【課題を解決するための手段】
【0027】
かかる課題を解決するために、船舶の喫水線以下の船体近傍に気体を噴出し船舶の摩擦抵抗を低減するに当たり、主機関に加圧気体を給気する過給機の周辺から当該船体近傍に噴出する当該気体を取り出すとともに、少なくともこの取り出し状況に応じて当該過給機の給気特性を改善する可変手段を制御して主機関効率を所定の範囲に保つこと及び/または気体を噴出するに当たり気体の噴出状態を制御すること及び/または噴出された気体の拡散を形態可変の制限手段をもって制限し総合的な船舶の効率向上を図ったことを具備して構成される。
【0028】
船舶の喫水線以下(たとえば、船底に気体噴出口を設けてもよい。)から船体近傍に気体を噴出し、船体と周囲の水との間に気泡を介在させて摩擦抵抗を低減させることができる。このとき、当該気体として、たとえば、給気バイパス、掃気バイパス又は排気バイパスを経由して過給機の周辺から取り出した主機関の余剰ガスとしての給気ガス、掃気ガス又は排気ガスを気泡として再利用して船体の摩擦抵抗を減少させることで、気泡発生のためのエネルギーを別途使用することなく摩擦抵抗低減を図り、それによるエネルギー消費の低減を図ることができる。
【0029】
一方、排気ガスは主として過給機のタービンにも供給され、当該排気ガスの流量に応じて過給機の駆動効率が変化する。換言すれば、過給機の駆動効率は、余剰ガスとしてバイパスされた排気ガスのバイパス量に左右される。したがって、取り出したバイパス量に関わらず過給機の好適な駆動効率を保持できること、すなわち取り出し状況に応じて過給機の給気特性を改善することが必要となる。
【0030】
ここで、「過給機の給気特性を改善する可変手段」とは、空気や排気ガスを含む気体が過給機に供給されるときに、好適に当該過給機に流入するように動作するものを示す。たとえば、流入気体に変動が生じても過給機の駆動効率を落とさないように、当該気体が通過する経路を可変とし当該経路の面積を絞ったり、流入気体の排気タービンやコンプレッサーに対する流入方向を制御するものである。すなわち、当該可変手段は、過給機に係る排気タービンに排気ガスが流入する前に排気ガスの流入状態を制御することができる位置及び/または過給機に係るコンプレッサーに大気から空気が流入する前に空気の流入状態を制御することができる位置に設けられ、流入気体に変動が生じても排気タービンやコンプレッサーに好適に流入気体が作用するもの等をいう。
【0031】
また、可変手段は、一定量の変数(たとえば、主機関の熱負荷に関連した物理量、掃気圧、排気温度、過給機特性、過給機効率、加圧気体の圧力、排気の圧力、船舶の喫水等)を元にして出力の数値・動作(たとえば、可変手段に係る可変部分の開度や角度等)を経時的に変動させるように制御するものであり、開ループ系及び/または閉ループ系のいずれにおける制御も行うことができるものである。
【0032】
一方、気体を噴出する際は、たとえば船舶の航行状態、海象や天候或いはその他の外的要因により、噴出後に気泡が流れる方向や船体近傍に気泡が介在する状況等が変化するため、それらを予測して気体の量、向き、速度等を含む噴出状態を制御することで効果的な摩擦抵抗低減を実現することができる。
【0033】
また、噴出した気体が船舶の航行状況等に影響を受けずに水中の気泡を船底近傍に保持しつつ流す制限手段は、状況に応じて動作することができる形態可変とすることが望ましい。当該制限手段は、人的操作、自動操作或いは自然法則にしたがって、航行時やドック入り時に、自在に突出、収納できることが好ましい。
【0034】
こうした構成により、過給機の給気特性を改善する可変手段を有することで、バイパスした排気ガスの排気量の増減に応じて一定の変数により当該可変手段を制御することができ、当該過給機に供給される排気ガスの排気量も好適に制御することができる。したがって、過給機効率を低減させることなく、主機関へ加圧気体を好適に給気できるため、全体として主機関効率を所定の範囲に保つことができる。また、気体の噴出状態を制御することで、船底近傍に気体を保持しつつ流すことができる範囲を拡大し、船舶の航行状態による影響を最小限に抑制するように噴出する方向を定め、これにより好適に摩擦抵抗低減を実現することができる。さらには、噴出された気体の拡散を形態可変の制限手段をもって制限することで、当該制限手段が航行における抵抗体となることなく、船底近傍に気体を保持することができる時間を延ばすことができ、したがって好適に摩擦抵抗低減を実現することができる。
【0035】
また、上記或いは以下の構成において、当該可変手段は可変ノズルとし、当該過給機と当該主機関の間から加圧気体及び/もしくは排気の一部を取り出し、少なくともこの取り出し状況に応じて当該可変ノズルを制御するようにしてもよい。
【0036】
ここで、「可変ノズル」とは、たとえば、羽根が複数個並ぶベーン式のもので当該羽根の角度や向きを変えることができるものを示す。詳細には、過給機の駆動効率に応じて変更する加圧気体の圧力及び/もしくはバイパスされた排気ガスの排気量に応じて過給機に供給される排気ガスの流入量を好適に保持するように、羽根により形成されるノズルの開口面積や流路の絞り具合を任意に変更するものである。なお、当該羽根の数及び形状に限定はないが、気体の通気の障害とならないものであればよい。
【0037】
こうした構成を備えることにより、可変ノズルによって加圧気体の圧力及び/もしくは過給機に流入する排気ガスの流入状態を制御することができるため、既存の過給機へ当該可変ノズルを付設するだけ高効率な過給機の駆動を実現し、この結果、主機関効率を所定の範囲に保つことができる。
【0038】
また、上記の構成において、当該気体の噴出状態を当該船舶の航行状態に応じて制御するようにしてもよい。
【0039】
船舶の航行状態とは、たとえば、波浪、潮流、風向き、風力、船舶の喫水等の影響に伴う船舶の航行に応じて変化する物理量であって、水と船体との相対速度、船舶の喫水の大小、船体の傾き、船体に働く剪断力、(たとえば測深儀等によって検出することのできる)航行域の水深等を総合的に含めたものを示す。
【0040】
したがって、これら航行状態を検出し船舶の置かれた状況に応じて気体の噴出状態(気体の噴出流量、流速、噴出口の向き等)を制御することが好ましく、その際はこれらの検出値をベースとした開ループ系及び/または検出値を直接利用する閉ループ系のいずれにおける制御でもよい。
【0041】
こうした構成を備えることにより、船舶の航行状態によって、気体を噴出させる方向や流速を含む噴出状態を制御することができるため、船底近傍に噴出する気体の範囲、量又は時間等をより好適なものとすることができる。
【0042】
また、上記或いは以下の構成において、当該制限手段を収納可能としてもよい。
【0043】
「制限手段を収納可能」とは、制限手段を突出する状態から収納もしくは格納された状態にできることを示す。
【0044】
ここで、制限手段を突出する状態とは、制限手段により、噴出した気体の拡散を防ぎ得る状態、航行時におこる船舶の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を抑制し得る状態等を示し、当該制限手段の一部(先端等)が突出している状態も含む。
【0045】
一方、制限手段を収納する状態とは、たとえば、船底内に制限手段の全部または必要部分を納め全部または必要部分において突出する部分がないこと(以下、「制限手段を格納する状態」ともいう。)、制限手段と船底との境界面から当該制限手段を折り畳むこと(以下、「制限手段を屈折する状態」ともいう。)を含む。
【0046】
こうした構成を備えることにより、船舶が浅瀬を航行しているときや入港するときなど気体噴出を行わず、制限手段が航行上の抵抗体となり得る場合や、ドック入り時に船体を盤木等に定着させる場合など、状況に応じて制限手段が障害となり作業上の負担になるときに収納することができる。
【0047】
また、上記課題を解決するため、船舶の主機関と、この主機関の排気により駆動され当該主機関に加圧気体を給気する過給機と、この過給機の給気特性を改善する可変ノズルと、当該主機関と当該過給機の間から加圧気体及び/もしくは排気の一部を取り出し、この取り出した加圧気体及び/もしくは排気を喫水線以下の船体近傍に噴出する加圧気体バイパス及び/もしくは排気バイパスと、当該加圧気体及び/もしくは排気の取り出し量と当該主機関の熱負荷に関連した物理量と過給機特性に応じて当該可変ノズルを制御する制御手段を具備して構成される。
【0048】
「船舶の主機関」とは、液体燃料やガス燃料により駆動されるエンジンやガス燃料により駆動されるガスタービン等を言う。
【0049】
「主機関に加圧気体を給気する過給機」とは、たとえば排気ガスを通過させて排気タービンを回転してコンプレッサー等を動作させ、主機関に加圧気体を給気するものである。過給機の排気タービンを通過する排気ガスの量は、主機関にとって性能、信頼性を保証する重要な物理量であり、その値は適正に確保されねばならない。また、主機関に対する過給機からの空気供給量も主機関の運転状態に応じて適正な条件に制御される必要があり、過給機からの気体の取り出しや主機関以降からの排気の取り出しに当たっては、厳密管理された条件下でコントロールされねばならない。
【0050】
「過給機の給気特性を改善する可変ノズル」とは、たとえば空気や排気ガスを含む気体が過給機に供給されるときに、好適に過給機に流入するようにノズル部分の羽根(ベーン)の向きや角度の調整を可能とするものを示す。詳細には、過給機の駆動効率を落とさないように、経路の面積を絞ったり流入方向を制御したりするものである。すなわち、可変ノズルは、過給機に係る排気タービンに排気ガスが流入する前に排気ガスの流入状態を制御することができる位置及び/または過給機に係るコンプレッサーに大気から空気が流入する前に空気の流入状態を制御することができる位置に設けられ、流入気体に変動が生じても排気タービンやコンプレッサーに好適に流入気体が作用するもの等をいう。
【0051】
「主機関の熱負荷に関連した物理量」とは、主機関の熱負荷に関連して測定・検出される物性値であり、たとえば、掃気圧と排気温度(或いは排気管の温度もしくはこれらと同視し得るか、もしくはこれらと一意的対応関係を有する周囲温度)、流量、過給機回転数(周速)等を採用することができる。また、過給機特性としては、過給機効率、過給機とエンジンとのマッチング(適合性)度合い等の性質・特性値を採用することができる。物理量の取得には、それぞれの物性値を検出できるセンサーを採用できる。
【0052】
こうした構成を備えることにより、可変ノズルに係るベーンの開閉度合いや絞り具合を一定の変数により制御することで、過給機に供給される排気ガスの流入状態を最適化することができる。したがって、加圧気体バイパス及び/もしくは排気バイパスと、当該加圧気体及び/もしくは排気の取り出し量と主機関の熱負荷に関連した物理量に応じて可変ノズルを制御することで、当該過給機の給気特性の改善、すなわち過給機効率を低減させることなく主機関へ加圧気体を好適に給気することができる。また、過給機特性に係る所定の変数を基に、最適な過給機効率に追従するように可変ノズルを制御してもよい。
【0053】
また、上記構成において、本願に係る摩擦抵抗低減装置は、主機関の熱負荷に関連した当該物理量として掃気圧と排気温度を用い、また過給機特性は過給機効率に基づいた構成とすることができる。
【0054】
こうした構成を備えることにより、特に掃気圧と排気温度を物理量として取り出して一定の変数として用いることで、過給機に好適に流入する気体の流入状態を形成できるように当該可変ノズルに係るベーンの開閉度合いや絞り具合を制御することができる。すなわち、これらの変数を用いることで、より高効率な過給機の給気特性の改善、すなわち過給機効率を低下させることなく主機関へ加圧気体を好適に給気することができる。したがって、このようにして得る過給機特性に係る所定の変数もより理想値に近いため、当該過給機特性に基づいて可変ノズルを制御することで、乱れなく極めて最適な過給機効率を出力することができる。
【0055】
また、上記課題を解決するため、本願に係る摩擦抵抗低減装置は、船舶の喫水線以下の船体の近傍に噴出する気体を供給する送気手段と、当該気体を噴出する気体噴出口と、当該船舶の航行状態を検出する航行状態検出手段と、この航行状態検出手段の検出結果に応じて当該送気手段から供給される気体の噴出状態を制御する噴出状態制御手段とを備えた構成とすることができる。
【0056】
送気手段とは、気泡発生に有効な量の送気量が確保できる、ブロワーやタービン駆動のコンプレッサー、船舶に予め装備されている空気圧供給源、機関の排気ガスを加圧したもの、過給機と主機関の間から一部を取り出した加圧気体や排気等を言い、特に吐出側圧力が変動しても、その送気量の変動が少ないものが好ましい。当該送気手段から送気された気体は、気体噴出口を経由して噴出される。
【0057】
また、航行状態検出手段とは、船舶の航行に応じて変化する物理量である水と船体との相対速度を検出する相対速度検出器、船舶の喫水の大小を検出する喫水検出器、船体の傾きを検出する傾斜検出器、船体に働く剪断力を検出する剪断力センサー、航行域の水深を測定する測深儀等を言う。
【0058】
また、噴出状態制御手段とは、供給された気体を噴出する際の噴出量、流速、方向及びタイミング等のうち少なくとも一つを調節して噴出状態を制御するものである。したがって、ここでの制御手段は、これらを実現するシステムや構造、また電気的に制御されるものを含み、電気制御回路以外に、制御目的を達成するためのプログラム、アルゴリズムやこれらを記憶した電子的及び/もしくは磁気的媒体、またプログラム、アルゴリズムを実行するためのコンピュータ等を含む概念であり、電気制御系以外に、空気圧系、油圧系で制御されるもの、物体の構造的に制御されるもの、またこれらを組み合わせたもの全てを含むものとする。
【0059】
こうした構成を備えることにより、航行状態検出手段により検出した種々の航行状態における検出結果をもとに、送気手段から送気された気体を気体噴出口を介して船外に噴出する前に、噴出後の気泡状態を想定しつつ噴出状態を制御することができる。たとえば、船舶の状態を加味して噴出した気体が拡散しないように、もしくは拡散する時間を遅延させるように気体の噴出時及び/もしくは噴出後の状態を制御することができるため、所望のもしくはこれに近い気体噴出を実現することができる。
【0060】
また、上記構成において、当該噴出状態制御手段は航行状態に応じて気体の噴出量を調節するとともに、気体噴出口で気体の噴出方向を調節した構成とすることができる。
【0061】
船舶の航行状態は、船舶の航行に応じて変化する物理量である水と船体との相対速度、船舶の喫水の大小、船体の傾き、船体に働く剪断力、航行領域の水深等に応じて変化するものである。
【0062】
また、当該航行状態は、船舶の所定の事情(人や貨物を含む総積載量、気体を噴出させる必要のないとき、省エネ活動時等)、港等の出航直後や巡航時等における航行の場所、天候及び潮流のうち少なくとも一つの変化が生じることにより、変化し得る。したがって、気体の噴出状態は航行状態に伴い様々な状況で調節が必要であり、所望の摩擦抵抗低減効果を得るためには気体の噴出量や噴出方向も調節することが必要となる。
【0063】
気体の噴出量は、たとえば上記送気手段の駆動制御、気体の生成量等によって調節することができる。また、噴出する直前に噴出口の開口の変更等によっても調節することができる。一方、気体の噴出方向は、噴出口に整流板を設けて角度調整すること、噴出口をノズル構成として方向を変えること、また流体素子を利用すること等により調整することができる。
【0064】
こうした構成を備えることにより、気体を生成する送気手段により供給量を的確に制御したとしても船舶の航行状態により所望の摩擦抵抗低減効果を得られない場合において有効なものとなる。たとえば、水と船体との相対速度、船舶の喫水の大小、船体の傾き、船体に働く剪断力、航行領域の水深等の影響により変化する航行状態に応じて、気泡が浮力により拡散する傾向にある。このような場合において予め気体の噴出方向を調整することができれば、摩擦抵抗低減効果の損失を食い止められることになるが、上記構成はこれを実現するものである。
【0065】
また、上記構成において、当該気体噴出口は船底の表面より突出しない構成とすることができる。
【0066】
船底の表面より突出しない構成としては、例えば、気体噴出口を設ける部分が船底表面より凹んでいる構成、気体噴出口が船底表面と略同一面上に併設する構成等であり、当該構成の形状及び寸法に限定はない。
【0067】
こうした構成を備えることにより、気体噴出口が船舶の航行時の抵抗体になることが防止できる。また、突出していないため、ドック入り時の作業上の負担にもならない。すなわち、船体を定着する盤木等の支持台に載せる際に、気体噴出口の突出部分を考慮しなくてすみ、船底と略同程度の高低で同一面を構成するため、なんら配慮は不要である。さらに、船底の修繕等においても他の部分と同様の扱いをすることができるため、作業効率も損なわれない。
【0068】
また、上記構成において、当該気体噴出口に気体の整流板を有した構成とすることができる。
【0069】
「整流板」は、たとえば船底に略同一面上に併設し、気泡が潮流や船舶の傾き等の影響を受ける前にその流路を大よそ方向付けるものである。また、形状に限定はないが、好適には平面状の構造体で、一つ又は複数から成る。気体の噴出量によって厚みは異なるが、平滑で水に対し耐食性を有していることが好ましい。
【0070】
こうした構成を備えることにより、整流板により気泡の流路が予め定められるため、より好適に摩擦抵抗低減を実現し得る。また、当該整流板は船舶の構造体とすることもでき、その場合、船底から突出しないためドック入り時の作業上の負担にもならない。
【0071】
また、上記課題を解決するため、本願に係る船舶の摩擦抵抗低減装置は、船舶の船底に設けた気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、前記気体噴出口から噴出された気体の拡散を制限する収納可能な拡散制限手段とを
備え、前記拡散制限手段は、収納可能な構成として前記船底から重力により垂下するか、あるいはばねにより付勢し前記船底より突出可能な構成としたことを特徴とする。さらにまた、上記課題を解決するため、本願に係る船舶の摩擦抵抗低減装置は、船舶の船底に設けた気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、前記気体噴出口から噴出された気体の拡散を制限する収納可能な拡散制限手段とを備え、前記拡散制限手段は、収納可能な構成として船体に回動部を付設して重力により、あるいはばねにより付勢して前記船底より突出する状態を維持する折りたたみ可能な構成としたことを特徴とする。
【0072】
ここで、拡散制限手段は、たとえば通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)及び波浪や風力の影響による突発的な船舶の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を抑制するもので、端板、リブ構造(たとえば△断面のリブ構造)、マウンド構造、フィン構造等を示す。
【0073】
詳細には、拡散制限手段は、鉄、鋼及びスチールを含む金属素材、FRP等の素材から形成され、その全部または一部が船体から突出した板状や流線状の構造物であって、その材料は剛性を有し、水等の影響による錆を誘発しにくいものが好ましい。防錆のために、当該素材の表面を塗装することもより好ましい。なお、当該拡散制限手段の形状及び寸法に限定はない。
【0074】
したがって、「収納可能な拡散制限手段」とは、拡散制限手段を船底や船首部等の船舶本体から突出する状態又は収納する状態にできるものを示す。
【0075】
ここで、拡散制限手段を突出する状態とは、拡散制限手段で通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)による横揺れ及び波浪や風力等の影響による突発的な船体の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を防止し得ること、拡散制限手段によりドック入り時の所定の作業に影響し得ること等を示し、端板の一部(先端等)が突出していることも含む。
【0076】
一方、拡散制限手段を収納する状態とは、たとえば船底や船首部等の船舶本体内部に設けた余剰空間に拡散制限手段の全部分を納め突出する部分がないこともしくは拡散制限手段の一部分を納め一部が突出していること、または拡散制限手段と船舶本体との境界面から当該拡散制限手段を折り畳むことを示す。なお、上述した制限手段は、拡散制限手段として機能することもできる。
【0077】
拡散制限手段の突出・収納を実現する構成は、拡散制限手段を駆動機構により可変的に駆動するものがある。当該駆動機構は、拡散制限手段に連接することができる油圧、水圧又は空気圧アクチュエータやモーター等の動力源等であって、船底や船首部等の船舶本体内部に設けた余剰空間に設置することが好ましい。この場合、当該駆動機構の駆動により拡散制限手段を突出・収納することができる。当該駆動機構の操作は、人的操作或いは航行時の予め定めた条件に基づいて制御する自動操作でもよい。
【0078】
また、当該駆動機構はジョイント等との組み合せにて構成されるリンク機構とすることもできる。これにより、駆動機構の直線運動をリンク機構等により回転運動に変換することができる。
【0079】
一方、拡散制限手段は、重力を受けて自重により及び/または付設したバネ等の弾性部材からの付勢により突出し、及び下方向からの圧縮加重を受けて収納することもできる。すなわち、拡散制限手段の自重や弾性部材の弾性力よりも大きい下方向からの圧縮荷重を受けない限り、拡散制限手段を突出する状態は維持されるが、逆に当該圧縮荷重を受け続ける限り、拡散制限手段を収納する状態が維持される。特に、拡散制限手段を屈折する状態にするには、拡散制限手段が屈折しやすいように所定の傾斜を設け、拡散制限手段等にひっかからず当該圧縮荷重を受けるようにすることが好ましい。なお、駆動機構或いはリンク機構による可変の動作と拡散制限手段の自重や拡散制限手段に付設した弾性部材による動作を組み合せて突出・収納する構成としてもよい。すなわち、拡散制限手段を突出させるときは自重を利用し、収納するときは駆動機構等により任意のタイミングで行ってもよい。
【0080】
こうした構成を備えることにより、航行時に送気手段から送気され気体噴出口から噴出された気体の拡散を拡散制限手段により制限し、船底近傍に保持しつつ流すことができる。また、収納可能な構造とすることで、入港時や浅瀬等の航行時に気泡による摩擦抵抗低減の必要がないときは、拡散制限手段を収納する状態とすることで抵抗体・障害物とならず、ドック入り時の作業上の負担にもならない。
【0081】
また、上記構成において、当該拡散制限手段は、収納時に船底から突出しない構成としたことができる。
【0082】
「収納時に船底から突出しない構成」とは、船舶の航行時及び/またはドック入り時に船底に設けた拡散制限手段を格納する状態にすること、または屈折する状態にすること等を示す。なお、拡散制限手段を屈折する状態において、当該拡散制限手段の厚みにより船底から出っ張っている部分(船底より凸になっている部分)を有する状態も含む。
【0083】
当該突出しない構成は、たとえば拡散制限手段に連接した駆動機構を人的操作或いは航行時の予め定めた条件に基づいて制御する自動操作により構成することができる。また、重力の影響を受けて自重により突出する拡散制限手段や弾性部材を付設した拡散制限手段においては、自重や弾性部材の弾性力よりも大きい下方向からの圧縮荷重を受け続ける限り、拡散制限手段を収納しつづけることができる。
【0084】
こうした構成を備えることにより、拡散制限手段の一部(先端等)も突出していない状態が招来されるため、ドック入り時に拡散制限手段が障害物となることはなく船舶を定着することができる。また、拡散制限手段が障害となって船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0085】
また、上記構成において、当該拡散制限手段は、収納可能な構成として折りたたみ可能な構成とすることができる。
【0086】
「折りたたみ可能な構成」とは、たとえば拡散制限手段を屈折する状態にできることを示し、屈折する向きは船底に対して内側または外側を含む。このとき、内側に屈折する状態においては、抵抗を防ぐため拡散制限手段の側面が船底に収斂もしくは閉着されることが好ましい。また、船底の外側に屈折する状態においては、拡散制限手段を船底側端部の円弧部(以下、「ビルジサークル」ともいう。)に設けることで、折りたたんだときに船底との高低差(端板が凸の状態)をなくすことができる。
【0087】
拡散制限手段を屈折する状態にするには、たとえば駆動機構を油圧、水圧または空気圧アクチュエータとし、ジョイント等との組み合わせにて構成されるリンク機構を設け、駆動機構の直線運動をリンク機構により回転運動に変換することで実現できる。当該駆動機構の操作は、人的操作或いは航行時の予め定めた条件に基づいて制御する自動操作でもよい。
【0088】
また、拡散制限手段を船体にヒンジ等の回動部或いはばね等の弾性部材を介して付設し、拡散制限手段の自重及び/または弾性部材の付勢により突出する状態を維持することができ、メンテナンス時に盤木上に乗せた場合等、船体の重量により弾性部材が変形し、拡散制限手段を収納する状態を維持することができる。
【0089】
こうした構成により、拡散制限手段を折りたたみ可能とすることで、浅瀬等の低速度時には当該拡散制限手段が抵抗体・障害物となることはなく、また巡航時に当該拡散制限手段の折りたたんだ状態を解除して突出させれば通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)による横揺れや波浪や風力等の影響による突発な船体の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を防止し得、また船体の安定化も図れる。一方、ドック入り時に折りたためば拡散制限手段が障害物となることはなく船舶を盤木等の支持台に定着することができ、船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0090】
また、上記構成において、当該拡散制限手段は、収納可能な構成として伸縮可能で格納できる構成としてもよい。
【0091】
「伸縮可能で格納できる構成」とは、拡散制限手段を格納する状態にすることを示す。たとえば、油圧、水圧又は空気圧アクチュエータやモーター等の動力源等を駆動機構とし、当該駆動機構を船底近傍の船体内部に設けた余剰空間に設置する。そして、各アクチュエータの圧力変化やモーターの回転に伴い、拡散制限手段を突出させ、当該余剰空間に格納することができる。当該駆動機構の操作は、人的操作或いは航行時の予め定めた条件に基づいて制御する自動操作でもよい。なお、拡散制限手段は滑車等を利用して人の力によって伸縮可能としてもよい。
【0092】
また、航行時は拡散制限手段の自重により突出する状態を維持することもでき、メンテナンス時に盤木上に乗せた場合等、拡散制限手段の自重よりも大きい下方向からの荷重を受け続ける限り、自重に打ち勝ち拡散制限手段を余剰空間に収納する状態を維持することができる。或いは、荷重を与え続けるのでなく、限定的に与えた荷重により収納状態となった拡散制限手段を当該収納状態に維持させるストッパー等を備え、このストッパーを解除することで収納状態が解放されるようにしてもよい。駆動機構による可変の動作と拡散制限手段の自重による動作を組み合せて突出・格納する構成としてもよい。
【0093】
こうした構成により、拡散制限手段を伸縮可能で格納することができれば、当該拡散制限手段が余剰空間に格納されるため、浅瀬等の低速度時には当該拡散制限手段が全く抵抗体・障害物となることはない。また巡航時に当該拡散制限手段を突出させれば通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)による横揺れや波浪や風力等の影響による突発的な船体の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を防止し得、船体の安定化も図れる。一方、ドック入り時に拡散制限手段を伸縮して余剰空間に格納できれば、当該拡散制限手段が全く障害物となることはなく船舶を盤木等の支持台に定着することができ、船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0094】
また、上記構成において、当該拡散制限手段は、当該船底から重力により垂下するか、あるいはばねにより付勢し船底より突出可能に構成してもよい。
【0095】
「船底から重力により垂下する」とは、拡散制限手段が自重により垂下して突出する状態を示す。また、「ばねにより付勢し」とは、船体内部に設けた余剰空間に設けたばねと拡散制限手段とを連設し、或いは拡散制限手段と船体とをばねで連接して、当該ばねの弾性力を利用して、よりスムーズかつ安定的に拡散制限手段を突出可能とすることを示す。
【0096】
こうした構成を備えることにより、拡散制限手段を重力により垂下し、或いはばねにより付勢することで、あえて駆動機構を設けることなく、下方向から圧縮荷重を受けない航行時には拡散制限手段の自重により突出することができ、或いはばねの付勢を利用して船舶の振動等の影響によらずに、より安定して継続的な突出状態を維持することができる。なお、重力やばねによる垂下は、上記に記載した油圧、水圧又は空気圧アクチュエータやモーター等を駆動機構を部分的に組み合わせて突出するものとしてもよい。
【0097】
また、上記構成において、当該拡散制限手段は、船底長手方向に分割して列設した構成としてもよい。
【0098】
拡散制限手段を、特に端板とするとき、船底長手方向に設けるものであって、所定の寸法を有して列状に設けることができる。この場合、各拡散制限手段の間隔に限定はないが、拡散制限手段同士が突出・収納する際の障害にならない程度に密接したものが好ましい。また、各拡散制限手段が航行中の抵抗体とならないよう、横揺れ等により振動しない構造が好ましい。
【0099】
こうした構成を備えることにより、拡散制限手段が船底長手方向に分割して列設したことで、個別にメンテナンスを行うことができる。また、盤木等の支持台への定着を想定して当接部の拡散制限手段を突出・収納できるように必要相当数の駆動手段等を設ければよい。
【0100】
また、上記課題を解決するため、船舶の船底に設けた気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、当該気体噴出口から噴出された気体の拡散を制限する内力及び/もしくは外力に応じて変形可能な拡散制限手段とを具備して構成される。
【0101】
ここで、「拡散制限手段」は、上記の記載同様、たとえば通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)及び波浪や風力の影響による突発的な船舶の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を抑制するもので、柔軟材等で構成される。
【0102】
詳細には、当該拡散制限手段は、たとえばビニール、ゴム又は種々の繊維素材(たとえば、防弾チョッキやホバークラフトの船底等に用いられるもの)を含むある一定の可撓性、剛性、柔軟性又は弾性及び/もしくは強度を有する素材で形成された中空状のもの(以下、「中空構造体」ともいう。)或いは内部にスポンジ等の柔軟素材を充填したものでもよい。この場合、その形状(たとえば、円形、楕円形、三角形、四角形、及びその他の多角形等)には特に限定はないが、内部に流体(空気等の気体、水や油等の液体)や粉や土等の粉状物等を注入し、或いは封入することで内力を加え、航行中でも所望の形状を保持することができるものであることが好ましい。特に、柔軟性を有することで、ドック入り時において船舶を盤木等の支持台に乗せたときに当該拡散制限手段がその圧力により外力で圧縮(圧潰)できることが好ましい。また、注入、封入された流体や粉状物等を抜いたり取り出したりしてもよい。なお、内部及び外部が柔軟材のみで構成されるものでもよく、航行時に水圧等で圧縮されず膨張状態を維持し、航行中に気泡の拡散を防止し船底に保持しつつ流すことができるものであればよい。
【0103】
したがって、「変形可能な拡散制限手段」とは、当該拡散制限手段を船底から突出する状態又は収縮する状態にできることを含み、様々な所望の形状・状態に変形可能であるものを示す。
【0104】
ここで当該拡散制限手段を突出する状態とは、中空状の当該拡散制限手段内部に空気や水等の流体や粉状物等を注入し、或いは封入することで内力を加え、航行時でも水圧等で圧縮されず所望の形状を保持することを示す。また、中空状でない拡散制限手段であってもよく、同様に航行時でも水圧等で圧縮されず所望の形状を保持するものを含む。
【0105】
一方、拡散制限手段を収縮する状態とは、拡散制限手段に係る内力が無いか無いに等しい状態、または当該内力の有無に関わらず、当該内力よりも大きい圧縮荷重を受け続ける限り、拡散制限手段が圧潰され収縮した状態が継続される状態を示す。
【0106】
こうした構成を備えることにより、当該拡散制限手段に所定の内力を加えることで膨張し、通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)による横揺れや波浪や風力等の影響による突発的な船体の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を防止し得る。また、拡散制限手段に内力を加えなければ収縮し、または当該内力よりも大きな荷重を受け続ける限り、当該拡散制限手段は圧潰されるため収縮する。したがって、収縮した状態においては、気体の噴出を行わないときは抵抗体とならない。また、ドック入り時には盤木等の支持台から圧縮荷重を受けて圧潰されるため、拡散制限手段が障害物となることはなく船舶を定着することができ、船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0107】
また、上記構成において、本願に係る摩擦抵抗低減装置は、当該拡散制限手段を可撓性材料で構成された内部が中空な中空構造体とし、この中空構造体の内部から加圧することで拡大し及び/または減圧することで収縮させて構成してもよい。
【0108】
拡散制限手段を内部が中空な中空構造体にすることで、気体や液体等の流体からうける圧力変化により拡大・収縮しやすいものとすることができる。さらに、当該中空構造体を可撓性材料にすることで、加圧するほど膨張率が高まる。したがって、噴出した気体の量により気泡の数も変わるため、航行状態に応じて膨張率も変化させることができる。
【0109】
また、中空構造体のため、所定の排出口を開放すれば当該流体を外部に排出することができるため、減圧も短時間で行うことができる。
【0110】
ここで、拡散制限手段内部に注入する流体には、たとえば送気手段で生成し気体噴出口から噴出する余剰ガス、船舶の航行の抵抗となる流体力を有する空気や水等がある。すなわち、送気管と併用して長尺の拡散制限手段を設け、或いは拡散制限手段を送気管と兼用して用いることで、当該拡散制限手段が余剰ガスの流路となり、かつ余剰ガスを拡散制限手段内部に注入し内力を加えることができる。また、船舶の推進力を利用して船体前方から拡散制限手段に大気中の空気や水を注入し後方から排出することで内力を加えることができる。
【0111】
こうした構成を備えることにより、圧力変化に応じて形状変化する中空構造体を拡散制限手段とすることで、気体や液体等の流体の流動により内力を受けやすくして短時間で拡大させることができる。したがって、通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)や船体の傾斜時におこる気泡の拡散を抑制し、気泡を船底に保持しつつ流すことができる。また、当該流体は排出しやすく、短時間で収縮させることができる。こうすることで、ドック入り時に減圧するための時間が必要なく、即座に船舶の定着を行うことができるため、拡散制限手段が障害物となることはなく船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0112】
また、上記構成において、当該中空構造体の内部を、当該気体噴出口に送気する当該気体の通過する経路として構成してもよい。
【0113】
気体噴出口に送気する気体(余剰ガス)は、通常送気手段と連結する送気管を経由して気体噴出口から噴出するが、当該送気管の役割を兼用する中空構造体に係る拡散制限手段を経路としてもよい。また、送気手段或いは送気管と直結し、送気管と併用して中空構造体に係る拡散制限手段を設け、当該拡散制限手段も余剰ガスの流路として構成してもよい。
【0114】
こうした構成を備えることにより、送気管の役割を兼用する中空構造体により送気手段で形成した気体を気体噴出口に送気することができる。この際、当該中空構造体は気体の加圧により膨張するため、通常の航行(直進時及び旋回時を含む。)による横揺れや波浪や風力等の影響による突発的な船体の傾きによって生じる船底近傍の気泡の拡散を防止し、気泡を船底に保持しつつ流すことができる拡散制限手段の役割も果たすことができる。また、送気手段或いは送気管と直結し、気体噴出口付近で当該送気管と結合することで、送気管と併設して気体の経路を形成することもできる。こうすることで、仮に送気管のトラブル等により気体の噴出ができなくなったとしても、中空構造体により噴出を行うことができ、摩擦抵抗低減の効果は損なわれない。
【0115】
また、上記構成において、本願に係る摩擦抵抗低減装置は、当該拡散制限手段を可撓性材料で構成された内部が中空の中空構造体とし、前記船舶の航行に伴う流体力の作用により拡大し、及び/または流体力の非作用により収縮させて構成することができる。
【0116】
「船舶の航行に伴う流体力」とは、船舶の進行に対する抵抗となる水や大気により発生する流体から受ける圧力であるが、当該流体から受ける圧力は船舶の進行速度或いは当該流体の流速に比例して大きくなる。したがって、船舶の進行速度及び流速が遅いときは、流体力は小さいため中空構造体にかかる内圧は小さく収縮する。一方、船舶の進行速度が速く、或いは流速が速いときは、流体力が大きいため中空構造体にかかる内圧は大きいため拡大する。
【0117】
こうした構成を備えることにより、船舶の航行に伴う流体力により、わざわざ中空構造体に流体を注入等しなくとも、中空構造体内部を加圧し、拡大させることができる。したがって、船舶の動力及び/または外部から受ける流体力を活かして拡散制限手段を生成することができるため、気体噴出口から噴出した気体が船舶の揺れや傾き等によりおこる拡散を抑制し、気泡を船底に保持しつつ流すことができる。また、船舶が航行しない限り、船舶の動力及び外部から受ける流体力は発生しないため、ドック入り時には中空構造体は収縮し、即座に船舶の定着を行うことができることから、端板が障害物となることはなく船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0118】
また、上記構成において、当該船舶の船体の左右舷の傾きに応じて、当該拡散制限手段の当該船底からの突出度を調節して構成してもよい。
すなわち、本願の別の態様に係る船舶の摩擦抵抗低減装置は、船舶の船底に設けた気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、前記気体噴出口から噴出された気体の拡散を制限する収納可能な拡散制限手段とを備え、前記船舶の船体の左右舷の傾きに応じて、前記拡散制限手段の前記船底からの突出度を調節したことを特徴とする。
【0119】
噴出した気体により発生した気泡は、船底が水平な限り船底近傍に保持しつつ流すことができるが、船体の左右舷の傾きにより浮力の影響で水深の深いほうから浅いほうへと移動する。したがって、拡散制限手段の突出度も当該傾きに準じてよく、その調整は、拡散制限手段の自重及び/もしくは傾斜計等のセンサーにて船舶の傾きを検出し、この検出された船舶の傾き等を変数として所望の突出度を出力できる制御部と連動する、いわゆるセンシング機能により実現してもよい。
【0120】
こうした構成を備えることにより、航行上起こり得る船舶の船体の左右舷の傾きに応じて拡散制限手段が連動し、その突出・収納を調整することができる。すなわち、船底に保持する気泡が船体の左右舷の傾きに応じて拡散しようとする際に、同じように左右舷の傾きに応じて拡散制限手段を突出させることで、気泡の拡散を好適に抑制するとともに、他方の拡散制限手段は全部或いは一部を収納することができるため、航行における抵抗体となることを防止することができる。
【0121】
上記課題を解決するため、船舶の喫水線以下の船体に設けた気体噴出口と、この気体噴出口に気体を送気する送気手段と、当該気体噴出口から噴出された気体の拡散を制限する流れを発生させる制限流発生手段とを具備して構成される。
【0122】
噴出した気体により発生した気泡は、船体の左右舷の傾きにより浮力の影響を受けるため、拡散制限手段により気泡の進路を遮ることで拡散を抑制することができる。一方、当該拡散制限手段は、固形の板状のものや柔軟材を用いて膨張させたものであることを上述したが、これらに限定されず、たとえば、所定の流速にて液体を噴出して形成した擬似的な壁であってもよい。すなわち、液体等の流れにより擬似的な壁を生成できる制限流発生手段を船底近傍の船体内部に設けることでこの技術的思想を実現することができる。
【0123】
こうした構成を備えることにより、制限流発生手段により所定の範囲と厚み寸法を有する液体の流れを発生させることで、いわゆる擬似的な壁(端板)を形成して気泡の拡散流路を遮断することで、船舶の傾きにより生じる気泡の拡散を抑制し、気泡を船体近傍に保持しつつ流すことができる。また、当該制限流発生手段を船底内に突出しないように設置することで、制限流発生手段自体が抵抗体とならず、かつドック入り時に制限流発生手段を考慮して盤木の位置等を考慮する必要もなく、作業上支障はなくなる。
【0124】
上記課題を解決するため、船舶の喫水線以下の船体の近傍に噴出する気体を供給する送気手段と、この送気手段からの前記気体を経路を介して噴出する気体噴出口と、当該気体噴出口近傍の前記経路に設けた少なくとも前記気体の噴出を行わないときに経路を閉成する開閉手段とを具備して構成される。
【0125】
ここでの開閉手段とは、たとえば送気手段に繋がる送気管と気体噴出口とを貫通・遮断する開閉弁であって、少なくとも送気中は常時開き、送気を停止したときに閉じるものを含む。当該開閉手段は、バルブの弁箱に収納された円盤状の弁体が流路に対し直角に動作して流路の開閉を行うゲートバルブ、流体の流れを止めてしまう弁体を締めることで流量を調節できるストッポバルブ、流体の流れを常に一方向に保ち、逆流を防止するチェックバルブ等によって実現できる。なお、当該開閉手段は、人的操作或いは航行時の予め定めた条件に基づいて制御する自動操作でもよい。
【0126】
こうした構成により、経路を閉成する開閉手段を設けることで、気体供給停止時、すなわち気体の通気がないときに当該開閉手段を閉成できるため、送気管内部の水の逆流を防ぐこともできる。さらに、水に接触しないため、送気管内部が腐食したり、海藻やフジツボ、牡蠣等の貝類の付着、繁殖により汚損したりすることを防ぐことができる。
【0127】
上記の場合において、水中に臨む航行状態検出手段を噴出した気体の影響の受けないところに設置したことを特徴とする。
【0128】
航行状態検出手段としては、たとえば航行域の水深を測定する測深儀のように、水中に臨む船体の所定の部分に設置するものも含む。本願では、気体噴出口から噴出した気泡を船底近傍に保持しつつ流して摩擦抵抗を低減することを主眼としており、種々の航行状態検出手段での検出結果を基に気体の噴出状態を制御している。したがって、検出状態を最適化することで、検出結果の信頼性が向上し、所望の噴出状態を形成し、ひいては摩擦抵抗低減が向上する。
【0129】
こうした構成を備えることにより、水中に臨む航行状態検出手段の設置する位置を、噴出した気体の影響を受けないところ、すなわち、検出中に当該航行状態検出手段が気体に覆われず、及び検出範囲内に気体が浸入せずに安定した検出状態を保つことができるところにすることで、所望の検出結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0130】
本願によれば、可変手段を随時制御することで、過給機に流入する流入気体の状態を常時最適化し給気特性を改善することができる。たとえば、排気量の増減によって変化する一定の変数により気体の流入状態(方向、圧力、速度等)を制御することにより、過給機は過給機に流入する流入気体の量の影響を大きく受けずに稼動することになる。したがって、過給機効率を低減させず、主機関へ加圧気体を好適に給気し、全体としての主機関効率を所定の範囲内に維持することができる。また、気体の噴出状態(例えば、方向、噴出量、速度等)を制御することで、航行状態等から受ける影響を最小限にし、船体近傍の所望の範囲や位置等に気体を噴出することができる。すなわち、好適な摩擦抵抗低減効果を得るとともに、無駄な気体噴出を防ぎ、エネルギー効率も向上する。さらに、このような高効率の気体噴出に係る効果をより長時間維持するために、当該気体を形態可変の制限手段をもって制限することで、航行状態の影響による拡散を防止し、より好適な摩擦抵抗低減を実現することができる。また、メンテナンスも容易に実施できるものとなる。したがって、これら複合的な組み合わせにより船舶全体の航行における省エネルギー化を図ることができる。
【0131】
また、本願によれば、可変ノズルに係る所定の可変部分を、過給機と主機関の間から取り出す加圧気体及び/もしく排気の状況に応じて制御することで、加圧気体や排気に係る取り出し流量の増減に関わらず、過給機への流入状態を最適化することができる。したがって、過給機効率を低減させず、主機関へ加圧気体を好適に給気することができる。すなわち、高効率な過給機の駆動を実現し、ひいては主機関効率を所定の範囲に保つことができる。
【0132】
また、本願によれば、航行状態によって気体を噴出する方向、噴出量、速度等の噴出状態を制御することができるため、船体近傍に噴出する気体の噴出範囲、量、時間、タイミング等をより好適なものとすることができる。たとえば、船舶が波や潮流により横方向や斜め方向から力をうけることで船体が様々な角度に傾くが、航行状態としてこの傾きを検出し噴出状態を傾きに応じて制御することで最適な摩擦抵抗低減効果を得ることができる。
【0133】
また、本願によれば、気体の拡散を制限する制限手段を収納可能とすることにより、気体を噴出しない船舶が浅瀬を航行しているときなど制限手段が航行の障害となり得る場合や、ドック入り時に船体を定着させる場合などに収納し、当該制限手段が障害となり、また作業上の負担になることを防ぐことができる。したがって、制限手段を収納することで航行時における省エネルギー対策を行うことができるとともに、航行時以外のときは障害物とならず作業効率を向上させることができる。
【0134】
また、本願によれば、過給機の給気特性を改善する可変ノズルにより、バイパスした加圧気体や排気量の増減に付随して可変ノズルのベーンの開閉度合いや絞り具合等を制御することができ、過給機に供給される排気ガスの流入状態を好適に制御することができる。また、可変ノズルの制御に当たっては、加圧気体や排気の取り出し量と主機関の熱負荷に関連した物理量と過給機特性に応じて制御を行うため、加圧気体や排気の取り出しと主機関の状態の双方に配慮した制御が可能となる。したがって、過給機特性を悪化させることなく主機関へ加圧気体を好適に給気でき、全体として主機関効率を所定の範囲に保った上で加圧気体や排気の取り出しを行うことができる。また、可変ノズルの作用で標準負荷時以外の低負荷時、高負荷時の過給機特性が改善されるため、加圧気体や排気のバイパス量をより多く取り出すことが可能となる。
【0135】
また、本願によれば、主機関の運転状態を把握する物理量として必ず使われる掃気圧と排気温度を用い、また過給機特性としての過給機効率に基づいて制御を行うことにより、経時的に変化する状況の各々に対応して最適な可変ノズルの制御が可能となる。また、既存の検出手段等が利用でき、主機関の負荷に対応した演算を自動処理できる。
【0136】
また、本願によれば、航行状態検出手段の検出結果に応じて送気手段から送気された気体を船体の近傍に噴出する前に噴出後の気泡状態を想定しつつ噴出状態を制御することができるため、より所望のものに近い気体噴出を行うことができる。また、航行状態検出手段により航行時に起こり得る船舶の種々の場面により変化する航行状態を、数値情報として検出して他の装置等に情報として検出結果を提供することも可能となる。
【0137】
また、本願によれば、気体噴出口から噴出する気体の噴出量や噴出方向は、航行状態に応じて制御することができる。例えば、波が大きいとき、強風のとき、船舶がカーブするとき等において予め気体の噴出方向を調整することにより船底の向きや傾きに応じて噴出することで、摩擦抵抗を有効に低減することができる。また、たとえば港内等での低速時や航行中の巡航時等の航行状態に応じて、気体の噴出量を少量・標準量・多量にしたり、噴出方向を船底に対して中央方向に局所的に噴出したり、略平行に噴出したりすることもできる。こうすることで、船舶の航行状態に応じて任意に気体噴出状態を操作することが可能となり、摩擦抵抗を低減してエネルギー消費率を更に改善することができる。
【0138】
また、本願によれば、気体噴出口が突出しておらず船舶の航行に対する抵抗体にならない。すなわち、水の抵抗を受け、海藻等の付着によりさらに抵抗度合いが増す部分がないため、運行に生じる摩擦抵抗の更なる軽減が図れる。また、これによりドック入り時の作業上の負担・支障にもならない。たとえば、船体が定着する盤木等に載せる際に、気体噴出口の突出部分がないため船底と略同程度の高低で同一面を構成でき、応力集中による破損等を何ら考慮しなくてよい。さらに、船底の修繕等においても他の部分と同様の扱いをすることができるため、作業効率も損なわれない。したがって修繕等の作業時間の短縮も図れる。
【0139】
また、本願によれば、整流板により気泡の流路が予め定められるために、より好適に気体の噴出方向の調節が容易となる。また、当該整流板は船舶の構造体と兼ねることもでき気体噴出口部を補強できる。また、突出させないことにより、ドック入り時の作業上の負担にもならない。すなわち、整流板は気体の噴出方向の調節体としての効果と、構造体としての効果を有する。さらに、船舶の運航上、船底に突起物がないため、船舶のオペレーターにとっては安全上の不安要素が軽減される。
【0140】
また、本願によれば、拡散制限手段を収納可能な構成にすることで、気体の噴出状況及び船舶の運航状況に応じて、効率よく拡散制限手段を利用することができる。たとえば、摩擦抵抗効果が低い低速度運行時には、気体の噴出停止とともに、意図的・計画的に拡散制限手段を収納することで、船体から突出する部分がなくなり、運行上の抵抗体とならない。また、拡散制限手段を船体から突出させることにより、気泡の拡散制限効果以外に、船体の横揺れに対する抵抗体としての機能を兼ねたり、重心が下げられることにより船体の安定化を図ったりすることができる。また、メンテナンス等のドック入り時に応じて拡散制限手段を収納できれば、作業上の障害物がなくなり、作業員の負担が軽減する。したがって、エネルギー資源上及び作業上の効率を向上する点において、本発明は極めて有益である。
【0141】
また、本願によれば、拡散制限手段の一部(先端等)も突出していない状態とすることができるため、ドック入り時に拡散制限手段が障害物となることは全くなく船舶を定着することができる。また、拡散制限手段が障害となって船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。すなわち、船体が定着中は船体自体の荷重により拡散制限手段が収納され突出しない状態を維持できるため、その間は船底と略同一面を構成し、他の部分と同様に作業を行うことができる。したがって、作業効率も損なわれない。
【0142】
また、本願によれば、折りたたまれた拡散制限手段を設けることにより、巡航時にスムーズに突出させて略直進状態を維持しつつ、通常の運行時及び航行上生じる船舶の傾きや突発的に発生する船舶の揺れ等に対しても、その影響による気泡の拡散を抑制し、船底近傍に気泡を保持しつつ流すことができる。一方、ドック入り時は拡散制限手段を折りたためば障害物となることはなく船舶を定着することができ、船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。またたとえば、拡散制限手段を船体のビルジ部に装着して、外側に少し屈折させるだけで、船底との高低差がなくなるため、設置の自由度が増すとともに、船体内に格納するスペースの確保も不要となり、メンテナンスもし易い。また、拡散制限手段にビルジキールの機能を持たせ、航行時の船体の安定化にも寄与させることができる。
【0143】
また、本願によれば、収納可能な拡散制限手段を伸縮自在とすることにより、気体の噴出量の増減に応じて突出度を変え、拡散制限手段自身が摩擦抵抗の原因になることを防止することや、海底の浅い場所では縮めて航行上の障害となることを防止すること等が可能となる。
【0144】
また、本願によれば、重力により拡散制限手段が垂下するか、あるいはばねにより付勢することで、拡散制限手段の稼働における動力源を不要とし、その分消費エネルギーが節約される。一方、ドック入り時に拡散制限手段が、船体の自重が加わることにより自動的に収納され、障害物となることなく船舶を定着することができ、船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0145】
また、本願によれば、拡散制限手段を分割して列設することで、定尺ものの材料が利用でき、各拡散制限手段の重量もさほど大きくなくて済み、生産性の向上が可能となる。また、ドック入り時に盤木等から荷重を受ける箇所の拡散制限手段だけを収納、折りたたみ構造などに構成することも可能となり、補強も容易で応力集中等による拡散制限手段の破損を防止することができる。したがって、拡散制限手段自体の修繕等の必要性も減り、より効率のよい作業が実現する。
【0146】
また、本願によれば、拡散制限手段を内力及び/もしくは外力に応じて変形可能にすることにより、固定化された拡散制限手段とは異なり、柔軟にその形状を変更することができる。すなわち、内力を加え膨張状態を維持できれば、拡散制限手段としての機能を発揮し、略直進状態を維持した通常の運行時及び航行上生じる船舶の傾きや突発的に発生する船舶の揺れ等の影響による気泡の拡散を抑制し、船底近傍に気泡を保持しつつ流すことができる。一方、内力の停止及び/または外力の影響に呼応させて拡散制限手段の形状を変形させることができ、あえて収納等せずとも拡散制限手段自体が運行上の抵抗体とならず、ドック入り時の障害ともならなくすることができる。また、たとえば内力を高めて突出度を大きくすることにより、船体の横揺れ等に対する安定化手段としての機能を高めることができる。さらに、喫水が深く船体近傍に噴出した気泡も小さく、拡散制限手段の突出(変形)度も少なくてよい場合に、喫水(外力)の影響により変形し収縮するため、拡散制限手段が摩擦抵抗増加の原因となることを防止できる。したがって、エネルギー資源上及び作業上の効率を向上する点において、本発明はより効果的である。
【0147】
また、本願によれば、中空構造体の拡散制限手段を採用することで、気体や液体等の流体や粉体の流動による内部からの加圧により、拡大膨張させることができる。また、拡大膨張後、たとえば弁の閉鎖により圧力を一定に保つことも可能となり、常時流動を必要とせず、流体を供給するエネルギー消費量が節約できる。また、当該流体は排出しやすく、収縮に要する時間も短くて済み、ドック入り時に船体の自重により排出も可能なため、短時間で船舶の定着を行うことができる。
【0148】
また、本願によれば、中空構造体で送気管の役割を兼用し送気手段で形成した気体を気体噴出口に送気することができる。この際、当該中空構造体は気体の加圧により膨張するため、船舶の傾きによりおこる気泡の拡散を抑制し、拡散制限手段の役割も果たすことができる。また、たとえば送気手段或いは送気管と直結し、噴出気体の経路を形成することもできる。こうすることで、拡散制限手段としての機能と送気管としての機能を兼ねることも可能となる。
【0149】
また、本願によれば、拡散制限手段を可撓性材料で構成された内部が中空の中空構造体とすることにより、船舶の航行に伴う流体力により、中空構造体にあらためて流体を注入等しなくとも、中空構造体内部を加圧、拡大させ、また収縮させることができる。したがって、船舶の航行に伴う流体力を活かして拡散制限手段を形成することができるため、中空構造体を膨張させるための気体等を注入する装置等は不要となり、エネルギーの有効活用ができる。さらに、船舶が航行しない限り、流体力は発生しないため、ドック入り時には中空構造体は収縮し、即座に船舶の定着を行うことができ、拡散制限手段が障害物となることはなく船底の修繕等の作業に影響を及ぼすこともなくなる。
【0150】
また、本願によれば、船体の左右舷の傾きに応じて拡散制限手段の突出度を調整することができるため、たとえば傾いて喫水が浅くなった側の船底には拡散制限手段をより突出させ、傾きに伴う気体の拡散を制限することが可能となり、運行状態に極めて適した摩擦抵抗低減効果を得ることができる。
【0151】
また、本願によれば、制限流発生手段により気体の拡散を制限する流れを発生させることで、いわゆる擬似的な壁(端板)を形成し、噴出した気泡の拡散や、船舶の傾きにより生じる気泡の拡散を抑制し、気泡を船体近傍に保持しつつ流すことができる。また、気体の拡散は流体の作用により制限されるため、船体から突出させないことが可能となり、ドック入り時に盤木の位置等を考慮する必要もなく、作業上の支障はなくなる。したがって修繕等の作業時間の短縮も図れる。
【0152】
また、本願によれば、気体噴出口近傍の経路に設けた気体の噴出を行わないときに経路を閉成する開閉手段により、気体供給停止時に水の浸入を遮断し、送気手段に水が逆流することが防止でき、送気管の損傷等を防止することができる。すなわち、経路の内部は水分等による錆や海洋生物等の付着がなくなり、気体噴出に当たって摩擦抵抗の増加が抑えられ、メンテナンス等が不要となり、ひいては送気管の長期利用が可能となる。さらに経路が開閉手段により閉成されることにより、航行時に流れる水が経路内に浸入することによる摩擦抵抗の増加も防止することができる。
【0153】
また、本願によれば、航行状態検出手段を水中に設ける場合、気体噴出口から噴出した気泡の影響を受けないところに設置することで、気泡による外乱の影響を無くし、安定して種々の状態を検出することができる。また空気の存在により繁殖し易い、フジツボなどの磯に生息する生物付着を防止でき、長期的に安定して航行状態の検出が行える。