【発明が解決しようとする課題】
【0011】
連結ねじを歯科用インプラントに固定するときの1つの困難性は、歯科支台または歯冠におけるボアの長手軸線が、内ねじまたは歯科用インプラントの長手軸線の延長上に正確に位置しないことである。その代わりに、これらの長手軸線は、互いに対してある角度で配置される。歯科支台又は歯冠内のボアが角度付けられていると、同様の状態が起こる。ボアのこのような実施形態の結果として、ボアの放出開口は、外側からは通常見えないように歯冠内に配置される。すなわち、放出開口は、歯冠の舌側または口蓋側に配置することができる。しかし、この放出開口は、特別の患者の以前の解剖学的状態により、角度付けられたボアまたは歯冠内のボア、および互いに対してある角度で配置されるインプラントのキャビティ内のボアに対して必要となるであろう。
【0012】
両方の場合、歯科支台または歯冠のボアを通って、歯科インプラントの内ねじの中に連結ねじを挿入することが難しいばかりでなく、回転工具の助けにより連結ねじを固着させることが特に難しい。このような回転工具は、ボアを通り連結ねじ上の係合手段との係合を生じさせるばかりでなく、連結ねじと協働して、信頼性のある固定を与える十分なトルクが伝達されるようにしなければならない。
【0013】
この目的のために、ねじ上の係合手段、及び回転工具上のカウンター手段は、できるだけ正確に互いに合致しなければならない。その結果、回転工具は、ほとんど遊びがなく、係合手段が損傷されない。
【0014】
それゆえ、本発明の目的は、回転工具を挿入可能とし、また、たとえ、歯科支台又は歯冠のボア内の長手軸線と歯科インプラントの内側ねじの長手軸線がある角度を形成して配置されていようとも、特に、互いに対して鋭角で、またはボアが角度付けられている場合、すなわち、回転工具がねじの中央長手軸線の延長線上の連結ねじの中に挿入することができない場合でも、連結ねじを締結させることである。
【0015】
同様の目的は、例えば、国際特許出願公開明細書第2008/024062号によって達成され、この明細書では、歯冠が角度付けられたキャビティを有している。
特定のドライバーは、屈曲性のシャフトを有し、歯冠をインプラントに安全に螺合するのに用いられる。このシャフトは、例えば、相互連結された複数のワイヤ、または、例えば、複数のワイヤにより取り囲まれたプラスチック又はポリマーで作られるフレキシブルコアによって形成される。国際特許出願公開明細書第2008/024062号に開示されているこのドライバーは、シャフトの領域内で屈曲でき、また、歯冠内の角度付けられたキャビティに適合することができる。
【0016】
また、国際特許出願公開明細書第2008/116834号は、角度付けられたキャビティ内にねじを締結することを可能にする特定のドライバーを開示する。このドライバーは、軸方向断面に見て丸くなり、半径方向断面に見て多角形のチップを有する。さらに、この多角形は、連結ねじへのトルク伝達を改善するように、少なくとも2つの異なる長さの側面を有する。そして、この連結ねじは、対応する形状の係合くぼみを有しており、国際特許出願公開明細書第2008/116834号に従って、ドライバーが、このくぼみに導かれる。
【0017】
従来技術では、上記目的は、特定の形状をしたドライバーを用いることによって達成されるので、したがって、このねじは、適合されることが必要であろう。
【0018】
本発明は、さらに、回転工具の長手軸線が連結ねじの長手軸線に一致しないとき、トルクを歯科インプラントのための連結ねじに伝達可能にする、より単純な解法を提供するものである。特に、商業的に利用可能な回転工具の使用が可能になるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、請求項1に従う連結ねじの構成によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0020】
本発明に従う歯科用インプラントのための連結ねじは、下部ねじ端を有するシャフト部分と、前記下部ねじ端の反対側に位置する上部ねじ端を有するヘッド部分を含む。前記2つの部分は、連結ねじの中央長手軸線Cに沿って配置されている。シャフト部分は、一般的に円筒形状または円錐形状で、歯科用インプラントに連結するための外ねじを有する。ヘッド部分は、一般的に、同様に円筒形状または円錐形状で、上部ねじ端に向けて開口する盲穴形状の凹部を有し、かつ、この凹部内に回転工具のための係合手段が一体に形成されている。回転工具は、この係合手段に着脱可能に連結することができ、その結果、回転工具から係合手段に、それゆえ、連結ねじにトルクを伝達することができる。
【0021】
盲穴形状の凹部は、係合手段の下方に下部ねじ端に向けて半径方向に広がっており、そのためアンダーカットを形成する。
【0022】
係合手段は、半径方向内向きに向かいかつ周回りに均一に分配され、それぞれ内側頂点を備える複数の係合突起と、それぞれ2つの隣接する係合突起の間の中央にあって半径方向外向きに向かいかつ各々外側頂点を備える係合くぼみとを有する。
【0023】
直径方向に対向する2つの外側頂点は、それぞれ、互いから第1距離Aに配置され、かつ、直径方向に対向する2つの内側頂点は、それぞれ、互いから第2距離Bに配置される。第1距離Aの第2距離Bに対する比率A:Bは、好ましくは、1.4以上である。
【0024】
少なくとも1つの駆動表面は、下部ねじ端の方向に半径方向内向きに降下する上部端面によって形成され、かつ、アンダーカットから上部ねじ端に半径方向内向きに上昇する下部アンダーカット面によって形成されており、複数の係合突起及び係合くぼみ上に伸びている。上部境界線は、上記上部端面と少なくとも1つの駆動表面との間を通り、かつ、下部境界線は、アンダーカット面と少なくとも1つの駆動表面との間を通っている。
【0025】
上部境界線及び下部境界線は、係合くぼみの外側頂点の領域において、互いから外側距離Daだけ距離を置いて配置される。
【0026】
本発明に従う連結ねじは、係合突起の内側頂点における上部境界線及び下部境界線の間の内側距離Diと外側距離Daとの比率Di:Daが、0.5より小さい。
【0027】
係合手段の本発明に従う実施形態による、回転工具は、ある角度、即ち、連結ねじの長手軸線Cと回転工具の回転軸線Dが、互いに対して角度γで配置されているときの角度で、ねじの係合手段に挿入することができる。この角度を定義付けるための
図1(a)(b)の記述を参照すると、これらの記述が以下に与えられており、すべての応用に適合することができる。
【0028】
この角度γは、一般的に鋭角であり、20°まで、好ましくは、30°までとすることができる。しかしながら、同時に、回転工具から連結ねじへのトルクの伝達は、正常に機能する。その結果、十分なトルクを伝達することができ、これにより、連結ねじの確実な固定が行われる。特に、35Nmまでのトルクは、困難なく、連結ねじが損傷されることなく、あるいはその反対に、正常に機能して伝達することができる。インプラント、歯科支台、歯冠及びねじの形状及び形式に従って、概略15〜35Nmのトルクが、一般的に伝達される。
【0029】
本発明に従う連結ねじの重要な利点は、商業的に利用可能な回転工具が、連結ねじをねじ込むのに使用することができることにある。その結果、特に設計されまたは修正された回転工具を用いる必要がない。
【0030】
係合くぼみの外側頂点は、例えば、標準の内側トルクスまたは標準の内側六角形を有しているような頂点ラインである。この頂点ラインは、連結ねじの中央長手軸線Cに、少なくともほぼ平行に走り、かつそれぞれ同一高さで、半径方向に測定して、中央長手軸線Cから同一の距離に配置されている。
【0031】
上部境界線および下部境界線は、係合突起の内側頂点の領域において互いにより密接して配置されている。内側頂点の領域における内側距離Diは、外側頂点の領域における外側距離Daよりも小さく、2つの境界線は、互いに外側頂点から内側頂点に向かって進む。
【0032】
盲穴形状の凹部が係合手段の下側に広がり、アンダーカットを形成するので、回転工具のチップは、盲穴形状の凹部の下部領域内で外向きに突出することができる。即ち、連結ねじの中央長手軸線Cから遠くに離れる。上述の特定した比率Di:Daとともに、回転工具の長手軸線Dが連結ねじの長手軸線Cに対して角度を有することを可能にし、その過程において、トルクの伝達を損なうことがない。特に、回転工具と連結ねじは、実質的に放射状に配列される十分に大きな接触面積を有する。
【0033】
好ましい実施形態では、比率Di:Daは、0.3より小さく、好ましくは、0.2よりも小さく、さらに好ましくは0.1よりも小さい。その結果、比率Di:Daは、内側距離Diがより小さい場合、即ち、上部境界線及び下部境界線が、内側頂点の領域において互いにより密接に配置される場合、本質的により小さくなる。
上部境界線及び下部境界線が、内側頂点の領域において互いに向かう方向に進むことによって、即ち、内側距離Diを減少させることによって、回転工具が係合手段に挿入され、そして、所望のトルクを伝達できる角度γがより大きくなる。
【0034】
好ましい実施形態に従って、上部境界線及び下部境界線は、互いに少なくともほぼ接触するが、係合突起の内側頂点の領域において、実際に互いに接触していないことが好ましい。このことは、上部境界線及び下部境界線が、周回り方向に走り、これらの境界線が周方向における内側頂点に接近し、好ましくは互いに接触するときに、互いに向かい合うように進むことを意味する。即ち、この内側頂点では、両境界線が一致し、そうすることにより、最高点が形成される。その結果、係合突起は、ピラミッド型のチップ形状を有する。
【0035】
それゆえ、複数の係合突起の各内側頂点は、少なくともほぼ尖頭となり、各尖頭は、好ましくは、最高点となる。これらの最高点は全て、連結ねじの中央長手軸線Cに垂直な平面にあり、かつ、この平面から測定するとき、連結ねじの中央長手軸線Cから等距離にある。すべての最高点は、連結ねじの中央長手軸線に垂直な平面にある円形上に位置し、その中間点は、連結ねじの中央長手軸線C上にある。
【0036】
代わりに、上部境界線及び下部境界線が、内側頂点の領域において互いにほぼ接触状態であることは可能である。即ち、比率Di:Daは、実際小さくなるが、ゼロよりは大きい(>0. )この場合、2つの境界線の間の距離は、両境界線が円周方向における内側頂点に接近する場合、次第に減少する。しかし、上部境界線及び下部境界線は、実際、互いに接触することはない。
【0037】
上部境界線及び下部境界線の間の内側距離Diは、好ましくは、0.1mmより小さく、さらに好ましくは、0.05mmよりも小さい。
外側距離Daは、一般的に0.3mm〜0.8mmの間であり、好ましくは、0.3mm〜0.6mmの間、そして特別には、0.4mmである。
【0038】
好ましい実施形態において、上部境界線及び下部境界線の間の連結ラインは、湾曲しており、即ち、連結ねじの中央長手軸線Cに向かう内側頂点で丸くなっている。これは、ある角度での回転工具の挿入を単純化する。境界線の湾曲は完全に等しくなり、その結果、境界線は、円形部分を形成するか、あるいは曲率が下部境界線の方向に増加または減少する。ここでは、好ましくは減少する。このような湾曲した連結ラインの半径は、例えば、ほぼ0.1mmである。
【0039】
好ましい実施形態において、比率A:Bは、1.4よりも大きく、特別には、1.45より大きいが、1.55よりも大きくならないことが望ましい。そして、より好ましくは、概略1.5である。この場合、また、より大きなA:Bの比率は、より大きな角度γとなり、連結ねじの係合手段と回転工具との間の接触面積が十分大きいことになる。
【0040】
第1距離Aは、好ましくは1.8mm〜2.0mm、特別には、1.9mmである。第2距離Bは、好ましくは1.2mm〜1.4mm、特別には、1.3mmである。本発明に従う連結ねじの係合手段は、好ましくは、複数の係合突起と係合くぼみがそれぞれ、3〜8個を有している。
【0041】
好ましい実施形態において、係合手段は6個の係合突起と、6個の係合くぼみを有する。これらは、周回りに配置され、好ましくは、丸くなっている。本発明に従う連結ねじは、それゆえ、特に好ましくは、ヘックスローブ形の内側駆動形状と呼ばれる、修正された内側トルクスの形状の係合手段を有する。本発明に従う連結ねじは、対応する商業的に利用可能な回転工具を用いて、ねじ止めすることができることが重要である。これに関して、基準は、上述したISO規格10664を採用した欧州規格及びドイツ規格で作られる。6個の係合突起と6個の係合くぼみに関して、各2つの隣接する外側頂点の各々の間の角度は、60°であり、それゆえ、外側頂点は、等辺六角形を形成する。同時に、2つの隣接する内側頂点の間の角度にも適用され、ここで、内側頂点は、同様に等辺六角形を形成する。
【0042】
好ましい実施形態において、盲穴形状の凹部は、付加的に内ねじを有する。このような内ねじは、歯科支台又は他の義歯要素に連結するのに用いられる。この内ねじは、好ましくは、係合手段及びアンダーカットの下側に、即ち、下部ねじ端により接近して配置される。
【0043】
好ましい実施形態において、盲穴形状の凹部は、付加的に内側六角形、特に、上述した係合手段の下側に配置される、ISO規格10664を採用した欧州規格及びドイツ規格に従う内側六角形を有する。このような連結ねじを用いて、回転工具は、前記連結ねじの中央長手軸線Cの延長部分と角度γで、連結ねじに着脱可能に結合することができる。その結果、トルクを伝達することができる。回転工具は、直線上に挿入されるべきであり、即ち、中央長手軸線Cの延長線上で挿入され、下部内側六角形に結合される。対照的に、回転工具が、角度γで挿入されると、上部係合手段と協働することになる。本発明に従う連結ねじは、こうして、多目的に使用することができる。
【0044】
好ましい実施形態では、シャフト部分は、1.0mm〜2.2mm、特別には、1.6mmの外径を有する。好ましい実施形態では、ヘッド部分は、1.5mm〜3.5mm、特別には、2.5mmの外径を有する。
【0045】
好ましい実施形態では、このシャフト部分は、5.0mm〜10.0mmの長さ、特別には、7.0mmの長さを有する。好ましい実施形態では、このヘッド部分は、0.8mm〜1.6mmの長さ、特別には、1.2mmの長さを有する。
【0046】
ねじ部分の外径及び長さの上記寸法は、一般的に歯科用インプラントシステムと知られ、現在用いられている、連結ねじの外径及び長さに対応する。この連結ねじの利用に従い、もちろん、より大きいまたはより小さい外径及び長さを選択することが可能である。
【0047】
好ましい実施形態において、連結ねじは、金属またはセラミック、特に、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、または、酸化ジルコニウムから成っている。これらの材料は、特に適しており、かつ、歯科用インプラントの分野の利用に対して十分安定性を示しているので、困難なく所望の形状を生じさせることができる。さらに、これらの材料で作られる連結ねじは、容易に洗浄かつ殺菌することができ、感染及び他の望ましくない影響を防止するために、インプラント学における応用にとって重要である。
【0048】
本発明に従う連結ねじは、好ましくは、一部品で形成される。これは、ねじの洗浄及び殺菌を容易にする。
【0049】
好ましい実施形態において、アンダーカット面の面法線は、連結ねじの長手方向Cに対して、20°〜60°、好ましくは、30°〜50°の角度αを有する。この角度αを定める
図4及び
図5の記述について申し述べると、以下にさらなる記載が与えられており、全体の利用に対して適合可能である。アンダーカット面が比較的急こう配な実施形態であるために、回転工具を連結ねじの中に挿入することが容易である。
【0050】
好ましい実施形態において、たとえ、連結ねじの長手軸線とドライバーの長手軸線が互いに鋭角で配置されていても、商業的に利用可能なドライバーは、本発明に従う連結ねじの係合手段に挿入することができる。特に、このドライバーは、連結ねじの長手軸線に対して、15°までの角度γ、好ましくは、20°までの角度γ、好ましくは、30°までの角度γで、係合手段に挿入することができる。これは、難しい場合でも、トラブルなく挿入を可能にする。
【0051】
好ましい実施形態において、ヘッド部分は、少なくとも実質的に円形の外形状を有し、この外径は、シャフト部分よりも大きく、環状の肩部表面は、ヘッド部分の間を走っている。この実施形態の結果として、連結ねじは、定められた深さまで歯科用インプラントを挿入することができる。特に、肩部表面が歯科支台の対応するカウンター表面に置かれるまで、そして、歯科用インプラントと歯科支台を確実に相互連結することができる。
【0052】
環状の肩部表面の面法線が、連結ねじの長手軸線Cに対して、0°〜45°、特に、概略30°の角度βを有する場合、特に好ましい。この角度βを定める
図4及び
図5の記述について申し述べると、以下にさらなる記載が与えられており、全体の利用に対して適合可能である。
【0053】
本発明に従う連結ねじは、個別にまたは、さらに同様の連結ねじおよび/または適当な回転工具を含むセットの一部として購入することができる。代わりに、連結ねじを、歯科用インプラントおよび/または歯科支台と組み合わせることが可能である。さらに、このセット内の多数の個別構成部品は、もちろん所望であれば、変更することができる。
【0054】
本発明に従う連結ねじの好ましい3つの実施形態は、以下の図面に基づいて、より詳細に単に概略的に記載されるであろう。