(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668947
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータ駆動制御方法及びそれを用いたモータ
(51)【国際特許分類】
H02P 6/18 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
H02P6/02 371S
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-30377(P2013-30377)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-117134(P2014-117134A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2013年2月20日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0140923
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コー、ジョー ユル
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−084778(JP,A)
【文献】
特開2009−100120(JP,A)
【文献】
特開2004−356118(JP,A)
【文献】
特開2009−027907(JP,A)
【文献】
特開2009−055759(JP,A)
【文献】
特開2011−120421(JP,A)
【文献】
特開2009−148074(JP,A)
【文献】
特開2007−024524(JP,A)
【文献】
特開2005−285245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較器を用いてモータ装置から発生する逆起電力を検出する逆起電力検出部と、
前記比較器の第1入力端に入力される、一定の勾配を有する線形の基準電圧が、前記比較器の第2入力端に入力される、既に設定された値を維持する参照電圧を超える時点を利用して前記比較器のオフセット遅延の時間を算出し、前記第1入力端または前記第2入力端のうち少なくとも一つに適用される可変抵抗値を調整することで前記オフセット遅延を補正するオフセット補正部と、
前記オフセット補正部によりオフセット遅延が補正された逆起電力を用いて前記モータ装置の駆動を制御する制御部と、を含む、モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記オフセット補正部は、前記基準電圧を生成する基準電圧生成器を含む、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記オフセット補正部は、
前記基準電圧を生成する基準電圧生成器と、
時間に対する前記比較器の出力変化を用いて前記比較器のオフセット遅延を検出するオフセット制御器と、を含む、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記オフセット補正部は、前記比較器の入力端と連結される可変抵抗器をさらに含み、
前記オフセット制御器は、検出された前記オフセット遅延に応じて前記可変抵抗器の抵抗値を変更させる、請求項3に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記可変抵抗器は、
第1入力端と連結される第1可変抵抗器と、
第2入力端と連結される第2可変抵抗器と、のうち少なくとも一つを含む、請求項4に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記オフセット補正部は、前記基準電圧または前記モータ装置の相電圧のうち何れか一つが前記第1入力端に入力されるようにスイッチングするスイッチ器をさらに含み、
前記オフセット制御器は、前記オフセット遅延の補正が完了すると、前記相電圧が前記第1入力端に入力されるように前記スイッチ器を制御する、請求項3から5の何れか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
駆動制御信号に応じて回転動作を行うモータ装置と、
前記モータ装置から発生する逆起電力を検出するための比較器のオフセット遅延を補正し、前記オフセット遅延が補正された比較器から出力された前記逆起電力を用いて前記駆動制御信号を生成するモータ駆動制御装置と、を含み、
前記モータ駆動制御装置は、前記比較器の第1入力端に入力される、一定の勾配を有する線形の基準電圧が前記比較器の第2入力端に入力される、既に設定された値を維持する参照電圧を超える時点を利用して前記比較器のオフセット遅延の時間を算出し、前記第1入力端または前記第2入力端のうち少なくとも一つに適用される可変抵抗値を調整することで前記オフセット遅延を補正する、モータ。
【請求項8】
前記モータ駆動制御装置は、
前記比較器を用いて前記モータ装置から発生する逆起電力を検出する逆起電力検出部と、
前記第1入力端に入力される前記基準電圧が前記第2入力端に入力される前記参照電圧を超える時点を利用して前記オフセット遅延の時間を算出し、前記第1入力端または前記第2入力端のうち少なくとも一つに適用される可変抵抗値を調整することで前記オフセット遅延を補正するオフセット補正部と、
前記オフセット補正部によりオフセット遅延が補正された逆起電力を用いて前記モータ装置の駆動を制御する制御部と、を含む、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記オフセット補正部は、
前記基準電圧を生成して前記比較器に提供する基準電圧生成器と、
時間に対する前記比較器の出力変化を用いて前記比較器のオフセット遅延を検出するオフセット制御器と、を含む、請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記オフセット補正部は、前記比較器の入力端と連結される可変抵抗器をさらに含み、
前記オフセット制御器は、検出された前記オフセット遅延に応じて前記可変抵抗器の抵抗値を変更させる、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
前記オフセット補正部は、前記基準電圧または前記モータ装置の相電圧のうち何れか一つが前記比較器に入力されるようにスイッチングするスイッチ器をさらに含み、
前記オフセット制御器は、前記オフセット遅延の補正が完了すると、前記相電圧が比較器に入力されるように前記スイッチ器を制御する、請求項9または10に記載のモータ。
【請求項12】
モータ装置の駆動を制御するモータ駆動制御装置により行われるモータ駆動制御方法であって、
一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成する段階と、
前記基準電圧を第1入力端で受信し、既に設定された値を維持する参照電圧を第2入力端で受信する比較器の出力を用いることで、前記基準電圧が前記参照電圧を超える時点を利用して前記比較器のオフセット遅延の時間を算出する段階と、
前記オフセット遅延が存在すると、前記第1入力端または前記第2入力端のうち少なくとも一つに適用される可変抵抗値を調整することで前記比較器の前記オフセット遅延を補正する段階と、を含む、モータ駆動制御方法。
【請求項13】
前記遅延が補正された比較器から前記モータ装置に対する逆起電力を検出し、検出された逆起電力を用いて前記モータ装置の駆動制御信号を生成する段階をさらに含む、請求項12に記載のモータ駆動制御方法。
【請求項14】
前記オフセット遅延を判断する段階は、
前記参照電圧及び前記基準電圧を受信する比較器の出力を検出する段階と、
所定の単位基準時間に対する前記出力の変化を用いて前記オフセット遅延を判断する段階と、を含む、請求項12または13に記載のモータ駆動制御方法。
【請求項15】
前記基準電圧は、既に設定された第1電圧まで一定の勾配を有して増加する電圧であり、
前記参照電圧は、前記第1電圧の1/2に該当する、請求項12〜14の何れか1項に記載のモータ駆動制御方法。
【請求項16】
前記出力の変化を用いて前記オフセット遅延を判断する段階は、
前記比較器の出力値が変更される第1時点と前記基準電圧が前記第1電圧に至る第2時点とを比較する段階と、
前記第1時点が前記第2時点の1/2値に該当しないと、前記オフセット遅延が存在すると判断する段階と、を含む、請求項15に記載のモータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータ駆動制御方法及びそれを用いたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ技術の発展に伴い、幅広い技術分野において多様な大きさを有するモータが用いられている。
【0003】
一般に、モータは、永久磁石と印加電流に応じて極性を変えるコイルとを用いて回転子(Rotor)を回転させて駆動する。最初のモータ形態は、回転子にコイルが備えられたブラシタイプのモータであったが、モータの駆動によってブラシが磨耗したり、スパークが発生するなどの問題点があった。
【0004】
これにより、最近は、多様な形態のブラシレスモータが広く用いられている。ブラシレスモータは、ブラシや整流子などの機械的な接触部を除去し、その代わりに電子的な整流器具を用いて駆動する直流モータであり、永久磁石からなる固定子(stator)と、複数の相に対応するコイルを備え、各コイルの相電圧により発生する磁気力によって回転する回転子と、を含むことができる。
【0005】
このようなブラシレスモータが効率的に駆動するためには、固定子の各コイルの転流(commutation)が適切な時点で行われなければならず、適切な転流のためには回転子の位置を認識することが必要である。
【0006】
回転子の位置を検出するために、従来はホールセンサまたはリゾルバなどの素子を用いていたが、この場合、駆動回路が複雑となる限界がある。
【0007】
これを補完するために、センサに代えて逆起電力(BEMF、Back-Electro Motive Force)を用いて相の位置を把握してブラシレスモータを駆動する技術が広く用いられている。
【0008】
従来の逆起電力を検出する回路は、比較器を必須的に用いる。即ち、逆起電力を検出する回路には、相電圧と中性点電圧を比較するための比較器が必須的に用いられる。
【0009】
しかし、このような比較器は製作工程上の影響などによってオフセット遅延を有する。また、このようなオフセット遅延は、一定に発生するのでなく、各比較器ごとに異なるように決定される。
【0010】
そのため、従来のモータ制御方式は、このような比較器によるオフセット遅延を補正することができないという限界があった。
【0011】
下記先行技術文献は上記のようなモータに関するものであるが、上述の問題点を解決できないという限界を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許公報 第2007ー0079857号
【特許文献2】韓国公開特許公報 第2006ー0089482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためのものであって、一定の勾配を有する基準電圧を用いて比較器のオフセット遅延を検出し、それを能動的に補正することにより、オフセット遅延が補正された逆起電力を用いてモータ装置をより正確に制御することができるモータ駆動制御装置、モータ駆動制御方法及びそれを用いたモータを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1技術的な側面によると、モータ駆動制御装置が提案される。上記モータ駆動制御装置は、逆起電力検出部と、オフセット補正部と、制御部と、を含む。上記逆起電力検出部は、モータ装置から発生する逆起電力を検出する。上記オフセット補正部は、上記逆起電力検出部にオフセット遅延が存在するか否かを判断し、上記オフセット遅延が存在すると、それを補正する。上記制御部は、上記オフセット補正部によりオフセット遅延が補正された逆起電力を用いて上記モータ装置の駆動を制御する。
【0015】
一実施形態において、上記逆起電力検出部は、第1信号及び第2信号を受信し、上記第1及び第2信号を比較して出力する比較器を含むことができる。
【0016】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、上記比較器により発生するオフセット遅延を補正することができる。
【0017】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成して上記第1信号として提供する基準電圧生成器を含むことができ、上記第2信号は、既に設定された値を維持する参照電圧であることができる。
【0018】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、基準電圧生成器と、オフセット制御器と、を含むことができる。上記基準電圧生成器は、一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成して上記第1信号として提供することができる。上記オフセット制御器は、時間に対する上記比較器の出力変化を用いて上記比較器のオフセット遅延を検出することができる。
【0019】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、上記比較器の入力端と連結される可変抵抗器をさらに含むことができ、上記オフセット制御器は、検出された上記オフセット遅延に応じて上記可変抵抗器の抵抗値を変更させることができる。
【0020】
一実施形態において、上記可変抵抗器は、上記第1信号が入力される第1入力端と連結される第1可変抵抗器と、上記第2信号が入力される第2入力端と連結される第2可変抵抗器と、のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0021】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、上記基準電圧または上記モータ装置の相電圧のうち何れか一つが上記第1信号として入力されるようにスイッチングするスイッチ器をさらに含むことができ、上記オフセット制御器は、上記オフセット遅延の補正が完了すると、上記相電圧が上記第1信号として入力されるように上記スイッチ器を制御することができる。
【0022】
本発明の第2技術的な側面によると、モータが提案される。上記モータは、モータ装置と、モータ駆動制御装置と、を含む。上記モータ装置は、駆動制御信号に応じて回転動作を行う。上記モータ駆動制御装置は、上記モータ装置から発生する逆起電力を検出するための比較器のオフセット遅延を補正し、上記オフセット遅延が補正された比較器から出力された上記逆起電力を用いて上記駆動制御信号を生成することができる。
【0023】
一実施形態において、上記モータ駆動制御装置は、逆起電力検出部と、オフセット補正部と、制御部と、を含むことができる。上記逆起電力検出部は、上記比較器を用いて上記モータ装置から発生する逆起電力を検出することができる。上記オフセット補正部は、上記比較器のオフセット遅延を算出し、上記オフセット遅延が存在すると、それを補正することができる。上記制御部は、上記オフセット補正部によりオフセット遅延が補正された逆起電力を用いて上記モータ装置の駆動を制御することができる。
【0024】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、基準電圧生成器と、オフセット制御器と、を含むことができる。上記基準電圧生成器は、一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成して上記比較器に提供することができる。上記オフセット制御器は、時間に対する上記比較器の出力変化を用いて上記比較器のオフセット遅延を検出することができる。
【0025】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、上記比較器の入力端と連結される可変抵抗器をさらに含むことができ、上記オフセット制御器は、検出された上記オフセット遅延に応じて上記可変抵抗器の抵抗値を変更させることができる。
【0026】
一実施形態において、上記オフセット補正部は、上記基準電圧または上記モータ装置の相電圧のうち何れか一つが上記比較器に入力されるようにスイッチングするスイッチ器をさらに含むことができ、上記オフセット制御器は、上記オフセット遅延の補正が完了すると、上記相電圧が比較器に入力されるように上記スイッチ器を制御することができる。
【0027】
本発明の第3技術的な側面によると、モータ駆動制御方法が提案される。上記モータ駆動制御方法は、モータ装置の駆動を制御するモータ駆動制御装置により行われる。上記モータ駆動制御方法は、一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成する段階と、既に設定された値を維持する参照電圧及び上記基準電圧を受信する比較器の出力を用いて上記比較器のオフセット遅延を判断する段階と、上記オフセット遅延が存在すると、上記比較器の上記オフセット遅延を補正する段階と、を含む。
【0028】
一実施形態において、上記モータ駆動制御方法は、上記遅延が補正された比較器から上記モータ装置に対する逆起電力を検出し、検出された逆起電力を用いて上記モータ装置の駆動制御信号を生成する段階をさらに含むことができる。
【0029】
一実施形態において、上記オフセット遅延を判断する段階は、既に設定された値を維持する参照電圧及び上記基準電圧を受信する比較器の出力を検出する段階と、所定の単位基準時間に対する上記出力の変化を用いて上記オフセット遅延を判断する段階と、を含むことができる。
【0030】
一実施形態において、上記基準電圧は、既に設定された第1電圧まで一定の勾配を有して増加する電圧であり、上記参照電圧は、上記第1電圧の1/2に該当することができる。
【0031】
一実施形態において、上記出力の変化を用いて上記オフセット遅延を判断する段階は、上記比較器の出力値が変更される第1時点と上記基準電圧が上記第1電圧に至る第2時点とを比較する段階と、上記第1時点が上記第2時点の1/2値に該当しないと、上記オフセット遅延が存在すると判断する段階と、を含むことができる。
【0032】
一実施形態において、上記オフセット遅延を補正する段階は、上記比較器の入力端に連結された可変抵抗の抵抗値を変更することで、上記オフセット遅延を補正する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一実施形態によると、一定の勾配を有する基準電圧を用いて比較器のオフセット遅延を検出し、それを能動的に補正することにより、オフセット遅延が補正された逆起電力を用いてモータ装置をより正確に制御することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】モータ駆動制御装置の一例を説明するための構成図である。
【
図2】
図1の逆起電力検出部の一例を説明するための概略的な回路図である。
【
図3】本発明によるモータ駆動制御装置の一実施形態を説明するための構成図である。
【
図4】
図3のオフセット補正部の一実施形態を説明するための細部構成図である。
【
図5】
図3のオフセット補正部によるオフセット補正を説明するための参照グラフである。
【
図6】
図3のオフセット補正部によるオフセット補正を説明するための参照グラフである。
【
図7】本発明によるモータ制御方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。なお、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0036】
以下では、説明の便宜上、ブラシレスモータを基準として本発明を説明する。しかし、これは説明の便宜のためのものであるため、本発明の権利範囲が必ずしもブラシレスモータに限定されないということは明確である。
【0037】
また、以下では、モータそのものはモータ装置20、200と称し、モータ装置20、200を駆動させるためのモータ駆動制御装置10、100とモータ装置20、200とを含んでモータと称して説明する。
【0038】
図1はモータ駆動制御装置の一例を説明するための構成図であり、
図2は
図1の逆起電力検出部の一例を説明するための概略的な回路図である。
【0039】
図1及び
図2を参照すると、モータ駆動制御装置10は、電源供給部11と、駆動信号生成部12と、インバータ部13と、逆起電力検出部14と、制御部15と、を含むことができる。
【0040】
電源供給部11は、モータ駆動制御装置10の各構成要素に電源を供給することができる。例えば、電源供給部11は、商用電源の交流電圧を直流電圧に変換して各構成要素に供給することができる。図示された例において、点線で示された部分は、電源供給部11から所定の電源が供給されることを意味する。
【0041】
駆動信号生成部12は、インバータ部13に駆動制御信号を提供することができる。
【0042】
一実施形態において、駆動制御信号はパルス幅変調信号(PWM、Pulse Width Modulation)であることができる。この場合、駆動信号生成部12は、所定の基準波形(例えば、三角波)に可変的な直流レベルを適用することで、パルス幅変調信号のデューティを調節することができる。
【0043】
インバータ部13は、モータ装置20が動作するようにすることができる。例えば、インバータ部13は、駆動制御信号に応じて直流電圧を複数の相(例えば、3相または4相)電圧に変換してモータ装置20のコイル(上記複数の相に対応)にそれぞれ印加することにより、モータ装置20の回転子が動作するようにすることができる。
【0044】
逆起電力検出部14は、モータ装置20の逆起電力を検出することができる。モータ装置20が回転する場合、回転子に備えられたコイルで逆起電力が発生する。より詳細に説明すると、複数のコイルのうち相電圧が印加されていないコイルで逆起電力が発生し、逆起電力検出部14は、このようにモータ装置20の各コイルで発生する逆起電力を検出して制御部15に提供することができる。
【0045】
制御部15は、逆起電力検出部14から提供される逆起電力を用いることで、駆動制御信号を生成するように駆動信号生成部12を制御することができる。例えば、制御部15は、逆起電力のゼロクロス(Zero−Crossing)時点に相転換が行われるように駆動信号生成部12を制御することができる。
【0046】
モータ装置20は、駆動制御信号に応じて回転動作を行うことができる。例えば、インバータ部13から提供される駆動電流により、モータ装置20の各コイルに磁場を発生させることができる。このようなコイルで発生する磁場により、モータ装置20に備えられた回転子が回転することができる。
【0047】
図2は
図1の逆起電力検出部の一例を説明するための概略的な回路図である。
【0048】
図2に示されたモータ装置20は、3相のコイルを備えており、3相のコイルの中性点から直接電圧を取得することができる例に関するものである。しかし、実施形態によって、中性点から直接電圧を取得せず、3相のコイルから仮想中性点電圧を取得することもできる。
【0049】
一例として、逆起電力検出部14は、検出された極電圧と中性点電圧それぞれを抵抗及びキャパシタで構成された低域通過フィルタに通過させ、これを比較器14ー1を用いて比較することにより逆起電力を検出することができる。このような低域通過フィルタは、駆動制御信号をフィルタリングするために用いられることができる。従って、このような低域通過フィルタは必須構成ではなく、実施形態によって、逆起電力検出部14は低域通過フィルタを含まないように構成されることもできる。
【0050】
しかし、このような逆起電力検出部14は、比較器14ー1によって発生するオフセット遅延を補正することができないという問題がある。即ち、比較器14ー1は、オフセット電圧によって出力値の相(phase)が遅れたり、進んだりする遅延(オフセット遅延)が発生するが、図示された例では、このようなオフセット遅延を補正することができないという問題がある。
【0051】
以下では、
図3から
図7を参照して本発明の多様な実施形態について説明する。以下で説明する本発明の多様な実施形態は、比較器自体によって発生するオフセット遅延を補正することができる実施形態に関するものである。
【0052】
後述する本発明の多様な実施形態に関する説明のうち、
図1及び
図2を参照して上述した内容と同一であるか、またはそれに相応する内容については繰り返し説明しない。しかし、当業者にとって、上述した説明から本発明の具体的な内容が明確に理解できることは明白である。
【0053】
図3は本発明によるモータ駆動制御装置の一実施形態を説明するための構成図である。
【0054】
図3を参照すると、モータ駆動制御装置100は、電源供給部110と、駆動信号生成部120と、インバータ部130と、逆起電力検出部140と、制御部150と、オフセット補正部160と、を含むことができる。
【0055】
電源供給部110は、モータ駆動制御装置100の各構成要素に電源を供給することができる。
【0056】
駆動信号生成部120は、制御部150の制御に従い、モータ装置200の駆動制御信号を生成することができる。例えば、所定のデューティ比を有するパルス幅変調信号(以下、PWM信号)を生成してインバータ部130に提供することにより、モータ装置200が駆動するようにすることができる。
【0057】
インバータ部130は、モータ装置200の複数の相それぞれに、駆動制御信号による駆動電流を提供することができる。
【0058】
逆起電力検出部140は、モータ装置200において発生する逆起電力を検出することができる。
【0059】
一実施形態において、逆起電力検出部140は比較器を含むことができる。比較器は、第1信号及び第2信号を受信し、第1及び第2信号を比較して出力することができる。例えば、相電圧と中性点電圧を第1及び第2信号として受信し、これらを比較して逆起電力を出力することができる。
【0060】
一実施形態において、逆起電力検出部140は、モータ装置200の複数の相とそれぞれ連結された比較器を用いて逆起電力を検出することができる。
【0061】
一実施形態において、逆起電力検出部140は、現在動作していない相と連結された比較器を用いて逆起電力を検出することができる。これは、現在駆動電流が提供される相によって回転子が回転する場合、現在動作していない相に逆起電力が誘導されるためである。
【0062】
制御部150は、オフセット補正部160により、オフセット遅延が補正された逆起電力を逆起電力検出部140から受信することができる。制御部150は、受信された逆起電力を用いて駆動制御信号を生成するように駆動信号生成部120を制御することができる。例えば、制御部150は、逆起電力のゼロクロス(Zero−Crossing)時点に相転換が行われるように駆動信号生成部120を制御することができる。
【0063】
オフセット補正部160は、逆起電力検出部140にオフセット遅延が存在するか否か判断し、オフセット遅延が存在すると、それを補正することができる。例えば、比較器を含む逆起電力検出部140の一実施形態において、オフセット補正部160は、逆起電力検出部140に含まれた比較器のオフセット遅延を補正することができる。
【0064】
以下では、
図4から
図6を参照してオフセット補正部の一実施形態についてより詳細に説明する。
【0065】
図4は
図3のオフセット補正部の一実施形態を説明するための詳細な構成図であり、
図5及び
図6は
図3のオフセット補正部によるオフセット補正を説明するための参照グラフである。
【0066】
図3から
図6を参照してオフセット補正部の一実施形態についてより詳細に説明すると、オフセット補正部160は、基準電圧生成器161と、オフセット制御器163と、を含むことができる。実施形態によって、オフセット補正部160は、カウント器162と、可変抵抗器164、165と、スイッチ器166のうち少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0067】
基準電圧生成器161は、一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成することができる。基準電圧生成器161は、生成した基準電圧を比較器141の入力信号(以下、第1信号)として提供することができる。基準電圧は、一定の勾配を有しており、比較器141のオフセット遅延を検出するのに用いられる。
【0068】
ここで、比較器141は逆起電力検出部140に含まれる構成要素である。従って、比較器141の出力は逆起電力になることができる。また、比較器141は、参照電圧を異なる入力信号(以下、第2信号)として受信することができる。ここで、参照電圧は既に設定された特定の値を維持する信号であることができる。
【0069】
カウント器162は、一定の単位時間を繰り返し生成し、生成された単位時間をオフセット制御器163に提供することができる。
【0070】
オフセット制御器163は、時間に対する比較器141の出力変化を用いることで、比較器141のオフセット遅延を検出することができる。また、オフセット制御器163は、検出されたオフセット遅延に応じて可変抵抗器の抵抗値を変更させることにより、オフセット遅延を補正することができる。
【0071】
図5及び
図6を参照してオフセット制御器163についてより詳細に説明する。
【0072】
図5はオフセット補正部によってオフセット補正が行われる前の一例を示すグラフであり、
図6はオフセット補正部によってオフセット補正が行われた後の一例を示すグラフである。
【0073】
図5に示された基準電圧510と参照電圧Vdc/2は比較器141の二つの入力端にそれぞれ入力される。従って、比較器の出力グラフに示されているように、基準電圧510が参照電圧Vdcより大きくなる場合、比較器141は出力値として1を有することができる。
【0074】
また、カウント器162は、一定の単位時間を繰り返し生成しており、このような単位時間を基準として一番目のグラフを見ると、基準電圧510がVdcに至るには単位時間の6周期が必要であるが、比較器141の出力が変化する時点は単位時間の4周期であるということが分かる。参照信号がVdc/2であることを考慮すると、1単位時間だけの遅延が発生することを示す。これは、比較器141自体のオフセット電圧による遅延であって、図面に示されているように、基準電圧510が有する所定のt軸(またはV軸)切片がこのようなオフセット電圧になることができる。
【0075】
これにより、オフセット制御器163は、上述したような動作を行ってオフセット遅延を判断することができる。即ち、オフセット制御器163は、カウント器162の出力を基準として、比較器141の出力が変化する時点を確認し、カウント器162の出力、即ち、単位時間を基準として遅延が発生したか否かを判断することができる。
【0076】
遅延が発生したと判断される場合、オフセット制御器163は、遅延を補正するために可変抵抗器の抵抗値を可変するように制御することができる。
図4及び
図5に示された例において、オフセット制御器163は、参照電圧Vdc/2と連結された第2可変抵抗器165の抵抗成分を可変することにより、即ち、
図5のグラフにおいて参照電圧Vdc/2をt軸に移動させることにより、オフセット遅延を補正することができる(これは実施形態によって、基準電圧510の勾配を変更することにより行われることも自明である)。
【0077】
図6はオフセット制御器163によってオフセット遅延が補正された波形及び比較器の出力を示している。
【0078】
図6に示されているように、オフセット制御器163によって第2可変抵抗器165の抵抗を可変させることにより、比較器141に入力される参照電圧が「Vdc/2ーa」に変更されたことが分かる。よって、比較器141の出力の変化も正確に補正され、このような補正によってオフセット遅延が補正されたことが分かる。
【0079】
一実施形態において、オフセット制御器163は、オフセット遅延の補正が完了すると、比較器141の入力として相電圧が入力されるようにスイッチ器166を制御することができる。即ち、オフセット遅延の補正が行われる前には基準電圧を比較器141の入力として入力し、オフセット遅延の補正が行われた後には逆起電力を検出するために比較器141の入力を相電圧に転換するようにすることができる。そのために、オフセット補正部160は、基準電圧及び相電圧のうち何れか一つを選択的に連結することができるスイッチ器166を含むことができる。オフセット制御器163は、オフセット遅延の補正有無に応じてスイッチ器166がスイッチングされるようにスイッチング制御信号を提供することができる。
【0080】
可変抵抗器は比較器141の入力端と連結される。可変抵抗器は、オフセット制御器163の制御に応じて抵抗値を可変することで、オフセット遅延を補正することができる。
【0081】
一実施形態において、可変抵抗器は比較器141の両入力端にそれぞれ備えられることができる。例えば、可変抵抗器は、基準電圧または相電圧が入力される比較器141の第1入力端と連結される第1可変抵抗器164と、参照電圧が入力される比較器141の第2入力端と連結される第2可変抵抗器165と、を含むことができる。このような一実施形態の場合、オフセット制御器163は、オフセット遅延が+であるかまたは−であるかに応じて、第1可変抵抗器164及び第2可変抵抗器165のうち少なくとも一つの抵抗値を可変するように制御することで、オフセット遅延を補正することができる。
【0082】
一実施形態において、第1及び第2可変抵抗器164、165は、ラダー(ladder)構造で構成されることができる。例えば、上記ラダー構造は、直列連結された複数の抵抗と、上記複数の抵抗とそれぞれ並列連結された複数のスイッチと、を含む構造であることができる。ここで、複数のスイッチは、オフセット制御器163のスイッチング制御信号に応じてスイッチング動作を行うことで、抵抗値を可変的に設定することができる。
【0083】
スイッチ器166は、比較器141の一入力端と連結され、基準電圧及びモータ装置200の相電圧のうち何れか一つが比較器141の入力端に入力されるようにスイッチングすることができる。
【0084】
図7は本発明によるモータ制御方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【0085】
以下では、
図7を参照して本発明によるモータ駆動制御方法の一実施形態を説明する。本発明によるモータ駆動制御方法の一実施形態は、
図3から
図6を参照して上述したモータ駆動制御装置100により行われるため、上述の説明と同一であるか、またはそれに相応する内容については繰り返し説明しない。
【0086】
図7を参照すると、モータ駆動制御装置100は、一定の勾配を有する線形の基準電圧を生成することができる(S710)。
【0087】
モータ駆動制御装置100は、既に設定された値を維持する参照電圧と上記基準電圧とを比較器を用いて比較し、この比較器の出力を用いて比較器のオフセット遅延を判断することができる(S720)。
【0088】
もし、オフセット遅延が存在すると(S730、はい)、モータ駆動制御装置100は比較器のオフセット遅延を補正することができる(S740)。
【0089】
一実施形態において、モータ駆動制御装置100は、オフセット遅延が補正された比較器を用いて逆起電力を検出することができる(S750)。より詳細に説明すると、モータ駆動制御装置100は、遅延が補正された比較器からモータ装置に対する逆起電力を検出し、検出された逆起電力を用いてモータ装置の駆動制御信号を生成することができる。
【0090】
S720の一実施形態において、モータ駆動制御装置100は、既に設定された値を維持する参照電圧及び基準電圧を受信する比較器の出力を検出した後、所定の単位基準時間に対する比較器の出力変化を用いてオフセット遅延を判断することができる。
【0091】
ここで、基準電圧は、既に設定された値(第1電圧)まで一定の勾配を有して増加する電圧であり、参照電圧は、上記既に設定された値(第1電圧)の1/2に該当することができる。モータ駆動制御装置100は、比較器の出力値が変更される第1時点と基準電圧が第1電圧に至る第2時点とを比較し、第1時点が第2時点の1/2値に該当しないと、オフセット遅延が存在すると判断することができる。第1時点と第2時点との比較とは、検出開始から第1時点に至るまでの第1時間と、検出開始から第2時点に至るまでの第2時間との比較であってよい。カウント器162の出力を用いて、検出開始から第1時点に至るまでの間にカウント器162が生成した単位時間の数と、検出開始から第2時点に至るまでの間にカウント器162が生成した単位時間の数とを比較してもよい。
【0092】
S740の一実施形態において、モータ駆動制御装置100は、比較器の入力端と連結された可変抵抗の抵抗値を変更することで、オフセット遅延を補正することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有するものには明らかである。
【符号の説明】
【0094】
10、100 モータ駆動制御装置
11、110 電源供給部
12、120 駆動信号生成部
13、130 インバータ部
14、140 逆起電力検出部
141 比較器
15、150 制御部
160 オフセット補正部
161 基準電圧生成器
162 カウント器
163 オフセット制御器
164 第1可変抵抗器
165 第2可変抵抗器
166 スイッチ器
20、200 モータ装置