することを示している。これに対し、参考例4Bに関する
図29は、ジアゾ化試薬水溶液に1mol/L水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを7以上に設定すれば、p−ニトロアニリンの濃度が同じ溶液において極大吸収波長の吸光度に大きな変化が生じないことを示している。そして、参考例4Cに関する
図30は、1mol/L塩酸を添加することで水素イオン濃度を高めた溶液は、1mol/L水酸化ナトリウム溶液の添加によりpHを7以上に調整してから吸収スペクトルを測定すると、極大吸収波長の吸光度に殆ど変化が生じないことを示している。
【0133】
以上の結果より、検査水の亜硝酸イオンを定量するときは、ジアゾ化試薬の反応後の検査水のpHを7以上に調整してから吸光度を測定するのが好ましいものと考えられる。
【0134】
参考例5
濃度が6g/Lのペルオキソ二硫酸カリウム水溶液を調製し、これを3本の試験管A、BおよびCのそれぞれに2.5mLずつ取り分けた。試験管Aの水溶液は、1mol/L硫酸を1.0mL添加することでpHを1に調整した。試験管Bの水溶液は、蒸留水を1.0mL添加することでpHを7に調整した。試験管Cの水溶液は、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を1.0mL添加することでpHを12に調整した。このようにpH調整された各試験管の水溶液について、220nmの吸光度(吸光度A)を測定した。
【0135】
次に、各試験管を90℃のブロックヒータに差し込んで所定時間加熱した後に急冷し、220nmの吸光度(B)を測定した。そして、下記の式により、加熱下でのペルオキソ二硫酸カリウムの自己分解率を算出した。加熱時間と自己分解率との関係を調べた結果を
図31に示す。
【0136】
【数1】
【0137】
図31によると、ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液は、ハロゲン化物イオンが存在しない環境下であっても、pHを酸性域に調整した場合に短時間でペルオキソ二硫酸カリウムが自己分解することがわかる。