(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図18は、従来の防波パイプが取り付けられたボールタップを備える水槽を示す概略断面図であり、
図19は、
図18で示したボールタップの閉弁時の内部構造を示す概略拡大断面図である。
【0003】
これらの図を参照して、ボールタップ81は、水槽16の内部に設置され、青銅合金鋳物等で製作され、筒形状を有し、その側面に給水管18に接続される給液口2が形成され、中央部分に網状のストレーナ31が設置されると共にその底面に弁座4を介して吐出口3が形成される弁箱1と、弁箱1の吐出口3に設けられ、その側面に複数の吐出孔85を備えた直管形状を有する防波パイプ84と、弁箱1の上部を覆う弁蓋19と、弁箱1内に上下に摺動自在に設置され、弁座4に係合する弁体6と、弁体6と接続されたスピンドル20と、スピンドル20に連結されたレバー機構7と、レバー機構7に接続されたロッド30と、ロッド30の先端に接続されたフロート8とから構成される。
【0004】
防波パイプ84の下端は、
図18で示した水槽16の水面17(フロート8が働き始める水位)よりも低い位置に設置されている。このように設置する理由は後述する。
【0005】
弁体6は、その上部に取付けられたシートパッキン5を含む。弁体6は、上方位置においてシートパッキン5を介して弁座4と当接するように配置されている。
【0006】
弁体6に接続され、レバー機構7に当接するスピンドル20は上下に摺動自在に設置されている。
【0007】
レバー機構7は、弁箱1の右方で回動自在に接続されたレバー27と、レバー27の中央部に回動自在に連結された連結部材28と、連結部材28の下方で回動自在に連結され、その左方で弁箱1と回動自在に接続されたレバー29とからなる。レバー29はその中央部においてスピンドル20の下端に当接するように配置されている。
【0008】
レバー機構7に接続されたロッド30は、フロート8に接続されている。フロート8は
図18で示した水槽16内の水面17に浮いている。
【0009】
使用に際して、
図18で示した水槽16において、水位の変動に伴って、フロート8が上下に変動する。これにより、上下に変動したフロート8の浮力が、フロート8に接続されたロッド30を通して、レバー機構7に伝わり、更にレバー機構7からスピンドル20に伝達されることで、スピンドル20が上下に摺動することになる。従って、スピンドル20に接続された弁体6と弁座4との係合状態が変化するので、ボールタップ81が開弁又は閉弁することになる。
【0010】
ここで、ボールタップ81の閉弁状態から開弁状態に移る過程について具体的に説明する。
【0011】
図18を参照して、水位が下降変動して水面17が下降したとき、フロート8は下降する。これにより、フロート8に接続されたロッド30が下降する。そして、ロッド30に接続されたレバー機構7のレバー27が、弁箱1と接続されたレバー27の左方端を回動中心として下方に回動する。次に、レバー27に接続された連結部材28が下降する。連結部材28に接続されたレバー29が、弁箱1と接続されたレバー29の左方端を回動中心として下方に回動する。更に、レバー29と連結されたスピンドル20が下降する。最終的に、スピンドル20と接続された弁体6が、係合状態にあった弁座4から下方へ離れることになる。従って、ボールタップ81が開弁状態となり、給水管18から給液口2に入った水は、弁座4を介して吐出口3に流れ、防波パイプ84の下端及び吐出孔85から吐出され、水槽16に給水される。
【0012】
ここで、防波パイプ84の下端は、フロート8が働き始める時の水面17よりも低い位置に設置されているので、ボールタップ81からの水は水面17の下に吐出されることになる。防波パイプ84の吐出孔85からも水は吐出されるが、防波パイプ84の下端から吐出される水の量に比べると少ないので、水面17の波立ちが少ない。
【0013】
尚、上述の開弁状態の後、水位が上昇し、水面17の上昇に伴って、フロート8が規定位置まで上がると、上述の逆の過程を経て、ボールタップ81は
図19で示した閉弁状態となり、水槽16への給水が停止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような従来のボールタップに取り付けられた防波パイプに対して、平成24年における厚生労働省の「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令」が一部改正された。すなわち、防波パイプは、水道に接続されたボールタップに対して防波パイプを使用した場合には、水道が一時的に断水したとき等に負圧によって、水槽内の水が水道配管系に逆流して水道を汚染する危険性があると判断されることとなり、使用することが出来なくなった。又、水槽内の水の逆流を防ぐために、水槽内の水面の最上面(越流面)からボールタップの吐出口の最下端までの垂直距離(吐水口空間)の最小値が、ボールタップの口径ごとに制定された。
【0015】
そこで、防波パイプを取り外したボールタップの使用状態について説明する。
【0016】
図20は、
図18で示した防波パイプを取り外したボールタップの使用状態を示す概略断面図であって、
図18に対応した図である。
【0017】
尚、このボールタップ82は、
図18で示したボールタップ81から防波パイプ84を取り外したものであるので、ここでは相違点を中心に説明する。
【0018】
図を参照して、水槽16内に設置されたボールタップ82は、開弁状態であり、水槽16に給水している。ボールタップ82の吐出口3は、水面17の上方に位置しているので、吐出口3から吐出された水は水面17に対して直接給水される。そのため、水槽16内の水面17に波立ちが生じ、フロート8が
図20で示した矢印の方向に変動を繰り返し、実線で示した状態から2点鎖線及び破線で示した状態に変動を繰り返すことになる。通常ならフロート8が規定位置まで上がると、ボールタップ82は閉弁状態となり、止水する。しかし、フロート8が上下変動を繰り返すため、ボールタップ82は閉弁状態と開弁状態とを繰り返し、いわゆるシャクリ現象を起こすことになり、動作が安定しなかった。
【0019】
従って、ボールタップはなかなか止水せず、ボールタップからの吐出が断続的となると共に、断続的な騒音を発する等の不都合を起こすことが多かった。場合によっては、断続的な吐出の周期と水槽内の水の変動とが共振を起こすことによって波立ちがさらに増幅される現象が発生することがあった。このような現象が起きたとき、ボールタップからの吐出が騒音の原因となったり、水槽に大きな振動が発生したり、ボールタップの止水位置が設計値と大きく異なったり、あるいは給水配管系に水撃を発生させて給水配管系にダメージを与えたりする等といった不具合が生じることがあった。更に、ボールタップの開閉動作の回数が多くなり、シートパッキンの寿命を短くしていた。この過度な開閉動作によって、シートパッキンと当接する弁座は摩耗し、閉弁時にあっても、水漏れしてしまうこともあった。
【0020】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、防波パイプを用いることなく、弁の開閉動作が安定し、耐久性が向上するボールタップ及び防波板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ボールタップであって、下方に液体を吐出するための吐出口と
、吐出口に取り付けられ、開弁時に液体を放射状且つ旋回状に吐出する防波板とを備え
、防波板は、水平状態に配置された円形状の中央部分と、中央部分の外方端の全てに対して放射状に接続され、外縁が平面視において円弧形状を有すると共に外縁が側面視において所定の捻じり角を有するように形成された複数の羽根部分とを少なくとも備えたものである。
【0022】
このように構成すると、吐出される液体による液面の波打ちが抑制される。又、防波板に加わる液体の圧力が弁体の開閉に影響を与えない。
更に、液体は羽根部分の各々に沿って隣接する羽根部分の間から吐出する。
【0025】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明の構成において、防波板は、吐出口の下方端でのみ支持されるものである。
【0026】
このように構成すると、防波板に加わる液体の圧力が弁体の開閉に影響を与えない。
【0027】
請求項
3記載の発明は、請求項
1又は請求項
2記載の発明の構成において、防波板は、吐出される液体によって回転しないように吐出口に取り付けられるものである。
【0028】
このように構成すると、液体の吐出状態の変動が防止されると共に、防波板の回転による摩耗が阻止される。
【0029】
請求項
4記載の発明は、請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の発明の構成において、防波板は、1枚の金属製の円板を加工することにより形成され、中央部分の外径L
1と羽根部分の外径L
2の比L
2/L
1は、2.4〜3.7であり、羽根部分は、4〜8枚で構成され、捻じり角は、15度〜55度であるものである。
【0030】
このように構成すると、吐出量の低下が抑制される。
【0031】
請求項
5記載の発明は、ボールタップの吐出口に脱着自在に取り付けられる防波板であって、円形状の中央部分と、中央部分の外方の全てにおいて放射状に接続され、外縁が円弧形状を有すると共に外縁が中央部分の上面に対して所定の捻じり角を有するように形成された複数の羽根部分とを少なくとも備えたものである。
【0032】
このように構成すると、ボールタップから吐出される液体による液面の波打ちが抑制される。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、吐出される液体による液面の波打ちが抑制されるため、弁の開閉動作が安定し、耐久性が向上する。又、防波板に加わる液体の圧力が弁体の開閉に影響を与えないため、弁体の開閉動作の信頼性が向上する。
更に、液体は羽根部分の各々に沿って隣接する羽根部分の間から吐出するため、吐出状態を容易に調整できる。
【0035】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の発明の効果に加えて、防波板に加わる液体の圧力が弁体の開閉に影響を与えないため、弁体の開閉動作の信頼性が向上する。
【0036】
請求項
3記載の発明は、請求項
1又は請求項
2記載の発明の効果に加えて、液体の吐出状態の変動が防止されると共に、防波板の回転による摩耗が阻止されるため、吐出される液体の吐出状態が安定し、防波板及び吐出口の耐久性が向上する。
【0037】
請求項
4記載の発明は、請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、吐出量の低下が抑制されるため、効率的な構成となる。
【0038】
請求項
5記載の発明は、ボールタップから吐出される液体による液面の波打ちが抑制されるため、ボールタップの開閉動作が安定し、耐久性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、この発明の第1の実施の形態によるボールタップを備える水槽を示す概略断面図であり、
図2は、
図1で示したボールタップの閉弁時の内部構造を示す概略拡大断面図である。
【0041】
尚、この実施の形態によるボールタップ21は、
図20で示したボールタップ82の構成と略同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、ボールタップ21の特有の部分について主に説明する。
【0042】
これらの図を参照して、ボールタップ21は、開弁時に水を放射状且つ旋回状に吐出する吐出制御手段33を含む。弁箱1の吐出口3の下方内部は、後述するC形止め輪10が嵌合するように内周に設置されている。
【0043】
吐出制御手段33は、弁箱1の吐出口3に脱着自在に設けられ、弁箱1の吐出口3の下方内部の円周溝36と嵌合するC形止め輪10と、弁箱1の吐出口3でC形止め輪10の上面と当接して支持されるように取り付けられた後述する防波板41とを含む。
【0044】
このように構成したことにより、吐出される水等の液体による液面(水面)の波打ちが防波板41がないものに比べて抑制されるので、弁の開閉動作が安定し、耐久性が向上する。
【0045】
図3は、
図2で示した防波板の概略外観図であり、
図4は、
図2で示した防波板の概略構成図である。
【0046】
これらの図を参照して、防波板41は、ステンレス鋼板からなる1枚の円板を加工することにより形成され、水平状態に配置された円形状の中央部分56と、中央部分56の外方端の全てに対して放射状に接続され、外縁が平面視において円弧形状を有すると共に外縁が側面視において所定の捻じり角θを有するように形成された6枚の羽根部分57とを備えたものである。
【0047】
次に、防波板41の外径及び捻じり角θについて説明する。
【0048】
図4を参照して、防波板41を平面視したときの中央部分56の外径L
1と羽根部分57の外径L
2の比L
2/L
1は3.3であるが、2.4〜3.7が好ましい。この理由については後述する。
【0049】
防波板41を平面視したときに下方に位置する羽根部分57に対して側面視したとき、羽根部分57の外縁と水平線とのなす角度を、捻じり角θとしている。尚、羽根部分57の外縁の右端部及び左端部は、側面視において水平面から
図4で示した矢印の方向に各々捻じれて位置している。又、捻じり角θは、15度〜55度が好ましい。この理由については、実施例において後述する。
【0050】
使用に際して、
図2を参照して、防波板41が取り付けられたボールタップ21において、開弁時に弁体4を介して、水は吐出口3に流れ込み、吐出口3にある防波板41の羽根部分57の各々に沿って隣接する羽根部分57の間から吐出する。よって、比L
2/L
1や捻じり角θを変えることにより防波板41の吐出状態を容易に調整できることになる。
【0051】
このとき、防波板41によって、旋回流が与えられると共に、吐出口3から円錐状に吐出されるので、水が
図1で示した水面17に斜めの角度をもって輪を描くように吐出されるので、吐出エネルギーが減衰されて、水面17の波立ちが生じにくくなる。よって、フロート8が上下に変動を繰り返すことが少なくなり、ボールタップ21はシャクリ現象を起こさずに確実に止水することになる。従って、弁の開閉動作が安定し、耐久性が向上する。
【0052】
又、
図2で示した防波板41は、吐出口3の下方端において、C形止め輪10の上面と当接して支持されているだけであるので、防波板41に加わる水等の液体の圧力が弁体6の開閉に影響を与えない。従って、弁体6の開閉動作の信頼性が向上する。更に、防波板41は吐出される水等の液体圧によって、不用意に回転したり、取り付けするときに支持した位置から不用意に動いたりすることがないように摩擦力や構造が設定されている。このように構成することで、水等の液体の吐出状態の変動が防止されると共に、防波板41の回転による摩耗が阻止されるので、吐出される水等の液体の吐出状態が安定し、防波板41及び吐出口3の耐久性が向上する。
【0053】
図5は、この発明の第2の実施の形態によるボールタップの閉弁時の内部構造を示す概略拡大断面図であって、
図2に対応した図である。
【0054】
尚、この実施の形態によるボールタップ22は、
図1で示したボールタップ21の構成と略同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、ボールタップ22の特有の部分について主に説明する。
【0055】
図を参照して、ボールタップ22の弁箱1の吐出口3の下方内部は、後述する外ねじ付きリング11が螺合するように内周にねじ加工が形成されている。吐出制御手段33は、弁箱1の吐出口3に脱着自在に設けられ、弁箱1の吐出口3の下方内部と螺合する外ねじ付きリング11と、弁箱1の吐出口3で外ねじ付きリング11の上面と当接して支持されるように取り付けられた防波板41とを含む。尚、ボールタップ22の吐出制御手段33は、
図2で示したボールタップ21と同様の効果を奏する。
【0056】
図6は、この発明の第3の実施の形態によるボールタップの閉弁時の内部構造を示す概略拡大断面図であって、
図2に対応した図である。
【0057】
尚、この実施の形態によるボールタップ23は、
図1で示したボールタップ21の構成と略同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、ボールタップ23の特有の部分について主に説明する。
【0058】
図を参照して、ボールタップ23の弁箱1の吐出口3の下方外部は、後述する内ねじ付きリング12が螺合するように外周にねじ加工が形成されている。吐出制御手段33は、弁箱1の吐出口3に脱着自在に設けられ、弁箱1の吐出口3の下方外部と螺合し、吐出口3の内径よりも小さな内径を有し、吐出口3の下端に当接する内ねじ付きリング12と、弁箱1の吐出口3の内方側にある内ねじ付きリング12の上面と当接して支持されるように取り付けられた防波板41とを含む。尚、ボールタップ23の吐出制御手段33は、
図2で示したボールタップ21と同様の効果を奏する。
【0059】
図7は、この発明の第4の実施の形態によるボールタップの閉弁時の内部構造を示す概略拡大断面図であって、
図2に対応した図である。
【0060】
尚、この実施の形態によるボールタップ24は、
図1で示したボールタップ21の構成と略同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、ボールタップ24の特有の部分について主に説明する。
【0061】
図を参照して、ボールタップ24の弁箱1の吐出口3における形状が、防波板41よりも上方での弁箱1の内径L
3は防波板41の外径(
図4で示した羽根部分57の外径L
2に対応)よりも小さく、防波板41の上端よりも下方での弁箱1の内径L
4は防波板41の外径(
図4で示した羽根部分57の外径L
2に対応)よりも大きくなるように形成されたものである。更に、
図1で示した水槽16において給水管(図示せず)にボールタップ24の給液口2を螺合させて設置する際、ボールタップ24自体を回転させても、防波板41は、取り付けたときの位置から上下に変動したりしなくなるので、スピンドル20に当たって防波板41が損傷等を生じる虞がない。
【0062】
尚、
図1で示した第1の実施の形態のボールタップ21、
図5で示した第2の実施の形態のボールタップ22、
図6で示した第3の実施の形態のボールタップ23の各々においても、各弁箱1をこの実施の形態のボールタップ24と同様に形成することで、ボールタップ24と同様の効果を奏する。又、
図2で示した第1の実施の形態のボールタップ21、
図5で示した第2の実施の形態のボールタップ22、
図6で示した第3の実施の形態のボールタップ23の各々の弁箱1において、防波板41の上端の位置に、C形止め輪10が嵌合するように新たに内周に円周溝を加えて形成し、C形止め輪10を弁箱1に新たに嵌合させることで、ボールタップ24と同様の効果を奏するようになる。
【0063】
図8は、この発明の第5の実施の形態によるボールタップの閉弁時の内部構造を示す概略拡大断面図であって、
図2に対応した図であり、
図9は、
図8で示した防波板の概略外観図であって、
図3に対応した図である。
【0064】
尚、この実施の形態によるボールタップ25は、
図1で示したボールタップ21の構成と略同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、ボールタップ25の特有の部分について主に説明する。
【0065】
これらの図を参照して、ボールタップ25の弁箱1の吐出口3の下方内部は、吐出制御手段33となる後述する防波板42が螺合するように内周にねじ加工が形成されている。防波板42は、中央部分56と、羽根部分57と、更に羽根部分57の外縁に接続され、その外周はねじ加工が形成されたリング状部分60とが一体となって構成されている。ボールタップ25の弁箱1の吐出口3の下方内部と、防波板42とが螺合している。尚、ボールタップ25の防波板42からなる吐出制御手段33は、
図7で示したボールタップ24と同様の効果を奏する。又、防波板42に形成されたねじと、防波板42に螺合する弁箱1の吐出口3の下方内部に形成されたねじとは、ねじの方向が吐出時にねじの螺合状態がゆるまないように形成されている。
【0066】
尚、上記の各実施の形態では、吐出制御手段として防波板を含んでいるが、吐出口に設けられ、開弁時に液体を放射状且つ旋回状に吐出するものであれば防波板でなくても良い。
【0067】
又、上記の各実施の形態では、防波板は、中央部分と羽根部分から形成されているが、それ以外の構成から形成されていても良い。
【0068】
更に、上記の各実施の形態では、防波板は、1枚の円板を加工することにより形成されているが、必ずしも1枚の円板から形成される必要はなく、複数の部材を結合して形成されるものであっても良い。
【0069】
更に、上記の各実施の形態では、防波板は、ステンレス鋼板からなる円板を加工して形成されているが、材質は使用される液体と強度に適合するものであれば、必ずしも金属に限定されるものでなく、合成樹脂製であっても良い。
【0070】
更に、上記の各実施の形態では、防波板は、必ずしも板状のものの加工に限定されず、鋳造品、溶接製品、あるいは射出成形品であっても良い。
【0071】
更に、上記の各実施の形態では、防波板は、吐出口の下端のみで支持されるように取り付けられているが、吐出口の下端以外で支持されるように取り付けられていても良い。
【0072】
更に、上記の各実施の形態では、防波板の羽根部分は、6枚で構成されていたが、2枚以上で構成されていれば良い。
【0073】
更に、上記の各実施の形態では、防波板の捻じり角は、30度であったが、30度以外であっても良い。
【0074】
更に、上記の各実施の形態では、防波板の中央部分の外径L
1と羽根部分の外径L
2の比L
2/L
1は、2.4〜3.7であったが、それ以外であっても良い。
【0075】
更に、上記の第5の実施の形態では、弁箱は、防波板が回転しないように形成されていたが、防波板が吐出口から外れないものであれば、防波板が回転するように形成されていても良い。
【0076】
更に、上記の各実施の形態では、ボールタップから水が吐出されているが、必ずしも水である必要はなく、他の液体であっても良い。
【0077】
更に、上記の第1の実施の形態及び第4の実施の形態の各々では、C形止め輪を用いて防波板を取り付けていたが、他の方法で取り付けても良い。
【0078】
更に、上記の第2の実施の形態及び第3の実施の形態の各々では、ねじ付きリングを用いて防波板を取り付けていたが、他の方法で取り付けても良い。
【0079】
更に、上記の第4の実施の形態では、弁箱の吐出口の形状を変えて防波板を上下に移動しないようにしているが、他の方法で防波板を上下に移動しないようにしても良い。
【0080】
更に、上記の第5の実施の形態では、防波板の形状を変えて弁箱の吐出口に取り付けているが、他の方法で防波板を取り付けても良い。
【0081】
更に、上記の第1から第4の実施の形態の各々では、防波板は回転しないように摩擦力や構造が設定されているが、防波板が回転しても安定しているものであれば、防波板は回転しても良い。
【0082】
更に、上記の第1から第4の実施の形態の各々では、防波板はボールタップとは独立して形成されたものであるが、防波板が吐出口に一体となって形成されていても良い。
【0083】
更に、上記の各実施の形態では、防波板は、特定形状のものであったが、特定形状以外のものでも良い。
【0084】
更に、上記の各実施の形態では、防波板の中央部分は、平坦面となっていたが、弁体側に凸状面であっても良い。
【0085】
更に、上記の第5の実施の形態では、防波板は、ねじ加工により吐出口から外れないようにされているが、他の方法で防波板を外れないようにして取り付けても良い。
【0086】
更に、上記の各実施の形態では、防波板の羽根部分の捻じり角は、特定値であったが、それ以外でも良い。又、捻じり方向が反対であっても良い。
【実施例】
【0087】
上記の実施の形態のボールタップ21〜25で使用される防波板41について、吐出口3に取り付けた場合の効果を検証する比較実験及び、捻じり角θの最適値を示す実験を行なった。
1.実験条件
まず、どのような実験条件で行なったかを示す。
【0088】
図10は、第1の実施の形態に対応するボールタップを備える水槽を示す概略断面図である。
【0089】
尚、この実施例によるボールタップ26は、
図1で示したボールタップ21の構成と略同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、ボールタップ26の特有の部分について主に説明するが、以後の説明においては、ボールタップ26の構造は
図2を随時参照するものとする。
【0090】
図を参照して、ボールタップ26は、口径25Aの給水管53と接続され、高さH
tの水槽16の内部で、水槽16の幅L
t及び奥行きM
tの各々略中央位置に設置されている。ボールタップ26の止水時の水面17の高さは、H
sであり、止水時の吐出口3の下端から水面17までの高さはH
aである。給水管53は、口径25Aの給水管52と接続され、給水管53と給水管52との間には圧力計65が設置されている。給水管52は、口径50Aの給水管51と接続されている。そして、給水管51は、水槽16の外にある給水ポンプ(図示せず)につながっている口径200Aの給水管50と接続されている。水槽16の上端から給水管50の中心までの高さは、H
1である。水槽16の底面には、排水用設備64が設置されている。
【0091】
ボールタップ26の具体的な仕様について下記に示す。
製品:複式ボールタップ(防波板付き)
製造メーカ:株式会社アイエス工業所
型番:WA25
口径:25A
ここで、水槽16のサイズ、給水管50の設置位置、止水時の位置についての具体的な数値を下記に示す。
水槽16の幅L
t:1500mm
水槽16の高さH
t:1300mm
水槽16の奥行きM
t:935mm
止水時の水面17の高さH
s:約960mm
止水時の吐出口3の下端から水面17までの高さH
a:約60mm
水槽16の上端から給水管50の中心までの高さH
1:215mm
給水ポンプから給水管50までの距離:約6m
次に、図示しない給水ポンプの具体的な仕様について下記に示す。尚、給水ポンプは吐出量及び圧力を変更できる。
製品:渦巻ポンプ
製造メーカ:株式会社日立製作所
形式:JOV−CH
入口口径:100mm
出口口径:80mm
吐出量:0〜2.5m
3/min
圧力:0.1〜0.37MPa
駆動電動機:15KW
2.実験対象
実験条件となる
図10で示したボールタップ26において、吐出口3に取り付ける防波板41の形状をいくつか変えて実験を行なった。そのときの実験対象となる防波板41の形状について説明する。尚、防波板は、
図4で示した比L
2/L
1が3.3であるものを用いた。
【0092】
図11は、
図4で示した捻じり角θを10〜60度の範囲で10度毎に変化させた防波板の概略外観図であって、
図3に対応した図である。
【0093】
尚、この実施例による防波板41は、
図3で示した防波板41の構成と同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、各防波板41の異なった部分について主に説明する。
【0094】
図を参照して、
図11の(1)は捻じり角θが10度のときであり、
図11の(2)は捻じり角θが20度のときであり、
図11の(3)は捻じり角θが30度のときであり、
図11の(4)は捻じり角θが40度のときであり、
図11の(5)は捻じり角θが50度のときであり、
図11の(6)は捻じり角θが60度のときである。
3.実験の測定方法
(1)レバーの揺動角度の測定方法
図10を参照して、水位変動に伴い、水面17が上下に変動すると、水面17に浮いたフロート8も上下に変動することになる。このときのフロート8の上下変動は、フロート8及びレバー機構7に接続されたロッド30と水平線とのなす角α(
図10に図示)で表わすことができる。角αをレバー揺動角度(レバー角度、揺動角度)ということにする。
【0095】
ここで、レバーの揺動角度を測定する方法について説明する。
【0096】
まず、フロート8に接続されたロッド30の表面に赤色のテープを貼る。次に、水位変動に伴い、ロッド30(フロート8)が変動している様子を、
図10を貫通する方向からボールタップ26をカメラにて動画撮影する。そして、撮影した動画像に対してデジタル画像処理を行ない、赤色の画素を抽出して、直線で近似することでレバー揺動角度を測定した。尚、フロート8の上下変動値は、ボールタップ26とレバー27との接続箇所である回動中心からフロート8の中心までの距離(約326mm)とレバー揺動角度から換算できる。
【0097】
尚、給水ポンプの圧力は0.37MPaで行なった。
(2)流量の測定方法
流量は、給水ポンプ設備に付設の電磁流量計で測定した。電磁流量計の具体的な仕様について下記に示す。尚、測定値の読み取りは、電磁流量計のアナログ指針を読み取る方式を採用した。又、実験条件となる
図10で示したボールタップ26のストレーナ31(
図2参照)は取り外した状態で、給水ポンプからの圧力を0.1〜0.37MPaで変化させて、流量の計測を行なった。
製品:電磁流量計
製造メーカ:株式会社日立製作所
形式:FMR−6WA形
4.実験結果
(1)防波板41が無い場合の比較実験結果
まず、
図10で示したボールタップ26で防波板41を取り付けなかった場合における時系列レバー揺動角度についての比較実験結果を示す。
【0098】
図12は、
図10で示したボールタップにおいて防波板が無い場合における時系列レバー揺動角度図である。
【0099】
図を参照して、縦軸はボールタップ26に防波板41を取り付けなかった場合のレバー角度(度)であり、横軸は経過時間(秒)である。測定開始から100秒くらいまでレバー角度の上下変動が非常に大きい。これは、
図10で示した水面17の上下変動が非常に大きいことを示している。その後、水面17の上昇と共に、弁体6(
図2参照)が上昇して、弁座4(
図2参照)と弁体6(
図2参照)との間の通水路が狭くなると共に水量が減り、水面17の上下変動も少なくなり、止水に至る。
【0100】
図13は、
図12で示した時系列レバー揺動角度図の最初の10秒間における時系列レバー揺動角度詳細図である。
【0101】
尚、
図13は
図12の測定開始後10秒間の実験結果からレバー角度の傾き成分を除去して判りやすく拡大したものである。
【0102】
図を参照して、約8.5秒から約9.5秒までの遥動角度が最大振幅となっており、約12度である。
図10で示した水面17の上下変動に換算すると、約68mm上下していることになる。
(2)防波板41を取り付けた場合の実験結果
図14は、
図12で示したボールタップにおいて捻じり角θが30度である防波板を取り付けた場合における時系列レバー揺動角度図であって、
図12に対応した図である。
【0103】
尚、
図14は
図12と略同一の表示形式であるので、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、相違点について主に説明する。
【0104】
図を参照して、
図10で示したボールタップ26に捻じり角θが30度の防波板41を取り付けたときのレバー角度の変動は、
図12で示したレバー角度の変動と比べると、非常に小さくなっている。すなわち、
図10で示した水面17の上下変動が、
図12で示した場合と比較すると非常に小さくなっているといえる。
【0105】
図15は、
図14で示した時系列レバー揺動角度の最初の10秒間における時系列レバー揺動角度詳細図であって、
図13に対応した図である。
【0106】
尚、
図15は
図13と同一の表示形式であるので、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、相違点について主に説明する。
【0107】
図を参照して、約2.9秒から約3.4秒までの遥動角度が最大振幅となっており、約2度である。
図10で示した水面17の上下変動に換算すると、約11mm上下していることになる。
図13と比較すると、最大振幅が著しく小さくなっており、防波板41の効果が明確に表れているといえる。尚、捻じり角θが30度以外の防波板41に対しても同様の実験を行なった結果、前述の4.の(1)で示した防波板41がない場合に比較すると、捻じり角θが30度の場合と同じような傾向を示し、後述するように効果は顕著であった。
(3)捻じり角θ毎に対するレバー揺動角度の標準偏差の実験結果
図11で示した捻じり角θを10〜60度の範囲で10度毎に変化させた防波板41におけるレバー角度の標準偏差の実験結果を示す。
【0108】
図16は、
図11で示した捻じり角θ毎の防波板に対するレバー揺動角度の標準偏差図である。
【0109】
図を参照して、縦軸はレバー角度の標準偏差(度)であり、横軸は
図11で示した捻じり角θを10〜60度の範囲で10度毎に変化させた防波板41及び防波板41を取り付けなかったもの(
図16で示した「なし」に対応)である。レバー角度の標準偏差は、
図13及び
図15で示した時系列レバー揺動角度の最初の10秒間において、レバー角度の傾き成分を除去した時系列レバー揺動角度詳細図から求めたものである。ここで、レバー角度の標準偏差が小さいということは、さざ波のように
図10で示した水面17の上下変動の振幅が均一な状態が続いていることを表し、防波板41の効果が良好であるといえる。捻じり角θが10度〜50度のときには、標準偏差が小さく表れており、レバー角度の振幅、すなわち水面17の上下変動が小さい上に、上下変動の振幅が均一であり、望ましいことが判る。
(4)捻じり角θ毎の防波板に対する流量の実験結果
図11で示した捻じり角θを10〜60度の範囲で10度毎に変化させた防波板41における流量変化の実験結果を示す。
【0110】
図17は、
図11で示した捻じり角θ毎の防波板に対する流量図である。
【0111】
図を参照して、縦軸は流量(L/min)であり、横軸は
図11で示した捻じり角θを10〜60度の範囲で10度毎に変化させた防波板41及び防波板41を取り付けなかったもの(
図17で示した「90度」に対応)である。給水ポンプの圧力は、0.1MPa、0.2MPa、0.3MPa、0.37MPaの4種類に変化させて計測を行なった。捻じり角θが10度の場合は、防波板41の開口面積が小さくなるため、防波板41なし(「90度」)の場合に比較して、流量の減少が著しく、望ましくない結果であった。4種類の給水ポンプの圧力において、捻じり角θが20度〜60度の場合、防波板41がない場合と比べて、流量の減少割合が少なかった。
5.総括
上記で示した結果から、水面17の上下変動が少ない防波板という観点からは、捻じり角θが10度〜50度が好ましいものであった。又、流量の減少割合が少ない防波板という観点からは、捻じり角θが20度〜60度の場合が好ましいものであった。よって、これらのことから総合的に判断して、防波板41の捻じり角θが、15度〜55度の場合がフロート8の上下変動、すなわち水面17の上下変動も少なく、且つ、流量の減少割合が少ないので、好ましいといえる。又、製作の容易さからも望ましいことが判明した。尚、防波板41は、通常6分割(6枚羽根)によって、流量の減少割合が少なく、かつ、十分な旋回流と円錐状の吐出水が得られることも判明した。又、一部口径の大きなボールタップでは、6分割よりも8分割の方が流量の減少割合が少なく、かつ、望ましい旋回流と円錐状の吐出水パターンが得られるものもあることが判っている。同様に、4分割の方が望ましい場合もあることが判っている。更に、防波板の比L
2/L
1が3.3であるものを使用していたが、比L
2/L
1は2.4〜3.7の範囲にあるときに、流量の減少割合が少なく、かつ、望ましい旋回流と円錐状の吐出水パターンが得られることが判っている。更に、防波板41は吐出口3にできるだけ近いことが、円錐状の吐出液パターンを得るために望ましい。