特許第5669040号(P5669040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669040
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ドレーン材の水平埋設装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   E02D3/10 103
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-253531(P2010-253531)
(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公開番号】特開2012-102584(P2012-102584A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 歩
(72)【発明者】
【氏名】廣田 高顕
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭47−044912(JP,A)
【文献】 特開昭60−040410(JP,A)
【文献】 特開2009−013679(JP,A)
【文献】 特開平04−115015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10−3/12
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平ドレーン材埋設船に搭載されたドレーン材を軟弱地盤中に繰り出すためのマンドレルを備え、該マンドレルを軟弱地盤に挿入させた状態で前記埋設船を移動させることにより、前記マンドレルの埋設船進行方向後方側より1又は複数本の前記ドレーン材を繰り出し、前記軟弱地盤内へ水平方向に向けてドレーン材を埋設するようにしてなる軟弱地盤へのドレーン材水平埋設装置において、
前記マンドレルの前面側に沿った向きに設置され、回転駆動手段によって回転される回転軸と、その外周に螺旋状に突設したリボンスクリューからなる攪拌翼とから構成される攪乱手段を備え、
該攪乱手段を構成するリボンスクリューにより、軟弱地盤下側の粘度の高い層にある軟弱土と上側の粘度の低い層の軟弱土の粘度を均一化させるとともに、石や土塊等の障害物障害物を前記マンドレルの進行方向前方より排除させるようにしたことを特徴とする軟弱地盤へのドレーン材水平埋設装置。
【請求項2】
前記リボンスクリューからなる攪拌翼の回転直径は、前記マンドレルの幅より大きく形成されている請求項1に記載の軟弱地盤へのドレーン材水平埋設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に浚渫土からなる軟弱土を貯留させた軟弱土処理場や埋立地の軟弱地盤中に水平方向に向けてドレーン材を埋設するドレーン材の水平埋設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫土からなる軟弱土を貯留させた軟弱土処理場や埋立地の地盤改良においては、軟弱地盤中にドレーン材を水平に埋設し、このドレーン材を通して軟弱地盤中の水を吸い出す方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
このドレーン材を水平に埋設するには、図6に示すように、ドレーン材100を巻き取ったリール101,101......を搭載した埋設船102を軟弱地盤103上の水面に浮かべ、その埋設船102下の軟弱地盤103中にドレーン材100を埋設するマンドレル104を挿入し、その状態で埋設船103を移動させるとともにマンドレル104の進行方向後側よりドレーン材100,100......を繰り出すことにより軟弱地盤103中に水平方向に向けてドレーン材を埋設するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−10813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、埋設船の移動に伴い軟弱地盤中に差し込まれたマンドレルは地盤より抵抗を受け、その抵抗が大きいと埋設船の移動に支障が生じ作業効率が低下するという問題があり、場合によっては埋設船が蛇行して計画通りにドレーン材が埋設できず、地盤改良の効果にも影響が生ずるという問題がある。
【0006】
また、このような抵抗は、軟弱地盤中の階層によって粘度が異なり粘度が高い層と粘度が低い層とが混在する場合やマンドレルの進行方向前方に石や土塊等の障害物が存在する場合に顕著に現れることが分かっている。
【0007】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、軟弱地盤より受ける抵抗を軽減し、効率良く且つ正確にドレーン材を埋設することができるドレーン材の水平埋設装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、水平ドレーン材埋設船に搭載されたドレーン材を軟弱地盤中に繰り出すためのマンドレルを備え、該マンドレルを軟弱地盤に挿入させた状態で前記埋設船を移動させることにより、前記マンドレルの埋設船進行方向後方側より1又は複数本の前記ドレーン材を繰り出し、前記軟弱地盤内へ水平方向に向けてドレーン材を埋設するようにしてなる軟弱地盤へのドレーン材水平埋設装置において、前記マンドレルの前面側に沿った向きに設置され、回転駆動手段によって回転される回転軸と、その外周に螺旋状に突設したリボンスクリューからなる攪拌翼とから構成される攪乱手段を備え、該攪乱手段を構成するリボンスクリューにより、軟弱地盤下側の粘度の高い層にある軟弱土と上側の粘度の低い層の軟弱土の粘度を均一化させるとともに、石や土塊等の障害物障害物を前記マンドレルの進行方向前方より排除させるようにしたことにある。
【0009】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1に記載の構成に加え、前記リボンスクリューからなる攪拌翼の回転直径は、前記マンドレルの幅より大きく形成されていることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るドレーン材水平埋設装置は、水平ドレーン材埋設船に搭載されたドレーン材を軟弱地盤中に繰り出すためのマンドレルを備え、該マンドレルを軟弱地盤に挿入させた状態で前記埋設船を移動させることにより、前記マンドレルの埋設船進行方向後方側より1又は複数本の前記ドレーン材を繰り出し、前記軟弱地盤内へ水平方向に向けてドレーン材を埋設するようにしてなる軟弱地盤へのドレーン材水平埋設装置において、前記マンドレルの埋設船進行方向前方側に沿って配置され、該マンドレル前方側の地盤を攪乱させる攪乱手段を備えたことにより、マンドレル前方の軟弱地盤を好適に処理することができ、マンドレル前方の軟弱地盤より受ける抵抗を軽減することができる。
【0011】
また、本発明では、前記攪乱手段が、前記マンドレルの前面側に沿った向きに設置され、回転駆動手段によって回転される回転軸と、該回転軸の周囲に一体に突設した撹拌翼とをもって構成されることにより、マンドレル前方の軟弱地盤を好適に攪乱し、該軟弱地盤より受ける抵抗を軽減することができる。
【0012】
更に本発明では、前記撹拌翼が、前記回転軸の外周に螺旋状に突設したリボンスクリューであることにより、上下で粘度の異なる階層を有する軟弱地盤を撹乱により均一化することができ、軟弱地盤より受ける抵抗を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は本発明に係るドレーン材水平埋設装置の一例を示す側面図、(b)は同正面図である。
図2】本発明に係るドレーン材水平埋設装置の使用状態の概略を示す平面図である。
図3】本発明に係るドレーン材の水平埋設装置によるドレーン材埋設行程の一例を示す側面図である。
図4ドレーン材の水平埋設装置の参考例を示す側面図である。
図5ドレーン材の水平埋設装置の他の参考例を示す側面図である。
図6】従来のドレーン材の水平埋設方法によるドレーン材埋設工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るドレーン材水平埋設装置の実施の態様を図に示した実施例に基づいて説明する。
【0015】
ドレーン材水平埋設装置は、図1に示すように、水平ドレーン材埋設船3に搭載されたドレーン材2を埋設船3下の軟弱地盤1中に繰り出すためのマンドレル4を備え、マンドレル4を軟弱地盤1中に挿入した状態で埋設船3を移動させるとともにマンドレル4からドレーン材2を繰り出すことにより軟弱地盤1中にドレーン材2が水平に埋設できるようになっている。
【0016】
埋設船3は、双胴型の船体6を有し、船体6には発泡スチロール等のフロートが収容されて構成されている。
【0017】
この埋設船3は、船体6の先端部に前進用の牽引用ワイヤロープ7,7が接続され、対岸5bに設置されたウインチ8により牽引用ワイヤロープ7,7を巻き取ることにより対岸5b側に向けて移動し、船体6の後端部に接続された引き戻し用の牽引用ワイヤロープ9をウインチ10により巻き取ることにより対岸5bより引き戻すことができるようになっている。尚、図中符号11はガイド用ロープであって、一端が一方の岸5aにアンカーブロック12により固定され、船体の側部に設けられたガイド13を通して他端が対岸側に設置されたウインチ14に接続されている。
【0018】
このガイドロープ11は、ウインチ14により緊張されることにより船体6の横方向の移動を規制して直進性を維持させるようになっている。
【0019】
また、この埋設船3には、船体上面部にドレーンリール15,15......を搭載するための台座16が設置され、この台座16上にブラケット17を介して回転自在に支持されたドレーンリール15,15......が船体6の進行方向に間隔を置いて複数搭載されてリール列を構成し、このリール列が船体幅方向に間隔を置いて複数配列されている。
【0020】
各ドレーンリール15には、不織布等よりなる中空平型のドレーン材2がそれぞれ巻き取られており、リール列を構成する各ドレーンリール15,15......から船体前方に向けて繰り出されたドレーン材2がガイドローラ18を経てマンドレル4に供給されるようになっている。
【0021】
また、ブラケット17には、ドレーンリール15を回転させるための図示しない駆動手段を備え、この駆動手段によりドレーンリール15を回転させてドレーン材2を自動的に繰り出すことができる。
【0022】
マンドレル4は、片側が開口したチャンネル材等により構成され、その長手方向基端側が台座16の前端部に後面開口部が進行方向後側になるように回動可能に枢支され、船体6の双胴間より船底側に出入りできるようになっている。
【0023】
このマンドレル4は、油圧シリンダ等の回動駆動手段19により回動されて進行方向の傾斜角度が調節されるとともに、出し入れ作業がなされるようになっている。尚、図中一点鎖線で示す双胴間に収容された位置においては、マンドレル4の開口部側が水上に露出した状態となる。
【0024】
また、マンドレル4には、長手方向に間隔をおいて繰り出し用ローラ20,20......が備えられ、ガイドローラ18を経てマンドレル4に供給された各ドレーン材2が繰り出し用ローラ20,20......を介して船体6の進行方向後方側に上下方向に間隔を置いて多段配置に繰り出されるようになっている。
【0025】
マンドレル4の前面側には、マンドレル4の長手方向に沿って攪乱手段21が支持されており、軟弱地盤1中にマンドレル4が挿入された際にこの攪乱手段21によりマンドレル4前面側の軟弱土を攪乱するようになっている。
【0026】
攪乱手段21は、マンドレル4の前板部に軸受け22,22を介して回転自在に支持された回転軸23と、回転軸23の周囲に一体に突設した攪拌翼24とを備えて構成され、回転軸23は回転軸上端に接続されたモータ等の回転駆動手段25により回転されるようになっている。
【0027】
攪拌翼24は、回転軸23の外周に螺旋状に突設したリボンスクリューにより構成され、この攪拌翼24を回転させることにより、マンドレル4の前面側の階層毎に粘度が異なる軟弱土を攪拌により撹乱し、粘度を均一化するようになっている。また、石や土塊等の障害物が存在する場合には、スクリューにより効果的に障害物が排除されるようになっている。
【0028】
この攪拌翼24の回転直径は、マンドレル4の幅より大きく形成されている。
【0029】
尚、各攪拌翼24,24......は、複数のマンドレル4,4......が舟幅方向に並べて備えられた場合、互いに対称配置にある攪拌翼24の回転方向を逆向きとすることが好ましい。
【0030】
このようにすることにより、攪拌翼24の回転により生じるモーメントが打ち消しあい、安定した直進性を確保できる。また、互いに対称配置にある攪拌翼24の向きを逆向きに取り付けるようにしてもよい。
【0031】
次に、上述したドレーン材水平埋設装置を使用したドレーン材2の水平埋設方法を図2,3について説明する。尚、図中符号Aは軟弱土処理場である。
【0032】
この軟弱土処理場Aでは、浚渫土等が貯留された軟弱地盤1中にドレーン材水平埋設装置により水平にドレーン材2を埋設し、このドレーン材2を通して水を汲み出すことにより軟弱地盤1の地盤改良を行うようになっている。
【0033】
この軟弱地盤1は、下側に粘度の高い階層1aが堆積し、上側に粘度の低い階層1bが堆積した構造になっている。
【0034】
この軟弱土処理場において、本発明方法によりドレーン材を埋設するには、まず、埋設船3を軟弱地盤1上の水面に浮かべ、牽引用ワイヤロープ7、引き戻し用の牽引用ワイヤロープ9及びガイド用ロープ11を接続させる。
【0035】
そして、一方の岸側に接岸した状態でクローラクレーン等により吊り上げて列状にドレーン材2を巻き取ったドレーンリール15を搭載する。
【0036】
次に、各ドレーンリール15よりドレーン材2を繰り出し、ガイドローラ18を介してマンドレル4に供給する。この供給されたドレーン材2は、マンドレル4にガイドされて所定の各繰り出し用ローラ20を介して先端部が繰り出される。尚、これまでの作業は、マンドレル4を船体の双胴間に収納してマンドレル4の開口部が水面上に露出した状態で行う。
【0037】
ここまでの作業が終了した後、次に、回動駆動手段19を作動させてマンドレル4を所定の位置まで回動させ先端側を軟弱地盤中に挿入する。このようにすることによりドレーン材2の先端部が埋設始端側岸に近接した位置に導出される。尚、マンドレル4を軟弱地盤に挿入するに際しては、回転駆動手段25を作動させ回転軸23を回転させて攪乱手段21により軟弱地盤1を攪乱しながら行うことにより軟弱地盤より受ける抵抗が軽減され、マンドレル4を軟弱地盤中に効率よく挿入することができる。
【0038】
次に、ドレーンリール15よりドレーン材2を繰り出してマンドレル4よりドレーン材2をマンドレル4の進行方向後方側に繰り出しつつ、ウインチ8により牽引用ワイヤロープ7を巻き取り、埋設船3を対岸側に向けて移動させる。
【0039】
このとき、回転駆動手段を作動させ回転軸を回転させ、攪乱手段21によりマンドレル4の進行方向前方側の軟弱地盤を攪乱しながら埋設船3を移動させる。
【0040】
これによって、軟弱地盤下側の粘度の高い層1bにある軟弱土が撹拌翼24を構成している螺旋状のリボンスクリューにより上側の粘度の低い層1aの軟弱土と攪乱され、その部分の軟弱土の粘度が均一化される。また、石や土塊等の障害物が存在する場合には、その障害物が撹拌翼24を構成しているリボンスクリューによりマンドレル4の進行方向前方より排除される。
【0041】
このようにマンドレル4の進行方向前方の軟弱土の粘度が均一化され、且つ障害物も排除されることによってマンドレル4が軟弱地盤より受ける抵抗が軽減されることにより、埋設船3は、直進性を維持した状態で移動することができ、ドレーン材2も軟弱地盤内の所定の繰り出し位置に多段配置に水平に埋設される。
【0042】
そして、埋設終端位置まで埋設船3を移動させることにより、終端位置までドレーン材2が埋設される。
【0043】
図4は参考例を示しており、この例では、マンドレル4の前面側にジェットノズル31,31......を長手方向に間隔を置いて備えた攪乱手段30であってもよい。尚上述の実施例と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
このジェットノズル31には、図示しない噴射材供給手段により水又は気泡入り水からなる地盤攪乱用噴射材32が加圧した状態で供給され、マンドレル4前面側の軟弱土にジェットノズル31より地盤攪乱用噴射材32が噴射されるようになっている。この場合には、 ジェットノズル31,31......より地盤攪乱用噴射材32が前方の軟弱地盤に噴射されることにより、マンドレル4前側の軟弱土に対流的な動きが生じ攪乱されるようになっている。
【0045】
図5は別の参考例を示しており、この例では、上述のリボンスクリューに代えて、回転軸24の外周より放射状に突出させた攪拌翼42,42......を備えたものを示している。この攪拌翼42,42......は、軸方向に多段配置に設けられ、各段交互に向きを違えて突設されている。尚、上述の実施例と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0046】
A 軟弱土処理場
1 軟弱地盤
2 ドレーン材
3 埋設船
4 マンドレル
5 岸
6 船体
7 牽引用ワイヤロープ
8 ウインチ
9 牽引用ワイヤロープ
10 ウインチ
11 ガイド用ロープ
15 ドレーンリール
16 台座
17 ブラケット
18 ガイドローラ
19 回動駆動手段
20 繰り出し用ローラ
21 攪乱手段
22 軸受
23 回転軸
24 攪拌翼(リボンスクリュー)
25 回転駆動手段
26 真空ポンプ
30 攪乱手段
31 ジェットノズル
32 地盤攪乱用噴射材
41 攪乱手段
42 攪拌翼
図1
図2
図3
図4
図5
図6