特許第5668998号(P5668998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5668998核分裂生成物の濾過・収着材及びそれを使用した核分裂生成物の濾過・収着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5668998
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】核分裂生成物の濾過・収着材及びそれを使用した核分裂生成物の濾過・収着方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20150122BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   G21F9/06 581J
   G21F9/06 521M
   G21F9/06 581A
   G21F9/12 501E
   G21F9/12 501B
   G21F9/12 501J
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-268614(P2009-268614)
(22)【出願日】2009年11月26日
(65)【公開番号】特開2011-112483(P2011-112483A)
(43)【公開日】2011年6月9日
【審査請求日】2012年3月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成21年8月28日 社団法人 日本原子力学会発行の「日本原子力学会 2009年秋の大会 予稿集」に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100092495
【弁理士】
【氏名又は名称】蛭川 昌信
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100097777
【弁理士】
【氏名又は名称】韮澤 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(72)【発明者】
【氏名】天本 一平
(72)【発明者】
【氏名】都築 達也
(72)【発明者】
【氏名】三田村 直樹
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−007694(JP,A)
【文献】 特開2010−266229(JP,A)
【文献】 特開2007−303934(JP,A)
【文献】 特開平05−146673(JP,A)
【文献】 特開2011−005444(JP,A)
【文献】 特開昭59−123529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/06
G21F 9/12
G21F 9/16
G21C 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み電解質物質から核分裂生成物を分離するために前記核分裂生成物を濾過及び収着する濾過・収着材であって、該濾過・収着材は、少なくともP25及びFe23を含み、さらにBaO、K2Oの全て、又は、Al23、BaO、K2Oの全てを含むと共に、粉末状、繊維状、あるいは多孔質であることを特徴とする濾過・収着材。
【請求項2】
前記核分裂生成物がセシウム又はストロンチウムのいずれか一方、又は、セシウム及びストロンチウムの両方を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の濾過・収着材。
【請求項3】
前記濾過及び収着する物質は、セシウム又はストロンチウムのいずれか一方、又は、セシウム及びストロンチウムの両方であり、かつ、濾過及び収着を同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の濾過・収着材。
【請求項4】
使用済み電解質物質から核分裂生成物を分離するために前記核分裂生成物を濾過及び収着する濾過・収着材を使用して、使用済み電解質物質から核分裂生成物を濾過及び収着する核分裂生成物の濾過・収着方法において、前記濾過及び収着を同時に行うと共に、セシウム又はストロンチウムのいずれか一方、又は、セシウム及びストロンチウムの両方を濾過及び収着し、該濾過・収着材は、少なくともP25及びFe23を含み、さらにBaO、K2Oの全て、又は、Al23、BaO、K2Oの全てを含むと共に、粉末状、繊維状、あるいは多孔質であることを特徴とする核分裂生成物の濾過・収着方法。
【請求項5】
前記濾過及び収着は、前記濾過・収着材の軟化する温度以下の雰囲気で行うことを特徴とする請求項4に記載の核分裂生成物の濾過・収着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済核燃料の乾式再処理工程で生じる塩化物系電解質物質中に蓄積した核分裂生成物であるセシウムならびにストロンチウムを主成分とする塩を、単独で、あるいは混合物で高率に濾過・収着することで、電解質物質と核分裂生成物を分離できる濾過・収着材(分離材)ならびに濾過・収着方法(分離方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済核燃料の乾式再処理工程は、溶媒中である塩化物系の高温溶融塩に使用済燃料を溶解し、電解処理することで陰極上に析出する電解析出物を回収し、再処理している。このような工程で発生する使用済電解質物質は、アクチノイド物質や核分裂生成物を含有しているため、高レベル放射性廃棄物として廃棄される。そのため、廃棄物容量の低減や経済性の観点から、使用済電解質物質の再生を行う必要性がある。
【0003】
従来の技術として、使用済電解質物質中に残留するアクチノイド物質を還元・抽出工程で取り除き、ゼオライトカラムを通過させることで核分裂生成物を吸着・除去する再処理工程が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この工程では核分裂生成物を吸着したゼオライトの処理・処分が必要となり、廃棄物処理工程において、核分裂生成物を安定化させた大量のソーダライトが発生し、環境負荷及び経済性の点から大きな課題となっている。
【0004】
この問題を解決すべく、使用済電解質物質中の核分裂生成物をリン酸塩に転換することにより沈殿分離し、電解質物質の再生を試みている(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】「乾式再処理技術開発における要素技術開発の現状」明珍宗孝、青瀬晋一、サイクル機構、No.24別冊、2004、11、p166
【非特許文献2】「乾式再処理から発生する廃溶融塩の固化技術の開発」豊原尚美 他、日本原子力学会和文論文誌、Vol.1、No.4、2002、p420
【特許文献1】特開2007−303934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用済電解質物質中に残留する核分裂生成物のうち、例えばセシウムのようにリン酸塩として電解質物質中に沈殿しないものがある(例えば、非特許文献2参照)。そのため、沈殿分離後の電解質物質中もまた処理・処分が必要であり、経済性の面からも大きな課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するものであって、その目的は、使用済核燃料の乾式再処理工程で生じる塩化物系電解質物質中に蓄積した核分裂生成物であるセシウムならびにストロンチウムを主成分とする塩を、単独で、あるいは混合物で高率に濾過・収着することで、電解質物質と核分裂生成物を分離できる濾過・収着材ならびに濾過・収着方法を提供することである。
【0007】
より具体的には、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、使用済み電解質物質から核分裂生成物を分離するために前記核分裂生成物を濾過及び収着する濾過・収着材であって、該濾過・収着材は、少なくともP25及びFe23を含み、さらにBaO、K2Oの全て、又は、Al23、BaO、K2Oの全てを含むと共に、粉末状、繊維状、あるいは多孔質であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の濾過・収着材において、前記核分裂生成物がセシウム又はストロンチウムのいずれか一方、又は、セシウム及びストロンチウムの両方を含んでいることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の濾過・収着材において、前記濾過及び収着する物質は、セシウム又はストロンチウムのいずれか一方、又は、セシウム及びストロンチウムの両方であり、かつ、濾過及び収着を同時に行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、使用済み電解質物質から核分裂生成物を分離するために前記核分裂生成物を濾過及び収着する濾過・収着材を使用して、使用済み電解質物質から核分裂生成物を濾過及び収着する核分裂生成物の濾過・収着方法において、前記濾過及び収着を同時に行うと共に、セシウム又はストロンチウムのいずれか一方、又は、セシウム及びストロンチウムの両方を濾過及び収着し、該濾過・収着材は、少なくともP25及びFe23を含み、さらにBaO、K2Oの全て、又は、Al23、BaO、K2Oの全てを含むと共に、粉末状、繊維状、あるいは多孔質であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の核分裂生成物の濾過・収着方法において、前記濾過及び収着は、前記濾過・収着材の軟化する温度以下の雰囲気で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、使用済核燃料の乾式再処理工程で生じる塩化物系電解質物質中に蓄積した核分裂生成物であるセシウムならびにストロンチウムを主成分とする塩を、単独で、あるいは混合物で高率に濾過・収着できるため電解質の再生が可能となり、環境及び経済面での負荷を低減することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、使用済み電解質物質から核分裂生成物を濾過ならびに収着する濾過・収着材であって、該濾過・収着材は、少なくともP25ならびにFe23を含んでいる濾過・収着材であり、また前記濾過・収着材を使用した濾過・収着方法である。
【0014】
本発明の濾過・収着材において、P25ならびにFe23を含んでいるガラスあるいはセラミックスなどの無機材料であれば構わないが、収着効果などの観点から特にガラスであることが望ましい。またその形状も特に問わず、濾過・収着効果を上げるために粉末状、繊維状、あるいは多孔質にしても良い。
【0015】
また本発明の濾過・収着材は、セシウムとストロンチウムのいずれか、あるいはその両方を含んでいる塩化物系電解質物質の溶融塩で特にその濾過・収着効果を示し、セシウムとストロンチウムのいずれか、あるいはその両方を同時に濾過・収着が行える。ただし、塩化物系電解質物質は、リン酸塩等の他の塩を含有しても構わない。なお、セシウムならびにストロンチウムの収着効果はイオン交換、分子篩い、反応・結晶化などのいずれかによるもの、あるいはその複合したものである。
【0016】
さらに本発明の濾過・収着方法は、前記濾過・収着材を使用して塩化物系電解質物質の溶融塩からセシウムとストロンチウムのいずれか、あるいはその両方を同時に濾過・収着する方法で、その雰囲気温度は使用する濾過・収着材が軟化する温度以下であれば構わない。濾過・収着材の軟化する温度以上で濾過ならびに収着を行うと、濾過・収着材の形状を維持出来なくなるため、閉塞等の問題が生じるので好ましくない。なお、濾過・収着材の軟化する温度とは、濾過・収着材の粘性流動が明確になる温度、粘度的にはおよそ107〜108dPa・sになる温度とする。またその濾過・収着時の雰囲気はアルゴン等の不活性雰囲気が好ましいが、大気雰囲気下でも特に構わない。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例(試料No.1〜5)を表1に、比較例であるリン酸塩結晶物(試料No.6)を表2に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
表中の各試料は次のようにして作製した。P25源として正リン酸を、Fe23源として酸化鉄を、Al23源として酸化アルミニウムを、K2O源として炭酸カリウムを、B
aO源として炭酸バリウムを使用し、これらを表の組成となるべく調合したうえで、白金坩堝に投入し、電気加熱炉内で1100〜1300℃、1〜3時間加熱溶融した。溶融ガラスを鋳型に流し込み、ブロック状とし、所定温度に保持した電気炉内に移入して徐冷した。このようにして作製した各試料について、軟化点ならびに収着効果を評価した。
【0020】
軟化点は、熱分析装置TG―DTA(株式会社リガク製)を用いて測定した。
【0021】
セシウムならびにストロンチウムの収着効果は、以下の方法で確認した。アルゴンガス
雰囲気中で、先ずLiCl−KCl混合塩5gに0.003molになるように模擬FP(セシウムならびにストロンチウム)塩化物を添加し、さらに化学量論量の3倍のリン酸塩(Li3PO4)転換材を加え、873K で24h溶融して塩中の模擬FPをリン酸塩にした。次にリン酸塩転換後の模擬電解質物質中に250μm〜425μmの粒径の濾過・収着材0.5gを投入し、24h溶融して塩中のFPを濾過・収着材と接触させ、冷却固化した後に6Lの水で洗浄することにより分離材から塩を除去した。回収した洗浄液中のセシウムならびにストロンチウムの残留量をICP発光分光分析装置ULTIMA2(Horiba Jobin Yvon製)で測定し、その残留量から収着率を求めた。
【0022】
表から明らかなように、実施例である各試料は、安定なガラス状物質が得られた。セシウムならびにストロンチウムの収着効果収着効果が得られた。
【0023】
これらに対して、比較例である試料は、リン酸塩転換捜査後にセシウムならびにストロンチウムの収着効果は得られなかった。